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博士(水産学)鈴木祥広 ‘学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(水産学)鈴木祥広 学位論文題名

      

大 型 褐 藻 マ コ ン ブ ( 己arnむ 凡 ar a丿 ap〇 凡 む ca Arescん 〇 Mg) の

生長、増殖に及ぼす鉄の効果に関する研究 学位論文内容の要旨

  近年、エネルギーの需要は菩しい増加を示し、それに伴い、

原料どする化石燃料(石炭、石油)の消費が増大している。こ れらの使用は、地球温暖効果の主原因どいわれている二酸化炭 素(C02)の放出を意 味し、大気中のC02濃度は年々急速 に 増加の一途をたどっている。更に、森林開発による樹木のfk採 によってC02の吸収能カは減少し、伐採により逆にC02の増加 に拍車をかけ、温暖化は深刻な地球環境問題どなっている。最 近、国際的規模で植林事業が開始され森林によ名C〇2の吸収能 カの回復を図る試みがなされているが、森林の復元には数十年 から数百年かかるど考えられる。しかし、人類がエネルギー源 どして化石燃料を使用していく限っ、大気中のC02濃度は増カロ を続けるこどになる。従って、現在この対策どして放出される C02ガスの回収、再利用方法が検討されてきている。しかし、

エネルギー収支やコス1`の面でまだ不明な点が多く、排出され るC02ガスの回収、削減方法に関する工学的な研究はまだ多く の課題が残されている。

  自然界において、植物は光合成によってC02を固定する能カ を有しており、大気のC02濃度の調節(吸収、固定)は、全て の植物(陸上、海洋)によって行われてきた。C02濃度を一定 に保ち、温暖化を防ぐ為には、地球全域にわたるの生産カの増     ‑ 838―

(2)

大 (緑化)が必要 である。現在 、陸卜の森林 は大気|pのCO。の 2/3を 貯蔵 し てい るが 、 陸上 の 有効 面 積並 びに 森 林伐 採 ど髄林 事 業を相互に・兒 るど、今後の 普しい生産カ の増大、即ち、陸E の 植 物相 の みにC02吸 収 能カ の 向上 を 求め るの は 困難 で あるど 考えられる。

    海洋 植物のー次生産 の総量fよ陸上 の50%程度を占めている こ ど から 、 将来 に向 け て海 洋 の生 物 生産 の 増大 によ るC02吸収 固 定 に 期 待 が 高 ま っ て き て い る。 海 洋の 一 次生 産の90% は 植 物 プ ラン ク トシ によ る ものであり、生 産カは水温及 び、光照度 等 の 物理 的 要因 ど、 栄 養塩を初めどす る化学成分に よる化学的 要 因 どの 相 互作 用に よ って支配されて いる。化学的 観点から見 る ど栄養塩である 窒素、リンが藻類のノくイオマスを制限してい る こ どは 以 前か ら数 多 く報告されてい る。また、海 水中の微量 金 属 濃度 の 信頼 性が 高 まり、海洋の生 物生産ど栄養 塩並びに微 量 金属が密接に関 係しているこども次第に明らかにされてきた。

  微量 金 属中 、 鉄は 、全て の生物の生命 維持に不可欠 な元素で あ り 、特 に 光合 成生 物 にどって栄養塩 ど並び重要で ある。それ ゆえ、鉄ど植物プラシクトン増殖に関する研究が多数報告されてぃ る 。 最近 で は、 栄養 塩 の枯渇しなぃ高 緯度海域では 、鉄が生物 生 産を制限してい る要因であるこどが報告され、外洋に鉄を散布 し 生 産カ を 高め 、大 気 中のC02濃度 を 滅少 させ る 考え も ある。

  一方 、 沿岸 域 の生 物生産 は、主に海産 の大型藻類( 海藻、海 草 )によるもので あり、生産量 は全海洋の10。/0であろが、全 海 洋 のバ イ オマ スの2/3を占 め 、海 藻 の単 位面 積 当り の 生産カ は 潮 下帯 の コン ブ林 で は極めて高く、 これは最も生 産カの高い 陸 上 植物 に 匹敵 する 。 また、植物ブラ ンタトンど比 較して海藻 は ライフサイクル の周期が長く 、藻体組織の 分解も受fうにくい こ ど から 、 海洋 にお い てC02の 吸収 固 定に は海 藻 は緜 め て重要     ‑ 839―

(3)

な存在である ど考えられる 。これらのこ どから、海藻の生長増 殖機構を知るこどは地球環境の観点からも意義のあるこどである。

  しかし、現在 に至るまで海 藻の生長、増殖 に関する基礎的研 究は少なく、 特に化学的な アプ口ーチは 、植物プランクトシど 比較し極めて 少なぃ。鉄は 全ての植物に 必須の元素であり、海 洋の植物プラ ンクトンの増 殖を鉄が制限 しているこどを先述し たが、同じ海 産の光合成植 物である海藻 にどっても鉄は不可欠 な元素であるこどは明らかである。

  本研究では海 藻増殖に関す る基礎研究どし て、北海道の沿岸 海域において 主要なバイオ マスであり、 かつ、有用海藻の代表 である大型褐藻マコンブ(Lamんロria  j8pODたロAreschoug)に ついて、その 生長増殖に及 ばす鉄の采た す役割及びその増殖法 に関ヤる研究を行い、以下の知見を得た。

1.  Z. ノ を  ponノ ロ ぶ の 生 長 増 殖 に 及 ば す 鉄 の 効 采   Z.ノふ ponんみの配偶体の成熟、受精に関して.鉄は制限元素ど し て 働き 、培 地 中のFeイ オ ン濃 度 に成熟率は 依存L増加した の に 対し、無鉄培 地中の配偶体 は栄養増殖を するのみであっ た。

異 性 配 偶 体 世 代 (n) か ら 胞 子 体 (2n) に 発達 す る段 階 にお い てFeは不可欠で あるこどが明か どなった。更 に胞子体期( 芽 胞体 以上のステー ジ)おf寸るFeは生長速度、並ぴに光合成色素 の生合成を支配する要因であった。従って、鉄はZ./幺ア口口ノビぷ 生 活史の各ステ ージにおける 発達を制限す る必須元素であ るこ ど を明らかにし た。また、全 ステージにお いて粒状態Fe(無 定 形 水 和 酸 化 鉄 :amFe) は 溶 存 態Fe一EDTAど 比 較 し て 、 生 長 等 に果たす鉄の 効采が低いこ どから細胞内 に直接摂取でき る形 態 はFeイオンであ っ、この供給量 の差異が各ス テージの発達 を 制限するど推測された。

    ー840ー

(4)

2.  Z.ノaponんみのFc摂取速度及ぴ、摂取できるFeの化学形態     FeーEDTAに よる摂 取速 度は、 ミカ ェリスメンテンの酵素反 応 式 モデ ル を 示 し た 。 こ のこ ど か らFe−EDTAに よ るFe摂取 に おぃ ては、 他の 栄養索 ど同 様の挙 動を 示し、生物側の要求によ り支 配され ていた。鉄要求量どして最大摂取速度(Vー)並びに 半飽和定数(Kヨ)を求めた結果、各々8.2pmolーFe/cm2 hr.O.I pMど なっ た 。 し か し 、 最 大摂 取 速 度 は 採 取 した 時 期に よっ て 異な る値を どっ たこど から 、同海 域で 生育した藻体においても Feの要求は、季節″、Jに変動する傾向があるど推測された。また、

Fe摂 取速度 は、 光量、 藻体 の部位 によ って、火きく影響を受け た 。EDTA以 外 の キ レ ー トFeに おf寸 るFe摂 取 速 度 の 結 果か ら 藻 体 は、 FeーEDTA自 身を 摂取し てい るので はな く、キ レー ト ど 遊 離し て い るFeイ オ ン を摂 取 し て お っ 、 キレ ー ト荊 はFeを イオ ンどし て保 持する 働き をして いる だけであるこどが明かど な っ た 。 一 方 、am Feに よ る 摂 取 速 度 は 極 め て 低 く 、Fe― EDTAのVー の5%以 下 の 埴 を 示 し 、 藻 体に 摂 取 さ れ たFe量は 極 徽 量 であ り 、Fe摂 取 が 制 限さ れ て い た 。amFeを 摂 取さ せた 場 合、 藻体に 摂取されたFe量は、amFcど平衡にあったFe(OH)2゛ ど溶 解して くるFe量の 合計 量ど良 い相 関を示した。即ち、天然 海 水 中 に お ぃ て は 、 粒 状Fe( 固 相 ) ど 平 衡 に 存 在 す るFe

(OH)2゛ど、この摂取によって生じる平衡のずれによって、固椙 から溶解してくるFeイオンを摂取してL、るこどが明かどなった。

しかし、Fe(OH)2゛は微量しか存在出来ず、固相からの溶解速度 が極 めて遅 いこ どから 天然 海水中 で生 育する海藻はFeが不足す る傾 向にあ るこどが明かどなった。また、 amFeの形態中には、

孔 径0.025pmの フ ア ル タ ー を 通 過 し 得る 超 微 細 有 機Feコロ イ ドの 存が確 認さ れたが 、こ の形態 も直 接生体内には摂取されな いこどが判明した。

    ―841―

(5)

3.海 藻 の 化 学 的 増 殖 法 の 試 作 ― ― ― 鉄 増 殖 礁 の 沈 設   海域に沈設した鉄増殖礁からFe(II)が溶出し、潮流により 拡散し付近のFe(II)の濃度を高めていた。鉄増殖礁によって 人為的にFeイオンを絶えず天然海水中に供給するこどが可能に なった。その効果どして、鉄増殖礁にコンブを初めどする海藻 の群落形成が確認され、鉄増殖熊の藻体は天然ど比ぺFe摂取速 度 が 低 く 、 ま た 、 藻 体If| のFe含 有 壁 は 必 霞 ,t. 分 量

(Subsistence)以上の値を示したのに対し、口本海沿岸のごく 岸辺に生育している天然のそれは必要最低量(Critical)に近い 値を示した。光合成色素も鉄増殖礁.コンブが有意に高かった。

842

(6)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

大型褐藻マコンブくLarn むnar むQ 丿apon むca Aresc ん〇ひぎ)の 生 長、増殖 に及ぼす鉄の効果に関する研究

  沿 岸 域 の 生 物 生 産 は 、 土 に 海産 の 大 型 藻 類 ( 海 藻 、 海 や) に よ る も の で あ っ 、 生 産 量 は 全 海 洋 の10% で あ る 。 し か し 、 現 在 に 至 る ま で 海 藻 の 生 長 、 増 殖に 関 す る 基 礎 的 研 究 は 少 なく 、 特 に 化 学 的 な ア ブ 口 ー チ は 、 楢物 プ ラ ン ク ト ン ど 比 較 し 極め て 少 な ぃ 。 鉄 は 全 て の 植 物 に 必 須の 元 素 で あ り 、 海 洋 の 楢 物プ ラ ン ク ト ン の 増 殖 を 鉄 が 制 限 し てい る こ ど か ら 、 同 じ 海 産 の光 合 成 植 物 で あ る 海 藻 に ど っ て も 鉄は 不 可 欠 な 元 素 で あ る こ どは 明 らかである。

  本 研 究 で は 海 藻 増 殖 に 関 す る基 礎 研 究 ど し て 、 北 海 道 の沿 岸 海 域 に お ぃ て 主 要 な バ イ オ マ スで あ り 、 か つ 、 有 用 海 藻 の代 表 である大型褐藻マコシブ(ZみmむみrぬノZp口カノロみAreschou惡)に つ い て 、 そ の 生 長 増 殖 に 及 ば す鉄 の 果 た す 役 割 及 び そ の 増殖 法 に関する研究を行い、以下の研究成果を得た。

1)Z・ japon]ビ ぷ の 配 偶 体 の成 熟 、 受 精 に 関 し て 鉄 は制 限元 素 は 極 め て 遅 く 、Fe−EDTAのVエ の5%以 下 の 幀 を 示 し 、 藻 体 に     ー843―

彦昭 譲 敏男 勝義    弘静 永田 藤本 皆 松米 斎 山角 授授 授授 授 教教 教教 教 査査 査査 査 主副 副副 副

(7)

摂取さ れたFe量は 極微 量であ り、Feの摂 取が 制限さ れていた・

amFeを 摂 取 さ せ た 場合 、 藻 体 に 摂 取 され たFe量 は 、amFeど平 衡にあ ったFe(OH)2゛ど溶解してくるFe量の合計量ど良い相関 を示し た。 即ち、 天然 海水中 にお いては 、粒 状Fe( 岡相)ど平 衡に存在するFe(OH)2゛ど、この摂取によって生じる平衡のずれ によって、|闘桐から溶鮮してくるFeイオンを摂取しているこど が明かどなった。しかし、Fe(OH)2゛は微量Lか存在出来ず、固 相から の溶 解速度 が櫛めて遅いこどから天然海水l←で生育する 海藻 はFeが 不 足 す る傾 向 に あ る こ ど が明 か ど な っ た 。 ま た、

amFeの 形 態 巾 に は 、孔 径0.025冖mの フィ ル タ ー を 通 過 し 得る 超微細 有巖Feコ冂 イド の存在 が確 認され たが 、この 形態も直接 生体内には摂取されなぃこどが判明した。

3) 海 藻 の化 学 的 増 殖 法 の 試作ど して 鉄増殖 臙を 海洋に 沈殻 し た。その結采、海域に沈殻Lた鉄増殖礁からFc(II)が溶fl||し、

潮流 に よ り 拡 散L付 近 のFc(II) の濃 度を高 めて いた。 鉄増 殖 熊によ って 人為的 にFeイオンを絶えず天然海水rllに供給するこ どが可 能に なった 。そ の効采 どし て、鉄 増殖 礁にコ ンブを初め どする 海藻 の群藩 形成 が確認 され 、鉄増 殖礁 の藻体 は天然ど比 ぺFe摂 取 速 度 が 低 く、 ま た 、 藻 体 中 のFe含 有 量 は 必 嚢 十 分量

(Subsistence) 以上の範を示したのに対し、ロ本海沿岸のごく 岸辺に生育している天然のそれは必要最低量(C ritical)に近い 航を示 した 。光合 成色 素も鉄 増殖 礁コン ブが 有意に 高かった。

    以上を受約するど、大型褐藻マコンブの生長、増殖に鉄が不 可欠な 元素 である り、 生体内 に直 接摂取 でき る鉄の 形態はFeイ オンで あり 、生長 速度 駈びに 光合 成色素 の生 合成は このイオン どして働き、培地|1|のFeイオン濃度に虞熟率は依存し増加した のに対し、無鉄培地巾の配f禺体は栄養増殖をするのみであった.

異 性 配 偶 体 世 代 (n) か ら 胞 子 体 (2n) に 発 達 す る 段 階 にお     ー844―

(8)

い て 、Feは 不 可欠 で ある こ どが 明か ど なっ た 。更 に 胞子 体 期

( 芽 胞体以上 のステージ) おけるFeは生長速 度、並びに光 合成 色 素 の 生 合 成 を 支 配 す ‐ る 要 因 で あ っ た 。 従 っ て 、鉄 はZ. /幺p口口ノピと生活史の各ステージにおける発達を制限する必須元素 で あ るこどを 明らかにした 。また、全ス テージにおい て粒状態 Fe( 無 定 形 水 和 酸 化 鉄 :amFe) は 溶 存 態FeーEDTAど 比 較 し て 、 生長等に 果たす鉄の効 果が低いこど から、細胞内 に直接摂 取 で きる形態 はFeイオンであ り、この供給量 の差其が各ス テー ジの発達を制限するど推測された。

  2)Fe―EDTAに よ る 摂 取 速 度 ど 基 質 濃 度 は 、 ミ カ エ リス メ ン テ ン の 酵 素 反 応式 モ デル を示 し た。 こ のこ ど からFo−EDTA に よ るFe摂取に おぃては、他 の栄養素ど同様 の挙動を示し 、生 物 側 の要求に より支配され ていた。鉄要 求量どして最 大摂取速 度(Vー)並びに半飽和定数(Kヨ)を求めた結果、各々8.2pmol― Fe/cm2hr.0.IpMどな っ た。 しか し 、最 大摂取速度は採 取し た 時 期によっ て25%程度異な る値をどったこ どから、同海 域で 生 育 した藻体 においてもFeの 要求は、季節的 に変動する傾 向が あ る ど推測さ れた。また、Fe摂取速度は、光 量、藻体の部 位に よ っ て 、 大 き く 影 響 を 受Hた 。EDTA以 外 の キ レ ー トFeに お け るFe摂 取 速 度の 結 果か ら 藻体 は、Fe−EDTA自 身を 摂 取し て い る のではな く、キレート ど遊離してい るFeイオンを摂取 して お り、キレート斉呵はFeをイオンどして保持する働きをしている だ け で あ る こ ど が明 か どな った 。 一方 、amFeに よ る摂 取 速度 の 供 給量に依 存するこどを 明らかにした 。天然の海水 巾におい て、藻類が摂取できる鉄の化学形態はFe(0H)2゛であるが、この 量 は 極めて微 量であっ鉄は 不足する傾向 にあるこどを 示した。

ま た 、鉄製の 増殖礁を沿岸 海域に沈設す るこどによっ て、人為 的 に 海水中にFeイオンを供給 するこどができ 、鉄から見て 、生     ―845−

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産 性 の 高 い 海 域 を 形 成 す る こ ど が 可 能 ど な っ た 。   本研究は、海藻の生長、増殖に果たす鉄の役割及び、藻類が     ,  ′

摂取できる鉄の化学形態を解明し、海洋の生物化学的知見を与 えた。更に海藻の化学的増殖法の確立に寄与するどころが大き く、よって博士(水産学)の学位を受けるにふさわしいものど 審査貝一同は認めた。

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