論文内容要旨
論文題名
Decisive differences in the bone repair processes of the metaphysis and diaphysis in young mice
若年マウスの長骨骨幹端および骨幹部における骨修復過程の差異
掲載雑誌名
Bone reports 8, 1-8, 2018.
口腔解剖学 井上 知
内容要旨
【目的】ヒトにおける骨折の多くは橈骨遠位端、上腕骨近位端などの長骨 骨幹端で発生する。これまで骨損傷修復過程の研究は様々な動物、方法、
年齢で行なわれてきた。しかし多くの研究は長骨骨幹部を用いて行われて おり、骨幹端における治癒過程については不明な点が多く存在する。骨幹 端は海綿骨が豊富に存在し、間葉系幹細胞も多く存在することが報告され ており、骨幹部と比較し 損傷時にそれらの細胞を動員しやすく、治癒も 早いと考えられてきた。しかし、両部位の修復過程を直接比較した報告は ない。そこで、本研究ではマウス脛骨骨幹端および骨幹部における骨修復 過程を比較検討した。
【材料及び方法】
8
週齢雄性ICR
マウスの脛骨骨幹端と骨幹部にそれぞ れドリルで骨孔を作製し、術後3,4,5,7,14,21,28,35
および42
日で試料を採取し,マイクロCT、トルイジンブルー染色、アルカリフォ
スファターゼ(ALP)染色、免疫組織化学(osteocalcin(OCN)、typeⅠcollagen)および
mRNA
発現(骨膜:sox9、type 2 collagen、
骨髄:osterix、runx2、typeⅠcollagen
)の解析を行った。【結果】骨幹端では骨膜側に軟性仮骨は認められず、硬性仮骨もほとんど 観察されなかったが、骨幹部では軟性仮骨が
5
日目、硬性仮骨が14
日目 をピークに観察された。骨髄内仮骨は骨幹端において、7日目をピークに 観察され、その後、徐々に減少していった。一方、骨幹部では14
日目で ピークとなったが、21 日目にはほとんど認められなかった。また骨幹端 の骨髄においてALP、OCN、typeⅠcollagen
が骨幹部より早期に発現が 認められた。骨孔部のBMD
は骨幹端において早期に回復していたが、両 部位とも42
日目の段階でも、もとの値までは回復しなかった。リアルタ イムPCR
解 析 に おい て 、骨 幹 端の 骨髄 に おけ るosterix、 runx2 、
type1collagen
のmRNA
発現が早期に認められ、骨幹部と比較し高い値を示した。骨幹部における
sox9、type 2 collagen
は早期かつ高い値で発 現していたが、骨幹端では低値であった。【考察】骨幹端は骨髄内に形成された仮骨によって修復され、骨幹部の修 復過程とは異なっていた。骨膜や骨髄の存在する間葉系幹細胞は部位によ って組成が異なることが報告されており、骨損傷に対しても異なる反応を 示すことが示唆された。