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急曲線低速走行に対する軌道狂い限度値算出方法の改良

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Academic year: 2022

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(1)

急曲線低速走行に対する軌道狂い限度値算出方法の改良

前鉄道総研(現東京メトロ)正会員 ○大澤純一郎 鉄道総研  正会員  古川  敦 前鉄道総研(現JR東海) 正会員  村松 浩成 鉄道総研  正会員  西垣 拓也

1.研究の背景

 著者らはこれまで,急曲線低速走行時の車両の乗り上がり脱線を考慮した軌道狂い管理手法として,輪重 横圧推定式に基づく軌道狂いの限度値算出法を提案した 1).この中では,任意の軌道狂い波形を初期条件と し,推定脱線係数比が1.2となるときの軸距平面性狂いと10m弦正矢通り狂い,両者の組み合わせを算出し た.しかし,この計算法では初期条件の軌道狂い波形により得られる限度値が異なるため,得られた解は必 ずしも一般的なものとはいえなかった.本報告では,初期条件と限度値算出結果との関係に基づいて限度値 算出方法を改良するとともに,文献1)で提案した限度値簡略解算出式の誤差の評価を試みる.

2.現行の軌道狂い限度値算出の概略

 軌道狂い限度値算出方法は,諸条件のもとで推定脱線係数比が1.2となる軌道 狂いの値を求めることである.これを数学的に表現すると式(1)のようになる.

 式(1)を解いて限度値を算出する際には,初期条件の軌 道狂い波形を,位相を変化させず振幅のみをχ倍して,

推定脱線係数比が1.2となるときの「前軸位置の10m弦 正矢通り狂い」と「軸距平面性狂い」の組み合わせを解 とした(図1).このような解法を用いたのは,前記の2 つの軌道狂いが乗り上がり脱線に及ぼす影響が大きいこ とが確認できていることと、これら2種類以外の軌道狂

いを自由に変化させると,式(1)の解の組み合わせが無数に存在するた め,解を求めるにあたってなんらかの制約条件を加える必要があった ためである.乗り上がり脱線に対する走行安全性がこれら2種類の狂 いにのみ依存するのであれば,初期条件に関わらず同じ限度値が得ら れるはずであるが,実際には前記2種類以外の軌道狂いの影響が無視 できないため,初期条件によって異なる解が得られる.

3.現行の軌道狂い限度値算出の問題点と対策

 上記計算方法によって,3区間の軌道狂い波形について軌道狂いの 限度値を求めた例を図2(a)に示す.区間1,3の結果はほぼ等しいが,

区間2による結果が他と異なることから,得られた解は一般的なものとはいえない.これを解消するため,

前述の解法を以下の点について改良した.

① 「車体中心位置の水準」が0となるように,水準波形全体の平均値を変化させる.これは,初期条件の水 準をχ2倍することに伴う,見かけ上のカントが変化することを防止するためである.

② 「台車間平面性狂い」が0に近い点を初期条件とする.これは初期条件の台車平面性狂いが大きいと,水 表1 輪重横圧推定式を構成するパラメータ 軌道のパラメータ 車両のパラメータ

・前軸位置の10m弦正矢通り〔㎜〕 ・軸ばね定数〔MN/m〕

・車体中心の10m弦正矢通り〔㎜〕 ・枕ばね定数〔MN/m〕

・軸距平面性狂い〔㎜〕 ・静止輪重比

・台車間平面性狂い〔㎜〕 ・軸重〔kN〕

・軌間狂い〔㎜〕 ・重心高さ〔m〕

・曲線半径〔m〕 ・軸距〔m〕

・カント(車体中心の水準)〔㎜〕 ・台車中心間距離〔m〕

キーワード 乗り上がり脱線,輪重横圧推定式,軌道狂い限度値,軸距平面性狂い,通り狂い 連絡先 〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38 TEL042-573-7278 FAX042-573-7296

軌道狂いの振幅の変更 軌道狂いの振幅の変更  図1 軌道狂い振幅の増幅法 1/R

緩和曲線

C

通り狂いの振幅をχ1倍(1~n倍)する。

水準狂いの振幅をχ2倍(1~n倍)する。

通り狂い

水準狂い

…(1) 2 .

=1 推定脱線係数 限界脱線係数 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑43‑

4‑022

(2)

準狂いをχ2倍することに伴って,定数 とみなした台車間平面性狂いの影響が 無視できなくなるためである.

③ 「通り狂い(車体中心)」が0に近い点 を初期条件とする.これは正矢法の性質 上,通りの平均値を0とはできないため,

通り狂いが比較的小さい箇所を初期条 件として,振幅をχ1倍する影響を極力 小さくする必要があるためである.

 改良した解法によって得られた限度値を 図2(b)に示す.図2(a)と比較すると,区間

が異なってもほぼ等しい結果が得られたことから,この結果は当該条件における標準的な軌道狂い限度値を 示しているといえる.

4.軌道狂い限度値の簡略式と精度の定量的評価  上記限度値は,輪重横圧推定式を用いて,(1)式を位 相不変という制約条件の下で解けば得られる(得られた 解を「解析解」という.).しかしこのような方法を一般 の軌道保守に適用することは困難で

あるので,解析解を平均的に近似す る簡略式を算出した(式(2)).算出 方法は文献1)と同じであるが,ここ では解析解の算出の際に前章で述べ た改良を行うとともに,初期条件を 増やして解の一般性を高めた.

 7種類の初期条件に対する解析解 と簡略式を図3に併記して示す.ま た通り狂い限度値30㎜及び20㎜に

対応する軸距平面性限度値の簡略式による解(以下「簡略解」という.)と解析解との差の頻度分布を図4に 示す.解析解は90%以上の確率で「簡略解-4mm」の範囲にあったが,その差が8mm を超えるものもあ った.そこで,両者の差が大きい場合においても簡略解によって走行安全性が確保できるかどうかを確認し た.具体的には,解析解に対する8mmの差が推定脱線係数比に換算してどの程度の差になるかを確認した.

 解析解と簡略解との差が8mm のときの条件で,推定脱線係 数比が1.2および1.0としたのときの,軌道狂いの限度値の例 を図5に示す.同図から,推定脱線係数比を1.0とすると,推 定脱線係数比1.2の場合と比較して、通り狂い20mmに対応す る軸距平面性限度値は 8mm以上緩和される.このことから,

簡略解と解析解との差が大きい場合でも推定脱線係数比が 1.0 を下回る確率は極めて小さいため,式(2)を軌道狂いの評価式と することによって,走行安全性は確保できると考えられる.

〔文献〕1)大澤他,J-Rail 2003, pp.473-476.

TWa:軸距許容平面性狂い〔mm〕,

k

:軸ばね定数〔MN/m〕

 γ:外軌側静止輪重比,C:カント(設計値)〔mm〕

 R:曲線半径(設計値)〔m〕,AL:通り狂い〔mm〕

k …(2) AL R

TWa 54.33 0.11C+0.048 0.17 41.18

= γ

(b) 改良した方法 (a) 従前の方法

0 5 10 15 20 25

0 10 20 30 40 50 通り狂い(㎜)

軸距平面性狂い

区間1 区間2 区間3

0 5 10 15 20 25

0 10 20 30 40 50 通り狂い(㎜)

軸距平面性狂い

区間1 区間2 区間3

図2 軌道狂い限度値算出例

図4 軸距平面性狂いの

   解析解と簡略解の差の頻度分布 0

30 60 90 120

-15 -10 -5 0 5 10 15 解析解-簡略解

頻度

図5 推定脱線係数比1.2と1.0のときの 軌道狂い限度値の比較の例

0 5 10 15 20 25 30

0 10 20 30 40 50 通り狂い(mm)

軸距平面性狂い(mm)

推定脱線係数比1.2 推定脱線係数比1.0 図3 解析解と簡略解との比較

0 5 10 15 20 25

0 10 20 30 40 50 通り狂い(㎜)

軸距平面性狂い 簡略式

解析解

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

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参照

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