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超伝導伝送線路を用いた高速光変調器に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

超伝導伝送線路を用いた高速光変調器に関する研究

神田, 豊

九州大学大学院システム情報科学研究科電子デバイス工学専攻

https://doi.org/10.11501/3150902

出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

超 伝 導 伝 送 線 路 を 用 い た 高 速 光 変 調 器 に 関 す る 研 究

1 9 9 9 年

神 田 望

(4)

【目次】

第1章 序 論

1.1 研究の背景 1 

1.2 従来の研究および問題点 2 

1.3 本研究の目的と内容 4 

1.4 超伝導伝送線路 5 

1.4.1  超伝導体の複素導電率 5  1.4.2  超伝導伝送線路の高周波電磁特性 6  1.4.2.a超伝導体への電磁界侵入 6  1.4.2.b超伝導体の表面インピーダンス 10  1.5 進行波形光変調器 12  1.5.1  光変調器の基礎 12  1.5.2  進行波形光変調器の基本形 19 

[参考文献] 22 

第2章 超伝導伝送線路の伝送特性の数値解析 25 

2.1  まえがき 25 

2.2  伝送パラメータの計算 26 

2.3  伝送特性の計算 32 

2.4  まとめ 41 

[参考文献] 42 

第3章 超伝導体薄膜の複素導電率の計測 43 

3.1  まえがき 43 

3.2  コプレーナウェーブガイド共振器 44  3.2.1  共振回路のQ値 44  3.2.2  試料の作製および実験方法 47 

3.2.3  実験結果 48 

3.3  磁場侵入長の実験的評価法 52  3.4  表面抵抗の実験的評価法 61  3.5  弱結合モデルの実験的検証 66 

3.6  まとめ 74 

[参考文献] 75 

(5)

第4章 超伝導電極を用いた進行波形光変調器の理論的検討 79 

4.1  まえがき 79 

4.2  進行波変調器の動作特性 79  4.3  速度整合時における進行波形光変調器の性能評価 83 

4.4  まとめ 93 

[参考文献] 93 

第5章 超伝導電極を用いた進行波形光変調器の実験的検証 95 

5.1  まえがき 95 

5.2  Ti拡 散LiNb03進行波形光変調器の製作および計測 96  5.2.1  デバイスの製作法 96 

5.2.2  実験方法 98 

5.3  実験結果および考察 106  5.3.1  LiNb03結晶の誘電率の温度特性 106  5.3.2  直流変調特性 107  5.3.3  DCドリフト 111  5.3.4  マイク口波伝送特性 113  5.3.5  マイクロ波変調特性 113  5.4  新しいデバイス構造 117 

5.5  まとめ 119 

[参考文献] 120 

第6章 結 論 122 

謝辞 125 

{付録A】 コプレーナウェーブガイドの電流分布の導出 126 

{付録B】 伝送線路の伝送パラメータの導出 135 

(6)

第1

章 序 論

1.1 研究の背景

近年の光通信の進展はめざましく,幹線系のみならず加入者系においても高速 に情報を伝送できる光通信技術への期待が高まっている.情報通信量の増加に対 応するため,光通信システムにおける伝送速度の高速化は近年急速に向上し,わ が国においては,すでに10Gbit/sの容量を有するFA‑10G方式が,日本全国を3つ のループで結ぶSネットの幹線系に実用化されている[1]・このことは, 1985年導 入された日本縦貫光通信回線 (400Mbit/s)の25倍に相当する通信速度を有するこ とになる.電気光学効果を利用したLiNb03導波路型光変調器は,レーザ光による 従来の直接変調方式の短所である,波長チャーピングによる伝送距離の制限が緩 和されるため,長距離伝送用の光変調器として有望視されている.将来のマルチ メディア時代には,画像・音声等の大容量データのやりとりが頻繁となることが 予想されるため,より高速・高帯域な性能を有する光変調器の構築が期待されて いる[1]‑[4]

伝送速度が数Gbit/ s以上の大容量光ファイパ通信システムの構築には,外部変 調方式の変調器が不可欠である.この方式として, LiNb03導波路型と半導体の電 界吸収型の二方式がある.電界吸収型は低電圧動作の優位性はあるが,集中定数 型なので, 10 G b i t/sのような超高速動作には不適当である.

光変調器の電極として,通常Auなどの常伝導体が用いられるが 常伝導体は表 皮効果による表皮深さに対応した損失により変調帯域に制限を受ける.超伝導体 は磁場侵入長に対応した表面抵抗により損失を生じるが,その値は数百GHz以下 において,常伝導体の損失に比べてきわめて小さい.特に,高温超伝導体は臨界 温度が高いことから,従来の金属系超伝導体に比べて,より高い周波数まで低損 失で利用できる可能性がある.この低損失性を利用して近年,アンテナやフィル タ等の超伝導マイクロ波受動デバイスの研究・開発が精力的に行われている.超 伝導マイクロ波デバイスを設計するうえで,超伝導薄膜の表面抵抗,磁場侵入長 誘電体基板の比誘電率,および誘電損等の正確な値を知る必要がある.

本章では,従来の研究,および現状における問題点を指摘するとともに,本研 究の目的と内容について述べる.さらに,本研究の理論的基礎を与える超伝導伝 送線路と進行波形光変調器について概説する.

(7)

1.2 従来の研究および問題点

酸化物高温超伝導体のように,積層構造を作るのが困難な材料を用いて高密度 配線を行うには,コプレーナ形伝送線路による平面線路が最適である.しかし,

コプレーナ形伝送線路は電流分布が不均ーとなるため,その設計理論が確立して いない.特に線路の微細化とともに影響が大きくなる超伝導現象特有のカイネテ ィックインダクタンスは,電流分布に基づいた計算が必要となるために十分な研 究が行われていない.

さらに,高温超伝導体では3 薄膜/基板間での界面反応が主たる原因となって良 質で大面積の単結品を得るのが極めて難しく,一般に多結晶薄膜が成長する.多 結晶膜のマイクロ波計測による表面抵抗の温度特性は,理想特性とは異なり,残 留表面抵抗や非線形性などの現象が観測されている[5]・マイクロ波デバイスの多 くは損失によってその性能が制限されることから,このような現象の評価はきわ めて重要である.これまでのところ,高温超伝導体の本質的な性質,もしくは析 出物や結晶粒界等による薄膜に起因する性質なのかはっきり分かっていない.

結晶粒界の影響を考慮、して YB~Cu307_x (以後, YBCOと略記する)薄膜の特性を 評価したモデルとして, H ylto nらによって提案された弱結合モデル (Weakly Coupled Grain Model)がある[6],[7]・このモデルにおいては3 結晶粒閣の関係は ジョセフソン接合と等価であると考え各々の結品は結品粒界で結合していると仮 定し,残留表面抵抗や非線形特性を説明している[6]‑[10]・また,磁場侵入長の評 価も行っている.しかし,このモデルの定量的評価はまだ十分なされていない.

超伝導薄膜の表面抵抗や磁場侵入長の測定法として,マイクロストリップ線路 共振器法,コプレーナウェーブガイド共振器法,誘電体共振器法等が検討されて いる.しかし,これらの測定法で精度よく測定できる手法はまだない.さらに高 温超伝導体多結晶薄膜における粒部と粒界部との固有値の磁場侵入長λを評価し ている場合はきわめて少ない.

進行波形光変調器の重要な特性の一つである変調帯域は,

(1)進行波電極を伝搬する変調波と,光導波路を伝搬する光波の位相速度差 (2)変調波の伝搬損失

によって決定される[11]. 

一般的な, Ti拡散導波路近傍に電極を配置した通常の光変調器では,光波の実 効屈折率n。は,波長1.5μm帯で、2.15,変調波(マイクロ波)の実効屈折率nmは4.2

となる[12]・このため3 素子内を伝搬する光波とマイクロ波との聞に位相速度差

2‑

(8)

が生じ,変調帯域に制限を受けることになる.この問題の解決策として,電極形 状の工夫[13],導波路聞に溝を掘る [14],バッファ一層やシールド板の添加[15]な と3 種々の方法がこれまでに提案されている.これらは,電極近傍に低誘電率の 物質(例えば空気)を配置し,マイクロ波を誘電率の低い領域に漏洩させること によって,マイクロ波の実効速度を上げようとするものである.速度整合法のも う一つのアプローチとして,光波とマイクロ波との速度差によって生じる位相の 不整を変調の極性を適宜反転して補償する極性反転位相補償型[16]がある.しか し,この方法は基本的にバンドパス形であるので,設計された周波数以外では変 調効率が低下すること,位相の周波数依存性が非線形である等の制限があり,用 途が限定される. 本研究では, NbN薄膜のシールド導体方式[17]‑[18]を採用し て光波とマイクロ波との速度整合を行った.

(2)のマイクロ波の伝搬損失については,進行波形光変調器の設計において3 低 電圧動作のため電極間隔を狭くし3 電極の幅を光導波路程度に細く設計する必要 がある.しかし,狭い電極間隔は特性インピーダンスの低下の要因となる,また,

常伝導電極幅を細くすると高周波領域において導体損が増加する.この結果,変 調帯域幅が減少する.さらに,低駆動電圧化のためには,光出力をon/offするの に必要な駆動電圧(これを半波長電圧Vπという)を小さくする必要がある.この ために,光波と信号波であるマイクロ波との相互作用長Lを長くしなければなら ない.しかし

, L

の長尺化は導体損の増加を招くことになる.即ち,常伝導電極 では,低駆動電圧化と広帯域化とはトレードオフの関係にある.特に,高周波動 作になるほど,信号発生用のミリ波電源の出力は小さくなるため,高周波化にと もなう低電圧化の要請はさらに厳しくなる.野口らは光導波路をリッジ型構造と し,電極厚やバッファ一層を調整して, 50 Qインピーダンス整合と速度整合の条 件を満たしつつ,導体損失を減らす最適構造を研究している[13]・

超伝導体を光変調器の電極に用いると,超伝導体のマイクロ波帯における低損 失性と低分散性の特長から,常伝導体電極を用いた場合の上記の問題点を飛躍的 に改善できる可能性がある.

(9)

1.3 本研究の目的と内容

本研究は,超伝導伝送線路のマイクロ波帯における基本特性を明らかにすると 共に,超伝導電極を用いた外部光変調器の高性能化の提案3 および,その性能の 検証を行ったものである.

超伝導電極材料として,コストパフォーマンスの面からは高温超伝導体が有利 である.しかし,高品質の酸化物高温超伝導体薄膜は,従来の金属系超伝導体と 異なり 3 現在の技術では,

MgO

,いAl03,SrTi03等の限られた基板材料上に,しか

も1層しか作製することができない.本研究では,成膜条件が明らな金属系超伝導 体であるNbN電極を用いて光変調器を作製し計測を行った.

酸化物高温超伝導体を,エレクトロニクス関係に応用するには3 薄膜の積層化 は必須であるが3 現状の膜作製技術では,薄膜と相性のよいバッファ層等を仲介 として成膜しなければならない.

YBCO

のマイクロ帯における諸物性値を詳細に 評価することにより,高速スイッチングデバイスや高周波デバイスのための設計 指針を得ることはきわめて重要である.

本研究では,作製の容易さ等からエレクトロニクス応用として有望な

YBCO

薄 膜のマイクロ波物性の評価,特に損失のメカニズムを明らかにすることを目的(1) 

とし,超伝導のマイクロ波領域における低損失性を応用して,超伝導電極を用い た進行波形光変調器の開発を行い,低電圧化と広帯域化(高速化)をはかること を目的(2)とする.目的(1)においては,超伝導伝送線路の数値解析を行い,電流 分布,インダクタンス,光波とマイクロ波との速度整合の最適値を求める.さら に,レーザ蒸着法により

MgO

基板上に製作した

YBCO

薄膜を用いてコプレーナウ エーブガイド共振器を構成し,表面抵抗と磁場侵入長を評価するとともに,

YBCO

薄膜を粒部と粒界部に分離して,複素導電率の温度依存性から表面インピ ーダンスのメカニズムについて評価する.目的(2)においては,超伝導電極を用い た光変調器の優位性について,理論的検討を行うとともに, NbN電極を用いたシ ールド導体付き光変調器を作製し,実験的検証を行う.

電極に超伝導体を用いた光変調器は,これまでに数例の報告がある[19]‑[21]・ しかし,そのほとんがシミュレーション結果であり,これまでのところ 3 低温に おける変調動作実験に成功した報告例はない.

本論文は, 6章から構成される.第1章では,本研究の背景と,従来の研究およ び問題点について概説している.また,従来の研究,および現状における問題点 を指摘するとともに,本研究の目的と内容について述べている.さらに,超伝導 伝送線路と進行波形光変調器の一般的な理論について概説し 3 後章において述べ

‑4‑

(10)

る理論的基礎を与えている.

第2章では,超伝導コプレーナウェーブガイドの伝送パラメータを数値解析によ り求めると共に,この計算結果を用いて伝送線路のインダクタンスの膜厚依存性 を評価している.また,この計算手法を超伝導電極を用いた進行波形光変調器に 適用して3 高性能化のための最適設計を行っている.

第3章では,超伝導薄膜のマイクロ波モデリング法を提案して, YBCO薄膜の表 面抵抗と磁場侵入長を評価している.さらに,薄膜を粒部と粒界部とに分離して それぞれの複素導電率の温度依存性から,表面インピーダンスのメカニズムにつ いて評価している.

第4章では,常伝導電極と超伝導電極の電気的諸特性の数値計算結果を用いて 両者の性能について比較・検討しており,超伝導電極を用いた進行波形光変調器 が実現できれば,大幅な特性改善ができることを明らかにしている.

5

章では,

L i N b  

03結品に

T i

を選択拡散して光導波路を形成し,電極に超伝導 体

(Nb

NbN)

を用いた進行波形光変調器の低温実験結果により,本デバイス が低電圧動作で,広帯域動作を有することを検証している.さらに,新しい構造 の折り返し形光変調器について提案している.

第6章では,本研究で得られた結果を総括している.

1.4超伝導伝送線路

超伝導体に高周波電流が流れた場合の導電率と,高周波電磁特性の中で,本研 究の理論的基礎を与える磁場侵入長,表面インピーダンスについて概説する.

1.4.1超伝導体の複素導電率 超伝導体の導電率

σ

は,

=01‑J02 ︐︐

ai

EAr'E1

n_e~ τ

01=mn(1+ ム

2τ2) (1.2) 

(11)

2/

2

n~e-:. n ..e:(αyτ} 

。 勺 = ー

ι一二+

一 日

, 

mSuJ nω(1 +ω2τ2)  (1.3)  のように複素数で表される.ここで

nは常伝導電子の電子密度, n5は超伝導電 子のクーパ対密度,

ω

は角周波数

Tは緩和時間

eおよび、mはそれぞれ常伝導と 超伝導の電荷と質量である.

式(1.1),(1.2),および式 (1.3)における実数部の抵抗成分σlは,常伝導電子成分 のみの寄与であり,虚数部のインダクタンス成分σ2は,両電子成分からの寄与と なっている.

これらの関係式は,超伝導体の導電率は周波数が零(直流)の場合には完全導 電性を示し,周波数の増加に伴い超伝導電子による導電率が小さくなり,完全導 電性から離れていくことを示している.また,常伝導電子成分が存在する場合に は,抵抗が有限値となることも示している.

ω2τ2~1 が成り立つ周波数 (f<100GHz程度)では,式 (1.2) と式(1. 3) は,

n̲e:'τ 

0 1 =

ι ‑

n 、e~

0 2 =ー 」 ー ム ニ 晶 司

m~ úJ r.、 : lL

ωμO^L 

(1.4) 

(1.5) 

と表すことができる.この場合の等価回路は,図1.1のように常伝導電子による抵 抗成分と,超伝導電子によるインダクタンス成分との並列回路によって表される.

1.4.2超伝導伝送線路の高周波電磁特性

1.4.2.a超伝導体への電磁界侵入

超伝導体の最も基本的な性質は,ある臨界温度以下で直流電気抵抗がゼロにな る完全導電性と,ある臨界値以下の磁界では超伝導体内から常に磁束を排除する マイスナー・オクセンフェルド効果(以下マイスナー効果と略記する)である.

この場合,超伝導体の内部で完全に磁束力3存在しないのではなく,式(1.6)のよう に材料によって決まる,ある一定の深さまで磁束が侵入する.この深さを磁束侵 入深さ λと呼ぶ.磁束の強さは超伝導体の表面から深さの尺度で指数関数的に減 少する.磁束侵入深さの領域では磁場に対して垂直方向に遮蔽電流が流れる.こ

‑6‑

(12)

の遮蔽電流は磁束と同じ深さ方向の強度分布を示す.遮蔽電流の存在によって磁 束は超伝導体の内部に侵入できないのである. したつがって,遮蔽電流は外部磁 場を打ち消す方向に流れる.

B(x) =Boexp ( 

‑ 走 )

(1.6) 

ここで,

λL

は次式で表される量である.

λ L d = ゾふ:

(1.7)  式 (1.6)はマイスナー状態では磁束は超伝導体から完全に排除されているのでは なく,図1.2に示されるように,表面から

λ

L(

λ

L=Bo I e今Bo/2.718O.37Bo)程 度侵入し,指数関数的に減少することを表している.式(1.7) の λLは超伝導体 内の電子の総数に依存するが,通常はその値が約10nm程度になる磁束密度の侵入 深さである.これはロンドンの侵入深さとよばれている.この結果,超伝導体に 磁界を加えても,この表面部分には遮蔽電流が流れ,磁界が超伝導体内部に侵入 することを完全に防いでいる.

しかし3 この λLは超伝導体の不純物濃度に依存するので,コヒーレンス長ごを 考慮、して修正したロンドン方程式から求められる磁気侵入長

λ

3λL

に比べて大

きな値となることが分かっている.

ところで,式(1.7)から超伝導体の磁場侵入長は周波数にほとんど依存しないこ とが分かる.一方,常伝導体の表皮効果による表皮深さ

δ

は次式で表されるよう に周波数に依存する.

δ

= J

(1.8) 

ここで, μ。は透磁率,

σ

は電気伝導度,

ω

は電磁界の角周波数である.

常伝導伝送線路では,導体を流れる電流が導体表面の表皮深さ程度に集中する ために,伝送線路を伝搬する電磁波の位相速度が表皮深さによって変化すること になる .このため,位相速度が周波数変化を示して分散性を有する .これに対し て,超伝導伝送線路では,式(1.7) に示すように磁気侵入長が周波数依存性をほ とんど持たないので3 位相速度が一定となり,分散性がなく信号を無歪で伝送す

(13)

n_e~ τ

01 

= ‑ ー 一

一 ~n

F 1 d 1   .

‑ j02=‑jι

= ‑ j ‑ ‑

mα)  rω.μlll ̲ O^L )"'" 

図1.12流体モデルの等価回路

超伝導体

λ 

外界 Bo 

Bo  e  磁 束 密 度

B

深さ x

超伝導体内への磁界の侵入

‑8‑ 図1.2

(14)

ることができる.このことは,デバイス応用上きわめて重要な性質である.

また,

λ

は臨界温度より十分低い温度では多少温度に依存し,臨界温度に近づ くにつれて増加し始め,臨界温度では特異点を持つ.このような

λ

の温度特性

λ(

t)  は,温度関数

θ

(t)を用いて次式のように表される.

λ(t) =λ(0)  8(t)  (1.9) 

温度関数

θ

(t)は,従来の金属系超伝導体において次の2つのモデルが考えられ ているが,高温超伝導体においては,現時点ではまだ有効なモデルは確認されて いない.後章で,本研究において用いた温度関数について記述している.

GorterとCasimidま2流体モデ、ルから,

(t)

=7

E

ハU

ai

‑ ‑

f '

1

と定義している.

また, BCS理論においては,

(t)

1 d(企(今 /t) 

d(l/ t)  ¥'/  E4A  t ‑‑ &  pi / ︑ ︐

と定義されている.ここで

tは温度Tと臨界温度Tの比を表す.

図1.3に二つのモデルの温度特性を示す.

λ

は高周波のデバイスや部品等を設計する際に重要な指標となる.もし,超伝導 体試料の厚さが

と同程度あるいはそれより厚い場合には

3

磁界は試料内で減 衰 し , そ の 振 幅 は , 試 料 の 裏 側 か ら エ ネ ル ギ ー の 漏 れ が な く て 減 少 し,零とな る.逆に,試料の厚さが

λ

よりも薄い場合には,磁界は試料の内部まで侵入し膜 の裏から漏れる.温度が臨界温度に近づくにつれて

λ

は増加するため,実効的な マイクロ波デバイスの大きさも変わり,その結果,デバイスの共振周波数などに 影響を与えることになる.

高温超伝導体の場合,

λ

と他の電磁気的パラメータ,例えば,抵抗率との関係 は不明であるために,高品質化のための指針が得られていない.しかも,

λ

は不 純物やミクロな結晶構造に顕著に影響されるため,必ずしもバルクの特性と一致 しない.したがって,特に薄膜を用いた実験において, λと他の電磁気的パラメ ータとの関連を調べることがエレクトロニクスの応用において重要である.また

(15)

物性研究の点からは λ(0)の絶対値は超伝導電子対の有効質量や,キャリア密度と 密接な関係がある.さらに, λの温度依存性は超伝導電子のベアリング機構の情 報を与える.

このように,超伝導体を用いたデバイスを設計する際,磁気侵入長

λ

は最も重 要なパラメータの一つである.

1.4.2.b超伝導体の表面インピーダンス

超伝導体の表面インピーダンスZsは,

s+

件記手=ゾよ九

2 z

ぺれ1.+川入

L (1.12) 

R..=ω2μ3λ:01 

(1.13) 

xs=ωμL (1.14) 

と表される.マイクロ波領域における損失は表面抵抗Rs~こよって評価できるので,

これまでに数多くの高温超伝導体の表面抵抗の実験結果が報告されている[22]‑ [29] . 

常伝導体の場合には, σ1~σ2 であるから表面インピーダンスは,

1+ j) 

(1.15) 

で与えられる.

式(1.13)と式(1.15)から,超伝導体の表面抵抗は周波数の2乗に比例するのに対 して,常伝導体は周波数の1/2乗に比例することが分かる.

図1.

4

に超伝導体の高周波表面抵抗の代表的測定例を示す.

YBCO

薄膜において は1GHzから300GHz近傍まで,金より損失が低いことが実験により示されている.

今後,結品性の改善などの膜作製技術の飛躍的な向上により ,金属系超伝導体Nb の表面抵抗値に近づくことが期待される.

BCS

理論からは,高温超伝導体の表面 抵抗は, 10 zの超高周波領域まで,従来の材料の表面抵抗より低くなると推定

されている.

BCS

理論では,臨界温度の上昇は表面抵抗の減少となる.

10‑

(16)

ー ー ー ー ‑Gorter & Casimir's model  4 

UU

( C

)

¥ £ ) ぺ

1.2  1.0 

R e d u c e d  T e m p e r a t u r e   [ T / T

c]  0.8 

0.6  0.4 

0.2 

磁気侵入長の温度特性

N o r m a l ‑ c o n d u c t o r . . . . .  

二一一〆.,..‑

戸一三士一一 ‑ ‑ l ・ー;ン'

ー :一一...)Z...;..L.~..

一一‑

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〆 ~.~...Superconductor ./ 

図1.3

ーーー‑YBCO77K  ー … N b4.2K 

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1 0 ‑

1 0

2

1 0 ‑

1 0

3

1 0 ‑

1 0

5

{ α }  

ω υ ロ

三 ∞ . 5

ω

ω ω 何 百 ロ ∞

1 0

7

1 0 0  

[GHz] 

1 0  

F r e q u e n c y  

表面抵抗の周波数特性 図1.4

(17)

1.5進 行 波 形 光 変 調 器 1.5.1光変調器の基礎

図1.5に長距離光ファイパ通信システムの基本構成を示す.半導体レーザを電気 信号で直接に,または外部変調器で変調し,光ファイパに結合させ,伝搬した光 を検出器で再び電気信号に変換する.光信号は伝搬とともに減衰したり劣化する ので,ファイパ伝搬路には必要に応じて信号の増幅や復元のための光増幅器,ま たは光中継器が挿入される.

レーザ光はマイクロ波よりも104"‑'105倍も周波数が高く,伝送帯域を格段に広く とることができる.これは情報伝送の大容量化の要求を満たす優れた特性であり 光通信技術が鋭意開発されてきた基本的な動機である.半導体レーザの波長とし ては 1.55μmが主流である.光ファイパ通信の初期の時代には,ファイパの屈折 率分布が単純なステッブ形構造において,波長分散特性(波長により光の伝搬時 間が異なること)が零となる波長は1.3μmで、あった.その後,階段形屈折率分布 によるファイパの1.55μmで零分散と低損失が実現された[30]・

光ファイパを伝送線路とする,光通信用の送信側におけるキーデバイスである 光変調器の変調方式として,従来は直接変調方式が主流であった.即ち 3 半導体

レーザ(レーザダイオード:LD)が,注入される電流によって強度が直線的に変 えられるため,変調信号を注入電流に重畳することで,簡単に強度変調が得られ る方式である.しかし,この方式は発振器そのものの動作を直線変化させること になるので,発振回路の周波数安定度(発光スペクトラム幅の広がり:チャーピ ング)により,変調帯域に制限を受ける.この方式は,発振部と変調部が一体と なるので小型化の優位性はあるが, 1Gbit/s程度の伝送速度が限界である.このた め数Gbit/s以上の高速光通信においては,発振部と変調部を分離した外部変調方 式が必須となっている.この方式は,レーザの発振周波数が変調によって変化す ることはないため,送信回路のチャーピングは非常に小さくできる利点がある.

外部光変調器は実用性の観点から,

(1 )数Gbit/s以上の高速動作が可能 (2)数V以下の低電圧駆動

という要求に応えられる材料および素子構造として,次の二つの方式が主流とな っている.

一つは電気光学効果の一つであるポッケルス効果を利用したLiNb03(以下3

LNと略記する)導波路型のものであり 3 他はGaAsのような半導体の電界吸収効 果を利用した電界吸収型光変調器である.

‑12‑

(18)

LN

変調器は光伝搬損失の小さい金属チタンの熱拡散により,比較的簡単に

LN

結品上に導波路を形成できることから主として使用される[31]‑[33]・1988年頃,超 高速長距離光伝送システムの実用性が検討される中で,波長チャービングと光フ

ァイパの波長分散に よるパルス広がりが問題になり 3 波長チャーピングの発生し ないマッハ・チェンダー構造の

LN

強度変調器の有用性が指摘された.

また,エルビウムドープ光ファイパ増幅器の出現によって光増幅再生中継方式 と異なり,光増幅中継では分散による波形劣化が累積するため,波長チヤーピン グの少ない変調特性が送信器に要求されるようになった.1990年以降, 10Gbit/s  以上の超高速伝送を目的とした

LN

変調器の開発が精力的に行われ,

NTT

の研究グ ループによって700Hzの変調帯域幅が示された[34]・ 一方では,実用化を念頭に DCドリフトの抑圧が大きく進み,現在ではDCドリフトの問題は克服された[35]・

LN

変調器は,ファイパとの整合性がよい,被変調光のチャーピングがほとんど ない,波長依存性が小さい等の特長から, 10Gbit/s光伝送システムに導入される など,現時点では最も実用的なデバイスである.しかし3 光ファイパとの整合性 が良いことは,光の閉じ込めが比較的弱いということであり,半導体変調器に比 べて駆動電圧(半波長電圧)がやや高いという短所がある[36]・

外部光変調器の電極としては,通常, Auなどの常伝導金属が用いられるが,常 伝導体は,表皮効果による表皮深さに対応した損失をともなうことにより,変調 帯域に制限を受ける[17],[18]・

一方,半導体の光変調器は

LN

光変調器に比べると小型で動作電圧が低く,半導 体レーザとの集積が可能である,などの特長がある.これは半導体の屈折率が

LN

に比べて大きいため,半導体中では光を強く閉じ込められることや,半導体では pn接合の逆バイアスを使うことにより,効果的に電界を素子に印加することがで きる点によっている.図1.6に電界吸収型光変調器の原理図を,図1.7に半導体レー ザと集積された電界吸収型光変調器の例を示す.

実用化されている半導体の光変調器は,印加電界によりその吸収係数を変化さ せて強度変調をする電界吸収型である.半導体でも,

LN

変調器と同様に,印加電 界による屈折率変化を利用する形式の変調器も検討されているが,素子が大きく なり,高速動作が難しいなどの問題点があり 3 あまり使われていない.

電界吸収型光変調器は,

LN

変調器と異なり集中定数型なので,その変調帯域は 変調器が持つ容量で制限される.素子容量は導波路厚と反比例の関係にあるので 高速動作をさせるためには導波層を厚くする必要があるが,これは動作電圧の増 大をもたらす.高速化と低電圧動作化とは両立しないので,目的に適した設計を 必要とする. さらに,この変調器は導波層の半導体材料の吸収端(吸収係数が急

(19)

光パルス ロm

一 μ

レ 中 山

ふ ホ f t t

新 安 半 訪

光検出器 中継器もしくは光増幅器

図1.5 長距離光ファイパ通信システムの基本構成

印加電圧

lf 

入力光

巴ミ> 亡

出力光

ヰ 〉

図1.6 電界吸収型光変調器の原理図

高反射率コーティング

Fe‑ドープInP

無反射コーティン

InG aAs/lnG aAsP  M Q W構 造

図1.7 DFBレーザ/光変調器集積化光源

‑14‑

(20)

激に増加する端)付近の波長で使用するため,吸収係数の変化による屈折率変化 が生じ,その変化分は無視できない値となる.その結果,光信号の波長が広がる チヤーピングとなる.このチャーピングは,半導体レーザの直接変調時の値に比 べると,かなり小さい値であるが, 10Gbit/sのような超高速光信号を長距離伝送 する場合には大きな制約要因となる.LN変調器では,このチャーピングをほぼ零 にすることができるため, 100Km程度以上の長距離伝送には, LN変調器が有利で ある.100Km程度以下の伝送距離では,チャーピングが制限要因とならないため 小型で低電圧動作が可能で、あり,使い易い電界吸収型が有利である.

次に, LN光変調器の動作原理について概説する.

図1.8に示すように電気光学材料に適当な電極を設けて変調電圧Vを印加すると材 料中に変調電界Eが発生し,その電界に比例して材料の屈折率がnからn+L1nに変化 する.そこで,材料に光を入射すると,光波が材料中を伝播する際の位相速度も 変わるので,結果的に出力光の位相が変調を受けdゅの位相シフトが得られること になる.

数cm角の光学結品(パノレク形)を用いてこの変調器を構成すると,変調電圧は 数百V以上となり実用性には之しいが,光導波路技術によって光を導波路に閉じ 込めておけば,コプレーナ形と呼ばれる細線状の電極を用いることで,変調電界 を導波路付近に集中させることができ,駆動電圧は数Vから数十Vまでに低減でき る.また,デバイスが小型化できる利点もある.この導波路技術を用いた光位相 変調器の基本形を図1.9に示す.

導波型光位相変調器は,結晶の結品方向によって電極の配置を考慮、しなければ いけない.LNを例にとると,この結晶の光学軸(z軸)に電界を印加することによ り3 最大の電気光学効果を得ることができる.例えば

yカット基板を用いた場合 には,図1.10(a)に示すように導波路を挟むように構成すればよい.このとき,入 射光はTEモード(Transverse Electromode)の光を用いれば,最大の電気光学定数Y33

が影響してくるので,変調効率は最大となる.

また,図1.10(b)に示すようにzカット基板を用いた場合には3 電極は導波路の直 上に位置する必要があるため,電極によって光が吸収される金属クラッディング が発生する.この悪影響を防止するため,電極と基板表面との間にバッファ層(普 通, Si02, MgOなどの低屈折率誘電体がよく使用される)を形成しなければいけな い.このzカット基板には

TM

モードを用いることで変調効率は最大となる.

(21)

このような位相変調器は比較的簡単に得られ,これまで種々の方式が提案され ている.デジタル信号に応じて光波の位相をシフトさせる変調方式 (PSK: phase  shift  keying)ならばこの方式でも良いが,光波の強度を変調する方式(商用光通 信システムではほとんどこの方式である)に用いるためには位相変化を強度変化 に変換しなくてはならない.その具 体 的 方 法 と し て 干 渉 型 (Mach‑Zehnder型,以 下, MZ形と略記する)光変調器と方向性結合器型光スイッチとがある.

以下において,本研究で採用したMZ形光変調器の概要を述べる.

光位相変調器と

MZ

型干渉形とを組み合わせた光強度変調器は, 導波路型光強 度変調器の最も一般的な形態である.

MZ

形光変調器の基本構造を図1.

1 1

に示す.入力光は

3dB

分波器によって

2

分さ れ2本の分岐導波路に導かれる.分岐導波路の一方は光位相変調器として動作しそ こを通過する光の位相を変調する .この位相変調された光と他方の分岐導波路を 通過した光とは出力側の合波器において合 波 ・干渉し3 位相変調は強度変調に変 換された出力光となる.2つの分岐導波路の一方だけでなく,両方とも光位相変調 器とするかわりに位相変調の方向を互いに逆相したプッシユプル動作にすると変 調能率を倍増することができる .

MZ

形光変調器において2つの分岐導波路からの 光波が同位相で合波器に入射した場合には,そのまま合成されて出力導波路に導 かれる.両者の位相が互いに逆相の場合には,光は放射モードとして導波路から 外ヘ放射され出力導波路には導かれない[36]・

次に

MZ

形光変調器の動作を数式を用いて考えてみる.

電極長 (電 気ー光の相互作用長)を L とおくと,光の位相変化量

A φ

は次式のよう に表される .

Aゆ=ωL1t

一 今 一 f) L  L  ¥ 

ー/… 一 一 , 

J '  

‑‑

¥ .

  n  (n 0 ‑ ~n)

2:rc L~n

λ 

πLY3

バ rv

λ

d (1.

1 6 )  

ここで, cは 光 速

n。は光波の等価屈折率,人。は 光 の 波 長

dは電極間隔

, v

は 印加電圧

, r

は印加電界低減定数である.

‑ 1 6 ‑

(22)

~I ~

爪 ¥ 爪 ¥ ヴ 』

以  / ‑ ..

L..I 

"  v=o

のとき の出力光

電極

Z  入力光

電気光学効果を用いた光位相変調器の基本構造

導波路形光位相変調器の基本形

源電調

亦久へ

図1.9 図1.8

(23)

バッファ一層

x L y 

調

n v  

基板の結晶軸

x

(b) z‑cut LiNb0

光位相変調器

基板

( L i Nb0

3

位相変調器の電極配置 (a) y‑cut LiNb0

図 1.10

側験炉 入力光

マッハツエンダー形強度光変調器の基本構造

2 

出力光の強度変化

‑18‑

VjVπ 

~

1 

図1.12 図1.11

(24)

ここで,光の入力パワーPiをY分岐 (3dB分波器)で分割し,それぞれEaEbを もっ導波光が分岐導波路で互いに逆位相になるように位相変調した後,出力側の 合波器で干渉・合成したときを考える.またY分岐部における散乱損失を無視す れば

IEaI2+IEbI2= 

1

で入力側でのパワー分割比は

rp=(IEaI/IEbl)2である.

このとき, 2!J 

o

に対して,出力P。は,

~   1 (

E a 

1  ‑ 1  

E b 

  ) 1

2 1  

E a 

1  . 1 

E b 

1 ∞

2(劫)

=今{~1F+(1LT) 2 叶時 )}

(1.17) 

となる.上式を図示すると図1.12のようになり,正弦波状の変化をすることが分 かる.

ここで,出力光が極大から極小になるまでの必要な電圧(半波長電圧)をV1Lとす ると,それぞれの位相変調器で !J

o = π

12となればよいので,

FL

q 3  

JU

γt

hw

1

JO

 

J一nF

π 

(1.18)  となる.ここで, γ33はLNの電気光学定数である.また,消光比はErは,

( P   0 ) 

max  Ii  1 ̲ ̲ 1 + r 

'¥ 

Er=10 1og (Po)min =10 l‑‑0 og 

l ¥ .l

一一乙

‑rp I

L ‑‑[d

(1.19) 

で与えられる.すなわち,パワー分割比がr=1のとき無限大の消光比になるわけ だが,たとえら=2であっても9.5[dB]の消光比が得られる.このように, MZ形光強 度変調器は,製作上の誤差によって入力パワーが完全に等分配されなくても,低 電圧で10[dB]以上の高い消光比が容易に得られる特徴がある.このため種々のLN 導波形デバイスの中でも,最も作りやすい光強度変調器といえる.

1.5.2  進行波形光変調器の基本形

図1.9に示した集中定数型光変調器では,電極の静電容量Cと変調信号源とのイ ンピーダンス整合のための抵抗Rとによって変調帯域幅は制限され,数GHz程度 が限界とされる.

(25)

進行波形光変調器では図1.13に示すように,電極は変調信号に対する伝送線路 として扱われ,変調信号は電極上を進行波の形で伝搬する .光波と変調信号とが 同一方向に伝搬しながら分布定数回路的に結合し,変調が行われることになる.

理想的な場合として変調信号と光波の伝搬速度が一致している場合(速度整合が 満たされている状態)には,変調信号と光の波面との関係は常に一定に保たれた ままであるので,変調信号の変化がいかに速くともそれはそのまま光変調信号と して機能する.すなわち,速度整合条件が満たされていれば変調帯域には制限が なく,原理的には式(1.20)に示すように帯域幅ム

f

は無限大となる[37]

L1 f = ̲̲ ̲̲ 1.4c 

JπI 

n‑n

(1.20) 

もちろん現実にはこのような状態は存在しなく 3 変調信号や光に分散があるので 帯域に制限を受ける .さらに,変調信号源や給電線とデバイスとの接続部分など が,それぞれ固有の周波数特性を有しているので,パッケージや駆動回路系まで を含めて帯域幅を考慮、しなければならない.したがって,帯域幅を表す式は式 (1.20)のように単純とはならず,変調信号の減衰量などを考慮、して検討する必 要がある.

伝送線路上を進むマイクロ波の伝搬速度と,媒質中を進む光の伝搬速度は一般 には一致しない.本研究においては,図1.14に示す進行波形強度光変調器を構成 した.シールド板法により信号波と変調波の速度整合をはかると共に,マイクロ 波帯において低損失な超伝導電極を用いて広帯域化を試みた.このことについて は第5章において詳しく述べる.

‑20

(26)

終端抵抗

電 極

光導波路入射光

図1.13進行波型光変調器の基本形

O p t i c a l  f i b e r  

C o u n t e r  e l e c t r o d e   T i  ‑ d i f f u s e d  

o p t i c a l  waveguide 

rl  

ρw

hu  

pTi 

a  c 

p

l

J K

 

Ground e l e c t r o d e  

図1.14 進行波型強度光変調器(プッシユプル形)

(27)

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"SpectraDomnAnaIysis of Coplanar WavelideTraveling‑Wave Electrodes and Their  Applications to  Ti:  LiNb03 Mach‑Zehnder Optical  Modulator", IEEE Trans.  Micro.Theo.  Tcch., Vo.139, pp.1595‑1601, (1991). 

[34]野口一人3宮津弘, 三冨修 : 70GHz帯LiNb03広 帯 域 光 変 調器3¥信 学 会 全 大'93秋大, C175(1993)

[35]  H.Nagata, N.1itsugi,K.Kiuchi  and  J.Minowa  : " Life  Time  Estimation  for  Hermetically Packaged 10G/s LiNb03 Optical Modulatoe" , Eng. & Lab. Notes in Opt.  & 

phot.  News (Opt.Soc. Am.)7, 11(1996). 

[36]末 田 正3 神 谷 武 志 編 : 超 高 速 光 エ レ ク ト ロ ニ ク ス , 第9章 ( 井 筒 雅 之 ),塙 風 館 (1991). 

[37]井 筒 雅 之3末 田 正 ."電子通信学会論文誌, J64‑C, pp.264‑271(1981)

‑24‑

(30)

2 章 超伝導伝送線路の伝送特性の数値解析

2.1  まえがき

超伝導伝送線路は,抵抗損失の低減が可能であるとともに,理論的考察より分 散性が改善されることも大きな利点の一つである.この特長を生かそうとする試 みは低温超伝導の時代に既になされており,我が国でもlKmの同軸線のパルス入 力特性の測定例が報告されている [1]・しかし,こうした長距離大容量の通信線路 への応用は,冷却の困難さにより現在ではほとんど考えられていない[2]. それに 対し,同じ線路といっても,集積回路内の配線であれば,十分可能性がある.

さらに高温超伝導体の発見を契機として,この材料のマイクロ波回路・デバイ スの応用に関する研究が活発に行われ3 高性能なフィルタやアンテナ素子の実現 が現実の物になりつつある.なかでも超伝導フィルタに関しては,すでにフィー ルドテストに入っているとの情報もある.BCS理論を基礎としたMattis‑Bardeen理 論によると,臨界温度の飛躍的な増加は,そのままエネルギーギャップで決まる 動作可能上限周波数の拡大につながるので,超高速・超広帯域信号伝送に高温超 伝導が大きく寄与するものと期待されている.

高周波受動コンポーネントの最も単純なものとして伝送線路がある.現在3伝送 線路としての高温超伝導材料は良好な特性を示すことの多くの報告がある.一方 では,マイクロ波パワーの増大にともない

Q

値が低下する,あるいは,微弱電力 伝送においても,いわゆる臨界電流値以下の伝送にもかかわらず高周波特性の劣 化を示す等の問題も生じている.これは,伝送線路の電流が線路断面にわたって 均一でなく,端部に集中する非線形応答が原因と考えられている.

伝送線路の検討は線路の膜厚を考慮、した場合,電磁界分布が複雑となるため解 析的に求めることは通常困難となる.そのため超伝導伝送線路の詳細な電流分布 の評価は未だ十分とは言えない.

本研究では,まず変分原理に基づいた方法[3]を用いて,コプレーナ形超伝導伝 送線路の伝送パラメータの数値解析を行っている.従来の評価方法は,導体の種 類(常伝導体または超伝導体)により評価方法が異なるため,計算精度に問題が あると思われる.さらに3 この計算結果を用いて,常伝導体伝送線路と超伝導体 伝送線路の場合について,パルス波形の伝送特性をシミュレーションにより求め ている.

伝送線路には,図3.1に示すように代表的な3種類の形式のものがあるが,コプ レーナ形がプロセス的に有利である.コプレーナ形超伝導伝送線路を光変調器の 電位に応用した場合の電気的諸特性については第4章において議論する.

参照

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