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脳下垂体の系統発生に関する研究 Phylogenetic studies of the pituitary gland

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脳下垂体の系統発生に関する研究

Phylogenetic studies of the pituitary gland

2003 年 3 月

川原 玄理

Genri Kawahara

(2)

早稲田大学大学院理工学研究科

博士論文

脳下垂体の系統発生に関する研究

Phylogenetic studies of the pituitary gland

2003 年 3 月

川原 玄理

Genri Kawahara

物理学及応用物理学専攻 内分泌学研究

指導教授 菊山 榮

(3)

目次

第1章  本研究の目的と意義

P. 1-9

第2章  マボヤ神経複合体の

PRL

ACTH

免疫陽性物質

について

P. 10-23

      2 

1  実験材料と方法

P. 11-14

      2 

 2  実験結果

P. 15-21

      2 

 3  考察     

P. 22-23

第3章

マボヤ

PC

1、

PC

2免疫陽性物質と神経複合体内の分布

P. 24-43

      3 

 1  実験材料と方法

P. 27-30

      3 

 2  実験結果      

P. 31-40

      3 

 3  考察     

P. 41-43

4

マボヤ

PC

2様物質の

cDNA

クローニング

P. 44-61

      4 

 1  実験材料と方法

P. 46-52

      4 

 2  実験結果     

P. 53-59

      4 

 3  考察              

P. 60-61

(4)

5

下垂体ホメオボックス

cDNA

のクローニング

P. 62-75

      5 

 1  実験材料と方法      

P. 64-70

      5 

 2  実験結果      

P. 71-75

      5 

 3  考察       

P. 76

第6章 

本研究の成果とこれからの課題

P. 77-78

参考文献

P. 79-91

謝辞

履歴書および研究業績

(5)

1

第 1 章 本研究の目的と意義

  脳下垂体は脊椎動物の生命活動を支えるのに重要な役割を 果たしている様々なホルモンを分泌する器官として知られてい る。脳下垂体がどこから発生してくるのかについては、腺性下 垂体は発生時に口陥より生じたいわゆるラトケ嚢(Rathke, 1838)に由来し、神経性下垂体は間脳底より生じた突起よりで きるといわれてきた。神経性下垂体の場合、この説には疑問の 余地はない。しかしながら腺性下垂体の場合更に遡ってラトケ 嚢、またはそれに相当する細胞群の起源については明確にされ ていなかった。我々の研究室ではヒキガエルの野生型の細胞群 を突然変異型のメラニンを持たないアルビノ胚に移植すること により移植細胞の移動、分化が明らかになると考え、神経胚の 神経隆起の中央部(Anterior neural ridge : ANR)の組織を交 換移植し、アルビノ胚に移植された野生型細胞の移動と分化に ついて調べた(図 1-1)。その結果、この ANR が脳下垂体の起 源であり、発生、成長したのちに各種の下垂体ホルモンに対す る抗体で染色される腺性下垂体細胞はメラニンを含有した細胞

(6)

2

であることが証明された  (Kawamura and Kikuyama, 1992, 1998)。一方、神経板の中央部の組織を同様な方法によりその 移動、分化を調べたところ、正中隆起部を含む後部視床下部を 生じることが確認された。さらに鼻の原基である鼻板について も神経隆起に起源もち、ANR の両側に隣接して位置しているこ とも明らかとなった。これらの結果は、鳥類でニワトリとウズ ラのキメラ胚を用いた交換移植の実験結果  (Couly and

LeDouarin, 1985)とも一致していることがわかった。また魚類 でも近年腺性下垂体が神経外胚葉由来であるという証拠が得ら れつつある。脊椎動物全般に亘って腺性脳下垂体は神経外胚葉 由来であるという説を確固たるものにするには、哺乳類でも同 様であることを証明する必要がある。そこで我々の研究室では ラットの神経胚を用い、神経褶の各部に DiI による標識を行い、

発生、成長する過程でどの部分がラトケ嚢、更に下垂体へと分 化していくかを全胚培養および器官培養により調べた。その結 果、神経褶前端中央部の細胞を標識した場合にのみ、ラトケ嚢 で DiI で標識された細胞が観察され、やがてそれらは脳下垂体 細胞に分化してホルモンを生産することが DiI と下垂体ホルモ ンに対する抗体を用いた二重標識により示された(Kouki 

et al

.,

(7)

3

2001)。

  このようにして両生類、鳥類、哺乳類では腺性脳下垂体は 神経外胚葉から脳下垂体が発生してくることを証明することが できた(図 1-2)。以上のような結果にもとづき、我々は脊椎動 物では神経外胚葉より脳下垂体が分化してくることが普遍的で あるという説を提唱することにした(Kawamura et al., 2001)。

      このような背景にあってさらに著者は、脳下垂体が突然脊椎 動物の段階で出現したと考えるより、系統学的に脊椎動物の祖 先と考えられている原索動物に脳下垂体の祖先型があるとする のが妥当であると考え、ホヤを用いて脳下垂体の祖先型の探索 を試みた。ホヤでは、神経外胚葉から分化してくる器官は、入 水孔の付近に位置している神経複合体すなわち神経節(neural ganglion)、神経腺  (neural gland)、及び背索  (dorsal strand) であることが知られている(図 1-3、1-4)(Willey, 1893; Berril, 1950; Dodd and Dadd, 1966)。脊椎動物の腺性脳下垂体とホ ヤの神経腺が構造上似かよっていることから、これまで神経腺 が脳下垂体に相当するものだと考えて脊椎動物の腺性脳下垂体 ホルモン様物質がこの神経腺に存在していることを証明するた めの試みがなされてきた(Ruppert, 1990)。しかし現在まで脊

(8)

4

椎動物の脳下垂体ホルモン様物質を含む細胞に相当するものは 神経腺に見出されていない。一方、脳神経節に関しては、これ までプロラクチン(PRL)(Fritsch et al., 1982 ; Pestalino, 1983)や ACTH (adoreno-corticotropic hormone) (George and Dubois, 1985)のような腺性下垂体ホルモンに対する抗体 による免疫活性のある物質の存在を記述している報告が散見さ れるがそれらの免疫陽性物質が脳下垂体ホルモンと同様に分泌 顆粒で存在するかといった点まで解析した研究はなかった。一 方脊椎動物の視床下部ホルモン様物質についてはカタユウレイ ボヤ(

Ciona intestinalis

)の神経複合体の GnRH 免疫陽性細胞の 存在が示され、GnRH 様物質の神経複合体からの単離精製の報 告もあり(Powell 

et al

., 1996)、神経複合体は脳下垂体というよ りむしろ脊椎動物の視床下部に相当するという見方が強くなっ た。原索動物における脳下垂体ホルモンの存在を明らかにする ことにより、高等動物の脳下垂体はどのような変遷を経て現在 の脊椎動物に見られるような器官を形成するに至ったのか、そ して原索動物にも存在するとすればそれらのホルモンと脊椎動 物の脳下垂体ホルモンの間にどのような構造上の共通点がある かを探ることが可能になると考えられる。

(9)

5

  脊椎動物の脳下垂体細胞の祖先型に相当する細胞が原索動 物のホヤでは神経外胚葉由来である神経複合体に存在するとい う仮説を免疫組織化学的手法および分子生物学的手法によって 検証することを主たる目的として実験を行うことにした。

(10)

6

図 1-1 神経隆起部前端部から発生する下垂体

アルビノ胚に移植した野生型の神経隆起部前端部は下垂体へと分化する。

(a)図で神経板(NP)の前に位置する黒い部分が神経隆起部前端部で、発生 い(b)、(c)図のように脳(Br)と前腸(Fg)の間に入り込み前腸と接した後(

図のように腺性下垂体が生じる。

(11)

7

図 1-2 下垂体、視床下部および鼻の原基の位置の両生類、鳥類および哺 類間での比較

(a)toad、(b)chicken、(c)rat の神経胚の比較。下垂体原基:黒色部 視床下部原基:斜線部、鼻原基:灰色部。

(12)

8

図 1-3 マボヤ(

Halocynthia roretzi)成体の模式図

(13)

9

図 1-4 マボヤ神経複合体

背索(dorsal strand)に沿って顆粒をもった細胞群分布している。また 経節(cerebral ganglion)中にも顆粒をもったニュ−ロンが多数存在する

(14)

10

第2章 マボヤ神経複合体の PRL、ACTH 免疫陽 性物質

  ホヤでは、神経外胚葉から分化してくる器官は、入水孔の 付近に位置している神経複合体すなわち神経節、神経腺、及び 背索であることが知られている(Willey, 1893; Berril, 1950;

Dodd and Dadd, 1966)。脊椎動物の腺性下垂体とホヤの神経 腺が構造上にており、神経腺が脳下垂体に相当するものだと考 えて脊椎動物の腺性下垂体ホルモン様物質をこの器官に求めよ うとする試みがなされてきた(Ruppert, 1990)。しかし現在ま で脊椎動物の脳下垂体ホルモン様物質を含む細胞に相当するも のは見出されてはいない。一方、原索動物の神経節(cerebral ganglion)に PRL 免疫陽性物質、ACTH(副腎皮質刺激ホルモ ン)免疫陽性物質が存在しているという報告があったが

(Georges and Dubois, 1979, 1985; Fritsch et al., 1982;

Pestarino, 1983, 1988)、それらの陽性物質が分泌顆粒内に存

(15)

11

在しているかどうかについては調べられていない。脊椎動物の 下垂体の祖先型を探索するステップとして脳下垂体前葉ホルモ ンである PRL、ACTH について、その免疫陽性細胞がマボヤ神 経複合体内に存在しているかどうかを調べた。また、存在する ならそれらの免疫陽性物質が分泌顆粒内に存在するか否かを免 疫電顕による観察を行って明らかにしようと実験を行った。

(16)

12

2  – 1  実験材料と方法

2-1-1  実験材料

原索動物(尾索類、壁性目)であるマボヤ成体(

Halocynthia

roretzi

  )を用いた。日本北方に多く生息し、東北地方で養殖

されている。マボヤはこの種の中でも体重 250-450g の大型 種である。オタマジャクシ状の幼生期を経て変態をして成体と なる。本実験では、浅虫産、三陸産のものを養殖業者より購入 し用いた。

2-1-2 免疫染色

   マボヤ神経複合体を酢酸抜きブアンによって 15 時間、4℃

で固定を行った。70%

100%エタノール、100%キシレンを用 い脱水を行い、脱気した後、パラフィンで包埋した。6

µ

m の厚 さで切片を作成し、ゼラチンでコーティングされたスライドガ ラス上に載せた。パラフィン切片の乾燥、伸張の後、100%キシ

(17)

13

レン、100%

70%エタノールで脱パラフィンした。0.5% H2O2 水溶液に浸し 30 分間、内因性ぺルオキシダーゼの不活性化を 行い、その後脱イオン水で洗浄後、PBS で洗浄した。最初に 50 倍希釈した正常ブタ血清で 30 分間処理し 1% BSA-PBS  でブタ ACTH 抗体(Tanaka and Kurosumi, 1986)を 2000 倍希釈、

ウシガエル PRL 抗体  (Yamamoto and Kikuyama, 1982)を 1000 倍に希釈した1次抗体溶液加え、4℃で一晩インキュベー トした。対照としてこの抗体に過剰量の抗原(10 

µ

g/ml)をあ らかじめ反応させたものを使用した。その後切片を PBS で洗浄 しビオチン化された抗ウサギ IgG ヤギ抗体(DAKO)(300 倍 希釈)を加え室温で1時間反応した。PBS で洗浄後、室温で1 時間ストレプトアビジン(DAKO)(300 倍希釈)を反応させた。

洗浄後、0.05M Tris 溶液に 0.02%の DAB と 0.006%の H2O2 を加え、発色した後、顕微鏡下で観察した。

2-1-3 免疫電顕

   細切りした神経複合体の小片を、4%ホルムアルデヒドお よび 0.5%グルタルアルデヒドを含む 0.2M リン酸緩衝液

(18)

14

(pH7.2)中、4 時間 4℃で固定し洗浄液中で 1 晩洗い、1%オ スミウム酸で 1 時間 4℃後固定した。切片をニッケルグリット ですくい、1%メタヨウ素酸で 10 分間処理した。1 次抗体は抗 ウシガエル PRL 抗体を 200 倍希釈、抗ブタ ACTH 抗体を 200 倍で用い、4℃で 1 晩処理した。PBS で洗浄後、金粒子(10nm)

で標識した 2 次抗体(British BioCell Int.)を 20 倍希釈で用 い、1時間処理した。洗浄後に電子顕微鏡(Hitachi , model H700H)で観察した。

(19)

15

2  –  2  実験結果

  PRL 免疫陽性物質が神経複合体のいずれの器官に存在する か否かを確かめるため、数種の抗 PRL 抗体を用いてマボヤの神 経複合体の免疫染色及び免疫電顕による観察を行った結果、マ ボヤ神経複合体の神経節の一部の細胞および背索の一部の細胞 群が抗ウシガエル PRL 免疫陽性細胞であった(図 2-1)。尚、

対照実験として十分量の抗原で抗体を吸収した後染色を行った ものでは PRL 陽性細胞は検出されなかった。一方、神経腺には 陽性細胞は存在していなかった。さらに PRL 免疫陽性物質が神 経節及び、背索の細胞の分泌顆粒内に存在していることが、免 疫電顕による観察によりわかった(図 2-2)。

  ブタ ACTH に対する抗血清で特異的に染色される細胞が背 索の一部の細胞で多数観察された(図 2-3、2-4A)。神経節で もわずかであるが、ACTH 免疫陽性細胞が観察された。しかし ながら、これらの陽性細胞は PRL 免疫陽性細胞同様、神経腺に は存在していなかった(図 2-3)。背索での PRL 陽性細胞と ACTH 陽性細胞の分布の観察を隣接切片で免疫染色し行った結果、

(20)

16

ACTH 陽性細胞は PRL 陽性細胞とは異なる細胞であることが 明らかになった(図 2-4A、B)。対照として抗原を吸収させた 抗体を用いた場合には ACTH 陽性細胞も PRL 陽性細胞もその 染色は消失している(図 2-4C、D)。また、免疫電顕の結果か ら金粒子が分泌顆粒に多く存在し、ACTH 免疫陽性物質は分泌 顆粒内に存在していることが明らかになった(図 2-5)。それら の分泌顆粒の直径も PRL 陽性のものは 0.1-0.25

µ

m であるのに 対し ACTH 陽性のものは 0.3-0.5

µ

m とサイズが異なることが わかった。

(21)
(22)
(23)
(24)
(25)
(26)

22

2  –  3  考察

  今回の実験結果より、神経節および背索の一部の細胞が PRL 免疫陽性細胞であり、免疫電顕による観察の結果、その陽性物 質が分泌顆粒内に存在していることが、明らかにされた。また、

ACTH 免疫陽性細胞も背索に多数、そして神経節にわずかなが ら存在していることが明らかになった。免疫電顕の結果でも、

陽性物質が分泌顆粒内に存在していることがわかった。さらに ACTH 陽性細胞と PRL 陽性細胞との分布を比較するとそれら の細胞は異なり、分泌顆粒の大きさも PRL 陽性のものは 0.1- 0.25

µ

m であるのに対し ACTH 陽性のものは 0.3-0.5

µ

m とサ イズが異なっておりこれらの細胞は異なる細胞であることは明 確である。Pestarino(1984, 1985a, b)は他の種のシロボヤ

Styela plicata)で神経腺、神経節に PRL−および ACTH−

免疫陽性細胞が存在していることを示しているが、背索にこれ らの陽性細胞が存在していることは指摘していない。また、分 泌顆粒内にそれらの免疫陽性物質が存在しているか否かについ ても調べていない。今回の実験では PRL 免疫陽性細胞、ACTH

(27)

23

免疫陽性細胞ともに神経節、背索の一部の細胞に存在している ことが明らかになったが、神経腺の細胞には存在しないばかり でなく、分泌顆粒すら存在しないことがわかった。これらの結 果から、原索動物のホヤの神経節および、背索の一部の細胞は 脊椎動物の下垂体細胞に相当する特徴を持っていることが推測 される。

(28)

24

第 3 章 神経複合体に存在するマボヤ PC1、PC 2免疫陽性物質

  第2章で述べたように、マボヤ神経複合体で ACTH 免疫陽 性物質の存在が明らかにされた。脊椎動物では ACTH、

α

- melanophore-stimulating hormone(α-MSH)、

β

-エンドル フィンなどは大分子の前駆体であるプロオピオメラノコルチン

(POMC)が生成されたのち酵素により、POMC から切り出さ れ活性をもったペプチドとして生成される。このとき、大分子 の切断の役割を果たすのがプロホルモンコンバーターゼ(PC)

1、2である(図 3-1)。PC は一般に標的分子のアミノ酸配列 の特定の部位(塩基性アミノ酸対部位)で切断することが知ら れている。この酵素はカルシウム依存的セリンプロテアーゼで あり、サチライシン様の触媒領域をもっている。脊椎動物をは じめ、様々な動物で同定されており(Seidah et al., 1991; Zhou and Lindberg, 1993;  Vieau et al., 1998; Gangnon et al.,

(29)

25

1999, Oliva et al., 1997,Ouimet et al. 1993)、特に神経細胞、

分泌細胞で発現しているものとして PC1、2が知られており、

脊椎動物の脳下垂体では前葉、中葉の下垂体ホルモン産生細胞 では PC1、中葉では PC2 の存在が確認されている。これらの酵 素は前駆体である POMC を塩基性アミノ酸対の配列部位で切断 し、PC1により  ACTH、β-lipotropic hormone(β-LPH)へ と変換し、PC2はこれらの ACTH、β-LPH をα-MSH、β- エンドルフィン等の活性のあるペプチドへと変換していくこと が知られている(Benjannet 

et al., 1991; Thomas et al.,

1991;Seidah et al., 1999)。

    神経複合体の神経節および、背索の一部の細胞の分泌顆粒内 に ACTH 免疫陽性物質の存在が確かめられたことから、原索動 物のホヤでもそれらの細胞内に PC が存在する可能性がある。

そこで抗 PC1、PC2抗体を用い免疫染色、免疫電顕による観 察を行った。また、ACTH 免疫陽性細胞、PRL 免疫陽性細胞と の分布の比較を行うため、連続切片で各抗体を用いて免疫染色 を行った。さらに、ACTH が PC2 により切断されてできる corticotropin-like intermediate lobe peptide (CLIP)に対する 抗体を用い、CLIP 免疫陽性細胞と PC1、PC2免疫陽性細胞と

(30)

26

の分布の比較を行った。

(31)

27

3  –  1  実験材料と方法

3-1-1 免疫染色

マボヤ神経複合体を酢酸抜きブアンによって一晩、4℃で固定を 行った。70%

—100%エタノール、100%キシレンを用い脱水を

行い、パラフィン包埋を行った。5

µ

m の厚さで連続隣接切片を 作成し、ゼラチンでコーティングされたスライドガラス上に載 せた。パラフィン切片の乾燥、伸展の後、100%キシレン、

100%—70%エタノールで脱パラフィンした。PC1、PC2の免 疫染色を行う切片については免疫染色を高めるため、Gomori の酸化処理(Kurabuchi and Tanaka, 1997)を 0.5%  過マン ガン酸カリウム、0.25%硫酸水溶液で 20 秒間行なった後、3%

過硫酸ナトリウム水溶液で1分処理し蒸留水で洗浄後、次の行 程に進んだ。50 倍希釈した正常ヤギ血清で1時間処理し、抗マ ウス PC1、マウス PC2抗体(Tanaka et al., 1996)を 1000 倍に希釈した 1% BSA-PBS を加え一晩インキュベートした。

抗ブタ ACTH 抗体については 2000 倍希釈、PRL 抗体について

(32)

28

は 1000 倍希釈で用い、抗ヒト CLIP 抗体については 2000 倍希 釈で用いた。対照としてこの抗体に過剰量の抗原を吸収させた ものを使用した。その後切片を PBS で洗浄しローダミンで標識 された抗ウサギ IgG ヤギ抗体(50 倍希釈)を加え室温で1時 間反応後、PBS で洗浄し蛍光顕微鏡(Nikon, Tokyo, Japan)

下で観察した。

3-1-2 免疫電顕

細切りした神経複合体の小片を、4%パラホルムアルデヒドおよ び 0.5%グルタルアルデヒドを含む 0.2M リン酸緩衝液(pH7.4)

中で 4 時間 4℃で固定し洗浄液中で 1 晩洗い、1%オスミウム酸 で 1 時間 4℃で後固定した。切片をニッケルグリットですくい、

1%メタヨウ素酸で 10 分間処理した。1%BSA で1時間処理し た後、マウス PC1、マウス PC2に対する抗体を 50 倍希釈で 用い、4℃で 1 晩処理した。洗浄後、金粒子(10nm)で標識し た 2 次抗体(British BioCell Int.)を 20 倍希釈で用い1時間 反応させた。洗浄後、電子顕微鏡(Hitachi H700H)で観察し た。  対照として抗原(

100µ

g/ml)をあらかじめ 4℃で一晩吸

(33)

29

収させた抗体を用い行った。

3-1-3 SDS-PAGE  と  ウエスタンブロッティング  法

  神経複合体に含まれている PC1、PC2免疫陽性物質の分 子量を明らかにするため、神経複合体の抽出液の一部を SDS- PAGE とウエスタンブロッティング法により解析した。分離ゲ ルとしてポリアクリルアミドゲル(10%)を用い、濃縮ゲルと してポリアクリルアミドゲル(5%)を用い解析を行った。電気 泳動条件は定電圧 100V で行い、PVDF 膜(Immobilone

membrane:Amarsham)への転写は定電流 100mA で 1 時間 行った。転写後、膜のブロッキングのため、3%BSA-TBS によ り  1 時間インキュベートした。洗浄液 (0.1M Tris-HCl  、0.5M NaCl  、0.1%Tween 20)  で洗浄後、抗体希釈液(1%BSA-TBS) で 10000 倍に希釈した抗マウス  PC1 抗  体、20000 倍希釈し た抗マウス PC2 抗体を加え、1 晩 4℃でインキュベートした。

洗浄後、2 次抗体溶液 (anti-rabbit IgG、ぺルオキシダーゼ複 合体)を 10000 倍に希釈し加え、室温で 1 時間インキュベート し、洗浄後、ECL Western blotting detection reagents、

(34)

30

analysis system (Amersham Pharmacia Biotech)をもちい、

膜上のシグナルを検出した。対照として抗原(

g/ml)をあら かじめ 4℃で一晩吸収させた抗体を用いそれぞれ行った。

(35)

31

3  –  2 実験結果

  神経複合体の神経節内の細胞と背索に沿って散在している 細胞群の一部に PC 免疫陽性細胞が観察された(図 3-2、1)。

さらに、PC1、PC2 免疫陽性物質が分泌顆粒内に存在している ことを確かめるため、免疫電顕による観察を行った。その結果、

分泌顆粒内に PC1、PC2 免疫陽性物質を含有していることがわ かった(図 3-4)。その免疫陽性物質についてウエスタンブロッ ティング法により解析したところ、約 66kDa の位置に PC1 免 疫陽性を表すバンドを検出した(図 3-5A1)。また約 70kDa の 位置に PC2 免疫陽性を表すバンドを検出した(図 3-5B1)。抗 原を吸収させた抗体を用いた場合はそれぞれバンドが検出され なかった(図 3-5A2、5B2)。次に PC1、PC2陽性細胞と ACTH 免疫陽性細胞や PRL 免疫陽性細胞との関連を知るため ACTH、

CLIP、PRL、PC1、PC2 に対する抗体を用いて隣接切片を用い 免疫染色を施した。ACTH、PC1、PRL に対する抗体でそれぞ れの連続する切片を免疫染色した結果、ACTH と PC1の両者 に対して免疫陽性である細胞が存在し(図 3-6A、B)、その細 胞群は PRL 免疫陽性細胞群とは明らかに異なることがわかった

(36)

32

(図 3-6C)。これは ACTH、PC2 および PRL の抗体を用いた 場合も同様の結果が得られた(図 3-6D、E、F)。また、ACTH 陽性細胞は CLIP 免疫陽性細胞でもあることから(図 3-7A、B)、

CLIP 免疫陽性細胞と PC1または PC2免疫陽性細胞の比較を 連続した切片で行った結果、PC1、2免疫陽性細胞はそれぞれ CLIP 免疫陽性でもあった(図 3-8A、B、C、D)。

(37)

33

図 3-1 POMC 分子からプロホルモンコンバーターゼ(PC)により 生成される活性ペプチド

脳下垂体前葉に PC1、中葉に PC1、PC2が存在している。

(38)
(39)
(40)
(41)
(42)
(43)
(44)
(45)

41

3  –  3  考察

  第2章で述べたように、ACTH 免疫陽性物質が、神経節、

背索の細胞の分泌顆粒内に存在していることが明らかになった が、今回の実験で CLIP 免疫陽性細胞の存在も明らかになった。

これまで POMC 関連のペプチドの存在は神経節で ACTH (Fitsch et al., 1982; Georges and Dubois, 1979, 1985;

Pestarino, 1988)、

α−

MSH (Pestarino, 1988)、

β−

エンドルフ ィン ( Pestarino, 1985c)の免疫陽性物質の報告がある。また、

POMC 様物質の mRNA が神経節の細胞で発現しているという 報告がある(Masini 

et al

., 1998)。今回の実験で PC1、PC2 様物質が神経節、背索の細胞の分泌顆粒内に存在していること を示された。さらに PC1、PC2様物質と ACTH 様物質、CLIP 様物質が同じ細胞に存在していることも示された。神経複合体 をウエスタンブロッティング法により解析した結果、PC1陽性 物質は約 66kDa、PC2陽性物質は約 70kDa のバンドが検出さ れた。これらの分子量はこれまで報告されている PC1、PC2 の分子量に近いものであった  (mouse: Seidah et al., 1991;

(46)

42

Zhou and Lindberg, 1993; frog: Kurabuchi and Tanaka, 1997; Vieau 

et al., 1998; Gangnon  et al., 1999;  Amphioxus :

Oliva et al., 1997; Aplysia : Ouimet et al., 1993)。これらの 結果はホヤの神経複合体で PC1、PC2様物質が存在すること、

PC1、PC2様物質は ACTH、CLIP 免疫陽性物質は共存してい ることから POMC 様物質のプロセッシング酵素として機能して いる可能性を示唆している。マボヤ神経複合体では下垂体ホル モン様物質だけでなく GnRH 様免疫陽性物質の存在の報告があ る(Terakado and Ogawa, 1995)。また Powell ら(1996)

は二種の GnRH 様物質、tGnRH-I、tGnRH-II をスボヤ

Chelyosoma productum)の神経複合体から単離し、

tGnRH-I は背索周辺部の細胞に存在していることを示している。

また、カタユウレイボヤでこれらの GnRH が放精を引き起こす 作用があるという報告がある(Terakado, 2001)。脊椎動物の 場合、PC2 が GnRH 前駆体のプロセッシングを行っており

(Wetsel et al., 1995)、背索に分布している PC2 様物質は tGnRH  のプロッセッシングにも関わっている可能性も考えら れる。

  以上のような結果から、マボヤ神経複合体の神経節、背索

(47)

43

の一部の細胞は脊椎動物の脳下垂体細胞に似た特徴をもつ細胞 群であると推測される。

(48)

44

第4章  マボヤ PC2様物質の cDNA クローニング

  第 3 章で述べたように神経節、背索の一部の細胞が PC1、

PC2免疫陽性であることがわかった。一方 ACTH 陽性細胞、

CLIP 陽性細胞は PC 陽性細胞であることも明らかになった。脊 椎動物と同様な PC1、PC2分子が存在するとすると、その mRNA の発現があると考えられる。これらの免疫陽性細胞が PC 1、PC2様物質の遺伝子を発現しているかどうかを確かめるた め神経複合体からの PC1、PC2様物質の cDNA のクローニン グを試みた。PC1、2については脊椎動物だけでなく無脊椎動 物についてもその cDNA がクローニングされており、その塩基 配列から推測されるアミノ酸配列が明らかにされている。これ らの他の動物の PC1、2の触媒領域がとても良く保存されて いることより、その触媒領域のアミノ酸配列を基にプライマー を作成し RT-PCR を行い、マボヤ PC1、2の cDNA のクロー ニングを試みた。また、ノザン解析によりマボヤの各器官、組 織での発現、

in situ  ハイブリダイゼーションの手法を用い神

(49)

45

経複合体内の発現について確かめた。

(50)

46

4  –  1 実験材料と方法

4-1-1 cDNA の RT-PCR による増幅

  マボヤ神経複合体から抽出試薬 ISOGEN(Nippon Gene)を 用いて全 RNA を抽出し、そのうちの5

µ

g を鋳型に逆転写酵素 Superscript II を用い逆転写反応を行い、マボヤ神経複合体の cDNA を得た。その cDNA を鋳型に他の動物の PC1、2の触 媒領域のアミノ酸配列を基に設計合成したセンスプライマー、

アンチセンスプライマーを用いて PCR 反応を以下の組成で行 った。

0.2 mM dNTP 1 x Ex Taq buffer

50 pmol cDNA specific primer(Sense) 50 pmol cDNA specific primer(Antisense) 0.5 U TaKaRa Ex Taq polymerase

(51)

47

PCR に用いたプライマーの配列

PC 触媒領域センスプライマー:

5

-CA (C/T)GGIACI (A/C)GITG(C/T)GCIGG -3

PC 触媒領域アンチセンスプライマー:

5

- GGICCCCAI (C/G) (A/T)IGCI(C/G) (A/T) (A/G)TA -3

      I:イノシン

増幅された cDNA を pT7blue-T プラスミドベクター(Novagen) に挿入し JM109 コンピテントセル(TaKaRa)の形質転換に用い 精製した後、目的のcDNAを含んだプラスミドの塩基配列を 解析した。塩基配列の解析はダイデオキシヌクレオチドを用い た Sanger ら(1977)の方法で Thermosequenese Cycle

Sequencing Kit (Amersham Pharmacia)  と蛍光ラベルされた M13 プライマー(LI-COR)を用いて反応を行い、dNA

sequencer model 4000L(LI-COR)により解析した。

(52)

48

4-1-2  マボヤ神経複合体 cDNA ライブラリーの作成

   マボヤ神経複合体から全 RNA を抽出試薬 ISOGEN (Nippon Gene)を用いて約 500 

µ

g の全 RNA を抽出し、さらに全 RNA より Oligotex-dT30 Super (TaKaRa)を用いて 3 

µ

g のポリ A RNA を精製した。この mRNA を鋳型に Time Saver cDNA Synthesis Kit (Amersham Pharmacia)を用いて逆転写反応、

二本鎖 cDNA の合成、EcoRI/NotI アダプターの連結を行い、

λZapII ベクター(Stratagene)の EcoRI サイトに挿入し

GigapackIII Gold (Stratagene)によりパッケージングし、神経 複合体の cDNA ライブラリーを作製した。

4-1-3  cDNAライブラリーからのスクリーニング

 マボヤ神経複合体cDNAライブラリーを 3 万クローンずつ 3 枚の LB プレート(直径 140 mm)に 0.8%アガロースを含ん だ LB 培地と共に播いた。形成されたプラークをナイロン膜 (Hybond N+; Amersham Pharmacia)  に転写し、その膜をア ルカリ処理と紫外線照射処理し、1 x SSC (Standard saline

(53)

49

citrate)で洗浄後、ハイブリダイゼーションバッファー(6 x SSC, 0.2% bovine serum albumin (BSA), 0.4% Ficoll 400, 0.4%

polyvinylpyrrolidone, 1.0% sodium dodecyl sulfate (SDS))

に 60℃で 2 時間浸すことでハイブリダイゼーションの前処理 を行った。 Feinberg ら(1983)のランダムプライム法を用い て 32P で標識した PC2の部分的 cDNA(PCR 産物)を加え 60℃

で一晩ハイブリダイゼーションを行った。そのナイロン膜を 2 x SSC + 0.1% SDS 溶液で室温にて軽く洗浄した後、0.1 x SSC + 0.1% SDS 溶液に浸し 60℃で 30 分間振盪洗浄を行った。その 膜を BAS-2000II(Fuji Film)のイメージングプレートに 2 時 間露光した後 BAStation(Fuji Film)で解析した。得られた陽 性シグナルをもつプラーク群を SM バッファー(0.1 M NaCl, 8 mM MgSO4, 50 mM Tris-HCl, pH7.5, 0.01 %  ゼラチン)に溶 かし、そのライセートを約 50 プラークになるように希釈し調 整後、プレートに播き同様の操作を再度行った。得られた陽性 クローンのライセートを用いて ExAssist(Stratagene)ヘル パーファージと宿主大腸菌 SOLR を用いて

in vivo

エキシジョ ンを行い、このクローンの塩基配列を dNA sequencer model 4000L (LI-COR)により解析した。

(54)

50

4-1-4  ノザン解析

  PC2 の mRNA の発現を Lehrach ら(1977)の方法のノザン 解析により調べた。マボヤの各組織から全 RNA を抽出し、定 量、変性させた後 20 

µ

g の全 RNA を 2.2 M ホルムアルデヒド を含む1%アガロースゲルで電気泳動を行った。泳動後ナイロ ン膜に転写し、紫外線照射により膜に RNA を固定させ、プレ ハイブリダイゼーションを 60℃で2時間行った。ランダムプラ イム法で 32P ラベルした PC2cDNA を加え 60℃で 16 時間ハイ ブリダイゼーションを行った。膜は室温で 2 x SSC, 0.1% SDS 水溶液で軽く洗浄し、次いで 0.1 x SSC, 0.1% SDS 水溶液で 65℃

で 30 分 2 回洗浄した。洗浄された膜を X 線フィルム(Eastman Kodak)に-80℃で 16 時間露光した。

4-1-5 

in situ  ハイブリダイゼーション

  マボヤ神経複合体を切り出し 4%パラホルムアルデヒドー PBS 溶液に 4℃で 16 時間浸し固定した。固定した組織を 70%

エタノールから 100%エタノール、キシレンに浸し脱水1時間

(55)

51

脱気した後、パラフィンで包埋した。各切片は 5 

µ

m  の厚さで 作製され、スライドガラス上に置かれた。パラフィン切片の乾 燥、伸張を行った後、100%キシレン、100%

70%エタノール で脱パラフィンした。これらの切片を PBS に浸した後、0.2N 塩酸で 20 分間反応させた。PBS で 5 分間洗浄した後 2 x SSC、

0.1%  サルコシルで 10 分間処理された。プレハイブリダイゼー ション液(50% formamide, 0.1M Tris-HCl, 4 x SSC, 1 x Denhardt

s solution, 1 mM EDTA, 2% Sarcosyl, 0.25 mg/ml salmon sperm DNA)に切片を浸し、2 時間室温でインキュベ ーションした後ランダムプライム法で 35S 標識した PC2 の cDNA プローブを切片をのせたスライドグラス一枚につき 1 x 106 cpm を加えたハイブリダイゼーション液(50% formamide, 0.1M Tris-HCl, 4 x SSC, 1 x Denhardt

s solution, 1 mM EDTA, 2% Sarcosyl, 0.25 mg/ml salmon spermDNA, 10%

dextran, 4% 2-mercaptoethanol)100

µ

l に浸し、室温で一晩、

モイスチャーボックス内でインキュベートした。さらに隣接切 片を用い、35S で標識されていない DNA プローブを上記の液に 過剰量(1000 倍量)加えたものを対照とした。2 x SSC、0.1%  サ ルコシル液で 30 分間洗浄した後、0.1 x SSC、0.1% Sarcosyl

(56)

52

溶液中、52℃で 40 分間2回、軽く震盪しながら洗浄した。さ らに 70%から 100%のエタノールで順次脱水を行い乾燥させた。

乳剤(NTB2, Eastman Kodak)に 42℃で浸した後、風乾させ 暗下で2週間感光させた。現像後、光学顕微鏡下で観察した。

(57)

53

4  –  2  実験結果

 マボヤ神経複合体から得られた全 RNA を用い、神経複合体の cDNA を鋳型に PC1、2の触媒領域のアミノ酸配列を基に設計 されたセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用い、RT- PCR を行った。増幅された PCR 産物の塩基配列を解析した結果、

その cDNA 断片は 180 塩基対からなり、PC1、2の触媒領域の 一部をコードする塩基配列を含んでいた。マボヤ神経複合体の cDNA ライブラリーを作製し、触媒領域と高い相同性をもつ得ら れた PCR 産物を 32P でラベルしたプローブを用いて、PC1およ び PC2cDNA のクローニングを試みた。神経複合体 cDNA ライ ブラリーからスクリーニングし得られた陽性クローンのうち最長 のクローンの塩基配列解析を行ったところ、このクローンは 2094 塩基対の長さで、1926 塩基対(642 アミノ酸残基)の翻訳領域 をコードしていた(図 4-1)。尚、PC1と相同性の高いクローン は得られなかった。この翻訳領域にはその推定されるアミノ酸配 列の触媒領域を含んでおり、また N 末端には疎水性アミノ酸が 連続するシグナルペプチドと推定される部位を含んでいた(図 4-

(58)

54

1)。cDNA の配列から推測されるアミノ酸配列は従来報告されて いる PC2のアミノ酸配列と相同性(約 65%)をもつことがわか った(図 4-2、表 4-1)。この cDNA クローンの配列の一部配列 を 32P でラベルした DNA プローブを用い、ノザン解析によりマ ボヤの器官、組織(1:神経複合体、2:内柱、3:肝臓、4:

生殖腺、5:心臓、6:筋肉)における PC2 mRNA の発現を調 べたところ神経複合体にのみシグナルがみられ、他の器官、組織 ではその発現は見られず、そのサイズは 2kb であった(図 4-3)。

その発現が神経複合体で特異的に見られることを確認した。さら にこの cDNA クローンの配列の一部配列を 35S でラベルした

cDNA プローブを用い、

in

 situ  ハイブリダイゼーションにより、

神経複合体での PC2 mRNA の発現を確かめた結果、神経複合体 の神経節の表層部の細胞の一部および背索の一部の細胞に PC2 mRNA の発現を表すシグナルが観察された(図 4-4A)。対照と して、35S  で標識したプローブの 1000 倍量の未標識のプローブ を加え競合させた場合にはシグナルは現れなかった(図 4-4B)。

(59)
(60)
(61)
(62)
(63)
(64)

60

4  –  3  考察

  今回得られたマボヤ PC2 は他の動物の PC2 と高い相同性 を示し、特に触媒領域については相同性が高い。推測されるア ミノ酸配列をみるとセリンプロテアーゼであるプロホルモンコ ンバーターゼ特有の触媒領域を含み、活性部位の活性に重要と されるアミノ酸残基であるアスパラギン(Asp187)、ヒスチジン

(His227)、セリン(Ser403)も確認された。他の動物の PC2と 比較すると、脊椎動物だけでなく無脊椎動物であるアメフラシ

Aplysia)とも相同性が高く、進化上でもよく保存されている

分子であることがわかる。PC2は一般的に脊椎動物の場合、神 経細胞、分泌細胞にみられるが、ノザン解析の結果よりマボヤ の場合神経複合体で PC2 mRNA が特異的に発現し他の器官、

組織ではその発現は見られない。

In situ

ハイブリダイゼーショ ンでは神経節、背索での発現が確認された。しかし特に神経節 での発現が強く、脊椎動物の場合と同じように神経細胞での発 現が確認された。

  脊椎動物の場合、PC2 は脳下垂体で ACTH を CLIP へと切

(65)

61

断し変換する。第3章で述べたように、神経複合体の神経節、

背索の細胞の一部に CLIP 陽性細胞の分布が認められているこ とから今回存在が確認された PC2 がこれらのプロセッシングに 関わっている可能性が考えられる。また、GnRH についても脊 椎動物ではプロホルモンコンバーターゼによるプロセッシング により生成されることが知られており(Adelman et al., 1986、

Nikolics 

et al., 1985)、特に PC2 により生理活性をもつ分子へ

と変換されることが知られている(Wetsel 

et al., 1995)。他の

ホヤで神経複合体から GnRH が単離されており(Powell 

et al.,

1996)、背索周辺部の細胞に存在していることを示している。

背索に存在している PC2 様物質がホヤの GnRH  のプロッセッ シングに関わっていると考えられる。

(66)

62

第5章  下垂体ホメオボックス(Pitx) cDNA のクロ ーニング

下垂体ホメオボックス(Pituitary homeobox (Pitx))

遺伝子は下垂体の発生の過程で、下垂体原基で発現しているこ とが知られている(Lanct

ô

t et al., 1997, Hollemann et al., 1999., Suh 

et al

., 2002)。Pitx 遺伝子は特徴的なホメオドメイ ンを有している。ホメオドメインはヘリックス・ターン・ヘリ ックス構造をとる DNA 結合ドメインを構成して DNA の二本鎖 の溝に入り込み特定の塩基配列に結合する。つまりホメオボッ クス遺伝子はその産物が転写因子として他の遺伝子の転写を活 性化、または不活性化することで形態形成の制御遺伝子の一つ として働いている。ホメオボックス遺伝子は脊椎動物だけでな く、植物などでも同定されており、その多くは進化の過程でよ く保存されていることから形態形成や組織特異的な遺伝子の発

(67)

63

現制御に重要な働きをしていると考えられる。成体の脊椎動物 の脳下垂体細胞にも Pitx が存在している(Lanct

ô

et al

., 1999)ことからマボヤ神経複合体でもその発現があるか否かを 確かめるため Pitx cDNA のクローニングを試みた。

(68)

64

5  –  1  実験材料と方法

5-1-1 cDNA の PCR による増幅

 マボヤ神経複合体から抽出試薬 ISOGEN(Nippon Gene)を用 いて抽出し、逆転写酵素 SuperscriptII を用い、逆転写反応を 行い、マボヤ神経複合体の cDNA を得た。その cDNA を鋳型 に他の動物の Pitx のホメオドメインのアミノ酸配列を基に合成 したセンスプライマー、アンチセンスプライマーを用いて PCR 反応を以下の組成で行った。

0.2 mM dNTP 1 x Ex Taq buffer 50 pmol Sense primer 50 pmol Antisense primer

0.5 U TaKaRa Ex Taq polymerase

PCR に用いたプライマーの配列

(69)

65

Pitx センスプライマー:

5

-TTCCAGCGGAACCGGTA(C/T)CC(A/C/G/T)GA(C/T) AT-3

Pitx アンチセンスプライマー:

5’- GGTTCCGCTCCCGCTT(A/C/G/T)C(G/T)CCA(C/T)T T-3

増幅された cDNA を pT7blue-T プラスミドベクター

(Novagen)に挿入し JM109 コンピテントセル  (TaKaRa)の形質 転換に用いプラスミドベクターを精製した後、目的のcDNA を含んだプラスミドの塩基配列を解析した。塩基配列の解析は ダイデオキシヌクレオチドを用いた Sanger ら(1977)の方法で Thermosequenese Cycle Sequencing Kit (Amersham

Pharmacia)  と蛍光ラベルされた M13 プライマー(LI-COR)

を用いて反応を行い、dNA sequencer model 4000L(LI-COR)

により解析した。

5-1-2  マボヤ神経複合体 cDNA ライブラリーの作成

(70)

66

  20 匹のマボヤ神経複合体から全 RNA を抽出試薬 ISOGEN (Nippon Gene)を用いて抽出し、そのうち約 500 

µ

g の全 RNA より Oligotex-dT30 Super (TaKaRa)を用いて 3 

µ

g のポリ A RNA を精製した。この mRNA を鋳型に Time Saver cDNA Synthesis Kit (Amersham Pharmacia)を用いて逆転写反応、

二本鎖 cDNA の合成、EcoRI/NotI アダプターの連結を行い、

λZapII ベクター(Stratagene)の EcoRI サイトに挿入し

GigapackIII Gold (Stratagene)によりパッケージングを行い、

神経複合体 cDNA ライブラリーを作製した。

5-1-3  cDNAライブラリーからのスクリーニング

  マボヤ神経複合体cDNAライブラリーを 3 万クローンず つ 3 枚の LB プレート(直径 140 mm)に 0.8%アガロースを含 んだ LB 培地と共に播いた。37℃で一晩インキュベートし、プ レート上に形成されたプラークをナイロン膜  (Hybond N+;

Amersham Pharmacia)  に転写し、その膜をアルカリ処理と紫 外線照射処理し、1 x SSC (Standard saline citrate)で洗浄後、

ハイブリダイゼーションバッファー(6 x SSC, 0.2% bovine

(71)

67

serum albumin (BSA), 0.4% Ficoll 400, 0.4% polyvinyl

pyrrolidone, 1.0% sodium dodecyl sulfate (SDS))に 60℃で 2 時間浸すことでハイブリダイゼーションの前処理を行った。

Feinberg ら(1983)のランダムプライム法を用いて 32P で標識し た PC2の部分的 cDNA(PCR 産物)を加え 60℃で一晩ハイブ リダイゼーションを行った。そのナイロン膜を 2 x SSC + 0.1%

SDS 溶液で室温にて軽く洗浄した後、0.1 x SSC  、0.1% SDS 溶液に浸し 60℃で 30 分間振盪洗浄を行った。その膜を BAS- 2000II(Fuji Film)のイメージングプレートに 2 時間露光した 後 BAStation(Fuji Film)で解析した。得られた陽性シグナル を示したプラーク群を SM バッファー(0.1 M NaCl, 8 mM

MgSO4, 50 mM Tris-HCl, pH7.5, 0.01 %  ゼラチン)  に溶かし、

そのライセートを約 50 プラークになるように希釈し調整後、

プレートに播き同様の操作を再度行った。得られた陽性クロー ンのライセートを用いて ExAssist(Stratagene)ヘルパーフ ァージと宿主大腸菌 SOLR を用いて

in vivo

エキシジョンを行 い、このクローンの塩基配列を dNA sequencer model 4000L (LI-COR)により解析した。

(72)

68

5-1-3  5 ’ RACE(Rapid amplification of cDNA           ends)法による 5 ’ 末端の解析

  5 匹のマボヤ神経複合体から全 RNA を抽出試薬 ISOGEN (Nippon Gene)を用いて抽出し、そのうち約 100 

µ

g の全 RNA より Oligotex-dT30 Super (TaKaRa)を用いて mRNA を精製 した。この mRNA のうち 1

µ

g を鋳型に PCR-Select cDNA Subtraction Kit (CLONTECH)を用いて逆転写反応、二本鎖 cDNA の合成を行い、アダプターの連結を行った。得られた二 本鎖 cDNA を鋳型にプライマー1と Pitx に特異的なアンチセ ンスプライマーを用いて PCR 反応を行い、さらにプライマー2 と Pitx に特異的なアンチセンスプライマーを用いて 2 回目の PCR 反応を以下の組成で行った。

0.2 mM dNTP 1 x Ex Taq buffer

50 pmol Sense primer(プライマー1またはプライマー2)

50 pmol Antisense primer

0.5 U TaKaRa Ex Taq polymerase

(73)

69

PCR に用いたプライマーの配列

プライマー 1:

5’- CTAATACGACTCACTATAGGGC-3’

プライマー 2:

5

- TCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGT-3

Pitx アンチセンスプライマー:

5

- GGTTCCGCTCCCGCTT(A/C/G/T)C(G/T)CCA(C/T)T T-3’

  増幅された cDNA を pT7 blue-T プラスミドベクター

(Novagen)に挿入し JM109 コンピテントセル  (TaKaRa)の形質 転換に用い精製した後、目的のcDNAを含んだプラスミドの 塩基配列を解析した。塩基配列の解析はダイデオキシヌクレオ チドを用いた Sanger ら(1977)の方法で Thermosequenese Cycle Sequencing Kit (Amersham Pharmacia)  と蛍光ラベル された M13 プライマー(LI-COR)を用いて反応を行い、dNA

(74)

70

sequencer model 4000L(LI-COR)により解析した。

(75)

71

5  –  2  実験結果

  

 マボヤ神経複合体から得られた全 RNA を用い、神経複合体 cDNA を鋳型に Pitx のホメオドメインのアミノ酸配列を基に設 計されたセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用い、

RT-PCR を行った。増幅された PCR 産物の塩基配列を解析し た結果、その cDNA 断片は 130 塩基対からなり、Pitx のホメ オドメインをコードする塩基配列の一部を含んでいた。その PCR 産物を 32P でラベルしたプローブを用いて、神経複合体 cDNA ライブラリーからスクリーニングし得られた陽性クロー ンのうち最長の塩基配列を含むクローンの塩基配列解析を行っ たところ、すでに報告がある他の動物の Pitx の配列と高い相同 性をもつ cDNA クローンを単離した(図 5-1)。この cDNA の 配列から推測されるアミノ酸配列は従来報告されている Pitx の アミノ酸配列と相同性をもつことがわかった(図 5-2、表 5-1)。

特にホメオドメインのアミノ酸配列については保存性が高く、

特に相同性が高いことがわかった。さらに 5 側の塩基配列を 明らかにするために 5 RACE 法を用い解析した。その結果得 られた PCR 産物の塩基配列を解析したところ、スクリーニング

(76)

72

により得られたクローンの cDNA の配列では明らかではなかっ た5 側の塩基配列が明らかになった。

(77)

73

-1 CTACAGATCGCTGCAGATAAACGACAATATTGTATTAGGTATTGTTTCGTTTTTAGATGAAGAT       10 20 30 40 50 60 70 80 ATGGATAAAGGCAATTCAAAGCGTCAAGTCGATTCCCTCGAGCCGAGTCAGTTTGGCAGAGTGAATATTACGGCA M D K G N S K R Q V D S L E P S Q F G R V N I T A 85 95 105 115 125 135 145 155 ACTGCCGAAACGAGCGAGCCGAAAAAAAAACCGACCGAAGGCGAAGACGGCGATACAAAAGGCGAGGGTGGCGCT T A E T S E P K K K P T E G E D G D T K G E G G A 160 170 180 190 200 210 220 230 ACGGAAAATTCGCAGAGTGACGATCCCGATGGAGAGGGGAAAAACAAAAGACGACAGCGACGACAAAGAACACAC T E N S Q S D D P D G E G K N K R R Q R R Q R T H 235 245 255 265 275 285 295 305 TTTACGTCACATCAGCTCCAGGAACTCGAAACTGTATTTGCTCATAACAGATACCCTGACATGTCAACAAGAGAG F T S H Q L Q E L E T V F A H N R Y P D M S T R E 310 320 330 340 350 360 370 380 CATATATCGCAGTACACCACCCTGTCAGAGCAACGAGTTCGGGTTTGGTTCAAAAATCGTCGAGCAAAATGGCGA H I S Q Y T T L S E Q R V R V W F K N R R A K W R 385 395 405 415 425 435 445 455 AAGAGGGAACGCAACCAGATGACCGACTACAAAAACTTCCCTTTCAACGGAATCATGCCCGGATACGACGAGATG K R E R N Q M T D Y K N F P F N G I M P G Y D E M 460 470 480 490 500 510 520 530 TACGGTTATCCAACCTATAACTGGCCAAAAATGGCGTCCCCACTCAGCACCAAGCCTTACCCTTGGGGACTTAAT Y G Y P T Y N W P K M A S P L S T K P Y P W G L N 535 545 555 565 575 585 595 605 TCGGCTTTGAATAGCATGGGGTCACTTACCACTCAGCCGCTCGGGTTCAGTCAGAACTCATCTGTTGCAACCTCC S A L N S M G S L T T Q P L G F S Q N S S V A T S 610 620 630 640 650 660 670 680 GTGATACCCAACATGAACAGCGCCCTGGGTTCTATGGGGCCTGGGTCAGCGTCTAACCCGACGCATTATGCAGGT V I P N M N S A L G S M G P G S A S N P T H Y A G 685 695 705 715 725 735 745 755 GCTGCTAATCCCTATAACAGCTATGGATTACGGGCCACCACGGATCCTTGTAATTCAAGCATAGCGTCCTTACGG A A N P Y N S Y G L R A T T D P C N S S I A S L R 760 770 780 790 800 810 820 830 TTGAAGGCGAAGCAACACACAGATTACATCGGCTACCCTACTGTTTTGGAACCTCCACTAGCTGCTTGCCAGTAT L K A K Q H T D Y I G Y P T V L E P P L A A C Q Y 835 845 855 865 875 885 895 905 AACGCTCACAAAAATATCTAGTGCGTAGAAGACGGTGATGCATCGAGACAGCAAATGGTCGTTGCAAGCTAACGT N A H K N I *

910 920 930 940 950 960 970 980 GAATGTTTATGTGTCGACGG

図 5-1 マボヤ

Pitx cDNA

の塩基配列と推定されるアミノ酸配列 赤線で示した領域はホメオドメインを示している。

(78)

74

1 MDK-GNS-K-RQVDSLEP--SQF---G--RV-NI-TAT--A-E-T--SEPKKN-R-PKRRRD-TKGEGGAT---E 51 1 MDTLNDSLSLEQLVSVSPRRSQLTMAGIPPINNSGTSTGSALDSTAVSGAHTSLAGTDSSMDSTHGSGAATVSAG 75 1 MDSFKGGMNLERLP-ESLRPQPSHDMATSFHLQRSSEARDPMDNSASESS 49 1 METNCRKLVSAC----VQ---L---- 15

H. roretzi Pitx Amphioxus Pitx Xenopus Pitx1 Mouse Pitx2 isoform a Mouse Pitx2 isoform b

1 METNCRKLVSACVQLGVQPAAVECLFSKDSEIKKVEFT-DSPKSRKESASSKLFPRQ 56 52 N--S-QSD-D--P--D---GEG--KNKRRQRRQRTHFTSHQLQELETVFAHNRYPDMSTREHISQYTTLSEQRVR 113 76 SPVGKDSGSGSTPSTDVTQDDDEMRKRRRQRRQRTHFTSQQLQELEASFARNRYPDMATREEIAAWTNLTEARVR 150 50 DTEIAEKERTGEPKGE-DGNGDDPSKKKKQRRQRTHFTSQQLQELEATFQRNRYPDMSMREEIAVWTNLTEARVR 123 16 ---EKDKGQQGKNE-DVGAEDPSKKKRQRRQRTHFTSQQLQELEATFQRNRYPDMSTREEIAVWTNLTEARVR 84 57 HPGANEKDKGQQGKNE-DVGAEDPSKKKRQRRQRTHFTSQQLQELEATFQRNRYPDMSTREEIAVWTNLTEARVR 130 114 VWFKNRRAKWRKRERN-QMTDYKN-F-P-FNGIMPGYDE-MY-GY-PTY-NW-PKMAS-P-LSTKPYP-WGLN-S 175 151 VWFKNRRAKWRKRERN-QLGEFKNGFGPHFNGLMQPFDDGLYSGYSPAYNNWAAKVPS-P-LTAKSFP-WGLNSS 221 124 VWFKNRRAKWRKRERNQQMDLCKNGYVPQFSGLMQPYD-EMYAGY--PYNNWATKSLTPAPLSTKSFTFFNSM-- 193 85 VWFKNRRAKWRKRERNQQXELCKNGFGPQFNGLMQPYD-DMYPGY--SYNNWAAKGLTSASLSTKSFPFFNSMNV 156 131 VWFKNRRAKWRKRERNQQAELCKNGFGPQFNGLMQPYD-DMYPGY--SYNNWAAKGLTSASLSTKSFPFFNSMNV 202 176 ALNSMGSLTTQPLGFSQNSSV--ATSVIPNMN--SALGSMGP-GSAS-NP--THYAGAANPYNSYGLR-AT-TDP 240 222 GVPNVNPLSSQAMCFTPPTTIGTATTMVPSMNVGNGLNSLSSLQNPTVAP--CPYASPGQPY-AY--R---EQ 286 194 SPLSSQSMFSGPSSISSMSMPSSMGHSAVPGMANSSLNNINNLNNISGSSLNSAMSSTGCPYGPPGSPYTVYRDT 268 157 NPLSSQSMFSPPNSISSMSMSSSMVPSAVTGVPGSSLNSLNNLNNLSSPSLNSAVPTPACPYAPPTPPY-VYRDT 230 203 NPLSSQSMFSPPNSISSMSMSSSMVPSAVTGVPGSSLNSLNNLNNLSSPSLNSAVPTPACPYAPPTPPY-VYRDT 276 241 CNSSIASLRLKAKQH-TDY---IGYPT-VLEPPLAACQYNAHKNI 280 287 CNSSIAALRLKAKQHSTSVASSFSYPSPVRQQTLSACQYAVDRPV 331

269 CNSSLASLRLKSKQHSTFGYSSLQSP-A---SSLNACQYNS 305

231 CNSSLASLRLKAKQHSSFGYASVQNP-A---SNLSACQYAVDRPV 271 277 CNSSLASLRLKAKQHSSFGYASVQNP-A---SNLSACQYAVDRPV 317

図 5-2 マボヤ

Pitx cDNA

から推定されるアミノ酸配列と他の動物(ナ メクジウオ、アフリカツメガエル、マウス)の

Pitx

との比較

青い下線で示した領域はホメオドメインを示している。

(79)
(80)

76

5  –  3 考察

  本実験で PCR により得られた配列は Pitx の配列のホメオ ドメインの一部であることがわかった。この PCR 産物をプロー ブにしてマボヤ神経複合体 cDNA ライブラリーから得られた cDNA クローンはホメオドメインを含む Pitx の一部配列である ことがわかった。ホメオボックス遺伝子特有の領域である

Paird-class  ホメオドメインを持ち、  Aristaless  ドメインを C 末端にもつことがわかった。とくに Pitx でよく保存されている CQY モチーフが C 末端の Aristaless  ドメインで見られた。Pitx は下垂体の分化に関わっていることが知られている最近報告さ れた新しいホメオボックス遺伝子であり、今回、原索動物のマ ボヤの成体の神経複合体の cDNA ライブラリーから Pitx の cDNA を得たことにより、成体での Pitx mRNA の発現が確認 された。神経複合体内のどこで発現しているのかについて Pitx mRNA の発現を

in situ

ハイブリダイゼーションにより調べる 必要があると考えられる。

(81)

77

第6章 本研究の成果とこれからの課題

  本研究の主な成果は原索動物のホヤの下垂体ホルモン免疫 陽性物質あるいは脊椎動物の下垂体細胞に含まれる物質に相当 する物質を含む下垂体様細胞が神経複合体の神経節、背索周辺 部に散在している事実である。特に PRL、ACTH 免疫陽性物質 が分泌顆粒内に存在していることを示したことから、これらの ホルモン様物質が分泌性のものであることを確認することがで きた。また、PRL および ACTH 免疫陽性物質はそれぞれ別の 細胞に含まれていること、ACTH や CLIP 免疫陽性細胞には脊 椎動物で POMC 分子から ACTH、

α−

MSH、

β−

エンドルフィン などの活性ペプチドを生じるプロッセッシング酵素、PC 様免 疫陽性物質の共存も明らかにした。また、マボヤの PC2cDNA を神経複合体 cDNA ライブラリーよりクローニングし、その存 在を明らかにし、その mRNA は神経複合体においてのみ発現 しており、特に神経節での強い発現を確認した。更に Pitx の cDNA のクローニングを行い、他の脊椎動物の下垂体に発現し ていることが知られている Pitx と相同性の高いホメオドメイン

(82)

78

をもつ cDNA クローンを得た。このことから Pitx がマボヤ成 体の神経複合体で発現していることが確かめられた。

  これらの結果は脊椎動物の下垂体細胞に相当する細胞群が、

神経節内および背索周辺部に散在しており、これらの細胞群が 脊椎動物の下垂体の細胞群に相当するものであることを示唆し ている。これらがまとまった器官としてではなく散在した状態 にあることはまだ下垂体器官を形成する途上のものと推測でき る。下等動物の他の内分泌器官、例えば甲状腺、副腎なども細 胞あるいは細胞塊が散らばった状態であることを考えると、原 始的な下垂体もまた散在状態であったとしても不自然ではない からである。今後の課題としては神経節および背索の一部が含 んでいる PRL や ACTH 免疫陽性物質をタンパク質レベル、遺 伝子レベルでその本体を明らかにし、これらを含む細胞が脊椎 動物の下垂体の細胞にあたるという決定的な証拠を得ることで ある。また、マボヤの発生段階での Pitx の発現部位や Pitx mRNA の量の変化などを調べること、Pitx 以外に脊椎動物で下垂体発 生時に出現する物質に相当するものの遺伝子発現を調べること も今後の課題である。

(83)

79

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