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レール潤滑による車輪とレールの挙動の変化

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Academic year: 2022

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(1)

レール潤滑による車輪とレールの挙動の変化

 (財)鉄道総研 正会員○青木 宣頼 (財)鉄道総研 正会員 石田 誠 1.はじめに

 鉄道車両が急曲線を走行する際に、車輪/レール間には大きな横圧が発生する。この横圧は、走行安全性の面か らは急曲線低速走行時の乗り上がり脱線、レール及び車輪等の材料保全の面からはレール側摩耗や車輪フランジ 直立摩耗、あるいは曲線内軌の波状摩耗の主な原因の一つと考えられている。さらに、環境の面からは内外軌の きしり音の原因である。このような背景の下、この横圧を制御する、つまり車輪/レール間の摩擦を制御し、上記 の問題を解決しようという試みがなされている。そこで、横圧と大いに関係のある内軌頭頂面の動摩擦係数が営 業線において測定され、状況により大きな変動幅を持つことが明らかにされた1)。摩擦を制御する方法としては、

これまでにも地上側、あるいは車両側から潤滑が行われてきたが、それは主に摩耗を抑制することを目的として る2)。ここでは、鉄道総研構内試験線における、乗り上がり脱線のメカニズムを検討する走行試験の中で行われた レール潤滑の車輪とレールの挙動に与える影響に関する試験結果について報告する。

2. 試験概要

 本試験では、既存の地上塗油に用いられているグリース系潤滑剤(以下、「潤滑剤」と略称)を用いて、(1)内軌頭 頂面に塗布した場合、(2)外軌ゲージコーナに塗布した場合、(3)無潤滑の場合、(4)内軌に散水した場合の 4 ケー スについて、車両走行時の車輪とレールの挙動について測

定した。試験は、図1に示す鉄道総研構内の曲線半径(以 下,「R」と略称)160m の曲線中の内軌頭頂面あるいは外軌ゲ ージコーナに延長 55m の区間に 3.5g/m を塗布して、R160 の緩和曲線出口部で内外軌の輪重、横圧およびアタック角 を測定した。また、試験の際の潤滑状況を確認するため、

内外軌の摩擦係数を測定した。なお、試験車両はボルスタ レス台車で、走行速度は 10km/h、左右の静止輪重アンバラ ンスを 50%に設定した場合の測定結果について紹介する。

3.測定結果

 車両走行直後の各潤滑条件における内軌頭頂面と外軌ゲージコーナの動摩擦係数について鉄道総研で開発した レールトリボメータを用いての測定した結果を図 2 に示す。図は、内軌に散水または潤滑剤を塗布した場合と、

外軌に潤滑剤を塗布した場合の内軌と外軌それぞれの動摩擦係数を示す。また、図に示す動摩擦係数は各潤滑条 件において走行直後に測定された値である。図より、諸条件が若干異なるため、各潤滑条件の影響を単純に比較 することはできないが、内軌頭頂面を潤滑することによる内軌動摩擦係数の低下、および外軌ゲージコーナを潤 滑することによる外軌ゲージコーナ部の動摩擦係数の低下を確認できる。

 次に、各潤滑条件における内外軌の台車前軸の横圧(以下,「横圧」と略称)の変化を図 3 に示す。図より内軌に散 水または潤滑剤を塗布した場合、動摩擦係数と同様に内軌の横圧は低下している。それに伴って外軌の横圧も低 下している。このことは内軌の動摩擦係数が低下することで、図 4 に示す内軌側の車輪/レール間の横クリープ力 が低下し、その結果外軌横圧も低下したと考えられる。一方外軌ゲージコーナに潤滑剤を塗布した場合、外軌側 の操舵力が減少するため内外軌の横圧が増加したと考えられる。これは営業線の測定結果3)と一致する。

キーワード:レール摩擦係数,潤滑,横圧,アタック角

〒185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38 TEL 042(573)7291 FAX 042(573)7360 図1 測定位置

測定箇所 塗布区間 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑55‑

4‑028

(2)

 また、各潤滑条件におけるアタック角の変化を図 5 に示す。図より内軌を潤滑した場合にアタック角が増加し ている。内軌を潤滑した場合には、後軸の縦クリープ力に基づく台車に作用するモーメントが増加し、旋回性の 悪化によりアタック角が増加すると考えられる。一方、外軌を潤滑した場合にも、前軸の車輪フランジ反力と摩 擦係数に依存する操舵力が低下するため、アタック角は無潤滑に比べて増加している。このことも横圧と同様に 営業線の測定結果3)と一致している。

3.まとめ

 潤滑剤の内軌塗布により、安全面、材料面、環境面に影響を及ぼす内外軌の横圧を低下することが確認できた。

一方、これまで摩耗防止で用いられている外軌塗油の場合、外力(横圧)をむしろ上げる効果になる場合が多いが、

摩擦係数を下げることで摩耗を防いでいると考えられる。以上より、内軌潤滑により摩擦係数を適度に下げるこ とが摩耗をはじめ諸問題の解決に有効であることが明らかになった。ただし、空転・滑走を防止するためには制 動時に粘着力が大きくなる特性を有する潤滑剤の開発が重要である。

謝辞:本測定作業の一部は国土交通省の補助金を得て実施されたことを記す。

(参考文献)

1)石田誠他:レール摩擦係数の実態調査,J-Rail2003,pp.509-512,2003.12.

2)桜庭隆:地下鉄におけるレール塗油,新線路,平成 8 年 5 月,pp16-18

3)青木宣頼他:車輪/レールの動的挙動に与える側摩耗の影響,第 7 回鉄道力学シンポジウム,pp55-60.,2003.7.

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

無潤滑 内軌散水 内軌潤滑 外軌潤滑

ック角(°)

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

無潤滑 内軌散水 内軌潤滑 外軌潤滑

外軌横圧(kN)

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

無潤滑 内軌散水 内軌潤滑 外軌潤滑

内軌横圧(kN)

5 アタック角の測定結果

図2 動摩擦係数の測定結果

3 台車前軸の横圧の測定結果

横圧(横クリープ力) 横圧

(フランジ反力)

縦クリープ力 アタック角

進行方向

図 4 台車の曲線通過時の車輪からレールへの作用力 0.00

0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60

無潤滑 内軌散水 内軌潤滑 外軌潤滑

内軌摩擦係数

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70

無潤滑 内軌散水 内軌潤滑 外軌潤滑

外軌摩擦係

(1) 内軌 (2) 外軌

(1) 内軌 (2) 外軌

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

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参照

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