• 検索結果がありません。

第一節 総合的理論による地域的特色の捉え方

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第一節 総合的理論による地域的特色の捉え方"

Copied!
98
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第二部 社会認識形成のための地理教育内容開発

一74一

(2)

第三章 理論を中核にした地誌学習の内容設計論

 r理論を中核にした地誌学習論」とは,どのように内容設計するものなのだろうか。本 章では,まず,総合的理論による地域的特色の捉え方について,学習過程まで含んで論じ る。次に,中核となる総合的理論について,社会認識形成の視点から類型化し,理論を中 核にした地誌学習の類型化を図る。これによって,理論を中核にした地誌学習同士の社会 認識形成を視点とした相克を明らかにすることができ,さらにより教育的意味,意義のあ

る理論を中核にした地誌学習を明らかにすることができるであろう。

第一節 総合的理論による地域的特色の捉え方

一 総合的理論と地域的特色

 r理論を中核にした地誌学習論」では,地域の社会構造を説明する理論を中核とする。

その理論は,総合的理論である。総合的理論は,特定の地域に限定されない世界システム 論や工業立地論といった,普遍的・類型的な理論のことではない。ある特定の地域(社会)

を説明するために構造化された中範囲の理論のことである1〕。

 この地誌学習論では,地域的特色とは,授業者が行った解釈である。その解釈とは,授 業者が,地域にみられる類似性や規貝11性を説明しようとしたものである。そしてその解釈 を構造化し,社会構造として表したものが総合的理論である。すなわち,地域的特色とは,

地域を解釈したもの=地域の社会現象の類似性や傾向性=地域の社会構造:総合的理論で ある。もう少し具体的にいうと,それは,地域にみられる人と人との関係や社会集団との 関わりにおける,その地域特有の政治体制,経済メカニズム,社会規範といった政治現象,

経済現象,社会現象などの類似性や規貝■」性を,政治学,経済学,社会学や文化人類学など 社会諸科学の成果(諸法具■」)に基づいて分析し,構造化したものである。この社会諸科学 の成果に基づいて構造化した総合的理論を地誌学習の地域的特色とするのである。

(3)

二 総合的理論と地域との関係

それでは,地域的特色とされる総合的理論と,地域との関係はどのようになるのであろ

うか。

理論と地域との関係を表したものが,図7である。

、め一..

㌧臥、/∵、

3     \・    1

     ノ      、

.j...

A:理論A     X:理論Aにより包摂される対象地域X B:理論B     Y:理論Bにより包摂される対象地域Y

a1〜a3:理論Aによって事例として取り上げられる個別の地域 b1〜b3:理論Bによって事例として取り上げられる個別の地域

(ただし,b1は,理論Aとの間の吟味・検証過程において,反証事例となる。)

①〜⑦:学習過程の順序

図7 総合的理論と地域との関係

(筆者作成)

 図7にみられるように,r理論を中核にした地誌学習論」では,総合的理論によって包 摂される範囲が,授業における対象地域となる。そして,総合的理論を説明する上で典型 的とされる,その対象地域よりも小さい個別地域が,事例地域として取り上げられる。

 このように,地域を説明する理論(総合的理論)を中核にすえ,対象地域と事例地域を 位置づけると,「地域的特色」とされる「一般的共通性」と「地方的特殊性」が明確にな

る。つまり,理論を中核にすれば,その包摂範囲内においては事例地域は一般性をもち,

包摂範囲外に対しては,特殊性を示すことができる。さらに,包摂範囲内においてもその 一般性に対する部分的な微差が,個別事例地域の特殊性として示されることとなる。図7

一76一

(4)

を使って具体的に説明すると,Aという理論が包摂する範囲が対象地域Xで,理論Bが包 摂する範囲が対象地域Yである。対象地域X内にある個別の地域a1,a2,a3は理論A で包摂され,理論Aに対してある一定の共通性をもつ地域とされる。しかし,個別の地域

b1は理論Aの包摂範囲の外にあり,理論Aが包摂する地域Xとは異質な地域,すなわち 特殊な地域とされる。さらに,a1,a2,a3における共通性の中にもわずかな微差がみ

られる場合,それは個別事例地域間の特殊性として示されるのである。

 このように,内容設計において理論を中核にすると,地域的特色は,理論として,学習 者の前に明確に位置付けられ,例示されることになる。そうすると,授業者の解釈である 理論(総合的理論)を,学習者が批判・吟味することが可能となる。そして,授業者の解 釈の主観性をできるだけ排除した,学習者への注入を行わない「間主観的・科学的」な地 誌学習にすることができるのである。

三 理論の批判・吟味による学習過程

 このように,地誌学習において理論を中核に位置づければ,地域的特色が理論として明 確になり,理論(地域的特色)が批判・吟味可能な形で学習者の前に提示されることにな

る。その理論の批判・吟味の過程が,理論を中核にした地誌学習の学習過程となる。

 理論を中核にした地誌学習の学習過程は,r<1〉仮説の形成・検証→<2〉仮説の応用・検 証→<3〉反証事例と新たな仮説の形成・検証」という学習過程をとる。すなわち,〈1〉→〈2

〉の過程で地域の「一般的共通性」としての「地域的特色」を,<2〉→〈3〉の過程で地域の r地方的特殊性」としてのr地域的特色」を,より科学的に認識することができる。図7 を使って具体的に説明すると,図中の点線の矢印に示されている番号が,学習過程となる。

まず,事例として個別地域a1において,a1という地域を説明する理論Aを形成・検証す る。次に,その理論Aを,他の個別地域a2に応用させ,同じことがいえるかどうか検証 する。さらに他の地域a3へと応用,検証を繰り返し,理論Aの説明力の大きさを検証す る。さらに,個別地域b1へ応用させると,理論Aでは,うまく説明できない反証事例が あらわれる。これによって,理論Aが適応するa1,a2,a3を取り囲む範囲においては,

ある一定の共通性がみられ,その包摂範囲を越えたb1との間において,特殊性が認識さ れることとなる。さらに,個別地域b1を説明する理論を求める場合,b1から理論Bを形 成・検証し,後は,同じような順をふむ。この場合,この理論Aと理論Bは,図7のよう

(5)

に,幾分重なる場合もあるかもしれないし,まったく重ならないこともあろう。

 以上のように,社会諸科学の成果に基づいた地域を説明する理論(総合的理論)を中核 的な内容とし,その理論の批判・吟味の過程を学習過程とするならば,開かれた科学的な 社会認識形成を行うことができるのである。

四 総合的理論と対象地域の設定

 いくら立派な総合的理論があっても,授業として具体的に探求可能な対象地域が設定さ れなければ,それは画に描いた餌となろう。理論を中核にした地誌学習では,どのような 視点から,対象地域を設定すればよいだろうか。

 今日,一般的な地誌学習では,形式地域によって単元設定されている。しかし,人や物,

情報が飛び交う現代において,形式地域と実体が一致していないことはよく見られる。先 に述べたように,理論を中核にした地誌学習では,総合的理論によって包摂される範囲が,

授業における対象地域となる。そして,総合的理論を説明する上で典型的とされる,その 対象地域よりも小さい個別地域が,事例地域として取り上げられる。もちろん,対象地域 がそのまま個別地域になることもあるだろう。単元設定は,便宜上,形式地域を対象とし,

名称も用いるが,内容設計においては,より現実の世界(社会)に即して,総合的理論によ って包摂された範囲を境界とし,より柔軟に対応する。それらは形式地域の一部を切り取 ったものになる場合もあるかもしれないし,部分,部分が飛び飛びになっている場合もあ るかもしれない。理論を中核にした地誌学習では,(形式的な)地域(対象)に従属させ るのではなく,学習内容となる理論とそれを探求する学習者に従属させる形で,対象地域 を設定する。

 対象地域設定の視点として,次の四点が挙げられる。

①社会諸科学による多くの研究成果の報告・蓄積がされている。

②総合的理論を説明するための典型的な事例がみられる。

③学習者にとって知的好奇心を喚起する可能性が高い。

④学習することによっての自分の社会の現状や抱えている問題を理解できる可能性が  高い。

一78一

(6)

 ①は,中核となる総合的理論を設定するための対象地域を捉える理論的枠組みとなる研 究報告の蓄積があるか,という視点である。

 ②は,①によって設定していく総合的理論を説明するための典型的な事例となる地域,

あるいは事象があるか,という視点である。

 ③は,学習者の学習意欲についての視点である。

 ④は,学習の意味,意義についての視点である。

 ここでは,以上,一般的な視点に留め,具体的な内容については,後の教育内容開発の 実際の中で示していく。

第二節 理論を中核にした地誌学習の類型

一 総合的理論の二つの類型

 それでは,このある地域にみられる類似性や規則性を社会構造として説明する総合的理 論とは,いったいどのようなものがあるのだろうか。

 地域を説明する総合的理論には,大きく分けて二つの類型がある。一つは「帰納的解釈 に基づく総合的理論」であり,もう一つは「演繹的解釈に基づく総合的理論」である。前 者は,ある対象地域の中の一群の個別地域にみられる政治現象,経済現象,社会現象など の類似性を読み取り,帰納的に構造化し,総合的理論としたものである(図8)。後者は,

社会諸科学の成果である普遍的理論,類型的理論などの分析的理論を使って,地域の政治 現象,経済現象,社会現象などを演繹的に分析,解釈し,地域を説明する総合的理論に再 構成したものである(図9)。

(7)

分析的理論

(社会諸科学)

☆ △ ◎

(不明確)

中範囲の理論 帰納的解釈に基づく総合的理論

(研究者・授業者による構造化)

      l1

片 の総合  論

、馬.

個別地域 対象地域

図8 帰納的解釈に基づく総合的理論

(筆者作成)

分析的理論

(社会諸科学)

△  口

中範囲の理論 演繹的解釈に基づく総合的理論

(研究者・授業者による再構成)

十  口

             !   、        !     、            ,

       検言 、        ・  証・

              !

       . リ、 シシ}多, !       一       ^、、、㌧、{}〉

…lllllllll11擦111懸11111111妻111111111111111欝灘11

      対象地域          一、 w洲洲洲シI・ ・〃〃・       個別地域

図9 演繹的解釈に基づく総合的理論

(筆者作成)

一80一

(8)

 これらの総合的理論は,中範囲の理論を採用しているところに共通性を持つ。しかし両 者の違いは,前者の方がより現実の地域の事象から形成されるという帰納的な性格が強く,

後者の方が社会諸科学の諸理論の消費がより明確で演繹的な性格が強いことである。その ため,後者の方が,地域を越えてより大きな説明力を持つ可能性がある。その意味で,科 学的知識の成長を考慮すると,年間計画では後者の方を前者の後に配置することが望まし いと言えよう。これらの点については,理論を中核とした地誌学習の類型で明らかになろ

う。

 それでは次に,これら二つの総合的理論の具体的事例をみてみよう。

 1 帰納的解釈に基づく総合的理論の実際

 帰納的解釈に基づく総合的理論の事例には,森分孝治・大舘和代・喜多由美・喜多嶋神 幸・寺井聡・樋口雅夫・村木栄登「社会科地理授業構成一生活大国北欧諸国(スウェーデ ン)一」の中で示された単元「生活大国北欧諸国(スウェーデン)」がある2〕。この教授 計画書(教授書)の到達目標は,次のように示されている(表6)。

表6 単元r生活大国北欧諸国(スウェーデン)」の到達目標

【到達目標】

 生活大国の成立過程を,北欧(スウェーデン)を例に説明できる。

A スウェーデンでは,工業発達によって,「生活大国」実現のための財政的基盤が築かれた。

 ア スウェーデンは,厳しい自然条件に加え,社会的環境が変化したために,農業に依存していく   のは困難だった。

  a スウェーデンでは,厳しい自然条件に農業が規制されていた。

  b 19世紀後半にはスウェーデンでは,人口過剰により慢性的な食糧不足が生じた。

  C スウェーデンにおける農村の崩壊は,貧窮農民の浮浪化や移民による国外流失という現象を    引き起こした。

  d スウェーデンにおける農村の崩壊は,余乗I」労働力としての貧窮農民を都市の安価な工業労働    カとして壬井出した。

 イ スウェーデンは,20世紀初頭,急速に工業化がすすめられた。

  a 18世紀中頃イギリスにはじまる産業革命の影響が,19世紀後半スウェーデンにも及んだ。

  b 20世紀初頭のスウェーデンには,工業化のための要件がそろっていた。

  C 豊富な資源と国外需要の増大は,工業化の促進に有利に働いた。

B スウェーデンは,工業発展によってえられた経済的豊かさを,中立政策によって維持・発展させ  ることができた。

 ア スウェーデンはナポレオン戦争終結以来,武装中立主義をとっており, 小国中立 外交に努   めた。

 イ スウェーデンは,武装中立政策によって戦争を回避することができた一方で,交戦国との通商

(9)

  を保つことができ,それによって輸出産業を成長させ,経済的利益を得ることができた。

  a 第一次・第二次大戦は戦勝国・敗戦国のいずれも疲弊し,被害も甚大であったが,スウェー    デンは中立主義を貫徹したために,自国の安全を確保することができた。

  b スウェーデンは中立政策をとる二とにより,輸出産業を成長させ,経済的発展を遂げた。

C スウェーデンでは,国民の意見を代表する社会民主党が全国民を対象とする社会福祉政策を実施  し,自由と平等の原則のもとに国民生活の向上を目指してきた。

 ア スウェーデンでは,社会民主党主導のもとに全国民を対象とした社会福祉政策をとることによ   って,国民生活の充実が目指された。

  a スウェーデンの経済成長はとくに国民間の生活水準の格差を生み出したために,スウェーデ    ン政府は社会的弱者のための政策をとった。

  b スウェーデン政府は,生活水準の格差が無くなった今日において,国民一人一人の生活を豊    かにするために,全国民を対象とした政策をとった。

  C 社会民主党は社会福祉政策を実施し,国民の支持を得て政権を維持してきた。

 イ スウェーデンでは,国民の政治意識が高く,選挙をはじめとして民意を反映しやすい社会体制   が確立され国民生活の向上が目指された。

  a スウェーデンでは,国民主体の選挙制度がとられており,民意を反映するしくみとなってい

   る。

  b スウェーデンでは,政策決定の場で国民が自由に意見を表明する制度が整っている。

 ウ スウェーデン社会は.生産配分の決定権を公民が持ち,国民があらゆる権力クループに束縛さ   れず,自由と平等のもとで協力する入間の共同社会である。

D スウェーデン同様,北欧の国々は,各国の状況に合わせた傾斜生産を行い工業化を推進して財政  的基盤を築き,社会福祉政策をとることにより,その利益を平等に配分し,生活大国となった。

 ア ノルウェーは,中立政策の変更を余儀なくされ,戦後復興に手間取りながらも工業化をすすめ,

  加工貿易を発展させて財政的基盤を築き,その利益を福祉政策により国民に再分配し,生活大国   となった。

 イ デンマークは,中立政策の変更を余儀なくされ,戦後復興に手間取りながらも農業機械・畜産   品加工を原動力として工業化をすすめ,財政的基盤を築き,その利益を福祉政策により国民に再   分配し,生活大国となった。

E スウェーデンの生活大国は,(1)産業の発展によって経済的基盤を構築し,(2)中立政策を採  択することにより,戦争を回避しづつ,国家財政の確保・維持発展を図り,(3)政府主導のもと  に全国民を対象とする政策をとることにより豊かさを再分配して,実現された。

(森分孝治・大舘和代・喜多由美・喜多嶋神幸・寺井聡・樋口雅夫・村木栄登「社会科地理授業構成一 生活大国北欧諸国(スウェーデン)一」、第42回日本社会科教育学会・第41回全国社会科教育学会合同研 究会(第5分科会)自由研究発表資料,1992年,p.4より筆者作成)

この授業実践(教授書試案)の総合的理論は,表6に集約されている。Eでは,主語に スウェーデンとあるが,Eの(1),(2),(3)は,スウェーデンだけでなく,ノルウ ェー窿fンマークといった他の北欧諸国にもみられる一般化された類似性である。すなわ ちEは,北欧諸国を説明する総合的理論となっている。

具体的にみると,この理論については,普遍的な社会理論の消費はあまり明確ではない。

一82一

(10)

帰納的に事象を積み上げる中に部分的に紛れ込んでしまっている(例えば,A一アーbの 人口過剰は食糧不足を生じさせる,という規則性など)。しかし,スウェーデンを代表と する生活大国の成立過程にみられる事象を積み上げ,スウェーデンだけでなく,他の北欧 諸国にもみられる類似したEの(1),(2),(3)を見出し,構造化し,生活大国とし ての北欧諸国を説明する総合的理論としている。具体的にはまず,到達目標のA一アーa,

b,c…というように,スウェーデンの生活大国への成立過程の事象が,細かく述べられ ている。そしてその細かな事象は,スウェーデンの生活大国の成立過程を説明するA,B,

Cへと構造化され,一般化が進められている。そしてA,B,Cの構造は,ノルウェー,

デンマークにおいてもD一ア,D一イと同じように,対応されている。そして最終的にE の(1),(2),(3)と集約され,スウェーデンだけでなく他の北欧諸国にも説明可能 な総合的理論となっている。

 このように,帰納的解釈に基づく総合的理論では,社会諸科学の成果(分析的理論)の 消費はあまり明確ではない。すなわち,「説明的スケッチ」となっている。対象地域への 関心(ここでは「なぜ,北欧諸国は生活大国になれたのか」)に基づいて,事象を集める。

そしてそこから類似性を見出し,帰納的に構造化して一般性を高める。こうして理論化さ れたものが,帰納的解釈に基づく地域を説明する総合的理論である。

 2 演繹的解釈に基づく総合的理論の実際

 演繹的解釈に基づく総合的理論の事例には,森分孝治・木村博一・棚橋健治「社会科学 的概念学習の授業構成(lV)一「東南アジア」の教授書試案一」に示された,単元「東南 アジア」がある:』〕。この授業実践(教授書試案)の到達目標は,次の表7のように示され ている(表7)。

(11)

表7 単元「東南アジア」の到達目標

【到達目標】

(1)東南アジア諸国の社会構造モデル

多国籍企業

(先進国)

東南アジア諸国 受益者層

大地主

一       I

″痩ニエリート1 公社 資本家

熟 練

貧困層 労働者

零細自作農

小作農 労働者

農業労働者

失業者 失業者

農村 都市

(2)概念的知識

1)東南アジア諸国では,現在,著しい経済成長をとげているにもかかわらず,富の大部分を先進   国に吸い上げあれ,各国内における貧富の差は拡大し,固定化している。

 1)一1経済成長政策は,経済全体のスケール拡大を図っているだけで,国民全体の利害調整を図     っていない。

 1)一2経済成長の手段としてとられた外資導入による工業化は,逆に,外国企業への依存を増す     結果となっている。

 1)一3慢性的な就労機会不足は,労働者の立場を弱め,低賃金労働を生み出している。

 1)一4就労機会増加のために東南アジア諸国は外国企業の誘致に努め,一方,外国企業は賃金,

    地代の安いこれらの国々へ次々と進出している。

 1)一5外国企業の進出は,その利益の多くを本国へ持ち出すために,東南アジア諸国の利益はあ     まり多くない。

 1)一6東南アジア諸国に残された利益は,その大部分を,外国企業と結びついた大地主・資本家     が占め,国内の貧富の差は拡大する。

 1)一7国家自体が公社・軍などを通して資本家の立場に立っており,国家の中枢に位置するもの     が受益者層を形成している。

2)東南アジア各国内における貧富の差の拡大は,横断的な階層分化を生み出し,社会矛盾の拡大   をもたらしている。

 2)一1人口の圧倒的多数を抱える農村では,多額の賃金を必要とする農業近代化の推進により,

    大地主への土地・富の集中が進んでいる。

 2)一2大地主への土地・富の集中により,農村では階層分化と貧富が顕著となり,大量の失業を     生み出している。

一84一

(12)

 2)一3農村で発生した失業者群は,職を求めて都市へ流入している。

 2)一4都市に進出している工場は資本集約的なものが多く,就労機会の増加はあまりなく,また,

   従来からの失業者も多数いるので,流入者は大量の貧困層として都市にスラムを形成して    いる。

3)東南アジアにおいて,経済成長政策によって新たな受益者層となった権力者たちは,自己の権  益を守るために,政治安定の名の下に権威主義支配体制を強めている。

 3)一1経済の不均等発展が不断に生み出す社会矛盾の拡大は,社会不安を生み出し,民衆の不満    を呼び起こしている。

 3)一2民衆の不満表明を押さえるために,政府は,選挙,政党活動,新聞などに干渉を加え.合    法的な民意表明の場を奪おうとしている。

 3)一3合法的な主張の場を奪われた民衆は,しばしば暴動等の非合法的手段に訴える。

 3)一4体制維持のために権力者は治安維持機構の拡大に努め,小さな不満・抵抗まで弾圧するの    で,下方硬直を起こし,政治的な閉塞状態に陥っている。

 3)一5体制が力と力の対決で支えられているため.多くの場合,軍と結びついているものが権力    を握っている。

 3)一6権力者の力の背景としての位置を得た軍は,政界・経済界に進出する機会に恵まれ,国家    の運営に大きな発言力をもっている。

 3)一7東南アジア諸国における軍事化は,内発性を具えているため,一種の無窮運動化している。

(森分孝治・木村博一・棚橋健治「社会科学的概念学習の授業構成(lV)一「東南アジア」の教授書 試案一」,『広島大学教育学部学部附属共同研究体制研究紀要』,第12号,1984年,pp.33−34より筆者作成)

この授業実践(教授書試案)の総合的理論は,表7の「東南アジア諸国の社会構造モデ ル」に集約されている。この社会構造モデルは,インドネシアやフィリピンといった個別 の単位ではなく,さまざまな東南アジア諸国において説明・予測可能な…般的規則性であ る。すなわち,この社会構造モデルは,東南アジア諸国を説明する総合的理論である。

 具体的にみると,この理論については,社会諸科学の分析的理論(普遍的理論)の消費 が明確である。すなわち,r従属理論」という分析的理論が消費されている。それは,社 会構造モデル中の縦の矢印によくあらわれている。この矢印で,「多国籍企業(先進国)」,

東南アジア諸国内の「受益者層」,「貧困層」を縦に結ぶことによって,先進国と発展途 上国との従属関係(搾取と非搾取の関係)と,発展途上国内における受益者層と貧困層と の従属関係を表している。もちろんそれは,「(2)概念的知識」1),2)の中に構造化さ れて示されている。そしてさらにその従属関係の硬直化を説明する東南アジア諸国にみら れる社会・政治現象を,「(2)概念的知識」の3)として構造化して示している。すなわ ち,この授業実践の総合的理論は,「従属理論」という分析的理論を消費して,東南アジ ア諸国を説明する理論に演繹的に再構成したものなのである。

(13)

 このように,演繹的解釈に基づく総合的理論では,社会諸科学の消費が明確である。社 会諸科学の成果である分析的理論(ここでは「従属理論」)を対象地域に投げかけ,その 対象地域に合わせて再構成し,構造化する。こうして理論化されたものが,演繹的解釈に 基づく地域を説明する総合的理論である。

二 社会認識形成と総合的理論

 それでは,r帰納的解釈に基づく総合的理論」とr演繹的解釈に基づく総合的理論」は,

社会認識形成において,どちらが,どのくらい,どのように寄与すると言うのだろうか。

 「帰納的解釈に基づく総合的理論」は,地域にみられる事象の類似性から構造化を図り,

総合的理論とする。そこでは,理論と事象(事例)が未分化な状態で,すなわち説明的スケ ッチの状態で類似性から構造化を図り,総合的理論とする。一方,「演繹的解釈に基づく 総合的理論」は,社会諸科学の分析的理論を消費して,地域にみられる事象を分析し,再 構成し,総合的理論とする。消費される分析的理論は普遍的理論である場合もあれば,類 型的理論である場合もある。しかしこのことは,r演繹的解釈に基づく総合的理論」を中 核とした地誌学習が,より「総合社会科学研究」として,「社会認識形成を視点とした中 等地理授業の類型」(第一章第二節,表2)における「社会諸科学普遍的理論探求型」,「社 会諸科学類型的理論探求型」を指向していることを示している。つまり,「演繹的解釈に 基づく総合的理論」を中核にした地誌学習は,基本的には「社会諸科学総合的理論探求型」

に位置付くものではあるが,総合的理論を探求させる過程で分析的理論の探求を必要とし,

間接的に普遍的理論や類型的理論を習得させ,対象の地域を越えてより広く,より深く,

科学的に社会認識形成を行う地誌学習であることを示している。

 そうすると,縦軸に科学的知識をとり,横軸に総合的理論の探求・形成過程として「帰 納的解釈」,「演繹的解釈」をとった場合,社会認識形成における総合的理論の序列化を 表すことができる。

 その結果を表したものが,図10である。科学的知識を照らすことによって,総合的理論 は次の四つに類型化することができる。

①社会的事象の構造化による総合的理論

②中範囲の理論に基づく総合的理論

一86一

(14)

窓合的理論の探求

・形成過程 帰納的解釈 演繹的解釈

科学的知識

.   一   一   一   一   一   一   一   一   一   一   一   一

?      ■

普遍的 理論 分析的

一  一  ■  一  一  ■  ■   ■  一       一            一       一   一   一   一              一   一               一   一

? 一  一  一  一  一  一  一  一  一  .  一  ・

。       ■

理論

類型的 =類型的理論の 1

理論

一   一   一   一   一 一   一   一   ■   一   一

1

社会的事象の構造 中範囲の理論に基 類型的理論に基づ 普遍的理論に基づ 総合的理論 化による総合的理 づく総合的理論 ■       1

<総合的理論 く総合的理論

・      1

│       1

一  ■  一  ■  一  ■  ■  ■  ・  ■  ■  一  ■

一   ■   一   一   一       ■   ■   一   一   ■   一

P      1 I      一

事実的知識 .       1

A   ■

=事象の類似性

一1   一   一   一   一   一   一   一   一   一   一   一   ・

図10 総合的理論の類型と探求・形成過程

(筆者作成)

③類型的理論に基づく総合的理論

④普遍的理論に基づく総合的理論

 しかし,現実の教育内容開発においては,すべてこれらのように純粋な総合的理論とな るとはかぎらないだろう。対象地域における社会諸科学の成果によって,あるいは総合的 理論を説明するための典型事例の有無などによって,これらは重なったり,退けられたり するであろう。また,社会諸科学の成果として,すでに地域の社会を説明する中範囲の理 論が報告,蓄積がなされているものもあろう。その場合は,その中範囲の理論を消費して 総合的理論とすることとなろう(②中範囲の理論に基づく総合的理論)。

 以上のような総合的理論の類型化によって,理論を中核とした地誌学習は,次のように 類型化することができる。

① 社会的事象の構造化による総合的理論を中核とした地誌学習

② 中範囲の理論に基づく総合的理論を中核とした地誌学習

③ 類型的理論に基づく総合的理論を中核とした地誌学習

④ 普遍的理論に基づく総合的理論を中核とした地誌学習

(15)

 以上のような類型化により,科学的な社会認識形成を行う理論を中核とした地誌学習は,

① から④ に向けて,その社会認識形成をより広く,より体系的に社会的事象を説明す ることを可能とする,すなわち,より教育的意味や意義の高い地誌学習となると言える。

[言圭コ

1)中範囲の理論は,アメリカの社会学者R・K・マートン(主著は,森東吾・森好夫他訳『社会構造と 社会理論』みすず書房,1961年)によるものである。尚,中範囲の理論については,主に以下のものを 参考にした。

 ・現代社会学編集委員会編『現代社会学一R・K・マートンの社会学』,第24号,アカデミー出版会,

  1987年

 ・稲上毅「マートン・パラダイムと中範囲の理論」,北川隆吉・宮島喬編『20世紀社会学理論の検証』

  有信堂,1996年,pp.41−67

  特に,稲上の示した図は,中範囲の理論の帰納と演緯の関係をよく示しているので,それを下に記  しておく。

アフロ・…・チの多様性  F社会研究法」

       ●       ・・一→

箒回ム1舳

④縦験的・一般化

   /韻碇    鋭察

解析

潰 独

輝象 年

明 煽

 納

性、 ⑤中節餓の理論

    上驚

鰹。

 1r一一一一一一一一一一一一一一一1

L』⑥一蝸総  ;

  l      l

  L一一一 一I■一   一■一一一一一」

上ウ 目 〔=::コ [=二二コ [:==コ

趨社金学的一般現識

図  理論と調査の互酬性  (稲上p.54)

  また,世界史の授業構成において中範囲の理論を積極的に取り入れたものとして,以下を参照。

 ・原田智仁『世界史教育内容開発研究一理論批判学習一』風間書房,2000年  ・児玉康弘『中等歴史教育内容開発研究一開かれた解釈学習一』風間書房,2005年  ・梅津正美『中等歴史教育内容改革研究一社会史教授の論理と展開一』風間書房,2006年

2)森分孝治・大舘和代・喜多由美・喜多嶋神幸・寺井聡・樋口雅夫・村木栄登「社会科地理授業構成 一生活大国北欧諸国(スウェーデン)一」、第42回日本社会科教育学会・第41回全国社会科教育学会合 同研究会(第5分科会)自由研究発表資料,1992年

3)森分孝治・木村博一・棚橋健治「社会科学的概念学習の授業構成(lV)一「東南アジア」の教授書 試案一」,『広島大学教育学部学部附属共同研究体制研究紀要』,第12号,1984年,pp.31−47

一88一

(16)

第四章 社会的事象の構造化による総合的理論を中核にした          地誌学習の教育内容開発の実際

 ここでは,これまで述べてきた「理論を中核にした地誌学習」の中から,「社会的事象 の構造化による総合的理論を中核にした地誌学習」の一例として,オーストラリアの教授 計画書とその実践例を提示する。ここに提起するに至るまでの経緯を簡潔に述べておく。

まず,オーストラリア社会についての研究を概観し,今日もっともよく取り扱われている 研究主題,研究課題に着目し,その内容の構造化と事例等の選択を行った。次に,教材等 を整備し,社会的事象の構造化による総合的理論を探求させる教授計画書試案を作成した。

次いで,この試案に基づいて公開研究授業として実験授業を行いリ,また,一部全国学会 で報告を行った2〕。そして,諸氏の批判と助言を踏まえて:ヨ〕,成果と課題を明らかにした。

 ここでは,このような教授計画書の作成及び授業実践の検証過程を経た,r社会的事象 の構造化による総合的理論を中核にした地誌学習」の実際を提示する。

第一節 社会的事象の構造化による総合的理論

一  主題の設定一今日のオーストラリア社会とオーストラリア研究一

 今日のオーストラリア社会の研究として,関根政美(社会学)や葉情璋(人文地理学)

によるオーストラリアの多文化主義を扱った研究がある。また,竹田いさみ(政治学)に よるオーストラリアの移民・難民・援助に関する研究や鈴木清史(比較文化学)によるア ボリジニーに関する研究などがあげられる一〕。

 これらを概観すると,今日のオーストラリア社会研究は,「多文化主義(マルチカルチ ュアリズム)」とそれをめぐる問題が,中心的な課題となっている。その多文化主義のオ ーストラリア社会の概要は,つぎのようになろう。

 人口の少ないオーストラリアでは,労働力不足や国内市場の狭さが慢性的な問題となっ ている。そのため,戦後,大量移民計画をおこなった。しかし,ヨーロッパを中心とした

(17)

白人移民だけでは,期待した以上の人口増加がみられず,東アジアや東南アジアなどの非 白人移民の受け入れを行わざるを得なかった。その結果,現在のオーストラリアは,多様 な民族構成をした国となっている。

 また,産業構造が,石炭や鉄鉱石などの一次産品に偏っているオーストラリアは,輸出 相手となる諸外国の影響を受けやすい。そのため,近年,地理的にも近く,経済成長を遂 げ,輸出割合が急増している東アジアや東南アジア諸国との友好関係を維持することが国 益のためには重要となっている。このようなことから,オーストラリアは,アジアなどか

らの積極的な難民受け入れやA P E Cへの積極的参加を行ったり,国内では多様なマイノ リティの文化を尊重する多文化社会をめざしている。

 しかし,このような社会構造ゆえ,ひとたび諸外国の影響などにより不景気になると,

新移民と競争関係となるブルーカラーや下層ホワイトカラーなどが,新移民に対し,強い 反発を起こし,多文化社会を困難なものにしている。

二  対象地域設定の理由

 このようなオーストラリアを理論を中核にした地誌学習の対象地域として取り上げる理 由は,対象地域設定の視点(第三章第一節四)を踏まえると,次のように説明できる。

 ①オーストラリアの多文化社会とそれをめぐる問題について,地理学,社会学,政治   学,比較文化学など,社会諸科学による多くの研究報告の蓄積がなされている。

 ②①を説明する,オーストラリアにおける日本語教育や中国人移民排斥の問題などと   いった事例となる事象が存在する。

 ③多文化社会をめざして少数派の移民などの文化を尊重しているにもかかわらず,そ   の少数派を排斥しようとする動きが見られる,というオーストラリア社会は,学習者   にとって矛盾する,よくわからないことが起こっている,知的好奇心を喚起させる地   域(社会)であると言える。

 ④多文化政策をとっているオーストラリアではあるが,移民排斥運動や事件が起こつ   ている。それは,オーストラリアは一次産品による貿易に依存しており,諸外国の影   饗を受けやすく経済的に不安定なため,経済的不況の際に経済的利害対立や中流以上   の生活をする移民層に対するねたみや羨望などが人々の間で起こりやすく,そのこと   が移民排斥運動や事件を起こす原因の一つとなっているからである。このようなオー

一90一

(18)

ストラリア社会について学習することは,輸出に依存している日本で実際に生活して いる学習者に,例えば,近年の日系人受け入れなどによる外国人労働者の増加やそれ に起因する問題の発生などといった,政府の政策とその一方で引き起こされる社会問 題を考察させる可能性を開くであろう。またそれは,間接的に,自己と自己の社会を 相対化させることにもつながるであろう。

三 社会的事象の構造化一オーストラリア社会を説明する理論一

 関根政美や竹田いさみの研究をもとにすると引,オーストラリアが多文化社会を目ざし ている原因として,国益の安定確保のための政府の政策であることがわかる。そしてさら には,オーストラリアの人口が少ないこと,産業・貿易構造が一次産品に偏って経済的に 不安定であること,というオーストラリアの社会構造が原因となっていることがわかる。

また,移民受け入れを積極的に行った結果,移民者と非移民者の対立,旧移民と新移民の 対立などが,経済状況の悪化にともなって引き起こされることがわかる。このようなこと

を,構造化すると,以下のようになる。

◎ オーストラリアは多文化社会をめざしている。

○ オーストラリアは,マイノリティの文化を尊重する多文化政策を行っている。

 I オーストラリアは,自国の利益確保のために多文化政策を行っている。

  I−A オーストラリアは,人口が少ないことから人口を増やすために移民を受け入      れを行った。その結果,非白人が増えたため,多文化政策をとっている。

   A−1 オーストラリアは,移民者などのマイノリティの文化を尊重するため,多       文化政策をとっている。

   A−2 オーストラリアは,賃金が高く,アジアなどの国々は賃金が低いため,オ       ーストラリアに移民してきている。

   A−3 オーストラリアは,人口が少ないため,人口を増やして労働力を確保しよ       うとしている。

   A−4 オーストラリアは,人口が少ないため,人口を増やして内需の拡大を図ろ       うとしている。

  I−B オーストラリアは,主要輸出品が一次産品に偏っており輸出国の影響を受け

(19)

    やすいため,難民の受け入れも認め,多文化政策をとり,友好関係を築こうと      している。

   B−1 オーストラリアは,主要輸出品が一次産品に偏っているため,諸外国の影      饗を受けやすい。

   B−2 オーストラリアは,輸出の安定権のため,輸出国との友好関係を築くさま       ざまな方策をとっている

 1I オーストラリアは,社会統合のために,多文化政策を行っている。

○ オーストラリアは,非白人などのマイノリティに対する いじめ (排斥運動・事件)

 が起こっている。

 ㎜ オーストラリアでは,経済的苦境に立たされたとき,新移民に責任転嫁するため,

   いじめ (排斥運動・事件)が起こっている。

  皿一C オーストラリアでは,就職や昇進など競争関係となったり,新移民との比較      による経済的不満から, いじめ が起こっている。

   C−1 新移民と競争関係にあるブルーカラーや下層ホワイトカラーが,就職や昇      進で競争関係となるため, いじめ が起こっている。

   C−2 中流以上の生活を行っている移民者に対するねたみや羨望から いじめ       が起こっている。

  皿一D オーストラリアでは,主要貿易品が一次産品に偏っているため,海外の景気      の影響を受けやすく,不況になると,経済的不満が増すため, いじめ が起      こりやすくなる。

   D−1 オーストラリアでは,1990年代に貿易相手である日本やアジアの国々が不       況となったため,オーストラリアも不況となり, いじめ が顕在化した。

 lV オーストラリアでは,白豪主義に基づいた歴史的な差別観から, いじめ (排斥   運動・事件)が起こっている

以上のような構造化された知識を,図化したものが図11である。

一92一

(20)

U

ヨーロッパは,国民国家モザイク に地域的モザイクの入れ子構造に なっている。

I

ヨーロッパは,国家モザイクに 地域的モザイクの入れ子構造に

なっている.=

A

ヨーロッパは,国家間でも地域 間でも相対的剥奪感を引き起こ

し,対立が生じている、

B

ヨーロッパ統合による国境のボ ーダレス化は,国家の相対化を 引き起こし,対立関係を協調的 関係へと導く。

II      C

ヨーロッパの国家は,高度に民一ヨーロッバの国家は,国民の民 主化された国民国家である。  意を反映させる制度が整ってい        るため,国境のボーダレス化は,

     丁

       国家の相対化を引き起こす。

       D

鮫炉鰐11㍗llll11線

A−1ヨーロッパは国家間の相対的剥 奪感により利害対立を引き起こ し、EU統合の足並みの乱れと なってあらわれている。

A−2ヨーロッパは地域間での相対的 剥奪感により,各地で民族紛争 を弓1き起二している。

B−1ヨーロッパ統合による国家の相 対化は,地域紛争を沈静化させ

る。

B−2ヨーロッパ統合による国家の相一EUにおける国家の相対化と地域の顕在化は.

対fヒと地域の顕在化は,国家的 対立を沈静化させる。

境のボーダレス化は未だ成立途 上にある.

A一一1一一一ア

経済力の強化,集団安全保障の確立のため,ヨ ーロッパは一つにまとまろうとしている(EU

統合)。

A−1一イ

EU統合には.各国の政治,宗教・文化・慣習 などがさまざまに異なることから利害対立が生

じ.解決しなければならない多くの難問がある。

A−1一ウ

EU統合に向けて,難問を解決するためにヨー一 ロッパ人意識を高める手段として.さまざまな シンボルをつくっている。

A−2一ア

コーロッパの民族紛争は,比較対象となる地域 との比較によって引き起こされている。

A−2一イ

ヨーロッパの民族紛争は,比較対象となる地域 に比べて,相対的に.経済的に停滞していたり,

不遇である場合に生じている。

A−2一ウ

ヨーロッパの民族紛争は,比較対象となる地域 に比べて,相対的に、何かの地域的危機意識が 起こっている場合に生じている。

A−2一丁一

ヨ]ロッパの民族紛争は.A−2一イ,A−2一ウなどが,

歴史的に蓄積されている場合に生じている。

B−1一ア

コーロッパの中心部では,EU統合の国家の相 対化により.帰属意識は多様になり,民族紛争 を沈静化させる。

B−1一イ

ヨーロッパの周辺部では、EU統合による恩恵 を受けないため,帰属意識は固定化し,民族紛 争は過激化していく。

B−1一ウ

EUの周辺部への経済格差是正の取り組みや地 域の声の反映化政策などにより,地域運動の目 標が達成されるにつれ,民族紛争はしだいに 沈静化している。

B−2一ア

国家間レベルの比較による相対的剥奪感を縮小 させ,対立を沈静化させる仁

[消費された理論〕

相対的剥奪論

3空間並存モデル

(国民国家論)

(21)

第二節 単元「オーストラリア」の教授計画書

一 単元  rオーストラリア」

二 単元の目的

オーストラリアの社会問題の分析を通して,オーストラリアの社会構造を批判的に吟味 しながら探求する。

三 到達目標

○オーストラリアは,人口が少ない国である。そのため,移民や難民の積極的な受け入  れを行った結果,多様な民族構成となっている。

○また,オーストラリアの産業は,一次産品に偏っているため,諸外国の経済状況の影  饗を受けやすい。そのため,近年,東アジア・A S E AN諸国との関係が密接になる  なかで,積極的な移民・難民受け入れを行い,国内でも異文化を理解し尊重する多文  化社会をめざし,友好関係を築いている。

○しかし,東アジア・AS EAN諸国の不況の影響などにより,非白人に対する反発も  みられる。

四 単元構成と発問の組織化 1 単元構成

【1】多様な民族がすむオーストラリア      (1時間)

12】多文化社会をめざすオーストラリアーその要因と問題一(2時間)

 2 発間の組織化

 図11の知識の構造図をもとに,次のように,単元「オーストラリア」の問いの構造化を

図った。

◎○ オーストラリアは,いったいどんなところ?

一94一

(22)

I・n なぜ,オーストラリアは,多文化政策を行っているのでしょう?

 I−A・B なぜ,オーストラリアは,移民を受け入れて,多文化政策を行っている       のでしよう?

  A−1 なぜ,オーストラリアは.マイノリティの文化を尊重しているのでしょう?

  A−2 なぜ,オーストラリアは,アジアの国々からたくさんの移民がやってきて      いるのでしょう?

  A−3 なぜ,オーストラリアは,移民を受け入れているのでしょう?①   A−4 なぜ,オーストラリアは,移民を受け入れているのでしょう?②

  B−1 なぜ,オーストラリアの貿易は,諸外国の影響を受けやすいのでしょう?

  B−2 なぜ,オーストラリアは,諸外国との友好関係を築くさまざまな方策をと      っているのでしょう?

皿・lV なぜ,オーストラリアでは, いじめ (排斥運動・事件)が起こっているの    てしょう?

 ㎜一C なぜ,オーストラリアでは,新移民に対する いじめ が起こっているので     しよう?

  C−1 なぜ,ブルーカラーや下層ホワイトカラーが,新移民を いじめ るので      しよう?

  C−2 なぜ,中流以上の生活を行っている移民者に対する いじめ が起こるの      てしょう?

 ㎜一D なぜ,オーストラリアでは,不況になると いじめ が起こりやすくなるの     てしょう?

  D−1 なぜ,オーストラリアでは,1990年代に いじめ が顕在化したのでしょ      う?

以上のような構造化された発間を,図化したものが図12である。

(23)

◎、

○オーストラリア  は■いったいど  んなところ?

○オ]ストラリア  は一いったいど  んなところ?

I

なせ.ふ一ストラリア は 多文化政策を行っ てf、るのでしょう?

な垂,オーストラリア は,多文化政策を行っ ているのでしょう?

{※本車売では,取り上 げていない。〕

窄壱.オ]ストラーリ アでは  いじめ

(排斥1重動・事件)

が起こっているので しよう?

IV

な垂.オーストラリア では, いじめ (排斥 運動・事件〕が起こっ ているので一しょう?

{※本単元では,取切上 げていない。〕

図■2

【説明的知識】

なぜ 与一ストラリアは 移民]一A を受言立入れて 多文化政論を行 っているので オょう?

なぜ.}一ストラリアは 難民1−B を受け入れて,多文化改鋳を行 っているのでし』=う?

皿一C.

一下位の説明的知識】

A−1−1.

概括約知識・個搦的語途的知識】

紬鰍⊥線111…∴1;桑桑∴1

A 2      A−2−1.

繍紳㍗llllllllllllllllllデるでしょう?

一学習の前提となる    個別的知識】

∴舳

       A−3−1.

lllll:1;1;;lll11享111匁彩三∴1

B^iなぜ,}一ストラリアの貿易は,諸 外国の影響を受けやすいのでし士う

籔鱗鱗干騰11111111111篶11丁か・

C−1.

う?

A−4−1.

      内需にどんな影響を及ぼすしょう?

       内需にどんな影響を及ぼすでし

よう?

B−i−1

オーストラ,アの主な続出晶は,どんなものでしょう?

B−1−2

オー一ストラ.潟Aの輸出相手国の一番は,どこの国でしょう?

B二1−3

オーストラ)アは、どことの輸出が増えているでしょう?

B−1−4

締1111:∴lllllllllllllll

C−1−1.

妻繍三燃 カ:llllllllllll−lllllll11二篶11三1∴

      熊織ポー…1こる一1、董嘉1を起こ二いる人の1持ちはどんな気持ち二でし11       う?

皿一D       D−1.       D−1−1.

繍郷郁脇 浴X桑11111;lll

単テ日 「オーストラリア」

の問いの構造図

うだったでしよう?

「移民」とは。

アジアの国々。

「」次産品」とは。

『灘…民」とは。

「ブルーカラー」,

「ホワイトカラー」

とは。

(24)

 五 授業展開

第1眼

発   問 教授・学習活動 資料 生徒から引き出したい矢口論

・このマークは何のマークでしょ T:発間する。 ロゴマーク ・シドニーオリンピックのマーク

う? P:答える。

・このマークは,オーストラリア T:発問する。 ・オペラハウス

の何をもとにつくったマークで P:答える。 ・ブーメラン…アボリジニーの道具

しよう? T:説明する ・オーストラリアというと白人をイメー

ジしがちだが,アボリジニーをはじめ,

様々な民族がいる。

・次の資料は,「オーストラリアヘ T:発問する。 オーストラリ ・1947−74年…イギリス・アイルランド,

の移民数」です。1947〜74年と P:答える。 アベの移民数 その他のヨーロッパ諸国から多くの移 1975〜92では,それぞれどんな 民がやってきている。

ところから移民がやってきてい ・1975−92年…東アジア・東南アジアから

ますか? 多くの移民が渡ってきている。

・白人と非白人のどちらが増えて T:発問する。 出身国別移民 ・非白人の割合が増えてきている。

きているといえますか? P1答える。

・オーストラリアの家庭で話され T=発問する。 家庭における ・家庭で,英語以外の言語を話す人が7 る言語はどうなっていますか? P:答える。 使用言語 〜8人に1人ぐらいである。また,言

語の種類も多様である。

・オーストラリアでは,このよう T:発問する。

に異なる言語や文化を持った人 P:推測する。

々に,どのような接し方や対応 をしていると思いますか?

・資料を読ませる。 T:資料を読 「多文化社会 ・英語を母国語としない移民への英語教

ませる。 をめざして」 育,外国語によるラジオ・テレビ放送,

○オーストラリアでは,多様化し T:発問する。 日本語を学ぶ 異文化理解のための学習 etC.

I ている移民の人々に対して,ど P:答える。 中学生 ○オーストラリアは,多様な異文化を理 のような対応をしているでしょ T:説明する。 解し尊重しようとしている。

う? =多文化社会

・資料を読ませる。 T:資料を読 「いじめられ ・非白人の人たちに対する いじめ ,ア

ませる。 る非白人①」 シア系移民受け入れ反対,アボリジニ

「いじめられ 一に対する社会福祉への反対

開 ○アジア系の人々やアボリジニー T:発間する。 る非白人②」 ○アジア系移民やアボリジニーに対する などの少数派となる人々に対し P:答える。 「ハンソン女 いじめ が行われている。

n て,どのようなことが行われて 史の発言①」

いますか? 「ハンソン女

(25)

史の発言②」

○いったいオーストラリアはどう T:発問する。 O一方では,アジアから移民してくる人 なっているといえるでしょう? P1答える。 々やアボリジニーなど少数は(マイノ

リティ)となる人々の文化を尊重し,

理解につとめている。

しかし.一方では,アジア系の人々

やアボリジニーが いじめ られたり

している。

◎なぜ.アジア系の人々やアポリ T:発間する。 (…  わからない,いろいろ)

ジニーの人々は,大切にされる P:推測する。

一方で,いじめにあうのでしょ

う?

◎なぜ,少数派であるアジア系移 T:発問する。 (…  わからない,いろいろ)

民やアボリジニーの人々の文化 P:推測する。

などを大切にし,尊重しようと するのでしょう?

第2・3限(第2眼目本時)

発   問 教授・学習活動

資料

生徒から引き出したい知識

・オーストラリアはどのようにな T:発問する。 ・一福ナは,アジアから移民してくる人

っていましたか? P:答える。 々やアボリジニーなど少数は(マイノ

(前時の復習) リティ)となる人々の文化を尊重し,

理解につとめている。

しかし,一方では,アジア系の人々

やアボリジニーが いじめ られたり

している。

◎なぜ,オーストラリアは,少数 T:発問する。 ・いろんな民族がオーストラリアに移民 派であるアジア系やアボリジニ P1答える。 してきたから。

一の人々の文化を尊重しようと ・わからない。

するのでしょう?

○なぜ,アジアの人々は,オース T=発問する。 日本を100と ・オーストラリアで仕事に就き,経済的 トラリアに移民してきたのでし P:答える。 した主要国の に豊かになるため。

よう? 賃金 ・難民を,オーストラリアが受け入れた

移民・難民受 ため。

け入れに占め

るアジア系出

一98一

参照

関連したドキュメント

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

「1 つでも、2 つでも、世界を変えるような 事柄について考えましょう。素晴らしいアイデ

信号を時々無視するとしている。宗教別では,仏教徒がたいてい信号を守 ると答える傾向にあった

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ

検討対象は、 RCCV とする。比較する応答結果については、応力に与える影響を概略的 に評価するために適していると考えられる変位とする。

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から