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超短光パルスを用いた高速光伝送技術の現状と将来展望

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(1)

招待論文

超短光パルスを用いた高速光伝送技術の現状と将来展望

中沢

正隆

a)

廣岡

俊彦

Recent Progress and Future Prospects for High-Speed Optical Transmission

Technology Using an Ultrashort Optical Pulse Train

Masataka NAKAZAWA

†a)

and Toshihiko HIROOKA

あらまし 本論文はピコ∼フェムト秒領域(10 × 10−12100 × 10−15秒)の超短光パルスを用いた高速光伝 送技術について,その現状と将来展望を報告する.まず,超高速光伝送の全体像についてのキーテクノロジーを 概観し,その後送信部,光ファイバ伝送路,受光部について詳細を述べる.送信部では超高速光源としてのモー ド同期レーザ・パルス圧縮・波形整形技術,伝送用ファイバ部ではフェムト秒パルスを伝搬させる分散マネージ ファイバ伝送路・高次分散補償技術,また受光部ではテラビットOTDM 信号の多重分離技術について中心に述べ る.最後に時間領域の光フーリエ変換を用いた無ひずみ伝送技術並びに光の位相を利用したDPSK や DQPSK などの高速・長距離化技術について報告する. キーワード フェムト秒パルス,超高速OTDM 伝送,モード同期レーザ,EDFA,高次分散補償

1.

ま え が き

総務省の統計によれば,我が国のブロードバンド通

信の加入者は

2005

9

月末で

2143

万件に達し,今後

更に伸びていくものと予測されている.中でも

FTTH

Fiber To The Home

)は急激な伸びを示して

398

加入となり,

2004

年末からは

FTTH

の純増数が

DSL

Digital Subscriber Line

)の純増数を上回って,ます

ます高速化が進んでいる.また,

9000

万加入を有する

携帯電話にはディジタルカメラやテレビ機能が装備さ

れ,インターネットを通じて各種端末から音声,デー

タ,画像など多彩な情報の交換を行っている.このよ

うに大量のデータを素早く伝送・処理するためには高

速な光通信技術と光信号処理技術が重要であり,通信

ネットワークを支えるキーテクノロジーになっている.

1

は光産業協会(

OITDA

)において

2010

年を

予測した情報ネットワークの階層図である

[1]

.アクセ

ス系(

User Access Link Network

)では

150 Mbit/s

FTTH

や 高 速 モ バ イ ル が 中 心 と な り,地 域 網

東北大学電気通信研究所,仙台市

Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University 2–1–1 Katahira, Aoba-ku, Sendai-shi, 980–8577 Japan

a) E-mail: [email protected]

では

OADM

Optical Add Drop Multiplexer

)で

150 Mbit/s

を束ねた

10

40 Gbit/s

の波長多重リン

グネットワークが重要な役割を果たしている.更に

国際通信網(

Integrated Global Network

)では,高

速の

TDM

Time Division Multiplexing

)と

WDM

Wavelength Division Multiplexing

)を併用した長

距離ネットワークが張りめぐらされている.このよ

うな状況下では,国内においてもテラビット級の高速

図 1 光産業協会(OITDA)の光ロードマップ委員会にお いて 2010 年を予測した情報ネットワークの階層図 Fig. 1 Information network model for the 2010s predicted by the optoelectronic technology roadmap committee at OITDA.

(2)

図 2 超高速光ネットワークの実現のための各種要素技 術.大容量高速ノード(Ultrahigh capacity/high speed node),超高速トランスポート(Ultrafast photonic transport) ,及びネットワーキング(Net-working)に分けてその重要技術を示している Fig. 2 Important technology required for

ultrahigh-speed optical networks. Key technologies are ultrahigh capacity/high speed node, ultrafast photonic transport, and networking.

大容量光通信基幹網が不可欠である

[2]

[4]

.ネット

ワークのノードにおける信号処理を考えると,

1

チャ

ネル当りのスピードを高速化したシステムの方が波長

制御は容易になり,電力消費も減る.また,チャネル

数を

N

とすると,

WDM

N

倍のコストがかかる

のに対して,

TDM

方式では

N

のコスト増に抑え

られることも経験的に知られている.最近では光

制御による高速化・低消費電力化も期待されており,

光通信の高速化はますますその重要性を増している.

2

に超高速光ネットワークの実現のために重要な各

種の要素・基盤技術を大容量高速ノード(

Ultrahigh

capacity/high speed node

),超高速トランスポート

Ultrafast photonic transport

,及びネットワーキン

グ(

Networking

)に分けて示す.これらの技術が成熟

するにつれ,光の特徴を生かした高速ネットワークが

実現するもの思われる.

光通信では昔からの

のろし通信

を高速にしたも

のが主流であり,煙の長さ(数

m

?)に相当する光デー

タの

1

ビットは

40 Gbit/s

の場合

10 ps

(ファイバ中

で長さ

2 mm

)程度にまで細くなってきている.もし

ピコ秒∼フェムト秒の高速な超短パルス列(長さ数十

ミクロン)を容易に発生させることができれば,これ

らを高速に変調し,時間的にも多重化することにより,

未曾有の超高速通信が可能となる.このようなシステ

ムを安価に実現するためには様々な基礎開発が必要で

あり時間のかかる話である.しかし既に

40 Gbit/s

ステムが実用化されている現状では次のターゲットは

160 Gbit/s

であろう.我が国は世界に先駆けフェムト

秒テクノロジー研究機構(

FESTA

Femtosecond

Sci-ence and Technology Association

)の研究プロジェ

クトにおいて高速のデバイス技術を中心にこの分野を

けん引してきた.海外特に

EU

でもここ数年研究が

活発化し始め,

UPC

Ultrafast Photonics

Collabo-ration

FASHION

Ultra-Fast Switching in

High-Speed OTDM Networks

),

TOPRATE

Terabit/s

Optical Transmission Systems based on Ultrahigh

Channel Bitrate

COBRA

Communication

Tech-nology Basic Research and Applications

)といった

プロジェクトが活動し,

160 Gbit/s

以上の伝送技術が

着実に進展しつつある.更には

160 Gbit/s

伝送の現

場実験もヨーロッパ・日本から報告されるに至ってい

る.本論文ではこれらを含めて超短パルスを用いた高

速光通信技術の現状と将来像について述べる.

2.

では

超高速光パルス伝送のためのキーテクノロジーを概観

し,

3.

では送信部,伝搬,受信部について詳細を述べ

る.

4.

及び

5.

では,それぞれ時間領域の光フーリエ

変換を用いた無ひずみ伝送技術並びに光の位相を利用

した高速・長距離化技術について報告する.

2.

超高速光パルス伝送のためのキーテク

ノロジー

光 時 分 割 多 重(

OTDM

Optical Time Division

Multiplexing

)は超短光パルス列を光領域で時間多

重する技術であり,これにより電子回路の動作限界

を超えた伝送速度を実現することができる.

TDM

あるためシステムの同期が容易であり,従来の伝送方

式との親和性も高い.システムの制御性向上の観点

から見た超高速

OTDM

あるいは

ETDM

ETDM

Electrical Time Division Multiplexing

)伝送の重要

性を図

3

に示す.比較的低い伝送速度で波長多重の数

を増やすと全伝送容量は増えるものの各データ間の

同期はとれておらず,その分ノードにおける波長制御

が複雑になる.しかし,

1

チャネル当りの伝送速度を

上げてチャネル数を減らすことができれば,システム

の制御性を著しく向上させることができる.最近で

100 Gbit/s

近い高速

ETDM

伝送が報告されてお

[5]

2010

年ごろには

160 Gbit/s

ETDM

システ

ムが報告される可能性もある.

この高速化とともにシステムの伝送距離を延ばした

(3)

図 3 システムの制御性向上の観点から見た超高速 OTDM・ ETDM伝送の重要性

Fig. 3 Importance of ultrahigh-speed OTDM and ETDM transmission as regards the improve-ment of system controllability.

図 4 光伝送における各種変調フォーマットの分類と多

様化

Fig. 4 Optical transmission modulation formats and their wide variety.

り,マージンを稼ぐために変調のフォーマットも多様

化してきている

[6]

.その様子を図

4

に示す.まず第

1

に高速

TDM

システムでは長距離伝送の性能の良さか

NRZ

より

RZ

信号を使うようになり,更には個々

のパルスの位相をチャープさせたり(

C-RZ

Chirped-RZ

[7], [8]

,反転させる(

CS-RZ

Carrier Suppresed

RZ

[9]

技術が生まれた.これらは分散マネージソリト

ンの定常解を伝送信号として用いたり,位相の正負を

利用して波形ひずみをキャンセルしたり,周波数利用

効率を向上させようとするもので,高速・長距離伝送

に向いている.周波数利用効率の向上を目指した変調

フォーマットとしては,ほかにも

VSB

Vestigial Side

Band

[10]

やデュオバイナリー(

DB

Duobinary

)方

[11]

が提案されている.

VSB

は変調信号の側波帯

の一部を削除し帯域の狭さく化を図るものであり,

DB

は光の強度変調と位相変調を併用し

1

0

−1

3

に符号化するものである.

CS-RZ

DB

はビットごと

図 5 各種伝送方式による 160 Gbit/s 伝送実験の変遷 (OOK から DPSK へ)

Fig. 5 Evolution of 160 Gbit/s transmission experi-ments in various transmission schemes (from OOK to DPSK).

に位相を反転させる変調(

Phase-alternating Binary

であるが,位相は帯域の狭さく化に利用され情報伝送

には用いていない.それに対し最近では

RZ

信号に差

動位相変調を施した

RZ-DPSK

RZ-DQPSK

方式

が注目を集めている.

5

にはこのように多様化したフォーマットを用

いて

160 Gbit/s

を中心とする超高速伝送実験がど

のように移り変わっているかを示す.図より最近で

OOK

On-Off-Keying

)から

DPSK

Differential

Phase-Shift-Keying

)に移り,周波数の利用効率やシ

ステムのマージンを大きくする努力が払われている様

子が分かる.なお同図は単一偏波を用いた伝送(

SP

Single-Polarization

)と偏波多重を用いた伝送(

AP

Alternating-Polarization

)に分けて示している.偏

波多重は隣接するビットの偏波を直交させるものであ

り,パルスのすそがビットスロットの外に及んでいて

も隣のパルスとは重ならないため,同じ伝送速度でも

幅の太いパルスを用いて伝送が可能である.

ここで超高速パルス伝送の送信部,伝搬,受信部

における技術的な重要項目をそれぞれ

(1)

(2)

(3)

として図

6

に示す.まず

(1)

送信部としては,高速

RZ

伝送を行うためにピコ∼フェムト秒領域でのジッ

タの少ない光パルス光源が重要である.このために

は,モード同期レーザ(

Mode-locked Lasers

)あるい

EA

Electro Absorption

)変調器を用いるのが一

般的である

[12]

OTDM

伝送は,フェムト∼サブピコ

秒パルスを

1

ビットとする

10

40 Gbit/s

の信号を時

(4)

図 6 超高速パルス伝送の送信部,伝搬,受信部のキーテ クノロジー (1) 送信部 (2) ファイバ伝送部 (3) 受 信部

Fig. 6 Key technologies for transmitters, propaga-tion, and receivers in ultrahigh-speed pulse transmission. (1) Transmitter, (2) Transmis-sion fiber, (3) Receiver

間領域で時分割多重化するのが主流であり,光源とし

ては

10

40 GHz

のフェムト秒パルス光源が必要とな

る.しかし現状ではレーザから直接

500

フェムト秒以

下の

10

40 GHz

のパルスを発生させることは難しい.

そこで光パルスの圧縮と波形整形が重要な技術となる.

通常,数ピコのパルスをフェムト秒に圧縮するには,分

散減少ファイバ

DDF

Dispersion Decreasing Fiber

中でのソリトンの断熱圧縮効果が用いられる

[13]

.こ

のとき,分散減少が一様でない場合,あるいは入射す

るパルスがソリトンパルスからずれている場合には,

非断熱的な圧縮が起こり,パルスの裾野に波形ひず

みを生じてしまう.これを除去するために,波形整形

用の

DI-NOLM

Dispersion-Imbalanced Nonlinear

Optical Loop Mirror

)が開発されている

[14]

次に

(2)

伝送路として重要なのは,分散補償を施

した光ファイバ伝送路(

Dispersion-managed Optical

Fiber Transmission Line

)である.例えば,

400 fs

ガウスパルスのスペクトル幅はおおよそ

9 nm

と広

いため,従来無視できていたファイバの高次分散が

問題となってくる.この問題を抑制できるフェムト

秒パルス伝送用零分散

分散フラットファイバ伝送路

は,

SMF

Single-mode Fiber

),

DSF

Dispersion-shifted Fiber

)と

RDF

Reverse-dispersion Fiber

の組合せにより実現している.この

RDF

DSCF

Dispersion Slope Compensation Fiber

)と比較し

て偏波分散(

PMD

Polarization Mode Dispersion

),

損失,非線形性

(n

2

/A

eff

)

が小さいという長所を有

している

[15]

.特に,ファイバのわずかな複屈折に基

づく偏波分散には伝送路全体を通して特に注意を払う

必要がある

[16]

.更にこのような超短パルスを伝送す

るには広帯域で分散の少ない

EDFA

Erbium-doped

Fiber Amplifier

)が必要となる.

最後に

(3)

受信部として重要なのは,伝送後のデー

タの超高速光多重分離(

Ultrafast Optical

Demulti-plexing

)である.数百

Gbit/s

の光伝送信号を直接受

信できる光デバイスや電子デバイスは現状では存在

しない.そこで光領域で多重分離を行うわけである

が,それには光

AND

回路を用いて高速データから所

望の信号を打ち抜く方法がよく使われる.その技術

としては

NOLM [17]

4

光波混合

[18]

,あるいは半

導体の対称マッハツェンダ干渉計(

SMZ

Symmet-ric Mach-Zehnder Interferometer

[19]

が用いられて

いる.

3.

フェムト秒パルスを用いたテラビット

/

OTDM

伝送

3. 1

超高速

OTDM

光源とソリトン効果による

GHz

帯フェムト秒パルス圧縮

本節では,今までに報告されているフェムト秒パル

スを用いた超高速伝送について,

1.28 Tbit/s OTDM

伝送を例にとりそのポイントを説明する.その実験系

を図

7 (a)

(b)

に示す

[20]

(a)

は送信及びファイバ

線路部,

(b)

は多重分離・受信部を示す.まず

(a)

にお

いて,波長

1.55 µm

再生モード同期ファイバレーザを

用いてパルス幅

3 ps

,繰返し

10 GHz

の光パルス列を

発生させる.このレーザはソリトンレーザとして動作

しており,そのパルスは

SN

比の非常に高い

sech

型を

したトランスフォームリミット(

Transform-limited

な波形である

[21]

.このパルス列を

LiNbO

3

強度変

調器を用いて

10 Gbit/s

で変調する.その後

EDFA

により信号光をピーク強度

1 W

程度まで増幅し,分

散フラット

分散減少ファイバ(

DF-DDF

)に入射す

[13]

.この分散減少ファイバの入射部分での分散は約

10 ps/km/nm

,出射部分においては約

0.1 ps/km/nm

となるように設計されている.このファイバにおける

ソリトンの断熱圧縮効果により,信号光のパルス幅を

(5)

(a)

(b)

図 7 フェムト秒パルスを用いた 1.28 Tbit/s OTDM 伝送の実験系 [20].(a) は送信・伝 送部,(b) は多重分離を中心とした受信部を示す

Fig. 7 Experimental setup for 1.28 Tbit/s OTDM transmission using femtosec-ond pulses. (a) Transmitter and transmission line, (b) Receiver includ-ing an optical demultiplexer [20]. PC: Polarization controler, BPF: Band-pass filter, DF-DDF: Dispersion-flattened dispersion-decreasing fiber, DI-NOLM: Dispersion-imbalanced nonlinear optical loop mirror,DCF: Dis-persion compensation fiber, PD: Phtoto-detector, ATT: Attenuator, ED: Error detector

200 fs

以下まで狭くさせることができる.

しかし,

GHz

帯パルス圧縮においては入力パルスの

繰返しが増すとモード間隔が広くなり,パルス幅(帯

域)が一定の場合には

1

本当りの縦モードのパワーが

増す.このときレーザの縦モードの線幅が数

kHz

狭い場合には誘導ブリルアン散乱(

SBS

Stimulated

Brillouin Scattering

)が誘起され,パルス圧縮が不安

定になる.このため

DDF

による安定なソリトン圧縮

のためには,

SBS

発生のしきい値と基本ソリトンパル

スの繰返し周波数の関係に十分注意を払わなければな

らない.

ここで

SBS

と繰返し周波数との関係について述べ

[22]

.基本ソリトンの生成に必要な平均パワーは,

以下のように与えられる.

P

aveN=1

= 0.776

λ

3

π

2

cn

2

|D|

∆τ

BA

eff

(1)

D

は分散値,

λ

は波長,

n

2

は非線形屈折率,

∆τ

はパ

ルス幅,

B

は繰返し周波数,

A

eff

は実効コア断面積

である.簡単のためにこの平均パワーが光スペクトル

の半値全幅

∆ν

の中の

M (= ∆ν/B)

本のモードに均

等に分配されていると仮定すると,縦モード

1

本当り

のパワー

P

0

は以下のように

|D(z)|B

2

に比例する.

P

0

=

P

aveN=1

M

= 2.463

λ

3

A

eff

π

2

cn

2

|D| B

2

(2)

この

P

0

SBS

のしきい値を超えると入射した光のパ

ワーが後方に散乱され,圧縮が不安定になる.一方,

SBS

のしきい値を与える条件は,

Smith

によって求め

られており,以下のように与えられる

[23]

g

B

P

0

(0)L

eff

/A

eff

= 21

(3)

ここで

g

B

SBS

の利得(

5

× 10

−11

m/W

L

eff

有効相互作用長である.式

(2)

より

P

0

B

2

に比例

(6)

図 8 DDFによる光ソリトンパルス圧縮における SBS 発 生のしきい値とパルスの繰返し周波数の関係 [22] Fig. 8 Relationship between SBS threshold power

and repetition rate in soliton pulse compres-sion using DDF [22].

しパルス幅によらないことから,繰返し周波数の増大

に伴い

SBS

の影響が大きくなることが分かる.この

様子を図

8

に示す.この図では

SBS

が発生する繰返

し周波数は約

25 GHz

であり,

10 GHz

のパルス圧縮

は安定であるが,

40 GHz

では不安定になることを示

している.この

SBS

の効果を低減するには縦モード

線幅を太くするとよいことが知られている.そこで縦

モード線幅の比較的太いピコ秒モード同期半導体レー

ザを用いて実現した繰返し

40 GHz-100 fs

パルス圧縮

の結果を図

9

に示す

[22]

(a)

は入出力光波形の自己

相関波形であり,

(b)

は圧縮後のパルススペクトルで

ある.

(a)

より

40 GHz-100 fs

の安定なパルス圧縮が

実現していることが分かる.この場合平均入力パワー

216 mW

であり,ソリトンの振幅

N

を計算すると

0.93

となり,理論どおりほぼ

N = 1

の基本ソリト

ンになっている.

しかし理想的なパルス圧縮からずれるとパルスの

すそ野の部分にひずみを発生することがある.そこ

で圧縮後に見られるパルスの不必要なすそと光スペ

クトル上のスパイクを除去するために,信号光を

DI-NOLM [13]

に入射させ,波形整形を行うことが重要に

なる.その後,この光回路からの

10 Gbit/s

出力信号

をプレーナ光波回路(

PLC

)を用いて

1.28 Tbit/s

で多重化した後,伝送ファイバへ入射する.多重化に関

しては,

10 Gbit/s

の信号を

PLC

を用いて

64

多重し,

更に偏波多重により図

7 (a)

に示すように

1.28 Tbit/s

のデータとして分散マネージ伝送路に送り出している.

(a) Input and output autocorrelation waveforms

(b) Output spectrum (TBP=0.33)

図 9 縦モード線幅の比較的太いピコ秒モード同期半導体

レーザを用いて実現した繰返し 40 GHz-100 fs パル ス圧縮.(a) は入出力光波形の自己相関波形であり, (b)は圧縮後のパルススペクトルである [22] Fig. 9 40 GHz-100 fs pulse compression using a

pi-cosecond mode-locked laser diode with a broad longitudinal mode linewidth. (a) Input and output autocorrelation waveforms. (b) Pulse spectrum after compression [22].

3. 2

フェムト秒パルス用分散マネージ伝送路とプ

リチャープによる高次分散補償

7 (a)

の伝送路は

SMF

DSF

RDF

からなり,長

さはそれぞれ

39.7 km

4.6 km

25.1 km

である.全

長は

70 km

,伝送路の損失は

17.6 dB

である.この伝

送路では

RDF

の分散スロープが

SMF

のそれと逆符

号をもっているため三次分散がほぼ相殺されている.

残留するファイバの三次分散は

−0.0023 ps/nm

2

であ

り,

EDFA

を含めた全体の三次分散も

+0.015 ps/nm

2

と小さいものであった.しかし,通信に使うフェムト

秒パルスの帯域は

10 nm

近くと広いので,上記の

3

類のファイバを用いても四次分散の大きさが問題にな

る.特にシリカファイバでは材料の性質上四次分散の

符号はすべて負であり,ファイバの違いによって四次

(7)

分散を相殺させることができない.この伝送路におけ

る残留四次分散は

−0.028 ps/nm

3

であった.

そこでそれを補償するために,図

7 (a)

では媒質を

通過することによって生じる高次チャープを相殺する

ため,位相変調(

Pre-chirp

)をあらかじめ入力端で印

加する方法を採用している

[24]

.三次分散の補償には

sine

の位相変調を,また四次の補償には

cosine

の位

相変調を用い,その変調周波数は

OTDM

のクロック

(この場合

10 GHz

)になるように設定している

[25]

この原理は,通常周波数の関数として表される分散特

性を,まず一度線形チャープ媒質を通過させることに

より,時間の関数として表現する.次にその状態で伝

送路の分散特性の分だけあらかじめ逆位相で位相変調

LN

)する.このパルスを伝送路に通過させると,通

過後には全体の分散を補償することができる.この方

法では入力端であらかじめシステム全体の高次分散を

見込んで

LN

でプリチャープを与えるので,伝送路へ

の入射信号はきれいなフェムト秒パルス列ではないこ

とに注意したい.この方法では伝搬途中でパルスは

ns

まで広がり隣接するデータパルスと重なるが,線形伝

送なので問題はない.またこの伝送路の

PMD

は約

0.05 ps/

km

であった.

3. 3

高速

OTDM

信号の光多重分離

伝送後の

1.28 Tbit/s

OTDM

信号は速すぎて直

接受光できないので,光領域での多重分離が必要と

なる.図

7 (b)

では,伝送後の

1.28 Tbit/s

信号光は

分散フラットファイバを用いた超高速

NOLM

により

10 Gbit/s

へ多重分離している

[17]

NOLM

では,信

号光(

1556 nm

)に波長の異なる制御光(

1533 nm

)を

作用させ,この

2

波の間の相互位相変調(

Cross Phase

Modulation

)を利用している

[26]

.打抜き用の制御光

パルスは,

PLL

Phase-Locked Loop

)動作する波長

1533 nm

のモード同期ファイバレーザにより発生させ

ている

[27]

.制御光パルスは低ジッタであることが重

要であるが,上記のレーザパルスのジッタは

100 fs

下と非常に小さい

[28]

数百

Gbit/s

Tbit/s

TDM

信号光の多重分離を

実現するためには,信号光と制御光の間のウォークオ

フ(

Walk-off

)が数百フェムト秒以下で,かつ信号光

π

程度の位相変化を起こすファイバ長が必要であ

る.図

7 (b)

の多重分離

NOLM

では,短尺の分散フ

ラットファイバをウォークオフが正と負で交互に入れ

換わるように接続することで,相互作用を

1

タイムス

ロット内に抑え,かつ

NOLM

ファイバ全体での信号

光と制御光の間のウォークオフを数百フェムト秒以下

に抑制している

[17]

.この光スイッチの速度は約

1 ps

である.ここで多重分離用のクロック信号は,図

7 (a)

上部に示すように

OTDM

信号のもととなる

10 GHz

であり,伝送信号波長とは異なる

1542 nm

において入

力端で正弦波変調し,ファイバ伝送路中を直接送って

いる.この実験では偏波分離した

640 Gbit/s

信号か

らの

10 GHz

クロック抽出技術は実現していなかった

が,最近では

320 Gb/s

データからの

10 GHz

クロッ

ク抽出が報告されている

[29]

3. 4

伝 送 結 果

7 (b)

に示すように,伝送後の光信号はまず偏波

分離回路により二つの

640 Gbit/s

の信号に変換され

る.その後,先に述べた超高速

NOLM

により

128

10 Gbit/s

信号に変換される.本来はこの高速多重分

離回路が

128

台必要であるが,この実験では多重分離

のタイミングを

1.56 ps

ずつずらして,

1

台で

128

10 Gbit/s

の信号を測定している.図

10

に信号光の伝

送前後の波形を示す.図

10 (a)

(b)

はそれぞれ,伝送

(a) (b) (c) (d) 図 10 1.28 Tbit/s-70 km伝送の信号光波形 [20].(a): 伝 送 前( 位 相 変 調 印 加 直 後 ),(b):伝 送 直 後 の 1.28 Tbit/s 信 号 波 形 (c) と (d):伝 送 後 の 1.28 Tbit/s信号を偏波分離した後の 640 Gbit/s 信号光

Fig. 10 1.28 Tbit/s data patterns after 70 km trans-mission [20]. (a) Input waveform (after phase modulation), (b) Transmitted wave-form, (c) and (d) Polarization-demultiplexed 640 Gbit/s signals.

(8)

図 11 時間領域光フーリエ変換による無ひずみパルス伝送の原理.光フーリエ変換(OFT) は受信端で行う

Fig. 11 Principle of distortion-free pulse transmission using time-domain optical Fourier transformation (OFT). OFT is carried out at the receiver end.

前の位相変調印加後と,

70 km

伝送直後の

1.28 Tbit/s

信号光の波形である.伝送前の信号は

3.2

で述べたよ

うに,伝送によって生じるであろう高次分散ひずみを

あらかじめ見込んでいるため,あたかも雑音のように

見える.しかし

(b)

から分かるように,伝送後には大

変きれいで

SN

比の高い波形が得られていることが分

かる.図

10 (c)

(d)

は伝送後の

1.28 Tbit/s

信号光を

偏波分離した

640 Gbit/s

信号光である.伝送後のパ

ルス幅は

400 fs

であり,伝送に伴うパルス広がりはわ

ずか

20 fs

であった.誤り率を測定した結果,受光強度

−21 dBm

以上においてすべてのチャネルで

1

× 10

−9

以下の誤り率を得ている.このことから,フェムト秒

パルスを用いたテラビット

/

OTDM

伝送が原理的に

可能であることが分かる.それゆえ,この超高速技術

160

640 Gbit/s

の伝送に実用化を踏まえてフィー

ドバックすることにより,実用性の高い超高速システ

ムが実現できるものと期待される.

4.

時間領域光フーリエ変換による超高速

無ひずみパルス伝送技術

伝送速度が

40 Gbit/s

以上になると,伝送信号の光

パルス幅は数ピコ秒と狭くなるため,光ファイバのわ

ずかな波長分散や偏波分散による波形ひずみが伝送特

性を著しく劣化させる.また伝送ファイバの分散値は

温度や環境の変化に伴い時間的に変動し,そのわずか

な変化が伝送特性に影響するため,適応等化や光

3R

Retiming

Reshaping

Regeneration

)という技術

が必要とされることになる.

最近我々は,伝送信号のパルス波形にひずみが生じ

てもそのスペクトルの包絡線形状が保存されることを

利用して,光のフーリエ変換による波形無ひずみ伝送

技術を提案している

[30]

.すなわち,伝送信号として

はフーリエ変換限界(

Fourier Transform-limited

)パ

ルスを用い,伝送後も無ひずみなスペクトルの包絡線

形状を,時間領域光フーリエ変換によって,時間軸上

のパルス波形に変換することにより,入力波形を出力

端でひずみなく再生する方法である.この方法はスペ

クトルの成分ごとに位相補償を行う技術ではなく,時

間領域において光フーリエ変換を行う新たな伝送方法

である.ただし,この無ひずみ伝送はそのひずみ量が

1

ビットのタイムスロットの内に収まる場合のみ有効

であることに注意したい.

関連する技術として,これまでに「時間

レンズ」

を用いた偏波モード分散(

PMD

Polarization-mode

Dispersion

)やジッタの補償などの波形処理が提案さ

れている

[31]

[34]

.時間レンズは,レンズ回折にお

ける空間から波数へのフーリエ変換作用とのアナロジ

より,時間から周波数へのフーリエ変換として理解す

ることができる

[35]

4. 1

無ひずみ光パルス伝送の原理

時間領域光フーリエ変換を用いた無ひずみパルス伝

送の原理を図

11

に沿って説明する.光ファイバ中の

パルス

u(z, t)

の伝搬は,伝搬定数を

β(ω)

とすると,

次の方程式で記述される

[36]

(

−i)

∂u(z, t)

∂z

=



n=1

i

n

D

n

n

∂t

n

u(z, t),

(4)

β(ω) = β

0

+



n=1

D

n

ω

n

(5)

ここで

u(z, t)

はパルスの電界包絡線の複素振幅を表

(9)

し,

β(ω)

は搬送波周波数の周りでテイラー展開され

ている.

D

n

= β

n

/n!

であり,

β

n

n

次の分散を表

す.式

(4)

をフーリエ変換すると

(

−i)

∂U

∂z

=



n=1

D

n

ω

n

U

(6)

となる.ただし

U (z, ω) =



−∞

u(z, t) exp(iωt)dt

(7)

である.式

(6)

を積分すると

U (z, ω) = U (0, ω) exp [iφ(ω)] ,

φ(ω) =



n=1

D

n

ω

n

z

(8)

を得る.すなわち,伝送路の線形伝搬によってパル

スが時間的に複雑な波形ひずみを受けても,スペク

トル形状は位相変化

exp[iφ(ω)]

を除いて,その包絡

U (0, ω)

は完全に保存される.したがって,もし

U (0, ω)

時間軸上

に再生することが可能であれ

ば,

U (0, ω)

は入力波形であるのでひずみのない伝送

ができることになる.ここで入力パルスとして

TL

ルスを用いると,

U (0, ω)

から時間波形

u(0, t)

そのも

のを完全に再現することができることになる.時間波

形にはひずんだ位相変化を伴うが,光パルスの包絡線

は保存されている.すなわち位相変化

exp[iφ(ω)]

がい

くら複雑に変化しても,光検出器では時間領域の信号

の包絡線のみを検出するので,そこでのひずみは付加

されない.これにより伝送用ファイバの分散

β(ω)

一切依存しない波形無ひずみ伝送を実現することがで

きる.

4. 2

時間領域光フーリエ変換

伝送用ファイバ中で線形ひずみを受けた時間波形か

らその周波数スペクトルを時間軸上に再生させる光

フーリエ変換回路(

OFTC

Optical Fourier

trans-form circuit

)は,図

11

に示すように光位相変調器

PM

)と二次分散媒質(

D

)によって実現できる.時

間波形

u(z, t)

,スペクトル

U (z, ω)

を有する伝送後の

光パルスを

OFTC

に入力すると,その出力パルスの

時間波形

v(t)

は以下のようにして求められる.

u(z, t)

はまず位相変調器(チャープ率

K

)によって線形に

チャープされる.

u

chirp

(t) = u(z, t) exp(iKt

2

/2)

(9)

ここで

t

2

に比例するパラボラの位相変調をパルスに

印加することが理想的な光フーリエ変換を行う上で重

要である.次に

u

chirp

(t)

は分散値

k



,長さ

L

(分散

D = k



L

)をもつ二次分散媒質を伝搬する.この

とき出力

v(t)

u

chirp

(t)

を用いて

v(t) =



i

2πD



−∞

u

chirp

(t



) exp



i

2D

(t

−t



)

2



dt



(10)

と 畳 込 み 積 分 の 形 で 表 さ れ る .こ こ で 分 散 量 を

D = 1/K

に設定すると,式

(10)

v(t) =



i

2πD

exp(

−iKt

2

/2)

×



−∞

u(z, t



) exp[i(t/D)t



]dt



=



i

2πD

exp(

−iKt

2

/2)U (z, t/D)

(11)

と簡単な形になる.式

(11)

の積分は

u(z, t



)

のフーリ

エ変換をしていることに注目したい.このため分散媒

質を通過後のパルス波形

v(t)

は,光フーリエ変換前の

スペクトル

U (z, ω)

に比例していることが分かる.こ

のとき周波数

ω

と時間

t

は,

ω = t/D

で関係づけら

れており,

D

が時間

(t)–

周波数

(ω)

変換尺度になって

いる.更に,スペクトルの包絡線形状が伝送路におい

て不変であるという性質から,

v(t)

は式

(8)

及び

(11)

より

v(t) =



i

2πD

U (0, t/D) exp(

−iKt

2

/2+iφ(t/D))

(12)

と表される.したがって,入力スペクトル

U (0, ω)

形状が

OFTC

の出力において時間軸上に完全に再生

できることになる.

例として,入力パルスがガウス型の

TL

波形

u(0, t) =

A exp(

−t

2

/2T

2 0

)

である場合を考えよう.このスペク

トルは

U (0, ω) =



2πT

2 0

A exp(

−T

02

ω

2

/2)

であり,

フーリエ変換によって周波数と時間を入れ換えても波

形の関数形が変わらないことを用いる.ここで時間

周波数変換尺度を

|D| = T

02

に選ぶと,式

(12)

v(t) =



i

sgn(k



)

A exp(−t

2

/2T

02

)

× exp(−iKt

2

/2 + iφ(t/T

2 0

))

(13)

(10)

図 12 時間領域光フーリエ変換による 10 GHz-2.5 ps 光パルスの無ひずみ伝送実験 [30]. 伝送路は二次分散=0 ps/nm/km,三次分散=0.057 ps/nm2/kmに設定した全長 197 kmの分散マネージファイバである.下部の破線内に光フーリエ変換回路を示 すが,大きなチャープ率を得るために 10 GHz を 40 GHz に MUX し,その信号 で 10 GHz の光フーリエ変換を行っている

Fig. 12 Distortion-free transmission experiment with a 10 GHz-2.5 ps optical pulse using time-domain OFT [30]. The transmission line is a 197 km-long dispersion-managed fiber with an average dispersion of 0 ps/nm/km and an average dispersion slope of 0.057 ps/nm2/km. The optical Fourier transform circuit is outlined by a dashed line. 10-GHz OFT is realized by using a 40-GHz signal that is up-converted from the 10-GHz clock signal, so that a larger chirp is obtained.

となる.したがって,二乗検波を行う光検出器の出力

I(t) =

|v(t)|

2

I(t) = A

2

exp(

−t

2

/T

02

)

(14)

となり,

|u(0, t)|

2

に完全に一致する.すなわち,時間

周波数変換尺度を

|D| = T

02

と選ぶことにより,出力

端において伝送前の波形が完全に再生されることにな

る.

|D| > T

02

の場合には同じ形の波形であるがパル

ス幅は広がり,

|D| < T

2 0

の場合にはパルス圧縮伝送

が可能となる.

4. 3

光フーリエ変換による

10 GHz-2.5 ps

光パ

ルス列の無ひずみ伝送実験

ここでは

LN

位相変調器と二次分散ファイバ(

SMF

を用いて簡便な

OFTC

を構成することにより,三次

分散を有する伝送路でのピコ秒パルスの無ひずみ伝

送の一例について述べる.その実験の構成を図

12

示す

[30]

.モード同期ファイバレーザからの

10

GHz-2.5 ps

TL

ガウス型パルスを,二次分散がゼロ,三

次分散が

0.057 ps/nm

2

/km

β

3

= 0.093 ps

3

/km

)の

長さ

197 km

のファイバ中を伝送させる.

10 GHz

ファ

イバレーザの出力は

3.1

で述べたように

sech

型の

TL

パルスであるが,本実験では波形がガウス型と

なるよう

3 nm

の光フィルタでスペクトルをガウス型

に整形している.伝送ファイバは

SMF 33 km

DSF

149 km

DCF 15 km

で構成されている.各ファイバ

の長さは,

SMF

及び

DSF

の異常分散が

DCF

の正

常分散によってちょうどキャンセルするよう設定し,

意図的に三次分散のみが残留する伝送路を構成して

いる.伝搬後の光パルス信号を図

12

の破線部内に示

OFTC

に入力し,

40 GHz

の正弦波位相変調(変

調度

M = 1.41π

K =

−0.28 ps

−2

)を印加した後,

分散量

D = 1/K =

−3.57 ps

2

k



=

−22.3 ps

2

/km

L = 160 m

)の

SMF

に入射し,光フーリエ変換を行

う.ここで変調器の繰返しを

40 GHz

に逓倍したのは,

チャープ率を大きくとるためである.

13 (a-1)

(a-2)

197 km

伝 送 後 の 信 号 波 形

u(z, t)

及びスペクトル

U (z, ω)

をそれぞれ示す.時

間波形

(a-1)

には三次分散

3

)

によるリプルが見ら

れ,パルス幅が

4.3 ps

まで広がっている.一方,伝送後

のスペクトル形状

(a-2)

はひずみが見られずもとのガウ

ス波形であり,式

(8)

に示した

|U(z, ω)|

2

=

|U(0, ω)|

2

の関係を満たしている.細かい線スペクトルは

10 GHz

の繰返しを表す縦モードである.次に

OFTC

の出力に

おける信号波形

v(t)

及びスペクトル

V (ω)

を図

13

(b-1)

(b-2)

にそれぞれ示す.図

13 (b-1)

を見るとパル

ス幅は

2.4 ps

と入力にほぼ等しい大きさに戻り,リプ

(11)

図 13 無ひずみパルス伝送実験結果 [30].(a-1),(a-2) は 197 km 伝送後のパルスの時 間波形及びその周波数スペクトルを,(b-1),(b-2) は光フーリエ変換後の時間波 形及びその周波数スペクトルをそれぞれ示している

Fig. 13 Experimental results for distortion-free pulse transmission [30]. 1), (a-2) Pulse waveform and the corresponding spectrum after 197 km trans-mission. (b-1), (b-2) Optically Fourier transformed waveform and the corresponding spectrum.

ルがほとんど抑制されている.これは時間波形のすそ

にわずかな振動が残留しているが,

OFTC

において位

相変調がパラボラではなく正弦波で近似されているた

めである.また,光フーリエ変換によって時間と周波

数が入れ換わった結果,同図

(b-2)

のスペクトルには

時間領域のパルスに存在したリプルが生じていること

も分かる.今回の実験では,フーリエ変換にパラボラ

変調の代わりに正弦波変調を用いたため一部に波形ひ

ずみが残留したが,簡便な正弦波変調でも波形ひずみ

の除去には大変有効な方法であることが分かる.更に

動作範囲を広げタイムスロットいっぱいにするために

は理想的なパラボラ位相変調の実現が望まれる.また,

160 Gbit/s-120 km

伝送にこの方法を適用し,ファイ

バの分散が時間とともに変化してもスペクトルの形状

が変化しない限り波形変化が起こらず,適応等化が同

時に実現できることが示されている

[37]

5.

超高速伝送の最近の展開と

DPSK/

DQPSK

による高速長距離伝送の出現

最近は,

80

100 Gbit/s

単一チャネル

ETDM

送,

40 Gbit/s

× 4

160 Gbit/s OTDM

伝送,

4

×

160 Gbit/s WDM/TDM

伝送,あるいは

320 Gbit/s

伝送に関する光サンプリング及び

EAM

Electro

Ab-sorption Modulator

:電界吸収型変調器)による光多

重分離等,様々な高速光技術が報告されている.また

それに付随して,

160 Gbit/s

システムの高次分散補

償・クロック再生・

Add-Drop

多重回路,

80 Gbit/s

ステムの偏波分散補償や

MQW-EAM

による波長変

換,

80 Gbit/s

に及ぶ

SiGe

技術,

InGaAsP/InP

モー

ド同期半導体レーザのパルス発生技術,

SOA

Semi-conductor Optical Amplifier

)を用いた

160 Gbit/s

Add-drop

多重回路,対称マッハツェンダ(

SMZ

)干

渉計による

336 Gbit/s

信号の多重分離などの先端技術

にも大きな関心が寄せられている.高速信号の長距離

伝送には光

3R

も重要である.

Watanabe

らはパルス

(12)

図 14 160 Gbit/s OTDM-DPSK伝送の構成と受光部の詳細 Fig. 14 160 Gbit/s OTDM-DPSK transmission setup and the details of the

receiver.

波形整形部,光カースイッチを用いた光ゲート部,波長

変換部からなる光

3R

装置を報告している

[38]

.特徴的

なことは,

160 Gbit/s

の高速の動作を高非線形光ファ

イバを用いて実現している点である.これらの技術の

詳細についてはここ

2

3

年の

OFC

Optical Fiber

Communication Conference

)並びに

ECOC

Euro-pean Conference on Optical Communication

)の国

際会議論文集を参照されたい.

最初に述べたように,従来の光伝送技術では光の

On-off

を 用い て いた が ,最 近 では 光 の位 相を 用 い

受信側で遅延検波を行う

DPSK

Differential Phase

Shift Keying

)技術が盛んに利用されている

[6]

.図

14

160 Gbit/s DPSK-OTDM

40 Gbit/s

× 4

)伝

送の構成と,その折に用いられている

DEMUX

後の

40 Gbit/s

受光部とそのアイパターンを示す.

DPSK

の送信部には

40 GHz

のパルス列を強度変調する代わ

りに,パルスの振幅はすべて

1

のままかつ隣り合う

二つのパルスの位相差を

0

π

2

値で位相変調し,

情報をのせる.このように変調したパルス列をファイ

バ中を伝搬させた後,図

14

に示した

DPSK

受光回

路で位相変調信号を強度変調信号に変換してデータを

受信する.すなわち,復調部では

1

ビット遅延(

1 bit

Delay

)をしたマッハツェンダ干渉計を通過させること

により,位相変調信号を強度変調信号に変換している.

図にあるように,

0π0ππ000

の信号を

1

ビット遅延し

て受光すると,マッハツェンダ干渉計の両アームから

1110100

とその逆の

0001011

の信号が出力される.

そこで,バランス光検出器(

Balanced Detector

)を

用いて正の側のアイパターンと負の側のアイパターン

を同時に表示すると,図

14

の写真に示すようにアイ

開口が倍の大きさをもって開くことになる.これによ

り従来法に比べて

3 dB

SN

比改善が図られ,大き

なマージンが確保される.このため従来の伝送方式に

比べて安定でかつ長距離の伝送が実現できるといわれ

ている.またその分低い光パワーでの伝送が可能とな

り,非線形光学効果の低減も可能である.このため最

近では図

5

に示したように,

DPSK

に関する伝送技術

が研究の中心になってきている.

その一例 として

HHI

と富士 通が行った

DQPSK

Differential Quaternary Phase Shift Keying

)技

術を用いた

1.28 Tbit/s-240 km

並びに

2.56

Tbit/s-160 km

伝送 実 験 に つ い て 簡 単 に 述 べ る

[39]

.そ の

実 験 構 成 を 図

15

に 示 す.

10 Gbit/s

を 基 本 と し て

ま ず

80 Gbit/s DQPSK

信 号 を 作 り 出 し ,そ れ を

1.28 Gbit/s

まで多 重化して 伝送して いる.この 際

640 Gbit/s

までは単一偏波で多重化し,

1.28 Tbit/s

には偏波多重を利用している.また,

2.56 Tbit/s

伝送

の場合も最終段は偏波多重を行っている.この伝送は

DPSK

なので位相を

4

値用いており,このため基本速

度は

320 Gbaud

640 Gbit/s

を実現している.これ

80 km

スパンの

240 km

伝送を行った後,受信部にお

いては,

40 GHz

動作の

NOLM

により,

320 Gbit/s

信号から

80 Gbit/s DQPSK

信号(繰返しは

40 GHz

を多重分離している.クロック抽出は両方向動作の

(13)

図 15 1.28及び 2.56 Tbit/s OTDM-DQPSK 伝送の送信部,ファイバ部,及び受信部 の構成 [39]

Fig. 15 Setup of the transmitter, fiber link, and receiver in 1.28 and 2.56 Tbit/s OTDM-DQPSK transmission [39].

図 16 1.28 Tbit/s-240 km 及 び 2.56 Tbit/s-160 km OTDM-DQPSK伝送の誤り率特性 [39] Fig. 16 Bit error rate measurement for 1.28

Tbit/s-240 km and 2.56 Tbit/s-160 km OTDM-DQPSK transmission [39].

EA

変調器を利用して

320 Gbit/s

OTDM

信号か

10 GHz

のクロックを抽出し

[29]

,その信号を

4

倍して

NOLM

による

DEMUX

信号として

40 GHz

ファイバレーザを動作している.

2.56 Tbit/s

伝送では

640 Gbit/s

信号から

40 GHz

のクロック抽出を行って

いる.このようにして得られた伝送実験の結果を図

16

に示す.このようにして先に述べた

On-Off-Keying

みを利用した

1.28 Tbit/s-70 km

の伝送を

240 km

に,

またエラーフロアはあるものの

2.56 Tbit/s

160 km

まで拡大することに成功している.

6.

む す び

超短光パルスを利用した

1 Tbit/s

級の

OTDM

送並びに

160 Gbit/s

の各種伝送技術について,その

将来展望を踏まえて報告した.超高速光通信を支える

電子デバイスの高速化に関してはその特性向上が近年

著しく,

100 Gbit/s

で動作する各種デバイス

[5]

が実

現されつつあり,やがて

160 Gbit/s

ETDM

伝送

も可能になるものと考えられる.光デバイスに関して

も,実用性を考慮した低エネルギー動作や,フィール

ドテストの結果を踏まえたより厳しい特性改善が求め

られるであろう.超高速光伝送技術は,ネットワーク

の高速化だけではなく,ノードのバックプレーンの簡

素化,超高精細画像のリアルタイム伝送,超高速コン

ピュータ間の接続など,様々な分野での産業発展に貢

献するものと思われる.今後

OTDM/WDM

による

160

320

,更には

640 Gbit/s

の伝送速度をもつ超高

(14)

速伝送システムの基盤研究,そして将来の超高速全光

ノードの実現に向けての研究がいっそう進展すること

に期待したい.

[1] 光テクノロジーロードマップ報告書—情報通信分野(2000 年改訂版),資料番号 12-001-2,March 2000. [2] 山林由明,鳥羽 弘,中沢正隆,“時分割多重超高速光 伝送の現状と将来展望,”レーザー研究,vol.27, no.4, pp.231–239, 1999.

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(平成 18 年 1 月 24 日受付,4 月 14 日再受付)

中沢 正隆 (正員:フェロー)

昭 55 東工大大学院博士課程了.工博. 同年日本電信電話公社電気通信研究所入 社.昭 59∼60MIT 客員研究員.平 11 よ り NTT R&D フェロー.平 13 より東北 大電気通信研究所教授.光ファイバ中の非 線形光学効果,ソリトン通信,フェムト秒 レーザ,光増幅器,フォトニック結晶ファイバに関する研究に従 事.著書「超高速光技術」(分担執筆)など.IEEE 及び OSA の各フェロー.応用物理学会,日本光学会,レーザー学会各会 員.平 17 年度本会エレクトロニクスソサイエティ会長.

廣岡 俊彦 (正員)

平 12 大阪大大学院博士課程了.同年コ ロラド大博士研究員.平 14 より東北大電 気通信研究所助手.光ソリトン,超高速光 伝送,フォトニック結晶ファイバに関する 研究に従事.工博.IEEE,OSA,応用物 理学会,レーザー学会各会員.

図 1 光産業協会(OITDA)の光ロードマップ委員会にお いて 2010 年を予測した情報ネットワークの階層図 Fig. 1 Information network model for the 2010s predicted by the optoelectronic technology roadmap committee at OITDA.
図 2 超高速光ネットワークの実現のための各種要素技 術.大容量高速ノード(Ultrahigh capacity/high speed node),超高速トランスポート(Ultrafast photonic transport)  ,及びネットワーキング(Net-working)に分けてその重要技術を示している Fig
Fig. 3 Importance of ultrahigh-speed OTDM and ETDM transmission as regards the  improve-ment of system controllability.
Fig. 7 Experimental setup for 1.28 Tbit/s OTDM transmission using femtosec- femtosec-ond pulses
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参照

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