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著者 桜井 俊一郎

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Academic year: 2022

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Thromboxane A[2]及びLeukotriene D[4]に対する Dual拮抗作用を有する新しい抗喘息薬の開発研究

著者 桜井 俊一郎

著者別名 Sakurai, Shun‑ichiro journal or

publication title

博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査 結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科

volume 平成10年6月

page range 251‑255 year 1998‑06‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/16153

(2)

櫻井俊一郎 氏名

生年月日 本籍 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

石川県 博士(薬学)

博乙第147号 平成9年9月30日

論文博士(学位規則第4条第2項)

ThromboxaneA2及びLeukotrieneD4に対するDual拮抗作用を有する 新しい抗喘息薬の開発研究

(主査)花岡美代次

(副査)染井正徳,石橋弘行,宮本謙一,向智里 論文審査委員

学位論文要旨

Devclopmentofnewantiasthmaticagentstoinhibitmulti-mediatorcauscdasthmais described・InordertofindthromboxaneA2(TXA2)antagonist,variousbenzene- sulfonamidcderivatives(1)wcresynthesizedandevaluatedthepharmacologicaleffects・

Itwasfoundthatthecompound2possessesTXA2antagonisticactivityaswellasweak TXA2synthascinhibitoryactivityandlcukotricneD4(LTD4)antagonistiCactivity.

Chemicalmodificationwasexaminedtoimprove2asadualinhibitorpossessing TXA2antagonisticandTXA2synthaseinhibitoryactivities(TXA2dualinhibitor)ora dualantagonistpossessingTXA2andLTD4antagonisticactivities(TXA2/LTD4dual antagonist)Byreplaccmentofthcphenylgroupin2withpyridyl,imidazolylorvarious alkylgroup,benzencsulfonamidederivatives(4,5a,b’6)wercsynthesizedand5awas foundtobeaTXA2dualinhibitorand7and8,TXA2/LTD4dualantagonists

Further,chcmicalmodificationof8byreplacementofthebenzeneringof phenylbutyricacidmoietywithathiopheneringlcdtol2a,b,Whichpossessedgood TXA2andLTD4antagonisticactivitiesbyoraladministration・I7zvかoguinca-pigasthma modclexamination,thecffectof8wassuperiortothatofspecificTXA2orLTD4 antagonists(,orlO).TheprcsentnovelTXA2/LTD4dualantagonistS(7,8,12a,b)

wouldbeexpectedtobenewclinicallyusefulantiasthmaticagents.

気管支喘息は発作性の呼吸困難及び喘鳴を特徴とする気道疾患である.従来,

アレルゲンとIgE抗体との反応によるI型アレルギーの代表的な疾患とされ,抗 原抗体反応により肥満細胞から遊離されるヒスタミンを主とするケミカルメデ イエーターによる直接的な気道反応(即時型喘息)と考えられてきた.しかし,最 近,気管支喘息は“気道収縮,,,“気道炎症,,,“気道過敏'性',を特徴とする炎

-251-

(3)

症'性疾患と考えられるようになった.又,病態の発現には,炎症細胞から産生遊

離されるトロンボキサンA2(TXA2),ロイコトリエン(LT),プロスタグランジン

(PG)などのアラキドン酸代謝物等のケミカルメディエーターが複雑に関与する 事が明らかとなった.

気管支喘息の病態の解明に伴い治療薬も変化してきており,治療の中心として 抗炎症薬(吸入ステロイドや抗アレルギー薬)が気管支拡張薬とともに大きな比 重を占める様になってきた.しかし,従来の抗アレルギー薬は即時型喘息を抑制 する薬剤として開発され,肥満細胞から遊離されるヒスタミンを主とするケミカ ルメデイエーターを標的としていたので,気管支喘息に対する有効率が低かった.

一方,最近開発された選択的TXA2拮抗薬や選択的LTD4拮抗薬は従来の抗アレル

ギー薬と比較して気管支喘息に対する有効率が高くなっている.しかし,気管支 喘息が複数のケミカルメデイエータが複雑に関与する疾患であることを考えれ ば,選択的に一つのアラキドン酸代謝物を阻害する薬剤より複数のアラキドン酸 代謝物を阻害する薬剤を探索研究したほうが効果的と考えられる.しかしながら このような考えに基づく抗喘息薬の開発研究はほとんどなされていないのが実 状である.

著者はこのような背景を踏まえ"複数のアラキドン酸代謝物抑制作用を有する

抗喘息薬"の探索を目的に研究を行った.はじめに,TXA2受容体にPGH2,PGF2a,

PGD2等多くのアラキドン酸代謝物が作用していることに着目し,新規ベンゼンス ルホンアミド誘導体(1)の合成を行い,リード化合物になりうるTXA2拮抗薬の探

索を行なった.

その結果,TXA2拮抗作用の強い化合物として2及び3を見出した.また,2及

び3の光学活`性体を合成したところ,2は光学異`性体間でほとんど活'性差が認め られなかったが,(+)-3は(-)-3より約10倍強い活性を示した.一方,2及び3

の気道に対するTXA2拮抗作用,TXA2合成酵素阻害作用及びLTD4拮抗作用を調べ たところ,2及び3はTXA2拮抗作用の他にTXA2合成酵素阻害作用を有し,さらに 2は弱いLTD4拮抗作用をも有することが明らかとなった.2は幅広い薬理作用を

示すことから,目的とする抗喘息薬探索のリード化合物になりうると考え,2の

構造変換によるTXA2拮抗作用及びTXA2合成酵素阻害作用を有するdual阻害薬 (TXA2dual阻害薬)の探索,TXA2及びLTD4dual拮抗薬(TXA2/LTD4dual拮抗薬)の探

索へと研究の展開をはかった.

T、 賑。

Cl

噸cM

1RLphenyl

R2=aryl,benzyl

A=aIkyl

CnC

2H CO2H

-252-

(4)

TXA2合成酵素阻害薬はTXA2の生成を選択的に抑制するとともに,気道拡張作用 のあるPGE2及びPGI2の産生増加を誘導し,抗喘息作用を示すと考えられている.

しかし,一方でTxA,受容体に作用し気道収縮を示すPGH2を増加することが知ら れている.PGH2の気道収縮反応はTXA2拮抗薬で抑制できることから,TXA2dual 阻害薬はTXA2拮抗薬あるいはTXA2合成酵素阻害薬に比べ優れた抗喘息薬になり うる可能性がある.そこで,TXA2dual阻害薬の探索を目的に,2にTXA2合成酵素 阻害作用発現基であるピリジル基又はイミダゾリル基を導入した[4-

[(benzenesulfonamido)alkyl]phenyl]alkanoicacid誘導体を合成し,TXA2拮抗 作用とTXA2合成酵素阻害作用を調べた.

その結果,ピリジル基を有する[4-[(benzenesulfonamido)(pyridyDmethyl]-

phenyl]alkanoicacid誘導体(4)の中から2を凌ぐ強いTXA2合成酵素阻害作用を

有する化合物は見出せなかったが,イミダゾリル基を有する[4-[(benzene-

sulfonamido)alkyl]phenyl]alkanoicacid誘導体(5a,b'6a,b)の中から,バラ ンスの良いTXA2dual阻害薬として5aを見出した.

’1IHSO2-0C,

繁宅CHP蚕1,,鴬mjrCqⅡ

N=、

l、/ o2X=〉

Cl

2H

、=2‐4 m=0,1

,=2,3

TXA2及びLTD4は気管支喘息の原因となる重要なケミカルメデイエータである.

それゆえ,TXA2及びLTD4を同時に阻害するTXA2/LTD4dual拮抗薬は選択的TXA2拮 抗薬あるいは選択的LTD4拮抗薬に比べ優れた抗喘息作用が期待される.著者は TXA2/LTD4dual拮抗薬の探索を目的に,LTD4の構造が長いアルキル鎖を有してい

ることにヒントを得て2に種々のアルキル基を導入した[4-[1-(benzene-

sulfonamido)alkyl]phenyl]alkanoicacid誘導体(6)を合成し,TXA2拮抗作用及 びLTD4拮抗作用を調べた.

-253-

(5)

02-゜

Cl

。パー〉

、‐グゲーヘ

「、

~夕

R1 CO2H O2H 2H

R'=alkyLcycloalkyl

R2=H,halogen,CH3,OCH3NO2

n=1‐4

0ノv、o0cliiiPLii冑

CC33HH

CO2H

,:seratrodast

lO:pranlukast

その結果,経口投与によるjnvjvo試験で良好なLTD4拮抗作用を示す TXA2/LTD4dual拮抗薬として7及び8を見出した.また,7及び8の光学活性体の LTDィ拮抗作用はいずれの化合物も(+)-体のほうが(-)-体より強く,TXA2拮抗

作用はいずれの化合物も(-)-体のほうが(+)-体より強い活性を示したが,各光

学異性体間での活性差はわずかであった.次いで,TXA2/LTDィdual拮抗薬の抗喘

息薬としての可能性を検討するため,8を用いてモルモットの抗原誘発気道収縮 作用に対する効果を調べた.その結果,8は選択的TXA2拮抗薬のseratrodast(9)

またはLTD4拮抗薬のpranlukast(10)より優れた気道収縮抑制作用を示した.

さらに,経口投与でより強いLTD4拮抗作用を示すTXA2/LTD4dual拮抗薬の探索 を目的に,7及び8のフェニル酪酸部分を構造変換したスルホンアミド化合物を 合成し,TXA2拮抗作用及びLTD4拮抗作用を調べた.その結果,7のカルボン酸部 分の構造変換体はTXA2拮抗作用を維持しつつ,LTD4拮抗作用が上昇する傾向を示 した.しかし,これらの化合物の中で11はjnyjjro試験で強いLTDィ拮抗作用を 示したが,経口投与では活性をほとんど示さなかった.一方,7及び8のフエニ ル酪酸部分のベンゼン環をチオフェン環又はフラン環に変換した化合物におい て,フラン誘導体のjnvjtro試験でのLTD4拮抗作用は低下したが,チオフェン 誘導体では若干強い活性を示した.また,経口投与によるノnvjvo試験において,

12a,bのLTD4拮抗作用は8に比べ3-4倍強かった.

。=-C〉

H

。「、

NH-《BN

N-N

、/〆lへ

O2H

12a:X=C1 12b:×=F 11

以上,著者は新規TXA2拮抗薬として2及び3を見出した.さらに,2をリー ド化合物とした構造展開によりTXA2dual阻害薬として5aを見出した.また,優

-254-

(6)

れた抗喘息作用が期待できる世界で初めてのTXA2/LTD4dual拮抗薬として7,8,

12a,bを見出した.モルモット喘息モデル実験の結果,TXA2/LTD4dual拮抗薬は選 択的TXA2拮抗薬及び選択的LTD4拮抗薬より優れた効果を示したことから,従来 のLTD`拮抗薬とは全く異なる骨格を有する,有望な新しいタイプの抗喘息薬とな

りうるものと考えている.

学位論文審査結果の要旨

気管支喘息は,これ迄ヒスタミンが関与する気道疾患とされてきたが,トロンボキサンA2(TXAJ,ロ イコトリエン(LT),プロスタグランジン(PG)などのアラキドン酸代謝産物等のケミカルメディ エーターが複雑に関与する炎症性疾患と考えられるようになった。申請者は個々のケミカルメデイ エーターの選択的阻害薬よりも,複数のケミカルメディエーターの作用を同時に阻害する薬剤がより 有効な治療薬になると考え,新しいタイプの抗気管支喘息薬の開発を計り,以下の成果を得た。

1)TXA2拮抗作用の外に,TXA2合成酵素阻害作用並びにLTD4拮抗作用を有する4-〔4-〔(4-

chlorobenzenesulfonamido)phenylmethyDphenyl〕butyricacid(1)を見出し,dual拮抗薬の リード化合物を開発した。

2)(1)のフエニル基の代りにイミダゾリル基を有する化合物を合成し,バランスのよいTXA2dual 阻害薬を見出した。

3)LTD4の構造を参考にして,1のフエニル基の代りにアルキル基を導入し,TXA2LTD4dual拮 抗薬を開発し,本剤が従前のTXA2又はLTD4選択的拮抗薬より優れていることを証明した。

4)前項化合物のベンゼン環をチオフェン環に代え,経口投与で有効でLTD4拮抗作用のより強い TXA2/LTD4dual拮抗薬を見出した。

以上,複数のケミカルメディエーターの作用を阻害するという新規な考えに基づいて,TXA2dual 阻害薬及びTXA2LTD4dual拮抗薬を見出し,有望な新しいタイプの抗喘息薬への道を示したもので,

薬学的意義・貢献は大きく,本論文は博士(薬学)論文に値するものと判定した。

-255-

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