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活荷重による応力振幅に着目した道路橋ケーブル部材の疲労耐久性に関する基礎的検討

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Academic year: 2021

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構造工学論文集Vol. 67A (2021 年 3 月) 土木学会

活荷重による応力振幅に着目した

道路橋ケーブル部材の疲労耐久性に関する基礎的検討

Fatigue durability of cable members for road bridges based on the stress amplitude by live loads

坂本佳也†,大島義信*,玉越隆史**,金田崇男***,藤井雄介****

Yoshiya Sakamoto, Yoshinobu Oshima, Takashi Tamakoshi, Takao Kaneda, Yusuke Fujii

(国研)土木研究所,構造物メンテナンス研究センター(〒305-8516 茨城県つくば市南原 1-6) *博(工),(株)ナカノフドー建設 顧問,(〒102-0076 千代田区五番町) (前(国研)土木研究所,構造物メンテナンス研究センター(同上)) **博(工),国立大学法人京都大学,経営管理大学院 特定教授(〒606-8317 京都市左京区吉田本町) (前 国土交通省国土技術政策総合研究所(〒305-0804 茨城県つくば市旭 1 番地)) ***本州四国連絡高速道路(株),長大橋技術センター(〒651-0088 神戸市中央区小野柄通 4-1-22) (前(国研)土木研究所,構造物メンテナンス研究センター(同上)) ****西日本高速道路(株),中国支社(〒731-0103 広島市安佐南区緑井 2-26-1) (前(国研)土木研究所,構造物メンテナンス研究センター(同上))

In this paper, the fatigue durability of cable members in road bridges against live loads is discussed based on the stress amplitude calculated from the actual design data. First, the fatigue effect caused by 100-years live loads was calculated and the stress amplitude by L live loads equivalent to the fatigue effect was obtained using numerical simulation and actual axle load distribution. Then the safety factor of fatigue durability was examined using the design data base. Finally, it was found that the safety factor for the stress amplitude due to the live loads of cable members designed so far varies depending on the type of bridge and each cable.

Key Words: cable structures, fatigue durability, stress amplitude, safety factor キーワード:ケーブル構造,疲労耐久性,応力振幅,安全率 1. はじめに 道路橋示方書は平成 29 年に改定が行われたが,平成 24 年に改定された道路橋示方書(以下,「H24 道示」と いう.)まで,ケーブル部材に対して構造形式や橋の種類 に応じて異なる安全率が定められていた(表-1)1),2) ケーブル部材に限らず道路橋のような構造物の部材で 設計上確保する安全率には,外力等による一過性の作用 の組合せ条件に対して所要の状態にとどめるという耐荷 性能に対するもの,疲労のような作用の繰返しに対する 耐久性能を確保するために発生応力を抑える目的で確保 されるもの,その部材が破壊などで機能不全に陥った場 合の影響の大きさや深刻さに応じて考慮される余裕に対 応するものなどがある.道路橋示方書ではこれらを考慮 してできるだけ過不足のない合理的で経済的な設計が行 表-1 道路橋におけるケーブル部材の安全率 橋の種類 構造形式 安全率 鋼橋 斜張橋 2.5 ニールセンローゼ橋 3.5 吊橋(主ケーブル) 3.0 吊橋(ハンガー) 3.5 コンクリート 橋 内外ケーブル 1.67*1 エクストラドーズド橋*2 1.67*1~2.5 斜張橋*2 1.67*1~2.5 *1: PC 鋼材に対する許容応力度0.6𝜎 を換算. *2: 活荷重による応力振幅に応じて安全率を定める方法が提案 されていた2) えることに配慮して安全率が規定されてきているものと 考えられる. しかし,H24 道示以前の基準による道路橋のケーブル † 連絡著者 / Corresponding author E-mail: [email protected]

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部材の安全率は,構造形式や橋の種類と関係づけて複数 設定されており,それらの違いと大きさが耐荷性能や耐 久性能の確保の必要性に対してどのような考え方によっ てどの程度の水準の余裕を与えたものとなっているのか についてはこれまで詳しく評価されてきていない3),4) 道路橋では支間長が大きい場合に,経済性や構造的な 合理性からケーブル部材による吊り形式の橋梁が採用さ れやすい傾向にある.耐荷性能の観点からはケーブル部 材では固定的な死荷重が発生応力に占める割合が大きく なりやすく,安全率として見込む必要のある不確実性は 相対的に小さくなる傾向があるといえる.他方,疲労耐 久性の観点からは繰返し荷重に対する変動応力振幅が問 題となるため,耐荷性能の評価において変動荷重に対し て必要となる安全余裕分の占める比率が小さい部材ほど, 疲労耐久性に対する安全余裕の確保のために必要となる 安全率が耐荷性能に必要とされる安全率より支配的とな っていく傾向にあることが考えられる. 本研究は,H24 道示以前のケーブル部材の安全率にお いて,活荷重に対する疲労耐久性に対して安全余裕がど の程度考慮されていたのかを明らかにするとともに,そ れらの結果から構造形式と橋の種類によって異なる安全 率を与える設計によって作られてきた橋の性能の違いに ついて考察することを目的とした. 2.ケーブル部材の疲労耐久性 道路橋のケーブル構造には,一般にはいわゆる内ケー ブル構造や外ケーブル構造もある.ただし,ケーブルが 定着部を含め桁内に配置され,部材断面と一体となって 挙動する内ケーブル構造や,偏心の少ない外ケーブル構 造は,桁の曲げ変形に対するケーブル軸力の変動が小さ く,二次曲げによる付加的な応力が生じにくい5)-9)ことか ら,大偏心させた外ケーブルを有する橋梁の外ケーブル や斜張橋・吊橋のケーブルとは上記の観点で力学的な挙 動が異なる点が多い.したがって,本検討では,コンク リート部材と一体となって挙動する内ケーブル構造の内 ケーブルや,偏心の少ない外ケーブル構造の外ケーブル については検討の対象外とした. ケーブル部材を構成する鋼素線は,材料的にはJIS に 線材として規格化されている炭素鋼の加工材であり,他 の鋼材同様に繰返し荷重の影響によって疲労破壊を生じ うる.道路橋に一般に使われる素線を集束したケーブル 部材では,その仕様によっては繰返し荷重の作用によっ て素線同士が繰り返し擦り合わされることで摩耗や傷を 生じるフレッティングによる破壊も疲労耐久性上の問題 となり得るが10),11),活荷重の載荷によってどの程度の影 響が生じるのかはケーブルの仕様や定着方式などにも左 右され,活荷重によるケーブル発生応力との関係は十分 には明らかにされておらず,設計においてもフレッティ ングによる疲労耐久性について計算応力による照査は一 般に行われない.そのため,本研究ではフレッティング には着目しないこととした. また,道路橋のケーブル部材では風による振動が生じ ることも多く,振動による変動応力の繰返しも疲労耐久 性能の観点からは問題となりうる.しかし,大きな振動 振幅が生じうる発散振動は,設計においてこれが生じな いよう照査される.また,設計段階では正確な発生予測 が難しい渦励振は,一旦生じると振動回数は膨大な数に 上ることとなるが,減衰装置を付加するなどの対策が供 用後に実際に発生が確認されてからでも比較的容易に行 える.また,振動振幅はあまり大きくならず,著者らが 調べた限りでも,本四連絡橋をはじめ,ケーブル部材を 用いた道路橋が多く建設されてきた中で,渦励振が主た る原因でケーブル部材が疲労損傷したとの事例も確認で きない.このようなことから,設計段階で計算応力に基 づく疲労耐久性の照査を行う対象にはなりにくく,H24 道示までの設計基準のケーブル部材の安全率において風 による疲労に対する安全余裕が支配的であったとは考え にくい12)-16) 以上から,一般的なケーブルの供用条件に対しては, 設計計算におけるケーブル部材の安全率に具体的に考慮 されるべき疲労現象としては,活荷重によるものが支配 的と考え,これについて検討の対象とした.また,鋼部 材の疲労耐久性の照査は,発生応力振幅の大きさと繰返 し回数の組合せから評価される累積疲労損傷度(あるい は累積損傷比)に着目することが基本である.しかし, 現状では道路橋のケーブル部材に対する疲労照査用荷重 の条件が道路橋示方書にも規定されていないなど国内で は照査方法が確立していないことから,本研究では耐荷 性能の照査に用いられる活荷重による発生応力とケーブ ル部材としての耐荷性能上の安全余裕について,疲労耐 久性との関係に着目した整理を行って分析することとし た. 3.検討方法 3.1 検討フロー ケーブル部材における繰返し荷重の影響は,ケーブル 本体だけでなく定着具にも生じる.しかし定着具の構造 や仕様は製品としてその性能が保証されているものが設 計の一環として選定される.そのため,個別の橋の設計 で発生応力を考慮して疲労耐久性の照査を行う対象とし ては定着方式とケーブル種類で分類されるケーブル部材 であり,ケーブルソケットなどの定着具とケーブル一般 部との境界部を含むケーブル部材全体に対して,ケーブ ル一般部に生じる応力と関連付けた安全率でもって評価 される. よって,本研究では,定着具及び定着具とケーブルの 境界部が繰返し荷重の影響に対して支配的とならないこ とを前提に,定着具を含むケーブル部材としての疲労耐

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図-1 等価振幅による疲労耐久性の検討 久性が確認されたケーブル部材を用いることとして,ケ ーブルに生じる応力振幅を評価する. 疲労耐久性の評価にあたっては,道路橋示方書におい て標準的な設計供用期間とされている100 年を前提とし た.そして,実測された軸重(車軸による荷重)が100 年間繰り返されると仮定し,100 年間相当の疲労の影響 を算出することとした.一方,ケーブル部材の疲労耐久 性については,品質確認の一つとして200 万回の繰返し 載荷試験によって破断しないことを確認する場合が多 い.よって,100 年間の繰返しの影響が 200 万回で生じ る応力振幅を算出し,200 万回の繰返し載荷で安全性が 確認された応力振幅と比較することで,安全余裕を評価 することとした.なお,軸重による応力振幅は,軸重とT 荷重及びL 荷重の相関関係を利用し,L 荷重による応力 振幅から算出できるようにした.ここでの検討フローを 図-1 に示す. 3.2 BWIM による軸重頻度分布 本研究では,BWIM17)により計測された有明曙橋にお ける3 日間の軸重頻度分布を用いて,100 年間相当の疲 労損傷度を与える応力振幅を算出する.なお,対象とす る橋梁は,文献 18)で示す大型車交通量と大型車混入率 の分布を組み合わせた特性による区分において最も厳し い条件(大型車交通量3000 台以上/日/方向かつ大型車混 入率40%以上)となる重交通路線に位置している.計測 図-2 BWIM による 3 日間の軸重頻度分布(有明曙橋) 期間は既往の研究19),20)も参考に,当該路線の平均的な交 通量を抽出する目的から,平日の中間の連続3 日(火~ 木曜日)とした.図-2 に計測された軸重頻度分布を示 す.軸重は,3 日間で全 92,559 軸となっている.なお, 軸重によりケーブルに生じる応力を算出するため,T 荷 重(𝑊 200kN)によるケーブルの応力振幅Δ𝜎 と,実 際の車両軸重𝑊 によるケーブル応力振幅Δ𝜎 が比例関係 にあると仮定し,以下のようにΔ𝜎 を求めることとした. Δ𝜎 Δ𝜎 𝑊 /𝑊 (1) 3.3 T 荷重の移動載荷による応力振幅 T 荷重によりケーブル部材に生じる応力振幅を算出す る.本研究では,代表的な形式である5 種類の橋梁(吊 橋,鋼斜張橋,複合斜張橋,エクストラドーズド橋(以 下,「ED 橋」という.),ニールセンローゼ橋(以下,「NL 橋」という.)に着目した.これらを図-3 に示すように モデル化した立体格子モデルに対し,1 組の T 荷重 (𝑊 200kN)を橋軸方向に移動載荷した時のケーブル 張力を算出する.解析モデルでは,ケーブルはトラス要 素,その他の部材は梁要素とし,ケーブルは要素分割を 行わずピン結合とした.解析ではケーブルに死荷重載荷 時の初期軸力を与え幾何剛性を考慮し,微小変位解析に より行った.なお,これらの解析モデルは,実際に架設 された橋梁の設計計算書等をもとに構築したものである. 対象とした橋梁の形式,支間,幅員及び着目部材を表- 2 に示す.T 荷重の橋軸直角方向の載荷位置は,対象橋梁 の車線中心位置とした.また,算出されたケーブル張力 をケーブル公称断面積で除した値をケーブルに生じる応 力Δ𝜎 とした. 3.4 100 年間の繰返し載荷と等価な応力振幅 次に,100 年間の活荷重の繰返し載荷の影響を算出す る.ここでは,図-2 で想定した 3 日間の交通特性が 100 年間続くと仮定する.すなわち,3 日間における各軸重 の作用回数𝑁 に対し,100 年間の作用回数は𝑁 𝑁 /3 365 100となる. よって,100 年間の軸重載荷と等価な疲労損傷度を与 検討スタート BWIMによる 軸重頻度分布 T荷重による 応力振幅 L荷重による 応力振幅 数値シミュレーション 100年間と等価な疲労損傷を 200万回で生じさせる応力振幅 100年間の軸重繰返し載荷と等価な疲労損傷を 200万回の繰返し載荷で生じさせる応力振幅 100年間を200万回とした場合に 軸重により生じる応力振幅 200万回の繰返し載荷試験で 確認された応力振幅 軸重とT荷重の 比例関係を仮定 L荷重とT荷重による 応力振幅の比率 ケーブル2次曲げの影響 L荷重応力振幅から換算される等価な応力振幅 設計実績による L荷重応力振幅 換算式の導出 設計実績の分析 応力振幅の比較 吊橋(主ケーブル),吊橋(ハンガー),鋼斜張橋, コンクリート斜張橋,複合斜張橋,ED橋,NL橋 3.2 3.3 3.4 3.5,3.6 3.7 4. ※図中の数字は論文中の章、節を表している.

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(a)吊橋 (b)鋼斜張橋 (c)複合斜張橋 (d)ED 橋 (e)NL 橋 図-3 解析モデル 表-2 本検討の試算対象橋梁 No. 橋梁 形式 支間(m) 全幅員 (m) 着目部材 1 吊橋 60.0+140.0+ 600.0+170.0 27.00 ハンガー ロープ 2 斜張橋鋼 105.0+165.0 13.30~ 16.05 斜ケーブル 3 斜張橋 複合 475.0+75.0+55.0 55.0+75.0+ 9.88~ 11.00 斜ケーブル 4 ED 橋 91.0+182.0+98.0 12.95 斜ケーブル 5 NL 橋 123.0 8.70 吊材 えるT 荷重による繰返し載荷回数𝑁 は,以下のよう に算出することができる. 𝑁 Δ𝜎 𝑁 /Δ𝜎 𝑁 𝑊 /𝑊 /3 365 100 (2) ここで,𝑚は疲労設計曲線の傾きを表す係数のことで あ り , 文 献 1) に よ り𝑚 5 と す れ ば , 𝑁 24,856,500となる. 次に,ケーブルの疲労耐久性が一般的に200 万回の繰 返し載荷試験により確認されていることを勘案し,100 年間の繰返しによる場合と等価な疲労損傷度を200 万回 で与える換算応力振幅Δ𝜎 を算出する.Δ𝜎 は,以下の ようになる. Δ𝜎 𝑁 2 10 / Δ𝜎 ≅ 1.66Δ𝜎 (3) 3.5 二次曲げ等を考慮した等価応力振幅 活荷重の繰返し載荷の影響を考慮するうえで,応力の 振幅の最大値が問題となる.ケーブル部材の二次曲げの 影響によって,計算上の応力振幅に対しておよそ2 倍程 度の応力振幅が生じる可能性が指摘されている21),22) .そ のため,本研究では,想定する応力振幅が過小とならな いよう,T 荷重による応力振幅が計算よりも 2 倍大きい として,応力振幅を補正した.ただし,NL 橋においては, アーチリブと補剛桁で構成される剛なフレーム内にケー ブルが斜めに配置されることから橋全体としての剛性が 高く,他のケーブル構造と比較して二次曲げが生じる可 能性が低い.そのため,NL 橋では二次曲げの影響を考慮 しないこととした.すなわち,解析モデル上で算定され るT 荷重による応力振幅Δ𝜎 に対し,実際にケーブルに 発生する応力振幅Δ𝜎 は,以下のようになる. Δ𝜎 𝛽Δ𝜎 (4) ここで,𝛽は二次曲げの影響を考慮する係数で𝛽 2.0 (ただし,NL 橋では 1.0)とした.これより,これらの 影響を考慮した等価応力振幅Δ𝜎′ は,式(5)で与えられ る.

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図-5 Δ𝜎 とΔ𝜎 との関係 Δ𝜎′ 1.66Δ𝜎 1.66𝛽Δ𝜎 (5) 3.6 L 荷重と T 荷重による応力振幅の関係 等価応力振幅Δ𝜎′ は,式(5)の通り,T 荷重による応力 振幅Δ𝜎 によって表すことができる.しかし,実際のケー ブル部材の設計ではT 荷重による応力振幅Δ𝜎 は算出さ れない.設計計算書に基づきこれまでの実績を分析する ためには,通常の設計で考慮されている荷重によって, 式(5)の等価応力振幅を算出できるようにする必要があ る.そこで,本研究では,L 荷重による応力振幅に着目 する.L 荷重による応力振幅は,図-3 で示した解析モデ ルを用いて,H24 道示の規定に従い,着目するケーブル に生じるB 活荷重による張力の最大値と最小値の差を公 称断面積で除したものとして求めた.なお,張力の最小 値については,張力の最大値と最小値の差の絶対値が安 全側となるよう,L 荷重による張力の最小値がマイナス すなわち圧縮力となる場合にはその値を採用し,プラス すなわち引張力となる場合にはゼロ(無載荷)を採用し た.T 荷重による応力振幅Δσ と,L 荷重による応力振幅 Δ𝜎 との関係を図-5 に示す.図中の実線,点線及び一点 鎖線は,それぞれ吊橋(ハンガー),鋼斜張橋及びNL 橋 におけるデータを最小二乗法により線形補間した結果で ある.それぞれの補間直線の勾配は,1/0.03,1/0.038,及 び1/0.059 となっている.この結果を参考に,各橋梁形式 におけるT 荷重と L 荷重との比率(Δσ /Δ𝜎 )を,吊橋 (ハンガー)では0.04,鋼斜張橋,ED 橋及び複合斜張橋 では0.06, NL 橋では 0.13 と設定した.なお,シミュレ ーションの対象となっていないコンクリート斜張橋と吊 橋(主ケーブル)については,鋼斜張橋及びED 橋と同 じ0.06 と仮定した.すなわち, Δ𝜎′ 1.66𝛼𝛽Δ𝜎 (6) ここで,𝛼は吊橋(ハンガー)で 0.04,吊橋(主ケーブル), 鋼斜張橋,複合斜張橋及びED 橋で 0.06,NL 橋で 0.13 と した.ただし,L 荷重による応力は有効幅員により荷重 表-3 検証結果に基づくケーブルの区分 区 分 ケーブルの種類 製作 応力振幅*(N/mm2) 0.4𝜎 0.6𝜎 C1 平行線(新定着法) 工場 230 180 C2 亜鉛めっきPC 鋼より線 エポキシ樹脂被覆PC 鋼より線 現場 200 120 C3 平行線(亜鉛鋳込み法) 工場 150 115 裸PC 鋼より線 現場 C4 ロープ 工場 100 65 *:200 万回の繰返し載荷試験によって安全性が確認されている 応力振幅(それぞれ0.4𝜎 及び0.6𝜎 を上限値とした場合) 分配が異なることから,𝛼は表-2 の橋梁を対象として設 定した一仮定値であることをここに付記する.これより, 100 年間における活荷重の繰返し載荷の影響は,式(6)に より算出される等価応力振幅が200 万回繰り返し生じる 事象として置き換えることができる.100 年間の車両交 通によるケーブル部材の疲労耐久性を評価するためには, 従来ケーブル部材が200 万回の繰返し載荷試験により疲 労耐久性が保証されていること,道路橋での疲労に対す る照査は200 万回繰返し回数での応力範囲を基準とした S-N 線と比較することで評価できることから,本研究で は,式(6)により算出される等価応力振幅が 200 万回繰り 返し生じることに対して,各ケーブルがどの程度疲労耐 久性を有しているのかを評価することとした. 3.7 200 万回の繰返し載荷試験による限界値 ケーブル構造で採用されるケーブルの種類は,橋梁毎 に異なる場合があるため,ケーブルの種類の違いを考慮 して疲労耐久性を検討する必要がある.また,発生する 応力の振幅だけでなく,その応力の上限値も考慮して疲 労耐久性を評価する必要がある. 表-3 には,定着部を含めた疲労耐久性の検証結果に 基づく10),23)-25)200 万回の繰返し載荷に対して安全性が 確認された応力振幅の範囲を示す.検証された応力振幅 は,ケーブルの種別などによって異なるため,ここでは これまでの実績や海外基準など 2), 26),27)を参考に,ケーブ ル部材の種類を4 つに区分して整理している.この表に は,200 万回の繰返し載荷試験における引張応力の上限 値(ここでは,引張強度𝜎 に対する比率で表現している) と,少なくとも破断しないことが確認された応力振幅を 示している.なお,引張応力の上限値については,これ までの200 万回の繰返し載荷試験の実績では 0.45𝜎 又 は0.55𝜎 により行っているものもあるが,ここではこれ までの斜張橋及びED 橋の実績を考慮して,0.6𝜎 (= 安全率1.67 相当)及び0.4𝜎 (=安全率 2.5 相当)とし ている.また,応力振幅については材料強度に依存する ことなく,統一的に評価できるよう,以下の手順により 設定した. 0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 10 20 30 40 50 L 荷重に よ る 応力振幅  L (N /m m 2) T荷重による応力振幅T(N/mm2) 吊橋(ハンガー) 鋼斜張橋 複合斜張橋 ED橋 NL橋

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C1 は工場製作による新定着法による平行線ケーブル を想定している.本研究では,DIN107325), 27)に準じて式(7) により上限値𝜎 を0.4𝜎 とした場合の応力振幅を求 めた. Δ𝜎 𝜎 𝜎 Δ𝜎 1 𝑅 1 𝐾 ∙ 𝑅 (7) こ こ で ,𝐾 𝜎 555.5 / 𝜎 444.4 , 𝑅 𝜎 /𝜎 である. 平行線新定着法を用いた平行線ケーブルでは,これま で繰返し載荷における応力振幅 Δ𝜎 𝜎 𝜎 の 下限値𝜎 が0N/mm2であるとした場合に,応力振幅Δ𝜎 が270N/mm2まで疲労に対する安全が確認されている25) これより,引張強度を 1570N/mm2とすれば応力振幅が 231 N/mm2となることから,C1 において上限値𝜎 0.4𝜎 とした場合の応力振幅を 230N/mm2とした.上限 値𝜎 を0.6𝜎 とした場合には,同様に 196N/mm2とな るが,これまでのコンクリート橋における実績 2)を考慮 して,180N/mm2とした. C2 は,現場製作による亜鉛めっき PC 鋼より線及びエ ポキシ樹脂被覆PC 鋼より線を想定している.本研究で は,コンクリート橋におけるこれまでの実績2)を参考に, 上限値𝜎 を0.4𝜎 とした場合,そして0.6𝜎 とした場 合の応力振幅を,それぞれ,200N/mm2及び120N/mm2 した. C3 は,工場製作による亜鉛鋳込み法を用いた平行線ケ ーブル,及び現場製作による裸PC 鋼より線を想定して いる.亜鉛鋳込み法を用いた平行線ケーブルでは,下限 値𝜎 が 0N/mm2であるとした場合に,応力振幅Δ𝜎が 200N/mm2まで疲労に対する安全が確認されている 25) また,裸PC 鋼より線においても,これまでの実績から, 同等の疲労に対する安全性が確認されている.これらの ケーブルに対して引張強度を 1570N/mm2として応力振 幅を定めると,上限値𝜎 を0.4𝜎 及び0.6𝜎 とした場 合の応力振幅が,それぞれ,153N/mm2及び119N/mm2 なる.ここでは,それぞれの応力振幅の上限値を 150N/mm2及び115N/mm2とした. C4 は,工場製作によるロープを想定している.ロープ に対しては,下限値𝜎 が0N/mm2であるとした場合に, 応力振幅Δ𝜎が 200N/mm2まで疲労に対する安全が確認さ れているものの,十分な安全性を確保する目的から 150N/mm2が基本値とされている25)ここでは,DIN107327) に従い,式(7)におけるロープの場合の K の値を, 𝐾 𝜎 476.2 / 𝜎 357.2 と定め,式(7)により応力振 幅を求めた.これより,引張強度を1570N/mm2として応 力振幅を定めると,上限値𝜎 を0.4𝜎 及び0.6𝜎 とし た場合の応力振幅が,それぞれ,98N/mm2及び64N/mm2 となる.C4 については,基本値として設定されている 150N/mm2という値にも安全余裕が確保されていること も考慮し,上限値𝜎 を0.4𝜎 とした場合の応力振幅は 表-4 分析の対象とした橋梁及びケーブル 形式 橋 梁 数 ケーブ ル本数 最大 支間長 (m) 主塔高さ・ ライズ (m) 吊橋 (主ケーブル) 14 14 138~1991 20~194 吊橋 (ハンガー) 11 1002 218~1991 28~194 鋼斜張橋 18 554 99~510 45~172 コンクリート 斜張橋 16 485 94~260 40~110 複合斜張橋 3 176 360~890 125~220 ED 橋 15 454 100~275 10~30 NL 橋 14 328 107~254 17~36 計 91 3013 図-6 対象橋梁の主塔高さ(又はライズ)と 最大支間長との関係 100N/mm2とし,0.6𝜎 とした場合の応力振幅については 65N/mm2とした. 4.設計実績に基づくケーブル部材の疲労耐久性評価 4.1 対象橋梁 分析の対象とした橋梁は,実際に設計された表-4 に 示す91 の橋梁(吊橋(主ケーブル・ハンガー),鋼斜張 橋,コンクリート斜張橋,複合斜張橋,ED 橋,NL 橋), 3013 本のケーブルである.なお,一つの橋梁で設計上同 じ応力を与えるケーブルがある場合には,1 本の値で代 表させた.これらの橋梁に対し,設計計算で求められた L 荷重によるケーブル張力から,応力の上限値と等価応 力振幅を算出し,表-3 の応力振幅の限界値と比較する ことで,耐荷性能に対する安全率を考慮して設計された ケーブル部材において,活荷重に対する疲労耐久性に対 し,安全余裕度がどの程度確保されているかを評価する. 図-6 には,対象とした橋梁の最大支間長と主塔高さ (NL の場合ライズ)の関係を示す.吊橋においては最大 支間長が500mを超えるものが多く,最大支間長が1991m 0 50 100 150 200 250 300 0 500 1000 1500 2000 主 塔高さ又は ライ ズ ( m ) 最大支間長(m) 吊橋(主ケーブル) 吊橋(ハンガー) 鋼斜張橋 複合斜張橋 コンクリート斜張橋 ED橋 NL橋

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に達するものも含まれる.それ以外の橋梁では,鋼斜張 橋を除き多くは200m 以下となっている. 4.2 分析結果 道路橋の設計では,荷重として死荷重,活荷重(L 荷 重),支点移動の影響,製作架設誤差,温度変化の影響, 風荷重,地震の影響,雪荷重等があり,これらを組み合 わせた場合に生じる応力が考慮されている.一方,吊橋 の主ケーブルをはじめ道路橋のケーブル構造に用いられ るケーブル部材は,耐荷性能上,死荷重と活荷重が支配 的となることが多いことから,多くは死荷重と活荷重に よって断面が決定しているといえる.ここでは,活荷重 による繰返し載荷の影響を評価する目的から,ケーブル に生じる活荷重の最大値に着目することとし,ケーブル に生じる応力の最大値𝜎 は,L 荷重及び死荷重(プレ ストレス力を含む)による応力の最大値とした.ケーブ ルにおける応力の変化としては,風荷重による影響も大 きいと考えられるが,先述した通りその影響は設計又は 別途の対策において考慮されていることから,ここでは 活荷重による応力変動に着目して評価することとした. また,一つの橋梁には複数のケーブルが存在するが,分 析にあたっては,一つの橋梁のうちL 荷重による応力振 幅が最大となるケーブルを代表として,データを整理す ることとした. 図-7 に,ケーブルに発生する応力の最大値をケーブ ル強度で除した値(𝜎 /𝜎 )と,繰返し載荷に対する 限界値Δ𝜎 を活荷重による等価応力振幅Δ𝜎 で除した 値(Δ𝜎 /∆𝜎 )との関係を示す.ここで,H24 道示ま での設計基準で設計されたケーブル部材は,構造形式や 橋の種類毎で異なる安全率が考慮されているため,ケー ブル強度に対する耐荷性能上の応力の上限値が異なる. 一方,活荷重に対する疲労耐久性を評価するうえでは, 3.7 に示している通り耐荷性能上の応力の上限に対応し た応力振幅の限界値を考慮する必要がある.そのため, 𝜎 /𝜎 が 0.4 以上のケーブルに対しては,表-3 に示 す引張強度𝜎 に対する比率により表現した 200 万回の 繰返し載荷試験における応力の上限値が0.6𝜎 にされて いる場合に,繰返し載荷に対して安全性が確認された応 力振幅の限界値を用いた.なお,振幅比率Δ𝜎 /∆𝜎 が 1 より大きければ 100 年間における活荷重の繰返し載荷 の影響が生じないと考えてよく,振幅比率は疲労耐久性 に対する安全余裕度の大きさと考えることができる. はじめに,𝜎 /𝜎 の全体的な傾向としては,対象と した橋梁が表-1 に示す耐荷性能に対する安全率を考慮 して設計されているため,ED 橋は 0.6 以下,コンクリー ト斜張橋,鋼斜張橋,複合斜張橋は0.4 以下,NL 橋は一 部を除き概ね0.28 以下となっている.一方で,吊橋(主 ケーブル,ハンガー)については,耐荷性能とは別に, 個別に疲労耐久性を検討している場合が多く,必ずしも 表-1 に示す安全率の傾向によらない結果となっている. (a)C1 (b)C2 (c)C3 (d)C4 図-7 応力振幅比率と応力度上限値比との関係 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 5 10 15 20 25 応力 度上限 値比 振幅比率 鋼斜張橋 複合斜張橋 コンクリート斜張橋 ED橋 NL橋 C1 ) ) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 5 10 15 20 25 応力度上限値比 振幅比率 ED橋 C2 ) ) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 5 10 15 20 25 応力度上限値比 振幅比率 吊橋(ハンガー) 吊橋(主ケーブル) 鋼斜張橋 コンクリート斜張橋 ED橋 NL橋 C3 ) ) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 5 10 15 20 25 応力 度上 限値 比 振幅比率 吊橋(ハンガー) 吊橋(主ケーブル) NL橋 C4 ) ) A

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C1 ケーブルに関して,鋼斜張橋の振幅比率が概ね 3~ 7 の範囲にあり,最も小さい場合でも 2.91 である.これ は,疲労耐久性を考慮した限界の応力振幅に対して,一 部を除き発生する応力振幅が1/3 以下となっていること を意味している.すなわち,応力振幅を基準とした場合, 実質的な安全余裕度が少なくとも3 以上確保されている といえる.また,鋼斜張橋の応力度上限値比は0.25~0.40 (ケーブル強度に対する安全余裕度 2.5~4.0)の範囲に あり,中には振幅比率と同等の安全余裕度となっている ケーブル部材もあることから,耐荷性能に対する安全率 を考慮して設計されたケーブル部材の中には,疲労耐久 性に対する安全余裕度が支配的となるケーブル部材もあ り得ることが伺える. また,コンクリート斜張橋においては,振幅比率が最 小で3.8,多くは 4~20 の範囲で広く分布しており,実質 的な安全余裕度は4 以上あるといえる.ED 橋について は,構造的にケーブル部材に変動応力が生じにくいこと から,振幅比率は最小で9,最大で 22.9 確保されている ことがわかる.NL 橋については振幅比率が最小で 3.2, 多くは4 程度,複合斜張橋についてはいずれも 6 程度で あり,安全余裕度としては鋼斜張橋の範囲にある. C2 ケーブルについては,すべて ED 橋での採用となっ ている.振幅比率については最小で9.8,多くは 10~23 の範囲で広く分布しており,C1 ケーブルと同様の傾向で ある. C3 ケーブルについては,NL 橋は振幅比率が少なくと も2 以上で,コンクリート斜張橋は少なくとも 3 以上で あり,ED 橋は最小 6.7 で,多くは 7~20 の範囲で広く分 布しているほか,鋼斜張橋で4 程度,吊橋で少なくとも 6 以上となっている.図中 A 橋は,吊橋にもかかわらず 𝜎 /𝜎 が 0.4 を超え,0.45 となっている.この橋梁は, 個別に荷重載荷シミュレーション等を行っており,ケー ブルの安全率を2.2 として設計されている.図より,こ の場合も応力振幅の観点からは比率が 12 以上確保され ている.なお,ED 橋は,応力の上限値が0.6𝜎 とされて いる場合でも,C1,C2,C3 のいずれのケーブル種別に おいても,振幅比率が7 以上あることがわかる. C4 ケーブルについては,吊橋で振幅比率が最小 3.9 で 多くは4~10 の範囲で分布し,NL 橋は 3 程度となって いることがわかる. また,振幅比率と橋梁規模の関係として,図-8 に振 幅比率(Δ𝜎 /∆𝜎 )と,主塔高さ・ライズを最大支間 長で除した値との関係を示す.図より,形式によらず橋 梁規模と振幅比率には明らかな相関がみられない.ただ し,ED 橋については橋梁規模が同程度にも関わらず,振 幅比率が最小6.7 で,7~23 の範囲で広く分布しており, 他の形式と異なる傾向にあることがわかる. 以上より,耐荷性能に対する安全率を考慮して設計さ れたケーブル部材について,これまでのケーブル部材の 設計実績に基づき, 100 年間における活荷重の繰返し載 図-8 応力振幅比率と橋梁規模との関係 荷の影響について分析を行った結果,疲労の影響が生じ る応力振幅に対して,少なくとも3 以上の安全余裕度が 確保されていることが明らかとなった.ただし,安全余 裕度の確保の程度は形式によってもその傾向に差異があ り,特にED 橋は他の形式やケーブルによらず他の形式 と大きな差があるため,安全余裕の取り方自体も形式と して別に扱うのが望ましい可能性が示唆された.また, 同じ橋のケーブル同士でもとるべき安全余裕の内訳が異 なっており,C1 ケーブルの鋼斜張橋のように,耐荷性能 に対する安全率を考慮して設計されてきたケーブル部材 のうち,疲労耐久性による安全余裕度が支配的となり得 るケーブル部材がある場合もあることも明らかとなった. 5.L 荷重に換算した場合の限界値 以上の結果に基づき,ここではL 荷重による応力振幅 を指標とした限界値について考察する.上記の通り,設 計実績によれば,耐荷性能に対する安全率を考慮して設 計されたケーブル部材は,応力振幅に対して少なくとも 3 以上の安全余裕度が確保されていることが明らかとな っている. そこで,所定の振幅比率に対する安全余裕度を確保す るための応力振幅の限界値を明らかにするため,表-3 に示す応力振幅の限界値を用いて, L 荷重による応力振 幅の限界値を式(6)により算出する.なお,式(6)における 𝛼と𝛽の積は,いずれの橋梁においても 0.13 程度となる ことから,式(8)を用いて応力振幅の限界値から換算 L 荷 重応力振幅Δ𝜎 を算出した. Δ𝜎 1 𝑆 1 1.66𝛼𝛽∆𝜎 (8) ここで,𝑆は振幅比に対する安全余裕度,∆𝜎 は応力 振幅の限界値(表-3 による)である. 図-9 に,式(8)から求めた換算 L 荷重応力振幅と応力 振幅比に基づく安全余裕度との関係を示す.例えば,C1 ケーブルにおいて,上限値を0.4𝜎 としてΔ𝜎 を 350 N/mm2程度に抑えた場合には,安全余裕度が3 程度確保 される.また,C2 ケーブルにおいて,上限値を0.4𝜎 と 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0 5 10 15 20 25 主塔 高さ・ ラ イズ /最 大支 間 長 振幅比率 吊橋(主ケーブル) 吊橋(ハンガー) 鋼斜張橋 複合斜張橋 コンクリート斜張橋 ED橋 NL橋 )

(9)

(a)応力の上限値が 0.4𝜎 の場合 (b)応力の上限値が 0.6𝜎 の場合 図-9 換算 L 荷重応力振幅と安全余裕度との関係 してΔ𝜎 を 240 N/mm2程度に抑えた場合には,安全余裕 度は4 程度となる. 一方,C1 ケーブルにおいて,例えば応力振幅Δ𝜎 を 130 N/mm2程度に抑えた場合,応力の上限値を0.4𝜎 とすれ ば安全余裕度は8 程度となる.また,同程度の安全余裕 度を上限値0.6𝜎 として確保するには,Δ𝜎 は 100 N/mm2 程度に抑えればよい.応力振幅の上限値と同程度の安全 余裕を確保できる応力振幅Δ𝜎 との関係は必ずしも明ら かでないが,上記の例のように0.4𝜎 と0.6𝜎 の二つの 水準を基準として直線的に増減させる方法も考えられる. 文献2)の方法は,このような考え方により増減させてい ると考えられ,同等の安全余裕を確保する一つの方法と 位置付けることができる. 6.結言 H24 道示までの設計基準で設計されてきた道路橋のケ ーブル部材で耐荷性能の照査で確保されてきた安全余裕 について,活荷重に対する疲労耐久性の観点でどのよう な意味を有していたのかについて明らかにすることを目 的に検討を行った. その結果,以下のことが明らかになった. (1) H24 道示までの設計基準で設計された道路橋のケ ーブル部材で耐荷性能の照査において確保されて いる計算応力に対する安全余裕は,活荷重による応 力振幅に対して少なくとも3倍以上の安全余裕が確 保されている可能性が高い.ただし,安全余裕の大 きさの程度には橋梁形式及び同じ橋の中のケーブ ル毎にも大きな幅がある. (2) 耐荷性能と疲労に対する耐久性能のどちらに対す る安全余裕がより支配的となるのかについては,形 式毎にもある程度の特徴がみられるものの,同じ橋 のケーブル毎にも大きな差がある. (3) 耐荷性能の照査に用いられる L 荷重の載荷に伴う 応力振幅と関連付けることで,それぞれのケーブル 部材の疲労耐久性と耐荷性能の関係の違いをある 程度考慮でき,橋の形式のみによる安全率の差別化 による場合よりも合理的な安全率の設定が可能で ある.なお,平成29 年に改定された道路橋示方書 では,本研究の成果も参考に活荷重による応力振幅 に応じて安全余裕を確保するという考え方による 規定が行われている. なお,ここでの検討で仮定した値は一つの仮定に過ぎ ないことから,必ずしも実際の載荷状況を考慮した疲労 耐久性を定量評価したものではない.しかし,想定した 活荷重の頻度分布は極めて厳しい状況にある計測地点の 実測に基づくものであることや,数値シミュレーション による応答算出結果には一定の妥当性があることより, 凡その傾向は把握できているものと考えられる. 謝辞 実績分析の実施にあたり,各橋梁の道路管理者の多大 なご協力を頂いた.ここに記し謝意を表す. 参考文献 1) (公社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋 編,2012. 2) (社)プレストレストコンクリート技術協会:PC斜 張橋・エクストラドーズド橋設計施工規準,技報堂 出版,2009. 3) 内藤純也,西村宣男:鋼斜張橋ケーブルの疲労安全 性と部材安全率に関する研究,土木学会論文集 No.780/I-70,pp.145-153,2005. 4) 土木学会:鋼構造シリーズ 16 ケーブルを使った合 理化橋梁技術へのノウハウ,2007. 5) 小林和夫:外ケーブル PC 構造に関する研究の現状, 土木学会論文集,No.550/V-33,pp.1-12,1996. 6) 睦好宏史: 外ケーブル PC 構造物の現状と問題点, コンクリート工学,Vol.31,No.8,pp.24-35,1993. 7) 睦好宏史:大偏心外ケーブル PC 橋の現状,コンク リート工学,Vol.38,No.12,pp.10-16,2000. 8) 西川和廣,廣松新,鈴木素彦,伊藤公彦:外ケーブ ルを適用したPC 桁の曲げ・せん断挙動に関する研 究,プレストレストコンクリート,Vol.42,No.5, 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 換算 L荷重応 力振幅 振幅比による安全余裕度 C1 C2 C3 C4 0.4pu (N/mm 2) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 換算L荷重応 力振幅 振幅比による安全余裕度 C1 C2 C3 C4 0.6pu (N / m m 2)

(10)

pp.25-36,2000. 9) 梅津健司,平喜彦,高木康宏,藤田学,山﨑淳:外 ケーブル方式PC 桁の曲げせん断特性に関する研 究,土木学会論文集,No.781/V-66,pp.57-74,2005. 10) 新井英雄,藤田学,梅津健司,鮒子多浩一,上田多 門:大容量PC 鋼より線の曲げ配置部におけるフレ ッティング疲労特性,土木学会論文集,No.627/V-44, pp.205-222,1999. 11) 北川信:吊橋ケーブルの二次応力測定(平戸大橋), 本四技報, Vol.2,No3,本州四国連絡橋公団,pp.8-13, 1978. 12) 村越潤,梁取直樹,有馬敬育,清水英樹,小森大資: 鋼材料・鋼部材の強度等に関する統計データの調 査,土木研究所資料,第 4090 号,2008. 13) 遠藤武夫,奥川淳志,竹之内博行,三木千壽:橋梁 用ケーブルの曲げ疲労強度,鋼構造論文集,第1 巻, 第3 号,pp.91-102,1994. 14) 坂本良文, 北條哲男, 江口立也, 矢野守俊:斜張橋 用プレ防食型ケーブルの二次応力および曲げ疲労 強度に関する検討,土木学会論文集,No.446/I-19, pp.215-223,1992. 15) 牧野文雄,小松定夫,田中義人,原口俊男:太径ケ ーブルの疲労強度に関する研究,土木学会論文集, No.374/I-6,pp.477-486,1986. 16) (社)日本道路協会:道路橋耐風設計便覧(平成 19 年 改訂版),2007. 17) 白戸真大,星隈順一,玉越隆史,宮原史,横井芳輝, 川見周平,山﨑健次郎:道路橋の設計状況設定法に 関する研究,国土技術政策総合研究所資料,第1031 号,2018. 18) 玉越隆史,中州啓太,石尾真理:道路橋の設計自動 車荷重に関する試験調査報告書-全国活荷重実態 調査-,国土技術政策総合研究所資料,第295 号, 2006. 19) 三木千壽,水ノ上俊雄,小林裕介:光通信網を使用 した鋼橋梁の健全度評価モニタリングシステムの 開発,土木学会論文集,No.686/Ⅳ-52,pp.31-40,2001. 20) 高木伸也,村越潤,麓興一郎,次村英毅:部材応力 の長期計測による鋼橋モニタリングに関する基礎 検討,鋼構造論文集,第11 巻,第 43 号,pp.159-169,2004. 21) (財)海洋架橋調査会:限界状態設計法による長大吊 橋の設計基準の検討報告書,1987.

22) A. Kasuga: Extradosed bridges in Japan, Structural Concrete,No.3,pp.92-103,2006. 23) 菊池厚,渡辺孝司,黒輪亮介:高強度 PC 鋼より線 外ケーブル定着具の開発,プレストレストコンク リート技術協会 第 19 回シンポジウム論文集, pp.473-476,2010. 24) 小野寺勇,木水隆夫,春日昭夫,山村正人:小田原 ブルーウェイブリッジの斜材システムに関する曲 げ疲労試験,プレストレストコンクリート技術協 会 第 5 回シンポジウム論文集,pp.89-94,1995. 25) (社)日本鋼構造協会:鋼構造物の疲労設計指針・同 解説,1993.

26) EN1993-1-11: Eurocode 3- Design of steel structure Part 1-11: Design of structures with tension components, 2006. 27) DIN1073: Post-Tensioning Institute: Recommendations

for Stay Cable Design, Testing, and Installation, 2012. Stahleren Strassenbrucken. Berechnungsgrundlagen, 1974.

(2020 年 9 月 15 日受付) (2021 年 2 月 1 日受理)

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