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いる 情報を与える細胞 ( シナプス前ニューロン ) の軸索終末の細胞膜 ( シナプス前膜 ) と情報を受け取る細胞 ( シナプス後細胞 ) の細胞膜 ( シナプス後膜 ) とは直接接触してはいない 両者の間には狭い ( 約 20μm) シナプス間隙と呼ばれる狭い間隙がある シナプス小胞にはニューロ

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Academic year: 2021

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第3章

高次脳機能の解剖学的基礎

1 . 神 経 系 の 微 細 構 造 1 . 1 ニ ュ ー ロ ン 神 経 系 は 末 梢 神 経 系 と 中 枢 神 経 系 に 分 け ら れ る 。 末 梢 神 経 系 は さ ら に 末 梢 体 神 経 系 と末 梢 自 律 神 経 系 に 分 け ら れ る 。 前 者 は 運 動 、 感 覚 の よ う な い わ ゆ る 動 物 機 能 に 関 係 し 、 後者 は 呼 吸 、 循 環 の よ う な い わ ゆ る 植 物 機 能 に 関 係 す る 。 中 枢 神 経 系 は 脊 髄 と 脳 に 分 け ら れ る 。 他 の 身 体 組 織 と 同 じ く 中 枢 神 経 系 も 細 胞 か ら 構 成 さ れ て い る 。 ニ ュ ー ロ ン ( 神 経 細 胞 ) と グ リ ア 細 胞 ( 神 経 膠 細 胞 ) で あ る 。 図 3 - 1 は電 子 顕 微 鏡 ( 電 顕 ) で 捉 え た ニ ュ ー ロ ン の 実 際 の 姿 で あ る 。 こ れ を ご く 模 式 的 に 示 す と 図3 - 2 の ご と く で あ る 。 ニ ュ ー ロ ン は 大 き く 細 胞 体 、 樹 状 突 起 、 軸 索 に 分 か れ る 。 細 胞 体に は 核 、 ゴ ル ジ 体 、 リ ボ ゾ ー ム な ど 生 命 維 持 活 動 に 必 要 な 細 胞 器 官 が 存 在 す る 。 樹 状 突 起は 細 胞 の 回 り に 茂 み の よ う に 枝 を 伸 ば し て お り 、 他 の ニ ュ ー ロ ン か ら の 情 報 を 受 容 す る 働き を す る 。 軸 索 は 細 胞 体 よ り 長 く 伸 び て 他 の ニ ュ ー ロ ン に 情 報 を 伝 え る 働 き を す る 。 神 経 線 維 、 す な わ ち 軸 索 に は 2 種 類 あ る 。 髄 鞘 と よ ば れ る 膜 に よ っ て 包 ま れ て い る 有 髄 線 維 と 髄 鞘 の な い 無 髄 線 維 で あ る 。 髄 鞘 は ミ エ リ ン 細 胞 の 細 胞 膜 が 軸 索 の 周 囲 に ロ ー ルペ ー パ ー 状 に 巻 き 付 い た 多 層 の 構 造 物 で あ る 。 末 梢 神 経 系 で は 髄 鞘 は シ ュ ワ ン 細 胞 が 作 る。 髄 鞘 は 電 気 抵 抗 が 高 い 絶 縁 体 で あ る 。 髄 鞘 に は 1~3mm 程の間隔で切れ目がある。これを ラ ン ヴ ィ エ 絞 輪 と い い 、 電 気 抵 抗 が 非 常 に 低 い 。 1 . 2 シ ナ プ ス ( 図 3 - 2 ) 軸 索 は 長 く 伸 び て 他 の ニ ュ ー ロ ン に ま で 達 す る が 、 軸 索 と ニ ュ ー ロ ン は 直 接 接 触 す る こ と は な い 。 シ ナ プ ス と 呼 ば れ る 独 特 の 構 造 を 形 成 す る 。 軸 索 は 終 末 部 で 枝 分 か れ し シ ナプ ス 釦 と よ ば れ る 小 さ な 膨 ら み を 形 成 し て 他 の ニ ュ ー ロ ン の 細 胞 体 や 樹 状 突 起 と 接 す る 。シ ナ プ ス 釦 に は 直 径 20~40μmのシナプス小胞(袋状の構造物、スパイン)が多数集まって 3-1

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い る 。 情 報 を 与 え る 細 胞 ( シ ナ プ ス 前 ニ ュ ー ロ ン ) の 軸 索 終 末 の 細 胞 膜 ( シ ナ プ ス 前 膜) と 情 報 を 受 け 取 る 細 胞 ( シ ナ プ ス 後 細 胞 ) の 細 胞 膜 ( シ ナ プ ス 後 膜 ) と は 直 接 接 触 し ては い な い 。両 者 の 間 に は 狭 い( 約 20μm)シナプス間隙と呼ばれる狭い間隙がある。シナプ ス 小 胞 に は ニ ュ ー ロ ン 間 の 情 報 伝 達 に 関 係 す る 神 経 伝 達 物 質 が 蓄 え ら れ て い る1 図 3 - 1 ニ ュ ー ロ ン の 電 子 顕 微 鏡 写 真 1 詳 細 は 第 4 章 、 第 5 章 参 照 。 3-2

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図 3 - 2 ニ ュ ー ロ ン と シ ナ プ ス の 模 式 図 1 . 3 グ リ ア 細 胞 脳 に は ニ ュ ー ロ ン よ り は る か に 多 数 ( 約 1 0 倍 ) の グ リ ア 細 胞 が 存 在 す る 。 希 突 起 状膠 細 胞 ( オ リ ゴ デ ン ド ロ グ リ ア 、 オ リ ゴ デ ン ド ロ サ イ ト ) 、 小 膠 細 胞 ( ミ ク ロ グ リ ア ) 、星 状 膠 細 胞 ( ア ス ト ロ グ リ ア 、 ア ス ト ロ サ イ ト ) 、 の 3 種 が あ る ( 図 3 - 3 )2 オ リ ゴ デ ン ド ロ グ リ ア は ニ ュ ー ロ ン の 軸 索 の 髄 鞘 を 構 成 す る 。 ミ ク ロ グ リ ア は 中 枢 神 経 系 の 環 境 の 変 化 を 察 知 す る セ ン サ ー の 役 割 を 果 た す 。 障 害 や 疾 病 な ど の 環 境 の 変 化 に いち 早 く 対 応 し 、 脳 の 恒 常 性 を 維 持 す る 役 割 を 果 た す 。 ア ス ト ロ サ イ ト は そ の 名 の と お り 星 状 を な す 。 四 方 八 方 に 突 起 を 出 し ニ ュ ー ロ ン お よ び 脳 の 毛 細 血 管 を 取 り 囲 ん で い る 。 ア ス ト ロ サ イ ト の 平 均 体 積 は 約 66,000μm3で 、 そ の 体 2 最 近 、 「 ポ リ デ ン ド ロ サ イ ト 」 が 第 四 の グ リ ア 細 胞 と し て 認 識 さ れ る よ う に な っ た 。 ポ リ デ ン ド ロ サ イ ト は 「 中 枢 神 経 系 の 実 質 内 で NG2 プロテオグリカン(タンパクとグリコ サ ミ ノ グ リ カ ン が 結 合 し た 分 子 、 細 胞 膜 存 在 ) を 発 現 す る 細 胞 」 と 定 義 さ れ る 。 ア ス ト ロ サ イ ト の マ ー カ ー で あ る GFAP や GLAST を発現せず、ミクログリアのマーカーである F4/80 や CD11b も発現しない点でこれらのグリア細胞と区別される。さらにポリデンドロ サ イ ト は オ リ ゴ デ ン ド ロ グ リ ア に 分 化 す る 能 力 を 有 す る が 、 分 化 し た 時 点 で NG2 プロテ オ グ リ カ ン の 発 現 は 失 わ れ る 。 こ れ ら の 事 実 か ら ポ リ デ ン ド ロ サ イ ト は 他 の グ リ ア 細 胞 と は 異 な る 細 胞 種 と し て 認 識 さ れ る よ う に な っ た 。 ポ リ デ ン ド ロ サ イ ト は 胎 生 期 に 活 発 に 分 裂 を 繰 り 返 し 、 成 体 に お い て も 高 い 分 裂 能 力 を 維 持 し 続 け る 。 そ こ で ポ リ デ ン ド ロ サ イ ト は 種 々 の 脳 腫 瘍 形 成 の 発 端 と な る 脳 腫 瘍 母 細 胞 ( 脳 腫 瘍 幹 細 胞 ) で あ る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 3-3

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積 に 対 す る 表 面 積 の 比 は 約 26μm2/μmに も な っ て い る 。 従 っ て 、1 個のアストロサイ ト の 表 面 積 は お よ そ 2mm2に も 達 す る 膨 大 な も の で あ る 。そ の 薄 い 膜 が 作 る 空 間 に ニ ュ ー ロ ン か ら の 樹 状 突 起 が 入 り 込 ん で お り 、 別 の ニ ュ ー ロ ン か ら 伸 び て き た 軸 索 と の 間 に シナ プ ス を 作 る 。成 熟 ラ ッ ト 海 馬 で は 、ア ス ト ロ サ イ ト 100μm3あ た り に 約200 個のシナプス が 存 在 す る と の 報 告 に 従 え ば 、 一 つ の ア ス ト ロ サ イ ト が 作 り 出 す 空 間 の 中 に お よ そ 140,000 個ものシナプスが含まれていることになる。ニューロン側にスポンジ状に広がっ て い る ア ス ト ロ サ イ ト の 末 端 は 別 の ア ス ト ロ サ イ ト に 絡 み 合 う こ と は な く 、1 個のアスト ロ サ イ ト の 領 域 を 作 り だ し て い る 。 そ れ が 互 い に 広 い 範 囲 で 接 触 し た 状 態 に な っ て い るの で あ る 。 一 方 、 ア ス ト ロ サ イ ト か ら 伸 び る 突 起 の 一 方 は 血 管 に 伸 び て こ れ を 包 み 込 ん でい る 。 こ こ で そ の 突 起 は 別 の ア ス ト ロ サ イ ト の 突 起 と 接 触 し て い る 。 ニ ュ ー ロ ン は 生 後 基 本 的 に は 分 裂 し な い が3、 グ リ ア 細 胞 は 盛 ん に 分 裂 す る 。 グ リ ア す な わ ち 膠 と い う 名 称 の 通 り ニ ュ ー ロ ン の 間 隙 を 満 た し て 支 持 細 胞 と し て 働 き 、 ニ ュ ー ロ ン の 栄 養 、 代 謝 に 関 係 し て い る 。 当 初 グ リ ア 細 胞 は 中 枢 神 経 系 の 情 報 伝 達 処 理 に は 関 係 し な い と 考 え さ ら れ て い た が 、 近 年 の 研 究 で は グ リ ア 細 胞 に も 電 気 活 動 が 存 在 す る こ と が 明 ら か に さ れ つ つ あ り 、 記 憶 な ど の 高 次 脳 機 能 に も 関 与 し て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る4 3 近 年 、 発 達 期 は も ち ろ ん 、 発 達 終 了 後 の 中 枢 神 経 系 の ニ ュ ー ロ ン も 分 裂 し う る と い う 報 告 が 多 数 な さ れ て い る 。 4 第 4 章 参 照 。 3-4

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2 . 中 枢 神 経 系 2 . 1 中 枢 神 経 系 の 発 生 受 精 卵 が 分 裂 を 続 け て 胚 に な る と そ の 背 面 に 神 経 管 が 出 来 る 。 神 経 管 は 脊 髄 管 と 脳 管 に 分 か れ る 。脊 髄 管 は 脊 髄 に な る 。脳 管 に は し だ い に 三 つ の ふ く ら み が 出 来 、前 方 か ら 前 脳 、 中 脳 、 菱 脳 と な る 。 菱 脳 は さ ら に 後 脳 と 髄 脳 に 分 か れ 、 前 者 か ら 小 脳 と 橋 が 生 じ 、 後 者は 延 髄 と な る 。 中 脳 は あ ま り 変 化 せ ず に 終 わ る 。 前 脳 は 次 第 に 分 化 し て 終 脳 と 間 脳 に な り、 さ ら に 前 者 が 大 脳 に な り 、 後 者 は 視 床 上 部 、 視 床 お よ び 視 床 下 部 と な る ( 図 3 - 4 ) 。 図 3 - 4 中 枢 神 経 系 の 発 生 学 的 分 類 2 . 2 脊 髄 中 枢 神 経 系 は 大 き く 脊 髄 と 脳 に 分 か れ る ( 図 3 - 5 ) 。 脊 髄 は 脳 に 続 く 棒 状 の 構 造 で 内 部 は ニ ュ ー ロ ン の 集 ま り で あ る 灰 白 質 ( 灰 色 に 見 え る ) 、 外 側 は 神 経 線 維 の 集 ま り で ある 白 質 ( 白 く み え る ) に よ っ て 構 成 さ れ る 。 脊 髄 は 脳 と 末 梢 の 臓 器 を 結 ぶ 神 経 線 維 の 伝 導路 で あ る 。 2 . 3 脳 の 概 要 脳 は 固 い 頭 蓋 骨 に 囲 ま れ た 空 所 に あ り 、 硬 膜 、 蜘 蛛 膜 、 軟 膜 の 三 重 の 膜 に 囲 ま れ 、 さ ら に 髄 液 と い う 液 体 の 中 に 浮 い て い る 。 脳 は 延 髄 、 橋 、 中 脳 、 小 脳 、 間 脳 、 大 脳 に 大 別 され 3-5

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る ( 図 3 - 5 ) 。 図 3 - 5 中 枢 神 経 系 2 . 4 脳 幹 延 髄 、 橋 、 中 脳 は 機 能 的 、 構 造 的 に 関 連 が 深 く 、 一 括 し て 脳 幹 と 呼 ば れ て い る 。 脳 幹 は 構 造 的 に 二 つ の 側 面 を 有 し て い る 。一 つ は 大 脳 、小 脳 か ら 末 梢 に 向 か う 神 経 線 維( 下 行 路 ) お よ び 末 梢 か ら 大 脳 、 小 脳 に 向 か う 神 経 線 維 ( 上 行 路 ) の 走 行 路 と し て の 側 面 で あ る 。運 動 、 感 覚 に 関 す る 様 々 の 線 維 が こ こ を 通 り 、 あ る も の は こ の 位 置 で 左 右 交 叉 す る 。 第 二の 側 面 は 機 能 中 枢 と し て の 側 面 で あ る 。 脳 幹 に は 多 数 の 神 経 核 が 存 在 す る 。 神 経 核 と は 多数 の ニ ュ ー ロ ン が 塊 状 に 埋 も れ た 状 態 で あ る 。 脳 幹 に あ る 神 経 核 ( 脳 神 経 核 ) の あ る も のは 呼 吸 、 循 環 、 消 化 な ど の 生 命 機 能 の 維 持 に 関 与 し て い る ( 自 律 神 経 性 脳 神 経 ) 。 あ る もの は 運 動 ( 運 動 性 脳 神 経 ) や 感 覚 ( 感 覚 性 脳 神 経 ) に 関 与 し て い る 。 脳 幹 に は ニ ュ ー ロ ンと 神 経 線 維 と が 網 の 目 の よ う に 絡 み あ っ た 構 造 が あ り 、 脳 幹 網 様 体 と い う 。 意 識 の 維 持 や覚 醒 ― 睡 眠 サ イ ク ル の 維 持 に 関 与 し て い る 。 2 . 5 小 脳 小 脳 は 重 さ 130 グラムほどで大部分は大脳により覆われている。小脳は左右に大きく張 り 出 し た 小 脳 半 球 と 真 ん 中 の く び れ た 虫 部 に 分 け ら れ る 。 半 球 、 虫 部 と も そ の 表 面 に 多数 の 襞 が あ り 、 そ れ に よ っ て 幾 つ か の 領 野 ( 脳 回 ) に 分 け ら れ る 。 小 脳 の 表 面 に は ニ ュ ーロ 3-6

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ン が 集 ま り 、中 心 部 に は 神 経 線 維 が 樹 状 に 拡 が っ て い る 。前 者 を 皮 質 、後 者 を 髄 質 と い う 。 髄 質 の 内 部 に は い く つ か の 核 ( 小 脳 核 ) が 埋 も れ て い る 。 い ず れ も 小 脳 に 入 出 力 す る 線維 の 中 継 点 で あ る 。 小 脳 は 身 体 平 衡 、 協 応 動 作 な ど の 運 動 機 能 に お い て 重 要 な 機 能 を 果 たし て い る 。 最 近 で は 記 憶 な ど の 高 次 脳 機 能 に も 関 係 し て い る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 2 . 6 間 脳 間 脳 は 中 脳 の 前 方 に あ っ て そ の 外 側 は 完 全 に 大 脳 に 覆 わ れ て い る 。 間 脳 は さ ら に 視 床 、 視 床 上 部 、 視 床 下 部 、 視 床 後 部 に 分 か れ る 。 い ず れ も 多 数 の 神 経 核 か ら 構 成 さ れ て い る。 特 に 高 次 脳 機 能 と 関 連 が 深 い 構 造 が 視 床 で あ る 。 視 床 ( 図 3 - 6 、 図 3 - 7 、 図 3 - 8 ) は 構 造 的 な ら び に 機 能 的 に 三 つ の 群 に 分 け ら れ る 。 第 一 の 群 は 視 覚 、 聴 覚 、 体 性 感 覚 な ど の 情 報 を 大 脳 に 伝 達 す る 機 能 を 有 し 、 大 脳 皮質 中 継 核 群 あ る い は 特 殊 投 射 核 群 と 呼 ば れ て い る 。第 二 の 群 は 脳 幹 網 様 体 の 延 長 と 考 え ら れ 、 大 脳 の 広 範 な 領 野 に 線 維 を 送 っ て い る 。 大 脳 の 全 体 的 活 動 性 を 統 御 し 意 識 水 準 の 維 持 に重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。非 特 殊 核 群 と 呼 ば れ て い る 。第 三 の 群 は 大 脳 皮 質 連 合 野( 後 述 ) と 密 接 な 線 維 連 絡 を 有 し 、 高 次 脳 機 能 に 深 く 関 与 し て い る 。 連 合 核 群 と 呼 ば れ て い る 。 図 3 - 6 視 床 の 構 造 上 段 : 上 部 、 中 断 : 中 央 部 、 下 段 : 下 部 3-7

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図 3 - 7 視 床 を 構 成 す る 諸 核

図 3 - 8 視 床 諸 核 の 線 維 連 絡 3-8

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2 . 7 大 脳 ( 図 3 - 9 、 図 3 - 1 0 、 図 3 - 1 1 ) 大 脳 の 横 経 は 12~14cm、縦経は 16~18cm、重さは約 1,400gである。大脳縦裂と呼ば れ る 深 い 溝 に よ っ て 左 右 対 称 の 二 つ の 部 分 に 分 け ら れ 、 そ れ ぞ れ 右 大 脳 半 球 、 左 大 脳 半球 と 呼 ば れ る 。 大 脳 の 前 端 を 前 頭 極 、 後 端 を 後 頭 極 と い う 。 大 脳 半 球 の 表 面 に は た く さ んの 溝 が あ り 、複 雑 な し わ が 刻 ま れ て い る 。こ の 溝 を 大 脳 溝 、溝 の 間 の 高 ま り を 大 脳 回 と い う 。 大 脳 の 外 側 面 に そ っ て 外 側 溝 ま た は シ ル ビ ウ ス 溝 と 呼 ば れ る 深 い 溝 が あ り 、 ま た 外 側 溝と 約 70 度の角度で交わっている深い溝、中心溝がある。この二つの溝によって大脳は大き く 四 つ の 領 域 、 脳 葉 に 分 け ら れ る 。 外 側 溝 の 上 方 で 中 心 溝 の 前 方 を 前 頭 葉 、 外 側 溝 の 上方 で 中 心 溝 の 後 方 を 頭 頂 葉 、 外 側 溝 の 下 方 を 側 頭 葉 、 頭 頂 葉 の 下 方 で 側 頭 葉 の 後 方 が 後 頭葉 で あ る 。 外 側 溝 の 奥 に は 大 脳 皮 質 が 複 雑 に 折 り 重 な っ た 部 位 が あ り 、 島 と 呼 ば れ て い る。 各 脳 葉 は さ ら に 小 さ な 溝 に よ っ て 複 数 の 領 野 に 区 分 さ れ る 。 前 頭 葉 に は 中心溝と平行してその前方に中心前溝が走っている。中心前溝と中心溝に挟 ま れ て 中 心 前 回 が あ る 。 前 頭 葉 に は 二 つ の 深 い 溝 、 上 お よ び 下 前 頭 溝 に よ っ て 、 上 、 中、 下 前 頭 回 あ る い は 第 一 、 第 二 、 第 三 前 頭 回 と 呼 ば れ る 三 つ の 脳 回 が 形 成 さ れ て い る 。 前頭 葉 の 下 面 に は 眼 窩 回 、 直 回 が あ る 。 図 3 - 9 大 脳 半 球 外 側 面 3-9

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図 3 - 1 0 大 脳 半 球 内 側 面

図 3 - 1 1 大 脳 半 球 底 面

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頭 頂 葉 は 中 心 溝 の 後 方 か ら 頭 頂 後 頭 溝 に 至 る 領 域 で あ る 。 頭 頂 葉 は 中 心 溝 と 平 行 に 走 る 中 心 後 溝 に よ っ て 中 心 後 回 ( 前 方 ) と 頭 頂 小 葉 ( 後 方 ) に 分 か れ 、 後 者 は 中 心 後 溝 か らほ ぼ 直 角 に 後 方 に 走 る 頭 頂 間 溝 に よ っ て 上 お よ び 下 頭 頂 小 葉 に 分 か れ る 。 後 者 は さ ら に 外側 溝 の 後 端 を 囲 む 縁 上 回 と 上 側 頭 溝 の 後 端 を 囲 む 角 回 に 分 か れ る 。 頭 頂 後 頭 溝 よ り 後 方 は 後 頭 葉 で あ る 。 後 頭 葉 で 最 も 目 立 つ 脳 溝 は 鳥 距 溝 で 大 脳 半 球 内 側 面 を 走 る 。 鳥 距 溝 の 上 面 を 楔 部 、 下 面 を 舌 状 回 と い う 。 側 頭 葉 は 大 脳 半 球 の 外 腹 側 部 を な す 。 上 お よ び 中 側 頭 溝 に よ っ て 上 、 中 、 下 側 頭 回 あ る い は 第 一 、 第 二 、 第 三 側 頭 回 が 分 け ら れ る 。 側 頭 葉 の 腹 側 は 紡 錘 状 回 と な り 、 外 側 は 下側 頭 溝 に 、 内 側 は 側 腹 溝 に 挟 ま れ て い る 。 大 脳 半 球 の 腹 側 に は 脳 梁 が あ る 。 両 大 脳 半 球 を 連 絡 す る 線 維 の 束 で あ る 。 脳 梁 は 前 方か ら 、 脳 梁 吻 、 脳 梁 膝 、 脳 梁 幹 、 脳 梁 膨 大 、 に 分 け ら れ る ( 図 3 - 2 1 ) 。 大 脳 半 球 内 側 に あ る 帯 状 回 、 海 馬 傍 回 、 鈎 お よ び 海 馬 、 透 明 中 核 、 扁 桃 体 な ど は 相 互に 密 接 な 線 維 連 絡 が あ り 機 能 的 に も 関 連 が 深 い の で 、一 括 し て 大 脳 辺 縁 系 と 呼 ば れ て い る( 図 3 - 1 2 ) 。 摂 食 行 動 、 性 行 動 、 情 動 、 動 因 、 植 物 機 能 ( 呼 吸 、 循 環 、 消 化 、 内 分 泌 )な ど と 関 連 が 深 く 、 記 憶 や 意 思 決 定 な ど の 高 次 脳 機 能 に も 関 連 を 有 す る 。 図 3 - 1 2 大 脳 辺 縁 系 大 脳 基 底 核 は 大 脳 の 中 に 埋 も れ た 神 経 核 群 で 尾 状 核 、 被 殻 、 淡 蒼 球 に 分 か れ る ( 図 3 - 1 3 ) 。 尾 状 核 と 被 殻 は 大 脳 か ら 発 達 し た 新 し い 核 で 新 線 条 体 ( も し く は 単 に 線 条 体 )、 3-11

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淡 蒼 球 は 間 脳 か ら 発 達 し た 古 い 核 で 旧 線 条 体 と 呼 ば れ る 。 被 殻 と 淡 蒼 球 を 合 わ せ て レ ンズ 核 と い う 。 主 と し て 運 動 機 能 に 関 係 す る が 、 高 次 脳 機 能 に も 関 与 し て い る 。 図 3 - 1 3 大 脳 基 底 核 右 は 水 平 断 ( 頭 部 の 長 軸 方 向 に 水 平 ) 、 左 は 前 額 断 ( 顔 面 に 平 行 ) 3 . 大 脳 皮 質 3 . 1 細 胞 構 築 大 脳 の 表 面 に は ニ ュ ー ロ ン が 集 ま っ て お り 大 脳 皮 質 と 言 う 。 皮 質 の 下 に は 神 経 線 維 が走 っ て お り 大 脳 白 質 と い う 。 大 脳 皮 質 の 面 積 は 約 2,500 平方センチメートルである。その大 部 分 は 脳 溝 の 中 に 折 り 畳 ま れ て お り 、 表 面 か ら 見 え る の は 約 そ の 三 分 の 一 で あ る 。 大 脳皮 質 の 厚 さ は 領 野 に よ り 異 な る が 1mm~4.5mm である。 大 脳 皮 質 を 構 成 す る 細 胞 は ニ ュ ー ロ ン で あ る が 、 そ の 大 き さ や 形 は 皮 質 領 野 に よ っ て異 な る だ け で な く 、 同 じ 領 野 に も 種 々 の ニ ュ ー ロ ン が 存 在 す る 。 ニ ュ ー ロ ン は 大 き さ と 軸索 の 長 さ に よ っ て 二 つ に 分 け ら れ る 。 ゴ ル ジ Ⅰ 型 ニ ュ ー ロ ン は 形 が 大 き く 、 軸 索 は 長 く て髄 鞘 で 包 ま れ て い る 。軸 索 は 遠 方 ま で 伸 び 、大 脳 の 他 の 領 野 や 他 の 脳 諸 構 造 に ま で 到 達 す る 。 ゴ ル ジ Ⅱ 型 ニ ュ ー ロ ン は 形 が 小 さ く 、 軸 索 は 短 く 無 髄 で あ り 同 じ 領 野 に 終 わ る 。 ニ ュ ー ロ ン は そ の 形 態 に よ っ て 種 々 に 分 類 さ れ る ( 図 3 - 1 4 ) 。 皮 質 で 最 も 特 徴 的 な ニ ュ ー ロ ン は 錐 体 細 胞( P1、P2)で あ る 。二 等 辺 三 角 形 の 形 を 示 し 、そ の 頂 上 か ら 脳 表 面 に 達 す る 頂 上 樹 状 突 起 が 出 る 。 頂 上 樹 状 突 起 の ほ か に 、 ほ ぼ 水 平 に 走 る 数 本 の 基 底 樹状 突 起 が 細 胞 体 か ら 出 て 細 胞 体 近 傍 で 分 枝 す る 。 錐 体 細 胞 基 部 か ら は 軸 索 が 生 じ て 下 行 し、 3-12

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皮 質 深 層 に 終 わ る か ま た は 連 絡 線 維 と し て 皮 質 深 層 を 貫 通 し 他 の 領 野 へ 投 射 す る 。 錐 体細 胞 は 大 き な 核 と 細 胞 の 代 謝 に 関 係 す る 粗 面 小 胞 体 の 集 り で あ る ニ ッ ス ル 顆 粒 を も ち 、 通常 小 、中 、大 型 に 区 分 さ れ る 。細 胞 体 の 高 さ は 小 型 で 10~12μm、大型で 45~50μm である。 運 動 野 で あ る 中 心 前 回 に み ら れ る ベ ッ ツ の 巨 大 細 胞 は 100μm 以上の高さをもつ。 カ ハ ー ル の 水 平 細 胞 と 呼 ば れ る ニ ュ ー ロ ン は 小 型 の 紡 錘 細 胞 で 皮 質 の 最 表 層 に み ら れ、 長 い 軸 索 は 水 平 に か な り 長 い 距 離 を 走 り 同 じ 層 で 分 枝 す る 。 星 状 細 胞 は そ の 軸 索 の 形 態 に よ っ て 、顆 粒 細 胞( S1)、ダ ブ ル バ ス ケ ッ ト 細 胞( S2)、 大 型 バ ス ケ ッ ト 細 胞 ( S3) 、 紡 錘 細 胞 ( S4) 、 ダ ブ ル ブ ー ケ 細 胞 ( S5) な ど に 分 類 さ れ る ( 図 3 - 1 4 ) 。 細 胞 の 直 径 は 4~8μm、錐体細胞に比して小型である。形態は多角 形 な い し 三 角 形 で 細 胞 質 は 少 な い 。 あ ら ゆ る 方 向 に 出 る 数 本 の 樹 状 突 起 と 細 胞 体 の 近 傍で 分 枝 す る 1 本の短い軸索をもつ。大型の星状細胞は白質に達する長い軸索をもつ。一部の 星 状 細 胞 は 表 面 に 向 か う 頂 上 樹 状 突 起 を も つ 点 で 錐 体 細 胞 に 似 て い る 。 星 状 細 胞 の う ち紡 錘 細 胞 は 主 に 皮 質 最 深 層 に み ら れ 、 長 軸 は 表 面 に 対 し 垂 直 で あ る 。 細 胞 の 両 極 か ら 樹 状突 起 が 出 、 下 の 樹 状 突 起 は 層 内 で 分 枝 し 、 上 の 樹 状 突 起 は 表 面 に ま で 上 昇 す る 。 軸 索 は 細胞 体 の 中 央 な い し 下 部 よ り 出 て 投 射 線 維 と し て 白 質 に 入 る 。 星 状 細 胞 の 一 種 で あ る マ ル チノ ッ チ 細 胞 は 大 脳 皮 質 す べ て の 層 に み ら れ る 小 型 三 角 形 の 細 胞 で 、 軸 索 は 表 面 に 向 か う 。一 部 の 線 維 は 同 じ 層 で 分 枝 し 外 は 他 の い く つ か の 層 に 至 る 。 こ れ ら の 細 胞 は 皮 質 全 体 に 均 質 に 分 布 し て お ら ず 、 重 層 す る 水 平 な 層 に 配 列 し て い る 。 各 層 は 細 胞 の 型 、 密 度 、 配 列 に よ っ て 区 別 さ れ る ( 図 3 - 1 5 ) 。 こ れ を 大 脳 皮 質 の 細胞 構 築 と い う 。こ の 細 胞 構 築 の 違 い お よ び 系 統 発 生 か ら 、大 脳 皮 質 は ① 新 皮 質 ま た は 等 皮 質 、 ② 古 皮 質 、 ③ 旧 皮 質 に 分 け ら れ る 。 古 皮 質 と 旧 皮 質 を 合 わ せ て 異 皮 質 と 呼 ぶ 。 発 生 過 程に お い て 少 な く て も 一 度 は 6 層 構 造 ( 後 述 ) を 示 す 領 野 が 等 皮 質 で あ り 、 発 生 の い か な る時 期 に も 6 層 構 造 を 示 さ な い 領 野 が 異 皮 質 で あ る 。 系 統 発 生 的 に は 等 皮 質 が 最 も 新 し い ので 新 皮 質 と 呼 ば れ 、 異 皮 質 は 最 も 古 い 旧 皮 質 と そ の 次 に 古 い 古 皮 質 に 分 か れ る 。 嗅 皮 質 や梨 状 皮 質 、 扁 桃 体 な ど は 旧 皮 質 で あ り 、 透 明 中 核 、 梁 下 野 、 海 馬 な ど は 古 皮 質 で あ る 。 大脳 半 球 表 面 の90%を占める新皮質ないし等皮質では、六つの基本的層が識別され、それらの 層 の い く つ か は さ ら に 亜 層 に 分 け ら れ る 。 す な わ ち 、 図 3 - 1 5 ( 中 ) に 示 す よ う に 、新 皮 質 で は 軟 膜 表 面 か ら 下 の 白 質 に 向 か っ て 次 の 6 層 が 区 別 さ れ る 。 Ⅰ 層 : 分 子 層 、 Ⅱ 層: 外 顆 粒 層 、Ⅲ 層:外 錐 体 層 、Ⅳ 層:内 顆 粒 層 、Ⅴ 層:内 錐 体 細 胞 層 、Ⅵ 層:多形 細 胞 層(紡 錘 細 胞 層 ) の 6 層 で あ る 。 各 層 の 特 徴 は 以 下 の ご と く で あ る 。 3-13

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図 3 - 1 4 大 脳 皮 質 を 構 成 す る 様 々 の 細 胞 Ⅰ 層 : 分 子 層 ~ 最 も 表 面 に あ る 層 。 細 胞 は 少 な い 。 小 さ い グ リ ア 細 胞 が 散 在 し 、 表 面 に 平 行 に 神 経 線 維 が 走 っ て い る 。 ニ ュ ー ロ ン は 存 在 し な い の が 原 則 だ が 、 時 に は 皮 質 表 面に 平 行 に 横 た わ る 小 さ い ニ ュ ー ロ ン を 見 る こ と が あ る 。 こ れ が 前 述 し た カ ハ ー ル の 水 平 細胞 で あ る 。 Ⅱ 層:外 顆 粒 層 ~ 分 子 層 の 下 に あ る 比 較 的 薄 い 層 で あ る 。小 さ い(6~10μm)錐体細胞 と 星 状 細 胞 が 密 に 並 ん で い る 。 Ⅲ 層 : 外 錐 体 層 ~ 比 較 的 厚 い 層 で 、 中 型 / 大 型 (20~40μm)の錐体細胞が樹状突起を 上 に 向 け て 規 則 正 し く 並 ぶ 。 細 胞 密 度 は 比 較 的 小 さ い 。 上 層 か ら 下 層 に い く に つ れ て 細胞 が だ ん だ ん 大 き く な る こ と よ り 、 小 錐 体 細 胞 層 、 中 錐 体 細 胞 層 、 大 錐 体 細 胞 層 、 に 分 ける こ と が 可 能 で あ る 。 Ⅳ 層 : 内 顆 粒 層 ~ 構 造 は Ⅱ 層 と 同 じ で あ る 。 Ⅴ 層 : 内 錐 体 細 胞 層 ~ 比 較 的 狭 く 、 細 胞 数 も 比 較 的 少 な い 。 中 型 ・ 大 型 (50~70μm) の 錐 体 細 胞 よ り な る 。 中 心 前 回 な ど に は 非 常 に 大 き な 錐 体 細 胞 ( ベ ッ ツ の 巨 大 細 胞 ) が存 在 す る ( 前 述 ) 。 Ⅵ 層 : 多 形 細 胞 層 ~ 細 胞 数 が 比 較 的 多 い 。 中 型 ・ 大 型 の 細 胞 よ り な る 。 ① 三 角 細 胞 亜層 3-14

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~ 主 と し て 三 角 型 の 細 胞 が 密 に 並 ぶ 、 ② 紡 錘 細 胞 亜 層 ~ 細 胞 が 比 較 的 少 な く 紡 錘 細 胞 から な る 、 の 2 層 に 分 け ら れ る 。 図 3 - 1 5 大 脳 皮 質 の 標 準 的 細 胞 構 築 3 . 2 髄 鞘 構 築 ニ ュ ー ロ ン の 軸 索 突 起 は 細 胞 体 を 離 れ る と 集 ま っ て 神 経 線 維 の 束 と な る 。 六 つ の 細 胞層 は 線 維 の 配 列 の 方 向 と 量 に よ っ て も 区 別 さ れ る ( 図 3 - 1 5 : 右 ) 。 大 脳 皮 質 の 線 維 は放 射 状 お よ び 切 線 方 向 に 配 列 す る 。 前 者 は 細 い 放 射 線 維 束 と な っ て 細 胞 体 か ら 深 層 へ 垂 直に 3-15

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走 る 。 こ れ に は 、 ① 錐 体 細 胞 、 紡 錘 細 胞 、 星 状 細 胞 か ら の 投 射 線 維 と し て 皮 質 を 離 れ る線 維 、 ② 他 の 皮 質 に 投 射 す る 求 心 性 の 連 合 線 維 、 が あ る 。 マ ル チ ノ ッ チ 細 胞 の 上 行 軸 索 も垂 直 の 路 を と る 。 切 線 線 維 は 皮 質 表 面 に 水 平 に 走 る 。 そ れ ら は 主 と し て 、 ① 求 心 性 連 合 線維 の 終 末 枝 、 ② 水 平 細 胞 、 顆 粒 細 胞 の 軸 索 、 ③ 錐 体 細 胞 、 紡 錘 細 胞 か ら の 側 副 枝 の 終 末 枝で あ る 。 切 線 線 維 は 皮 質 各 層 に 均 等 に は 分 布 し て お ら ず 、 そ の 違 い を 基 に 以 下 の よ う な 皮質 有 髄 構 築 に よ る 分 類 が な さ れ る ( 図 3 - 1 5 : 右 ) 。 1 ) 接 線 層 ~ Ⅰ 層 に 対 応 。 深 層 に 錐 体 細 胞 、 紡 錘 細 胞 の 終 末 樹 状 突 起 分 枝 と マ ル チ ノッ チ 細 胞 の 軸 索 終 末 が み ら れ 、 こ れ ら の 樹 状 突 起 と 軸 索 分 枝 は か な り 密 な 切 線 線 維 叢 を 形成 す る 。 2 ) 無 線 維 層 ~ Ⅱ 層 に 対 応 。 多 数 の 密 に 詰 ま っ た 小 型 顆 粒 細 胞 の 頂 上 樹 状 突 起 が 分 子層 に 終 わ り 、 軸 索 は 皮 質 深 層 に 下 行 す る 。 こ の 層 に 有 髄 線 維 は 少 な い 。 3 ) 上 線 条 層 ~ Ⅲ 層 に 対 応 。 錐 体 細 胞 の 頂 上 樹 状 突 起 は Ⅰ 層 に 達 す る が 、 大 部 分 の 軸索 は 主 と し て 連 合 線 維 な い し 交 連 線 維 と な っ て 白 質 に 入 る 。 4 ) 外 バ イ ヤ ル ジ ェ ル 層 ~ Ⅳ 層 に 対 応 。 こ の 層 に あ る 細 胞 の 多 く は 層 内 で 分 枝 す る 短い 軸 索 を も つ 。 そ れ 以 外 の 大 型 細 胞 は 深 層 に 終 わ る か 白 質 に 入 る 下 行 軸 索 を 有 す る 。 全 層が 密 な 有 髄 線 維 の 水 平 叢 に よ っ て 満 た さ れ て い る 。 こ れ を 外 バ イ ヤ ル ジ ェ ル 帯 と い う 。 5 ) 内 バ イ ヤ ル ジ ェ ル 線 層 ~ Ⅴ 層 に 対 応 。 大 型 錐 体 細 胞 の 頂 上 樹 状 突 起 は 分 子 層 ま で上 行 す る 。 小 型 錐 体 細 胞 の 樹 状 突 起 は Ⅳ 層 に し か 達 し な い か 、 層 内 で 分 枝 す る 。 軸 索 は 主に 投 射 線 維 と な っ て 白 質 に 入 る が 、 左 右 の 大 脳 半 球 を 結 ぶ 脳 梁 線 維 の 一 部 は 小 型 錐 体 細 胞か ら 供 給 さ れ る 。 深 層 の 水 平 線 維 叢 は 内 バ イ ヤ ル ジ ェ ル 帯 を 形 成 す る 。 6 ) 下 線 条 層 ~ Ⅵ 層 に 対 応 。 大 型 錐 体 細 胞 は 樹 状 突 起 を 分 子 層 ま で 送 る 。 小 型 錐 体 細胞 の そ れ は IV 層 ま で 達 す る か 紡 錘 細 胞 層 内 で 分 枝 す る 。 Ⅴ 、 Ⅵ 層 の 錐 体 細 胞 、 紡 錘 細 胞 の 樹 状 突 起 の 多 く は 内 顆 粒 層 で 分 枝 す る 感 覚 性 視 床 皮 質 線 維 終 末 と 直 接 結 合 す る 。 紡 錘 細 胞 の 軸 索 は お も に 投 射 線 維 と し て 白 質 に 入 る 。 脳 回 同志 を 結 合 す る 短 い 弓 状 連 合 線 維 の 一 部 は Ⅵ 層 の 深 部 星 状 細 胞 に 由 来 す る 。 多 形 細 胞 層 は 大型 錐 体 細 胞 の 密 に 詰 ま っ た 上 層 と 小 型 錐 体 細 胞 が 粗 に 配 列 す る 下 層 に 分 け ら れ る 。 全 層 にわ た り 白 質 に 出 入 り す る 線 維 束 が 侵 入 す る 。 3-16

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4 . 大 脳 皮 質 領 野 脳 以 外 の 臓 器 で は 細 胞 の 並 び 型 は ど の 場 所 で も 同 じ で あ る 。 脳 の 細 胞 構 築 像 は 領 野 に よ っ て 異 な る 。 図 3 - 1 6 を 見 て 欲 し い 。 一 番 左 の 1 は 中 心 前 回 の 細 胞 構 築 で 、 大 き な 錐 体 細 胞 が 各 層 に わ た っ て 認 め ら れ る 。 一 番 右 の 5 は 視 覚 野 の 細 胞 構 築 で 、 比 較 的 小 さ い 錐 体 細 胞 や 星 状 細 胞 が 密 に 存 在 す る 。 こ の 細 胞 構 築 の 違 い を 基 に 大 脳 皮 質 を 幾 つ か の 領 野 に 区 分 す る す る 試 み が な さ れ た 。 そ の 中 で 最 も よ く 知 ら れ て い る の が ブ ロ ー ド マ ン に よ る 区 分 で あ り 、 図 3 - 1 7 に 示 す よ う に 脳 を 5 2 の 領 野 に 区 分 し た 。 こ れ は ブ ロ ー ド マ ン の 脳 地 図 と し て よ く 知 ら れ て お り 、現 在 で も 神 経 科 学 研 究 で 広 く 用 い ら れ て い る 。 こ の 外 フ ォ ン ・ エ コ ノ モ の 脳 地 図 も よ く 知 ら れ て い る ( 図 3 - 1 8 ) 。 彼 は 大 脳 皮 質 を 109 の 領 野 に 区 分 し た 。 こ の 領 野 区 分 を 用 い て い る 研 究 者 も い る 。 図 3 - 1 6 大 脳 皮 質 の 細 胞 構 築 1 : 中 心 前 回 、 2 : 側 頭 葉 、 3 : 頭 頂 葉 、 4 : 前 頭 葉 、 5 : 視 覚 野 3-17

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図 3 - 1 7 ブ ロ ー ド マ ン の 脳 地 図

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図 3 - 1 8 フ ォ ン ・ エ コ ノ モ の 脳 地 図

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5 . 大 脳 皮 質 の 線 維 連 絡 5 . 1 大 脳 皮 質 細 胞 構 築 と 線 維 連 絡 大 脳 皮 質 の 線 維 連 絡 は 、 1 ) 脊 髄 、 脳 幹 、 間 脳 、 大 脳 基 底 核 、 辺 縁 系 な ど の 皮 質 下 の 諸 核 か ら の 情 報 を 受 け る 求 心 性 線 維 2 ) 皮 質 下 の 諸 核 へ 情 報 を 出 力 す る 遠 心 性 線 維 3 ) 左 右 大 脳 半 球 間 を 連 絡 す る 交 連 線 維 4 ) 皮 質 領 野 間 の 情 報 伝 達 を 行 う 連 合 線 維 に 分 け ら れ る 。 図 3 - 1 9 、 図 3 - 2 0 は 線 維 連 絡 の 観 点 か ら 見 た 大 脳 皮 質 細 胞 構 築 の模 式 図 で あ る 。 脊 髄 、 脳 幹 、 間 脳 、 大 脳 基 底 核 、 辺 縁 系 な ど の 皮 質 下 の 諸 核 か ら の 情 報 を受 け る 求 心 性 線 維 は 基 本 的 に 星 状 細 胞 に 入 力 す る 。 星 状 細 胞 は 基 本 的 に 介 在 ニ ュ ー ロ ン (イ ン タ ー ・ ニ ュ ー ロ ン ) 、 す な わ ち 感 覚 ニ ュ ー ロ ン と 運 動 ニ ュ ー ロ ン 間 の 情 報 伝 達 の 仲 介の 役 割 を す る ニ ュ ー ロ ン で あ る 。 図 3 - 1 9 に 示 す よ う に 様 々 の 種 類 が あ る 。 6 層 全 て に存 在 す る が Ⅳ 層 で 密 度 が 高 い 。 こ の 傾 向 は 感 覚 野 で 特 に 顕 著 で あ る ( 図 3 - 2 0 ) 。 視 床 か ら の 求 心 性 線 維 は Ⅳ 層 に 投 射 し 星 状 イ ン タ ー ニ ュ ー ロ ン( S1)に 連 絡 す る 。交 連 線 維 、連 合 線 維 は よ り 表 層 の ニ ュ ー ロ ン に 連 絡 す る 。バ ス ケ ッ ト 細 胞( S)は 表 層 の ニ ュ ー ロ ン と 連 絡 を 有 し 、そ の ニ ュ ー ロ ン の 活 動 を 抑 制 す る 。よ り 深 層 に 分 布 す る 大 型 バ ス ケ ッ ト 細 胞 ( S3) も 線 維 連 絡 を 有 す る ニ ュ ー ロ ン の 機 能 を 抑 制 す る 。 紡 錘 細 胞 ( S4) は 主 に Ⅵ 層 に 分 布 し 、興 奮 性 の 軸 索 を 投 射 す る 。ダ ブ ル ブ ー ケ 細 胞 は 、Ⅳ 層 の ニ ュ ー ロ ン が 求 心 性 神 経 に よ っ て 刺 激 さ れ た 時 、 そ の 興 奮 を 皮 質 全 層 に 拡 げ る 役 割 を 果 た す 。 前 述 の ご と く 、 視 床 か ら の 大 脳 皮 質 へ の 投 射 に は 特 殊 投 射 核 群 か ら の も の と 非 特 殊 核 群 か ら の も の が あ る 。 前 者 は 限 局 さ れ た 単 一 の 層 、 あ る い は せ い ぜ い 2 層 に 終 わ る こ と が多 い 。 Ⅳ 層 の 特 に 上 層 に 投 射 す る 場 合 が 多 い 。 後 者 は 皮 質 6 層 の い ず れ に も 投 射 す る 。 大 脳 皮 質 の 遠 心 性 線 維 は 主 と し て 錐 体 細 胞 か ら 発 す る 。図 3 - 1 9 の P1お よ び P2は こ の よ う な 錐 体 細 胞 の 例 で あ る 。 主 と し て Ⅱ 層 、 Ⅲ 層 、 Ⅴ 層 に 存 在 す る 。 特 に Ⅴ 層 の 錐 体細 胞 は 非 常 に 大 き く 、 脳 幹 お よ び 脊 髄 に 投 射 す る 。 Ⅱ 層 お よ び Ⅲ 層 の 錐 体 細 胞 は 小 型 で あり 他 の 皮 質 領 野 へ 投 射 す る 。 3-20

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図 3 - 1 9 大 脳 皮 質 線 維 連 絡 の 模 式 図 図 3 - 2 0 感 覚 野 、 運 動 野 に お け る 細 胞 構 築 お よ び 線 維 連 絡 の 模 式 図 N S : 非 特 殊 投 射 群 よ り の 入 力 、 S : 特 殊 投 射 群 よ り の 入 力 、 C - C : 連 合 線 維 C - C ( C a ) : 交 連 線 維 、 C - S : 皮 質 遠 心 性 線 維 、 C - T : 皮 質 視 床 遠 心 性 線 維 C - S p : 皮 質 脊 髄 遠 心 性 線 維 3-21

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5 . 2 交 連 線 維 交 連 線 維 の 主 な も の は 脳 梁 、 海 馬 交 連 、 前 交 連 で あ る ( 図 3 - 2 1 ) 。 脳 梁 は 前 頭 葉 、 頭 頂 葉 、 後 頭 葉 、 側 頭 葉 、 帯 状 回 な ど 大 部 分 の 大 脳 皮 質 領 野 の 細 胞 か ら 発 し 、 対 応 す る 領 野 に 投 射 す る 。 主 と し て Ⅲ 層 か ら 発 す る が 一 部 Ⅳ 層 ~ Ⅵ 層 か ら も 発 す る 。 脳 梁 に は 約 2 億 本 の 線 維 が あ る と 推 定 さ れ て い る 。 海 馬 交 連 は 海 馬 お よ び 海 馬 回 よ り 出 て 対 応 す る 部 位 に 投 射 す る 。 前 交 連 は 嗅 脳 あ る い は 海 馬 傍 回 を 結 ぶ 線 維 で あ る 。 図 3 - 2 1 交 連 線 維 の 模 式 図 5 . 3 連 合 線 維 連 合 線 維 は 同 一 大 脳 半 球 内 の 領 野 間 を 連 絡 す る 線 維 で あ る 。 主 と し て Ⅲ 層 お よ び Ⅳ 層 の 錐 体 細 胞 か ら 発 す る 。 短 い も の は 皮 質 内 で 始 ま っ て 皮 質 内 に 終 わ る 。 あ る い は い っ た ん皮 質 を 出 て 短 い 区 間 白 質 内 を 走 り 再 び 皮 質 に 入 る 。 短 い 連 合 線 維 は 直 径 も 細 く そ の 同 定 は困 難 で あ る 。 一 方 、 長 い 連 合 線 維 は 明 ら か な 神 経 路 を 形 成 し て い る 。 皮 質 ― 皮 質 間 の 線 維連 絡 の 研 究 は 従 来 動 物 実 験 が 主 流 で ヒ ト を 対 象 と し た 研 究 は 遅 れ が ち で あ っ た 。 最 近 は 、 MRI拡散テンソル画像5を は じ め と す る 新 た な 研 究 技 法 が 次 々 と 開 発 さ れ 、 活 発 な 研 究 が 行 わ れ て い る 。 現 在 ま で に 知 ら れ て い る 主 な 連 合 線 維 は 以 下 の ご と く で あ る ( 図 3 - 22 参 照 ) 。 1 ) 鈎 状 束 ~ 海 馬 、 扁 桃 体 と 前 頭 葉 を 結 ぶ 。 2 ) 上 、 下 後 頭 前 頭 束 ~ 後 頭 葉 、 側 頭 葉 と 前 頭 葉 を 結 ぶ 。 5 第 2 章 参 照 。 3-22

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3 ) 下 縦 束 ~ 後 頭 葉 と 側 頭 葉 、 頭 頂 葉 と 後 頭 葉 を 結 ぶ 。 4 ) 上 縦 束 ~ 前 頭 葉 背 内 側 部 と 頭 頂 葉 、 後 頭 葉 を 結 ぶ 。 5 ) 眼 窩 前 頭 束 ~ 前 頭 葉 の 背 側 部 と 腹 側 部 を 結 ぶ 。 6 ) 弓 状 束 ~ 側 頭 葉 と 前 頭 葉 を 結 ぶ 。 7 ) 外 側 後 頭 束 ~ 後 頭 葉 内 で 背 側 部 と 腹 側 部 を 結 ぶ 。 図 3 - 2 2 大 脳 皮 質 の 主 な 連 合 線 維 (a)外 側 面 、 ( b ) 内 側 面 、 ( c ) 前 額 面 3-23

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5 . 4 求 心 性 線 維 5 . 4 . 1 視 覚 伝 導 路 ( 図 3 - 2 3 ) 網 膜 視 細 胞 か ら 出 る 視 神 経 は 視 交 叉 で 半 交 叉 す る 。 左 視 野 に 対 応 す る 視 神 経 ( 両 眼 の 右 側 の 網 膜 か ら 出 た 視 神 経 ) は 右 大 脳 半 球 に 投 射 し 、 右 視 野 に 対 応 す る 視 神 経 ( 両 眼 の 左側 の 網 膜 か ら 出 た 視 神 経 ) は 左 大 脳 半 球 に 投 射 す る 。 半 交 叉 の 後 視 神 経 は 視 索 と な り 、 外側 膝 状 体 背 側 部 、 視 床 枕 お よ び 中 脳 蓋 の 上 丘 に 投 射 す る 。 網 膜 の 上 方 二 分 の 一 は 外 側 膝 状体 の 内 側 部 に 投 射 し 、 さ ら に 第 一 次 視 覚 野 で あ る 後 頭 葉 の 鳥 距 溝 の 上 部 ( 1 7 野 の 上 唇 )に 投 射 す る 。下 方 二 分 の 一 は 外 側 膝 状 体 の 外 側 部 に 投 射 し 、さ ら に 後 頭 葉 の 鳥 距 溝 の 下 部( 1 7 野 の 下 唇 ) に 投 射 す る 。 図 3 - 2 3 視 覚 伝 導 路 5 . 4 . 2 聴 覚 伝 導 路 ( 図 2 - 2 4 ) 内 耳 の 蝸 牛 か ら 発 す る 聴 覚 神 経 は ラ セ ン 神 経 節 を 作 っ た 後 集 ま っ て 蝸 牛 神 経 と な り 、 脳 幹 に 入 っ て 二 分 岐 し 菱 形 窩 底 の 外 側 部 に あ る 蝸 牛 神 経 核 背 側 核 と 蝸 牛 神 経 核 腹 側 核 に 投射 す る 。 蝸 牛 神 経 核 背 側 核 か ら 発 す る 第 二 次 ニ ュ ー ロ ン は 外 側 毛 体 と な っ て 上 行 す る 。 その 際 、 半 数 の 線 維 は 同 側 を 、 半 数 の 線 維 は 対 側 を 上 行 す る 。 蝸 牛 神 経 核 腹 側 核 を 起 始 部 とす る 第 二 次 ニ ュ ー ロ ン は 神 経 線 維 の 集 合 体 で あ る 台 形 体 を 形 成 し 、 上 行 し て 対 側 の 外 側 毛体 3-24

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に 終 わ る か 台 形 体 内 の 上 オ リ ー ブ 核 ( 台 形 体 核 ) に 終 わ る 。 上 オ リ ー ブ 核 か ら は 第 三 次ニ ュ ー ロ ン が 外 側 毛 体 を 上 行 す る 。 外 側 毛 体 は 中 脳 下 丘 に 投 射 す る 。 下 丘 か ら 発 す る 線 維束 は 同 側 の 視 床 の 内 側 膝 状 体 核 に 終 わ る 。 こ れ か ら 発 す る 神 経 線 維 は 内 包 を 通 っ て 大 脳 皮質 第 一 次 聴 覚 野 に 投 射 し て い る 。 図 3 - 2 4 聴 覚 伝 導 路 5 . 4 . 3 体 性 感 覚 伝 導 路 主 と し て 皮 膚 と 粘 膜 か ら の 刺 激 ( 触 覚 、 圧 覚 、 痛 覚 、 温 覚 、 冷 覚 な ど ) と 筋 、 腱 、 関 節 な ど か ら の 深 部 刺 激 の 伝 導 路 で あ る 。 末 梢 神 経 内 の 知 覚 線 維 は 脊 髄 神 経 節 の 後 根 細 胞 の樹 状 突 起 で あ り 、途 中 で 中 断 さ れ る こ と な く 脊 髄 神 経 節 に 入 る 。脊 髄 神 経 節 か ら 出 る 線 維( 後 根 細 胞 の 神 経 突 起 ) は 脊 髄 神 経 の 後 根 を 通 っ て 脊 髄 に 進 入 し 、 こ こ で 次 の よ う な 三 つ の系 統 に 分 か れ る 。 1 ) 脊 髄 視 床 路 系 ( 図 3 - 2 5 ) ~ 脊 髄 後 角 か ら の 二 次 ニ ュ ー ロ ン が 脊 髄 側 索 の 外 側 / 前 視 床 路 を 通 っ て 脊 髄 毛 帶 か ら 視 床 後 外 腹 側 核 (VPL)に投射する。視床からの三次ニュ 3-25

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ー ロ ン は 内 包 を 通 っ て 大 脳 皮 質 第 一 次 体 性 感 覚 野 に 投 射 す る 。 温 覚 、 痛 覚 お よ び 一 部 の触 覚 の 伝 導 路 で あ る 。 図 3 - 2 5 脊 髄 視 床 路 2 ) 後 索 ( 内 側 毛 帯 ) 路 系 ( 図 3 - 2 6 ) ~ 延 髄 後 索 核 か ら の 二 次 ニ ュ ー ロ ン が 内 側 毛 帶 を 上 行 し て 視 床 後 外 腹 側 核 (VPL)に投射する。上肢からの情報は楔状束核、下肢から の 情 報 は 薄 束 核 で 中 継 さ れ る 。 視 床 か ら の 三 次 ニ ュ ー ロ ン は 脊 髄 視 床 路 と 同 様 に 内 包 を経 て 大 脳 皮 質 第 一 次 体 性 感 覚 野 に 投 射 す る 。 大 部 分 の 触 覚 と 圧 覚 、 お よ び 意 識 さ れ る ( 関節 受 容 器 か ら の ) 深 部 刺 激 の 伝 達 に 関 与 す る 。 図 3 - 2 6 後 索 路 3-26

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3 )脊 髄 小 脳 路( 図 3 - 2 7 )~ 筋 、腱 お よ び 関 節 か ら の 深 部 刺 激 情 報 の 伝 導 路 で あ る 。 上 肢 か ら の 情 報 は 副 楔 状 束 核 を 中 継 核 と す る 楔 状 束 小 脳 路(CCT)および同側後角で二次 神 経 に 続 く 吻 側 脊 髄 小 脳 路 (RSCT) を介 して 伝達 される 。下 肢から の情 報はク ラー ク柱 を 中 継 核 と し た 背 側 脊 髄 小 脳 路 (DSCT) お よび腰髄レ ベルで交叉 して対側の 後角に入り 二 次 ニ ュ ー ロ ン に 続 く 腹 側 脊 髄 小 脳 路(VSCT)を介して伝達される。基本的に CCT、DSCT は 小 脳 の 中 間 部 に 投 射 、RSCT、VSCT は小脳虫部に投射、そこから視床外側腹側核(VL) を 経 て 大 脳 皮 質 第 一 次 運 動 野 に 至 る 。 前 者 は 外 側 前 庭 神 経 核 や 脳 幹 網 様 核 へ も 投 射 し 、さ ら に 錐 体 外 路 ( 後 述 ) に よ っ て 再 び 脊 髄 の 前 角 細 胞 へ 戻 っ て く る フ ィ ー ド バ ッ ク 回 路 を形 成 す る 。 こ の 経 路 を 介 し て 伝 達 さ れ る 情 報 の 多 く は 意 識 に 上 ら ず 、 四 肢 の 随 意 運 動 や 姿勢 反 射 に 関 係 し て い る 。 図 3 - 2 7 脊 髄 小 脳 路 5 . 5 遠 心 性 線 維 5 . 5 . 1 錐 体 路 ( 図 3 - 2 8 ) 大 脳 皮 質 の 運 動 領 野 か ら 発 し 、 脳 神 経 路 な い し 脊 髄 神 経 路 を 経 て 骨 格 筋 そ の 他 の 横 紋 筋 に 至 る 経 路 で あ る 。 錐 体 路 の 起 始 部 は 大 脳 皮 質 中 心 前 回 第 一 次 運 動 野 に あ る 。 こ こ か ら発 す る 線 維 は 内 包 、 大 脳 脚 、 橋 縦 束 を 経 て 延 髄 の 錐 体 に 達 す る ( 錐 体 路 の 名 は こ れ に 由 来す 3-27

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る ) 。 こ こ で そ の 大 部 分 は 交 叉 ( 錐 体 交 叉 ) し て 反 対 側 の 脊 髄 側 索 の な か を 下 行 し 順 次脊 髄 前 柱 の 前 角 細 胞 に 終 わ り ( 錐 体 側 索 路 ) 、 交 叉 し い 残 り の 線 維 は 同 側 の 脊 髄 前 索 の なか を 下 行 し つ つ 順 次 に 交 叉 し 、 す ぐ に 反 対 側 の 前 角 細 胞 に 終 わ る ( 錐 体 前 索 路 ) 。 次 に 脊髄 の 前 角 細 胞 か ら 始 ま る 線 維 は 前 根 を 通 っ て 脊 髄 神 経 の な か に 入 り 、 途 中 で 中 断 す る こ とな く 末 梢 に 及 ん で 横 紋 筋 に 分 布 す る 。 図 3 - 2 8 錐 体 路 3-28

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な お 錐 体 路 の 線 維 の 一 部 は 脳 幹 の 中 脳 、橋 、延 髄 に あ る 両 側 の 運 動 性 脳 神 経 核 に 終 わ る 。 す な わ ち 、 一 側 の 第 一 次 運 動 野 か ら の 線 維 は 同 時 に 両 側 の 運 動 性 脳 経 核 に 接 続 す る 。 これ か ら 発 す る 線 維 は そ れ ぞ れ の 運 動 性 脳 神 経 と な っ て 、 そ の 支 配 す る 横 紋 筋 に 投 射 す る 。た だ し 、 口 と 頬 の 表 情 筋 を 支 配 す る 顔 面 神 経 核 の 下 部 と 舌 下 神 経 核 と は 例 外 で 、 そ れ ぞ れ対 側 の 皮 質 か ら の み 支 配 さ れ る 。 こ の よ う に 錐 体 路 は す べ て 二 段 階 の 伝 達 ニ ュ ー ロ ン か ら形 成 さ れ て お り 、 必 ず 一 度 交 叉 し て 反 対 側 の 随 意 筋 に ゆ く こ と が そ の 特 徴 で あ る 。 二 つ のニ ュ ー ロ ン を そ れ ぞ れ 上 位 ニ ュ ー ロ ン 、 下 位 ニ ュ ー ロ ン と い う 。 錐 体 路 の 第 一 次 ニ ュ ー ロン は 大 脳 皮 質 か ら 始 ま っ て 脊 髄 ま た は 脳 幹 に 投 射 す る 。 前 者 を 皮 質 脊 髄 路 、 後 者 を 皮 質 延髄 路 と い う 。 5 . 5 . 2 錐 体 外 路 錐 体 路 以 外 の 遠 心 性 線 維 を 錐 体 外 路 と い う 。 従 っ て 、 錐 体 外 路 と い う 名 称 の 単 一 の 神 経 路 が 存 在 す る 訳 で は な い 。 錐 体 外 路 に は 様 々 の 神 経 路 が あ る ( 図 3 - 2 9 ) 。 主 な も のは 以 下 の ご と く で あ る 。 1 ) 橋 お よ び 小 脳 を 経 由 す る 伝 導 路 ~ 大 脳 皮 質 を 起 始 部 と す る 神 経 線 維 は 線 維 束 を つく っ て 内 包 に 集 ま り 、 さ ら に 大 脳 脚 を 通 っ て 橋 に 入 り 、 こ こ で 橋 核 に 終 わ る 。 以 上 が 第 一次 ニ ュ ー ロ ン で こ れ を 皮 質 橋 路 と い う 。 橋 核 細 胞 の 神 経 線 維 は 橋 の 内 部 を 横 走 し て 大 部 分が 反 対 側 に 渡 り 、 中 小 脳 脚 ( 橋 腕 ) と な っ て 小 脳 髄 質 に 進 入 し 小 脳 半 球 の 皮 質 の 顆 粒 細 胞に 投 射 す る 。 以 上 が 第 二 次 ニ ュ ー ロ ン で こ れ を 橋 ( 核 ) 小 脳 路 と い う 。 顆 粒 細 胞 の 神 経 線維 が 平 行 線 維 で あ り 、 小 脳 の 出 力 細 胞 で あ る プ ル キ ン エ 細 胞 の 樹 状 突 起 に 終 わ る 。 こ の 伝導 路 は 小 脳 の 運 動 調 節 作 用 を 筋 系 に 伝 達 す る も の と 考 え ら れ る 。 2 ) 線 条 体 お よ び 淡 蒼 球 を 経 由 す る 伝 導 路 ~ 大 脳 皮 質 前 頭 葉 の 運 動 性 ニ ュ ー ロ ン か ら 出 る 神 経 線 維 は 同 側 線 条 体 、 つ い で 淡 蒼 球 に 入 っ て そ れ ぞ れ 中 継 さ れ る 。 淡 蒼 球 か ら 出 る線 維 の 一 部 は 直 接 に 、 他 の 一 部 は 視 床 下 核 と 黒 質 で 中 継 さ れ 、 同 側 お よ び 反 対 側 の 赤 核 およ び そ の 付 近 の 網 様 体 に 終 わ る 。 赤 核 か ら の 線 維 は 中 心 被 蓋 路 を 通 り 下 オ リ ー ブ 核 に 投 射す る 。な お 赤 核 か ら 下 降 す る 線 維 の 一 部 は 脳 幹 の 網 様 体 に も 終 わ っ て い る( そ の 先 -は 網 様 体 脊 髄 路 と な っ て 脊 髄 に 下 行 す る ) 。 こ の 経 路 は 筋 の 緊 張 や 不 随 意 運 動 な ど に 関 係 す る 。 3 ) 視 蓋 脊 髄 路 ~ 脳 蓋 の 上 丘 ( 視 蓋 ) か ら 発 し そ の 大 部 分 は 交 叉 し 、 一 部 は 交 叉 せ ず に 脊 髄 前 索 を 下 行 し 、 線 維 の 終 末 は 順 次 前 角 細 胞 に 終 わ る 。 上 丘 は 既 述 の 通 り 視 覚 伝 導 路そ 3-29

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の 他 多 数 の 求 心 性 経 路 と 連 絡 が あ り 、 視 蓋 脊 髄 路 は 視 覚 反 射 そ の 他 の 反 射 弓6の 遠 心 路 を な す も の で あ る 。 4 ) 前 庭 脊 髄 路 ~ 延 髄 の 外 側 前 庭 神 経 核 か ら 発 す る 線 維 束 で 、 末 端 は や は り 前 角 細 胞 の 連 絡 し て い る 。 す な わ ち 、 上 記 の 核 か ら 出 る 神 経 線 維 は 同 側 性 に 下 行 し て 脊 髄 に 入 り 、前 索 の な か を 錐 体 路 の 前 に 沿 っ て 走 っ て い る 。こ の 伝 導 路 は 前 庭 神 経 と と も に 反 射 弓 を 作 り 、 身 体 の 姿 勢 の 反 射 的 に 正 し く 保 つ 作 用 を も つ 。 図 3 - 2 9 錐 体 外 路 6 反 射 に 関 与 す る 神 経 回 路 。 3-30

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6 . 大 脳 皮 質 の 機 能 分 類 大 脳 皮 質 は 線 維 連 絡 か ら 、 ① 主 と し て 視 床 特 殊 投 射 核 群 か ら 感 覚 情 報 を 受 け る 領 野 、② 主 と し て 主 要 な 運 動 路 伝 導 路 で あ る 錐 体 路 を 出 す 領 野 、 ③ 感 覚 、 運 動 伝 導 路 と は 直 接 関係 な く 、 視 床 連 合 核 群 や 皮 質 の 他 の 部 位 と 相 互 線 維 連 絡 を す る 領 野 、 に 分 け ら れ る ( 図 3- 8 参 照 ) 。 そ れ ぞ れ 、 ① 感 覚 野 、 ② 運 動 野 、 ③ 連 合 野 と 呼 ば れ て い る 。 各 群 の 機 能 は 以下 の ご と く で あ る ( 表 3 - 1 参 照 ) 。 6 . 1 感 覚 野 1 ) 第 一 次 体 性 感 覚 野 ~ 視 床 体 性 感 覚 中 継 核 で あ る 後 内 側 腹 側 核 お よ び 後 外 側 腹 側 核か ら 投 射 を 受 け る 。中 心 後 回 お よ び 中 心 傍 回 周 辺 領 域 、ブ ロ ー ド マ ン の 領 野 で は 3 野 、1 野 、 2 野 が 該 当 す る 。 3 野 は 触 覚 に 、 1 野 と 2 野 は 深 部 感 覚 、 関 節 位 置 感 覚 に 対 応 す る 。 体部 位 局 在 性 が あ り 、 下 肢 は 上 部 に 、 上 肢 は 中 間 に 、 顔 面 は 下 部 に 位 置 す る 。 2 ) 第 一 次 視 覚 野 ~ 視 床 視 覚 中 継 核 で あ る 外 側 膝 状 体 か ら 投 射 を 受 け る 。 ブ ロ ー ド マン の 領 野 で は 1 7 野 が 該 当 す る 。 左 右 両 眼 の 左 視 野 か ら の 情 報 は 右 大 脳 半 球 の 1 7 野 に 、右 視 野 か ら の 情 報 は 左 大 脳 半 球 の 1 7 野 に 投 射 さ れ る 。 ま た 視 野 の 上 部 は 鳥 距 溝 の 上 に 、下 部 は 鳥 距 溝 の 下 に 、 視 野 中 心 部 は 脳 後 方 に 視 野 周 辺 部 は そ の 前 方 に 投 射 さ れ る 。 3 ) 第 一 次 聴 覚 野 ~ 視 床 聴 覚 中 継 核 で あ る 内 側 膝 状 体 か ら 投 射 を 受 け る 。 側 頭 葉 内 側の 4 1 野 が 該 当 す る 。 左 右 の 耳 か ら の 情 報 は 左 右 い ず れ の 大 脳 に も 投 射 さ れ る 。 4 ) 第 一 次 味 覚 野 ~ 視 床 味 覚 中 継 核 で あ る 後 内 側 腹 側 核 は 3 野 下 部 の 顔 面 領 域 の 近 傍 に 投 射 す る 。 5 ) 第 一 次 嗅 覚 野 ~ 鼻 粘 膜 に あ る 嗅 神 経 は 視 床 を 介 さ ず 直 接 第 一 次 嗅 覚 野 で あ る 鈎 回 に 投 射 す る 。 6 . 2 運 動 野 中 心 前 回 を 中 心 と す る 領 域 は 筋 肉 運 動 を 司 る 第 一 次 運 動 野 で あ る 。 4 野 が 該 当 す る 。こ の 領 域 に は 巨 大 な 錐 体 細 胞 で あ る ベ ッ ツ 細 胞 が あ り 、 直 接 脊 髄 に 投 射 し て い る 。 こ れ が錐 体 路 で あ る 。 錐 体 路 は 延 髄 で 大 部 分 が 左 右 交 叉 す る 。 身 体 部 位 対 応 が あ り 下 方 か ら 上 方に 向 か っ て 頚 部 、 上 肢 、 体 幹 、 下 肢 の 順 に 並 ぶ 。 3-31

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表 3 - 1 大 脳 皮 質 の 機 能 分 類 と ブ ロ ー ド マ ン の 領 野 ( 図 3 - 1 7 ) と の 対 応 関 係 ブ ロ ー カ の 領 野 機 能 解 剖 学 的 領 野 1 体 性 感 覚 野 中 心 後 回 、 中 心 傍 回 後 部 2 体 性 感 覚 野 中 心 後 回 、 中 心 傍 回 後 部 3 体 性 感 覚 野 中 心 溝 後 壁 4 運 動 野 中 心 前 回 、 中 心 傍 回 前 部 5 体 性 感 覚 連 合 野 中 心 後 回 6 運 動 連 合 野 上 、 中 前 頭 回 後 部 、 中 心 前 回 後 部 7 体 性 感 覚 連 合 野 上 頭 頂 小 葉 8 前 頭 眼 野 上 、 中 前 頭 回 後 部 9 前 頭 連 合 野 上 前 頭 回 1 0 前 頭 連 合 野 前 頭 極 1 1 前 頭 連 合 野 下 前 頭 回 前 部 1 2 前 頭 連 合 野 下 前 頭 回 中 央 部 1 3 前 頭 連 合 野1 眼 窩 部 1 4 前 頭 連 合 野1 眼 窩 部 1 5 未 定 義 1 6 未 定 義 1 7 視 覚 野 ( 有 線 領 ) 後 頭 極 ( 内 側 は 鳥 距 溝 周 辺 ) 1 8 視 覚 連 合 野 後 頭 葉 外 側 1 9 視 覚 連 合 野 後 頭 葉 外 側 2 0 視 覚 連 合 野 下 側 頭 回 2 1 視 覚 連 合 野 中 側 頭 回 2 2 聴 覚 連 合 野2 上 側 頭 回 2 3 辺 縁 系 帯 状 回 2 4 辺 縁 系 帯 状 回 2 5 辺 縁 系 梁 下 野 2 6 辺 縁 系 小 帯 回 1 : ブ ロ ー ド マ ン の 原 典 で は 未 定 義 で あ る が 、 最 近 の 研 究 を 参 考 に 追 加 2 : 後 端 は ウ ェ ル ニ ッ ケ 野 3-32

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表 3 - 1 大 脳 皮 質 の 機 能 分 類 と ブ ロ ー ド マ ン の 領 野 と の 対 応 関 係 ( 続 き ) ブ ロ ー カ の 領 野 機 能 解 剖 学 的 領 野 2 7 辺 縁 系 歯 状 回 2 8 辺 縁 系 海 馬 回 2 9 辺 縁 系 帯 状 回 3 0 辺 縁 系 帯 状 回 3 1 辺 縁 系 帯 状 回 3 2 辺 縁 系 帯 状 回 3 3 辺 縁 系 帯 状 回 3 4 辺 縁 系 鈎 3 5 辺 縁 系 海 馬 回 の 一 部 3 6 側 頭 連 合 野 海 馬 傍 回 3 7 視 覚 連 合 野 外 側 側 頭 後 頭 回 3 8 側 頭 連 合 野 側 頭 葉 極 3 9 頭 頂 連 合 野 角 回 4 0 頭 頂 連 合 野 縁 状 回 4 1 聴 覚 野 上 側 頭 回 内 側 部 4 2 聴 覚 連 合 野 上 側 頭 回 外 側 部 4 3 味 覚 野 中 心 前 回 ・ 中 心 後 回 下 端 4 4 ブ ロ ー カ 野 下 前 頭 回 弁 蓋 部 4 5 ブ ロ ー カ 野 下 前 頭 回 三 角 部 4 6 前 頭 連 合 野 中 前 頭 回 4 7 前 頭 連 合 野 前 頭 葉 下 面 4 8 未 定 義 4 9 未 定 義 5 0 未 定 義 5 1 未 定 義 5 2 聴 覚 連 合 野 上 側 頭 回 前 端 3-33

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6 . 3 連 合 野 連 合 野 は 大 脳 皮 質 の 広 い 面 積 を 占 め 複 雑 な 情 報 処 理 に 関 与 す る 。 高 次 脳 機 能 に 最 も 関連 の 深 い 部 位 で あ る 。 連 合 野 は さ ら に 様 相 連 合 野 と 通 ( 超 ) 様 相 連 合 野 に 分 け て 論 じ ら れる こ と が 多 い 。 様 相 連 合 野 は 特 定 の 感 覚 あ る い は 運 動 に 関 す る 複 雑 な 情 報 処 理 を 行 う 部 位 で あ る 。 次の 領 野 が 含 ま れ る 。 1 ) 体 性 感 覚 連 合 野 ( 第 二 次 体 性 感 覚 野 ) ~ 5 野 、 7 野 2 ) 視 覚 連 合 野 ( 第 二 次 視 覚 野 ) ~ 1 8 野 、 1 9 野 、 2 0 野 、 2 1 野 、 3 7 野 3 ) 聴 覚 連 合 野 ( 第 二 次 聴 覚 野 ) ~ 2 2 野 、 4 2 野 4 ) 運 動 連 合 野 ( 第 二 次 運 動 野 ) ~ 6 野 5 ) 味 覚 ・ 嗅 覚 ~ 味 覚 に つ い て は 島 回 や 5 野 、 嗅 覚 に つ い て は 前 頭 葉 が 関 係 す る と の 説 も あ る が 詳 細 は 不 明 で あ る 。 通 ( 超 ) 様 相 連 合 野 は 前 頭 葉 の 大 部 分 、 頭 頂 葉 や 側 頭 葉 の 一 部 が 含 ま れ る 。 複 数 の 感 覚 様 相 に 同 時 に 関 係 す る よ う な 処 理 ( 空 間 移 動 、 言 語 な ど ) 、 あ る い は 感 覚 様 相 か ら 独 立し た 処 理 ( 問 題 解 決 、 意 思 決 定 な ど ) に 関 係 す る 。 7 . 脳 の 循 環 系 7 . 1 脳 室 系 (図 3 - 3 0 ) 脳 と 脊 髄 は そ の ま わ り を 髄 液 と い う 一 種 の リ ン パ 液 で 満 た さ れ て い る 。 ま た 脳 、 脊 髄と も そ の 中 心 部 に 腔 所 が あ り 、 脳 の 部 分 を 脳 室 、 脊 髄 の 部 分 を 中 心 管 、 あ わ せ て 脳 室 系 とい う 。 脳 室 系 の 内 部 も 髄 液 で 満 た さ れ て い る 。 髄 液 は 大 脳 半 球 の 中 に 広 が っ て い る 側 脳 室及 び そ の 下 方 の 第 三 脳 室 の 脈 絡 叢 で 作 ら れ る 。 第 三 脳 室 と 側 脳 室 と は モ ン ロ ー 孔 に よ り 交通 し て い る 。 第 三 脳 室 は シ ル ビ ウ ス 水 道 を 経 て 第 四 脳 室 と な り 、 こ こ か ら ル シ ュ カ 孔 、 マジ ェ ン ヂ ー 孔 を 通 っ て 大 脳 槽 に 通 じ て い る 。 大 脳 槽 は 小 脳 下 面 と 延 髄 と の 間 に あ る 腔 所 でこ こ か ら 髄 液 は 脳 お よ び 脊 髄 の 表 面 に 向 か う 。 脳 や 脊 髄 を 濯 流 し た 髄 液 は 最 終 的 に は 静 脈洞 か ら 吸 収 さ れ る 。 3-34

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図 3 - 3 0 脳 室 系 7 . 2 脳 の 動 脈 ( 図 3 - 3 1 、 図 3 - 3 2 、 図 3 - 3 3 ) 脳 に 流 入 す る 動 脈 は 内 頸 動 脈 と 椎 骨 動 脈 で あ る 。 内 頸 動 脈 は 総 頸 動 脈 か ら 分 か れ て 頸 動 脈 管 を 経 て 頭 蓋 内 に 入 る 。 内 頸 動 脈 の 分 枝 で 重 要 な も の は 眼 窩 動 脈 、 後 交 通 動 脈 、 前 及び 中 大 脳 動 脈 で あ る 。 眼 窩 動 脈 は 眼 裔 内 に 入 る 動 脈 で あ る 。 後 交 通 動 脈 は 視 床 、 視 床 下 部を 環 流 す る 。 前 大 脳 動 脈 は 多 数 の 穿 通 枝 を 出 し 、 大 脳 眼 窩 部 、 線 条 体 、 帯 状 回 、 脳 梁 を 環流 す る 。 中 大 脳 動 脈 は 線 条 体 、 内 包 、 島 、 中 お よ び 下 前 頭 回 、 前 頭 葉 眼 窩 部 の 外 側 、 前 およ び 後 中 心 回 、 上 お よ び 下 頭 頂 葉 、 中 側 頭 回 、 後 頭 葉 の 一 部 を 環 流 す る 。 椎 骨 動 脈 は 頭 蓋内 3-35

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に 入 っ た 後 左 右 合 し て 脳 底 動 脈 と な る 。脳 底 動 脈 か ら 下 小 脳 動 脈 、内 耳 動 脈 、上 小 脳 動 脈 、 後 大 脳 動 脈 が 分 か れ る 。 二 つ の 小 脳 動 脈 は 小 脳 を 環 流 し 、 内 耳 動 脈 は 内 耳 を 環 流 す る 。後 大 脳 動 脈 は 視 床 、視 床 下 部 、脳 梁 膨 大 、大 脳 半 球 側 頭 葉 、後 頭 葉 、頭 頂 葉 下 部 を 環 流 す る 。 図 3 - 3 1 脳 の 動 脈 ( 1 ) : 側 面 3-36

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図 3 - 3 2 脳 の 動 脈 ( 2 ) 底 面 7 . 3 静 脈 ( 図 3 - 3 4 ) 脳 の 静 脈 は 表 面 静 脈 と 深 部 静 脈 に 分 か れ る 。表 面 静 脈 は 上 、中 、下 大 脳 静 脈 に 分 か れ る 。 上 大 脳 静 脈 は 大 脳 半 球 の 背 側 、 背 外 側 、 お よ び 脳 梁 よ り 上 の 内 側 面 の 血 液 を 集 め る 。 中大 脳 静 脈 は 大 脳 半 球 外 面 の 上 方 の 血 液 を 集 め る 。 下 大 脳 静 脈 は 大 脳 半 球 外 側 下 半 お よ び 底面 の 血 液 を 集 め る 。 大 脳 深 部 静 脈 は 脳 室 周 辺 部 の 白 質 、 基 底 核 、 お よ び 大 脳 の 中 心 部 か ら血 液 を 集 め る 。脳 硬 膜 に は 、① 上 矢 状 静 脈 洞 、② 下 矢 状 静 脈 洞 、③ 直 静 脈 洞 、④ 海 綿 静 脈 洞 、 ⑤ 体 静 脈 洞 、 ⑥ 横 静 脈 洞 、 ⑦ S 状 静 脈 洞 な ど の 静 脈 洞 が あ り 、 静 脈 か ら 血 液 が 流 出 す る 。 3-37

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図 3 - 3 3 脳 動 脈 の 還 流 領 域 : 上 : 側 面 、 下 : 内 面 anterior cerebral artery:前大脳動脈、middle cerebral artery:中大脳動脈

posterior cerebral artery:後大脳動脈、1:眼窩前頭動脈、2:前ローランド動脈、 3 : ロ ー ラ ン ド 動 脈 、 4 ; 前 頭 頂 動 脈 、 5 : 後 頭 頂 動 脈 、 6 : 角 回 動 脈 、

7 : 後 側 頭 動 脈 、 8 : 前 側 頭 動 脈 、 9 : 眼 窩 動 脈 、 1 0 : 前 頭 極 動 脈 、 1 1 : 脳 梁 動 脈 、 1 2 : 後 内 前 頭 動 脈 、 1 3 : 傍 脳 梁 動 脈

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図 3 - 3 4 脳 の 静 脈

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7 . 解 剖 学 か ら 見 た 機 能 局 在 7 . 1 大 脳 皮 質 領 野 と 機 能 局 在 あ ら ゆ る 臓 器 に お い て 構 造 と 機 能 は 密 接 に 関 係 し て い る 。 肺 で は 、 気 管 → 主 気 管 支 →気 管 支 → 細 気 管 支 → 終 末 細 気 管 支 → 呼 吸 細 気 管 支 → 肺 胞 道 → 肺 胞 嚢 → 肺 胞 と 次 第 に 枝 分 かれ し 、 肺 胞 の 表 面 を 網 の 目 の よ う に 走 る 毛 細 血 管 と の 間 で ガ ス 交 換 が 行 わ れ る 。 肺 胞 の 数は 両 肺 で 6 億 と 言 わ れ て い る 。 こ の 構 造 に よ り 毛 細 血 管 と 空 気 と 接 触 す る 面 積 は 極 め て 広く な っ て い る ( 約 6 0 ㎡ ) 。 脳 の 基 本 機 能 は 情 報 処 理 で あ る 。 大 脳 皮 質 の 細 胞 構 築 が 領 野に よ っ て 異 な る こ と は 情 報 処 理 様 式 が 領 野 に よ っ て 異 な る こ と を 意 味 す る 。 解 剖 学 の 視 点か ら 見 れ ば 、 脳 局 在 の 基 本 単 位 は 大 脳 皮 質 領 野 で あ る 。 前 述 の ご と く 、 神 経 心 理 学 に お ける 脳 局 在 の 基 本 単 位 は モ ジ ュ ー ル で あ る 。 そ れ な ら ば 単 一 の 領 野 は 単 一 の モ ジ ュ ー ル に 対応 す る か 。 現 時 点 で は 実 証 デ ー タ は 乏 し い が 、 理 論 的 に は 両 者 間 に 対 応 関 係 が 成 立 す る はず で あ る 。 逆 に 言 う と 、 解 剖 学 的 に 単 一 の 領 野 、 よ り 正 確 に 表 現 す れ ば 細 胞 構 築 あ る い は髄 鞘 構 築 に 関 し て 同 一 と 認 め ら れ る 脳 部 位 に つ い て 機 能 局 在 を 論 じ る べ き で あ る 。 脳 損 傷者 に お い て は 、 解 剖 学 的 に 単 一 の 領 野 の み が 破 壊 さ れ る と い う こ と は ま ず あ り 得 な い 。 損傷 領 野 と 症 状 と の 厳 密 な 対 応 関 係 を 論 じ る た め に は 、症 例 研 究 と 共 に 動 物 実 験 が 必 要 で あ る 。 機 能 画 像 解 析 の 場 合 、 大 脳 皮 質 の ど の よ う な 細 胞 構 築 を 有 す る 領 野 が 活 性 化 さ れ た か 、さ ら に は ど の 層 の ど の 細 胞 が 活 性 化 さ れ た か ま で 解 析 し な い と 真 の 意 味 で の 脳 局 在 は 論 じら れ な い 。 画 像 解 析 は 確 か に 進 歩 し た が 、 真 の 脳 機 能 局 在 を 論 じ る に は そ の 精 度 は ま だ まだ 不 十 分 で あ る 。 今 後 一 層 の 技 術 開 発 が 期 待 さ れ る 。 7 . 2 機 能 系 、 離 断 症 状 古 典 局 在 論 に よ れ ば 、 中 枢 の 損 傷 だ け で な く 、 中 枢 間 の 線 維 連 絡 路 の 損 傷 も 高 次 脳 機能 障 害 を 引 き 起 こ す 。 す な わ ち 離 断 症 状 で あ る 。 現 代 に お け る 機 能 系 の 概 念 に 従 え ば 、 多数 の 領 野 の 活 動 が 統 合 さ れ て 特 定 の 高 次 脳 機 能 が 営 ま れ る 。 そ う で あ る な ら 機 能 系 を 構 成す る 領 野 間 に は 線 維 連 絡 が あ る は ず で あ る 。 線 維 連 絡 は 神 経 心 理 学 に お い て 重 要 な 意 味 を有 し て い る 。 し か し な が ら 、 従 来 問 題 に さ れ て き た 線 維 連 絡 は 多 く の 場 合 仮 説 的 な も の に留 ま っ て い た 。 現 代 に お け る 脳 の 解 剖 学 や 構 造 画 像 解 析 の 進 歩 は 線 維 連 絡 や そ の 損 傷 の 有無 を 実 証 的 に 検 討 す る こ と を 可 能 に し た 。 か つ て は 高 次 脳 機 能 障 害 を 示 す 患 者 の 大 脳 白 質に 損 傷 が あ れ ば そ れ だ け で 離 断 症 状 と 見 な し て い た こ と も あ る 。 今 後 は ど の 線 維 連 絡 が 損傷 3-40

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さ れ て い る の か を 明 確 な 解 剖 学 的 証 拠 に 基 づ い て 論 じ る こ と が 必 要 と な ろ う 。 解 剖 学 的 に 見 れ ば 、機 能 系 に 含 ま れ る 領 野 間 に は 相 互 に 線 維 連 絡 が 存 在 す る は ず で あ る 。 逆 に 言 え ば 、 線 維 連 絡 の な い 領 野 は 機 能 系 を 構 成 し え な い 。 機 能 系 を 考 え る 場 合 、 そ れを 裏 付 け る 解 剖 学 的 証 拠 が あ る か ど う か は 非 常 に 重 要 で あ る 。 提 案 さ れ た 機 能 系 の 妥 当 性の 検 証 の た め に 解 剖 学 は 有 力 な 武 器 と な る 。 古 く ウ ェ ル ニ ッ ケ は そ の 著 の 副 題 を 「 解 剖 学 的 基 礎 に 基 づ く 心 理 学 的 研 究 」 と し た が 、 彼 が 実 際 に 行 っ た こ と は 「 心 理 学 的 基 礎 に 基 づ く 解 剖 学 的 研 究 」 で あ る と 揶 揄 さ れ た 。現 代 の 神 経 心 理 学 に お い て も こ の よ う な 傾 向 が 全 く な い と は 言 え な い 。 例 え ば 、 機 能 的 な離 断 と 解 剖 学 的 な 離 断 と は 別 で あ る 。 あ る 高 次 脳 機 能 障 害 が 機 能 的 離 断 に よ っ て 説 明 可 能で あ る と し て も 、 そ こ か ら 直 ち に 解 剖 学 的 離 断 も 存 在 す る と 考 え る 研 究 者 が い る 。 も ち ろん こ れ は 誤 り で あ る 。 解 剖 学 的 離 断 が あ る か ど う か は 実 際 に 脳 を 検 索 し て 見 な け れ ば 分 から な い 。 機 能 系 や 離 断 症 状 を 問 題 に す る 時 に は 、 解 剖 学 的 知 見 に 十 分 留 意 す る 必 要 が あ る 。

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図 3 - 8   視 床 諸 核 の 線 維 連 絡   3-8
図 3 - 1 1   大 脳 半 球 底 面
図 3 - 1 7  ブ ロ ー ド マ ン の 脳 地 図
図 3 - 1 8   フ ォ ン ・ エ コ ノ モ の 脳 地 図
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参照

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