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博 士 ( 水 産 科 学 ) 中 屋 光 裕

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 中 屋 光 裕      学 位 論 文 題 名

函 館 湾 に お け る マ コ ガ レ イ 仔 稚 魚 の 捕 食 者 と し て の エ ビ ジ ャ コ Cra7zgoTz uritai の 時 空 間 分 布 と 摂 餌 生 態      学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    マコ ガレイPleuronectes yokohamaeは 函館湾から木古内湾に至る北海道津軽 海峡沿岸において,年間173‑349トン漁獲されており,この海域における重要な漁業 資源となっている。当海域では本種の資源変動機構を解明するため,初期生態に関 する研究が行われてきた(中神,2001;中神ら,2001)。それによると,マコガレイ仔稚 魚の 成育場は 函館湾沿 岸域に形成 され,着 底期に大規模な減耗が起こる可能性が 示唆されている(中神ら,2001)。しかし,その減耗要因については不明のままである。

これまでに異体類の着底期における減耗要因の―っとして,エビジャコ属による被 食が 報告され ており(van der Veer and Bergman,1987; Yamashita et甜,1996;

Wennhage and Gibson,1998; Ansell et甜,1999; Oh etロ|,2001),卓越年級群形成に 強く関与していることが示唆されている。そこで本研究では,函館湾に分布するエビ ジャコCr angon uritaiの時空間分布と摂餌生態について調べ,エビジャコによるマコ ガレイ仔稚魚の被食機構の解明を目的とした。

    1)函館湾におけるエビジャコの時空間分布とマコガレイ仔稚魚の被食状況を調

べ る ため ,1997〜2000年の3〜6月(各 月2〜3回) に函館湾の 水深3〜20m域 で小 型そルネットを用いて,エビジャコ,マコガレイ仔稚魚およびその他の小型動物を採集 した。食性解析の結果,マコガレイを捕食していたエビジャコの最小サイズは全長 19 mmであった。そこで,全長19 mm以上のエビジャコをマコガレイ仔稚魚の捕食者 とみなし,水深別個体数密度と海底水温との関係を調べた。エビジャコについては,

加重平均分布水深と海底水温との間に有意な負の相関がみられ(′  ‑ 0.68,N=20, pく0.001),水温上昇に伴って浅所に移動することがわかった。―方,マコガレイ仔稚 魚 に つ い ては , 加 重平 均 分布 水 深 と海 底 水 温と の 間に 有 意 な相 関 は認 め ら れ

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ず(N〓19,p冫0.05), ―部 の期 間を 除い てエ ビジ ャコ より 深 い水 域で 個体 数密 度が 高かった。

    2) 食性 解析 の結 果 ,エ ビジ ャコ はマ コガ レイ の他 に環 境中 に分布する仔稚魚,

ベントス,プランク卜ンなど様々な小型動物を摂食す ることがわかった。エビジャコの ジュ ベナ イル ,ニクハゼ仔魚,アミ類,ヨコエビ類について ,個体数密度がおよそ1.0 個 体 /mLを超 える とエ ビジ ャコ によ る被 食頻 度が 急激 に高 ま る, いわ ゆる 密度 依存 的な被食が確認された。

    3) 餌 種 の 行 動 や 形 態 特 性 の 違 いが ェビ ジャ コの 餌選 択 にど のよ うに 関わ って いる かを 明ら かにするため,捕食実験を行った。実験はエビ ジャコ5個体に対して,マ コガ レイ 稚魚 とエ ビジ ャコ の主 要な2種類の餌(アミの1種Nipponomysis sp.とヨコエ ビの1種 ナミ ノリソコエビ)を, それぞれ10個体ずつ同時に与えて行った。その結果,

マコガレイ稚魚はエビジャコにとって処理(捕獲して から飲みこむまでの行為)に時間 を要しない餌であるが,底面から離れることがほとん どないために発見されにくく,か つ逃避能カも高いため,Nipponomysis sp.よりも捕食されにくい餌であった。また,ナミ ノリソコエビはマコガレイ稚魚に比べて小型であるが,処理に時間を要し,´.種のうち 最も 捕食 され にく い餌 であ った 。以 上の 結果より,マコガレイ稚魚に比べて相対的に 目立ちやすく,逃避能カも低く,かつ処理にそれほど 時間を必要としないアミ類のよう な 餌 の 存 在 は , 野 外 で マ コ ガ レ イ の 被 食 頻 度 を 低 下 さ せ て い る 可能 性が 示唆 され た。

    4) エ ビ ジ ャ コ の 摂 餌 日 周 期 性 を 明 ら か に す る た め ,1999年お よび2002年の4 月に 函館 湾七 重浜 にお いて ,2時 間ご と24時間 にわ たり ,そ ルネ ットによる採集を行 った。エビジャコは昼夜ともに摂餌を行うが,摂餌の ピ―クは夜間にあり,夜間は昼間 の1.5‑2.0倍にあたる重量 の餌を捕食することが示された。

    51マ コ ガ レ イ 仔 稚 魚 の 発 育 段 階 の 違 い に よ る 日 周 期 的 な 活 動性 の変 化, およ びエビジャコによる被食リスクの差異を把握するため ,飼育環境下でェビジャコとマコ ガレ イの 行動 を観 察し た。 エビ ジャ コは 昼間に比べて夜間活発に行動するため,どの 発 育 段 階 にお いて も夜 間の 方が エビ ジャ コに よる 被食 の可 能 性は 高く なる こと が示 唆さ れた 。マ コガ レイ につ いて ,脊 索屈 曲前仔魚前期は昼間に浮上個体が多く,夜間 に は 遊 泳 はほ とん どみ られ なか った 。こ の時 期の 仔魚 は逃 避 能カ が低 く, かつ 処理

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時間が 短いた め,エビ ジャコ に遭遇した場合,被食の影響は大きくなると考えられる。

― 方, 脊 索 屈曲 前 仔 魚 後期 は 昼 間よ り も 夜間 の 方が 浮上し ている個 体が多か った。

こ の 行 動 は 骨 格 が 未 完 成 で 被 食 に 対 す る 抵 抗 カ の 低 い 脊 索 屈 曲 前 仔 魚 後 期 の 個 体にと って, エビジャ コから の被食回避に有利であると考えられた。脊索屈曲・眼球移 動 中仔 魚 や 脊索 屈 曲 後 仔稚 魚 は 昼夜 と も に着 底 して いるた め,エビ ジャコの 攻撃を 受 け や す い が , 逃 避 能 カ の 発達 や 頭 高の 増 大 によ る 処 理時 間 の 延 長に よ っ て被 食 が緩和 されて いると考 えられ た。ただ し,変 態中であ る脊索屈 曲・眼 球移動中 仔魚は 脊 索 屈 曲 後 仔 稚 魚 に 比 べ て 逃避 能 カ が低 く , 処理 時 間 が短 い た め ,被 食 の 危険 性 は高いことが示唆された。

    6)野 外 に お いて エ ビジャコ による 被食の可 能性が高 い期間 を推定す るため ,ま ず,飼 育環境 下でエビ ジャコ が選択的 に捕食 するマコ ガレイの 体長を 調べた。 その結 果,エビジャコはサイズ比(マコガレイの体長/エビジャコの全長)で0.12‑0.31倍のマコ ガレイ を捕食 し,特に サイズ 比0.15−0.19倍 の個体を 選択的 に捕食す ることが 示され た。こ の実験 で求めた サイズ 階級ごと の捕食 確率,お よび野外 で採集 されたマ コガレ イとエ ビジャ コのサイ ズ比組 成から, 採集日 ごとの被 食可能性 を推定 した結果 ,水温 の 上 昇 が 遅 れ た1999年 は 被 食 期 間 が 長 く ,4‑6月 に か け て 高水 温 で 推移 し た2002 年 は被 食 期 間が 短 い こ とが 示 さ れた 。 こ の被 食 期間 の違い は,当海 域では水 温が高 い年ほ どマコ ガレイの 成長は 促進され るのに 対し,マ コガレイ の成育 場に分布 するエ ビ ジ ャ コ の 全 長 組 成 は 変 化 し な い こ と に 起 因 す る と 考 え ら れ た 。     以上 の結果, エビジ ャコによ るマコガ レイ仔 稚魚の被 食状況 は,水温 を主要因と す る分 布 の 重複 と マ コ ガレ イ の 成長 速 度 によ っ て大 きな年 変動を示 す可能性 が示唆 された 。エビ ジャコは それぞ れの餌に ついて ,個体数 密度の差 が小さ い場合, 発見し や すく , 処 理時 間 の 短 い餌 を 選 択的 に 捕 食す る が, 基本的 に密度依 存的な摂 餌を行 う。当 海域で は3・4月に 卓越す る北西風 が連送 すること により ,中底層 に分布す るマ コガレ イ仔魚 が湾奥へ と運ぱ れる(中神ら,2001)。したがって,仔魚の湾奥への輸送 のタイ ミング と程度は ,仔魚 の湾内に おける 個体数密 度を変化 させ, エビジャ コによ る被食 インパ クトの年 変動を もたらす一因となることが考えられる。エビジャコによる 被 食減 耗 が 激し い と 考 えら れ る 年は , 仔 魚期 か ら稚 魚期に かけての 密度低下 が顕著 であり ,エビ ジャコに よる仔 稚魚の被 食はマ コガレイ の加入量 を決定 する重要 な要因 の ーつ で あ るこ と が 示 唆された 。7月 以降の 稚魚期に ついて は,エビ ジャコや 魚類に

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よる被食が認められなかった。今後,マコガレイの加入量予測を可能にするには,仔 稚魚期の成長速度,若齢魚に対する漁獲圧の解析に加え,野外における仔稚魚の 発育段階ごとのエビジャコによる被食頻度の違いや,昼夜における被食量の違いに ついても詳しく調べる必要がある。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

函館湾におけるマコガレイ仔稚魚の捕食者としての エビジャコC7‑angoTz uritai の時空間分布と摂餌生態

  マ コ ガレ イPleuronectes yoわ ヵ 弸粥 は函 館湾 から 木 古内 湾に 至る 北 海道 津軽 海峡 沿岸 に おい て , 年 間173.349卜 ン 漁 獲さ れ てお り, この 海域 に おけ る重 要な 漁業 資 源と なっ てい る 。当 海 域 で は 本 種 の 資 源 変 動 機 構を 解 明す るた め, 初期 生 態に 関す る研 究が 行 われ てき た。 そ れに よ る と , マ コ ガ レ イ 仔 稚 魚 の成 育 場は 函館 湾沿 岸域 に 形成 され ,着 底期 に 大規 模な 減耗 が 起こ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。し か し, その 減耗 要因 に つい ては 不明 のま ま であ る。 これ ま でに 異 体 類 の 着 底 期 に お け る 減 耗要 因 のー っと して ,エ ビ ジャ コ属 によ る被 食 が報 告さ れて お り, 卓 越 年 級 群 形 成 に 強 く 関 与 して い るこ とが 示唆 され て いる 。そ こで 本研 究 では ,函 館湾 に 分布 す るエ ビ ジャ コCM館gD灯甜灯矧の 時空間分布と摂餌生態にっ いて調ベ,エ.ビジャコによ るマコガレ イ 仔 稚 魚 の 被 食 機 構 の 解 明 を 試 み た も の で あ る 。 本 論 文 で 評 価 さ れ る 点 は 次の 通り で ある 。

1) マ コ ガ レ イ 仔 稚 魚 の 主 生 育 場 と な っ てい た 函館 湾を 中心 に, エ ビジ ャコ とマ コガ レ イ仔     稚 魚 の 時 空 間分 布様 式を 調 べ, エビ ジャ コ につ いて は, 加重 平 均分 布水 深と 海底 水 温と     の聞に有意な 負の相関がみられ(′.‑‑0.68,N〓20,pく0.001),水温上昇に伴って浅所に移     動 す る こ と を明 らか にし た 。ー 方, マコ ガ レイ 仔稚 魚に つい て は, 加重 平均 分布 水 深と     海底水温との 間に有意な相関は認められず (〃  19,p冫0.05),一部 の期間を除いてエビジ     ヤコより深い 水域で個体数密度が高いこと を明らかにした。

2) 食 性 解 析 の 結 果 , エ ビ ジ ャ コ が マ コ ガ レイ 仔 稚魚 をは じめ 環 境中 に存 在す る仔 稚 魚, ベ     ン ト ス , プ ラ ンク トン な ど様 々な 小型 動物 を 摂食 する こと を 明ら かに した 。摂 餌 様式 に     つ い て , エ ビ ジャ コの ジ ュベ ナイ ル, ニク ハ ゼ仔 魚, アミ 類 ,ヨ コエ ビ類 につ い て餌 の     個体 数密 度 が1.0個 体hri2を超 える とエ ビジ ャ コに よる 被食頻度が急激に高 まる,いわゆ     る密 度依 存 的な 被食 を確 認 した 。

3 マ コ ガ レ イ 稚 魚 と そ の 他 エ ビ ジ ャ コ の 主 要 な 餌 で ある アミ 類 やヨ コエ ビ類 を 同時 に与 え , エビ ジャ コの 餌選 択 基準 の解 明を 試み た 。そ の結 果, マ コガ レイ 稚魚 はエ ビ ジャコ     一1467―

豊  

  泰

授 授

授 授

   

   

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    にとって処理(捕獲してから摂餌が完了するまで)に時間を要しない餌であるが,底面     から離れることがほとんどないために発見されにくく,かつ逃避能カも高いため,アミ     類よりも捕食されにくい餌であった。また,ヨコエビ類はマコガレイ稚魚に比べて小型     であるが,処理に時間を要し,3種のうち最も捕食されにくい餌であった。このように,

    エビジャコは発見しやすく,逃避能カが低く,捕食に時間を要しなぃ餌を選択すること     を明らかにした。

4)エ ビジャコの摂餌日周性を明らかにするため,函館湾七重 浜海岸において,2時間ごと     24時間にわたり,そルネットによる採集を行った。その結果,エビジャコは夜間活発に     摂餌を行い,夜間には昼間のおよそ1.5‑2.0倍に相当する重量の餌を捕食することを示し     た。

5)マ コガレイ仔稚魚の発育段階の違いによる日周期的な活動性の変化,およびエビジャコ     による被食リスクの差異を把握するため,飼育環境下でエビジャコとマコガレイの行動     を観察した。エビジャコは昼間に比べて夜間活発に行動するため,どの発育段階におい     ても夜間の方がエビジャコによる被食の可能性は高くなることを示した。また,脊索屈     曲・ 眼 球移 動中 仔魚 が最 もエビ ジャコによる被食の危険性が高いことを示唆した。

6)野 外においてエビジャコによる被食の可能性が高い期間を推定するため,まず,飼育環     境下でエビジャコが選択的に捕食するマコガレイの体長を調べた。その結果,エビジャ     コはサイズ比(マコガレイの体長/エビジャコの全長)で,特にサイズ比O.15‑0.19倍の     個体を選択的に捕食することを示した。この実験で求めたサイズ階級ごとの捕食確率,

    および野外で採集されたマコガレイとエビジャコのサイズ比組成から,採集日ごとの被     食可能性を推定した結果,水 温の上昇が遅れた1999年は被食期間が長く,4…月にかけ     て高水温で推移した2002年は被食期間が短いことを示した。この被食期間の違いは,マ     コガレイは環境水温に依存した成長を行うが,エビジャコは環境水温に依存した成長を     行わなぃことに起因すると推察した。

本研究は,エビジャコに よるマコガレイ仔稚魚の被食減耗機構を明らかにし,天然資源の加 入量予測および資源管理を実施する上で重要な基礎的知見を提供したものとして,審査員一同 は,本研究の申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。なお,平 成16年2月19日の研究科委員会最終審査において,投票数32票,可とするもの32票で研究科委員 全員が合格と判定した。

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参照

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