増幅回路調整器
一教材・教具の開発N・.4 一
1. 序 論
技術科電気研究室 水戸市立第三中学校 水戸市立第四中学校 〃 第四中学校 〃 飯富中学校 栃木県立足利養護学校
室中藤田崎田
小谷遠内中増
一比古 正
富久富
實稔夫男男
トランジスタを使用した増幅器を教材として扱っていく場合に,次の点をさけて学習することには いかない。それは増幅の原理,増幅回路,その応用機器である。電子の働きは学習者の五感を通して 学習させねば学習効果はあがらず,また理解を深めることもできない。その意味で,計器を使用した 実酒を二心とした学習が行なわれるのであるが,現実にはあまり行なわれていない。電気の現象を視 覚でとらえることのできるオシロスコープが学校le・一一台しかないことにその理由がある。したがって,
生徒は,教師の師範を遠くから眺めるだけである。この現実から脱するには,生徒が簡単に操作でき て,原理から応用までの学習過程で広く使用できる計器が必要となっている。そこで考案した計器が 本論文の内容である。
2, 設 計
生徒の段階で扱う計器は操作が簡単なものでなければならない。多目的使用の計器ではなく,単目 的使用のもの程良いことは言うまでもない。そこで,本器では扱い易さ,廉価,自作可能などを考慮
して,オシロスコーーフ。を代用できる性能を持つ計器とした。以後この計器をケムニーと呼ぶ。
(1) 構成 図1にブロックダイヤグラムを示す。発振回路は安定な動作を計るためにウィーン ブリッジ回路をトランジスタ2石で構成している。被測定回路は小信号の増幅回路が主であるから,
ケムニーの入カインピーダンスを高くしなければならない。そのために入力段はFETを使用したボ ルテージホロワー回路を使用する。入力インピーダンスは約1MΩである。次段にトランジスタ1石 による増幅回路をつけて,被測定回路からの信号を必要な電圧に増幅する。この信号をブリッジ回路 に入れて直流電圧に変換し,直流メータを動作させる。電源は,省資源,低公害を掲げている電子技 術界から考慮すれば,一般用交流電源を使用した
噺である・しかしケムニーの使用状況や計器の
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目的を考えて,乾電池を電源として使用する。乾 v。tt。g,
ロじ が 賑C塞 ・Cit・… αmp ・・nv鰍・・ er 電池電源でも,普通の使い方をすれば,2年間は
使用できる。 [遍刎
(2) 回路 発振回路の周波数はf=1/2
πRCで決まる。この回路ではC=O.02μF, 図 1 −67一
R=:10KΩであるから, f=796Hzとなるが,10KΩの半固定抵抗器を調整すれば1KHz に発振周波数を合わせられる。20KΩと250KΩの半固定抵抗器はトランジスタのバイアスを決 めるための抵抗器であり,製作が終了してから調整する。発振出力電圧はかなり高いから,抵抗器で 分圧して電圧をさげる。ケムニーでは約100mVMAXにしてある。ボルテージホロワーから次段 へ接続するには,ソースからとり出した方が良いが,すこしでも利得を得るためにドレインから接続 する。次段は1石の電圧増幅回路で,ここから出た信号電圧はダイオードをブリッジに組んだ回路を 通って直流に変換され,200μAの感度を持つVUを駆動する。 VUを最大に振らせるのに必要な 入力信号電圧は約10mVである。電源は乾電池であるから,寿命を長くさせるためにパイmットラ
ンプを付ける。このランプは電力消費の少ない発光ダイオートを使用する。以上のことを総合的にま とめた回路を図2に示す。
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3. 製 作
製作にあたってまず考えなければならないことは,使い易さと作り易さである。したがってパネル デザインに充分な配慮をなすべきである。使用する部品の数は少ないから,ケース内の配置にはあま
り気を配る必要はない。表面に出る部品としては,メータ,パイロットランプ,入・出力端子,入・
出力調整ツマミである。メータは被測定物を調整する者が見られればよいのであるが,グループ学習 では他の者も観測できるよう配置する必要がある。パイvットランプは電源スイッチを併ねた出力調 整ツマミのそばに配置する。入・出力端子は被測定物との接がりとメータや入・出力調整ツマミの邪 魔にならない所へ配置する。入力調整ツマミはメータと直接関係するので,一番扱い易い所へ配置す
る。出力調整ツマミは入力調整ツマミに付随して配置する。以上のことを考慮して試作機器を写真1,
2に示す。配線はプリント配線として,図3に部品配置図,図4にフ。リント配線原図を原寸で示す。
ケース加工と基板が完成したならば写真 に示すようにそれぞれをケースに配置して配線する。一応
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配線が完了したならば,導通試験を行なう。乾電池を接ぎ,電源スイッチを入れるとパイロットラン
プ。ェ点灯する。測定器を接続して,発振周波数,出力信号竃圧を調整する。発振回数は発振すれば良 く,メータ回路は入力端子に信号を入れて,その信号にメータが振れ,調整ツマミでメータの振れを 加減できれば良い。このようにしてできあがったケムニーを写真1に示す。
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図3 部品配置図
図4 プリント配線原図
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4. 結 論
汎用部品を使用してしかも簡単に製作できるものという条件があるために,総合的構成が犠牲にな っていることは仕方がない。
(1) 特性
発振周波数 正弦波 1KHz
出力信号電圧 0〜100mV (無負荷の場合)
周波数変動率 1%以内(電源電圧一定の場合)
入力信号電圧 10mV(メータフルスケールの場合)
使用測定器
H:・Pユニバーサルカウンタ5246L,タケダ理研マルチメーータTR6855,YI{Pオシロス コープ183A,メトロニクス定電圧電源装置523A
(2) 使用法
教具は生徒にとって使用頻度の高いものが良いことは言うまでもない。そこでこのケムニーが,生 徒の学習の中でどこに使用できるかを考えてみたい。
単元の導入段階における増幅器のしくみのところで,まず信号源として使用できる。電源回路の脈 流はテスタでは測定不可能であるから,ケムニーを使用して,脈流があることを理解させる。 さらに ケムニーの主使用目的に通った,電圧増幅・電力増幅回路のしくみの所で本領を発揮し,バイアス回 路の働き,バイアス調整の原理回路の理解を助けよう。個路を組み立てた後の点検と調整にも使用で きる。このように,学習過程の中での使用頻度は高い6生徒が個々に使用できるだけの台数を整える には,金のかかる教具となるが,グルーフ。に一台の台数ならば,普通の中学校では可能な数であろう。
実際にどのようにして使用するかを実例をあげて述べる。写真3はバイアス回路の調整をしている 写真である。入・出力端子にフ。ラグを差し,コードの先を相互に接いで,発振器からの信号を入力に 入れる。電源スイッチを入れて入力調整ツマミを右に一杯にまわす。出力調整ツマミを序々に右へま わし,メータの指針が2を指す所で止める。,.次に入力調整ツマミを左一杯に戻してから,被測定物の 入力側に出力端子からのコードを接ぎ,出力側に入力端子からのコードを接ぐ。次の段階として,被 測定物の電源を入れて,調整に入る。ケムニーの指針が中央を指すように,入力調整ツマミをまわす。
被測定回路のバイアス調整用の抵抗器を種々の値に変えて,メータの指示が最大を指すようにする。
写 3
一70 一一
このとき,メータが振れすぎたり,振れが少ない時は,入力調整ツマミを適当な位置にまわす。「メ ータの振れが最大を示す所の被測定物のバイアス抵抗の値」を持つ固定抵抗器を回路に接ぎ替えれば,
被測定回路は最良に調整されたことになる。
申学生の段階で,電気機器類に興味を持つ者は多くいるが,現実には装作することも見ることも少 ない環境にある。こう云った事から,電気というものから遠ざかっていく生徒が多い。電気の学習は,
電気を身近なものとして,日常生活の中で機械類を使用したり,製作したりする体験を多く積む必要 がある。このような学習過程を通してこそ,未来志向型の技術である電気技術に対して,理解し,深 め,発展する能力を養うことができよう。
(本論文は昭和51年度日本産業技術教育学会で発表したものである。)