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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 先進理工学研究科. 博 士 論 文 概 要. 論. 文. 題. 目. 新奇遠隔不斉誘導反応の開発と抗生物質 coprophilin の合成への応用 Development of New Remote Asymmetric Inductive Reactions and the Application to the Total Synthesis of Coprophilin. 申. 請. 者. 佐川. 直也. Naoya. SAGAWA. 応用化学専攻. 有機合成化学研究. 2016 年 12 月.

(2) 鎖状ポリケチドは天然有機化合物の中でも有益な生物活性を有するものが多く、マクロライド系抗 生物質のように医薬品として利用されている重要な化合物群の一つである。ポリケトン鎖の伸長、酸 化、還元、脱水等の修飾を繰り返して生合成される鎖状ポリケチドは、主鎖に対してメチル基や水酸 基が連続的に、あるいは二重結合などを介して断続的に置換された構造を有している。過去数十年に おける有機合成化学の目覚ましい発展により、様々な鎖状立体制御法が確立され、数多くの鎖状ポリ ケチドの合成が達成されてきた。しかし、それらの合成例の多くは次のような理由から多工程を要す る合成となっており、合成にかかる労力が極めて大きいという課題がある。1)鎖状立体制御反応では 主鎖に対し 2 炭素の増炭にとどまること、2)主鎖の増炭反応のための官能基変換が必要であること、 3)官能基変換や増炭反応のために保護基の着脱が必要であること。これらの問題を解決することがで きれば、鎖状ポリケチドの短工程合成が可能となり、創薬研究を含めた応用展開を加速することが期 待できる。 本論文は新奇遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応の開発研究およびそれを応用した天然 物の合成研究に関するものである。ビニロガス向山アルドール反応は、主鎖に対して 4 炭素の増炭を 行うことが可能であるが、過去に立体制御に成功した例は少なく、実用的な手法は限られている。そ のため、立体選択的ビニロガス向山アルドール反応の開発は、鎖状ポリケチドの合成における増炭工 程や保護基の着脱を省略することを可能とし、短工程合成に寄与する。本研究は、過去に開発された 不斉補助基を用いる遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応を基盤として展開した。過去に開 発された遠隔不斉誘導反応は、主鎖の C2 位にメチル基を有するポリケチド鎖の合成にのみ有効であり、 C2 位が無置換のポリケチド鎖を立体選択的に構築することは困難であった。これは後者の場合、基質 であるシリルジエノールエーテルの反応点と不斉補助基の距離が遠いことに起因しており、より困難 な遠隔不斉誘導反応となるからである。そこで基質の再設計をおこない、収率及び選択性の改善を図 ることで遠隔不斉誘導反応を実現し、C2 位が無置換の鎖状ポリケチドの効率的合成法を確立すること とした。また、開発した手法の有用性を示すべく、天然物合成への応用を目指して研究をおこなった。 本論文は全 6 章で構成した。以下にその概略を述べる。 第一章は序論であり、本研究の背景および目的について述べた。第一節では鎖状ポリケチドとそれ らの合成に用いられる代表的な鎖状立体制御法について述べ、鎖状ポリケチドの合成が多工程を要す ることを示した。第二節ではビニロガス向山アルドール反応の有用性と本研究の基盤である過去の遠 隔不斉誘導反応とその適用範囲について示し、本研究の目的と意義を述べた。 第二章はアルデヒドを求電子剤として用いる新奇遠隔不斉誘導反応について述べた。第一節におい て、類似骨格を与えるビニロガス向山アルドール反応の先行研究例を示し、それらの問題点を示した。 先行研究はいずれも触媒的ビニロガス向山アルドール反応を志向したものであるが、基質適用範囲や 立体選択性に問題があるものが多い。また、いずれもエナンチオ選択的反応であり、実際の合成では アルドール反応後に光学分割のための工程を要している。さらにメチル基と水酸基の二つの立体化学 が発現するビニロガス向山アルドール反応は、有用な反応の報告例がわずかしかなく、それらも合成 的な応用はされていない。以上の観点からも実用的なビニロガス向山アルドール反応の開発が求めら れており、これを実現するべく研究に着手した。第二節では-シロキシ--不飽和イミドを与える遠 隔不斉誘導反応の開発について述べた。先行研究において C1 位に Evans の不斉補助基を持ち C2 位に No.1.

(3) メチル基を持たないシリルジエノールエーテルは、TBS 基を用いており酸性条件下不安定であった。 そこでシリル基として酸に強い TBDPS 基を採用し、収率の改善を図った。この基質に対してベンズア ルデヒドおよび種々のルイス酸を作用させ、ビニロガス向山アルドール反応を検討し、四塩化スズの みが高立体選択的に反応を進行させることを明らかにした。この際得られたアルドール体は、生じた 水酸基がシリル基で保護されており、多段階合成をおこなう上で有用である。さらに、不斉補助基上 のイソプロピル基の向きを制御し、反応点に近づけることを目的に、不斉補助基の C5 位に置換基を有 する基質を種々検討した。その結果、(S)-4-isopropyl-5,5-diphenyl-2-oxazolidinone を不斉補助基として用 いた際に高立体選択的に反応が進行し、水酸基の立体化学が 5R のアルドール体を優先して与えること を見出した。本反応は芳香族アルデヒドにおいて高収率および高立体選択的に進行し、脂肪族アルデ ヒドでは若干の収率の低下がみられるものの、いずれも高立体選択的に進行した。-不飽和アルデヒ ドにおいてはその選択性が中程度にとどまったものの、チグリックアルデヒドにおいてルイス酸を三 フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体へと変更することで、四塩化スズを用いた際とは逆の立体化学で ある 5S 体が高立体選択的に得られることを明らかにした。第三節では anti 選択的に-シロキシ-ɤ-メチ ル--不飽和イミドを与える遠隔不斉誘導反応について述べた。第二節の知見を基に、シリルジエノ ールエーテルの末端にメチル基を導入して遠隔不斉誘導反応の検討を行った。ルイス酸を四塩化スズ とし、プロピオンアルデヒドに対してビニロガス向山アルドール反応を検討した結果、 (S)-4-isopropyl-5,5-dimethyl-2-oxazolidinone を不斉補助基として有する基質が最も良い結果を与えたた め、これを最適な基質として種々アルデヒドとの反応を検討した。芳香族アルデヒドにおいては四塩 化スズを 2 当量用いることで反応は高立体選択的に進行し、メチル基とシロキシ基が anti の関係にあ るアルドール体が優先して得られた。先行研究では anti 選択的ビニロガス向山アルドール反応が進行 しない脂肪族アルデヒドにおいても、本研究の反応では中程度の選択性ながら anti 体が優先して得ら れた。一般的にアルドール反応では syn 体が優先して得られる傾向が強く、anti 選択的反応は反応機構 の面からも興味深いものである。また、-不飽和アルデヒドでは共役付加のみが進行し望みのアルド ール体は得られなかった。第四節ではアルデヒドおよび四塩化スズを用いる遠隔不斉誘導反応の推定 反応機構を示した。見出した最適な基質に対して種々のルイス酸を検討した結果、四塩化スズとその 他のルイス酸では立体選択性が逆転することを見出した。さらなる検討の結果、四塩化スズのみがシ リルジエノールエーテルを異性化させることを明らかにした。異性化したシリルジエノールエーテル を用いた速度論的な実験と、得られたアルドール体の立体化学から、本反応は四塩化スズによる異性 化を経たのちにアルドール反応が進行するものと考察した。このような異性化は過去に報告例がなく、 新しい現象を示すことができた。 第三章はアセタールを求電子剤として用いる新奇遠隔不斉誘導反応について述べた。第一節ではア セタールを用いたビニロガス向山アルドール反応の例を示した。ビニロガス向山アルドール反応にお いてアセタールが用いられた例は少ないが、2013 年に C2 位にメチル基を有するシリルジエノールエ ーテルとアセタールとの遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応が報告されており、従来では. anti 選択的な反応が、syn 選択的反応に変化することが示されている。そこでこれを応用し、syn 選択 的な反応の開発に着手した。第二節では syn 選択的な-アルコキシ-ɤ-メチル--不飽和イミドを与え る遠隔不斉誘導反応の開発について述べた。ベンズアルデヒドジメチルアセタールに対して、種々の No. 2.

(4) ルイス酸および置換基(シリル基および不斉補助基)の異なる基質を検討した結果を示した。その結果、 ルイス酸に TMSOTf、シリル基に TBS 基、不斉補助基に(S)-4-isopropyl-5,5-dimethyl-2-oxazolidinone を 用いた条件にて高立体選択的に syn 体[(4S, 5R)体]が得られることを見出した。本反応は広い適用範囲を 有し、いずれも短時間で反応が終了することが特徴である。また、得られたアルドール成績体は水酸 基が保護された構造であり、合成上有用である。第三節ではアセタールを用いる遠隔不斉誘導反応の 推定反応機構を示した。シリルジエノールエーテルの末端のメチル基に関して幾何異性が逆の基質を 合成し、これを同様の条件下ベンズアルデヒドジメチルアセタールと反応させることで、主生成物と して 4 位メチル基が R、5 位アルコキシ基が R と S の 2 種類の異性体が 1:1 の混合物として得られた。 この結果から、シリルジエノールエーテルの面選択性は、シリル基に置換したメチル基と活性化した アセタールとの立体障害により発現していることを明らかにした。 第四章は抗生物質 coprophilin の合成研究について述べた。第一節において coprophilin を合成する意 義について述べた。Coprophilin は 1998 年に未同定の胞子菌株 MF5773 の培養液中から単離された化合 物であり、当初はコクシジウム病菌に対する抗菌活性のみが報告されていた。近年、同一のデカリン 骨格を有する類縁体 AMF-26 が新規ゴルジ体阻害剤として注目されており、coprophilin の活性につい ても再評価が求められている。本章では coprophilin の合成を通じて、AMF-26 に共通するデカリン骨 格の効率的合成法の確立を目的とした。第二節においては、類縁体 AMF-26 の合成例を紹介するとと もに、合成戦略を示した。開発した遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応を用いることで、 短工程の合成が可能であると考えている。第三節では開発した遠隔不斉誘導反応を用いた coprophilin の合成について述べた。まず、Evans アルキル化反応により立体選択的にジエン部位を持ったイミドを 合成した。このジエンはシリカゲルクロマトグラフィー上で容易に異性化してしまうため、以降のジ エンを持つ基質はアルミナクロマトグラフィーによって精製している。得られたイミドを DIBAL を用 いて還元することでアルデヒドへと導いたのち、野依法によりアセタールを合成した。得られたアセ タールを用い、開発した遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応を行うことで高立体選択的に アルドール成績体を得ることに成功した。メチルエステル化により不斉補助基を除去したのち、塩化 ジエチルアルミニウムを過剰量作用させることで分子内 Diels-Alder 反応を進行させ、立体選択的にデ カリン骨格を構築した。メチルエステルの還元によりアルコールとし、これを酸化することでアルデ ヒドへと導いた。最後に Horner-Wadsworth-Emmons 反応により側鎖を導入した後、ベンジル基を除去 することによって coprophilin の合成を達成した。 第五章は総括である。従来困難であった遠隔不斉誘導反応の開発に成功し、その特異な立体選択性 を明らかにすることができた。また、これを応用した天然物合成を通して開発した反応の有用性を示 すことができた。 第六章は実験項である。本論文中で見出された新規化合物の合成法および種々の物性値を示した。 以上のように、本博士論文は、困難とされた遠隔不斉誘導型ビニロガス向山アルドール反応の開発に 取り組み、水酸基及びメチル基の置換様式が異なる 3 種の反応の開発に成功するとともに、天然物合 成へと応用することで開発した反応の有用性を示したものである。このように鎖状ポリケチドの短工 程合成を可能とする本反応は、今後の鎖状ポリケチドの合成研究を加速させ、創薬研究を含めた応用 展開に貢献するものと期待される。 No. 3.

(5) No.1. 早稲田大学 氏 名. 佐川 直也. 博士(工学). 学位申請. 研究業績書. 印 (2017 年. 種 類 別. 題名、. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 2月. 現在). 連名者(申請者含む). 論文 ○. ○. 1. 速報 Naoya Sagawa, Haruka Sato, and Seijiro Hosokawa “Remote Asymmetric Induction using Acetate-type Vinylketene Silyl N,O-Acetals”, Organic Letters, 19, 198-201 (2017). 2. 速報 Naoya Sagawa, Hiroki Moriya, and Seijiro Hosokawa “Syn Selective Vinylogous Mukaiyama Aldol Reaction using Z,E-Vinylketene N,O-Acetal with Acetals”, Organic Letters, 19, 250-253 (2017)..

(6) No.2. 早稲田大学 種 類 別 講演. 題名、. 博士(工学) 発表・発行掲載誌名、. 学位申請. 研究業績書. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). 1. 佐川直也, 細川誠二郎 「遠隔不斉誘導反応の開発と天然物合成への応用」 、 第 51 回天然物談話会、 新潟、2016 年7月 2. (国際会議) Naoya Sagawa, Maiko Otsuka, Hiroki Moriya, Seijiro Hosokawa, “Studies on the remote asymmetric induction type vinylogous Mukaiyama aldol reaction with acetals and application to the synthesis of coprophilin“, Symposium on Molecular Chirality 2015, Tokyo, June, 2015 3. 佐川直也、佐藤陽日、細川誠二郎、「新規不斉素子を用いた遠隔不斉誘導反応の開発研 究」、第 106 回有機合成シンポジウム、東京、2014 年 11 月 4. 佐川直也、細川誠二郎、 「鎖状ポリケチドの短工程合成法 ビニロガス向山アルドール反 応の開発」 、第 49 回天然物談話会、岡山、2014 年 7 月 5. 佐川直也、細川誠二郎、「新規遠隔不斉誘導アルドール反応の開発研究」、日本化学会第 94 回春季年会、名古屋、2014 年 3 月 6. 佐川直也、迎田裕貴、細川誠二郎、「新型不斉素子を用いた遠隔不斉誘導反応」、第 102 回有 機合成シンポジウム、東京、2012 年 11 月 7. 迎田裕貴、佐川直也、細川誠二郎 、「新型ビニロガス向山アルドール反応の開発研究」、 日本化学会第 92 回春季年会、横浜、2012 年 3 月.

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