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超伝導伝送線路の伝送特性の数値解析

2.1  まえがき

超伝導伝送線路は,抵抗損失の低減が可能であるとともに,理論的考察より分 散性が改善されることも大きな利点の一つである.この特長を生かそうとする試 みは低温超伝導の時代に既になされており,我が国でもlKmの同軸線のパルス入 力特性の測定例が報告されている [1]・しかし,こうした長距離大容量の通信線路 への応用は,冷却の困難さにより現在ではほとんど考えられていない[2]. それに 対し,同じ線路といっても,集積回路内の配線であれば,十分可能性がある.

さらに高温超伝導体の発見を契機として,この材料のマイクロ波回路・デバイ スの応用に関する研究が活発に行われ3 高性能なフィルタやアンテナ素子の実現 が現実の物になりつつある.なかでも超伝導フィルタに関しては,すでにフィー ルドテストに入っているとの情報もある.BCS理論を基礎としたMattis‑Bardeen理 論によると,臨界温度の飛躍的な増加は,そのままエネルギーギャップで決まる 動作可能上限周波数の拡大につながるので,超高速・超広帯域信号伝送に高温超 伝導が大きく寄与するものと期待されている.

高周波受動コンポーネントの最も単純なものとして伝送線路がある.現在3伝送 線路としての高温超伝導材料は良好な特性を示すことの多くの報告がある.一方 では,マイクロ波パワーの増大にともない

Q

値が低下する,あるいは,微弱電力 伝送においても,いわゆる臨界電流値以下の伝送にもかかわらず高周波特性の劣 化を示す等の問題も生じている.これは,伝送線路の電流が線路断面にわたって 均一でなく,端部に集中する非線形応答が原因と考えられている.

伝送線路の検討は線路の膜厚を考慮、した場合,電磁界分布が複雑となるため解 析的に求めることは通常困難となる.そのため超伝導伝送線路の詳細な電流分布 の評価は未だ十分とは言えない.

本研究では,まず変分原理に基づいた方法[3]を用いて,コプレーナ形超伝導伝 送線路の伝送パラメータの数値解析を行っている.従来の評価方法は,導体の種 類(常伝導体または超伝導体)により評価方法が異なるため,計算精度に問題が あると思われる.さらに3 この計算結果を用いて,常伝導体伝送線路と超伝導体 伝送線路の場合について,パルス波形の伝送特性をシミュレーションにより求め ている.

伝送線路には,図3.1に示すように代表的な3種類の形式のものがあるが,コプ レーナ形がプロセス的に有利である.コプレーナ形超伝導伝送線路を光変調器の 電位に応用した場合の電気的諸特性については第4章において議論する.

2.2  伝送パラメータの計算

本研究では後述するように超伝導体のマイクロ波測定から正確な磁場侵入長や 表面抵抗を評価する方法を提案する.そのためには超伝導伝送線路の正確な電流 分布やインダクタンスの評価が必要となる.

超伝導薄膜のインダクタンスの解析的表現を得るには,超伝導体ではいndon方 程式, 真空中ではMaxwell方程式を満足し,かっ3 境界条件を満足する電磁界分布 を求める必要があるが,厳密解を得ることは困難である.また3 任意形状の場合 や,線路形状が複雑になると解析による方法は適用が困難となるこのため,数値 解析が必要となる .しかし, London方程式とMaxwell方程式を連立させて直接解く 方法は,計算時間3 収束性などの点で問題が多い.そこで本研究では個々の方程 式を解くかわりに,それと等価である全系のエネルギーに対する変分原理に基づ いた方法[3]を用いて,コプレーナウェーブガイドの電流分布やインダクタンスの 計算を行った.

図2.1に計算手法のフローチャートを示す.

図2.2に示す超伝導伝送線路系について考える.超伝導体では一定の電流を流し ても電流は導体の断面全体を均一には流れず,磁場侵入長に依存する分布となる.

このため,各導体を図2.3に示すように十分小さな方形導体のサブセクションに分 割し,各セクション中では電流は均一に分布していると仮定する.まず,各セク ションの全エネルギー(マグネティックエネルギーとカイネティックエネルギー の和)を電流分布を用いて表す.この全エネルギーの最小化をラグランジェの未 定係数法により行い,サブセクションごとの電流分布を計算した.

カイネティックインダクタンスは,線路の単位長あたりの損失より算出し,こ の結果を用いてマグネティックインダクタンスを求めた.

本研究では、図2.4に示す中心導体と接地導体の

2

導体から成るコプレーナウェ ーブガイドについて解析を行った.実際の解析においては図2.5に示すように,中 心導体部においては電流が急激に変化すると予測される導体端部に,また,グラ ンド部においては中心導体側の端部に小さなサブセクションを配置した.分割サ ブセクション総数は840とした.電流分布の解析式の導出は付録Aに記す.

YBCO薄膜を用いたコプレーナウェーブガイドにおいて,中心導体と接地導体 問に1Vの電圧を印加したときの電流分布の計算結果を,図2.6と図2.7に示す.

図2.6は中心導体l幅w=lμffi,接地導体幅gw150μm,中心導体と接地導体の間 隔s=31μm,膜厚d=0.142μm,磁場侵入長入=0.391μmの#1の場合であり,図2.7 はw=52μm,gw=150μffi, s=27μm, d=0.142μm,λ=0.631μmの#2の場合であ

26‑

全エネルギー(マグネティックエネルギー+カイネ ティックエネルギー)を電流分布を用いて表す。

│ラグランジエの未定係数法

全エネルギーの最小化

マグネティック インタ'クタンス

の計算

図2.1 インダクタンスの計算手法

図2.2 超伝導伝送線路

m

th 

s u b s e c t i o n  

XXm+1  Ym+l 

Ym 

n

th 

s u b s e c t i o n  

• • • • ~悶ト y Y n

 

l

XXn+1 

図2.3 導体分割

‑28‑

中心導体

+  d 

接地導体

図2.4 コプレーナウェーブガイドの断面図

基板

図2.5 コプレーナウェーブガイドのサブセクションの配置

gw  + 5 4   +S~ gw 

・ . ・. .・ー・ー6・ ・ 6・ ・

'

・ ・ 可

MgO 

600 

ω  400 

~ 200 

t∞ p  ,,司司暗唱・盟圃国園田 O

~ ω 

+c 

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