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     博士(水産科学)鈴木里加子 学位論文題名

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     博士(水産科学)鈴木里加子 学位論文題名

共 役脂 肪酸 の天然物中での存在と その機能性並びに利用に関する研究      学位論文内容の要旨

  共 役 脂肪 酸 は 分 子 内 に 共 役 二 重 結 合 を 有 する 脂肪 酸の 総称 であ り、 特に 共役 リ ノ ー ル 酸(CLA)に 関 し て は 、 そ の 特 異的 な 生 理 作 用 か ら 様 々 な 研 究 が 行 わ れて い る 。CLAは そ の 名 称 の 通 り 、 リ ノ ー ル 酸(LA)と 同 様 炭 素 数18個 で 二 重 結 合 を2個 有 す る 脂肪 酸 で あ る が 、 二 重 結 合 の 位 置 船 よび その 幾何 異性 によ り複 数の 異性 体 が 存 在 する 。CLAは 反 芻 胃 を 有 す る 家畜 由 来 の 乳 製 品 中 や 肉 製 品 中 に 最 も 多く 見 い だ さ れて お り 、 そ の 含 量 は 総 脂 肪 酸 中 1% 程 度 で あ る 。 天 然 物中 のCLAの主 な 異性体は、cis9|transll‑octadecadienoic acid (c9,t11‑18:2)とt10,c12‑18:2で あ り 、 その 生 理 作 用 と し て は 、 抗 が ん 作 用 、脂 肪蓄 積抑 制作 用、 動脈 硬化 抑制 作 用 、 抗 アレ ル ギ ー作 用な どが 明ら かに なっ てい る。 一方 、天然 にはCLA以外 の共 役 脂肪酸の存在も報告されている。例えば、食用に供されているニガウリ、ザクロ、キサ サ ゲ な ど の 植 物 種 子 油 中 に は り ノ レ ン 酸 (LN) の 異 性 体 で あ る 共 役LN(CLN) が 3070%含 有されている。一方、海藻脂質中からはイコサペンタエン酸(|PA)の異性 体 で あ る 共 役IPA(CIPA)が 見 出 さ れ て いる 。 二 重 結 合 を 多 数 持 つCLA以 外 の 共 役 脂 肪 酸 には 、CLAよ りも さら に多種 多様 な異 性体 の存 在が 推定 でき 、こ れら の天 然 物 中 に お け る 存 在 や 異 性 体 ご と の 詳 細 な 生 理 機 能 に つ い て の 解 明 は非 常 に 興 味 深い 。し かし 、現在 のと ころCLA以外 の共役脂肪酸の研究例はほとんどない。そこで 本 研 究 で は 、 特 にCLA以 外 の 共 役 脂 肪 酸 に っ い て 、 そ の 分 析 法 の 確立 と 天 然 物 中で の存 在に っいて 検討 を行 った 。ま た、 これ ら共 役脂 肪酸 の生 理作用とその酸化 安定性および抗酸化についても検討を行った。

  ま ず、 一般に脂肪酸の定量分析に汎用されるガスクロマトグラフイー(GC)を用いて 標 品 の 共役 脂 肪 酸 に つ い て 分 析 し た と こ ろ 、CLAとCLNはGCに より 定量 でき たが 、 CDHAは カラ ム 内 へ の 吸 着 に 加 え 、 熱 分 解 あ るい は重 合を 受け たた めピ ーク が検 出

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  されなかった。次に、熱分解が起こらない高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い   て共 役脂肪酸の 分析を行っ た。共役脂 肪酸にはそ の共役二重 結合構造に 由来す   る特 徴 的な 紫 外 (UV)吸 収 帯が 存在する。 そこでUV検出 器を備えたHPLCを 用い   てCDHAの 分 析を 行 った 。 その 結 果、235 nmの 検 出 波長 を 用いる ことでCDHAの   検出が可能となった。さらに、複数のUV吸収波長を同時に分析できるフォトダイオ   ードアレイ検出器を用いて天然物中での共役脂肪酸の探索を行ったところ、マグロ   眼窩 油中に共役 ジェン構造あるいは共役トリエン構造を有する複数の共役脂肪酸   の存在が示された。ただし、この方法は、感度の点、特異性の点で不十分であった。

  そこ で 、共 役 二 重結 合 に直 接付 加する螢光 試薬(DMEQ‑TAD)を 用い、螢光 検出   器を 備えたHPLC分析 による共役 脂肪酸の高 感度検出を 試みた。そ の結果、各 種   動植 物 油脂 中 に 相当 量 のCLAとCLNが 検 出さ れ た。 ま た動 物 油脂の方 が植物油   より共役脂肪酸量が多いことも分かった。さらに、水産物油中では、一般の食用植物   油やCLAを多く含むと考えられている反芻動物油脂よりも、多量の共役脂肪酸(共   役トリエン脂肪酸など)を含むことが明らかとなった。

    本研究により海洋動物中に共役トリエン脂肪酸などの共役脂肪酸が存在すること   が明らかとなったが、共役トリエン脂肪酸の生理作用についての報告はこれまでにほ   とんどなかった。そこで、共役トリエン構造を有する共役DHA(CDHA)の抗腫瘍効果   にっ いて培養系 細胞を用い て検討を行 った。この 際、天然物 中のCDHA含量は 低   いた め 、DHAから ア ルカ リ 異性 化法でCDHAを調 製し実験に 供した。そ の結果、

  CDHAは低 濃度で腫瘍 細胞のみに 致死活性を 示すことが 分かった。 アルカリ異 性   化法で得られたCDHAは、共役ジェン酸、共役トリエン酸、共役テトラエン酸および   未 反 応 のDHAを 含有 す るが 、DHAや 共役 ジ ェン 酸 であ るCLAで は致 死 活性 が な   く、またCDHAに含まれる共役テトラエン酸含量はごく微量であったことから、CDHA

.が示した致死活性は共役トリエン酸に起因すると考えられた。また、ある種の植物種   子油 中には特定 のCLN異性体が多量に含まれることから、こうしたCLNを用いて共   役ト リエン酸の 二重結合の位置あるいは幾何異性の違いが抗腫瘍効果におよぼす   影響 について検 討した。その結果、9位、11位および13位に二重結合を有し、9位   にシス型構造、11位にトランス型構造を持つCLNの致死活性が強いことが示唆され   た。

    次に、CLN(c9,tll,t13‑18:3)を多量に含むニガウリ種子油が、ラット大腸発がん   におよばす影響について検討した。その結果、大腸前がん病変のーっである異型腺

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窩巣 の発 現がニガウリ種子油投与により濃度依存的に抑えられた。また、ニガウリ種 子 油 投 与 に よ り 、 前 がん 病 変 部 の ア ポ ト ー シス 誘導 と増 殖細 胞核 抗原 標識 率の 抑 制も 観察 できた。さらに、ラット肝臓脂質中にCLNではなくCLA(c9|t11‑18:2)が検 出 さ れ た こ と か ら 、 こ の CLAが 活 性 本 体 の 1っ と も 考 え ら れ た 。   機 能 性 脂 肪 酸 の 生 理作 用 や 食 品 な ど へ の 応用 を考 える 上で 、そ の酸 化と 抗酸 化 は非 常に 大き な問 題で ある 。そ こで 、海 洋動物 油や ある 種の 植物 種子油に存在する 共 役 ト リ エ ン 酸 の 酸 化 安 定 性 に っ い てLAを 主 要 成 分 と す る 大 豆 油 、CLAを 含 む CLA油 、LNを 主 要 成 分 と す る エ ゴ マ 油 、CLNを 含 む ニ ガ ウ リ 種 子 油 を用 い て 比 較 検討した。その結果、バルク系、エマルション系いずれにおいても、ニガウリ種子油の 酸 化 安 定 性 が最 も低 く、 つい でエ ゴマ 油、CLA油 、大 豆油 の順 とな るこ とが 分か っ た。 また 、共役型油脂の酸化生成物としては、過酸化物よりも重合物が主として生成 する こと が示された。共役型油脂は対応する非共役型油脂よりも酸化されやすいこと が 分 か っ た が 、TocopherolやTroloxと い っ た抗 酸化 剤を 添加 する と、 共役 型油 脂 の酸 化安 定性 は上 昇し 、そ の酸 化安 定性 は対応 する 非共 役型 油脂 より高くなった。

した がっ て、適当な抗酸化剤を用いることで共役トリエン酸のような不安定な共役型 油 脂 の 食 品 な ど へ の 利 用 も 可 能 と な る こ と が 明 ら か と な っ た 。   以 上 本 研 究 に よ り 、水 産 物 油 中 な ど にDHAあ るい はIPA由来 の共 役ト リエ ン酸 の 存在が明らかとなった。また、共役トリエン酸は強い抗がん活性を有することも示され た。 した がって、水産物油あるいは植物種子油に存在する共役トリエン酸は新しい機 能性 成分 としての活用が期待される。ただし、共役トリエン酸の酸化安定性は低いた め、 その 利用 にあ たっ ては 酸化 防止 に関 して充 分留 意す る必 要が ある。本研究で明 ら か に し た 共 役 脂 肪 酸に 対 す る 抗 酸 化 剤 の 特徴 は、 こう した 効果 的な 酸化 防止 法 について極めて有益な知見を与えているものと考える。

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   宮 教 授   板 教 授   高 助 教授  細

下 和 夫 橋   豊 橋 是 太郎 川 雅 史

学 位 論 文 題 名

共役脂 肪酸の天然物中での存在と その機 能性並び に利用に関する研究

  共役脂肪酸は分子内に共役二重結合を有する脂肪酸の総称であり、特に共 役リノール酸(CLA)に関しては、その特異的な生理作用から様々な研究が行 われている。CLAは分子内に共役ジエン構造を有する共役脂肪酸であり、抗 がん作用、脂肪蓄積抑制作用、動脈硬化抑制作用、抗アレルギー作用などの 生理作用を示すことが明らかになっている。一方、天然物中にはCLA以外の 共役脂肪酸の存在も報告されている。例えば、食用に供されているニガウり やザクロ、あるいは、漢方薬の原料となるキササグなどの植物種子油中には りノレン酸(LN)由来の共役トリエン酸(CLN)が30〜70%含有されている。ま た、海藻脂質中からはイコサベンタエン酸(IPA)由来の共役トリエン酸(CIPA) が見いだされている。二重結合を多数有するこれらの共役トリエン酸には、

CLAよりもさらに多種多様な異性体の存在が推定でき、その天然物中におけ る存在や異性体ごとの詳細な生理機能についての解明は非常に興味深い。し かし、.現在のところCLA以外の共役脂肪酸の研究例はほとんどない。そこで 本研究では、特にCLA以外の共役脂肪酸に着目し、水産物中におけるこれら 共役脂肪酸の存在、生理作用、食品等に利用する際重要となる酸化安定性お よ び 抗 酸 化 等 に つ い て 検 討 を 行 い 、 以 下 の よ う な 成 果 を 得 た 。 1.共役脂肪酸の分析法の確立と水産物中での存在:フォトダイオードアレ イ検出器を備えた高速液体クロマトグラフイー(HPLC)を用い、水産物中での 共役脂肪酸の探索を行った。その結果、マグロ眼窩油中に共役トリエン構造 を有する共役脂肪酸が存在することを始めて明らかにした。さらに、共役二 重結 合に直接付 加する螢光 試薬(DMEQ‑TAD)を用い、螢光検出器を備えた HPLC分析による共役脂肪酸の高感度検出を試みた。その結果、水産物油中 には、一般の食用植物油やCLAを多く含むと考えられている反芻動物油脂よ りも、多量の共役脂肪酸(共役トリエン脂肪酸など)を含むことを明らかにし

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た。

2.共 役 ト リエ ン 酸の 抗 腫 瘍活 性 : 共役 ト リエ ン 構 造を 有 するDHAを アル カ リ異性 化法によ り調製し 、その抗 腫瘍効果 にっいて 培養系細胞 を用いた検討 を 行っ た 。 その 結 果、CDHAは 低 濃度 で 腫瘍 細 胞 のみに増 殖抑制作 用を示す こ と を 見 い だ し た 。 た だ し 、 共 役 ジ ェン 構 造 を有 す るDHAや 非 共役 のDHA にはこ うした活 性がなく 、分子内 に共役ト リエン構 造を有する ことが細胞に 対 して 強 い 増殖 抑 制作用 を示す原 因である ことを明 らかにし た。また 、CLN を用い て共役ト リエン酸 の二重結 合の位置 あるいは 幾何異性の 違いが増殖抑 制 作用 に お よば す 影響に っいて検 討し、9位 、11位およ び13位に二 重結合を 有 し、9位 に シ ス型 構 造、11位に ト ラ ンス 型 構造 を持つCLNの活性が 強いこ とを示した。

3.共 役 ト リエ ン 酸 のラ ッ ト大 腸 癌 抑制 効 果: 共 役トリ エン酸の ーっであ る CLN(c9,tll,t13‑18:3)を多量に含むニガウリ種子油のラット大腸発がんにおよ ばす影 響につい て検討し た。その 結果、大 腸前がん 病変のーつ である異型腺 窩巣の 発現がニ ガウリ種 子油投与 により濃 度依存的 に抑えられ ること、その 活性は0.006%という 低濃度で も発揮することなどを見いだした。また、ニガ ウリ種 子油投与 により、 前がん病 変部のア ポトーシ ス誘導と増 殖細胞核抗原 標識率 の抑制が 起こるこ とも示し た。これ らの結果 より、共役 トリエン酸が 強い抗癌活性を有することを始めて明らかにした。

4.共 役 ト リエ ン 酸 の酸 化 と抗 酸 化 :機 能 性脂 肪 酸の生 理作用や 食品たど へ の応用 を考える 上で、. その酸化 と抗酸化 は非常に 大きな問題 である。そこ で、共 役トリエ ン酸の酸 化安定性 について 検討し、 共役トリエ ン酸の酸化安 定性が 非常に低 いことを 明らかに した。た だし、ト コフェロー ルやトロロツ クスと いった抗 酸化剤添 加により 、共役型 油脂の酸 化安定性は 飛躍的に上昇 し 、そ の 酸 化安 定 性は 対 応 する 非 共 役型 油 脂よ り高 くなるこ とも示し た。

  こ の よ う に 、 本 研 究 で は 、 水 産 物を 始 め とす る 天 然物 中 にDHA、IPAあ るいは りノレン 酸由来の 共役トリ エン酸が 存在する こと、また 、共役トリエ ン酸は 強い抗が ん活性を 有するこ とを明ら かにした 。さらに、 共役トリエン 酸の酸 化安定性 は非常に 低いが、 適当な抗 酸化剤を 用いること でその食品な どへの 利用が可 能となる ことも示 した。本 研究で得 られた成果 は、水産物な どに含 まれる共 役トリエ ン酸の栄 養機能性 と利用に っいて始め て明らかにし たもの であり、 水産物を 積極的に 活用する 上で有益 な知見を与 えるものと高 く評価 される。 よって審 査員一同 は本研究 の申請者 が博士(水 産科学)の学 位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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