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最近の10年間、フォトニック結晶ファ イバ(PCF)は導波フォトニック非線形 光学に大きな変革をもたらした。周期 クラッド構造、つまり石英ガラスマトリ ックス内部の空気ホールの規則的分布 からなる構造による光の閉じ込めによっ て、光ファイバの線形と非線形の両方 の性質は、まったく新しい方法による 制御が可能になった。 PCFにはさまざまなファイバ構成や 幾何学形状および導波機構がある(1)。 例えば、高い非線形性をもつPCFのコ アは石英ガラスからなり、そこで光は 周囲の空気ホールとの高い屈折率コン トラストによりしっかりと閉じ込めら れる。この方式のPCFはスーパーコン ティニュアムとして知られる超広帯域 光の現象論的発生に大きく成功してい る。ファイバの高い非線形性のために、 伝搬するポンプパルスのスペクトルは 急速に広がり、紫外線の端部から近赤 外線にまで広がるスーパーコンティニ ュアムが生成される。ファイバの非線形性
高非線形性PCFは超広帯域光の発生 に理想的だが、その非線形性のために、 超高速パルスを歪みなしに伝送するこ とは難しい。スーパーコンティニュア ムの発生過程では、その結果として広 く分布した周波数成分が分散により細 かく分裂し、それぞれのポンプパルスは いくつかのサブパルスに分かれる。こ れは極端な事例だが、同じ問題はすべ てのファイバ(PCFまたは従来のステッ プインデックスファイバ)に発生するフ ァイバの非線形性はバルク媒質の非線 形性と密接に関係するので、光学モー ドは主としてガラス内部を伝搬する。 このモードは比較的狭い領域に閉じ込 められ、モードエネルギーがそれほど 大きくない超短パルスであっても高い ピーク強度に到達し、ファイバからは 強い非線形応答が現われる。その結果、 スペクトル広がりは時間的に大きく歪 み、それに応じたピークパワーの減少 が起こる。 これらの非線形効果は固体コアファ イバの効率を制約し、高パワーフェム ト秒光パルスの伝送が必要になる材料 加工や非線形イメージングをはじめと する多くの応用分野において障害にな る。最近注目されている応用分野の一 つとして、生体内非線形イメージング、 とくにコヒーレント反ストークスラマン 分光法(CARS)にもとづく顕微鏡法が ある。この技術は超高速光パルスを照 射した試料の非線形応答を測定するた め、メートルスケールのフレキシブル内 視鏡の出口からの超短光パルスの出射 が必要になる。内視鏡内のファイバか らのすべての非線形応答は出口のピー クパワーを減少させるため、信号強度 の減少に加えて、試料からでなくファイ バからの新しい周波数成分をもつ付加 雑音の発生を引き起こす。したがって、 このような測定には非線形性が特徴的 な固体コアファイバは適していない。中空コアによる非線形性の低減
この問題は、フォトニック結晶ファイ バを使用し、光のほとんどが中空コア の内部を伝搬するように構造を操作す ることで解決できる。この場合、コアの 材料屈折率はクラッドよりも低いので、 屈折率コントラストに依存しない機構 にもとづく光の閉じ込めが必要になる。 英バース大学(University of Bath)は 1999年に、対象とする波長範囲にわた るフォトニックバンドギャップをもつ PC構造を試作し、中空コアPCF(HC‐ PCF)による光の導波を初めて実証し た(2)。中空コアファイバは空気/ガラ ス界面の多重反射による干渉が生じる ので、バンドギャップ内の波長はクラッ ド内を伝搬しない。その結果、これら の波長はコア内にトラップされ、比較 的広帯域の低損失導波が可能になる。 最新のファイバでは透過波長の中心値 の20%までの帯域幅が得られている。 このことは高強度の超高速光パルス の導波において深い意味をもつ。HC‐ PCFの場合、光学モードの90%以上 は空気中を伝搬するので、固体コア屈 折率導波ファイバに比べると、その非 線形性は何桁も小さくなる。この低い特殊ファイバ
ピーター・モーズリー 超高パワーフェムト秒パルスを歪みなしに伝送する中空フォトニックファイバ の機能は赤外から可視光の領域へと拡張され、ファイバによる緑色パルスの 圧縮がソリトンの形成とピーク出力パワーの増大を可能にしている。超高速可視パルスを伝送する
中空コアファイバ
非線形性のために、ファイバ内を伝搬 する高強度パルスの歪みはかなり小さ くなる。 さらに、バンドギャップ導波HC‐PCF の群速度分散(GVD)は、透過波長窓の ほとんどの領域において異常を示す(短 波長の伝搬速度が長波長よりも速くな る)。この性質を利用すると、ファイバ の長さ方向に伝搬する超短パルスの圧 縮が可能になる。小さな残留非線形性 からはわずかな自己位相変調(SPM)が 誘起され、新しい周波数成分、つまり パルスの先端部での赤色離調と尾部で の青色離調が発生する。一方で、異常 分散の効果により、これらの新しい成 分はパルスの中心方向へ移動する。そ のため、SPMと異常GVDを注意深く並 置することで、超短パルスの圧縮と、時 間ソリトンの形での歪みのほとんどな い伝送が可能になる。
超短パルスの伝搬
米コーネル大学(Cornell University) の研究チームは2003年に、HC‐PCF による初めての高パワーソリトン伝送 を1500nmの波長で行った(3)。続いて すぐTi:サファイア波長にも拡張され、 翌年になると、約9μmのコアサイズと 2μmよりわずかに大きい直径のクラッ ドホールをもつファイバを使用して、 800nmでの伝送が実証された(4)。しか しながら、可視光は適したファイバの 製作が難しいため、ソリトン伝搬の可 視スペクトル領域への拡張は行われな かった。バンドギャップ導波ファイバ によって伝送される中心波長はクラッ ドの周期に比例する。800nm用のHC‐ PCFの製作も難しいが、可視光ではさ らに微細な構造が必要になる。このこ とは現在のPCF製作技術の限界に挑 戦することになる。 一般的に、中空コアファイバはスタ ック・アンド・ドロー法を用いて製作さ れる。まず、顕微鏡のスケールを用い て石英ガラスの数百本の毛細管を積層 する。次に積層した構造を線引装置に 取り付けて、所定の直径をもつファイ バに線引する。積層した構造は加熱に より延伸されるため、クラッド内とコア 内のホールに圧力を加えて、石英ガラ スの表面張力による閉塞を防がなけれLaser Focus World Japan 2011.7
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(a) (b) 図1 この走査電子顕微鏡写真は、540nmパルスの導波と圧縮に用いる中空コアPCFの、へき 開した端面を示している(a)。コア直径は5.6μm。このファイバは製作が難しく、線引中にホー ルサイズが変動し、クラッド内の一部のホールは不規則になる。コア周辺の損傷はファイバをへき 開したときに発生した。ファイバは全体としてロバストだが、個々の支柱は非常に薄い。それにも かかわらず、ファイバへの結合効率は60%以上になった。(資料提供:ブライアン・マンガン氏)。 HC‐PCFを透過した緑色超短パルスの出力を白紙に投影したパターンは、ファイバの遠視野モード の品質が高いことを示している(b)。(資料提供:マイケル・グローガン氏)
ばならない。ホールを開放状態に維持 するために必要となる圧力は、収縮と ともに大きくなる。したがって、短波長 向けの導波構造の製作は難しく、クラッ ドのホールサイズのばらつきは構造の 微細化とともに悪化し、ファイバのクラ ッド変形と導波損失を引き起こす。さ らに、ソリトン伝搬は比較的平坦な GVD曲線が必要になるので、クラッド 構造には高度な規則性が要求される。
可視波長
これらの難題にもかかわらず、バー ス大学は最近、HC‐PCFによる可視波 長の超短パルス伝送とソリトン効果圧 縮を実証した(5)。われわれは5.6μmの コア直径と1.5μm以下のクラッドホール サイズをもつHC‐PCFを製作し、緑色 光の低損失導波(伝送損失は1dB/m以 下)に成功した(図1)。540μmの正チャ ープパルスを注入し、線形パルス圧縮 と、それに続いてさらに圧縮された時間 ソリトンの形成を観測した。長さ1m のファイバを伝搬したパルスの継続時 間は約3分の1に減少し、100fsをわず かに超える値になった。これは200 kW 以上のピークパワーに対応する。注意 深く製作したHC‐PCFの空間モードは 非常に品質が高く、出力パルスは回折 限界に近い集光特性を得ることができ た(図2)。われわれはファイバからの 出力パルスを用いて、銅の表面にミク ロンスケールの形状を彫刻し、優れた 集光特性を実現した。 これはHC‐PCFを用いた可視領域に おける超短パルス圧縮とソリトン伝搬 の初めての実証になる。より短い波長 への挑戦は残された課題だが、その製 作がさらに難しくなることは間違いな い。いずれにしても、この新しい波長 領域はこの最先端技術の魅力をさらに 広げるであろう。2011.7 Laser Focus World Japan
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特殊ファイバ 参考文献 (1).JM .Dudleyand .JR .Taylor ,NaturePhoton ,.3 ,85(2009). (2)R.F .Cregane tal ,.Science ,285 ,1537(1999). (3)D.G .Ouzounove tal ,.Science ,301 ,1702(2003). (4)F .Luane tal ,.Opt .Exp ,.12 ,835(2004). (5)PJ. .Molseye tal ,.Opt .Lett ,.35 ,3589(2010). 著者紹介ピーター・モーズリー(Peter Mosley)は英バース大学(University of Bath)フォトニクス&フォト ニック材料センターの博士課程終了研究者。
e-mail: [email protected]; http://www.bath.ac.uk/physics/groups/cppm.