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混晶系強誘電体における巨大応答と ヘテロ構造ゆらぎに関する研究

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混晶系強誘電体における巨大応答と ヘテロ構造ゆらぎに関する研究

Studies on a correlation between colossal responses and hetero-structure fluctuations

in the ferroelectric mixed-oxide systems 2016 年 2 月

早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 電子物理システム学専攻 固体物理研究

塚崎 裕文

Hirofumi TSUKASAKI

(2)

目次

第1章 諸言---1

1.1. はじめに---1

1.2. 混晶系強誘電体における非線形応答---3

1.3. BTZに関する従来研究---7

1.4. 本研究の目的---9

参考文献---12

第2章 実験方法---13

2.1. 試料作製および観察方法---13

2.1.1. 固相法によるBTZ試料の作製方法---14

2.1.2. flux法によるPZN-xPT試料の作製方法---15

2.1.3. 透過型電子顕微鏡観察用試料の作製方法---16

2.2. 試料の評価方法---17

2.3. 透過型電子顕微鏡観察方法---18

2.3.1. 強誘電分域構造の解析方法---18

参考文献---22

第3章 混晶系強誘電体BTZにおける強誘電菱面体晶相での結晶学的特徴--23

3.1. 諸言---23

3.2. 実験方法---25

3.3. 実験結果---25

3.4. 考察---39

3.5. まとめ---42

参考文献---44

第4章 混晶系強誘電体BTZにおけるリラクサー状態での結晶学的特徴---45

4.1. 諸言---45

4.2. 実験方法---47

4.3. 実験結果---47

4.4. 考察---59

4.5. まとめ---63

Appendix. FR相での強弾性分域構造の特徴と解析---64

参考文献---67

(3)

第5章 混晶系強誘電体PZN-xPTにおける低Ti組成域での強誘電状態の特徴--68

5.1. 諸言---68

5.2. 実験方法---71

5.3. 実験結果---71

5.3.1. 試料方位[110]PCの単結晶試料での強誘電状態---72

5.3.2. 試料方位[210]PCの単結晶試料での強誘電状態---80

5.4. 考察---86

5.5. まとめ---90

参考文献---91

第6章 総括---92

研究業績---95

謝辞---101

(4)

1

第1章 諸言

1.1 はじめに

固体には、誘電性、弾性、および磁性等の様々な興味深い物性を示す物 質が存在する。これらの物質の中で誘電体とは、外部から電場を印加すること によりその内部に電気双極子モーメント、すなわち電気分極が生じる絶縁体を 言う。ここで誘電体内に生じる電気分極 P は、線形応答の範囲内において、印 加電場Eを用いて、

と与えられる。この式で は真空中の誘電率、 は電気感受率と呼ばれる量であ る。よって、誘電体中の電気変位ベクトルDは、

となる。これらの式において が比誘電率、 が誘電率であり、無次元量である 比誘電率の大きさは、例えば、室温において水晶が5、ダイヤモンドが6程度で あるのに対し、単純ペロブスカイト型強誘電体 BaTiO3は 5000 程度の値を取る ことが知られている。さらに外場が交流電場の場合、電気変位の応答には位相 の遅れが生じるため、誘電率は複素誘電率 となる。その結果、誘電体 の比誘電率は、実数部 と虚部 に分けて議論されている。また位相 の遅れ は、電気的エネルギーの一部がジュール熱へと変化することに関係して おり、このため は誘電損失と呼ばれている。

誘電体の中で強誘電体とは、外部電場が印加されていない状態において 電気分極、すなわち自発分極を有し、さらに自発分極が電場印加により反転可 能な誘電体を言う。従来の研究から、強誘電体の示す強誘電性は、常誘電相か らの冷却によって生じる強誘電相転移に直接関係していることが知られている。

ここで強誘電相転移は、大きく、正負イオンの相対変位よって自発分極が発生 する変位型、および常誘電相に電気分極を持った構造単位が存在し、この構造 単位が秩序化することによって巨視的な自発分極を生じる秩序・無秩序型に分 類される。前者の例がBaTiO3やPbTiO3等の単純ペロブスカイト型酸化物での強 誘電相転移、後者の例としてはロッシェル塩やNaNO2等に存在する強誘電相転 移を挙げることができる。また特徴として、強誘電相転移の転移温度であるキ

(5)

2

ュリー温度TCにおいて、上述した比誘電率の実数部 は鋭い誘電率のピー クを示す。このピークの物理的起源に関しては、従来の線形応答理論から、電 気双極子モーメントのゆらぎの相関によるものであることが理解されている。

すなわち比誘電率のピークは、原子および分子レベルでのゆらぎの相関に直接 関係している。

強誘電相転移のような相転移点おいて対称性の低下を伴う相転移は、群 の既約表現論に基づくランダウ理論[1]により、その特徴を理解することができ る。具体的には、強誘電相転移の場合、常誘電相での空間群の既約表現の中で、

k = 0のΓ点における既約表現、特に極性ベクトルの表現によって、その特徴が理 解される。例えば、本博士論文で取り上げた単純ペロブスカイト型BaTiO3での 強誘電相転移は、常誘電立方晶(PC)相の空間群 におけるk = 0での三次元既 約表現Γ に関係している。また、この表現は点群 における三次元既約表現 に対応するものである。このため、変位型相転移のBaTiO3の場合、この表現か ら導かれる三重縮退した 光学横波フォノンモードの凍結、すなわちソフトフ ォノンモードという立場から相転移の特徴を理解することができる[2]。ここで ソフトフォノンモードとは、高対称相に存在する低振動なフォノンモードが、

転移温度に向かって振動数を減少(ソフト化)し、転移点でのモードの凍結、

すなわち原子変位が生じることにより、低対称相が出現するという考え方であ る。実際、BaTiO3での強誘電相転移では、PC相からの冷却により、三重縮退し た モードの逐次凍結を通して強誘電正方晶(FT)相、強誘電斜方晶(FO)相、お よび強誘電菱面体晶(FR)相が、PbTiO3ではFT相が出現する。一方で、例えば

BaTiO3での強誘電相転移において、相転移のタイプがTC近傍において変位型か

ら秩序・無秩序型へ変化するとの指摘がなされている[3-5]。また、これを裏付 ける実験結果として、BaTiO3でのTC近傍におけるPC相の局所的な対称性は、菱 面体晶系であることも示されている[6, 7]。すなわち、PC相の立方対称性は、局 所的な領域の菱面体対称性を空間平均した、巨視的な対称性であることが理解 されている。すなわち、ソフトフォノンモードという概念は、強誘電相転移の 特徴を概ね説明はするものの、この考え方は多くの矛盾を含んでいる。

(6)

3 1.2 混晶系強誘電体における非線形応答 変位型強誘電体の中には、

巨大な誘電応答と特異な周波数依 存性によって特徴付けられるリラ クサー強誘電体が存在し、その物 性は非線形応答という視点から多 くの興味が持たれている。リラク サー強誘電体としては、これまで に化学式 ABO3 で表される単純ペ ロブスカイト型酸化物が知られて おり、その代表例としてBaTiO3を エ ン ド 物 質 と す る Ba 系 Ba(Ti1-xZrx)O3 (BTZ)、 な ら び に

PbTiO3 がエンド物質である Pb 系

Pb(Zn1/3Nb2/3)O3 (PZN)および Pb(Mg1/3Nb2/3)O3 (PMN)等を挙げることができる。

図1-1には、その一例として、Kutnjakらによって報告されたPb系PMNにおけ る線形誘電率の実数部 の温度および周波数依存性を示している[8]。この 図から、リラクサー強誘電体の線形誘電率は、幅広い温度域に渡る誘電率ピー ク、特異な周波数依存性、および 15000 を超える巨大なピーク値を示すことが 理解される。特に周波数依存性は、周波数の増加に伴うピーク値の減少とピー ク温度の上昇によって特徴付けられている。従来、リラクサー強誘電体の示す 線型誘電率の特徴はリラクサー挙動と呼ばれている。ここで、このリラクサー 挙動において注目すべき点は、線形誘電率のピークが強誘電相転移の相転移点 に直接対応していないことである。

リラクサー強誘電体の示すリラクサー挙動の物理的起源を理解するため、

従来、様々な視点から数多くの研究が行われている。BurnsらはPMN の屈折率 の温度依存性を測定し、誘電率ピークよりも遥かに高い温度(バーンズ温度 Td) において通常の直線的な温度依存性からのずれを見出した[9]。さらに彼らは、

この結果を基にリラクサー挙動を説明するモデルとして、常誘電領域内に極性 ナノ領域(PNR)が一様に分布した PNR モデルを提案している。一方、バーンズ 温度 Tdは強誘電相転移の転移温度であり、リラクサー状態は相転移で生じた強 図 1-1. Pb(Mg1/3Nb2/3)O3の線型誘電率の 温度および周波数依存性

(7)

4

誘電分域の成長が強く抑制された状態(ナノ分域モデル)であるとの指摘もある [10]。ここで重要な点は、上述の誘電分散が、緩和時間によって特徴づけられる デバイ型の分散に、緩和時間の広がりを仮定することにより定性的に説明でき ることである。すなわち、リラクサー挙動と呼ばれる線型誘電率の特徴は、両 モデルを用いて再現することが可能なのである。このことは、リラクサー挙動 を説明するモデルの妥当性を、線形応答の範囲内で評価することができないこ とを示している。

リラクサー挙動と矛盾のないモデルを構築するため、最近の研究では、

電場の3乗に比例する非線形誘電応答が調べられている。図1-2には、Glazounov

とTagantsevによって測定されたPMN の3次非線形誘電定数 の温度およ

び周波数依存性を示している[10]。ここで、 は3 次の非線形感受率、 は線 型感受率である。図から、3次の非線形誘電定数は、温度の低下と伴に僅かに減 少し、最小値を取った後、一様に増加していく様子を見て取ることができる。

特に興味深い点は、線形誘電率とは異なり、周波数依存性、すなわち周波数分 散をほとんど示していないことである。そこで、この 3 次の非線形応答の特徴 を説明するため、従来提案されているモデルを基に、これまで様々な検討がな されている。しかし、多くの努力にもかかわらず、非線形応答を含めたリラク サー挙動の物理的起源に関して、現在でも最終的な結論は得られていない。

図 1-2. Pb(Mg1/3Nb2/3)O3の3次非線形誘電定数 の 温度および周波数依存性

(8)

5

巨大圧電応答は、リラクサー強誘電体の関係するもう一つの非線形応答で ある。ここで、単純ペロブスカイト型構造を有すリラクサー強誘電体では、B サイトを Ti4+イオンで置換することを意図して、例えば(1-x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O3

-xPbTiO3 (PZN-xPT)等の混晶系強誘電体を形成することができる。これら混晶系

強誘電体の特徴は、相図中に温度軸にほぼ平行なモルフォトロピック相境界

(MPB)が存在することで、従来、このMPB境界付近において非線形応答である

巨大な圧電応答が見出されている[11, 12]。その起源に関しては、これまで強誘 電単斜晶相での分極ベクトルの回転が主要な因子であると指摘されている。こ のことを示す実験結果としては、例えば Noheda らは、顕著な圧電性を示す Pb(Ti1-xZrx)O3 (PZT)およびPZN-xPTでのMPB付近の強誘電状態について、その 結晶学的特徴をシンクロトロン放射光により調べている。図1-3には、その一例

として、FR相のPZN-8%PT試料に対して、[001]方向に電場を印加した際の強誘

電状態の変化を示している[13, 14]。図から分かるように、緑矢印で示す[111]方 向に分極ベクトルを持つ FR 試料に対し[001]方向に電場を印加すると、まず

{110}PC面内に分極ベクトル(黄矢印)を持つ MA型の強誘電単斜晶相が出現する。

ここで興味深い点は、印加電場の大きさを増加していくと、ある閾値を越えた

時点で、{100}PC面内に分極ベクトル(青矢印)を持つMC型の強誘電単斜晶相へと

相変化することである。さらに電場を増加させると、MC相内において分極ベク トルの回転が生じ、最終的に [001]方向に分極ベクトル(赤矢印)を持つ FT 相へ と変化する。実はNohedaらの実験以前に、FuとCohenは、FR相に対して[001]

方向に電場を印加した際の分極ベクトルの変化を第一原理計算により検討し、

Noheda らの実験結果を予言している[15]。さらに彼らは、得られた計算結果を

基に巨大な圧電応答の起源として分極ベクトルの回転の重要性を指摘している。

そして現在、上述したように、MPB付近に見出される巨大圧電応答は低対称な 強誘電相における分極ベクトルの回転によるものと理解されている。しかし、

例えば強誘電単斜晶相での分極ベクトルの連続的な回転は連続的な格子変形を 伴うため、弾性エネルギーの大きな損を生むことも事実である。よって、その 妥当性には疑問の余地が残る。すなわち、分極ベクトル(電気双極子モーメント) という原子レベルでのゆらぎではなく、ナノ・メソスケールによって特徴づけ られるヘテロ構造のゆらぎが巨大圧電応答に関与する可能性も考慮すべきであ る。

(9)

6

図 1-3. 電場印加に伴うPZN-8%PTでの分極ベクトルの変化

(10)

7 1.3 BTZに関する従来研究

非線形応答としてのリラクサー挙動は Ba 系混晶系強誘電体 BTZ におい ても見出されている。図1-4には、Nagasawaらによって報告されたBTZの各組 成における線型誘電率の温度および周波数依存性を示している[16]。この図から 分かるように、まずx = 0.05および0.10の線型誘電率には、エンド物質BaTiO3

と同様な、強誘電相転移を示す鋭い誘電率ピークが存在する。この状態から、

Zr置換量を増加すると、0.15 0.25の組成域においてピーク値とピーク温度 の減少、ならびにピーク幅の増加が認められる。さらにx = 0.30および0.35に なるとリラクサー状態を特徴付ける特異な周波数依存性が観察される。すなわ ち、誘電率ピークの値は5000程度と小さいものの、この組成域においてリサク サー状態の出現が予想される。実際、Vogel Fulcher則を用いた解析から、x = 0.30 および 0.35に見られる線型誘電率の振る舞いは、リラクサー挙動として同定さ れることが明らかとなっている[17]。

混晶系強誘電体BTZは、Ba系混晶系強誘電体における唯一のリラクサー 強誘電体である。またPb系とは異なり、構造中にBサイトイオンの長距離およ び短距離秩序を含まないことから、リラクサー挙動を理解する上で重要な物質 であると認識されている。ここで興味深い点は、BTZ でのリラクサー挙動の起 源が、Pb系の場合とは異なると指摘されている点である。図1-5には、Nagasawa らによって測定された、リラクサー強誘電体 BTZ および Pb 系 PMN と

Pb(Mg1/3Ta2/3)O3での比熱容量の温度依存性を示している[18]。この図から分かる

ように、Pb 系の場合、誘電率のピーク温度(矢印)より高い温度域において極小 値等の熱異常が認められる。しかし、BTZにおいて異常は認められない。また、

発熱異常の要因に関しては、例えばPb系では秩序-無秩序型相転移の凍結による もの、一方、BTZに関してはBサイトイオンの変位の凍結が指摘されている[19]。

残念ながら、これらの研究にも関わらず、その詳細は現在でも不明のままであ る。

(11)

8

図 1-4. 混晶系BTZにおける各組成での誘電率の温度依存性

図 1-5. Pb系およびBa系リラクサーにおける比熱容量の温度依存性

(12)

9 1.4 本研究の目的

固体が示す物性は、従来、標準理論である線形応答理論によって理解さ れている。例えば強誘電体の示す強誘電性の場合、電気双極子モーメントのゆ らぎの相関、構造の階層性という視点からは、原子・分子スケールでの構造ゆ らぎに関係することが明らかにされている。一方、物性の中には、線形応答理 論の範囲内では理解できない巨大応答も存在する。その例として、混晶系強誘 電体が示す巨大応答、すなわちリラクサー挙動および巨大圧電応答を挙げるこ とができる。そこで本博士論文では、強誘電体が示す非線形応答の理解を目的 に、これら巨大応答に関係する強誘電状態の特徴を調べた。その際の学術的視 点は構造の階層性で、原子・分子とはエネルギースケールが異なる、ナノおよ びメソスケールでのヘテロ構造のゆらぎ、すなわち不均一構造のゆらぎに注目 して研究を行った。具体的には、Ba 系 BTZ でのリラクサー挙動、ならびに Pb

系PZN-xPTでのリラクサー挙動と巨大圧電応答を取り上げ、これら非線形応答

に関係する強誘電状態の結晶学的特徴、特に分域構造等のヘテロ構造の特徴に ついて主に透過型電子顕微鏡を用いて調べた。さらに得られた結果を基に、こ れら非線形応答の物理的起源を本論文の視点、すなわちヘテロ構造のゆらぎと いう視点から検討した。

これらの研究成果をまとめた本博士論文の構成は、以下の通りである。

第一章「諸言」では、強誘電体および強誘電相転移の特徴、さらに非線 形応答であるリラクサー挙動および巨大圧電応答に関して従来の研究を概観し、

これらに基づいた本研究の背景と研究目的を述べた。

第二章「実験方法」では、本研究で用いたBTZ多結晶試料およびPZN-xPT 単結晶試料について、試料の作製方法、物性評価としての誘電率の測定方法、

さらに透過型電子顕微鏡用試料の作製および観察方法の詳細について述べた。

第三章「混晶系強誘電体 Ba(Ti1-xZrx)O3における強誘電菱面体晶相での結 晶学的特徴」では、FR 相および (PC→FR)直接転移について、その結晶学的特 徴を透過型電子顕微鏡で調べた結果について報告した。得られた結果としては、

まず誘電率測定から、0.11 ≤ x ≤ 0.17組成域において(PC→FR)直接転移の存在が 確認された。そこで室温で観察を行った所、FR相の強誘電分域構造は、幅数百 nmのバンド構造とその内部に存在する幅数十nmの縞状領域から成る、へリン

(13)

10

グボーン型分域構造を有していることが明らかとなった。次に、各分域での分 極ベクトルを決定するため、様々な散乱ベクトルを用いて観察を行った所、独 立な<001>PCと<110>PC成分領域を別々に観察できることが分かった。このため、

本研究では、両領域を重ね合わせることによりFR相での強誘電状態の詳細を検 討した。その結果、へリングボーン型分域構造の内部には、<001>PC 方向に自 発分極を持つ FT 状態がナノスケール縞状領域として一部残存すること、

(PC→FR)直接転移での各成分領域の成長過程は異なることが分かった。具体的 には、相転移温度において、<001>PC成分領域は急激に成長するものの、<110>PC

成分領域は、ナノスケール領域として存在し、再配列および連結を繰りかえす ことで縞状領域へと変化した。よって、FT 状態の残存は<110>PC 成分領域の成 長の抑制によるものである。

第四章「混晶系強誘電体 Ba(Ti1-xZrx)O3におけるリラクサー状態での結晶 学的特徴」では、PC/FR相境界付近での強誘誘電状態および0.27 ≤ x ≤ 0.40にお けるリラクサー状態の結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡で調べた結果について 述べた。観察の結果、x = 0.28付近においてFR相からリラクサー状態へのクロ スオーバーを確認した。そこで、まず室温において FR 相からの Ti 組成の増加 に伴う強誘電状態の変化を調べた所、PC/FR 相境界付近での FR 相側には、

<110>PC成分領域の再配列・連結によって生じた縞状領域が観察され、(PC→FR)

直接転移の中間状態に対応することが分かった。一方、PC 相側には<001>PC

<110>PC成分領域がナノスケール領域として存在し、さらにこれら成分領域の重

ね合わせによりナノ FR 領域の存在も見出された。よって、これらの結果から (PC→FR)直接転移は、PC相に存在する<001>PCと<110>PC成分領域の成長あるい は再配列・連結、すなわち変位型とは全く異なる機構によって生じていること が明らかとなった。次に、0.27 ≤ x ≤ 0.40組成を有する試料を用いて低温その場 観察することにより、リラクサー状態の詳細を調べた。その結果、リラクサー 状態は、(PC→FR)直接転移を特徴付ける、ナノ成分領域の成長および再配列・

連結が強く抑制された状態であることが分かった。具体的には、リラクサー状 態において、<001>PC成分領域は<001>PC方向に連結し、<001>PC成分領域に関す る局所的な180°分域を形成するのに対し、<110>PC成分領域の再配列・連結は完 全に抑制されていた。このことから、構造の階層によって対称性が異なること、

さらに BTZ でのリラクサー状態は、<001>PC分極成分の局所的なフリップ・フ

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11

ロップによる、ヘテロ構造ゆらぎによって特徴付けられていることが明らかと なった。

第五章「混晶系強誘電体(1-x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-xPbTiO3における低 Ti 組成 域での強誘電状態の特徴」では、低Ti組成域に存在するリラクサー状態および MPB付近での巨大圧電応答に関係した強誘電状態について、その結晶学的特徴 を透過型電子顕微鏡で調べた結果について述べた。観察の結果、PZN-xPT での リラクサー状態は、<111>PC方向に分極ベクトルを持つナノ FR 領域の集合体で あることが分かった。その特徴は、BTZの場合とは異なり、<110>PC成分領域は 広い領域として存在するものの、<001>PC成分領域の成長は強く抑制されていた。

次に、MPB付近の強誘電状態の観察から、巨大圧電応答は、従来の報告の通り、

{100}PC面内に分極ベクトルを持つ MC型強誘電単斜晶相の存在に直接関係する

ことが分かった。ここで興味深い特徴は、ほぼ<120>PC方向に平行な分極ベクト ルを持つMC相がメイズパターン状の180°強誘電分域構造を呈すること、さらに

(PC→MC)相転移での分域構造の成長が自己相似性を有していることである。特

に、自己相似性を有する分域構造の成長は、分域壁の移動ではなく、<120>PC分 極ベクトルの局所的なフリップ・フロップを通して生じていることが明らかと なった。このことは、MPB付近に観察される巨大圧電応答の起源が、従来指摘 されている MC相での分極ベクトルの回転ではなく、<120>PC分極ベクトルのフ リップ・フロップに起因した、ヘテロ構造のゆらぎであることを強く示唆して いる。

第六章「総括」では、混晶系強誘電体での非線形応答、すなわち Ba 系 BTZでのリラクサー挙動、ならびに Pb 系 PZN-xPT でのリラクサー挙動および 巨大圧電応答に関して、本研究で得られた研究成果を構造の階層性に基づくヘ テロ構造のゆらぎという視点から総括した。

(15)

12 参考文献

[1] ランダウ, リフシッツ, 「統計力学(下巻)」(小林、小川、富田、横田訳、

岩波書店)

[2] W. Cochran, Phys. Rev. Lett. 3, 412 (1959).

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[4] B. Zalar, V. V. Laguta, and R. Blinc, Phys. Rev. Lett. 90, 037601 (2003).

[5] B. Zalar, A. Lebar, J. Seliger, R. Blinc, V. V. Laguta, and M. Itoh, Phys. Rev. B 71, 064107 (2005).

[6] K. A. Müller and W. Berlinger, Phys. Rev. B 34, 6130 (1986).

[7] K. A. Müller, W. Berlinger, K. W. Blazey, and J. Albers, Solid State Commun. 61, 21 (1987).

[8] Z. Kutnjak, R. Blinc, Y. Ishibashi, Phys. Rev. B 76 104102 (2007).

[9] G. Burns and F. H. Dacol, Solid State Commun. 48, 853 (1983).

[10] E. Glazounov and A. K. Tagantsev, Phys. Rev. Lett. 85, 2192 (2000).

[11] B. Jaffe, W. R. Cook, and H. Jaffe, Piezoelectric Ceramics (Academic, London, 1971).

[12] S-E. Park and T. R. Shrout, J. Appl. Phys. 82, 1804 (1997).

[13] B. Noheda, D.E. Cox, G.Shirane, S.-E. Park, L.E. Cross, and Z. Zhong, Phys. Rev.

Lett. 86, 3891 (2001).

[14] B. Noheda, Z. Zhong, D.E. Cox, G. Shirane, S.-E. Park, and P. Rehrig, Phys. Rev. B 65, 224101 (2002).

[15] H. Fu and R. E. Cohen, Nature (London) 403, 281 (1999).

[16] M. Nagasawa, H. Kawaji, T. Tojo, and T. Atake, Netsu Sokutei. 34, 175 (2007).

[17] T. Maiti, R. Guo, and A. S. Bhalla, J. Am. Ceram. Soc. 91, 1777 (2008).

[18] M. Nagasawa, H. Kawaji, T. Tojo, and T. Atake, Phys. Rev. B 74, 132101(2006).

[19] S. Ph, C. A.-M, Ferroelectrics 270, 259 (2002).

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第2章 実験方法

2.1 試料作製および観察方法

本博士論文では、強誘電体の示す非線形応答の中で、Ba系混晶系強誘電 体BTZでのリラクサー挙動およびPb系PZN-xPTでのリラクサー挙動と巨大圧 電応答を取り上げ、その物理的起源をナノおよびメソスケールにおけるヘテロ 構造のゆらぎという視点から検討を行った。具体的には、上述の混晶系試料を 作製し、作製した試料中に出現した強誘電分域構造等のヘテロ構造の特徴につ いて、主に透過型電子顕微鏡を用いて明らかにした。実験に供した試料は、第 3章と第4章がBTZ多結晶試料、第5章がPZN-xPT単結晶試料である。実験の 手順については、まずBTZ多結晶試料を固相法で、PZN-xPT単結晶試料につい てはフラックス法で作製し、その後作製した試料の評価として、相の同定を粉 末 X 線回折法、物性評価を各温度で誘電率を測定することにより行った。さら に、試料評価により良質であると判断した試料について、87 Kから773 Kの温 度範囲における結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡によるその場観察によって明 らかにした。以下に、本実験で行ったBTZ多結晶試料およびPZN-xPT単結晶試 料の作製方法、透過型電子顕微鏡観察に用いた試料の作製方法、作製した試料 の評価方法、さらに透過型電子顕微鏡による観察方法について、その詳細を述 べることにする。

(17)

14

2.1.1 固相法によるBTZ多結晶試料の作製方法

第3章および第4章で用いたBTZ多結晶試料は、通常の固相法で作製し た。図2-1は、その作製の手順を示すフローチャートである。図から、まず純度

99%の原料粉 BaCO3、TiO2、および ZrO2を所定の組成に秤量し、エタノールを

加えた原料粉をボールミルで16時間混合した。次に、1373 Kでの3時間保持の 条件で仮焼成を行った後、再びエタノールを加え、ボールミルで 16 時間混合、

ペレット化を行った。ペレット化後の本焼成の条件は、1673 Kでの12時間保持 である。

図2-1. 固相反応法によるBTZ試料の作製手順

(18)

15

2.1.2 フラックス法によるPZN-xPT単結晶試料の作製方法

第5章で用いたPZN-xPT単結晶試料は、PbOを融剤としたフラックス法 により作製した。図 2-2 は、本実験で行った、PZN-xPT 単結晶試料の作製の手 順を示すフローチャートである。また試料作製には、純度 99.9%の PbO、TiO2

ZnO、および Nb2O5 粉を用いた。図に示すように、試料作製では、まず大気中

473 Kで5時間の前処理を行なった原料粉を用いて、目的の組成に秤量・混合を

行った。その際、融剤の量は、試料と融剤との重量比がPZN-xPT : PbO = 40 : 60 となるように調整した。単結晶作製の手順については、融剤を含む混合粉を白 金坩堝内で1423 Kまで加熱し、溶融体を得た後、冷却速度1 K/minの条件で1173 Kまで冷却することにより単結晶化を行った。また1173 Kから室温までの冷却 は、電源を切って行った自然冷却である。その後、得られた凝固体をマントル ヒーターの中で25vol%の希硝酸に浸し、融剤PbOを融解させ、単結晶試料を取 り出した。得られた単結晶試料は、大きさ3×3×3 mm3程度の立方体である。

図2-2. フラックス法によるPZN-xPT単結晶試料

の作製手順を示すフローチャート

(19)

16

2.1.3 透過型電子顕微鏡観察用試料の作製方法

透過型電子顕微鏡観察に用いた試料は、図2-3に示すフローチャートに従 って作製した。まず固相法で作製したBTZ試料の場合、得られたペレット状試 料からダイヤモンドカッターを用いて厚さ約1mm程度の円板状試料を切り出し、

超音波ディスクカッターで直径約3mmの円板に打ち抜いた後、厚さ約300 mに なるよう片面を研磨し、外径3mm、内径1mmのMo単孔メッシュに貼り付けた。

一方、PZN-xPT 単結晶試料では、結晶方位を決定した立方体形状の試料をダイ ヤモンドカッターで厚さ約 1mm の板状に切り出し、さらに板状試料を厚さ約

300 mに研磨後、BTZ試料の場合と同様、Mo単孔メッシュに貼り付けた。ここ

で単結晶試料の方位決定には、通常のラウエ法を用いた。

観察に用いた薄片試料を得るための手順としては、Mo単孔メッシュに貼

り付けたBTZおよび PZN-xPT 試料を厚さ約30 m まで機械研磨し、その後、

室温でアルゴンイオンミリングすることで中央部に微小な孔を開けた。実際の 実験では、試料中に開けた微

小な孔の周りの薄い領域を 用いて観察を行った。イオン ミリング条件は、加速電圧 4 kVおよび電流1.0 mAである。

また、アルゴンイオンの照射 角度については 12°と設定し、

微小な孔が開いた後は角度 8°で仕上げ照射を行った。さ らに本実験で用いた試料は 絶縁体であるため、観察時に おけるチャージアップの防 止を目的に、試料表面にはカ ーボン蒸着を施した。

図2-3. 透過型電子顕微鏡観察用試料の

作製手順を示すフローチャート

(20)

17 2.2 試料の評価方法

本実験では、作製したBTZ多結晶およびPZN-xPT単結晶試料の評価とし て、粉末 X 線回折法による相の同定、ならびに誘電率測定による物性評価を行 った。まず相の同定は、多結晶および単結晶試料を粉砕して得られた粉末試料 を用い、室温で粉末 X 線回折曲線を測定することにより行った。使用した回折

装置はCu K 線をX線源とするRint-UltimaIIIディフラクトメーター、操作条件

は、管電圧40 kV、管電流40 mA、測定角度範囲10 ≤ 2 ≤ 90 、およびステッ

プ角度1 /minである。次に、室温で得られたX線回折曲線から単相であると判

断した試料について、20 Kから773 Kでの複素誘電率をLCRメータで測定した。

その際の昇温・降温速度は1 K/min、測定に用いた周波数は1~1000 kHzである。

測定に用いた試料は、電極とした銀ペーストを、機械研磨で鏡面仕上げしたペ レット状試料の両面に塗布したものである。実際の実験では、加熱および冷却 過程における各温度での静電容量 C を測定した。さらに、得られた静電容量 C から以下の関係式を用いて比誘電率の実数部を求めた。

=

ここで、dとSはそれぞれ試料の厚さおよび表面積である。

外場が交流電場の場合、電気変位の応答には位相の遅れが生じるため、

誘電率は複素誘電率 で与えられる。周期電場 = を加える と、電気変位Dは、

=

= { }

となる。ここで、 とすると、比誘電率の実数部 および虚部 は、それぞれ

= ,

=

で与えられる。よって、位相の遅れ は誘電率の実部と虚部の比で表され、

となる。この量は、電気的エネルギーの一部がジュール熱へと変化することに 関係しており、誘電損失と呼ばれる。

(21)

18 2.3 透過型電子顕微鏡を用いた観察方法

本研究では、混晶系強誘電体BTZおよびPZN-xPTでの巨大応答に関係す るナノ・メソスケールのヘテロ構造の特徴を明らかにするため、冷却ステージ

を備えたH-800型(加速電圧:200 kV)および加熱ステージを備えたJEM-3010型

透過型電子顕微鏡(加速電圧:300 kV)を用いて、87 Kから773 Kの温度範囲でそ の場観察を行った。具体的には、作製した試料の各温度における電子回折図形 および明・暗視野像を撮影することにより、その結晶学的特徴を明らかにした。

また本実験では、各強誘電領域での分極ベクトル方向の決定を、次節で述べる フリーデル則の破れを利用して行った。具体的には、フリーデル則の破れを生 む二波励起の条件のもと、異なる散乱ベクトルgを用いて暗視野像を撮影した。

記録媒体については、回折図形および像撮影中の試料ドリフトを回避するため、

イメージングプレートを使用した。

2.3.1 強誘電分域構造の解析

非線形応答である巨大応答は、強誘電分域構造等のヘテロ構造のゆらぎ に直接関係していることが予想される。そこで本実験では、ナノおよびメソス ケールの領域を含めた強誘電領域を対象にして、各領域での分極ベクトルの方 向を決定した。ここで観察の際に問題となる点は、運動学的理論が点群のラウ エクラスを対象とするため、散乱ベクトルを g とした時、回折強度に関してフ リーデル則 Ig=I-g が成立することである。このため、運動学的理論の範囲内で 中心対称性の有無を議論することはできない。しかし、Fujimotoによって提案さ れた動力学的回折理論に基づいて、フリーデル則の破れを生じさせることは可 能である[1]。Fujimoto 理論によれば、(hkl)面および裏面である(hkl)面に対する 回折強度を と とした時、両者の強度比 は以下の式で与えられる。

=

(1)

ここで、 は結晶の厚さ、 は電子線の波数、 は結晶ポテンシャルのフーリエ 係数である。また、 は第 0 および 項を除いた総和、 は の 虚数部分を示している。式(1)から、回折強度 と の非対称性は、主に分子と分 母の第2項から生じていることが理解される。すなわち、観察は二波励起の条

(22)

19

件下で行うものの、強度の弱い反射 が、フリーデル則の破れを生む本質的な 要因となる。Honjo らは、この理論からの予想を踏まえ、BaTiO3 等での強誘電 分域構造を対象に分極ベクトル方向の決定を行っている[2, 3]。そこで本研究で も、動力学効果によるフリーデル則の破れを利用して、作製した BTZ および

PZN-xPT試料に出現した強誘電領域の解析を行った。

上述したように、ヘテロ構造としての強誘電領域における分極ベクトル の方向は、フリーデル則の破れを利用して決定することができる。強誘電分域 構造に関する Honjo らの研究によれば、散乱ベクトル g で結像した暗視野像に おいて、分極ベクトルPを持つ強誘電領域は、g・P > 0の条件下で明るいコン トラストとして観察される。よってgP = 0の場合、コントラストは消失する。

すなわち、コントラストには消滅則が存在し、この消滅則を用いて分極ベクト ルの方向を決定することが可能である。そこで、ここではBaTiO3での強誘電正 方晶相を例に取り、その決定方法について簡単に説明する。図2-4には、BaTiO3

の強誘電正方晶相から得られた電子回折図形、暗視野像、および決定した強誘 電分域構造の模式図を示している。電子線の入射方向は[001]PC方向、図 2-4(a)、 (b)、(c)、および(d)に示す暗視野像は、二波励起条件下のもと、散乱ベクトルg = 200PC、2_00PC、020PC、02_0PCを用いて結像している。さらに図 2-4(e)には、決定 した強誘電正方晶相の分域構造の模式図を示している。まず暗視野像中には、

(110)PC面に平行な分域壁を持つバンド状コントラストが観察される。そこで 図

(a)と(b)の像に注目すると、g = 200PC像中の明るい領域Aは、g = 2_00PC像中にお いて暗い領域として観察され、幅広いバンド内において明・暗のコントラスト の反転が生じている。一方、g = 020PCと02_0PCの像(c)と(d)では、幅広いバンド 内でのコントラストは消失している。このことは、上述の消滅則から、領域 A とB での分極ベクトル方向が[010]PC方向に垂直であることを示している。さら に条件g・P > 0を用いて分極ベクトルの方向を検討すると、領域Aは[100]PC方 向、領域Bは[1_00]PC方向に平行な分極ベクトルPを有していることが分かる。

同様にして、g = 020PCと02_0PCによる像(c)と(d)から、領域CとDの分極ベクト

(23)

20

ルの方向は P//[010]PCP//[01_0]PCと決定される。これらの結果から、正方晶相 での強誘電分域構造は、模式図(e)に示すように90 および180 分域構造から成る ことが理解される。

(24)

21

図 2-4. フリーデル則の破れを用いた強誘電分域構造の解析例。

結像に用いた反射は、(a)200、(b)2_00、(c)020、および(d)02_0 である。

(e)は決定した分域構造の模式図を示す。

(25)

22 参考文献

[1] F. J. Fujimoto, J. Phys. Soc. Jpn. 14, 1558 (1959).

[2] G. Honjo, T. Yatsuhashi, N. Yamamoto, and K. Yagi, Proc. 8th Int. Congr.

Electron Microscopy, Canberra, 1974 (Australian Academy of Science, Canberra, 1974) Vol. 1, p. 554.

[3] M. Tanaka and G. Honjo, J. Phys. Soc. Jpn. 19, 954 (1964).

(26)

23

第3章 混晶系強誘電体 BTZ における強誘電菱面体晶相の結晶学的 特徴

3.1 諸言

本博士論文では、まず混晶系Ba(Ti1-xZrx)O3(BTZ)に存在するFR相および リラクサー状態に注目し、その特徴についてナノ・メソスケールよって特徴づ けられるヘテロ構造およびそのゆらぎという視点から研究を行った。これら得 られた研究成果の中で、第3章では、0.11 ≤ x ≤ 0.17に存在するFR相の結晶学 的特徴に関して、その詳細を主に透過型電子顕微鏡で明らかにした結果につい て報告する。

本研究で扱った単純ペロブスカイト型構造の特徴の一つは、二つの単純 ペロブスカイト型酸化物をエンド物質として混晶系を形成できることである。

その典型例として、PbTiO3 と PbZrO3 をエンド物質とする混晶系強誘電体

Pb(Ti1-yZry)O3 (PTZ)を挙げることができる。ここでPTZでの興味深い特徴は、そ

の相図上に、温度軸に対してほぼ平行なモルフォトロピック相境界(MPB)が存在 すること、さらにMPB付近において巨大な圧電応答が見出されていることであ る[1]。この巨大応答の起源については、従来、立方晶系での{110}面内に分極ベ クトルを持つ、MA型強誘電単斜晶相での分極ベクトルの回転、すなわち原子・

分子スケールでのゆらぎによると指摘されている [2-5]。一方、Asadaらは、PTZ でのMPB組成付近の強誘電状態について透過型電子顕微鏡によるその場観察で 調べ、その状態がMA型単斜晶系の対称性を持つナノ極性領域の集合体であるこ とを明らかにしている[6]。このことは、巨大な圧電応答の理解にとって、原子・

分子スケールというよりは、むしろナノスケールでの構造ゆらぎが重要である ことを示している。

本博士論文で扱った混晶系BTZも、PZTと同様な混晶系強誘電体の一つ である。図3-1には、Dobalらによって報告されたBTZの物性相図を示している

[7]。この相図から、Zr組成xの増加に伴う強誘電相の変化は、室温付近におい

て、BaTiO3(BT)での強誘電正方晶(FT)相から、x = 0.02付近で強誘電斜方晶(FO) 相、x = 0.09付近で強誘電菱面体晶(FR)相、さらにx = 0.20付近では常誘電立方 晶(PC)相へと相変化することが明らかとなっている。実は、この相変化はBTを PC 相から冷却した際に生じる (FT→FO→FR)の 逐次相転移を反映したもので

(27)

24

ある。また興味深い特徴として、0.09 < x < 0.20組成域において、基底状態であ るFR相が広い温度範囲に渡って安定に存在し、このため (PC→FR)直接転移の 存在が予想される。この相変化に伴う分極ベクトルの変化は、 三次元既約表現 T1u に 関 係 す る 強 誘 電 モ ー ド の 逐 次 凍 結 に 関 係 し て 、 (<100>PC→<110>PC→<111>PC)と与えられる。FuとCohenは、以前、[111]PC方向 に分極ベクトルを持つFR相を対象に、この相の [001]方向に沿って電場を印加 した際の基底状態の変化を第一原理計算により検討している[14]。その結果、

[111]PC か ら[001]PC へ の 分 極 ベ ク ト ル の 変 化 は 、 逆 変 態 に 対 応 す る ([111]PC→[011]PC→[001]PC)経路ではなく、PTZで見出されている MA型強誘電単 斜晶相を経由した、([111]PC→{110}PC→[001]PC)の経路の方が低エネルギーである ことを指摘している。

そこで本章では、MA型強誘電単斜晶相の出現の有無を含め、BTZにおけ るFR相での結晶学的特徴、特に、強誘電分域構造を含むヘテロ構造としてのナ ノおよびメソスケールでの強誘電状態に注目し、実験を行った。具体的には、0

≤ x ≤ 0.17組成域のBTZ試料を作製し、その結晶学的特徴について主に透過型電

子顕微鏡を用いたその場観察により明らかにした。観察を行った温度範囲は室

温から450 Kである。

図3-1. BTZ物性相図

(28)

25 3.2 実験方法

本研究では、第2章に述べた手順に従い、固相反応法を用いてBTZ多結 晶試料を作製した。作製した試料の組成域は0 ≤ x ≤ 0.17、具体的には、x = 0お よび0.03試料、さらに0.05 ≤ x ≤ 0.17組成域ではx = 0.02間隔で試料を作製した。

得られたBTZ試料の評価としては、相の同定を室温で粉末X線回折曲線を測定 することにより行った。その結果、作製した試料は、全て単純ペロブスカイト 型構造の単相から成ることを確認した。物性評価に関しては、通常のLCR法を 用いて、各温度での複素誘電率を測定した。作製した試料の結晶学的特徴につ いては、加熱2軸傾斜ホルダーを装備したJEM-2010型およびJEM-3010型透過 型電子顕微鏡を用い、各温度での電子回折図形および対応する明・暗視野像を 撮影することにより明らかにした。観察を行った温度範囲は300~450 K、用い た試料は、アルゴンイオンミリングにより作製した薄片である。また、作製し た試料に存在する強誘電領域での分極ベクトルの方向は、2.3.1節で述べた手法、

すなわちフリーデル則が破れた二波励起条件のもと暗視野像を撮影することに より決定した。

3.3 実験結果

本博士論文での研究目的の中で、混晶系強誘電体BTZにおけるヘテロ構 造およびそのゆらぎの特徴を理解するため、第3章では、その出発点としてFR 相の存在領域およびそのヘテロ構造の特徴について、その詳細を調べた。具体 的には、作製したBTZ試料の各温度での強誘電状態の特徴を透過型電子顕微鏡 によるその場観察で明らかにした。調べた組成域は0 ≤ x ≤ 0.17、また得られた 試料の物性評価として、上述したように複素誘電率を測定した。図 3-2(a)には、

PC相から冷却した際に得られた、x = 0.03、0.05、0.09、0.11、0.15、および0.17 試料の各温度における複素誘電率の実数部 を示している。図に示す温度依存性 の中で、まずx = 0.03と0.05の実数部は互いに類似な挙動を示している。例え

ばx = 0.05の場合、PC相から試料を冷却していくと、385 K付近で鋭いピーク

を示した後、約80 Kの温度範囲でほぼ一定の値を取り、さらに325 K付近から 急激に減少している。x = 0.09試料についても、一定値の温度域は明瞭に観察さ れないものの、385 K付近で鋭いピークおよび350 K付近では肩のような異常が 観察され、実際、x = 0.03および0.05はほぼ同様な挙動を示すことが確認される。

ここで、誘電率ピークの温度をT1、低温域で異常を示す温度をT2 とすると、

(29)

26

図3-2. 冷却過程における(a)複素誘電率の実数部 'の温度依存性と

(b) x = 0.09試料での誘電損失tan の温度・周波数依存性

(30)

27

エンド物質BTでの (FT→FO→FR)逐次相転移との対応から、温度T1が(PC→FT) 相転移、温度T2が(FT→FO)相転移に対応することが理解される。よって、温度

T1は(PC→FT)強誘電相転移の転移温度、すなわちキュリー温度TCである。また

x = 0.09試料の誘電損失tan には、T2温度以下において、損失ピークとしての異

常を示すことも分かった。図3-2(b)には、x = 0.09試料から得られた誘電損失tan の温度・周波数依存性を示している。図中に示す3本の損失曲線での測定周波 数は、1、10、および100 kHzである。図から分かるように、誘電損失には、実 数部 に見られる温度T1と T2での異常に加え、新たな異常として、320 K 付近 の温度T3に小さなピークが存在している。このことは、x = 0.09試料の強誘電状 態において、誘電損失に寄与する状態変化が生じていることを示唆している。

一方、x = 0.11、0.15、および0.17に関しては、図3-2(a)から、実数部 の温度変 化は比較的単純なもので、幅広い単一の誘電率ピークのみが観察される。従来 報告されている物性相図によれば、このピークは(PC→FR)直接転移に対応する。

よって、これら3つの試料に観察される誘電率ピークの温度は、(PC→FR)直接 転移でのキュリー温度TCであると同定される。

作製した試料の複素誘電率の測定から、混晶系強誘電体BTZでは、従来 報告されているFT、FO、およびFR相の存在が確認された。そこで、これら相 での強誘電分域構造の特徴を透過型電子顕微鏡で調べた。図3-3には、(a) x = 0.05、

(b) x = 0.09、および(c) x = 0.15試料から得られた室温での明および暗視野像を示

している。これら像の中で、像(a)は[210]PC方向を電子線の入射方向とする明視 野像、像(b)と(c)は共に散乱ベクトルg = 1_10で結像した[110]PC暗視野像である。

これら像の中で、x = 0.05の明視野像(a)には、幅約50 nmのバンド状コントラス トが明瞭に観察される。その特徴は、隣り合うバンド状コントラスト間の境界 が{100}PCや{110}PC面の低指数格子面でなく、比較的高次な(12_2_)PC 面にほぼ平 行なことある。このことから、x = 0.05試料の室温での強誘電相は、従来の報告 通りFO相であることが理解される。一方、FR相であるx = 0.09および0.15試 料の暗視野像中には、x = 0.05でのバンド状分域構造とは異なり、へリングボー ン型の強誘電分域構造が観察される。例えばx = 0.15の像から分かるように、こ のヘリングボーン型分域構造は、幅約200 nmのバンド状コントラスト領域、な らびにその内部の幅約30 nmの縞状コントラスト領域から構成されている。

(31)

28

3-3. Zr置換量増加に伴う室温での強誘電分域構造の変化

(a) x = 0.05試料における明視野像。電子線の入射方向は[210]PC

(b) x = 0.09 試料における暗視野像。電子線の入射方向は[110]PC

用いた散乱ベクトルは g = 1_10PC

(c) x = 0.15試料における暗視野像。電子線の入射方向は[110]PC

用いた散乱ベクトルは g = 1_10PC

(32)

29

特徴は、隣り合うバンド状コントラスト領域間の境界が(1_10)PC 面にほぼ平行な こと、また細い縞コントラスト領域が<111>PC方向に伸びた形状を有しているこ とである。さらにx = 0.09の暗視野像(b)には、へリングボーン型分域構造に加 え、複雑な分域構造の領域や矢印で示す一様なコントラスト領域も存在してい る。

0.11 ≤ x ≤ 0.17組成域で見出されたヘリングボーン型強誘電分域構造の特 徴を理解するため、フリーデル則の破れを用いた解析を行った。図3-4には、x = 0.15試料における広いバンド状コントラスト領域から得られた、室温での[110]PC

暗視野像を示している。用いた散乱ベクトルは (a) g = 1_10PC、(b) 11_0PC、(c) 002PC、 および(d) 002_PC、撮影はフリーデル則の破れた二波励起条件のもとで行った。ま た、対象とした広いバンド領域全体の様子を示すため、図 3-4(a)の挿入図には、

縮小した1_10PC暗視野像を示している。実際の観察は、この像の白線で囲った領 域について行っている。ここで、白線で囲った領域を用いた理由は、強誘電分 域を解析する際に弊害となる、歪コントラストが観察されないからである。す なわち、この領域ではフリーデル則の破れによるコントラストのみを得ること が可能で、強誘電状態の解析に最も適した領域であると判断した。このことを 踏まえ、1_10PC像(a)と11_0PC像(b)に注目すると、像中には共に[1_11]PC方向に伸び

た幅約 30 nm の細い縞状コントラス領域が観察される。しかし、解析から、こ

れらの像のみで縞状領域の対応関係を理解することは困難であることが分かっ た。このため、他の像を含めた詳細な解析結果を後で述べることにする。次に、

002PC像(c)と002_PC像(d)には、幅約70 nmの淡いバンド状コントラスト領域が観 察される。その特徴は、隣り合う淡いバンド領域間の境界が[11_2]PC 方向に平行 であること、これら二つの像において明・暗のコントラストが反転しているこ とである。そこで、フリーデル則の破れを考慮して解析を行った所、像(c)に観 察される淡い明・暗のバンド状コントラスト領域は、それぞれ[001]PCと[001_]PC

(33)

30

3-4. x = 0.15試料から得られた室温での[110]PC暗視野像と対応する電子回折図形。

用いた散乱ベクトルは (a) g = 1_10PC、(b) 11_0PC、(c) 002PC、および(d) 002_PC

(e) 1_10PC像(a)と002PC像(c)を重ねた像、 (f1) 像(e)中の白線領域における重ねた像、

(f2) 1_10PC像、(f3) 11_0PC像、(f4) 決定した強誘電分域構造のモデル

(34)

31

方向に平行な分極ベクトル成分<P001>を持つことが明らかとなった。ここで重要 な点は、002PC像(c)と002_PC像(d)に細い縞状コントラスト領域が観察されないこ とである。このことは、1_10PC像(a)と11_0PC像(b)での縞状コントラスト領域にお ける分極ベクトル成分の方向が、[001]PCおよび[001_]PC方向に対して垂直な<P110>

であることを示している。

1_10PCおよび11_0PC像中に観察される縞状コントラスト領域は、<P001>に垂 直な<P110>分極成分を持つことが示された。このことを基に、各縞状コントラス ト領域の分極ベクトルの方向を決定した。まず、1_10PC像(a)と002PC像(c)を重ね て得た像(重ねた像)(e)に注目した所、1_10PC像中の明・暗の縞状コントラスト領 域は[11_2]PC 方向に沿って交互配列していることが分かった。ここで、まず重ね た像での明るい縞状コントラスト領域は1_10PC像の明るい縞状領域と 002PC像の 淡く明るいバンド領域を重ねたもので、その結果、分極ベクトルの方向は [1_10]PC

+ [001]PC = [1_11]PC方向であると決定される。一方、暗い縞状領域について、単

純な解釈を行うことは困難であることが分かった。このため、以下に述べる詳 細な解析を行った。

重ねた像における暗い縞状領域での分域ベクトルの方向は、得られた暗 視野像中に観察される各領域に対して、その位置の対応関係を検討することに より決定した。具体的には、重ねた像(e)での白線で囲んだ領域を対象とした。

像(f1)、(f2)、および(f3)は、それぞれ重ねた像、1_10PC像、および11_0PC像での白 線領域である。これらの像の中で、まず重ねた像において [1_11]PC方向に分極ベ クトル P を持つ明るい縞状領域は、1_10PC像(f2)では赤矢印で示す明るいコント

(35)

32

ラスト領域、11_0PC 像(f3)では暗いコントラスト領域として観察され、このこと

から[001]PC分極成分に加え、[1_10]PC分極成分を有していることが確認される。

一方、重ねた像での暗い縞状縞域では、1_10PC 像(f2)から分かるように、3つの 縞状コントラスト領域が一組になって存在している。その特徴は、両端の縞状 領域が暗いコントラスト、中央の縞状領域は淡く暗いコントラストを与えてい ることである。これら 3 つの縞状領域の中で、まず両端の二つの暗い縞状領域 に注目すると、11_0PC像では緑矢印で示す明るいコントラストとして観察される。

よって結果として、1_10PC像での両端の暗い縞状領域は、[11_0]PC + [001_]PC = [11_1_]PC

方向に平行な分極ベクトルを持つことになる。一方、1_10PC像での淡く暗い縞状 領域は、11_0PC像でも青矢印で示す暗いコントラストとして観察され、フリーデ ル則の破れが生じていない。このことは、驚くことに、この領域が<P110>分極成 分を含んでいないことを示している。しかし、淡く暗い縞状領域は 002_PC 像(d) において明るいコントラスト領域として観察される。よって、この領域の分極 ベクトルの方向は[001_]PC方向で、その対称性は正方晶系である。

以上の観察結果を基に、重ねた像(e)の白線領域における強誘電分域構造 のモデルを作成した。図(f4)には、作成した分域構造モデルの模式図を示してい る。図から分かるように、その特徴は、分極ベクトル P//[1_11]PCP//[11_1_]PCを 持つ菱面体晶系の縞状領域だけでなく、P//[001_]PCの正方晶系縞状領域が存在す ることである。すなわち、作成した強誘電分域構造モデルは、FR および FT 縞 状領域の[11_2]PC 方向に沿った交互配列によって特徴付けられている。結局、こ のモデルから、0.11 ≤ x ≤ 0.17組成域の強誘電状態は、従来報告されているFR 単相ではなく、FR 領域の一部に FT 領域が残存した、ナノスケール共存状態で あることが結論される。

(36)

33

組成域0.11 ≤ x ≤ 0.17に存在するナノスケール(FT+FR)共存状態の形成過 程を明らかにするため、透過型電子顕微鏡によるその場観察を行った。図 3-5

には、x = 0.15試料において同一領域から得られた各温度での暗視野像と対応す

る[110]PC電子回折図形を示している。暗視野像の撮影温度は、それぞれ(a)と(a’) 358 K、(b)と(b’) 341 K、(c)と(c’) 328 K、および(d)と(d’) 300 K、誘電率測定から

得られたx = 0.15試料のキュリー温度TCは約345 Kである。また、像(a)から像

(d)はg = 002PC、像(a’)から像(d’)はg = 1_10PCを用いて結像している。これらの像 の中で、まずTC直上の358 K における像(a)と(a’)は、比較的一様なコントラス トを示している。そこで試料を冷却してTC温度以下になると、002PC像中には、

幅約200 nmのバンド状コントラスト領域が出現し、更なる温度低下で明瞭なバ

ンド状コントラストへと変化する様子が観察される(像(b)-(d))。その特徴は、

冷却時において形態に変化がないこと、300 Kの像(d)には、矢印で示す縞状領域 の出現も確認できることである。ここで興味深い点は、後で述べるように、こ の縞状領域が1_10PC像中に観察される縞状領域を追随するように出現しているこ とである。

002PC 暗視野像での変化の特徴に続き、1_10PC 像に関して得られた結果を 報告する。試料を PC 相から冷却すると、1_10PC像(b’)では、002PC像の場合とは 異なり、PC相中に存在する明るい斑点状領域が、TC付近から局所的に再配列・

連結していく様子が観察される。さらに冷却を続けると、像(b’)から像(d’)で示 されるように、これら斑点状領域は<111>PC方向に沿って連結し、細い縞状領域 を形成した。この際最も興味深い点は、斑点状領域の大きさが、温度低下によ ってほとんど変化しないことである。ここで、FR相の強誘電分域構造の解析結 果から、002PC像(a)と1_10PC像(a’)に観察される、PC 相での明るい斑点状領域は

それぞれ[001]PCと[1_10]PC分極成分を有する領域である。このことは、常誘電相

である PC 相において、ヘテロ構造のゆらぎとして<P001>および<P110>分極成分 を持つナノ成分領域が既に存在していることを示している。さらに上述の観察 結果から、PC相からの冷却に伴う<P110>成分領域の発達様式は、<P001>成分領域

(37)

34

図 3-5. x = 0.15 試料において同一領域から得られた各温度での暗視野像

と対応する[110]PC電子回折図形。像(a)-(d)は g = 002PC、像(a’)-(d’)はg = 1_10PC

を用いて結像している。撮影した温度は、(a)(a’) 358 K、(b)(b’) 341 K、(c)(c’) 328 K、および(d)(d’) 300 K。

図  1-3.    電場印加に伴う PZN-8%PT での分極ベクトルの変化
図   1-5.    Pb 系および Ba 系リラクサーにおける比熱容量の温度依存性
図 2-1.    固相反応法による BTZ 試料の作製手順
図  2-4.  フリーデル則の破れを用いた強誘電分域構造の解析例。
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参照

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