• 検索結果がありません。

東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)"

Copied!
73
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)

氏名(本籍) タカムラ ジュンコ

高村 絢子(大阪府)

学位の種類 博士(薬科学)

学位記番号 薬科第4

学位授与の日付 令和 99

学位授与の要件 学位規則第4条2項該当

学位論文題名 膝関節腔内注射剤架橋ヒアルロン酸製剤 Gel-200 の変形 性膝関節症に対する有効性および安全性の解析

論文審査委員

主査 授 細 野 雅 副査 授 小 嶋 文 副査 特任教授 井ノ口 仁

(2)

膝関節腔内注射剤架橋ヒアルロン酸製剤Gel-200の変形性膝関節症に対する 有効性および安全性の解析

東北医科薬科大学薬学研究科 機能病態分子学教室

高村 絢子

(3)

目次

1. 緒言 ... 5

1.1. 背景 ... 5

1.2. これまでに報告されたGel-200の研究 ... 11

1.2.1. 非臨床試験... 11

1.2.2. 臨床試験 ... 12

1.2.2.1. 臨床試験で用いられた評価項目 ... 13

1.2.2.2. 臨床試験結果 ... 15

2. 本研究の目的 ... 30

3. Gel-200の再投与後の安全性 ... 33

3.1. 目的 ... 33

3.2. 方法 ... 33

3.3. 統計解析 ... 35

3.4. 結果 ... 36

3.5. 考察 ... 42

3.6. 結論 ... 44

4. Gel-200の有効性および安全性 ... 45

4.1. 目的 ... 45

4.2. 方法 ... 45

4.3. 統計解析 ... 47

4.4. 結果 ... 48

4.5. 考察 ... 52

4.6. 結論 ... 54

5. Gel-200が有効な患者層の特定 ... 55

5.1. 目的 ... 55

5.2. 方法 ... 55

5.3. 統計解析 ... 57

5.4. 結果 ... 57

5.5. 考察 ... 60

5.6. 結論 ... 62

6. 結語 ... 63

本論文について ... 65

謝辞 ... 66

参考文献 ... 67

(4)

表 1. 米国で販売されている関節腔内HA製剤 ... 8

表 2. Gel-200の組成 ... 10

表 3. 臨床試験①の患者背景 ... 17

表 4. Gel-200群とPBS群間のWOMAC pain subscores評価値の差 ... 18

表 5. 有害事象まとめ ... 19

表 6. 臨床試験②の患者背景 ... 22

表 7. 有害事象まとめ ... 24

表 8. 臨床試験③の患者数 ... 26

表 9. 臨床試験③の患者背景 ... 27

表 10. 有害事象まとめ ... 28

表 11. Gel-200群とPBS群間の50-foot walk test pain scoreの群間差 ... 29

表 12. Gel-200群とEuflexxa®群のWOMAC pain subscoresの非劣性比較 ... 29

表 13. Gel-200と他IA-HA製剤との臨床試験患者の背景比較 ... 30

表 14. 臨床試験①における再投与群と非再投与群の患者背景 ... 38

表 15. 臨床試験①における再投与群と非再投与群の安全性 ... 39

表 16. 臨床試験①における投与後13週時点での再投与群と非再投与群の有効性 . 40 表 17. 臨床試験②における再投与群とPBS-Gel投与群の安全性 ... 41

表 18. ベースラインと患者背景 ... 49

表 19. 主要評価項目:WOMAC pain subscoresにおける26週間のベースラインから の変化 ... 50

表 20. 副次評価項目における26週間のベースラインからの変化 ... 51

表 21. 著明改善割合(OMERACT-OARSI strict responder rate) ... 51

表 22. 有害事象のまとめ ... 52

表 23. ベースラインおよび患者背景 ... 58

表 24. WOMAC pain subscoresのベースラインからの平均変化量 ... 59

表 25. 26週時点での副次有効性評価結果 ... 60

(5)

1. ヒアルロン酸の構造 ... 6

2. Gel-One® ... 9

3. Gel-200の構造 ... 10

4. 臨床試験デザイン概要 ... 12

5. 臨床試験①の患者フローチャート ... 16

6. WOMAC pain subscores評価によるベースラインからの疼痛改善 ... 18

7. 臨床試験②の患者フローチャート ... 21

8. 再投与を受ける疼痛スコアに達するまでの推測時間 ... 23

9. 解析群の構成 ... 35

10. 患者フローチャート ... 37

11. 臨床試験の概要 ... 46

12. WOMAC pain subscoresのベースラインからの平均変化量 ... 59

13. 研究のまとめ ... 64

(6)

1. 緒言 1.1. 背景

膝関節は大腿骨と脛骨で構成され、骨を靭帯でつないでいる。それぞれの骨の表面 は軟骨で覆われ、軟骨間は滑液で満たされている。この軟骨と滑液により、膝関節を 滑らかに動かすことができる。変形性関節症(osteoarthritis [OA])は、関節軟骨をはじめ とする関節構成体の退行性変性とそれに続く関節軟骨および骨の破壊、関節辺縁や軟 骨下骨における骨の増殖性変化によって起こる疾患であり、とりわけ変形性膝関節症

(膝OA)は中高年者の多くが罹患する1,2。原因として、加齢による関節組織の変化、外

傷、肥満が考えられている3,4。OAの罹患者は国内で2350万人超、米国では約2700 人に何らかの変形性関節症があると推測されていると報告されおり、その患者数は 年々増加している5,6,7

OAのような運動器疾患により移動機能が低下すると、要支援・要介護のリスクが 増加すると言われ、このような状態はロコモティブシンドロームと言われている8,9

このように膝OAは患者数が多く、重要な疾患であるが、根本的な治療はまだ存在し ない。膝OAの主症状は、関節痛や関節水腫、可動域制限であることから、その治療目 標は疼痛の軽減と機能改善となる10。厚生労働省は、膝 OA の治療でその疼痛と機能改 善を適切にコントロールすることは要介護予防につながる、と基本方針を提唱している

11

OAの治療は、運動療法、物理療法、薬物療法などの保存的治療が主なアプローチ となり、薬物療法では、経口剤や外用剤としてアセトアミノフェン、非ステロイド性抗 炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drugs [NSAIDs])が、関節腔内注射剤としてヒアルロ ン酸(hyaluronic acid [HA])製剤や副腎皮質ステロイド製剤が主に用いられる。保存療法で 症状の改善が得られず、関節破壊が進展した患者では、関節置換術など手術療法が考慮 される。

(7)

ロイチン硫酸とコアタンパク質が結合したもの)である。コラーゲンが網目構造を形成す ることにより弾力性を維持し、その中に存在するプロテオグリカンのHAの糖鎖の隙間 に、浸透圧により水分が入り込むことで水分を貯留することができ、負荷に対応するこ とができる12

OA患者の膝では、滑液のHA濃度とHA分子量が減少することにより、粘度が減 少することが報告されており13,14,15、これらの変化は滑液の軟骨保護作用を減少させる16

HA1934年にMeyerらにより、牛の眼の硝子体から発見され、ギリシャ語の硝子体

(hyalos)からヒアルロン酸と命名された17。HA N-アセチル-D-グルコサミンと D-グル

クロン酸の二糖が繰り返して構成される高分子ポリマーで、関節軟骨や滑液の成分の一 つである18,19(図 1)。

1. ヒアルロン酸の構造18,19

HAの臨床利用は、1970年にRydellらが関節を負傷した競走馬の関節腔内にHAを投 与し、その有効性が示されたことにより関節腔内 HA(intra-articular [IA]-HA)投与の有効 性が注目された20。1987 年に生化学工業株式会社(東京、日本)が HA を主成分としたヒ

トの膝 OA に対する IA-HA 製剤である、関節機能改善剤アルツ®(米国では SUPARTZ®)

の製造承認を国内で初めて取得した21

関節腔内 HA 製剤は、作用メカニズムが十分に解明されていないものの、HA の濃度 と分子量が下がった膝OA患者の膝関節内にHAを注射すると、正常な滑液が保持され、

HA が産生されることによって、抗炎症作用、鎮痛作用及び関節軟骨の保護作用を有す ることが示唆されている。また、HA が持つ粘弾性により、関節の潤滑剤や衝撃吸収剤 としての機能も有することが報告されている22,23,24,25

(8)

また、Brownらは、天然のHAの半減期が短いことを動物試験で示した26。この結果を 受け、天然HAに比べてより安定した有効性を得るために、高分子HAや化学修飾によ HA に架橋構造を持たせるなど、HA 製造技術の研究が進んだ。国内で販売されてい

IA-HAは天然のHAを主成分とした毎週5回投与製品のみであり、鶏冠から抽出した

天然 HA 由来と微生物の発酵により産生された発酵 HA 由来の製品がある27。一方、米 国では天然 HA を主成分とした製品の他、HA に架橋構造を有して粘弾性を高めた架橋 HA製剤が販売されている(表 1)。米国で販売されているすべてのHA製剤の効能は同じ OAの疼痛緩和である。一方、国内とは異なり、米国での用法は製品により異なり、

近年は投与回数がより少ない製品が開発されている。

(9)

8

表 1. 米国で販売されている関節腔内HA製剤 製 品

Supartz FX

HYALGA N

Genvisc 850

EUFLEXXA ORTHOVIS C

SYNVIS C

GEL- SYN-3

VISCO- 3*1

Hymovis Synvisc- One*2

Gel-One Monovisc 販社 Bioventus Fidia Orthogen

RX

Ferring Depuy Mitek

Sanofi- Aventis

Bioventus Zimmer Fidia Sanofi- Aventis

Zimer Depuy Mitek 用法

(投与 回数)

毎週5 毎週5 毎週5 毎週3 毎週3~

4

毎週3 毎週3 毎週3 毎週2 1 1 1

由来 鶏冠 鶏冠 発酵 発酵 鶏冠 鶏冠+ HA*3

発酵 鶏冠 発酵 鶏冠+ HA*3

鶏冠架 HA

発酵架 HA 濃度/

用量

25 mg/

2.5 mL

20 mg/

2.0 mL

25 mg/

2.5 mL

20 mg/

2.0 mL

30 mg/

2.0 mL

16 mg/

2.0 mL

16.8 mg/

2.0 mL

25 mg/

2.5 mL

24 mg/

3.0 mL

48 mg/

6.0 mL

30 mg/

3.0 mL

88 mg/

4.0 mL 分 子

(dalto n)

0.62 – 1.17M

0.50 – 0.73M

0.62 – 1.17M

2.4 – 3.6M

1.0 – 2.9M

6M + gel 1.1M 0.62 – 1.17M

不明*4 6M + gel 不明*4 1.0 – 2.9M

承 認

2001 1997 2015 2004 2004 1997 2014 2015 2015 2009 2011 2014

*1: VISCO-3 is consistent with Supartz FX other than volume.

*2: SYNVISC and Synvisc-One have the same contents other than volume.

*3: Mixture of Hylans A and B.

*4: Data is not available.

(10)

Gel-200(Gel-One®、生化学工業株式会社)は無色透明で粘弾性のある架橋 IA-HA 製剤 (3 mL、1% [10 mg/mL])であり、米国で2011年より販売されている(図 2、表 2)28HA モノマーとしてケイ皮酸を結合させ、紫外線照射によりケイ皮部分がダイマーとなり HA 間の架橋構造を構成させる(図 3)。この架橋構造が従来の天然 HA を主成分とした

IA-HA製剤より高い粘弾性を持たせるため、より長期の有効性を発揮させる。

図 2. Gel-One® 28

(11)

表 2. Gel-200の組成28

架橋ヒアルロン酸ナトリウム 30.0 mg

塩化ナトリウム 24.3 mg

リン酸水素ナトリウム水和物 0.89 mg

リン酸二水素ナトリウム 1.93 mg

注射用水 q.s. to 3mL

図 3. Gel-200の構造28

(12)

1.2. これまでに報告されたGel-200の研究 1.2.1. 非臨床試験

吉岡らは、ウサギおよびラットの動物関節モデルを用いて、Gel-200の軟骨保護作用お よび疼痛抑制作用を報告した29

(1) ウサギ前十字靭帯切断モデル29

ウサギの前十字靭帯切断モデルは、前十字靭帯を切断することにより、ヒトOAと似 た軟骨変性が起こるため、関節炎動物モデルとして知られている30。ウサギの前十字靭 帯を切断した 4 週後に Gel-200 またはコントロールとしてリン酸緩衝液(Phosphate buffered saline [PBS]) 50 μL/kg/jointを左関節に1回投与した。前十字靭帯切断の9週後に 剖検し、顕微鏡および軟骨変性評価スコア31を用いて肉眼で投与部位の軟骨を評価した。

また、投与部位の軟骨滑膜を採取し、サフラニンO染色により滑膜の病理学的評価を実 施した。

大腿骨関節における損傷はコントロール群で状態がよりひどかった。また、軟骨変性 評価スコアは、コントロール群に比べて Gel-200 群でスコアがより低く、軟骨変性があ る割合は統計学的有意にGel-200群で低かった。サフラニンO染色により確認された軟 骨変性はコントロール群に比べてGel-200群で少なかった。以上の結果より、Gel-200 はコントロール群に比べて有意に軟骨変性を抑制した。

(2) ラットブラジキニン惹起関節疼痛モデル29

ラット関節疼痛モデルは、ブラジキニン投与によりラットに疼痛を惹起したもので、

HAの疼痛抑制効果を観察するために用いられている32,33。Gel-200またはPBSをラット の関節に投与(50 μL/joint)後、1週、2週、4週にブラジキニン(16 μL/mL)を投与して関節 疼痛を惹起し、5ポイントの疼痛スコア基準を用いて疼痛を評価した。

Gel-200群は、1週、2週、4週のいずれの週においてもPBS群に比べて有意に疼痛ス

コアが低く、Gel-200は疼痛を抑制した。

(13)

1.2.2. 臨床試験

これまでに3本の臨床試験(臨床試験①: OA患者を対象としたGel-2001回投与 13 週間の有効性および安全性検証試験34; 臨床試験②: 臨床試験①を終了した患者を 対象としたGel-2001回投与後26週間までの有効性観察および再投与後13週間まで の安全性検証試験35; 臨床試験③: OA 患者を対象とした Gel-200 1 回投与後 26 間の有効性および安全性検証試験36)が米国で実施され、膝 OA 患者に対して、1 回膝関 節腔内に投与後、26週までの高い有効性を示し、安全性に問題が認められないことが示 されている(図 4)。

臨床試験①

臨床試験②

臨床試験③

13週間の有効性および安全性検証試験

26週間の有効性観察試験

再投与後13週間の安全性検証試験

26週間の有効性および安全性検証試験 Gel-200またはPBS投与

Gel-200またはPBS投与

Gel-200再投与

試験①終了後に試験②に移行

図 4. 臨床試験デザイン概要

(14)

1.2.2.1. 臨床試験で用いられた評価項目

(1) Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis (WOMAC) Index37,38,39 University of Western OntarioMcMaster UniversityDr. Bellamyらが中心となって開 発した、変形性膝関節症で最も用いられている患者立脚型評価指標である。疼痛に関す る質問(WOMAC pain subscores) 5問、関節こわばり(WOMAC stiffness subscores)に関する 質問2問、関節機能に関する質問(WOMAC physical function subscores)17問、計24問か ら成り立つ。

回答方法は3種類が用意されており、5-point Likert Scale、100-mm Visual Analog Scale (VAS)、11-box Numerical Scaleがある。例えば、痛みの評価の場合、5-point Likert Scale は、0~4 5段階スコアで、0 が痛みなし、4が最悪な痛みを表し、患者が痛みの程度 のスコアを回答する。100-mm VASは、0 mmが痛みなし、100 mmが最悪な痛みを表し、

患者が100 mmの直線上に痛みの程度の位置をマークする。11-box Numerical Scaleは、0

~10 11 段階スコアで、0が痛みなし、10 が最悪な痛みを表し、患者が痛みの程度の スコアを回答する。

WOMAC pain subscoresは、疼痛に関する質問4問のスコアの平均値、WOMAC stiffness subscoresは、関節こわばりに関する質問2問のスコアの平均値、WOMAC physical function

subscores は、関節機能に関する質問 17 問のスコアの平均値、WOMAC total score は、

WOMAC index24問の平均値を取り扱う。

(2) 50-foot walk test

歩行時疼痛の測定指標で、患者が50 feetの直線上を歩行後、歩行時痛を100 mm VAS 上に回答する。

(15)

(3) OMERACT-OARSI responder rate40,41,42

2 つの学会、Outcome Measures in Rheumatology(OMERACT)と Osteoarthritis Research Society International(OARSI)によって提唱された治療評価改善基準:OMERACT-OARSI responderである。OMERACT-OARSI strict responder rate(著明改善割合)は、WOMAC pain subscoresまたはWOMAC physical function subscoresでベースラインから50%以上の改善

かつ 20 mm以上の改善を示した患者の割合となる。一方、OMERACT-OARSI responder

rate(改善割合)は、WOMAC pain subscores、WOMAC physical function subscores、patient

global evaluation 3 つの評価項目の内、いずれか 2 つの評価項目でベースラインから

20%以上の改善かつ10 mm以上の改善を示した患者の割合となる。

(4) Kellgren-Lawrence (K-L) X-ray score43

KellgrenLawrenceが提唱した膝OAX線画像重症度分類方法である。

Grade 0は、膝OAの兆候がない。Grade 1は、疑わしい関節裂隙狭小化や骨棘形成、ま

たは軟骨下骨硬化が見られる。Grade 2は、骨棘形成と関節裂隙狭小化が見られる。Grade 3 は、複数の骨棘形成と関節裂隙狭小化、さらに骨硬化と骨変形の可能性が見られる。

Grade 4 は、大きな骨棘形成と著しい関節裂隙狭小化、重度の骨硬化と骨変形が見られ

る。

(5) 安全性評価

安全性評価は、臨床試験で報告されたすべての有害事象を用いて評価する。有害事象 とは、実薬またはプラセボの治験薬を投与された被験者に生じたすべての疾病またはそ の徴候を指し、治験薬の因果関係の有無や実薬またはプラセボ投与のいずれが投与され たかを問わない。一方、副作用は、実薬またはプラセボのいずれかが投与されたかに関 わらず、臨床試験中に治験薬に因果関係があると判断された有害事象を指す。

(16)

1.2.2.2. 臨床試験結果

(1) 臨床試験①: 変形性膝関節症患者を対象としたGel-2001回投与後13週間の有効

性および安全性検証試験34

Strandらは、多施設共同無作為化群間並行二重盲検試験において、Gel-200群とコント

ロール(PBS)群の有効性および安全性を比較した。

OA患者を対象とし、Gel-200群(3 mL)とPBS群(3 mL)を2:1に割付し、Gel-200 たはPBSを膝関節腔内に1回投与した。投与時を0週とし、投与後3週、6週、9週、

13週後に有効性および安全性の評価を実施した。有効性は疼痛や関節機能を評価するこ とができるWOMAC index 100-mm VASを用いた。安全性は、有害事象が報告された患

者割合をGel-200群とPBS群で比較した。

598 例が臨床試験の参加に同意し、スクリーニングを受けた。臨床試験で投与対象と なる膝に十分な痛みをもつ患者(対象膝のWOMAC pain subscores ≥40 mmかつ反対膝の

WOMAC pain subscores ≤20 mm )の379例が試験に参加し、そのうち、377例の有効性、

375例の安全性を評価した(図 5)。Gel-200群では231例、PBS群では119例が投与後13 週間の観察を完了した。また患者背景はGel-200群とPBS群間同様であり、統計的な差 は認められなかった(表 3)。

(17)

図 5. 臨床試験①の患者フローチャート34

(18)

表 3. 臨床試験①の患者背景34

Parameters Gel-200

(N = 247)

PBS (N = 128) Gender (n [%])

Male 100 (40.5%) 51 (39.8%)

Female 147 (59.5%) 77 (60.2%)

Age (years) (mean ± SD) 60.9±10.24 60.3±9.97

Body mass index (kg/m2) (mean ± SD) 28.3±4.14 28.7±3.83 Study knee (n [%])

Right 136 (55.1%) 62 (48.4%)

Left 111 (44.9%) 66 (51.6%)

K–L grade(n[%])

Grade 1 21 (8.5%) 18 (14.1%)

Grade 2 94 (38.1%) 47 (36.7%)

Grade 3 132 (53.4%) 63 (49.2%)

Duration of OA in study knee (months) (mean ± SD) 42.0±51.4 31.2±41.2 Baseline WOMAC pain subscores (mm) (mean ± SD) 70.7±14.42 68.0±13.05 Baseline Total WOMAC score (mm) (mean ± SD) 69.5±15.99 67.8±14.68 Baseline WOMAC physical function subscores (mm) (mean

± SD)

68.9±17.41 67.6±15.80 Baseline WOMAC stiffness subscores (mm) (mean ± SD) 71.6±17.48 69.3±17.31 No statistically significant differences were identified between treatment groups

PBS: phosphate buffered saline, SD: standard deviation, K-L: Kellgren-Lawrence, OA:

osteoarthritis, WOMAC: Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index.

投与後の疼痛改善をWOMAC pain subscoresで評価したところ、Gel-200群およびPBS 群の両群でWOMAC pain subscoresがベースラインから改善し、投与後3週時点からGel- 200 群の改善値はPBS 群を統計的有意に上回った。投与後 3週以降 13 週までのすべて の評価時点において、Gel-200 群はPBS 群と比較して統計的有意な改善を示した上、投 与後 13 週間の改善についてもGel-200 群は PBS 群に対して統計的有意に大きかった。

(図 6、表 4)

(19)

図 6. WOMAC pain subscores評価によるベースラインからの疼痛改善34

*: p <0.05, **: p <0.01

表 4. Gel-200群とPBS群間のWOMAC pain subscores評価値の差34 Time points Estimated difference (95%

confidence interval [CI])

p-value Mean improvement from baseline

Week 3 8.12 (3.47, 12.78) 0.001 40.6%

Week 6 8.12 (2.73, 13.50) 0.003 44.1%

Week 9 5.77 (0.26, 11.29) 0.040 44.8%

Week 13 6.39 (0.37, 12.41) 0.037 39.3%

Weeks 3–13 7.10 (2.15, 12.05) 0.005 –

Analyses used the primary model and tested the model-estimated difference between two groups.

すべての有害事象および副作用の発現割合は、Gel-200 群とPBS 群間で統計的有意差 はなく、同様であった(表 5)。主な副作用は、関節の腫れ、関節水腫、関節痛であった。

(20)

重篤な有害事象はGel-200群のみに報告されたが、Gel-200との因果関係は否定され、そ の発現割合はGel-200群とPBS群間で統計的有意差が認められなかった。よって1回投

与後のGel-200の安全性が示された。

表 5. 有害事象まとめ34

Gel-200 (N = 249) PBS (n = 128) Patients

(n [%])

Events (n)

Patients (n [%])

Events (n)

Total AEs 172

(69.1%)

483 81

(63.3%)

216

SAEs 8 (3.2%) 19 0 0

Unanticipated related adverse events 0 0 0 0

Total related AEs 67 (26.9%) 124 33

(25.8%)

58 Related AEs occurring within 24h of IA

injection

35 (14.1%) 43 14

(10.9%)

19 Related AEs occurring in ≥5%

Joint swelling 35 (14.1%) 43 15

(11.7%)

18

Joint effusion 28 (11.2%) 31 13

(10.2%)

13

Arthralgia 19 (7.6%) 24 12 (9.4%) 14

No statistically significant difference was identified between treatment groups.

AE: adverse event, SAE: serious adverse event, PBS: phosphate buffered saline.

(21)

(2) 臨床試験②: 臨床試験①を終了した患者を対象としたGel-2001回投与後26週間 までの有効性観察および再投与後13週間までの安全性検証試験35

臨床試験②は、多施設共同無作為化群間並行継続観察および再投与オープンラベル 試験であり、臨床試験①を終了した患者を対象としている。臨床試験①終了後も有効 性および安全性の観察を最長13週間、つまり臨床試験①での初回投与後26週まで観 察を継続した。継続観察中は、臨床試験①での初回投与後16週、19週、22週、26 に初回投与後の有効性を評価した。継続観察中に再投与を受ける疼痛スコア基準(対象 膝のWOMAC pain subscores ≥40mmかつ反対膝のWOMAC pain subscores ≤20 mm)に達 した患者に対してGel-200を再投与し、再投与後3週、6週、9週、13週に再投与後の 有効性および安全性を観察した。

臨床試験①を終了した350例のうち、258例が臨床試験②に参加した。臨床試験②に 参加した患者の内、97例が継続観察を受け、47例が臨床試験①終了後13週間の継続 観察を完了した。再投与を受ける疼痛スコアの基準に達した患者は202例おり、その 内、199例が再投与を受けた(図 7)。再投与を受けた患者の内、41例は継続観察中に再 投与を受ける疼痛スコアの基準に達し、再投与を受けた。再投与を受けた患者の内、

183例が再投与後13週間の観察を完了した。

(22)

図 7. 臨床試験②の患者フローチャート35

*92 did not enter the extension trial: 36 completed initial treatment before the site initiated the protocol; 6 because their sites did not participate in the trial; 50 did not consent to enter the extension.

G2 group received a second Gel-200 injection. PG group received a Gel-200 injection following an initial phosphate-buffered saline (PBS) injection.

患者背景は、継続観察を実施した患者および再投与を受けた患者を臨床試験①で投 与された割付であるGel-200群とPBS群間で比較した。継続観察のGel-200群とPBS 群間、および再投与後のGel-200 1回投与群(臨床試験①でPBS投与後、臨床試験②で

Gel-200投与)、Gel-200 2回投与群(臨床試験①でGel-200投与後、臨床試験②でGel-200

再投与)間のいずれにも統計的な差は認められなかった(表 6)。

(23)

表 6. 臨床試験②の患者背景35

Parameters Extension phase Retreatment phase

Gel-200 (N = 40)

PBS (N = 24)

G2 (N = 122)

PG (N = 74) Gender (n[%])

Male 18 (45.0%) 10 (41.7%) 48 (39.3%) 26 (35.1%) Female 22 (55.0%) 14 (58.3%) 74 (60.7%) 48 (64.9%) Age (years) (mean ± SD) 61.1 ± 10.85 62.8 ± 10.17 61.4 ± 10.29 61.6 ± 10.50 Body mass index (kg/m2)

(mean± SD)

28.9 ± 3.52 28.8 ± 4.27 28.6 ± 4.14 29.1 ± 4.01 K-L grade (n[%])

Grade 1 7 (17.5%) 4 (16.7%) 10 (8.2%) 7 (9.5%) Grade 2 17 (42.5%) 9 (37.5%) 41 (33.6%) 23 (31.1%) Grade 3 16 (40.0%) 11 (45.8%) 71 (58.2%) 44 (59.5%)

PBS: phosphate-buffered saline, G2: group received a second Gel-200 injection, PG: group received a Gel-200 injection following an initial PBS injection, SD: standard deviation, K-L:

Kellgren-Lawrence.

No statistically significant differences were identified between treatment groups.

継続観察に入った患者が再投与を受ける疼痛スコア基準に達するまでの時間につい て、Kaplan-Meire法(生存解析)およびCox解析を用いてGel-200群とPBS群を比較し た。Kaplan-Meire法で再投与を受ける疼痛スコアに達するまでの推測時間を解析したと ころ、Gel-200群がPBS群に比べて、再投与を受ける疼痛スコアに達するまでの時間が 統計的有意に長かった(図 8)。

(24)

図 8. 再投与を受ける疼痛スコアに達するまでの推測時間35

また、再投与に至らなかった患者数について、Gel-200群とPBS群の差をCox解析で 検定したところ、Gel-200群はPBS群に対して統計的有意に再投与を受けない患者が多 かった(p = 0.040)。

再投与後の有害事象をGel-2002回投与群(G2群)とPBS投与後Gel-200再投与後群 (PG群)で比較すると、有害事象および副作用の発現割合は、両群間で統計的有意差が 認められなかった。また、再投与後の有害事象および副作用の発現割合は、初回投与 後の有害事象の発現割合を上回らなかった(表 7)。主な副作用は、初回投与後に報告さ れた副作用と同様に、関節の腫れ、関節水腫、関節痛であった。よってGel-200再投与 後の安全性が示された。

(25)

表 7. 有害事象まとめ35

G2 (N = 125) PG (N = 74) Patients

(n [%])

Events (n)

Patients (n [%])

Events (n)

Total AEs 68

(54.4%)

151 43

(58.1%)

106

SAEs 3 (2.4%) 3 1 (1.4%) 3

Unanticipated related serious AEs 0 (0.0%) 0 0 (0.0%) 0

Total related AEs 26

(20.8%)

48 13

(17.6%)

20 Related AEs occurring within 24h of IA

injection

13 (10.4%)

16 3 (4.1%) 4

Related AEs occurring in ≥5%

Joint swelling 12 (9.6%) 12 5 (6.8%) 5

Joint effusion 9 (7.2%) 9 5 (6.8%) 5

Arthralgia 12 (9.6%) 13 6 (8.1%) 6

AE: adverse event, SAE: serious adverse event, PBS: phosphate-buffered saline, G2: group received a second Gel-200 injection, PG: group received a Gel-200 injection following an initial PBS injection.

No statistically significant differences were identified between treatment groups.

(26)

(3) 臨床試験③: 変形性膝関節症患者を対象としたGel-2001回投与後26週間までの 有効性および安全性検証試験36

OA 患者を対象とし、多施設共同無作為化群間並行二重盲検試験において Gel-200 PBS1回投与後の安全性および有効性が比較された。対象患者をGel-200群(3 mL) PBS群(3 mL)を1:1に割付し、Gel-200またはPBSを膝関節腔内に1回投与した。投 与を0週とし、投与後3週、6週、12週、18週、26週に有効性および安全性を評価をし た。有効性は50-foot walk test 100-mm VAS pain scoreおよびWOMAC index 100-mm VAS を用いた。

1595例が試験参加に同意し、スクリーニングを受けた。その内、臨床試験で投与対象 となる膝に十分な痛みをもつ患者(対象膝の50-foot walk test pain score50 mmから90 mmかつ反対膝の50-foot walk test pain score ≤30 mm )の817例が試験に参加した。解析対 象となる 809例の有効性および 814 例の安全性を評価した(表 8)。また患者背景は Gel- 200群とPBS群間で同様であり、両群間に統計的な差は認められなかった(表 9)。

(27)

表 8. 臨床試験③の患者数36

PBS (N = 410)

n (%)

Gel-200 (N = 407)

n (%)

All Treatments (N = 817)

n (%)

Screened 1595

Randomized 410 407 817

Analysis populationsa

Safety 410 (100.0) 404 (99.3) 814 (99.6)

Intent-to-treat 407 (99.3) 402 (98.8) 809 (99.0) Per-protocol 385 (93.9) 369 (90.7) 754 (92.3) Safety populationa

Completed 356 (86.8) 356 (87.5) 712 (87.1)

Discontinued 54 (13.2) 48 (11.8) 102 (12.5)

Reason for discontinuationb

Adverse event 8 (14.8) 9 (18.8) 17 (16.7) Lost to follow-up 14 (25.9) 7 (14.6) 21 (20.6) Noncompliance with study

protocol 8 (14.8) 5 (10.4) 13 (12.7)

Protocol violation 0 (0.0) 4 (8.3) 4 (3.9) Investigator decision 2 (3.7) 1 (2.1) 3 (2.9) Withdrawal by subject 13 (24.1) 15 (31.3) 28 (27.5) Lack of efficacy 7 (13.0) 6 (12.5) 13 (12.7)

Death 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0)

Other 2 (3.7) 1 (2.1) 3 (2.9)

PBS: phosphate buffered saline.

Three subjects were randomized, but not injected, and therefore are not included in the safety population.

a Percentages are based on the number of subjects in each treatment group who were randomized.

b Percentages are based on the number of subjects in each treatment group who discontinued.

(28)

表 9. 臨床試験③の患者背景36

Parameters PBS

(N = 407) Gel-200

(N = 402) All Treatments (N = 809) Sex (n [%])

Male 173 (42.5) 181 (45.0) 354 (43.8)

Female 234 (57.5) 221 (55.0) 455 (56.2)

Age (years) (mean ± SD) 59.8 ± 9.32 59.3 ± 9.14 59.6 ±9.23 Body mass index (kg/m2)

(mean ± SD) 28.797 ± 3.9244 28.597 ± 4.1923 28.698 ± 4.0585 K-L grade (n[%])

Grade 1 111 (27.3) 113 (28.1) 224 (27.7)

Grade 2 164 (40.3) 161 (40.0) 325 (40.2)

Grade 3 132 (32.4) 128 (31.8) 260 (32.1)

Study knee (n[%])

Right 212 (52.1) 209 (52.0) 421 (52.0)

Left 195 (47.9) 193 (48.0) 388 (48.0)

Osteoarthritis knee disease duration (months)

(mean ± SD)

6.90 ± 7.072 6.80 ± 7.835 6.85 ± 7.456

Baseline 50-Foot walk test VAS pain score (mm)

(mean ± SD)

69.36 ± 7.817 69.25 ± 7.640 69.31 ± 7.725

PBS: phosphate buffered saline, SD: standard deviation, K-L: Kellegren-Lawrence, VAS: visual analog scale.

すべての有害事象および副作用の発現割合は、Gel-200 群とPBS 群間で統計的有意差 は認められず、同様であった(表 10)。また、主な副作用は臨床試験①と同様に、関節の 腫れ、関節水腫、関節痛が報告されたが、5%以上の患者で報告された副作用はなかった。

よって臨床試験①と同様に1回投与後のGel-200の安全性が示された。

(29)

表 10. 有害事象まとめ36 PBS (N = 410)

n (%)

Gel-200 (N = 404)

n (%)

All Treatments (N = 814)

n (%)

n (%) Events n (%) Events n (%) Events p-Value AEs 197 (48.0) 421 185 (45.8) 421 382 (46.9) 842 0.528

Deaths 0 0 0 0 0 0 NA

Serious AEs 6 (1.5) 7 7 (1.7) 7 13 (1.6) 14 0.787

Related 0 0 0 0 0 0 NA

Not Related 6 (1.5) 7 7 (1.7) 7 13 (1.6) 14

UADEs 0 0 0 0 0 0 NA

Related AEs

occurring ≥5% None

AE: Treatment emergent adverse event, UADE: Unanticipated adverse device effect, PBS:

phosphate buffered saline.

投与後の50-foot walk test pain scoreを解析したところ、ベースラインからの改善にお

いてGel-200群とPBS群間に統計的有意差は認められなかった( 11)

一方、WOMAC pain subscoresにおいては、26週間の有効性が報告されている他IA-HA

製剤のEuflexxa®Gel-200を比較した。Altmanらは、FLEXX試験を実施し、Euflexxa® 3回投与後26週間の有効性を確認した44。FLEXX試験では50-foot walk test pain score

WOMAC pain subscores を用いて有効性を評価した。FLEXX 試験で報告されている

WOMAC pain subscoresと臨床試験③で評価したWOMAC pain subscoresを非劣性解析で 比較した。その結果、Gel-200群のWOMAC pain subscoresのベースラインからの改善値

は、Euflexxa®WOMAC pain subscoreのベースラインからの改善値と非劣性であること

が示された( 12)。また、Euflexxa®のベースラインからの改善値はGel-200群の方が大 きかった。非劣性解析により、Gel-200 1回投与後の有効性は、Euflexxa®3 回投与 後の有効性と同等であることが示された。

(30)

表 11. Gel-200群とPBS群間の50-foot walk test pain scoreの群間差36

(mm)

PBS (N = 407)

Gel-200

(N = 402) p-value

Actual

Change from

Baseline Actual

Change from Baseline

Difference 95% CI

0.988 Baseline 69.36

(SD = 7.82)

69.25 (SD = 7.64)

LS mean -31.7 -31.7 0.0 (-2.7, 2.7)

CI: confidence interval, LS: least square, PBS: phosphate buffered saline, SD: standard deviation.

表 12. Gel-200群とEuflexxa®群のWOMAC pain subscoresの非劣性比較36

Outcome at 26 Weeks Euflexxa® Gel-200

Change from baseline (95% CI) (mm) -25.7 (-29.0, -22.4) -29.5 (-32.1, -26.9)

Difference (95% CI)* (mm) -3.8 (-inf, -0.3)

*Gel-One® estimate minus Euflexxa's estimate. Standard Error (SE) is estimated as

√(SE12+SE22), where SE1 and SE2 are the standard errors of the two estimates.

95% confidence interval (CI) is a one-sided test for non-inferiority.

(31)

2. 本研究の目的

米国では様々なIA-HA製剤が販売されている。特に販売期間が長い製品には多数の臨 床報告が存在し、その有効性や安全性について多面的な解析や新たな臨床研究が実施さ れている。しかし、米国整形外科学会や米国リウマチ学会の治療ガイドラインでは、IA- HA製剤の有効性に懐疑的である45Rutjesらは、これらのガイドラインと同様の意見を 報告するとともに、IA-HA 製剤の安全性にも問題点も挙げている46。一方、Migliore

McAlindon らは、学会治療ガイドラインの結論を導いたメタアナリス手法の不備を指摘

し、IA-HA製剤の有効性および安全性を主張している47,48

Gel-200は、2本の臨床試験で 1回投与後13週間の有効性および安全性、再投与後の

安全性を示し、製造販売承認を得た 34,35。さらに追加臨床試験を実施し、1 回投与後 26 週間の有効性および安全性を示している 36。これらの臨床試験結果以外には Gel-200 臨床成績や臨床研究が報告されていない。Gel-200の臨床試験は、それぞれ試験手法が異 なる上、他 IA-HA製剤とは異なる解析モデルや患者集団を用いているため、Gel-200 安全性や有効性を他製品と比較することが難しい(表 13)。

13. Gel-200と他IA-HA製剤との臨床試験患者の背景比較

Gel-200 IA-HA製剤

臨床試験対象患者

X線画像分類 K-L grade 1~3 K-L grade 2, 3

罹患歴 4週以上 3ヶ月以上

変形性膝関節症 外傷性または非外傷性 非外傷性 再投与後の安全性評価 13週間 4週間

再投与率 53% 6374%

臨床試験①の有効性解析では splineモデルを用いており 34、この解析手法は他剤では 実施されていない。臨床試験③では、他IA-HA製剤であるEuflexxaの臨床試験データを 用いて非劣性解析を実施し、Gel-200の有効性を示した。Gel-200の臨床試験①、②、③ の患者背景の内、X線画像分類は3本の臨床試験すべてでK-L grade 13である一方、

(32)

IA-HA製剤の臨床試験ではK-L grade 2~3である。さらにGel-200の臨床試験①、②、

③の安全性評価は、臨床試験の全観察期間で集計しているが、他IA-HA製剤ではより安 全性報告が多い投与後早期である4週までを集計している34,35,36

本研究では、Gel-2003本の臨床試験データを統合した網羅的な分析や、他IA-HA 剤と比較可能な患者集団データに絞った部分集団解析により、Gel-200 の有効性および 安全性、再投与後の安全性の特徴を評価し、他IA-HA製剤で報告されている有効性およ び安全性結果と比較可能な解析結果を得ることを目的とする。これらの再分析により

Gel-200 の有用性を見つけることが可能と考えた。そのため、以下の 3 つの解析方法を

検討した。

(1) Gel-200の再投与後の安全性

臨床試験②で得られた、再投与後の安全性情報について、他 IA-HA 製剤と同じ評 価期間で再集計した。得られた安全性情報の再集計結果を基に、他 IA-HA 製剤の再 投与後の安全性とGel-200の再投与後安全性を比較した。さらに、再投与を受ける前 である臨床試験①における Gel-200の安全性および有効性を、Gel-200 の再投与を受 けた患者群とGel-200の再投与を受けなかった患者群間で比較した。

(2) Gel-200の有効性と安全性

臨床試験①および臨床試験③で得られた初回投与後の評価結果を用いた。これら2 試験のデータを統合することにより、Gel-200の有効性および安全性を総合的に解析 した。

(3) Gel-200が有効な患者層の特定

Gel-200が有効な患者層を見つけることを目的に、臨床試験③で得られたデータを

(33)

①と臨床試験③は評価期間が異なるため、他 IA-HA 製剤の臨床試験と同じ評価期間 である臨床試験③のみを用いた。

(34)

3. Gel-200の再投与後の安全性 3.1. 目的

Gel-200の再投与後の安全性を評価するため、他 IA-HA製剤の臨床試験と同じ評価期

間である再投与後 4週までのGel-200 による副作用の発現割合について、臨床試験②で

Gel-200を再投与した患者群とGel-2001回投与した患者群間で比較した。

また、臨床試験②でGel-200の再投与率は53%であるが、他IA-HA製剤では再投与率

63~74%とGel-200に比べて高い。Gel-200の再投与率が低い原因は、Gel-200の初回

投与後の安全性や有効性に懸念があった場合、患者が再投与を受けず、Gel-200の再投与 率に影響すると考えた。その詳細を分析するため、再投与を受ける前の臨床試験①のGel- 200の安全性および有効性データに遡り、Gel-200の再投与を受けた患者群とGel-200 再投与を受けなかった患者群間で初回投与後の Gel-200 の安全性および有効性を比較し た。

3.2. 方法

臨床試験①および臨床試験②は、中央倫理委員会(central institutional review board[c-IRB]) で臨床試験の実施が許可されている。臨床試験①は、2006 8 月から 2007 12 月ま で、米国の28施設で実施された。臨床試験②は、20073月から20085月まで、米 国の23施設で実施された。いずれの臨床試験も医薬品の臨床試験実施基準(Good Clinical

Practice [GCP]49)に沿って実施された。患者らはそれぞれがc-IRBに承認された同意説明

文書に署名した。

臨床試験①および臨床試験②はClinicalTrials.govに登録されている(登録番号はそれぞ れ、NTC 00449696、NTC 00450112)。4週以上の膝疼痛、X線分類によるK-L grade 1~

3、WOMAC pain subscores40 mm以上のすべての基準に合致する患者が、臨床試験①

または②に参加した。また、臨床試験中に臨床試験参加前から服用していた膝OAに対

(35)

PBS2:1の比率で割付し、投与後13週まで観察した。

臨床試験①を終了したすべての患者は臨床試験②に参加が可能であり、試験参加前 に、患者に臨床試験②への参加について同意を取った。臨床試験②は、継続観察 フェーズと再投与フェーズの2つのコースが含まれている。継続観察フェーズは、臨 床試験①での1回投与後の有効性および安全性を最長13週、つまり初回投与後最長26 週まで観察を継続する。再投与フェーズは、Gel-200の再投与後13週間、有効性及び 安全性を観察する。臨床試験②に参加時または継続観察に入った患者は、再投与基準 である、WOMAC pain subscoresが対象膝で40 mm以上および反対膝で20 mm以下であ ることを満たした際に、再投与フェーズに移行し、Gel-200の再投与を受けた。その 後、再投与後1週、3週、6週、9週、13週で評価した。継続観察中は、試験参加後3 週、6週、9週、13週で評価した。継続観察中の13週まで再投与基準に満たなかった 患者は、再投与を受けずに観察を終了した。臨床試験①でのすべての患者の割付情報 は、臨床試験②の終了まで盲検性が維持された。継続観察および再投与観察中も、す べての患者は臨床試験①で許可された薬剤のみを引き続き服用でき、その他の鎮痛剤 を新たに服用できないこと、各評価の24時間前はすべての薬剤を服用できないことを 指導された。

以下の3つの治療群に分類して後ろ向きに解析した。

(1) 再投与群(Retreatment Group A):臨床試験①でGel-200を投与され、臨床試験②で

Gel-200の再投与を受けた患者。

(2) 非再投与群 (Nonretreatment Group B):臨床試験①でGel-200を投与され、臨床試

験②でGel-200の再投与を受けなかった患者。

(3) PBS-Gel投与群 (PBS Gel Group C):臨床試験①でPBSを投与され、臨床試験②

Gel-200を投与された患者。

(36)

まず、再投与群と非再投与群で、臨床試験①での有効性および安全性を比較した。

さらに再投与後4週までの安全性を再投与群とPBS-Gel投与群間で比較した。

3.3. 統計解析

安全性の解析集団は、図 9 に示した 3 つの治療群の構成で、再投与群、非再投与群、

PBS-Gel投与群である。これら3つの治療群を用いて、2種類の解析結果を評価した。

図 9. 解析群の構成

RCT: Randomised controlled study, PBS: phosphate buffered saline, OLE: open-label extension.

1種類目は、臨床試験②におけるGel-200の再投与後の安全性を示すため、再投与後4 週(28日)までの有害事象および副作用の発現割合を再投与群とPBS-Gel投与群間で要約 し、Fisher’s exact testで検定した。

2 種類目は、臨床試験①における Gel-200 の安全性と有効性を、再投与群と非再投与 群間で比較するため、両群の患者背景、有害事象および副作用の発現割合を要約した。

有効性評価は、臨床試験①で評価されたWOMAC index (pain subscores、 physical function

B

(37)

global evaluation(医師全般評価)を用いた。それぞれの評価項目のベースラインから投与 13週までの変化量を非再投与群と再投与群間で比較した。

統計手法としては、要約統計量を算出し、Fisher’s exact testまたはt検定を必要に応じ て用いた。

すべての安全性評価は、臨床試験①および臨床試験②で集計されたデータを用いた。

臨床試験中に収集された有害事象はすべて Medical Dictionary for Regulatory Activities (MedDRA Ver. 10.0)を用いてコーディングされ、器官別に分類されている。有害事象の治 験薬との因果関係は臨床試験実施中に評価医師により盲検下で判断された。頻度の高い 有害事象または副作用は、5%以上の患者で発現したものとした。

3.4. 結果 (1) 患者構成

臨床試験①を完了した350例のうち、258例(74%)が臨床試験②に参加し、92例(26%) が参加しなかった(図 10)。臨床試験②に参加しなかった92例中、69例は臨床試験①で

Gel-200の投与を受け、23例はPBSの投与を受けた。臨床試験②に参加した患者のうち、

162 例(63%)が臨床試験①で Gel-200 の投与を受け、64 例は継続観察に進み、98 例は再 投与を受けた。継続観察に進んだ患者の内、継続観察期間である13週までに再投与の基 準に達した 27 例は再投与を受けた。よって、125 例(48%)が臨床試験②で Gel-200 の再 投与を受けた(再投与群)。臨床試験②に参加し、臨床試験①でPBSの投与を受けた96 のうち、77例(80%)が臨床試験②でGel-200の投与を受けた(PBS-Gel投与群)。臨床試験

①でGel-200の投与を受け、臨床試験②で再投与基準に満たなかった37例を、臨床試験

①でGel-200の投与を受け、臨床試験②に参加しなかった69例に統合し、106例の非再

投与群とした。

(38)

図 10. 患者フローチャート

(39)

(2) 臨床試験①における再投与群と非再投与群の患者背景

患者背景は、再投与群と非再投与群間で統計的な有意差はなかった(表 14)。患者年齢 の平均は、両群とも約61歳であり、約59%が女性であった。平均body mass index (BMI) は非再投与群、再投与群それぞれで、28.4 kg/m2、28.3 kg/m2であった。両群のK-L grade で最も多かったのは、grade 3であり、非再投与群で46.2%、再投与群で58.4%であった。

WOMAC pain subscoresのベースライン平均値は、非再投与群と再投与群それぞれで68.1

mm、69.0 mmであった。すべての患者背景因子において、非再投与群と再投与群間に統

計的有意差は認められなかった。

表 14. 臨床試験①における再投与群と非再投与群の患者背景

Parameters Nonretreatment

Group B (N = 106)

Retreatment Group A (N = 125)

Age (years) (mean ± SD) 61.4 ± 10.00 60.8 ± 10.39

Gender (n[%])

Female 62 (58.5) 74 (59.2)

Male 44 (41.5) 51 (40.8)

Body mass index (kg/m2) (mean ± SD) 28.4 ± 4.06 28.3 ± 4.05 K-L grade (n[%])

Grade 1 11 (10.4) 10 ( 8.0)

Grade 2 46 (43.4) 42 (33.6)

Grade 3 49 (46.2) 73 (58.4)

Baseline WOMAC pain subscores (mm) (mean) 68.1 69.0

No statistically significant difference was identified between groups.

SD: standard deviation, K-L: Kellgrean-Lawrence, WOMAC: Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index.

(40)

(3) 臨床試験①における再投与群と非再投与群の安全性

臨床試験①において、有害事象の発現割合は、非再投与群で68.9%、再投与群で67.2%

であった。副作用の発現割合は、非再投与群で25.5%、再投与群で24.8%であった。有害 事象の発現割合は、再投与群と非再投与群間で同様であり、統計的有意差は認められな かった(表 15)。5%以上の患者で最も多く報告された有害事象は、関節の腫れ、関節水腫、

関節痛、上気道感染であった。有害事象の発現割合は、上気道感染を除いて両群間で同 様であったが、上気道感染は再投与群で 10.4%、非再投与群で 2.8%であった。しかし、

上気道感染は治験薬との因果関係が否定されている。5%以上の患者で最も多く報告され た副作用は、関節の腫れ、関節水腫、関節痛であった。副作用の発現割合は、両群間で 統計的有意差が認められなかった。

表 15. 臨床試験①における再投与群と非再投与群の安全性 Nonretreatment Group

B (N = 106)

Retreatment Group A (N = 125) Events Patients

(%)

Events Patients (%)

AEs 187 73 (68.9) 233 84 (67.2)

AEs occurring in ≥5% of patients

Joint swelling 33 27 (25.5) 49 37 (29.6)

Joint effusion 29 24 (22.6) 35 30 (24.0)

Arthralgia 22 17 (16.0) 24 19 (15.2)

Upper respiratory tract infection 3 3 ( 2.8) 13 13 (10.4)

Related AEs 48 27 (25.5) 59 31 (24.8)

Related AEs occurring in ≥5% of patients

Joint swelling 15 14 (13.2) 22 15 (12.0)

Joint effusion 13 12 (11.3) 14 12 (9.6)

Arthralgia 9 7 (6.6) 13 10 (8.0)

AE: adverse event.

表  2. Gel-200 の組成 28 架橋ヒアルロン酸ナトリウム 30.0 mg  塩化ナトリウム  24.3 mg  リン酸水素ナトリウム水和物  0.89 mg  リン酸二水素ナトリウム 1.93 mg  注射用水  q.s
図  5.  臨床試験①の患者フローチャート 34
表  3.  臨床試験①の患者背景 34 Parameters  Gel-200  (N = 247)  PBS  (N = 128)  Gender (n [%])    Male  100 (40.5%)  51 (39.8%)    Female  147 (59.5%)  77 (60.2%)
図  6. WOMAC pain subscores 評価によるベースラインからの疼痛改善 34
+7

参照

関連したドキュメント

また、学位授与機関が作成する博士論文概要、審査要 旨等の公表についても、インターネットを利用した公表

1 Introduction and overview 1.1 Introduction 1.2 Model of the public goods game 2 Expectation of non-strategic sanctioning 2.1 Introduction 2.2 The game and experimental design

Jinxing Liang, Takahiro Matsuo, Fusao Kohsaka, Xuefeng Li, Ken Kunitomo and Toshitsugu Ueda, “Fabrication of Two-Axis Quartz MEMS-Based Capacitive Tilt Sensor”, IEEJ Transactions

第3節 チューリッヒの政治、経済、文化的背景 第4節 ウルリッヒ・ツウィングリ 第5節 ツウィングリの政治性 第6節

話教育実践を分析、検証している。このような二つの会話教育実践では、学習者の支援の

(Approximately 4,000 characters in Japanese, or 1,500 words in English. The Doctoral Thesis title, however, must be written in both Japanese and English.).. 博士論文審査委員会

クター(SMB)およびバリューファクター(HML)および投資ファクター(AGR)の動的特性を得るために、特

ている。本論文では、彼らの実践内容と方法を検討することで、これまでの生活指導を重視し