伊良部大橋主航路部の耐久性設計について
沖縄県土木建築部宮古土木事務所 宜保 勝 沖縄県土木建築部宮古土木事務所 與儀 克明
大日本コンサルタント株式会社 正会員 ○原田 政彦
はじめに
沖縄県の橋梁は,高温多湿で,全地域で海塩粒子が飛来す る特殊な自然環境にあることから,塩害による劣化損傷が著 しく,今後の維持管理費の増大が懸念されている.このため,
橋梁計画時において,塩害に対する耐久性設計を行うことが,
メンテナンスコストの縮減と長寿命化の観点から重要となっ てくる.
伊良部大橋は,宮古島と伊良部島を結ぶ事業延長 6,500m の 離島架橋であり,そのうち本橋部が 3,540m であり,そのほぼ 中央部に貨物船や旅客船の航路が設定されている.本橋は,
その航路を跨ぐ橋長 420m,最大支間長 180m の 3 径間連続鋼 床版箱桁橋であり,陸上から 2km 程度離れた海上部に位置し,
非常に厳しい腐食環境にある.その位置図を図-1に示す.
本稿では,この伊良部大橋主航路部の上部工を対象に行っ た耐久性設計について報告する.
1.暴露面積の小さい桁形状
飛来塩分の付着量を減らすとともに,防食法として塗装を 採用した場合にはその塗り替え費用の軽減のために,単箱桁 が有効となる.また,沖縄は「台風の通り道」と言われるく
らい多くの台風が近辺を通過しており,中でも 2003 年の台風 14 号が通過した際には,宮古島で瞬間最大風速 86.4m が記録されており,耐風安定性に優れる桁形状が必要とされた.このため,維持管理上の負担となるフ ラップやスポイラーのような付加部材の設置ではなく,主桁本体で耐風安定性が得られる図-2 に示すような 桁形状を採用している.全幅員(車道+地覆)より主桁幅を広げ B/d を大きくし,8 角形とすることで剥離干 渉効果1)が期待できる断面となっている.
2.高機能な防食法
鋼橋においては,腐食対策がメンテナンスコストに大きな影響を与える.特に,本橋は海上に位置し,沖縄 の中でも特に厳しい環境にあることから,防食法の高い耐食性と耐久性が要求された.これに対して,表-1 に示す重防食塗装を採用している.鋼道路橋塗装・防食便覧
における C-5 塗装系を基本に,防食下地を無機ジンクリッチ ペイントに代えて高い防食効果が期待できるアルミニウ ム・マグネシウム合金(Al95-Mg5)溶射とする仕様となって いる.アルミニウム・マグネシウム合金溶射は,北海油田な ど海洋鋼構造物の防食用として多くの実績がある防食法で あるが,国内での実績は多くなく,安定した品質の確保が容
キーワード 橋梁計画,耐久性設計,鋼床版箱桁橋,長寿命化,塩害対策,新技術
連絡先 〒170-0003 東京都豊島区駒込 3-23-1 大日本コンサルタント株式会社 TEL03-5394-7604
図-1 伊良部大橋主航路部の架橋位置
3000 10100 3000
1480 1720 1480
1720 8500
1770
9700
3200 3200
600 600
35005801150
CL B=16100
d
図-2 主桁断面
表-1 塗装仕様
使用量 目標膜厚 (g/㎡) (μm)
金属溶射 Al95-Mg5合金溶射 500 150以上 封孔処理 金属溶射封孔処理剤 200 -
下塗 エポキシ樹脂塗料下塗 540 120 中塗 ふっ素樹脂塗料中塗 170 30 上塗 ふっ素樹脂塗料上塗 140 25
塗 料 名 塗装工程
橋 梁 製 作 工 場
素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2以上 表面粗さ Rz50μm以上
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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易ではないことが懸念されたことから,単体で使用せず厚膜塗料と組合せて使用している.
防食工法の補修は,架設後 5 年目の定期点検の際に,初期欠陥による塗膜損傷が生じると仮定し,全層の部 分補修を行い,30 年毎に上塗,中塗の全面補修を行うシナリオを想定している.
3.腐食しやすい構造部位の解消
鋼橋においては,塗装の膜厚が確保できない高力ボルト継手部や部材の角部などが腐食しやすい部位となっ ている.これに対して,主桁外面の継手は全て溶接継手とし,部材の全ての角部を 2mmR の曲面加工するもの とした.また,溶射作業が困難となる部位を解消するために,フランジとウェブの溶接を T 継手からかど継手
(図-3 参照)とする,あるいは足場取り付け用金具を標準の鋼板タイプから内装式タイプとする構造として いる.排水装置においても,主桁を貫通する排水桝を設ける
タイプから,地覆を切り欠いて車道側面から排水する構造
(図-3参照)を採用している.
4.維持管理方法を考慮した構造詳細
定期点検において,地覆より外側に主桁 3.2m 突出してお り,国内最大クラスの橋梁点検車を使用しても主桁下面の近 接目視ができないことから,図-3 に示すようにアウトリガ ーを地覆の外側に配置できるように,風洞実験を行って耐風 安定性に影響の無い範囲で水平区間を設置している.また,
塗装の塗り替えなどの主桁下面の補修工事の際に必要とな る足場として,移動式足場を使用するものとし,その走行 レールを固定する位置に内装式吊金具を設置している.
5.品質確保を考慮した施工法
上部工の架設は,図-4に示すように主桁を 3 ブロックに 分割し,3000t 級 FC で行うものとしている.これにより,
現場継手が大ブロック継手部のみとなり,ほとんどの作業 が環境の良い工場で行うこととしている.特に,施工実績
の少ないアルミニウム・マグネシウム合金溶射の作業のほとんどを,工場での作業とすることで,品質確保に 配慮している.また,大ブロック継手部においては,大型の防風設備を設置し,現場溶接およびその部分のブ ラスト,アルミニウム・マグネシウム合金溶射の品質が確保しやすいように配慮している.
おわりに
本橋は,非常に厳しい腐食環境にあることから,前例のないような耐久性向上策を採用し,その品質が確保 しやすい施工環境となるように計画するとともに,初期欠陥を想定した維持管理計画を考慮して設計を行って いる.今回の耐久性設計の効果確認ができるのは数十年先のことではあるが,鋼橋でのミニマムメンテナンス 化の一手法として有効と考えており,今後の新設橋梁の参考になれば幸いである.
なお,今回採用した耐久性向上策においては,「伊良部大 橋主航路部設計施工委員会」(委員長:有住康則琉球大学教 授)にてご審議いただき,委員各位から貴重なご意見を頂き ました.ここに深く謝意を表します.
参考文献
1) 鈴木,久保,佐野,加藤,木村:剥離干渉法を用いた 鋼 2 主桁斜張橋の耐風安定性に関する検討,日本風工 学論文集 第 31 巻第 2 号,2006.4
図-5 イメージパース
かど継手溶接 排水装置
アウトリガー設置範囲 橋梁点検車
図-3 橋梁点検車の配置状況
3000t吊起重機船
図-4 上部工架設方法 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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