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CPUパッケージに搭載可能なTbps級シリコンフォトニクス光送信器技術

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Academic year: 2021

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あ ら ま し

HPC(High Performance Computing)システムや高性能サーバで用いられるハイエン ドCPUでは,演算処理能力の増大に伴い近い将来Tbps級の大容量入出力回路(I/O)が必 要になると考えられている。光伝送技術を利用した光I/Oは,従来の電気I/Oにおけるサ イズ・消費電力の限界を打破する技術として期待を集めており,その中でシリコン(Si) フォトニクスを利用した集積光I/OはCPUパッケージに搭載可能なサイズでTbps級の大 容量I/Oを実現する技術として非常に有望である。 本稿では,富士通研究所が取り組んでいる大容量光I/O向けSi光送信器の開発状況につ いて説明する。大容量光I/OをCPUパッケージ内に搭載するためには,動作温度が大きく 変動しても安定して低電力動作が可能なSi光送信器を実現する必要がある。そこで著者 らは低消費電力なリング光変調器を,素子温度が変化しても煩雑な波長制御なしに利用 できる新しいSi光送信器の構成を提案した。本コンセプトに基づき集積光送信器を試作・ 評価した結果,25 ∼ 60℃の温度範囲にわたって波長制御なしに10 Gbps動作を実証した。 更に,フリップチップ実装技術を用いたレーザー光源の小型・高性能化や波長多重化に 向けた4チャネルレーザー光源の開発に成功し,Si光送信器の大容量光I/O適用に一定の 見通しを得た。 Abstract

In the near future, due to a successive increase in the processing capacity of high-end CPUs, a large I/O bandwidth of more than 1 Tbps will be required in HPC systems and high-end servers. For this, an optical I/O technology that overcomes the limitations of a conventional electrical I/O is attracting much attention. Especially, a large-scale integrated optical I/O chip based on silicon (Si) photonics technology is a very promising candidate for a Tbps-class I/O co-packaged with a CPU. This paper describes the current status of our development of a Si optical transmitter for a Tbps-class optical I/O. In order to place the Tbps-class optical I/O inside a CPU package, we have to develop a low-power-consumption Si optical transmitter that can be operated under temperature-instable circumstances. Therefore, we proposed a novel transmitter scheme that enables stable operation of a highly energy-efficient Si ring modulator without a complex wavelength tuning procedure. With this scheme, we successfully demonstrated wavelength-tuning-free 10 Gbps operation of an integrated Si optical transmitter chip over a temperature range of 25 to 60 C. Additionally, we report on the recent progress in developing a compact, high-performance Si hybrid laser using precise flip-chip bonding technology and a 4-ch integrated Si hybrid laser array for a large-capacity coarse wavelength division multiplexing (CWDM) optical transmitter.

● 田中信介   ● 秋山知之   ● 関口茂昭   ● 森戸 健   

シリコンフォトニクス光送信器技術

Silicon Photonics Optical Transmitter Technology for Tbps-class I/O

Co-packaged with CPU

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を用いて開発したSiハイブリッドレーザーの特性 について述べる。最後に本光送信器の波長多重化 に向けて,異なる波長のSiハイブリッドレーザー を単一チップ上に集積した4チャネルSiハイブリッ ドレーザーアレイの開発成果を紹介する。 高効率

Si

光送信器の波長制御フリー動作 一般にCPU間のインタコネクトを担う高速I/O回 路では,CPUパッケージへの給電や冷却の要請か ら,低消費電力動作が要求される。一方,図-1のよ うにSi集積光I/O素子をCPUパッケージ内に実装す る場合,消費電力とスペースの面からペルチェ素 子を用いてSi集積光I/O素子の温度を安定化するこ とは困難で,その動作温度はCPU負荷により変動 することが予想される。以上から著者らがターゲッ トとする集積光I/O素子では,変動温度環境下にお いて安定した低電力動作を実現する必要があり, この課題を解決する光送信器の構成を検討した。 Si集積光I/O素子に適用する光送信器は単一波長 のCW(Continuous Wave)レーザー光源と,電 気信号のデータ列で信号光を変調する光変調器, 更に複数波長の信号光を単一の伝送路に多重化す る光合波器から構成される。ここで,光送信器の 消費電力は主に光源における電気−光変換効率と 光変調器における変調電力で決まる。レーザー光 源においては,間接遷移半導体であるSiは高効率 な発光機能を持たないため,InPなどの直接遷移半 導体ベースの光素子を組み合わせるアプローチが 有望である。一方で,Siフォトニクスで用いられ る光変調器としてはこれまでマッハツェンダ(MZ: Mach-Zehnder)光変調器とリング光変調器の2方 高効率

Si

光送信器の波長制御フリー動作 ま え が き

HPC(High Performance Computing) シ ス テ ムや高性能サーバに搭載されるハイエンドCPUで は,集積コア数の増大に伴ってCPUパッケージ外 部とのデータ入出力に必要な総バンド幅が年々増 大しており,近い将来にはTbps級のCPU間インタ コネクトが必要になると考えられる。光伝送を用 いた高速I/O技術は伝送時の波形劣化やクロストー クが少ないといった利点を有し,既存の電気I/O技 術におけるサイズ・消費電力・伝送距離などの制 約を打破して,より小型で高性能なCPU間インタ コネクトを実現する技術として大きな期待を集め ている。 この中で,シリコン(Si)フォトニクスは極め てコンパクトかつ高密度な光集積回路を実現可能 な技術として,近年非常に高い注目を集めている。(1) Siフォトニクスでは,大口径のSOI(Silicon On Insulator)基板上に既存の電子回路プロセスで 形成した低損失かつ小型なSi細線光導波路をベー スとして光回路を構成する。したがって,本技術 は従来の化合物半導体やガラス基板上の光回路に 比べて集積度が高く,高機能な光素子を低コスト かつ高歩留りで製造できるポテンシャルを有して いる。更に,光ファイバーに複数波長の信号を多 重化して伝送する波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術を用いて,単一伝送 路(光ファイバー)あたりの伝送容量を100 Gbps 超に高め,より少ない伝送路本数でTbps級のCPU 間光インタコネクトを実現する可能性がある。以 上の利点から,富士通研究所は図

-1

に示すような Siフォトニクスによる集積光I/O素子をCPUパッ ケージ内に搭載したTbps級大容量光インタコネ クトの実現を目指し,その要素技術開発を進めて いる。 本稿では富士通研究所が実施している大容量光 インタコネクト向けSi光送信器の開発状況につい て紹介する。まず初めに著者らが提案する波長制 御フリー光送信器のコンセプトと構造を説明し, 集積送信器の試作チップを用いた温度25 ∼ 60℃に おける10 Gbps波長制御フリー動作を示す。続いて, 波長制御フリー光送信器に適用する光源の小型・ 高性能化に向け,高精度フリップチップ実装技術 ま え が き 図-1 Si集積光I/O素子を用いた大容量CPU間 光インタコネクト Si集積光I/O素子 (総バンド幅>Tbps) CPU & メモリ CPUパッケージ基板 光ファイバー 光フ 光源アレイ 光送信 光変調器 光検出器 光分波器 光合波器

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荷型MZ光変調器は,MZ干渉計の両アームに複数 の同一リング共振器がカスケード接続された構造 を持つ。各リング共振器には円周に沿ってPIN型 の位相シフタが形成されており,ここに電圧を印 加することで光変調を行う。本変調器で用いるリ ング共振器は先述のリング光変調器より共振効果 が低く設計されており,単一リング共振器ではや や低い変調ピーク効率と広めの動作波長幅を有す るが,ピーク波長の製造ばらつきを加味してカス ケード接続することで,変調器全体として高い変 調効率と広い動作波長帯域(∼ 1.0 nm程度)を実 現している。(2)SiハイブリッドレーザーはInPベース の半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifi er)とSiチップ上のSi波長選択ミラーから 成る外部共振器型のレーザー光源である。SOAが 持つおよそ100 nmの広い波長範囲にわたる発光・ 増幅機能を利用し,Si波長選択ミラーが決める単一 の波長においてレーザー発振が生じる。Si波長選 択ミラーはリング共振器フィルターと分布ブラッ グ 反 射 型 (DBR:Distributed Bragg Refl ector) ミラーで構成されており,周期的に存在する複数 のリング共振器ピークの内,DBRミラーの反射波 長帯域で選ばれた一つのピークに相当する光のみ が反射されレーザー発振に至る{図

-3

(a)}。以 式が主に報告されている。図

-2

に示すように,MZ 光変調器は動作波長範囲が非常に広く波長制御が 不要な反面,変調効率が低く消費電力が大きくな りやすい。 一方のリング光変調器は半径わずか数µmのリ ング共振器内に信号光を閉じ込め,共振効果を利 用して光変調を行うため,変調効率が高く低消費 電力化に有利である。しかし,リング光変調器の 動作波長範囲はリング共振ピーク付近のわずか 0.1 nm程度に限られ,かつこの動作波長は温度変 化によってシフトしてしまう。したがってリング 光変調器を安定動作させるためには変調器に波長 調整機構を搭載し,常に変調器の動作波長を光源 の波長に一致させる制御を行う必要があった。し かしこの場合,波長調整機構とその駆動電力によっ て光送信器全体のサイズと消費電力が増大してし まう。 以上で説明した既存の光変調器における変調効 率と波長制御のトレードオフを解消し,波長制御 不要でかつ高効率な光送信器を実現するため,著 者らは図-2の右列に示す波長制御フリー光送信器 を提案した。本光送信器はレーザー光源としてSi ハイブリッドレーザー,光変調器としてリング装 荷型MZ光変調器を組み合わせて用いる。リング装 図-2 Si集積光I/O素子に適用する光送信器の方式 構成 MZ従来構成光変調器)1 (リング光変調器)従来構成2 (波長制御フリー光送信器)提案構成 素子構造 ・ 波長配置 変調効率 低い 高い 比較的高い 動作波長範囲 非常に広い 狭い(0.1 nm) 広い(∼1 nm) 温度トレランス 非常に広い 狭い 広い(数10℃) 波長制御 DFB:Distributed Feedback 不要 必要 不要 DFBレーザー DFB レーザー MZ光変調器 リング 光変調器 波長 変調効率 レーザー出力 リング装荷型 MZ光変調器 Siハイブリッドレーザー 波長制御 波長 波長 ∼1 nm 1リング カスケード リング

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上の機構から,本レーザーにおける発振波長は常 にリング共振器のピーク波長にロックされる。ま た,提案した光送信器では光変調器のリング共振 器とSiハイブリッドレーザーのリング共振器フィ ルターを同一構造にすることで,光源と光変調器 間の波長整合が実現される。更に,各リング共振 器は同一の温度係数を有するため,(3)光送信器の動 作温度が変動した場合でも,レーザー発振波長と 変調器動作波長が同期してシフトし,特別な波長 制御は不要である{図-3(b)}。 上記の波長制御フリー動作のコンセプトを実証 するため,集積光送信器チップを試作し,その 10 Gbps変調動作特性を評価した。光送信器チッ プ内の光配線は幅480 nm,高さ250 nmのリブ型 Si細線光導波路であり,SOI基板の上部Si層をエッ チングにより凸形状に加工した後,上面にSiO2ク ラッドを成膜して形成している{図-3(c)}。集積 光送信器チップの全長は約2 mmである。レーザー 光源と光変調器に配置されたリング共振器は曲率 半径7.2 µmで周回長約50 µmの同一なリング共振 器である。光変調器の各アームにはこのリング共 振器を30 µm間隔で20個直列に配置した。変調器 のリング共振器ではi-Si導波路コアの左右にp+-Si とn+-Siのドーピング領域を形成し,両チャネルを Al電極に接続した。Al電極を介し導波路コア層に 自由キャリアを注入することで,導波路の屈折率 変調が起こり信号光の位相が変化する。今回の実 験では,変調器電極に帯域補正した振幅3.7 Vpp の10 Gbps疑 似 ラ ン ダ ム 信 号(PRBS:Pseudo-Random Binary Sequence)27-1パターンを入力し

た。また本チップの動作実験では別体のInP-SOA チップをレンズを介して光結合し,Siハイブリッ ドレーザーの発振を実現した。温度25 ∼ 60℃にお けるレーザー発振波長と変調器動作波長の関係を 図

-4

に示す。チップ動作温度の上昇に伴って,レー ザー発振波長と変調器動作波長が同期して長波長 側にシフトする様子が確認できる。その結果,各 温度で取得した変調信号のアイパターンではいず 図-3 波長制御フリー光送信器 FPモード 波長 波長 レンズ DBRミラー リング共振器 フィルター SOA Si細線光導波路 変調器リング共振器 (各アーム20個) AI電極 光出力 (a)集積光送信器の構造とレーザー波長選択原理 (b)温度変化時の波長シフト (c)Si細線光導波路の断面構造と製造方法 SOI基板 高屈折率 (コア層) (クラッド層)低屈折率 エッチング・ 製膜プロセス SiO2(BOX層) 480 nm 250 nm SiO2層 Si Si Si Si(SOI層) 波長 変調器動作波長 レーザー 発振波長 高温 低温 温度係数 整合 高温

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ズ整合と導波路位置整合が必要になる。しかし, Si細線光導波路は光信号を非常に小さな導波路コ アに強く閉じ込めるため,導波路端でのスポット サイズは1 µm以下とSOA導波路端のスポットサイ ズ(2 ∼ 3 µm)より小さくなる課題があった。そ こで,Si細線光導波路の光入出力部に3×3 µmの 誘電体(SiON)導波路コアを覆い被せる形で形成 し,Si細線光導波路を伝搬する光パワーをよりス ポットサイズの大きな誘電体導波路の導波モード に遷移させるスポットサイズ変換器(SSC:Spot Size Converter)技術を開発した{図-5(b)}。本 技術の適用により,Si-SOA突合せ結合部における 両者のスポットサイズは約3.0 µmφとほぼ同じ大 きさになり,高い光結合効率が期待できる。続いて, 両導波路間の位置整合を実現するため,高精度フ リップチップ実装技術を開発した。正確なマーカー 画像認識技術と素子構造の最適化により,図-5(c) に示すとおり,水平方向の両導波路間位置ずれに お い て 平 均 値0.10 µm, 分 散 値0.37 µmと 高 精 度 かつ高均一な実装を実現した。以上の技術を適用 して試作したフリップチップ実装型Siハイブリッ ドレーザーの特性を図

-6

に示す。レーザーの全体 長さは数cmから1.6 mmに大きく小型化している。 レーザーの発振しきい値電流は48 mAから9.8 mA に低減し,200 mA駆動時の光出力は15.0 mWと 従来比約5倍の高出力化を達成している。発振し きい値の解析結果から,Si-SOA間の光結合損失 れも動的消光比6 dB以上の良好なアイ開口が確認 できた。以上の結果から,今回提案した高効率Si 光送信器による10 Gbps波長制御フリー動作が実験 的に確認された。(4)

Si

ハイブリッドレーザーの小型・高性能化 前章で説明した高効率Si光送信器の波長制御フ リー 10 Gbps動作実験から,高効率なリング光変 調器を煩雑な波長制御なしに利用する見通しが得 られた。しかし,SOAとSiチップをレンズ結合し た構成は全体のサイズが大きく,CPUパッケージ 内への実装には一層の小型化が必要であった。ま た,光I/Oにおいてより高速な伝送を実現するため には,レーザーには更なる高出力化が望まれる。 そこで,高精度フリップチップ実装技術を利用し たSiハイブリッドレーザーの小型・高性能化に取 り組んだ。 レ ン ズ 結 合 型Siハ イ ブ リ ッ ド レ ー ザ ー で は, SOAチップとSiチップ間の大きな光結合損失によ り性能が大きく制限されていた。そこで,図

-5

(a) に示すようにSOAチップをSiチップに直接フリッ プチップ実装し,両者を高効率に光結合させるこ とで大幅な特性改善が期待できる。また,本構成 ではSOAとSiチップ以外の部品が不要になるため, レーザー全体のサイズも大幅に小型化可能である。 このようなハイブリッド実装形態において高い光 結合効率を得るには,両導波路間のスポットサイ

Si

ハイブリッドレーザーの小型・高性能化 図-4 25 ∼ 60℃における集積光送信器の10 Gbps動作特性 1550 1552 1554 1556 波長(nm) 1558 高温 変調器動作波長 60℃ レーザー発振光 50℃ 30℃ 25℃ 10 Gbps 低温 出 力 光 パ ワ ー 高温 低温

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I/O素子に適用する単一チャネルの光送信器につい て,広い動作温度範囲にわたる低電力動作を実現 する見通しが得られた。本章では,Siフォトニク ス技術を利用した集積光I/O素子が有する大きなメ リットである波長多重伝送実現に向けた取組みを 説明する。 変動温度環境下において安定した波長多重伝送 を実現するには,適切な波長多重方式を選択し, 送受信部に配置される光合分波器において良好な 波長チャネルの多重・分離を実現することが重要 である。具体的な波長多重方式としては,各チャ ネルでアクティブな波長制御を行わず,各光部品 の動作波長ばらつきと温度変化による波長変動を 比較的広い波長チャネル間隔でカバーするCWDM (Coarse WDM)方式が有望と考えられる。この 場合,光送信部には10 nm以上の広く均一な波長 間隔で動作する多チャネルの波長制御フリー光送 信器が必要とされる。そこで,CWDM方式多チャ ネル光送信器に適用する4チャネルSiハイブリッド レーザーアレイを試作し,その動作特性を検証し た。4チャネルSiハイブリッドレーザーアレイの素 子上面図を図

-7

に示す。本素子は4チャネルのSi は4.0 dBから1.6 dBに低減したことが確認された。 なお,20℃から60℃で評価した本レーザーの電力 −光変換効率は4.5 ∼ 7.6%と同種Siハイブリッド レーザーの中で最高レベルの値が得られている。(5) 波長多重化への展開 前章までに説明した開発成果によって,集積光 波長多重化への展開 図-5 フリップチップ実装を適用したSiハイブリッドレーザー Si SiON BOX層 SiO2クラッド SOAチップ (フリップチップ実装) (a)フリップチップ実装構造 (b)Si-SOA突合せ接合部の電子顕微鏡写真 (c)フリップチップ実装における実装位置精度 SiONオーバークラッド型 スポットサイズ変換器 SOA導波路コア Siチップ SOAチップ 3.33 µm N=17 µ=0.10 µm σ=0.37 µm 6 5 4 3 2 1 02 水平方向位置ずれ(µm) 頻 度 −1 0 1 2 フリップチップ 実装型 15.0 mW 3.0 mW 20℃ ×5 48 mA 9.8 mA レンズ結合型 15 10 5 0 0 50 100 SOA電流(mA) 光 出 力 (m W ) 150 200 図-6 フリップチップ実装型Siハイブリッドレーザーの 特性

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波長選択ミラーが集積されたSiチップ上に,4チャ ネルSOAアレイを一括フリップチップ実装した構 成であり,素子サイズは1.8×1.1 mm程度である。 Si細線光導波路とSOAの光結合には前章で説明し た二つの技術を適用しており,4チャネルSOAア レイの一括フリップチップ実装においても全チャ ネルの導波路位置ずれは0.5 µm以下と良好であっ た。4チャネルSi波長選択ミラーでは全チャネルに 同一のリング共振器フィルターを適用し,この透 過特性によって共通のCWDM波長グリッドを形成 した。一方で各チャネルのDBRミラーは回折格子 周期の調整で反射中心波長をシフトさせ,それぞ れが異なる四つのリング共振ピークを選択する設 計とした。以上の波長選択ミラー構成により,リ ング共振器の高精度な寸法調整なしに,各チャネ ルのレーザー発振波長をリング共振器のピーク間 隔(FSR:Free Spectral Range)で決まる均一な 波長間隔で配置することが可能となる。また,リ ング装荷型MZ光変調器と集積する際には,各光変 調器のリング共振器をレーザーアレイのリング共 振器フィルターと同一設計とすることで,各チャ ネルのレーザー発振波長を自動的に変調器の動作 波長に整合させることができる。全4チャネルを 70 mAのSOA電流で同時駆動した際の発振スペク トルを図

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に示す。各チャネルのレーザー発振し きい値は12 ∼ 19 mAと低く,4チャネル一括結合 においても低損失なSi-SOA光結合が実現できてい る。発振スペクトルではリング共振器のFSRに相 当する12±0.5 nmの均一な波長間隔で,4チャネル リング共振器透過スペクトル (4チャネル共通) 波長 チャネル4 チャネル3 チャネル2 チャネル1 DBRミラー 反射スペクトル リング共振器のFSR 4チャネルSOA アレイ DBRミラー リング共振器 チャネル1 チャネル2 チャネル3 チャネル4 1.8 mm 図-7 4チャネルSiハイブリッドレーザーアレイの構造 ch1 10 0 −10 −20 −30 −40 −50 −60 波長(nm) 光 出 力 ( dB m ) 1530 1550 1570 1590 ch2 ch3 ch4 >+5 dBm/チャネル 12±0.5 nm >38 dB 図-8 4チャネルSiハイブリッドレーザーアレイの 発振スペクトル

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研究プロジェクト「超低消費電力型光エレクトロ ニクス実装システム技術開発」により技術研究組 合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)として実 施したものである。

参 考 文 献

(1) A. V. Krishnamoorthy et al.:Computer systems based on silicon photonic interconnects.proc. of IEEE,Vol.97,No.7,p.1337-1361(2009). (2) S. Akiyama et al.:1-Vpp 10-Gb/s operation

of slowlight silicon mach-zehnder modulator in wavelength range of 1 nm.GFP2010,45(2010). (3) S. Jeong et al.:Hybrid laser with Si ring resonator

and SOA for temperature control free operation with ring resonator-based modulator.GFP2011,172(2011). (4) T. Akiyama et al.:Wavelength-Tuning-Free

10-Gb/s Operation of a Silicon-Integrated Resonantly-Enhanced Modulator and Single-Mode Laser. GFP2012,FD3(2012).

(5) S.Tanaka et al.:High-output-power,single-wavelength silicon hybrid laser using precise flip-chip bonding technology.Optics Express,Vol.20, p.28057-28069(2012).

(6) S. Tanaka et al.:Four-wavelength silicon hybrid laser array with ring resonator based mirror for efficient CWDM transmitter.OFC2013,OTh1D.3 (2013).

の安定したレーザー発振が確認された。また,各 チャネルにおいて+5 dBm以上の十分高い光出力 と38 dB以上の高い隣接モード抑圧比(SMSR: Side Mode Suppression Ratio) が得られており, CWDM方式の4波長チャネル光送信器に適用可能 な高い基本性能を確認した。(6) む  す  び 本稿ではHPCシステムや高性能サーバにおける Tbps級大容量光インタコネクトに向けたSiフォト ニクス光送信器の開発状況を述べた。温度変動環 境においてSi光送信器の低電力動作を実現するた め,Siハイブリッドレーザーとリング装荷型MZ 光変調器を組み合わせた波長制御フリー光送信器 の構成を提案し,試作チップの評価を通じて25 ∼ 60℃における10 Gbps波長制御フリー動作を実証 した。また,Siハイブリッドレーザーへのフリッ プチップ実装技術適用による小型・高性能化や CWDM方式波長多重伝送に向けた4チャネルSiハ イブリッドレーザーアレイの高均一・高出力動作 についても素子試作と動作検証を行った。 今後は本光送信器と組み合わせる光受信器や光 合分波器の開発を進めてSi集積光I/O素子を完成さ せるとともに,Si集積光I/O素子をCPUパッケージ 内に搭載する実装技術の開発を行い,Tbps級大容 量光インタコネクトの実現を目指していく予定で ある。 本研究の一部は,経済産業省,NEDO未来開拓 む  す  び 田中信介(たなか しんすけ) 基盤技術研究所フォトニックデバイス 研究部 兼 エンタプライズサーバ事業 本部 兼 技術研究組合光電子融合基盤 技術研究所 所属 現在,シリコンフォトニクス集積光I/O 素子の開発に従事。 関口茂昭(せきぐち しげあき) 基盤技術研究所フォトニックデバイス 研究部 兼 エンタプライズサーバ事業 本部 兼 技術研究組合光電子融合基盤 技術研究所 所属 現在,シリコンフォトニクス集積光I/O 素子の開発に従事。 秋山知之(あきやま ともゆき) 基盤技術研究所フォトニックデバイス 研究部 兼 エンタプライズサーバ事業 本部 兼 技術研究組合光電子融合基盤 技術研究所 所属 現在,シリコンフォトニクス集積光I/O 素子の開発に従事。 著 者 紹 介 森戸 健(もりと けん) 基盤技術研究所フォトニックデバイス 研究部 兼 エンタプライズサーバ事業 本部 兼 技術研究組合光電子融合基盤 技術研究所 所属 現在,シリコンフォトニクス集積光I/O 素子の開発に従事。

参照

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12) 邦訳は、以下の2冊を参照させていただいた。アンドレ・ブルトン『通底器』豊崎光一訳、

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