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〈論 説〉
欧 州 連 合 の 発 足 とフ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
一 一 欧 州 統 一 通 貨ECUと フ ラ ン ス ・フ ラ ン 通 貨 圏 の 連 繋 一
岡 田 昭 男
目 次
1.は じ め に一 一 問 題 の 所 在 一 2.フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 全 体 像
(1)フ ラ ン ス ・ フ ラ ン通 貨 圏 の 概 況
② フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の メ カ ニ ズ ム
㈲ 西 ア フ リカ 通 貨 同 盟
3.欧 州 通 貨 統 合 と フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 (1)フ ラ ン ス 側 の 見 解
② 欧 州 連 合 側 の 反 応 (3)ア フ リ カ諸 国 側 の 考 え 4.ECU圏 の 拡 大
5.む す び 一 一 貿 易 と 開 発 か ら経 済 通 貨 同 盟 へ の 展 開 一
6,追 補 一 一1994年1月12日 付 「CFA・ フ ラ ン の 切 下 げ 」 に つ い て
1.は じめ に一 問題の所在一
マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の承 認 に関 して ,違 憲訴 訟 が 提 起 さ れ て い た ドイ ッ で,10月12日(1993年) 憲 法 裁 判 所 が 合 憲 の 判 決 を 下 し,訴 を 退 け た こ と に よ り11月1日 に マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 が 愈 々 発 効 す る こ と に な っ た(1)。こ う した 経 緯 も あ って 本 稿 で 採 り上 げ た 主 題 は益 々現 実 味 を も って き た と 考 え られ る。
EC域 内 の 通 貨 統 合 問 題 の 論 議 は,1969年 頃 よ り始 ま り,ウ エ ル ナ ー報 告(1970年),ス ネ ー ク の 創 設(1972年),欧 州 通 貨 協 力 基 金(1973年)等 の 経 緯 を 経 て,1979年 に 欧 州 通 貨 制 度(EMS)と ECUの 創 設 に 至 る。 次 い で1985年 「域 内市 場 統 合 」 が 白書 に よ り示 さ れ,ま た 単 一 欧 州 議 定X121
に よ りECの 経 済 的 社 会 的 連 繋 の 強 化 が 謳 わ れ, 経 済 通 貨 同 盟 実 現 に 向 う こ と に な る 。
1985年 に更 に ドロ ー一ル 報 告 が 採 択 され,3段 階 に よ る 通 貨 統 合 案 が 示 さ れ,一 部 修 正 さ れ た 後 1992年2月 に 調 印 さ れ た マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 に よ り,統 一 通 貨ECUの 導 入 に よ る 欧 州 経 済 通 貨 同 盟 の 実 現 の 方 向 が 示 さ れ た 。
欧 州 統 一 通 貨ECUが 実 現 す る と,複 合 通 貨 で あ るECUの バ ス ケ ッ トの 中 に は,加 盟 国 通 貨 に 互 して フ ラ ン ス ・フ ラ ンが 組 み 込 ま れ て い る。 こ う した 関 係 か ら既 に フ レ ン チ ・ECUの 呼 び 名 も 聞 か れ る と こ ろ,そ こ で 注 目 す べ き こ と は,フ ラ ンス が フ ラ ン ス ・フ ラ ンを 基 軸 通 貨 と して ,ア フ リカ14力 国 を 擁 す る フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 を 形 成 して い る こ とで あ る。
そ こ で 統 一 通 貨ECUが 導 入 さ れ れ ば,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 関 係 は ど う な る か,が 問 題 と な る と こ ろ で あ る(31。
2.フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 全 体 像
t1)フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 概 況(4)
フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 は,域 内 領 域 が 植 民 地 で あ っ た 当 時 か ら通 算 す れ ば,既 に半 世 紀 を 経 て お り,旧 植 民 地 の 諸 地 域 の 独 立 か ら は 既 に30余 年 を 経 過 して い る。
こ う し た 歴 史 的 経 緯 か ら,最 適 通 貨 地 域(an optimumcurrencyarea)の 考 え 方 と関 連 さ せ て 論
じ た い む き もあ る が5),歴 史 的 に は 第2次 世 界 大 戦 の 勃 発 に 伴 う,フ ラ ン ス本 国 と海 外 植 民 地 の 全
2 欧州連 合の発足 と フランス ・フラ ン通貨圏
別 表1:フ ラ ン ス ・フ ラ ン 通 貨 圏 の 国 お よ び 地 域 並 び に 発 券 局 と通 貨
1992年6月30日 現 在
国 ま た は 地 域 発 券 局 通 貨 仏 ・ フ ラ ン と の レ ー ト
フ ラ ン ス 本 国
フ ラ ン ス銀 行 フ ラ ン ス ・ フ ラ ン
モ ナ コ グ ア ドル ー プ
、
ギ ヤ ヌ
マ ル テ ィ ニ ッ ク 帥海 外 県 発 券 局
(フ ラ ン ス銀 行 の コ ル レ ス先)
フ ラ ン ス ・ フ ラ ン レ ユ ニ オ ン
サ ン ・ ピ エ ー ル,ミ ク ロ ン '
ニ ュ ー カ レ ド ニ ア 、 lCFPフ ラ ン
仏 領 ポ リ ネ シ ア 海 外発券局 CFP・ フ ラ ン =o .055フ ラ ン ス ・
ワ リ ス ・ フ ト ナ ' フ ラ ン
マ ヨ ツ ト 海外発券局 フ ラ ン ス ・ フ フ ン一
(フ ラ ン ス銀 行 の コ ル レ ス 先)
ベ ニ ン 、
ブ ル キ ナ
象牙海岸 1CFA・ フ ラ ン
マ リ 西 ア フ リカ諸 国 中 央銀 行 CFA・ フ ラ ン(1) =o .02フ ラ ン ス ・
ニ ジ ェ ー ル フ ラ ン
セ ネ ガ ル
ト ー ゴ '
コ モ ロ ・イ ス ラ ム連 邦 共 和 国 コ モ ロ 中 央 銀 行 CFA・ フ ラ ン 1CFAフ ラ ン
=o .a2フ ラ ン ス ・ フ ラ ン
カ メ ル ー ン
馬
中 央 ア フ リカ 1CFA・ フ ラ ン
"
コ ン コ
・中 部 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行 CFA・ フ ラ(2) =0 .02フ ラ ン ス ・
ガ ボ ン フ ラ ン
赤道 ギ ニ ア
チ ャ ド ド
(1)FrancdelaCommunauteFinaciereAfricaine (2)FrancdelaCoop6rationFinanci壱reenAfriqueCentrale
出 所:RapportannueldelaComit6MonξtairedelaZoneFranc,1992.
※1994年1月12日 付CFA・ フ ラ ン の 切 下 げ に つ い て は 本 稿 末 尾6.追 補 参 照 。
域 を 含 む 領 域 内 の 為 替 管 理 に端 を 発 し,ま た 戦 後 に お い て は1945年IMFの 発 足 に 伴 い,各 加 盟 国 は平 価 を 決 定 し,IMFに 通 告 す る必 要 が あ っ た 。 そ の 際 フ ラ ン ス は 自 国 通 貨 の 平 価 の 通 告 に 際 し て,フ ラ ン ス 本 国 の ほ か 海 外 領 域 は ア フ リカ 大 陸 を 主 と して,大 西 洋 及 び ア ジ ア ・太 平 洋 方 面 等 広 範 囲 に 亘 る状 況 に あ り,ま た 地 域 に よ り物 価 を 含
む 経 済 事 情 も異 な る の で,単 一 の 通 貨 で 全 域 を カ バ ー す る こ と は 困 難 で あ る と の 立 場 か ら,本 国 フ
ラ ン(Franc),ア フ リ カ 植 民 地 フ ラ ン(Francde ColonieFranCaiseAfricaine,略 称F・CFA),太 平 洋 植 民 地 フ ラ ン(FrancdeColonieFranCaisePaci.
fique,略 称F・CFP)の3っ の 通 貨 の 平 価 を 決 定 し,領 域 内 の 他 の 通 貨 は,本 国 フ ラ ン に リ ン ク す
欧 州 連 合 の発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 3 ア フ リ カ に お け る7ラ ン ス ・フ ラ ン 通 貨 口 地 理
(1993年 現 在)
西 ア フ リ カ
牙岸象海
サ ハ ラ地帯
づw柔 イ
大 西 洋
ベニン
曽 S 中 部 ア フ リ カ イ ン ド 洋
1 卿 垂
る 方 式 を と っ た 。 当 時 フ ラ ン ス ・フ ラ ン(本 国 フ ラ ン)を 基 軸 通 貨 と す る 通 貨 圏 は18地 域 に11の 発 券 局,7種 類 の 通 貨 が 流 通 す る 状 況 に あ っ だ6)。
こ う し た 状 況 は,ア フ リ カ の 植 民 地 の 独 立 と い う 新 事 態 に よ り,15力 国 が 独 立 し,と り わ け 注 目 す べ き こ と は,ア フ リ カ 大 陸 に お い て,西 ア フ リ カ と 中 部 ア フ リ カ に 複 数 の 独 立 国 を 傘 下 に 置 く 中 央 銀 行 が2行,即 ち 西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行 (BanqueCentraledesEtatsde1'Afriquede1'Ouest,
略 称BCEAO,セ ネ ガ ル,マ リ,ニ ジ ェ ー ル,象 牙 海 岸,プ ル キ ナ,ト ー ゴ,ダ ホ メ(ベ ニ ン)の7力 国 を 傘 下 に 置 き)ま た 中 部 ア フ リ カ 中 央 銀 行(Banque CentralederAfriqueEquatoriale,略 称BEAC,カ
メ ル ー ン,ガ ボ ン,コ ン ゴ,中 央 ア フ リ カ,チ ャ ドの 5力 国 を 傘 下 に 置 く)が 設 立 さ れ,い ず れ も フ ラ ン
ス ・フ ラ ン に リ ン ク す る 共 通 通 貨CFA・ フ ラ ン (西 ア フ リ カ に 於 て はFrancdelaCommunaute
franCaiseAfricaine,中 部 ア フ リカ に 於 て はFrancde laCooperationFranOaiseAfricaine)を 使 用 し て い
る こ と で あ る 。1993年 現 在 に お い て は,別 表1の と お り,前 述 の 西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行(BCEAO, 7力 国 傘 下),中 部 ア フ リ カ 中 央 銀 行(BEAC,6力 国 傘 下)ほ か 中 央 銀 行 お よ び 発 券 局 数 は6を 数 え,
フ ラ ン ス ・フ ラ ン に リ ン ク し て 流 通 す る 通 貨 は, フ ラ ン ス ・フ ラ ン を 含 め4種 類 あ る 。
こ の う ち 前 述 の 西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行 の 加 盟 諸 国 お よ び 中 部 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行 の 加 盟 諸 国 は,そ れ ぞ れ 共 通 の 中 央 銀 行 を 創 設 し た 段 階 で, 西 ア フ リ カ で は 西 ア フ リ カ 通 貨 同 盟(Union Mon6tairedel'Afriquede1'Ouest,略 称UMAO)
4 欧 州 連 合 の発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
を 結 成 し,中 部 ア フ リ カ で は 通 貨 同 盟 と い う 用 語 は 使 用 し て い な い が,通 貨 協 力(cooperation mon6taire)と い う 表 現 で,事 実 上 の 通 貨 同 盟 を 形 成 して い る 。
ま た 西 ア フ リ カ で は,従 来 か ら あ っ た 西 ア フ リ カ 関 税 同 盟 を 基 礎 と し,EECを モ デ ル と し て 西 ア フ リ カ 経 済 共 同 体(CommunautedesEtatsde
rAfriquedel'Ouest,略 称CEAO)を 結 成 し,中 部 ア フ リ カ に お い て も,BEAC諸 国 は 関 税 ・経 済 同 盟 (UnionDouani合reetEconomiquede1'Afrique
Centrale,略 称UDEAC)を 結 成 し て い る 。
② フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の メ カ ニ ズ ム フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の メ カ ニ ズ ム を み る と,次 に 掲 げ る よ うな 基 本 的 な6っ の特 徴 が 挙 げ られ る。
⑦ 通 貨 協 力 圏 と して の フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 この 通 貨 圏 は 加 盟 国 と フ ラ ン ス と の 取 極 お よ び 加 盟 国 相 互 の 自発 的 意 思 に よ り,取 極 ま た は 条 約 に基 づ き形 成 さ れ る も の で あ っ て,強 制 に よ る もの で は な い 。 モ ー リ タ ニ ア 〔71およ び マ ダ ガ ス カ ル〔81はそ れ ぞ れ 自 ら の 意 思 に よ り1973 年 に フ ラ ン ス通 貨 圏 を 脱 退 して い る 。
◎ フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 域 内 通 貨 の レー ト の 固 定
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に 所 属 す る通 貨 の レー トが 固 定 さ れ て い る(1958年 以 来)。 こ の た め 為 替 相 場 の変 動 に よ る投 機 の 対 象 と は な ら な い 。
◎ 通 貨 の 無 制 限 交 換 性 の 保 証
フ ラ ン ス ・フ ラ ン 通 貨 圏 域 内 の 通 貨 は 原 則 と し て,フ ラ ン ス ・フ ラ ン と の 無 制 限 交 換 性 が 保 証 さ れ て い る 。 こ の 保 証 は フ ラ ン ス 国 庫 に 開 設 さ れ る 操 作 勘 定(compted'・p壱rations)に よ り 行 わ れ る(9)。 っ ま り,フ ラ ン ス 国 庫 が 為 替 相 場
の 固 定 の 保 証 を 行 う。 つ ま り 加 盟 国 の 為 替 の 準 備(1esreservesdechange)が 赤 字 に な っ た 場 合,そ の 赤 字 分 は フ ラ ン ス の 国 庫 に よ っ て 補 填 さ れ,利 息 を 取 り 立 て,黒 字 の 場 合 に は 利 子 を 付 す と い う,つ ま り フ ラ ン ス 国 庫 に よ る 貸 付 け に 類 似 す る 制 度 で あ り,場 合 に よ っ て は フ ラ ン
ス側 の 財 政 負 担 と な る協 力 関 係 に あ る。
e通 貨 の 振 替 の 自 由
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の域 内 通 貨 相 互 の 振 替 が 原 則 と して 自 由 で あ る。 こ れ は前 項0の 無 制 限 交 換 性 の 原 則 と も関 連 し,資 本 取 引 に つ い て も原 則 と して 自 由 で あ る。
㊧ 取 得 外 貨 の 集 中
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に加 盟 す る国 別 の各 中 央 銀 行 が 取 得 す る外 貨 が フ ラ ン ス国 庫 に 開 設 さ れ る操 作 勘 定 に預 託(集 中)す る こ とが 義 務 付 け られ て い る。 こ の 勘 定 は通 貨 圏 加 盟 国 の 通 貨 の無 制 限 交 換 性 の 保 証 の 準 備 資 産 と な る も の で,◎ で 述 べ た よ う に,勘 定 が 黒 字 の場 合 に は 利 子 が 付 き,赤 字 の 場 合 に は 利 息 を 払 う仕 組 み
に な って い る。
㊦ 通 貨 圏 域 内 通 貨 政 策 の調 整
以 上 述 べ た 通 貨 協 力 に 伴 う,通 貨 の 無 制 限 交 換 性 の 保 証,レ ー トの 固 定,振 替 の 自 由,取 得 外 貨 の 集 中 等,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 基 本 的 特 質 が 維 持 され る た め,加 盟 国 相 互 間 の政 策 調 整 が 必 要 で あ り,こ の た め 主 要 な も の と し て,次 の2つ の 方 法 が 挙 げ られ る。
① フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 蔵 相 会 議 の 開 催 こ の 会 議 は 年2回 開 催 さ れ,内1回 は, IMFの 年 次 総 会 と タ イ ミ ン グ を 合 わ せ 開 催
さ れ,世 界 経 済 の 動 向 と の 政 策 調 整 も行 わ れ,他 の1回 は現 地 ア フ リカ で 順 次 開 催 され て い る。
② フ ラ ンス と の 経 済 協 力 の 枠 内 で 行 う技 術 協 力
貿 易,通 商,為 替,金 融 等 の 部 門 に 対 し, 技 術 指 導 の た あ,フ ラ ン ス よ り技 術 顧 問 を派 遣 す る。 西 ア フ リカ諸 国 中 央 銀 行 お よ び 中 部 ア フ リカ中 央 銀 行 の 場 合 に は,そ れ ぞ れ の 銀 行 の 管 理 委 員 会 に は フ ラ ン ス 代 表 が 派 遣 さ れ,指 導 と勧 告 を 行 っ て い る。
(3)西 ア フ リ カ 通 貨 同 盟
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の う ち で,複 数 の 国 を 傘 下 に 置 く,2つ の 中 央 銀 行 の う ち,西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行 は,ベ ニ ン,ブ ル キ ナ ・フ ア ソ,象
欧 州 連 合 の 発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
牙 海 岸,マ リ,ニ ジ ェ ー ル,セ ネ ガ ル,ト ー ゴ の 7力 国 を 傘 下 に 置 き,前 述 の よ う に 協 定 に 基 づ く 西 ア フ リ カ 通 貨 同 盟 を 結 成 して お り(別 表2参 照),フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 中 で も,最 も制 度
的 に 整 備 され た 国 際 機 構 で あ る。
た だ こ の 通 貨 同 盟 は,加 盟 国 の す べ て が 開 発 途 上 国 で あ る か ら,先 進 国 間 で 結 成 さ れ た 通 貨 同 盟 と は性 質 や 内 容 が 異 な る こ と に 留 意 し な け れ ば な らな い 。 しか し加 盟 国 は等 し く独 立 国 で あ る 。
西 ア フ リカ 通 貨 同 盟 の 枠 組 み は,ま ず フ ラ ンス を 軸 と して,ア フ リカ7力 国 と の 間 で 西 ア フ リカ 通 貨 同 盟 を 締 結 し,西 ア フ リカ諸 国 中 央 銀 行 の 定 款 は,通 貨 同 盟 条 約 の 付 属 文 書 と さ れ て い るαΦ。 マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 調 印 に先 立 っ て 発 表 さ れ た ドロ ー ル 報 告 に お い て 「現 在 の ロ ー マ 条 約 で は, 経 済 ・通 貨 同 盟 を 創 設 す る に は不 充 分 で あ り,各 国 法 制 の 改 革 の 基 盤 に 立 っ て 設 定 し う る新 た な い
くつ か の取 極 が 必 要 で あ る こ と,ま た経 済 通 貨 同 盟 は基 本 的 な 機 能 面,制 度 面 で の 取 極 お よ び,そ
の 段 階 的 実 施 を 規 律 す る条 約 の 下 で 具 体 化 す る こ
」
とが 必 要 で あ る1(11)と し,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で は,こ の 趣 旨 を と り込 み,欧 州 中 央 銀 行 定 款1塾は 同 条 約 の 議 定 書 と して 付 属 の 形 式 を と って お り, 西 ア フ リカ通 貨 同 盟 の 形 式 に 類 似 して い る と い え
よ う。
ま た別 表2の 西 ア フ リカ 通 貨 同 盟 は機 構 図 で 示 した よ う に,総 括 的 に 条 約 が1つ,金 融 政 策 の 策 定 に伴 う協 力 協 定 が1つ,そ して 通 貨 の 交 換 性 の 保 証 の た め の,フ ラ ンス 国 庫 と中 央 銀 行 と の 間 の 操 作 勘 定 取 極 が1つ,合 計3つ の 条 約 で 組 み 上 げ
られ て い る。
3.欧 州 通貨 統合 とフ ラ ンス ・フ ラ ン 通貨 圏
本 稿 の 「は じめ に一 問 題 の 所 在 」 で 述 べ た よ うに,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 が 発 効 し,欧 州 経 済 通 貨 同 盟 が,か ね て の タ イ ム テ ー ブ ル に従 い 動 き始 め る と,欧 州 連 合 の 有 力 な加 盟 国 の1っ で あ る フ ラ ン ス の 通 貨,フ ラ ンス ・フ ラ ン は複 合 通 貨 別 表21
基 本条 約 及 び取 極:
1.9白00
西 ア フ リカ 通貨 同 盟(UMOA)機 構 図
西 ア フ リカ通 貨 同 盟 条約(加 盟8力 国)
付 属 書:西 ア フ リカ諸 国 中央 銀 行 定 款 通 貨協 力 協 定(フ ラ ンス と仏 系 西 ア フ リカ7力 国)
操 作 勘 定 取 極(フ ラ ンス蔵 相 と西 ア フ リカ通 貨 同 盟 閣 僚理 事 会 議 長 との通 貨 の交 換 性 の保 証 に関 す る取 極)
西 ア フ リ カ
通 貨 同 盟
1.加 盟 国 元 首 会 議
2.閣 僚 理 事 会 一
一
フ
3
ス
国 庫
3. 西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行
総 裁 一 管 理 理 事 会
一
1 1 i 1
セ ネ ガ ル 国 別 中 銀
象 牙
国 別 中 銀
ニ ジ ェ ー ル 国 別 中 銀
ブ ル キ ナ 国 別 中 銀
マ リ
国 別 中 銀
ト ー ゴ
国 別 中 銀
ベ ニ」 ン
国 別 中 銀
6 欧 州 連 合 の 発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
で あ るECUの バ ス ケ ッ トに 組 み 込 ま れ て フ レ ン チ ・ECUに 変 身 す る で あ ろ う。 他 方 以 上 み た と お り,約 半 世 紀 に亘 り フ ラ ン ス ・フ ラ ンを 基 軸 通 貨 と して フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 を 形 成 し,現 在 も14力 国 を 擁 して い る。 そ こ で フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に 属 す る諸 通 貨 は 自動 的 にECU(フ レ ン チ ・ECU)に 連 動 す る で あ ろ う と の 考 え が 広 ま り っ つ あ る。 こ の 問 題 を フ ラ ンス側,欧 州 連 合 側,
お よ び現 地 ア フ リカ 関 係 諸 国 側 で は如 何 様 に 受 け と め て い るか につ い て 調 査 した と こ ろ,疑 問 と確 信 と期 待 が 交 錯 した 結 果 の 要 旨 は次 の とお りで あ
る。
(1)フ ラ ン ス 側 の 見 解 。鋤
フ ラ ン ス政 府 と して は,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 が 署 名 さ れ る 以 前 に お い て は,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 は将 来 も従 来 ど お り,フ ラ ン ス ・ア フ リカ 通 貨 協 力 の 路 線 を 継 続 し う る か ど うか 疑 念 を 抱 い た と い わ れ て い る"の。 しか し マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 内 容 が1992年2月 調 印 に よ り確 定 した 時,フ ラ ン ス は,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 将 来 に 向 け て 存 続 し う る と い う見 通 し に 自信 を 持 つ に 至 った よ うで あ る。 そ の 拠 り所 とな る点 を 紹 介 す れ ば次 の と お りで あ る115f。
⑦ 欧 州 通 貨 同 盟 と フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 整 合 性 と新 た な対 応 の必 要
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の い く つ か の 特 徴 (前述 の 「フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 の メ カニ ズム」
の 「基 本 的 な6つ の特 徴 」 を 参 照)ま た 関 係 諸 条 約,取 極 等 は欧 州 通 貨 同 盟 と両 立 し う る も の で あ り,ま た フ ラ ン ス ・ア フ リカ の 協 力 関 係 は, 欧 州 共 同 体 の 連 合 制 度,ま た 数 次 に 亘 る ロ メ協 定 の趣 旨 と合 致 す る も の で あ る 。 しか し欧 州 通 貨 同 盟 諸 国 は き び しい 通 貨 政 策 を 行 っ て い る の で,フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 諸 国 は新 た な対 応 (perspectivesnouvelles)を 迫 られ る もの と考 え
られ る。
◎ 欧 州 通 貨 同 盟 と フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 が 両 立 す る根 拠
フ ラ ン ス が 欧 州 通 貨 同 盟 と フ ラ ン ス ・フ ラ ン 通 貨 圏 が 両 立 し う る根 拠 と して 「マ ー ス ト リ ヒ
ト条 約 が 「欧 州 委 員 会 が 全 会 一 致 に よ り,非 共 同 体 通 貨 に 対 し,ECUと の 交 換 レ ー トに 関 す る取 極 を 締 結 す る こ と が で き る」naと し,ま た
「加 盟 国 は 経 済 お よ び通 貨 面 で の 共 同 体 の 権 限 や取 極 め を 妨 げ る こ と な く,国 際 的 必 要 に基 づ き,国 際 的 取 極 を 締 結 す る こ と が で き る」(lnと 規 定 して い る こ と等 を 挙 げ る。
◎ 欧 州 通 貨 同 盟 と フ ラ ンス 側 操 作 勘 定 との 関 係
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 本 質 的 機 能 は,フ ラ ン ス国 庫 に 開 設 され る,域 内 各 国 中 央 銀 行 名 儀 の 操 作 勘 定(compted'operations)の 機 能 に 基 づ く も の で,そ の 特 質 と して の 無 制 限 交 換 性 の 保 証 や,無 制 限 引 出 しの 可 能 性 は,欧 州 通 貨 同 盟 の機 能 に よ る もの で は な く,域 内 諸 国 中 央 銀 行 の操 作 勘 定 は,い わ ば フ ラ ン ス国 庫 の コル レ ス勘 定 で あ り,そ の 本 質 は フ ラ ンス の財 政 問 題 で あ る と解 釈 さ れ る。
㊥ 共 通 財 政 政 策 と補 完 性 の 問 題
欧 州 連 合 加 盟 国 は,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 に 従 い,共 通 予 算 管 理 政 策 に 準 拠 しな け れ ば な らな い が,加 盟 国 の 公 共 支 出 に 関 す る選 択 は,加 盟 各 国 の排 他 的 権 限 に ゆ だ ね られ て い る の で 「操 作 勘 定 」 は マ ー ス ト リヒ ト条 約 に 抵 触 しな い 。 これ は欧 州 連 合 の 基 本 原 則 の1っ で あ る補 完 性 の 原 則(leprincipedesubsidialitの 〔]&に基 づ く も の と の 解 釈 が フ ラ ン ス側 で 行 わ れ て い る。
㊧ECU圏 と フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 連 繋 に 伴 う問 題 点
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 がECU圏 と 連 繋 す る こ と に よ り,変 動 す る ドル に 代 っ て 安 定 した ECUが 使 用 さ れ,為 替 リ ス ク は減 少 し,欧 州 ・ ア フ リカ の 貿 易 の 活 性 化 が 期 待 さ れ る。 しか し
こ の反 面,フ ラ ン ス と して は 欧 州 経 済 通 貨 同 盟 側 の 厳 しい 政 策 に伴 う フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 化 圏 の 通 貨,金 融,お よ び 金 融 機 関 の 監 査 等 に 関 す る制 度 上 改 革 の 必 要 性 が 問 題 とな る こ と を 予 想 して い る。
② 欧 州 連 合 側 の 反 応
マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 は付 属 の宣 言 の 一 つ で 「第
欧 州 連 合 の発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
3国 と の通 貨 協 力 轡 を 謳 っ て い る の で,ECUと
「第3国 通 貨 」 と の協 力 の 問 題 に つ い て 消 極 的 で は な い と考 え られ る。 しか しマ ー ス ト リ ヒ ト条 約 に は フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 園 に 関 す る条 文,宣 言,ま た は 議 定 書 は 全 くな い⑳。 従 っ て 欧 州 通 貨 同 盟 が 未 完 成 で あ る現 段 階 で は,明 確 な公 式 見 解 を 明 らか に して い な い 。 しか し担 当 部 局 の 非 公 式 見 解 を 窺 う こ と は可 能 で あ る¢1}。欧 州 連 合 側 が,
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に つ い て,特 に注 目 して い る点 は,西 ア フ リカ通 貨 同 盟 グ ル ー プ と,中 部 ア フ リカ通 貨 協 力 グル ー プ で,こ れ らの2つ の 通 貨 同 盟(そ れ ぞ れ2っ の共 通 中央 銀 行 に属 す る)は 既 に30数 年 の 歴 史 を 有 し,ま た対 外 的 に ア フ リ カ 諸 国 に 刺 激 を 与 え,近 隣 国 に マ ク ロ経 済 の 範 を 垂 れ る こ と を 期 待 して い る。 この 文 筋 か ら,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に 属 す る通 貨 はECUに 連 動 す る こ と に な ろ う と い う観 測 を行 って い る。
③ ア フ リ 力諸 国 側 の 考 え
フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 中 核 的 存 在 で あ る, 西 ア フ リカ 諸 国 中 央 銀 行(BCEAO)お よ び 中 部 ア
フ リカ 中 央 銀 行(BCEAE)の 両 行 の う ち,通 貨 同 盟 と して 制 度 的 に 整 備 さ れ て い る 西 ア フ リカ 諸 国 中 央 銀 行 で は,1992年 に 創 立30周 年 を 迎 え,記 念 シ ンポ ジ ュ ー ム等 開 催 しiそ の 成 長 と発 展 を祝
し,将 来 の さ ら な る発 展 が 期 待 さ れ た 。
近 い 将 来 のECUと の 連 繋 の 問 題 に つ い て は, 同 行 のLawson渉 外 部 長 は フ ラ ン ス ・ フ ラ ンよ
り安 定 した 通 貨ECUに 連 繋 す る こ と を 歓 迎 す る と しな が ら も,先 進 諸 国 が 造 る 欧 州 通 貨 同 盟 と, 開 発 途 上 国 の み で 形 成 す る通 貨 同 盟 と で は,性 格 的 に も内 容 的 に もか な り異 な る。 ま た フ ラ ン ス国 庫 の介 入 は あ っ て も,予 想 さ れ る と お り,ECU圏 に 組 み 込 ま れ る こ と に よ り,欧 州 連 合 側 よ り要 請 さ れ る金 融 政 策,財 政 政 策 上 の 規 律 ほか 政 策 調 整 を い か に 処 理 し,対 応 を 決 定 して い くか が 問 題 で あ る と し て お り,ECUが 導 入 さ れ る タ イ ム ・ テ ー ブ ル が 明 確 に な ら な い と地 元 ア フ リカ の 対 応 の 具 体 化 が 困 難 で あ る 旨述 べ て い る幽。
しか し上 記 両 行 の 事 務 方 で は,ECU圏 移 行 を 念 頭 に 置 きつ つ,従 来 か らの 国 別 通 貨 金 融 政 策 の
7 見 直 しに 着 手 し,ま た 非 公 式 連 絡 会 議 を 随 時 開 催
し調 査 研 究 を 行 っ て い る。 な お フ ラ ン ス銀 行 内 に 置 か れ て い る,フ ラ ン ス 圏 通 貨 委 員 会(Comity mon6tairedelaZoneFranc)の 事 務 局 で は,関 係 諸 国 が 未 だ フ ラ ン ス の 植 民 地 で あ った 当 時,1953 年 以 来,域 内 の カ ン ト リー ・レ ポ ー トを ま と め,年 報 を作 成 し,ま た 統 計 資 料 を 整 理 して お り,ECU の 導 入 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 連 繋 の 問 題 に っ き,そ れ ぞ れ 関 係 ア フ リカ 諸 国 は,自 主 的 に ど こ ま で 積 極 的 対 応 を 示 す か に 注 目 して い る㈱。
4.ECU圏 の 拡 大
欧 州 通 貨 同 盟 の 完 成 を 目 指 す マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で は,1994年1月 か ら第2段 階 に移 行 して 欧 州 通 貨 機 構(EMI)を 創 設 す る と と もに,ECUに 対 す る加 盟 国 通 貨 の 構 成 比 を凍 結 し,ま た 第3段 階 へ の 移 行 の 条 件 と して の 物 価 為 替,金 利 ,財 政 等 の 経 済 格 差 の 収 敏 状 況 を 検 討 し,1996年12月 末 ま で に,第3段 階 に移 行 し,適 格 国 は1997年1 月,お そ く と も1999年1月 ま で に 欧 州 中 央 銀 行
(ECB)を 設 立 し,第3段 階 に 移 行 した適 格 国 の 通 貨 の 変 動 幅 を 解 消 し,単 一 通 貨ECUを 導 入 す る
タ イ ム ・テ ー ブ ル が 組 ま れ て い る。
今 後 状 況 が 進 展 して,欧 州 統 一 通 貨ECUが 導 入 さ れ る場 合 に は,前 述 の と お り,フ ラ ン ス ・フ
ラ ンを 仲 介 と してECUに 連 繋 す る で あ ろ う。 ま た 欧 州 連 合 諸 国 に 隣 接 す る,周 辺 欧 州 諸 国,あ る い は ロ メ協 定 に 加 盟 す る そ の 他 の 開 発 途 上 諸 国 の 内 か ら,フ ラ ン ス ・ フ ラ ン 通 貨 圏 諸 国 通 貨 の ECUへ の 連 繋 に な ら っ て,ECUへ の 連 繋 の 要 請 が 行 わ れ る こ とが 考 え られ る。 実 際 に,前 記 の 諸 国 の 内,若 干 の 国 々 か ら,そ う した 意 図 表 明 が 非 公 式 に 打 診 さ れ て い る こ とが 側 聞 さ れ る⑳。 こ う
したECU圏 の 将 来 の 展 開 に っ い て 整 理 す れ ば, 次 の3っ の ケ ー ス に 分 類 され る と思 う。
(1)現 行 フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 制 度 の 維 持 欧 州 統 一 通 貨ECUが 導 入 さ れ て も,現 行 の フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 制 度 を 大 き く修 正 す る こ と な く,つ ま り現 状 維 持(statu・quo)を 保 っ 方 法,
8 欧 州 連 合 の発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏
即 ち 欧 州 通 貨 同 盟 は特 別 の措 置 を と る こ と な く, フ ラ ン ス 側 は フ レ ン チ ・ECUに よ り,フ ラ ン ス 国 庫 を 通 じて,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 通 貨 の 交 換 性 の 保 証 を 行 う従 来 の方 式 を存 続 す る。
② 欧 州 連 合 に 隣 接 す る 諸 国 と のECUに よ る 通 貨 協 力 圏 の 形 成
マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 「第3国 と の 通 貨 協 力 」 に 関 す る宣 言 に お い て 「国 際 通 貨 関 係 の 安 定 に 寄 与 す る た め,他 の 欧 州 諸 国 お よ び 共 同 体 が密 接 な 経 済 関 係 を 有 す る,欧 州 以 外 の諸 国 と の 協 力 を 行 う」 こ とが 謳 わ れ て い る。 こ の 趣 旨 か らい え ば, 前 記(1)「現 行 フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 関 係 の 維 持 」 も 当 然 こ の 範 疇 に 入 る こ と に な る が,従 来 か ら の長 い 歴 史 的 経 緯 が あ る の で 前 記(1)と分 け る
こ と に した 。
こ こ に い う第3国 と の 通 貨 協 力 と して 考 え られ る も の は,既 に 行 わ れ た ノ ル ウ ェ ー の ク ロ ー ネ や,ス ウ ェ ー デ ン ・ク ロ ー ナ等 をECUに 連 動 さ せ た 例(そ の 後 欧 州 通 貨 の 為 替 の変 動 の た め 中 断 し
た)が あ り,将 来 欧 州 経 済 領 域(EEA諸 国)や,か ね てECと 協 定 を締 結 して い る地 中 海 諸 国 や,さ らに 欧 州 連 合 の ロ メ協 定 に加 盟 して い る 諸 国69 力 国(う ち14力 国 は フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 に加 盟)等 の 中 か ら,将 来 自 国 通 貨 の 欧 州 統 一 通 貨 ECUへ の 連 繋 を 要 請 す る ケ ー ス が 予 想 さ れ る。
(3)ECU圏 の 拡 大
前 記(1)「現 行 フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 の 維 持 」 も(2)の 「欧 州 連 合 に 隣 接 す る 諸 国 と のECUに よ る通 貨 協 力 圏 の 形 成 」 も広 義 に お け るECU圏 の 拡 大 で あ る。
こ こで 述 べ る 「ECU圏 の 拡 大 」 は狭 義 と も い う べ き も の で,前 記(1)の 「フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 」 の 枠 を 超 え た 。ECUに よ る 開 発 途 上 諸 国 の 経 済, 財 政 と通 貨 の 指 針 と そ の 安 定 を も た らす 機 構 が 将 来 可 能 と な る の で は な い か,と い う こ と で あ る。
っ ま り フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に お い て,フ ラ ン ス 国 庫 が 行 っ て い る操 作 勘 定 の 機 能 を 果 た す 機 構 が,欧 州 連 合 の 中 に創 設 さ れ る な らば そ れ は 可 能 で は な か ろ うか 。例 え ば 欧 州 開 発 基 金(FED),ロ
メ協 定 の 枠 に よ る特 別 基 金,ま た は 関 心 を有 す る 加 盟 各 国 か らの 出 資 に よ り創 設 さ れ る,ECUを 基 軸 と した,開 発 途 上 諸 国 の 通 貨 の 安 定 機 構 が,
考 え られ な い で あ ろ う か 。 こ う した 発 想 の 流 れ の 説 明 は 次 の 「む す び 」 で 述 べ る こ と に し よ う。
5.む す び一 貿易 と開発か ら 経済通貨 同盟への展開
1992年 ガ ボ ンの リ ー ブ ル ウ イ ル で 開 催 さ れ た 第17回 仏 ・ア フ リカ首 脳 会 議 で ベ レ ゴ ボ ワ仏 首 相 は,欧 州 連 合 にECUが 導 入 さ れ れ ば,フ ラ ン ス ・フ ラ ン を 仲 介 と してECU圏 は フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 に 向 っ て 拡 大 さ れ る見 解 を 述 べ,そ れ に 伴 う フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 加 盟 諸 国 側 の 準 備 と対 応 を 呼 び か け,フ ラ ン ・ア フ リ カ か らユ ー ロ ・ア フ リカ に 向 か っ て の 通 貨 協 力 推 進 に つ い て,並 々 な らぬ 熱 意 を 示 した㈲。
1993年11月1日 に マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 は発 効 した の で,欧 州 連 合 の 動 き は活 発 化 す る こ とが 予 想 さ れ る。 目下 の 為 替 調 整 機 構(ERM)の 難 関 も い ず れ 夙 が 来 て落 着 く も の と予 想 さ れ,欧 州 経 済 通 貨 同 盟 結 成 の タ イ ム ・テ ー ブ ル は徐 々 に進 展 す
るで あ ろ う。
振 り返 って み れ ば,1958年 の ロ ー マ条 約 の 枠 組 み で 行 わ れ た 開 発 途 上 諸 国(EEC加 盟 諸 国 の 旧 植 民 地)に 対 す る ア ブmチ は 「貿 易 と 開 発 」の面 で あ っ た こ と は 周 知 の と お りで あ る。 しか し,1992 年 の マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で は 「経 済 と通 貨 」 の 面 か らの ア プ ロ ー チ が 見 え て き た よ うに 思 わ れ る。
21世 紀 の南 北 問 題 の対 応 の 一 っ と して,開 発 途 上 国 の経 済 と安 定 の 機 構 と して,フ ラ ンス ・フ ラ ン 通 貨 圏 の よ う に 主 権 を 制 限 し,地 域 経 済 協 力 を 促 進 す る通 貨 圏 が 検 討 され て も よ い の で は な か ろ う
か 。
6.追 補 一 一1994年1月12日 付 「CFA・
フ ラ ン の 切 下 げ 」 に つ い て
(1)フ ラ ン ス は1994年1月12日 午 前0時 を も っ てCFA・ フ ラ ン の50%,コ モ ロ ・ フ ラ ン の 25%切 下 げ を 行 っ た 。 か ね てCFA・ フ ラ ン が 現 地 の 物 価 賃 金 等 の 実 勢 か ら 外 れ て い る こ と か ら,
欧 州 連 合 の 発 足 と フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 9 切 下 げ は屡 々 問 題 と な り,大 方 は い ず れ は 不 可 避
で は な い か と考 え て い た 。 しか し夫 々 事 情 が 異 な る14力 国 を 抱 え る フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と い う大 世 帯 で もあ り,切 下 げ は いつ と も知 れ ず 遷 延 され て い た もの で あ る㈱。
② フ ラ ン ス政 府 の 宣 言 文 に よ れ ば,世 界 銀 行 お よ び,IMFも 今 次 切 下 げ に 介 入 し,関 係 国 の 構 造 調 整 政 策 を 強 化 す る た め,必 要 措 置 を 定 め た取 極 を 関 係 国 と締 結 す る趣 で あ り,ま た フ ラ ンス は 関 係 国 の 保 有 す る外 貨 の 交 換 性 を 保 証 す る こ とを 確 認 し て い る。 さ ら に ま た フ ラ ン ス は 議 会 に 対 し,加 盟 国 の 債 務 の 軽 減 措 置 を,一 方 的 に即 刻 行 う こ と を 提 案 し,ま た 最 貧 国 に 対 して は,フ ラ ン ス が 保 有 す る開 発 と援 助 に伴 う債 権 は す べ て 免 除 す る こ と を決 定 した 。
(3}今 回 のCFA・ フ ラ ン の 切 下 げ は,1994年 1月10日 よ り,ダ カ ー ル(セ ネガ ル)に お い て,フ
ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 加 盟14力 国 が 参 集 して 特 別 首 脳 会 議(非 公 開)が 開 催 さ れ,IMF専 務 理 事
(MichelCamdessus)仏 協 力 大 臣(MichelRou‑
ssin)が 参 加 し た。 当 初 加 盟 国 側 の 大 勢 は切 下 げ 反 対 に 動 き,協 議 は難 渋 した が,切 下 げ に 伴 う諸 条 件 が 整 い,切 下 げ 受 諾 に 向 った と い わ れ て い る (世 銀側 か ら,西 ア フ リカ ・中 部 ア フ リカ担 当局 長 お よ び サ ヘ ル担 当 局長 の両 名 も参 加 した模 様)。
(4)本 稿 に お い て,欧 州 統 一 通 貨ECUと フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 の連 繋 の 問 題 を み た が,こ の 視 点 か ら,今 回 行 わ れ た コ モ ロ を 除 く,フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 加 盟 諸 国 が ほ ぼ 全 域 で 使 用 して い る 「CFA・ フ ラ ン」 の 切 下 げ は,94年1月1日 のEUの 経 済 通 貨 同 盟 の 第2段 階 へ の 移 行 と,フ
ラ ン ス 自身93年 の 通 貨 危 機 の 処 理 を,こ の 程 完 済 し,フ ラ ン相 場 の安 定 と い う タ イ ミ ン グ か ら, 将 来 のECUの 導 入 に 伴 う,フ ラ ンス ・フ ラ ン通 貨 圏 と の 連 繋 を 考 慮 して 行 っ た,基 本 的 準 備 と対 応 の一 っ とみ る こ とが で きな い で あ ろ うか 。 経 済 的 格 差 の 大 き い 欧 州 連 合 と い う先 進 国 グ ル ー プ と フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 と い う開 発 途 上 グ ル ー プ と の通 貨 面 で の 連 繋 は,マ ー ス ト リ ヒ ト体 制 の 進 展 と と も に 注 目す べ き様 相 を 呈 して き た。
注
(1)Europe,no.6084,130ctober1993.な お ド イ ッ の 憲 法 裁 判 所 は カ ー ル ス ル ー一工(Karlsruhe)所 在 。 今 回 の 判 決 は カ ー ル ス ル ー 工 判 決 の 呼 称 も あ る 模 様 。
(2)単 一 欧 州 議 定 書(Acteuniqueeurop6en,1987年6月29 日 発 効)。
(3)DeLarosi壱re,MinistrefrangaisdesFinances,1'avenirde laZoneFranc,lei6septembre1992.
14)拙 著 『フ ラ ン 圏 の 形 成 と 発 展 一 フ ラ ン ス ・フ ラ ン を 基 軸 と す る 通 貨 圏 と 経 済 統 合 の 諸 問 題 一 』 早 稲 田 大 学 出 版 部, 1985年 。
(5}筆 者 が 「フ ラ ン ス ・フ ラ ン通 貨 圏 」 に っ き,第42回 国 際 経 済 学 会(昭 和58年)で 研 究 報 告 を 行 っ た 際 松 井 謙 教 授 か ら 最 適 通 貨 地 域 と の 関 連 に っ き 指 適 が あ っ た 。
(6)前 掲 拙 著,22〜32頁 参 照 。
(7)モ ー リ タ ニ ア は 新 通 貨Ouguiyaを 制 定 し,1973年6月29 日 フ ラ ン ス ・ フ ラ ン通 貨 圏 を 離 脱 し た 。
(8)マ ダ ガ ス カ ル は1973年7月1日,フ ラ ン ス 国 庫 と の 操 作 勘 定 取 極 を 停 止 し,フ ラ ン ス ・ フ ラ ン通 貨 圏 を 難 脱 し た 。 (9)操 作 勘 定 に つ い て は 前 掲 拙 著 第14章 以 下 参 照 。 (1① 前 掲 拙 著 第13章 以 下 参 照 。
(11)ド ロ ー ル 報 告 書 「欧 州 共 同 体 に お け る 経 済 ・通 貨 同 盟 に 関 す る 報 告 書,第2章 第4項(制 度 的 な 取 極 め)」 日本 銀 行 仮 訳
『金 融 』1989年6月 号,30頁 。
働 マ ー ス ト リ ヒ ト条 約,Protocole,SUTlesstatutsdusys‑
timeeuroP壱endeBarquesCentralesetdelaBanque centralseuroP6enne.
(13)DeLarosicre,MinistrefrangaisdesFinances,L'avenir delaZoneFranc.
(1の(15)Ibid.
(1⑤Art.109,aliena1.Traltεde1'Unioneurop壱enne, (171Art.109,aliens5.idem.
(1岱Art,B,Dispositioncommuneidem.
(19)Declaration,idem.
⑳ 但 し,フ ラ ン ス ・ フ ラ ン 通 貨 圏 通 貨 でCFP・ フ ラ ン は フ ラ ン ス 領 域 内 で 使 用 さ れ て い る こ と も あ り,特 例 と し て マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 「寛 謝 の 中 に 規 定 が あ る 。
⑳ChristionGhymers:Nouvelenvironnewent6conomique international,perspectivesetenjeuxpaur1'UMOAetson envirounementregional,Dakar,le29novembre1992.
伽 西 ア フ リ カ 諸 国 中 央 銀 行,Lawson国 際 関 係 総 局 長 と筆 者 と の 意 見 交 換 。1993年3月16日,於 ダ カ ー ル 。
㈱ フ ラ ン ス 銀 行,フ ラ ン 圏 通 貨 委 員 会L.Bernadine事 務 局 長 お よ びBeaum6主 任 と の 意 見 交 換 。1993年3月26日,於 パ リ。
⑳ 欧 州 連 合 本 部,第2部 総 局 担 当 筋 。
㈲InterventiondeM.PierreBeregovoy,PremierMinistre, auSommetFraanco‑A#ricainaLibreville,GABON,1e6 0ctobre1992.
⑳MarchesTropicauxetm6dit6rran¢ens,●i2514,le14 janvier1994,pp.52‑54.
本 稿 は 筆 者 が 平 成3年3月,フ ラ ン ス と ベ ル ギ ー に 研 究 出 張(本 学 よ り 旅 費 の 一 部 補 助 を う け た)し た 際 の 研 究 成 果 で,こ れ に 基 づ き 同 年 名 古 屋 市 立 大 学 で 開 催 さ れ た 第50回,国 際 経 済 学 会 で 行 っ た 研 究 報 告 の フ ル ペ ー/¥° 一 に 加 筆iし た も の で あ る 。