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第1章 序論

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Academic year: 2022

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(1)第 1章. 序論. 1. 1 研究 の 背景 1. 1 .1 .超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 の開発経緯 と特 徴 1970 年代、当時 の 日本国有鉄道 に お い て、新 幹 線 以 上 の高速化 を目 的 と し て超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 の開 発が 開始 された 。表 1− 1 に超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 の開 発の 経緯 を ま と め る 。鉄 輪の 粘 着 力 に よ り駆 動す る 従来 の鉄 道で は、 車 両の 速度 に限 界が あ る た め、 粘着 に頼 ら な い 方式 と し てリ ニ ア モ ー タ ー駆 動 方 式 が提 案さ れた 。支 持 案 内 方 式 に つ い て は、 様 々な 方式 が検 討 さ れ た上 で、 日本 の 地 形 等を 考 慮 し て 、 実 空 隙 が 大 き く と れ る 電 磁 誘 導 方 式 ( EDS: Ele ctro Dynamic Suspension)に 決定 した 。こ の方 式 では 、起磁力 が 非常 に大 きな 磁石 を 必要 とす る た め、軽 量か つ強 力な 超 電 導 磁 石 の開 発が 必 要 不 可 欠 で あ っ た。超 電 導 磁 石 は、 内蔵 する 超 電 導 コ イ ルを 極 低 温に 冷 却す る必 要が あ る た め、 冷却媒体 の 蒸発量低 減や 冷 凍 液 化 装 置の 開発 に多 くの 開発力 が注 が れ た 。こ の結 果、 数々 の 問 題 点を 解決 し1 9 9 9 年に は山 梨 実 験セ ン タ ー において 前 人 未 踏の 5 5 0k m / h の速 度 記 録を 達成 し た。 本論文 では 、超 電 導 線 材 を巻 線に し た も の を「 超 電 導コ イ ル」、超 電 導 コ イ ルと 低温容器 ・電 磁 力 支 持体 (荷 重 支 持 材) 等を 含め た システム を「 超 電 導 磁 石 」と 呼ぶ こ と に す る 。 1990 年代に な る と 地球環境問題 が注 目 さ れ る よ う に な り、エ ネ ル ギ ー 消費 や排 気ガ ス、 騒音 、 振動 な ど が交 通 機 関 に お い て も問 題 視さ れ る よ う に な っ て き た。 元来 、省 エ ネ ル ギ ー の代表格 と さ れ て き た鉄 道に お い て も、 これらの 社 会 情 勢か ら環 境 問 題へ の 対応 が迫 ら れ て い る 。超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 は、 環 境 問 題に 関し て次 のような 特 徴を 有し て い る。 ①. 飛 行 機 等 の内 燃 機 関 に 比 べて 、 同 一 速 度で は 、 輸 送 量 あ た り の 炭酸 ガ ス排 出が 少な い( 図 1− 1). ②. 架線 、レール 等 の磨 耗が な い ため 、 周囲 への 飛 散 物 質がない. ③. 車輪 の転動音 、 パンタグラフ の空 力 騒 音 が な い. ④. 面 支 持のため 地 盤 振 動が 小さ い. このよ う に 、 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道は 高 速 性の み な ら ず、 環 境 性に も 優れ た輸 送 機 関で あ る こ と が わ か る。. 1.

(2) 表1 −1 西暦. 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 開 発の 経緯. ことがら. 1962. リ ニ ア モ ー タ 推 進 浮 上 式 鉄 道 の研 究 開 発 開 始. 1970. 超 電 導 磁 石 に よ る 誘 導 反 発 方 式の 本 格 的 検 討 開 始. 1972. 超 電 導 磁気 浮 上 LSM推 進 実 験 車 浮 上 走 行 成 功. LSM200. 超 電 導 磁 気 浮 上 LIM推 進 実 験 車 浮 上 走 行 成 功. ML100. 1975. 超 電 導 磁 気 浮 上 LSM推 進 実 験 車 完 全 非 接 触 走 行 成 功. 1977. 浮 上 式 鉄 道 宮 崎 実 験 セ ン タ ー 開設. ML100A. 宮 崎 実 験 線 逆 T 型 ガ イ ド ウ ェ イ 走 行 実 験 開 始 M L‑ 500 1979. 最 高 速 度517km/hを 記録. 1980. 宮崎実験線 U型 ガイドウェイ走 行 実 験 開 始. 1987. 財団法人 鉄道総合技術研究所発足. MLU001. 研究開発を承継. MLU002に よ る 浮 上 走 行 実 験 開 始 1990. 山梨実験線着手式. 1991. MLU002を車 両 火 災 に よ り 焼 失. 1993. MLU002N に よ る 走 行 実 験 開 始. 1997. 山 梨 実 験 線 MLX01に よ る 走 行 試 験 開 始 550km/h 達 成 ( 無 人 走 行 ). 1999. 5両 編 成 552km/h 達 成 ( 有 人 走 行) 相 対 速 度1,003km/hすれ 違 い 走 行 試 験. kg – CO. 2. / 10 6人km ). 運 輸 省 実 用 評 価 委 員 会 より 実 用 化 の目 処が た っ た と の 答申. 200 160 120 80 40. 自動車 航空機 バス. 3. 0. 100. (×10. 2000. 磁気浮上列車 在来線. 新幹線 200. 300. 400. 500. 平 均 速 度 (k m / h ). *縦 軸は 単 位 人 数 を 単 位 距 離 運ん だ 場合 の二 酸 化 炭 素 排 出 量 を示 す. 図1 −1. 各 交 通 機 関の 炭酸 ガス 排出量 の比 較. 2.

(3) 1. 1 .2. 超電導磁気浮上式鉄道用車上電源 の特 徴 と課 題. 超 電 導 磁 気 浮 上 式 車 両 は地 上 設 備 と完 全 非 接 触 で 走行 するため 、車 上 で使 用す る電 源も 地上 と 分離 さ れ て い る必 要 が あ る。ま た、昨 今の 環境問題 を考 慮 す る と、 排気 ガス や騒 音 を著 しく 発生 する 電 源 装 置を 搭載 す る こ と は 避け な け れ ば な ら な い。 さ ら に、 高 速で 浮上走行 する 上 で小 型、 軽量 で な け れ ば な ら な い 。 車 上に 必要 な 電力 としては 、冷 凍 液 化 装 置 、空 調 装 置 、油 圧 装 置、 照 明などの 電源 が主 で あ り 、一 両あたり 50 kW 程 度の 電 源 容 量となる 。 す な わ ち、 小 型 軽 量で 車上 に独 立 した 、比 較 的 容 量の 大き な電 源 装 置 を開 発す る必 要がある 。 さ ら に、 営 業 線で 使 用す る に は、 耐久性 ・信頼性 が高 く 、低 コス トな システム で あ る こ と も要 求さ れ る。 表 1− 2に 現在考 えられる 電源 を 示し 、各 方 式の 得失 に つ い て比 較、考 察す る。 大 きな 分類 として 、車 両に 電 源 装 置と 同時 に燃 料 を積 む燃 料 搭 載 方 式 と、 非接 触で 地上 から 給 電す る燃 料 非 搭 載 方 式に 分け ら れ る 。各方式 について 特 徴を 下記 に ま と め る。 ①. デ ィ ー ゼ ル、 ガ ソ リ ン 方 式: 燃 料を 燃 焼さ せ た 化学 エ ネ ル ギ ー に よ り 発電 機を 駆 動 し電 源 と す る 。 完 成 度 も高 く エ ネ ル ギ ー密 度 も高 い が 排気 ガ スや 騒音 の問 題が あ る。. ②. ガ ス タ ー ビ ン 方 式: デ ィ ー ゼ ル 、ガ ソ リ ン 方 式 よ り さ ら に エ ネ ル ギ ー 密度 が高 いが 騒音 や 排気 ガス の問 題が あ る。. ③. 燃料電池方式 : 騒音 や排 気ガ スの 問 題が な い が、 技術的 に未完成 で あ る 。. ④. 原 子 力 方 式: 小 型 装 置が 作れない 、 廃 棄 物の 問題 がある 。. ⑤. 二次電池方式 : エ ネ ル ギ ー密 度が 少 な い が排 気ガ ス や騒 音の 問題 が な い 。. ⑥. 誘導集電方式 : 排気 ガス 騒音 の問 題 がないが 、車 両 の速 度に 依存 する 。. ⑦. 風力発電方式 : 騒音 の問 題があり 、 速度依存 も大 き い。. ⑧. 太陽電池方式 : トンネル や天 候に 左 右さ れ、 エ ネ ル ギ ー 密度 も低 い。. た だ し、 速 度 依 存す る方 式は 速 度 依 存しない 方式 と 組み 合わ せ る こ と が 必須 で ある 。 な お、 鉄道 で は地 上 設 備が 長大 に な る た め 、地 上 設 備 を変 更す る方 式 は非 常に コ ス ト高 に な る た め 、検 討の 対 象 外 と し た。. 3.

(4) 表1 −2. 燃料搭載方式. 燃料非搭載方式. 1. 1 .3. ディーゼル,ガソリンエンジン. ガスタービンエンジン 燃料電池 原子力 二次電池 誘導集電 風力発電 太陽電池. 各 車 上 電 源 方 式の 得失. エネルギー密度 △ ○ △ × × ○ △ ×. 騒音 × × ○ ○ ○ ○ × ○. 排気ガス × × ○ ○ ○ ○ ○ ○. 速度依存 安定供給 技術課題 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ × ○ ○ ○ × ○ △ × ○ △ ○ × ○. 検 討 した 種 々の 車 上 電 源 方 式. 前 節の 各 車 上 電 源 方 式 の得失表 を 元に 、技術的 、 経 済 的に 実現可能 と 考えられ る方 式を 選出 し た。 その 結果 、次 に 示す 3方 式( ラ ム・ エ ア ー・ タ ー ビ ン、 燃料 電池 、誘 導 集 電 )に つ い て基 礎 検 討 お よ び一 部 試 験 を行 った 。 (1 )ラ ム・ エアー ・タ ー ビ ン(Ram Air Turbine) ラ ム ・エ ア ー ・タ ー ビ ン (RAT) と は、 車 上に 風 車を 搭 載 し車 両 の走 行 にと もなって 増加 す る風 圧を 利用 して 発 電を 行う 方式 である。先 頭 車 の先頭部 にダ クト を貫 通さ せ、ダ ク ト内 に 設置 した タ ー ビ ン ブ レ ー ドにより 風 力を 回 転 力に 変換 し、タ ー ビ ン ブ レ ー ド と 同軸 に設 置された 同 期 発 電 機 に よ り 電力 に変 換す るものである 。こ の 方式 の特 徴は 、地 上 設 備 が不 要である 、車 両 速 度 の3 乗に 比例 して 電力 が 得ら れ る な ど で あ る 。基 礎 試 験 と し て 、航 空 宇 宙 技 術 研 究 所の 風洞 を利 用し 、1 / 5モデル の風 洞 試 験 を行 った 。そ の結 果、図 1− 4に 示す 通り 、車体 ぎ装 時で も 速度 3乗 則の 出力 が 得ら れ る こ と が 分かった 。図1 −4 での 計算 は、車両 が 500km/h で走 行し た と きの ダクト 内を 通過 す る空 気の 運動 エ ネ ル ギ ーと 風 車 効 率の 積であり 、 測定結果 と良 好 な一 致を み て い る (21) 。 なお 、実 用 化の 上で は 吸 気 口の 異 物 対 策、騒音等 に つ い て は 確認 を行 う必 要 が あ る。. 4.

(5) 図1 −2. 図1 −3. 風 洞 試 験 に供 した 模型. RAT タ ー ビ ン ブ レ ー ドの 一例. 5.

(6) 1000000. 出力(W). 800000 600000. 測定値 計算値 必要電力. 400000 200000 0 0. 100. 200 300 速度(km/h) 図1 −4. 400. 500. RAT の出 力. (2 )燃 料 電 池 発 電 燃 料 電 池 は、 水素 と 酸素 の化 学 反 応 により 発生 す るエ ネ ル ギ ーを 直 接 電 気エ ネルギー と し て 取り 出す エ ネ ル ギ ー 変換装置 で あ る 。 2H2 O. +. O2. →. 2H 2 O. +. 571.8kJ. ( 1. 1). 式 (1 . 1) に示 す 化 学 反 応を 起こ す た め に は 、 イ オ ン導 電 性の 電 解 質 で分 離された ア ノ ー ド極 ( 水 素 極 )と カ ソ ー ド極 (酸 素 極) 間に 電 流リード を 接続 する 装置 を作 れ ば よ い。こ の よ う な 装置 に よ り、正 極イオン が電解質 を 移動 し、 電子 は電 流リ ー ドか ら負 荷に 流れ る 現象 が起 こる 。 こ のイ オ ン導電性 の 電 解 質 の種 類に よ っ て 、燃 料 電 池 の特 性 が大 きく 分 かれ る。 表1 −3 に 電 解 質による 燃 料 電 池の 分類 を示 す 。 電解質 に は、 液体 、 固体 、 動作温度 、 電 気 化 学 的 特 性 な ど か ら様 々な も の が 提案 さ れ て お り 、そ れ ぞ れ 特 徴がある 。 中で も実 際 に使 用す る 段階 で大 き な問 題と な る の が温 度で あ る。 高 温で の動 作 が必 要と な る燃 料 電 池 では 、起 動 時 間 が長 く な り実 用 性の 面で 問題 と な る 。ま た、移 動 体 上に 搭載 す る に あ た っ て は、 重量 や体 積 の制 限が 厳 し い の み な ら ず 、 耐振動性 なども 考慮 し な く て は な ら な い。. 6.

(7) 表1 −3. 名称 略称 電解 質. アノード極 動作温. 固体高分子膜 PEM‑FC 高分子膜. H2. 燃 料 電 池 の種 類. リン酸液. 炭酸溶融塩. 固体酸化物. アルカリ溶液. PA‑FC. MC‑FC. SO‑FC. PAC. 炭酸リチウム. リン酸. 炭酸カルシウム. H2. H2 ,CO. 〜100. 200. 650. 効率(%). 40〜50. 40〜50. 45〜55. 長所. 小型. 度. ジルコニア. 水 酸 化カリウ ム H2. H2 ,CO. 800〜1000. H2. 室温. (℃) 低コスト. 50〜60 効率高. 45〜55. 立上 り速 い メンテナンス容易 短所. CO に 弱い. 立上 り遅 い. 立上 り遅 い. 立上 り遅 い. 表 1− 3を 見 ると 、固 体 高 分 子 膜 燃 料 電 池(以 下 PEM‑FC)は 、他 の 種類 の燃 料 電 池に 比 べて 、小 型 軽 量 であり 、動 作 温 度 が低 く 取り 扱い が 容易 で あ る こ と がわかる 。こ の よ う な 特 徴か ら移 動 体 用の 電 源と し て は PEM‑FC が適 し て い る と 考え ら れ る。PEM‑FC は固有 の 特性 と し て良 好 な部 分 負 荷 特 性( 小さ な 負荷 ほど エ ネ ル ギ ー効 率 が高 い)及び 良好 な瞬 時 負 荷 変 動 に対 する 追 従 特 性が あ る た め 、 浮 上 式 鉄 道 用 車 上 電 源として 最適 な 特性 を有 し て い る も の と 考え ら れ る 。 次 に、 燃 料 電 池に 供 給す る 燃料 に つ い て比 較す る 。水 素を 貯 蔵す る燃 料 方 式 には 大き く分 け て、炭 化 水 素 の形 で蓄 えて 改質器 を経 て水 素 を取 り出 すものと 、 純 水 素の 形 で蓄 え る も の が あ る。 炭 化 水 素は 化 石 燃 料、 天然 ガ スな ど か ら 精製 す る も の が 主である 。 純 水 素 は、 化 石 燃 料、 天然 ガ スか ら改 質 する 方法 がもっ とも 安価 で あ る が、 場 合に よ り電 力か ら の水電解 が 有利 な こ と も あ る。 将来的 に水 素の 発 生は 、余 剰 の夜 間 電 力 、電 力 を介 した 再 生 可 能エ ネ ル ギ ー、 バイオ マス から 得 る方 法が 地 球 環 境 問 題 を考 えると 最も 望 ま し い。 い ず れ に せ よ 、一 次エ ネ ル ギ ーを 化 石 燃 料、 天 然ガ スか ら 得る も の は 地 球 温 暖 化 ガス で あ る 二酸 7.

(8) 化 炭 素を 排 出す る。 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー (風 力、 太陽光 など ) は、 水 力 発 電を 除き 、エ ネ ル ギ ー密 度 が非 常に 低く 、コ ス トが 高 い 。原 子 力 発 電 に よ る も の は、 今 後 世 界 的 な世 論か ら し て 発展性 に乏 し い。 本来 は こ の よ う な 、1 次エ ネ ル ギ ーからの 総 合 効 率、 ラ イ フ サ イ ク ル エ ネ ル ギ ーを 考 える 必要 が あ る が、 浮上式 鉄 道 用と し て は 、特 殊 な使 用 目 的 で あ り 、総 エ ネ ル ギ ー 量も 走 行エ ネ ル ギ ーに 比較 して 格段 に 小さ い た め、燃料 か ら のエ ネ ル ギ ー効 率の み 検討 の対 象とした 。 表 1− 4 に燃 料 電 池 用 燃 料 の種 類と 貯 蔵 方 法に つ い て 示し た 。燃 料 電 池 は空 気中 の酸 素 と貯 蔵さ れ た水 素 に よ り、 化 学 反 応を 行 う も の で あ り、 な ん ら か の 形で 水素 を蓄 え る必 要がある 。一 般 的 に 、炭 化 水 素の 形 であれば 、常温( 低圧 ) で液 体の も の が 多く 、 取り 扱 いや 安 全 性 が高 いが 、 燃料電池 に 供給 する 前 に炭 素と 水素 を 分離 (改 質 )す る 必要 が あ る 。そ の た め 、改 質 装 置 が複 雑に な る と と も に改 質 段 階 で二 酸 化 炭 素 を排 出し て し ま う。 一 方、 純 水 素 の形 では 常 温で 気体 で あ る た め 、エ ネ ル ギ ー 密度 を高 め る た め に は 、高 圧に し た り 、極 低 温の 液体 に す る 必要 が あ り 、取 り 扱い が難 し く な る。 特 殊な 例と し て、 表1 − 4中 の MH(水 素 吸 蔵 合 金 Metal Hydride)やボ ロ ン系 ( ホウ 素) の よ う に炭 素 以 外 の原 子と 結合 さ せて 貯蔵 する 方法 も あ る が、 現在 の と こ ろ開 発 途 上で あ る。 現 在の と こ ろ 、燃 料 電 池 シ ス テ ムは 、 燃 料 電 池 本 体、 燃 料 貯 蔵 装 置、 改質器 とも 開発途上 であり 、本 体の 大 型 化 、安全性 な ど の 技 術 的な 問題 が残 っ て い る。 本 質 的に 燃 料を 搭載 す る危 険 性や 二 酸 化 炭 素 排 出 の 問題 が あ る が、 将 来 的 な実 用化 の可 能は 残 さ れ て い る。 表1 −4 種別 炭化水素系. 純水素系. 燃料名 ガソリン軽油 メタノール DME CNG LNG CHG LH2 MH ボロン系. 形態 液体 液体 液体 気体 液体 気体 液体 固体 液体. 燃 料 電 池 用 燃 料の 種類 と 貯蔵方法. 貯蔵方法 安全性 取り扱い CO2拡散 効率 備考 タンク ○ ○ × ○ タンク ○ ○ × × ボンベ ○ ○ × △ ジメチルエーテル(CH3-0-CH3) 高圧ボンベ × △ × ○ 高圧天然ガス(25〜35MPa) 低温容器 × × × ○ 液化天然ガス(110K) 高圧ボンベ × △ ○ △ 高圧水素(25〜35MPa) 低温容器 × × ○ × 液化水素(20K) ボンベ ○ △ ○ △ 吸蔵合金 タンク ○ ○ ○ △ アルカリ溶液 *ボンベ:1MPa以下の圧力容器、高圧ボンベ:1MPa以上の圧力容器 *低温容器:断熱層ありのボンベ. 8.

(9) (3 )誘 導 集 電 誘 導 集 電 には 、地 上 設 備 に 誘 導 集 電 用 の設 備を 設 置し て車 両 に電 力を 非接触 で送 る も の と、 地 上 設 備と し て特 別に 設 備を 設置 せずに 推進 や 浮上 には 不 要な 空 間 高 調 波 を利 用す る も の が あ る 。前 者 は沿 線に わ た っ て設 備 が必 要で コスト 高となり 、 誘 導 集 電 専 用の 地 上 電 源 設 備 も不可欠 となる 。一 方 、後 者は 地上側 には 特別 な 設備 が無 いため コスト が抑 え ら れ る が 、 集電能力 が 速度 に依 存 した り、 エ ネ ル ギ ー 密度 が小 さ い と い う 問題 が あ る。 地 上 設 備 を設 置し な い方 法 で あ る空 間 高 調 波を 利 用す る方 式 には 、地 上 コイ ルに 誘導 させる 界 磁 源 を専 用 に設 ける 方 式( 専 用 超 電 導 磁 石 型 集 中 方 式 ) と、 浮 上 推 進 用の 超 電 導 磁 石 を そ の ま ま 使用 する 方式(超 電 導 磁 石 兼 用 型 分 散 方 式 ) が あ る (6) 。集 中 方 式 は 、名 称の 通 り専 用の 超 電 導 磁 石を 使用 し 、一 部の 車 両に 集 中 的に 設 置された 集 電コ イ ルにより 電 力を 得る も の で あ る 。 分散方式 は 、各 台車 に集 電コ イ ルを 分散 さ せ て設 置 す る も の で あ る 。 こ れ ら の 特徴 を考 慮 し、 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 用 車 上 電 源 として 、本 研 究で は超 電 導 磁 石 兼 用 型 分 散 誘 導 集 電 方 式 の 開発 を行 っ た。 欠点 である エ ネ ル ギ ー 密度 の問 題 を解 決す る た め に 、損 失の 小 さな 集電 コイル や、 高効率 ・力 率 のコ ンバータ 、 超 電 導 磁 石 構 造 などの 改良 を 行っ た。 本論文 は、 こ れ ら の検 討 内 容 や検 討を 行う 上 での 解析 、試験等 の 研究成果 を ま と め た も の で あ る。. 9.

(10) 1. 1 .4. 誘 導 集 電 装 置の 原理 と 特徴. 超 電 導 磁 石 兼 用 型 分 散 誘 導 集 電 方 式 (以 下 誘 導 集 電 と略 す) の発 電 原 理 を以 下に 順を 追っ て 説明 する 。集 電コ イ ルは 各 台 車の 超 電 導 磁 石 外 槽 表 面 に 取り 付け ら れ る。 推進 コイル に所 定の 周 波 数 ・電 流を 通電 す る こ と で 、車 両の 超電導 コイ ルの 直流磁界 が 界磁 と な り進 行 方 向 に車 両は 走行 す る。 車両 の走 行に 伴 って 、地 上に 設置 さ れ た 浮上 コ イ ル( 上下 「 8」 の字 に導 体 が結 線さ れ て い る ) に誘導電 流が 発生 し、 こ の電 流による 磁界 ( 基 本 波 磁 界) と 超 電 導コイル 磁界 と の作 用に よ っ て車 両は 浮 上す る。 浮上 コ イ ル は地 上に 離 散 的 に設 置さ れ て い る た め、 車両 上で は高 調 波 磁 界が 観測 さ れ る。 こ の高 調 波 磁 界 の ピ ッ チに 合わせて 集 電コイル (浮 上コイル と 同様 に「 8」 の字 結 線) を超 電 導 磁 石 表 面に 配置 す る こ と で 、こ の集 電コイル に 誘起電圧 を発 生す る こ と が で き る 。 側 壁 浮 上 方 式 における 誘 導 集 電 装 置の 各コイル の 配置概要 を図 1− 8 に示 す。 車上 に集 電コ イ ル及 び超電導 コ イ ル 、地 上に 浮上 コイル 及び 推進 コ イ ル がそれぞ れ設 置さ れ、 集 電コイル は超 電 導 磁 石 外 槽 表 面に 取 り付 けられている 。 ま た、 図1 − 9に 装置全体 の構 成 を示 す。 誘 起 電 圧により 車両 に搭 載 した 電力 変 換 器で 直流 に 変換 し、 蓄 電 池に 蓄 え る も の で あ る 。 誘導集電方式 は 、地 上コイル が離 散 的に 設置 さ れ て い る こ と に よ り、 走 行に 伴 な っ て生 じる 高 調 波 磁 界 を車 上の コイル で集 電す る も の で あ る。本方式 では「8 」 の字形状 の集 電 コ イ ルを 各 台 車の 超 電 導 磁 石 表 面 に 分散 して 配置 す る た め、 専用 の超電導 磁 石 を 必要 と せ ず、 客室 ス ペ ー スを 十分 に と れ る。 また 、装 置 が各台車 の数 だけ 存在 す る の で、 故障 に対 す る冗長度 も高 い 。 一 方、 本 方 式 では 、超 電 導 磁 石 外 槽の 影響 に よ り 1集 電コイル あ た り の出 力が 集中方式 に比 べ て小 さいため 低 速 走 行 時 に十 分な 出 力が 得ら れ な い。 これは 集電 コ イ ルが 超電 導 磁 石 表 面 に取 り付 け ら れ る た め、 地 上からの 高 調 波 磁 界 が外 槽に 生じ る渦電流 により 遮蔽 さ れ て し ま い、 集電 コ イ ル の誘 起 電 圧が 外槽 のない 場合 に比 べて 著し く 低下 す る た め で あ る 。ま た、 集電 コイル 電流 によって 外 槽に 誘導 さ れ る渦電流 により 、集 電コイル の 見か け上 の交 流 抵 抗 が大 きくなり 損 失が 生じ 影響 も無 視で き な い 。. 10.

(11) 集電コイル(8字コイル) 浮上コイル. 外槽. 推進コイル 進行 方向. 超電導 コイル. 車両側. 図1 −8. 地上側. 誘 導 集 電 装 置 のコイル 構 成. PWMコンバータ. 台車. 超電導磁石 集電コイル. 図1 −9. 誘 導 集 電 装 置 の装 置 構 成. 11.

(12) この 方式 での 検 討すべき 課題 は次 の と お り で あ る 。 (1 ) 超 電 導 磁 石 外 槽 の集 電 装 置へ の 影響 や超 電 導 磁 石 内 部へ の透 過 磁 界 の影 響( 電 磁 界 問 題 ) (2 ) 電流密度 の高 い 集電 コ イ ルの 設計 ( 発熱問題 ) (3 ) 集電 コ イ ル電 流 に よ る電磁力 の発 生 (車 両 動 揺 制 御 ) (4 ) 効率 ・力 率の 高 いコ ン バ ー タ 、集 電 コ イ ル等 の開 発 (実 機の 開発 ) 上 記の (4 ) は課 題で は な い が 、 この 誘 導 集 電 装 置の 特徴 と し て、 各台車 に分 散 配 置す る た め 、集 電コイル 電流 を 制御 す る こ と で 台車 の振 動 制 御( 車 両 動 揺) をすることが 可 能であり 、集 電 能 力 に余 力がある 高 速 走 行 域 において 、 乗り 心地 改善 を行 える 可能性 を示 唆し て い る 。. 1. 2. 本 研 究の 目的 と 概要. 本研究 では 高速 で浮 上 走 行をする 超電導磁気浮上式鉄道 に適 用す る車上電 源のうち、誘導集電装置について 研究を行 った。 こ れ は、 1. 1 節の 検討 を ふ ま え て 、環境性 、安 全 性を 考慮 す る と、RAT や 燃 料 電 池シ ス テ ム に比 べて 誘 導 集 電 方 式の 方が 有利 であり 、誘 導 集 電 方 式 を研 究す ることが 最も 現実的 であると 考え た た め で あ る。. 超 電 導 磁 気 浮 上 式 車 両で は高. 速走行中 、地 上 設 備 と完 全 非 接 触 で 走行 するため 、 車上 で使 用す る電 源 も地 上と 分離 さ れ て い る 必要 が あ る。 また 、 昨今 の環 境 問 題 を考 慮すると 、排 気 ガス や騒 音を 著し く発 生 する 電源装置 を搭 載 す る こ と は避 け なければならない 。 さ ら に、 高速 で浮 上 走 行 する 上で 車 上 電 源 装 置は 小型 、軽 量 で な け れ ば な ら な い 。 また 、公 共 交 通 機 関 で あ る列 車に 搭 載す る こ と を 考 慮すると 、耐久性 ・ 信 頼 性 の高 いシ ス テ ム であることも 要求 される 。さらに 、 営 業 線で の運 用を 検 討す る上 では 、製 造・ 運 用コスト も問 題と な る。. これらの条 件を十分 に満たす電源装置は 一般には 見当たらないが、誘導集電 装置は燃料等 の可燃物 を車両に積 む必要がなく、排 気ガスも 排出せず 、騒音も 生じないという特長がある。一方、出力に速度依存性 があり 、単位重量当たり の出力密度も 小さいなどの問題もある 。これらの 問題点について 、解析・実験 の両面から改 良を行い 、最終的 に高速で の試験走行を行って 実用化の 目処を立 てた。また 、これらの開発過程 において 誘導集電装置の電気機器としての特性 について 、電磁界・熱解析等に基づ く新たな 知見を得 ることができた 。本論文 はそれらの成 果をまとめたものである。 第1章では 、超電導磁気浮上式鉄道及び そ の車上電源の概要 をまとめ 、本研 究の背景を述 べるとともに、種 々の電源についての 検討結果 を説明し 、論文の 全体構成について概説 している。 12.

(13) 第2章では 、誘導集電装置と 超電導磁石 の電磁界解析について述べ 、電磁気 的な設計指針 について 検討している。誘導集電装置 の設計の 基本となる 、集電 コイルの誘起電圧、交流抵抗、発生電磁力等の電磁気的な特性 について 3 次 元有限要素法 を使用し て検討した 。 誘導集電装置固有の 問題として 、誘導集電コ イ ルと超電導磁石の電磁的な結 合が強いことが 挙げられる 。こ れ は、 超 電 導 磁 石 外 槽 に発 生 する 渦電流 の 影響 が あ る た め で あ る。 また 、超 電 導 磁 石 本 体の 特徴 として 、集 電コイル を 外槽表面 に取 り付 け る た め の 地上 コ イ ル− 超 電 導 磁 石 間の 空 隙を 確保 す る た め に 、超電導 コ イ ルが 内槽 に 対し て偏 芯し て い る こ と が挙 げ ら れ る。 こ の よ う に、 複 雑な 外槽 形状 や内 槽の 変 更を 加え た超 電 導 磁 石に つ い て、 集 電コイル の電気的 な 特性 や超 電導磁石内部 の 透過磁界 、外 槽に か か る 電 磁 力の 検 討を 行う た め に は 、 3次元解 析が 必須 で あ る。 そ こ で、 誘 導 集 電 装 置の 3 次 元 電 磁 界 解 析 により、 渦 電 流 損が 冷 凍 機 容 量 以 下 に な る こ と、 集電 コイル の強 度 以 下 の電磁力 に な る こ と 、誘導電 圧が 必要電力 を 得ら れ る こ と が示 された 、そして 、 これらの 結果 は、 定 置 試 験に より 検証 さ れ た こ と を述 べている 。. 第3章では 、誘導集電装置の 熱解析について述べている。誘導集電装置では、 原理的 に車 上で 消費 する 電力 と同 等の 発熱 が集 電コイル 及び 超電導磁石外槽 で発生する。集電コ イ ルの発熱 は集電コ イ ル抵抗の 増加を招 き、集電能力を減 少させる可 能 性がある 。また 、集電 コイルの 機械的な 強度、超電導磁石への影 響などの問題 も生じることとなる 。このため集電 コイルでの 発熱や熱拡散の問 題を把握することは大変重要で あ る。 超電導磁石外槽での 発熱は渦 電 流によるもので 、形状や周波数に よ り発熱分 布が変化する 。ま た、放熱条件(境界条件)が走行に 伴う空気流 であり 、走行 速度により変 化する。さらに、集電コ イ ルや超電導磁石外槽 は熱伝導率の異な った材料や複合材料で 構成されており、解 析が複雑 である。 このような解 析を行うため、第 2章で述 べた3次元渦電流解析を元に 発熱源 を算出し、熱拡散解析 を行った 。熱拡散解析には 有限要素法 とモンテカルロ法 の2つの異なった手法 を用いた 。そして 、各速度域での渦電流解析により発熱 源分布を求め 、放熱条件も速度 により変 化させた 解析を行っ た。その 結果を、 実際の 走 行 時の 空 気 流を 模擬 した 風洞 に よ る定 置 試 験と 比較 し解 析の 妥当性 を検証した。 これらの一連 の解析及 び定置試験 により 、温度上昇による集電電力の 損失が 解析により把 握できるようになっ た。また 、集電 コイルの温度変化による機械 的な強度の変 化も予測 できるようになった 。 第4章では 、誘導集電装置と 車両動揺について 、車両動揺 から集電装置に与 える影響と集電装置か ら車両運動 を制御す る双方について述べている 。誘導集 電装置は走行 に伴って 発生する浮 上コイル 電流から 誘起電圧を 得るため 、その 13.

(14) 原理上、車両動揺によって誘起電圧が 変動する 。誘起電圧の変動 は、出力電力 の変動を意味 するため 、集電装置の特性上重要な 問題と な る。ここでは 、車両 動揺による誘起電圧の 変化についてフーリエ解 析 及び測定か ら検討を 行った。 その結果、誘起電圧の 変化は、浮上コ イ ルと集電 コイルの相対位置の 変化によ るものと、浮上電流の 変化によるものがあるが、浮上コイル 電流の変 化による ものの影響が 大きいことがわかった。 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 の場 合、 浮 上 走 行 中 、浮 上 ・案 内・ 推進 の す べ て の 力を 超 電 導コイル が 受け る こ と に な る が 、超電導 コ イ ル と地 上コイル の間 で は、 減衰 係数 (ダ ン ピ ン グ係 数) が負 に な り 振動 が減 衰し な い こ と が 知ら れ て い る。 電磁 的、 能 動 的に 振 動 減 衰 効 果を 得る に は、 何らかの コイル を外 槽 表 面に 設 置し 、振 動 速 度に 比例 し た減衰力 を生 じる 電 流を 流す こ と が 必要 と な る。 そ こ で 集電 コイ ルを 減 衰 力 発 生 用コイル と し て 使用 し、PWM コ ン バ ー タを 制 御 器と し て兼 用す る振動減 衰 法 を 提案 した 。そ し て こ の提案法 の 効果 を 、走 行 試 験により 検 証し た。. 最終的に第 5章において、実 際に誘導集電装置を 試作し、実験線において高 速走行試験に 供した結 果について 述べている。そ こ で、誘導集電装置を 試作し、 定置模擬試験 を 行い 各 構 成 装 置の 性 能 確 認を 行っ た 。そ の際 、走 行に 伴 って 発生 する 高 調 波 磁 界 を模 擬す るコイル により 、定 置に て 走行状態 を再 現す る こ と が可 能で あ る が、 実 際の 車両 に搭 載し た 場合 に生 じる 特 有の 現象 について は 検証 する こ と が で き な い 。す な わ ち、 電 磁 力 以 外 の集 電コ イ ルに か か る風 圧や 、 地上構造 物( トンネル や 高 架 橋、 曲線 や勾 配 など )による 車 両 運 動の 影響 を考 慮 するため には 、実 際に 走 行 試 験を 行う 必要 がある 。さらに 、 走行試験 では 車 両 運 動と の相 関を 計測 し な け れ ば な ら ず 、台 車 振 動は 数 Hz、誘 導 集 電 は数 百 Hz の現 象 で あ り、 双方 を同 時に 計 測す る と い う 要求 を 満足 し な け れ ば な ら な い 。 そ こ で ま ず、 車 両 運 動に 関しては 、 車体空力揚力 などを 予め 測定 し、 変動分 を 予測 した 。異 周 波 数 計 測 の問 題に 関 し て は、 誘 導 集 電シ ス テ ムが 3相 交 流 機 器で あ る こ と を考 慮 して 、3 相 2 相 変 換 (d−q 変換 ) を行 うことにより 、 瞬時 の各 物 理 量の 振 幅 及 び位 相を 計算 に よ り 求め た。 そ し て 求め ら れ た位 相の 瞬時値 から 力率 、抵 抗、 イ ン ダ ク タ ン ス を算 出 す る こ と で、 誘 導 集 電の 電 磁 的な 特 性が サン プリング 周 波 数 に制 約さ れ ず に測 定 す る こ と が で き た。 これらの 解析 や 測定手法 の改 良を 行っ た 上で 、誘 導 集 電 装 置 を実 走 行 試 験 し た結 果に つ い て詳 細 に述 べて いる 。. 本研究に よ り得ら れ た成果は 、超電導磁気浮上式鉄道の車上電源である誘導 集電装置の実用化の目 処を立てたことにある。これにより、高速で浮上走行中 の車両 に非接触 で大 きな 電力 を安 定 供 給することが 可能 であることが 示され た。また、これらの開発過程で 得られた 、電磁界・熱解析手法は他の 電磁界解 析を必要と す る電気機器の開発に も応用することができるものと考えられる。. 14.

(15) 第1章の参考文献 ( 1 ) J. R. Powell and G.T. Danby, "INTEGRATED MAGNETIC SUSPENSION AND PROPULSION SYSTEMS", 1972.oct., IEEE Industrial Application Soc. (2 )J. R. Powell and G.T. Danby, "High Speed Transport by Magnetically Suspended Trans", Winter Ann. Meet. ASME, Paper 66 WA ‑RR‑5,1966 (3 )J. R. Powell and G.T. Danby, "Dynamically Stable Cryogenic Magnetic Suspensions. for. Vehicles. in. Very. High. Velocity. Transport. Systems",Proc. 6th Meeting of Soc. Of Eng. Sci., 1970 (4 )J. R. Powell and G.T. Danby, "Magnetic suspension for levitated tracked vehicles", Cryogenics 11, pp.192‑204, 1971 June. (5 )澤田他 :「翔 べリ ニ ア モ ー タ ー カ ー」, 読 売 科 学 選 書,1991 年 (6 )鉄 道 総 合 技 術 研 究 所 編 :「超電導 リ ニ ア モ ー タ ー カ ー 」,交 通 新 聞 社,1997. (7 )H. Nakasima, "The Status of the Technical Development for the Yamanashi Maglev Test Line", Maglev '95, pp.31, Nov. 1995. (8 )E. Sawano, "Inductive Power Collection System for Maglev Vehicles", The internal conference on speedup technology, Vol.1, pp‑186, Nov. 1993. ( 9 ) T. Watanabe et al, "Control Method of Linear Generator for Maglev Vehicle", PPC‑Yokohama '93, pp.328‑334, 1993.4 (1 0)T. Murai, "Test run of combined propulsion, levitation and guidance system in EDS Maglev", Maglev '95, pp.289, Nov. 1995 (1 1)S. Fujiwara, "Characteristics of the combined levitation and guidance system using ground coils on the side wall of the guideway", Magnetically levitated systems and linear drives, pp.241, July 1989. ( 12 ) 紙 屋:「 実 用 化 を待 つ 燃 料 電 池 電 気 自 動 車 」, 電 気 学 会 誌, 平成 12 年 3 月,vol.120,No.3 (1 3)長谷川, 大木: 「燃 料 電 池 機 関 車にみる 固 体 高 分 子 膜 燃 料 電 池の 過 渡 特 性」, 平成 7 年 電 気 学 会 全 国 大 会 (1 4)Hasegawa, Ohoki: "Development of a Locomotive using Portable PEMFC system with Metal Hydride Tank", Nov. 14 1994, The 35th Battery Symposium. (1 5) 長 谷 川,大 木:「 車 載 水 素 吸 蔵 合 金タンク PEM 燃 料 電 池シ ス テ ム に よ る機 関車 の開 発」, 第3 5回 電 池 討 論 会 , 1994 ( 1 6 ) 電 気 学 会 燃 料 電 池 運 転 性 調 査 専 門 委 員 会 編 :「 燃 料 電 池 発 電 」 , コロナ 社,1994.5. 15.

(16) (1 7 )宮 本,熊谷他: 「 鉄道 における 燃 料 電 池 車 両の 可 能 性 」,鉄 道 技 術 連 合 シン ポジウム, 2402, 2002,12. (1 8)須 田,「 燃 料 電 池 自 動 車 用の 水 素 供 給 源 について 」,FC NEWSLETTER, Vol.13, No.1, 2000.6. (1 9) 長 谷 川,宮 本:「 移動体用 LNG 燃 料 電 池シ ス テ ム の検 討」, 平成 13 年電気 学会全国大会 (2 0) 長 谷 川,山 本,近 藤:「 車 両 用 固 体 高 分 子 膜 燃 料 電 池 高 調 波 特 性 の検 討」, 平成 13 年 電 気 学 会 産 業 応 用 部 門 大 会,No.209, Ⅱ pp.907 (2 1 )小 田:「浮 上 式 鉄 道 用 ラム・エア・タ ー ビ ンの 開発 」,第 35 回 航 空 原 動 機 宇 宙 推 進 講 演 会,1995.1.. 16.

(17) 第 2章. 誘導集電装置と 超電導磁石の電磁界解析. 2. 1 は じ め に 誘導集電装置の設 計の基本 となる、集電 コイルの誘起電圧、交流抵抗、発生 電磁力等の電磁気的な 特性について 3 次元有限要素法を使 用して検 討した。 これは、解 析対称が 渦電流解析 を含む動磁界解析問題に帰着 させることができ るためである 。 誘導集電装置固有の 問題として 、誘導集電コ イ ルと超電導磁石の電磁的な結 合が強 いことが挙げ ら れ る (1)(2)(3) 。 これは 、 超 電 導 磁 石 外 槽に 発 生 する 渦電流 の影 響が あ る た め で あ る 。ま た、 超 電 導 磁 石 本 体 の 特徴 としては 集電 コイル を外 槽 表 面に 取り 付 け る た め の地 上コ イ ル− 超 電 導 磁 石 間の 空隙 を確 保す る た め に、 超 電 導コイル が 内槽 に対 して 偏芯 し て い る。 こ の よ う な 複雑 に、 外 槽 形 状や 内槽 の変 更を 加え た 超 電 導 磁 石に つ い て 、集 電コイル の 電 気 的な 特性 や超 電 導 磁 石内 部の 透過磁界 、 外槽 にかかる 電 磁 力 の検 討を 行う た め に は、 3次 元 解 析 が必 須で ある (4)(5)(6) 。本 章 では 誘 導 集 電 装 置の 電 磁 界 解 析 を行 う と と も に 、誘 導 集 電 装 置 から 超 電 導 磁 石 へ与 える 電 磁 的な 影 響に つ い て も 解 析し た。. 2. 2 誘導集電用超電導磁石 の 構造 と特 徴 超電導 磁 石 は 、超電導 コ イ ルの 周 りに 冷媒 を満 た す た め の 内槽 (液 体 ヘリウム 温度 )、 常 温からの 輻 射 熱 を遮 蔽す る た め の 輻 射シ ー ル ド層 ( 液体窒素温度 )、こ れ ら を保 持す る 断熱容器 で あ る外 槽 に よ り構 成さ れ て い る。 また 、熱 侵 入や 発熱 に よ り気 化し た 液体 ヘリウム を再 液 化す るための 冷凍機 が搭 載さ れ て い る。 液体 ヘリウム の蒸 発 量はこの 冷 凍 機 能 力 以 下 で な け れ ば な ら な い 。 液 体ヘ リ ウ ム の蒸 発を 最 小 限に 抑 え る た め に、 内 部に 透過 する 磁界 を 遮蔽 する 必要 が あ り、 外 槽に は電 気 伝 導 率 の 高い 純ア ル ミ ニ ウ ム を使 用し て い る 。 集 電コイル は 浮上 コ イ ルか ら発 生 する 高 調 波 磁 界 を利 用し て発 電し て い る が、 浮上 コ イ ルが 6 0度 ピ ッ チの 場合 、 この 高 調 波 磁 界 の中 で最 大の も の は 、時 間6 次の 成分 で あ る 。例 えば 、極 ピ ッ チ が1 .3 5m の 場合 で、 5 0 0k m / h で走 行す る場 合、 高 調 波 磁 界 は309 H zになる 。こ の よ う な高 い周波数 の 高調波磁 界に 対し て、 集 電コイル の近 辺に 良導体 が存 在す る と、 良 導 体に 渦 電 流 が生 じ、 高 調 波 磁 界を 遮 蔽す る。 また 、集 電 コ イ ルか ら発 生 する 磁界 に よ る交 流 渦 電 流 損 失も 発生 し、 見 かけ 上、 集電 コ イ ル の交 流 抵 抗が 増 加し 集電能力 が落 ち る こ と に なる 。こ の問 題 を解 決す る た め に は 、集 電コイル と 外槽 のア ル ミ ニ ウ ム の距 離を 17.

(18) 大き く と る こ と が必 要である 。そ こ で図 2− 1( a )に 示す よ う な下 記 の改 良を 加えるこ と を 考 える 。 ① 超 電 導 磁 石 外 槽 部に 凹部 を も う け る ② 外槽 の高 さを 出 来るだけ 縮め る ③ 誘導集電 コ イ ル を取 り付 ける ス ペ ー スを 設け る た め 、外 槽 表 面を 車両側 に後 退さ せ、 超 電 導 コ イ ルを 内槽 に対 し て偏 芯させる こ の よ う な改 良 を加 えた 超 電 導 磁 石 では 従 来 型( 図 2− 1( b ))に比 べ 、集 電コ イル 電流 に よ り 、透 過 磁 界が 増加 したり 、付加的 な 電 磁 力が 発生 する 可能性 があ る。 この 透 過 磁 界による 交流損失 や 超 電 導 磁 石に 働 く電磁力 を検 討す る た め に解 析と 試験 を行 っ た。 集電用コイル. 外槽. 凹部. 輻射シールド層 内槽 超電導コイル (偏芯). 図2 −1 ( a ). 改 良を 加え た誘 導 集 電 用 超 電 導 磁 石. 外槽. 輻射シールド層 内槽 超電導コイル. 図2 −1 ( b ). 従来型 の超 電 導 磁 石. 18.

(19) 2. 3 超電導磁石内部 の 電磁界解析 超 電 導 磁 石 冷 媒である 液体 ヘ リ ウ ムの 走 行 時 蒸 発 量を 決定 する 要因 と し て は、 機 械 的 要 因と 電 気 的 要 因 の2 つ が あ る。電 気 的 要 因 は透 過 磁 界 に よ る交 流 損 失で 、 周 波 数が 低く な る と 超 電 導 磁 石 外 槽 での 遮蔽効果 が 低減 するため 、低 速 走 行 時の 発熱増加 に注 意 する 必要 が あ る。 一 方の 機 械 的 要 因 は、 超 電 導 磁 石 の振 動 共 振な ど に伴 って 、超電導 コイル 内槽 部分 が振 動し 、 摩擦 な ど に よ る発 熱 が生 じ る も の で あ る 。高 速 走 行 中 は 機械的要 因が 大き い。 こ の機械的 な振 動は 、 走行 に伴 って 生 じる 超 電 導 磁 石 外 槽 の渦電流 と超電導 コ イ ル 磁 界 間で 発生 する 電磁力 が加振源 と な っ て い る。 特に 超電導 コイ ルの ね じ れ力( 車 両の 進行方向 を x 軸とした 場合 の 車両断面方向 で あ る y軸方向 の電磁力 Fy(N) による )が 蒸 発 量 増 加 の大 き な要 因となる 。 2 .3 .3 節 で こ の透 過 磁 界に よ る交 流 損 失の 検 討、 2. 3. 4節 で 超電導磁 石に 働く 電 磁 力 の検 討を そ れ ぞ れ 行 った 。. 2. 3 .1. 解析モデル. 超 電 導 磁 石 電 磁 界 解 析 に は 、A 法 辺 要 素 に よ る 有 限 要 素 法 渦 電 流 解 析 (FEM, 周 波 数 応 答)を使 用し た。図 2− 2に 解析 モ デ ル を、表2 −1 に計 算 諸 元 を示 す。 解析 モ デ ルの 規 模は 4 6 9 2 0要 素 で あ る。 本解析 の特 徴 は下 記の と お り で あ る。 (1 ) 超 電 導 磁 石 に 走 行 時 と同 様 な磁 界 を加 え る定 置 試 験 装 置を 模 擬し た 解析 モ デ ルを 作成 し た (2 )周期性 を 利用 して 1超電導 コイル 分を 作成 し た (3 )複 雑な 形 状を 模擬 するため 3 次元解析 と し た (4 ) 表 皮 厚 を超 え る部 材 が あ り 、微 小 な透 過 磁 界 の 評価 を 行う た め薄 板 近 似 で解 析 す る と 誤差 が 大き く な る 可能性 がある 。 こ の た め部 材 の板 厚 方 向 の 分割 を密 に し た 上記 (1 ) の定 置 試 験 装 置 は 、地 上コ イ ル6 0度 ピッチ に対 応 し た も の で 、空 間5 次高調波 を 模擬 す る よ う に な っ て い る。 地上 コイル と模 擬 外 槽と の 実 空 隙は 20 mm と な っ て い る。 図2 −3 に解 析に 使 用し た分割図 の 一例 を示 す。. 19.

(20) 誘導集電用. 従来型. 集電用コイル. 外槽. 輻射シールド層 445 370 凹部 700. 790 500. 内槽. 271. 370. 超電導コイル 60. 20. 地上コイル. 125. 125. [単位mm]. 図2 −2. 表2 −1 外槽. 80. 解 析 モ デ ルの 断 面 図. 外 槽の 計 算 諸 元 3 . 5 ×10 7 S/m. 導電率. 輻 射シ ー ル ド層. 2 . 1 ×10 8 S/m. 内槽. 導電率. 4 . 0 ×10 9 S/m. 電流. 地上 コ イ ル. 4 . 6 kA. 集電 コ イ ル. 2.6kA. at100Hz. 3.5kA. at200Hz. 2 . 1 kA. at300Hz. 20.

(21) V1 L1 C1 G7. Z Y X. V1 L1 C1 G7. Z. X. Y. 図2 −3. 解 析 モ デ ル分割図. 21.

(22) 2. 3 .2. 交流損失 の 解析 と測 定. 従来 の超 電 導 磁 石 外 槽は 表面 が 平板 で あ っ た が 、誘 導 集 電 用 では 複 雑な 形状 を も つ た め、 集 電コイル に よ る渦 電 流の 流路 が変 わ り、 透過磁界 に変 化 が生 じる こ と が予 測さ れ る。 この 影響 を把 握 す る た め に、 有 限 要 素 法 に よ る数 値 解 析 と模 擬 外 槽による 測 定を 行っ た。 図2 − 4に 解析 に よ り 得られた 、誘 導 集 電 用 超 電 導 磁石外槽 の渦 電 流 分 布を 示す 。地 上 コイルピッチ で 渦 電 流が 発生 し て い る様 子が わ か る。 また 、 凹部 (図 の白 抜き の 部分 )に 渦 電 流 が流 れ な い た め、 凹 部 周 辺で 複雑 な電流路 が 生じ て い る。 こ の よ う な 複雑 な渦 電 流 経 路が 生じ る現 象 を解 析す る に は、3 次元 の解 析が 必 要であり 、解析手法 の選 択 が妥 当で あ る こ と が 分か る。. 2. 3 .3. 透過磁界 の 電磁界解析. 外 槽 内 部へ の 透過磁界 を解 析す る と と も に 、解 析 の妥当性 を検 証す る た め に、 模擬外槽 を使 用 して 磁界 を測 定し た 。 図 2− 5に 解 析 結 果と 測定結果 を 示す 。解析及 び 測定 とも 超 電 導 磁 石 内 部 の各 点で 行ったが 、 評 価 点は 液体 ヘ リ ウ ム蒸発量 に最 も 大き な影 響を 与え る 内槽位置 での 磁界 と し た 。図 を見 ると 解 析 結 果と 測定結果 が お お む ね 一致 し て い る こ と が わ か る。 また、 従来型 に比 べ誘 導 集 電 対 応 型で は、 透過磁界 が 3 割 程 度 大き い傾 向を 解析 、測 定 と も に示 している 。 従 来 型と 誘 導 集 電 対 応 型 での 主な 違 いは 、外 槽の 超 電 導 磁 石 中 心 部に 凹部 が存 在 す る か否 か で あ る。 評 価 点である 内 槽 位 置に おいては 、こ の 凹部 の影 響で 磁 界 遮 蔽をする 渦 電 流 が小 さくなり( 流路 が変 化し ) 透過磁界 が大 き く な っ て い る と考 え ら れ る。 本 結 果 は模 擬 外 槽を 使用 し た も の で あり 、実 際の 超 電 導 磁 石 には 、高 導 電 率 の輻射熱 シ ー ル ド板 が あ り、 模 擬 外 槽で の透 過 磁 界が 直 に液 体ヘ リ ウ ム蒸 発 量に 結び つ く こ と は な い 。実 際の 超 電 導 磁 石 での 内槽発熱 に つ い て は 2. 4節 に 述べ る。 図 2− 6に 示 す測 定 装 置で は、 超 電 導 磁 石 内 部 に 透過 する 高 調 波 磁 界 は微 弱な ため 、フ ラ ッ ク ス ゲ ー ト 型の セ ン サ ーを 使用 した 。 フラックスゲート 型 センサー は 10 - 5 〜10 - 3 (T) の範 囲で 高精度 な磁 界を 測 定す る こ と が可 能で あり 、 今回 の測 定に 適し て い る 。こ のセ ン サ ーを 用 いて 模擬外槽 の 内側 の磁 界を 各点 に お い て測 定し た。. 22.

(23) V1 L1 C1 G4. Z Y. X. Output Set: Frequency = 3.0000D+02 StdContourVec: JX (REAL). 図2 −4. 外 槽 の渦 電 流 分 布(誘 導 集 電 用 超 電 導 磁 石 、300Hz). 4.000. 測定 従来型. 磁界By(×10e-4T). 3.000. 測定 誘導集電対応 解析 従来型 解析 誘導集電対応. 2.000. 1.000. 0.000 0. 50. 図2 −5. 100. 150 200 周波数(Hz). 250. 300. 内 部 磁 界 の解 析と 測 定 値 の比 較. 23. 350.

(24) [単位:mm] 図2 −6. 2. 3 .4. 模 擬 外 槽 を使 用し た磁 界 測 定 装 置. 渦電流損 の 解析. 渦 電 流 損の 解 析を 透過磁界 の解 析 と同 様の 手法 で 行っ た。 図 2− 7に 誘 導 集 電 対 応 超 電 導 磁 石と 従 来 型 超 電 導 磁 石の 形状 の違 い お よ び集 電コイル 通電 の 有無 に よ る渦 電 流 損 の違 いを 示す 。 図 2− 7( a )か ら、 集電 コ イ ル に通 電させた 場 合、 外槽 に集 電 電 流 に よ る渦 電流 が発 生し て 、従来型 に比 べて 大 きな 渦電流損 が 生じ る こ と が わ か る 。200 Hz 以上 で減 少 するのは 、集 電コ イ ル電 流が 絞り 込 まれるためである 。 従来型外 槽と 誘 導 集 電 用 外 槽 で集 電コイル 電 流を 流さない 場 合に 誘 導 集 電 用 外 槽 の渦電流 損が 小さ い の は 集電 コ イ ルの 厚み 分 だけ 地上 コ イ ル から 離れ て い る た め と考 えら れる 。 ( b )か ら、誘 導 集 電 用 外 槽 は 凹部 が存 在す る た め 、従来型 に比 べ 渦 電 流の 流路 が変 化し て 、透 過し た磁 界が 大 き く なり 渦 電 流 損が 多く な っ て い る と考 えら れる 。( c )か ら、 内槽 の 渦電流損 は輻 射シ ー ル ド 層と 同様 な 傾向 が認 められる 。 以上 より 従 来 型 に比 べ、 渦電流損 は 増加 す る が、 冷凍機 の能 力か ら見 る と、 現実 には 問題 に な ら な い 程度 で あ る こ と が わ か っ た。. 24.

(25) 2500. 1500 1000. ○:誘導集電用集電電流有 △:誘導集電用集電電流無 □: 従来型. 500 0 0. 50. 100. 150 200 周波数(Hz). 250. 300. 350. 外 槽 部の 渦 電 流 損 図2 −7 ( a ). 透 過 磁 界による 渦 電 流 損の 比較. 15 12 渦電流損(W). 渦電流損(W). 2000. ○:誘導集電用集電電流有 △:誘導集電用集電電流無 □:従来型. 9 6 3 0 0. 50. 100. 150 200 周波数(Hz). 250. 輻射 シールド 層 の渦 電 流 損 図2 −7 ( b ). 透 過 磁 界による 渦 電 流 損の 比較. 25. 300. 350.

(26) 0.08 ○: 誘導集電用集電電流有 △: 誘導集電用集電電流無 □: 従来型. 渦電流損(W). 0.06. 0.04. 0.02. 0.00 0. 50. 100. 150 200 周波数(Hz). 250. 内 槽 部の 渦 電 流 損 図2 −7 ( c ). 透 過 磁 界による 渦 電 流 損の 比較. 26. 300. 350.

(27) 2. 4 集 電 電 流による 電 磁 力 解 析 2. 4 .1 . 集 電コ イ ル電 流 有 無 に よ る 電磁力解析 誘 導 集 電 装 置 を動 作させて 集電 コイル に集 電 電 流 が流 れ る こ と で、 超 電 導 磁 石 に働 く電磁力 が 増加 する 可 能 性が あ る。 このため 、 集電 コ イ ル電 流の 有 無による 超 電 導 磁 石 外 槽 お よ び集 電コイル に か か る電磁力 を 解析 に よ り求 めた 。 電 磁 力は 磁 性 体が 無い た め、 2. 3. 2節 で 求め た外 槽に 発 生す る渦電流 、集 電 コ イ ル電 流と 超 電 導コ イ ルからの 磁界 の外 積 (フ レ ミ ング の 法則 )により 計算 す る。 図 2− 8( a )に 集電 コ イ ル 通電 が無 い場 合の 電磁力 、 ( b )に 集電 コイル 通電 した 場合 の電 磁 力を 示す 。 ( b )で は 外槽 と集 電コ イ ルに 働く 合 成 電 磁 力 の分 布を 示し て い る。 (a) では 、 外槽 に生 じる 地上 コイル か ら の渦 電 流と 超 電 導コイル 磁 界とでね じれ 力が 発生 し て い る こ と が わ か る 。 (b) では 、 集電 コ イ ル通 電を お こ な っ た に も か か わ ら ず ( a )の 結 果と 大き く変 わらない 結 果が 読み 取れ る。 これは 、集 電コ イ ル電 流により 発生 す る外 槽の 渦 電 流による 電磁力 と、 集電 コ イ ル 電流 に よ る電 磁 力とでお 互い に相 殺 す る ため であると 考え ら れ る 。 超電導 コ イ ル に対 して 、上記 ね じ れ方 向の 電磁力 が特 性を 大 きく 左右 するため 、 図2 −9 の よ う な領 域を 考え て、 作 用す る電磁力 ( y方 向) を積 分し た 。表 2− 2にその 結果 を 示す 。 表 2− 2を 見 ても 誘 導 集 電 電 流 有 り無 しで 大き な 電 磁 力の 差が な い こ と が わ か る。 機 械 的に 強 固に 集電 コ イ ルを 外 槽に 締結 す れ ば 、外 槽の 電 磁 力と 集 電コイル の電磁力 が相 殺 して 、集 電コイル や 超 電 導 磁 石 外 槽 に振 動の 増加 が あ ま り な い こ と が わ か る。. 27.

(28) 3000 -4000 2000 -3000 1000 -2000 0 -1000 -1000 -0 -2000 --1000 -3000 --2000 -4000 --3000. 集電 コ イ ル通 電 なし 図2 −8 ( a ). Fy( N). 外 槽 表 面の 電 磁 力 分 布. 3000 -4000 2000 -3000 1000 -2000 0 -1000 -1000 -0 -2000 --1000 -3000 --2000 -4000 --3000. 集電 コ イ ル通 電 あり 図2 −8 ( b ). Fy( N). 外 槽 表 面の 電 磁 力 分 布. 28.

(29) y 超電導コイル位置 領域Ⅱ. 領域Ⅰ. (0,0). 領域Ⅲ. x 領域Ⅳ. 図2 −9. 評価積分領域. 表2 −2. 外 槽 電 磁 力の 積 分 値. 領域 Ⅰ. 領域Ⅱ. 領 域Ⅲ. 領 域Ⅳ. コ イ ル電 流 無. 1.51. -5 . 1 0. -2 . 1 7. 6.71. コ イ ル電 流 有. 1.85. -5.7 4. -2 . 8 3. 6.87. (×10 4 N・m 2 ). 29.

(30) 2. 4 .2 .. 1 コ イ ル 超電導磁石 に よ る 定 置 試 験 結 果. 1コイル分の超電導磁石を使用した定置電磁加振試験による液体ヘリウム蒸 発量増分( 内 槽 発 熱 )の 測定 を行 った( 図 2− 10 )。測定 では 、超 電 導 磁 石 の外 槽、 輻 射 熱シ ー ル ド 層、 内槽 、集 電 コ イ ルに 振 動 加 速 度 計を 設置 し蒸 発 量ととも に振 動も 測定 し た。 測定結果 を見 る と誘 導 集 電 動 作 を行 っ て も、 集 電 動 作を 行わ ない 場合 に比 べ 、大 きな 蒸 発 量 増 分 がないことが 読 み取 れる 。ま た、 集 電のみの 場合 で は ほ と ん ど蒸発量 が な いこ と が わ か る 。 2 .4 .1 節 で示 し た よ う に、 超 電 導 磁 石 外 槽 と 集電 コ イ ルの 電 磁 力 が相 殺さ れ る よ う に強 固 に締 結さ れ て い る た め、 振動 が発 生 せず 、機 械 的 発 熱 が 生じない と考 えられる 。 集電 コ イ ルの 加 速 度 の測 定 結 果に お い て も、 振動 が小 さ い こ と が 確認 さ れ て い る 。. 蒸発量増分 (冷凍機能力にて規格化). 4. 加振のみ 加振+集電 集電のみ. 3. 2. 1. 0 0. 図2 −1 0. 100. 200. 300 400 速度(km/h). 500. 600. 集 電コイル 電流 の有 無 に よ る蒸 発 量 増 分. 30.

(31) 2. 5 ま と め 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 用 分 散 型 誘 導 集 電 装 置で は 、集 電コイル を設 置 するため と誘 導 集 電 能 力 を向 上さ せ る た め に 、超 電 導 磁 石 の 構成 や形 状の 変更 を 行う 。こ の た め、 超 電 導 磁 石 外 槽 が複 雑な 形 状に な っ て し ま う。 こ の よ う な超 電 導 磁 石を 考察 す る た め に 有 限 要 素 法による 解析及 び測 定を 行 った 。 そ の結 果、 次 の知 見を 得る こ と が で き た。 ① 地 上 コ イ ル お よ び 誘 導 集 電 コ イ ル か ら 超 電 導 磁 石 内 部 に 透過 す る 交 流 磁 界 に よ る渦 電 流 損 は、従 来 型に 比 べて 周 波 数の 低い 領 域で 増加 す る が 、実用上 問題 ない 値で あ る ② 集電電流 から 外 槽に 生じ る渦電流 と 超 電 導コイル 間 に働 く電磁力 は 、集 電コ イル 電流 に よ る 電 磁 力で 相殺 さ れ る た め 、外 槽 −集 電コイル 間の 機械的 な結 合を 強く す る こ と で 外槽 の振 動は 大 きく 増加 し な い こ れ ら の結 果 に よ り、 分 散 型 誘 導 集 電 コ イ ルを 超 電 導 磁 石 表 面 に設 置 し て も、 液体 ヘリウム の 大き な蒸 発 量 増 分 が な い こ と や集 電 コ イ ルが 通電 に よ っ て脱 落し たり 、大 きな 振 動が 起こ ら な い こ と 解 析 及び 試験 に て示 さ れ た。. 第2 章の 参 考 文 献 (1 ). 村井, 長 谷 川,藤原:「側 壁 浮 上 方 式 における 誘 導 集 電の 特性改善 」,電学論 D,平成 9 年1 月, Vol117-D, pp81-90. (2 ). 長 谷 川 ,村 井,藤 原 他: 「 超 電 導 磁 石 兼 用 型 誘 導 集 電 装 置 の性 能 改善 と出 力 確 認 試 験 」, 電気学会 リ ニ ア ド ラ イ ブ 研 究 会 資 料 ,1995 年,LD-95-87. (3 )山 本,村 井,長谷川他:「ダ ン ピ ン グ制 御 機 能 を付 加し た分 散 型 誘 導 集 電 装 置の 開発 」,鉄 道 総 研 報 告 ,1999 年 9 月,Vol13,No9,pp33 -38 (4 )古川他: 「 外部回路 を考 慮し た 磁 気 浮 上 列 車 用 分 散 型 誘 導 集 電 磁 石 の電磁特 性 解 析」, 電 気 学 会 リ ニ ア ド ラ イ ブ研 究 会 資 料, 1997 年, LD-97-113 (5 )福 本,吉 岡,小林, 斎藤:「 磁 気 浮 上 列 車 用 超 電 導 磁 石 の渦 電 流 解 析」, 電気学 会研究会,LD-90-79 ( 6) 亀 岡, 福 本,吉 岡 :「 磁 気 浮 上 列 車 用 超 電 導 磁 石 の振 動 に 伴 う 渦 電 流 解 析 」, 電 気 学 会 研 究 会, LD-91-102 (7 )古 川,福 本,柴田, 滝沢,寺 井,大 石:「 磁 気 浮 上 列 車 用 超 電 導 磁 石の 車 両 動 揺に よる 渦 電 流 解 析 」, 電 気 学 会 研 究 会, LD-94-76 (8 )長谷川 , 松江 ,村 井:「 空芯機器 に お け る複 合 材 料の 交 流 損 失の 検討 」,電 気 学 会リ ニ ア ド ラ イ ブ研 究 会 資 料 ,2000 年,LD-00-105 (9 ) 米 谷 他: 「磁 気 浮 上 列 車 用 超 電 導 磁 石 の地 上 コ イ ル高調波 に よ る 電磁現象 31.

(32) の解 析」, 電学論 D, 1994 年, vol.114, No. 4, pp.400 -408 (1 0) H. Matsue et al. ”Heat Load Caused by Electromagnetic Vibration of Super conducting Magnet Combined with Linear Generator”, I E E E Applied superconductivity, Vol.10, No1. March 2000, pp.913-916 (1 1) 澤 野 他 、「 磁 気 浮 上 列 車の 誘 導 集 電 用 PWM コ ン バ ー タ装 置」、 電気学会 研 究 会 資 料,1993 年,SPC-93-5 (1 2) 寺内 、「側 壁 浮 上 方 式 における 分 散 型 誘 導 集 電 の集 電 能 力 と電磁力 」、第 3回 電 磁 力 関 連 のダイナミックスシンポジウム講 演 論 文 集、1991 年 6 月 (1 3 )渡辺他 、 「瞬 時 電 流 検 出 に よ る浮 上 式 鉄 道 車 両 誘 導 集 電 用 PWM コンバー タ」、電 気 学 会 研 究 会 資 料,1994 年,SPC-94-102 (1 4 )村 井 他、「 側 壁 浮 上 方 式 に お け る誘 導 集 電 の特 性 及び 能 力 向 上 策」, 電気 学 会 研 究 会 資 料,1993 年,LD-93-60 (1 5 )藤原他 、 「 誘 導 式 磁 気 浮 上 での 磁気ダンピング」、電 気 学 会 研 究 会 資 料 ,1992 年,TER-92-21LD-92-55 (1 6 ) 藤原 、「 小 特 集 : 超 電 導 磁 気 浮 上 式 鉄 道 、推 進 ・ 浮 上 技 術」, 電学誌,111 巻 6 号,平成 3 年. 32.

(33) 第 3章. 誘導集電装置の 熱解析. 3. 1 は じ め に 本 章は 誘導集電装置の熱 解 析についてまとめたものである。誘導集電装置で. は、原理的 に車上で 消費する電 力と同等 の発熱が 集電コイル 及び超電導磁石外 槽で発生する 。集電コイルの発 熱は集電コイル抵抗 の増加を 招き、集電能力を 減少させる可能性が あ る。ま た、集 電コイル の機械的 な強度 、超電導磁石への 影響などの問 題も生じることとなる。このため集 電コイルで の発熱や 熱拡散の 問題を把握することは 大変重要である。 超 電 導 磁 石 外 槽で の発 熱は 渦 電 流に よ る も の と集 電コイル か ら の熱伝導に よるもので、形状や周波数に よ り発熱分布 が変化す る。また 、放熱条件(境界 条件)が走行 に伴う空気流で あ り、走行速度により 変化する 。さらに 、集電コ イルや 超 電 導 磁 石 外 槽は 熱伝導率 の異 な っ た材 料や 複合材料 で構 成されてお り、解析が複 雑である 。 このような 解析モ デ ルには、第2章で 述べた3 次元渦電流解析を元 に発熱源 を算出し、熱拡散解析 を適用することとした。熱拡散解析に は有限要素法とモ ンテカルロ法 の2つの 異なった手 法を用い て計算を 行った。そして、各速度域 での渦電流解析により 発熱源分布 を求め 、放熱条件も速度により変化 させた熱 拡散解析を行 った。そ の結果を 、実際の 走行時の 空気流を模 擬した風 洞による 定置試験と比 較し解析 の妥当性を 検証した 。 電 気 機 器を 設 計す る場 合の 熱 伝 導 計 算 (熱 拡 散 解 析) には 、主 に有 限 要 素 法が 使わ れ る こ と が 多い (1) 。 こ れ は、 近年 の 著し い電 子 計 算 機の 発達 に よ り メ モ リ、 処理速度 が飛 躍 的に 向上 したため 、 大 規 模な 有 限 要 素 法 に よ る解 析が 可 能になっ たためである 。 熱伝導 計 算 の よ う な数 値 計 算を 大 きく 分類 す る と 、現 象を 表す 偏 微 分 方 程 式の 近 似 解 を 直 接 解 く 方 法 ( 有 限 要 素 法や 境 界 要 素 法 ) と モ ン テ カ ル ロ 法 ( Monte Carlo method 以下 M C M と呼 ぶ) とに 分け ら れ る 。MCM は乱 数を 使 用し た数 値解析法 の総 称 で あ る。古 くは「Buffon の針 」の 問 題が M C Mの 起源 と い わ れ て い る が 、具 体 的 な問 題 を解 く た め に 数学的 に 研究 が 行わ れ た の は Ulam と Von Nuemann による 核 分 裂 時の 中 性 子 拡 散 現 象 の計 算 機 上の 実 験である ( 2 ) 。 MCM の特 徴 と し て下 記の も の が あ げ ら れ る。 ・ M C M以 外 の手 法で は計 算が 困 難な 現象 が あ る (中 性 子 拡 散 現 象な ど) 33.

(34) ・ 必要 と す る 一 部 分の 値の み計 算 可 能 で あ る ・ 巨大 なマ ト リ ク スを 解く 必要 がない ・ 高 次 元の 問 題で 計算速度 が非 常 に速 い ・ 精度 が乱 数 の質 に依 存す る ・ 計 算 機に よ り結 果が 異な る MCM は有 限 要 素 法などの 手法 と 著し く こ と な っ た特 徴を 有す る計 算 手 法 であ り、 確 率 論 的 手 法として 興 味 深い も の で あ る 。こ こ で は 、MCM に よ る 熱伝導計 算 手 法を 二 次 元 お よ び三 次 元 問 題 に お い て実 施し 、有 限 要 素 法 との 比較 を行 った 。 その 結果 、 M C Mが 実用 に た る解 析 手 法 で あ る こ と を示 す。 M CM は一 般 に あ ま り な じ み の な い手 法で あ る た め、 原理 お よ び理 論 について やや 詳細 に3 . 2章 に示 し、 3. 3 章で 具 体 的な 応用例 と し て、 外槽 および 集電 コ イ ルの 熱 解 析 について 述べ る。. 3. 2 . モ ン テ カ ル ロ 法による 熱 伝 導 計 算 3. 2 .1 乱 数 と酔 歩 M C Mの も っ と も簡 単な も の に 、当 た り は ず れ 法(hit-or-miss method)がある 。 例え ば円周率 を 当た り は ず れ 法に よ り求 めるには 次 のようになる 。 ・ 0<x< 1 ,0 < y <1 の条 件 に合 う多 数の 組 の乱 数( x , y ) を 発生 する ・. x 2 + y 2 < 1 の条 件の 乱 数 組 数を 数え aと す る. ・ 残り の乱 数 組 数 をb と す る。 ・ π= a / b×4 これは 、一 辺 が1 の正方形 の中 に 半径 1の 1/ 4 円を 描き 、こ の円 の 中に 入っ た乱数組 の数 が 統 計 的に 円 周 率に 近 づ く こ と を利 用 した 手法 で あ る。 このよ う な 手 法の 場合 、乱 数が 一 様に 分布 し か つ 、周期性 が な い こ と が計算精 度の 向上 に つ な が る 。こ の た めM C Mで は使 用す る 乱数 に注 意が 必要 となる 。 熱伝導 で も っ と も 単純 な問 題と し て、 1次 元の 温 度 分 布に つ い て考 え て み る。 図3 −1 の よ う にx =0 で温 度 U= 0℃ 、 x = 10 でU =100 ℃ の針 金の よ う な物 質が あ り、 熱伝導率 が均 一 なものとする 。 さて 、 x =5 の温 度 を知 りた い と き、x=5 か ら酔 者(random walker) を歩 か せ る。酔者 は正 に向 かって 歩く か、 負に 向か っ て歩 く か は全 く未 知 で、 酔者 を自 由 に歩 かせると 、 x = 0に 到達 する 者と x= 1 0に 到達 する 者は 、 半数 づ つ に な る こ と が容 易に 想像 できる 。 すなわち 、境 界 条 件 U= 0℃ とU = 1 0 0℃ の影 響 度が 半分 づ つ で あ る こ と が わ かる 。ま た、 x =6 から 酔歩 さ せ れ ば、U= 1 0 0 ℃の 影響 が大 き く な る こ と も 容易 に想 像さ れ る。 この 計算 を実 際 に計 算 機 上で 行 う と き に は、 酔者 が 正に 向か うか 負に 向か う か を 乱数 によって 決 定す る わ け で あ る が 、用 いる 乱数 は 前述 のよ うに 一様 で特 定 の周期性 や意 志が あ っ て は、 計 算 精 度が 悪くなる 。 34.

(35) U=0℃. 100℃. x=0. 5 図3 −1. 10. 一次元熱伝導計算 モデル. 上 述の よ う な 計 算 手 順を 酔歩(random walk) とよび 、こ れ は次 節に 述 べるよう にラ プ ラ ス方 程 式の 近 似 解を 統 計 的 に計 算し て い る こ と と同 じ こ と と な る。. 3. 2 .2. 二 次 元 熱 伝 導 現 象の 解 析. 一般的 に熱 伝 導 現 象は 時 間 依 存 項 を含 むポ ア ソ ン 方 程 式で 表現 さ れ る が、 ここ では 説明 を簡 単 化す る た め時 間 依 存 項 及 び沸 き出 し 項のない ラプラス 方程式 で温 度が 表される 場 合に つ い て検 討す る あ る二 次 元 領 域の 温度 が式 (3 . 1) で表 さ れ る と す る。. ∆U ≡. ∂ 2U ∂ 2U + 2 ≅ ∆h ⋅ f ( x, y ) = 0 ∂x 2 ∂y. ( 3. 1 ). ただし 、 ∆h ⋅ f ( x , y ) は、 階差 ラプラス 方 程 式 と い う。 こ の方程式 を 解く こ と で領 域の 温 度 分 布を 計算 す る こ と が で き る。 こ の方程式 を解 くために テ イ ラ ー展 開による 微 分を 考え る。 テ イ ラ ー展 開は 式( 3 .2 )に より 与え ら れ る 。. f ( x+ h ) = f ( x ) + hf ('x ) +. h 2 '' h n (n ) f ( x ) + ... + f (x) 2! n! (3 . 2). ここで 3階 以 上の 高 階 微 分 項を 省 略すると 式( 3 .3 )が 得られる 。. 35.

(36) 2 f ( x +h ) = 2 f ( x) + 2hf ( 'x) + h 2 f ( ''x). ( 3 .3 ). ま た h を負に と る と 式( 3. 4) が 与え ら れ る。. 2 f ( x −h ) = 2 f ( x ) − 2hf ('x ) + h 2 f ('x' ). (3 .4 ). 式 (3 .3 )、(3 .4 )よ り. f ( ''x) =. 1 {f ( x + h) − 2 f ( x ) + f ( x − h) } h2. (3 . 5). と な る。 式 (3 .5 ) を式 (3 .1 )に 代 入すると 、. ∂ 2 f ( x,y ). ∂2 f (x, y). + ∂x 2 ∂y 2 1 = 2× h {f ( x +h ,y ) − 2 f ( x ,y ) + f ( x − h,y ) + f ( x , y +h ) − 2 f ( x , y ) + f( x, y − h) }. (3 .6 ). = ∆h ⋅ f ( x , y ). ∆h ⋅ f ( x , y ) = 0. f ( x, y ) =. より 、. 1 {f ( x + h, y ) + f( x− h, y ) + f( x, y + h) + f ( x ,y − h) } 4 ( 3. 7). と な る。こ の式 を み る と座 標(x,y) における 値は 、座 標(x +h ,y)、( x −h ,y)、(x,y− h)、(x,y +h )の総和 の 1/4 になること が わ か る 。h はメ ッ シ ュの 細かさと 見 て よ い。 一 方、 図3 − 2に 示す よ う な物 体 を考 える 。P 点 から 酔歩 させた 時、Q 点 に集 まる 酔者 の人 数 を P(Q , P) 、添え 字n を酔 者 の発生数 と す る と、. 36.

(37) lim p n( Q, P ) = p( Q, P ). (3 .8 ). n →∞. P 点か らn + 1回 の操 作で Q 点に 集ま る人 数 は、 P点 の左右上下 の点. P1 , P2 , P3 , P4 から n回 の操 作 で集 まる 人数 の総 和 と な る。 P1 = P2 = P3 = P4 =. p ( Q, P) =. 1 P 4. ( 3 .9). 1 4 ∑ p( Q,Pi ) 4 i=1. ( 3. 10 ). ∆h ⋅ p (Q , P) = 0. ( 3. 11 ). 式 (3 .7 ) と式 (3 .1 1) は 同じ こ と を表 し て い る こ と が わ か る 。. 境界Γ. P. Q. P3. P2. P. P1. P4. 図3 −2. 考察モデル. 37.

(38) さらに 、 ω (Q , P) を次 のような 関数 と す る と、 Q=P で 境界 Γ上 は. ω (Q , P) =1. そ れ以 外. ω (Q , P) =0. 境界 Γよ り 内側 では 、 U ( P ) =. ∑f. ( Q). ⋅ ω (Q , P) で U ( P) はラプラス 方程式 を満 足す. る た め、 境界 Γ の条 件の 総和 か らポ テ ン シ ャ ル U ( P) を求 め る こ と が で き る。 た だ し、 f (Q ) はΓ 上の 関 数で 、定 数ならば 、 第 一 種 境 界 条 件 と な る。 す な わ ち、 点 Pの 値を 求め た い と き に 、点 Pか ら 酔歩 させ 、境 界Γ に 達したと きの 酔者 の人 数 を数 えて 境界条件 と の積 を と れ ば よ い こ と に な る 。計 算 手 順 とし ては 、例 えば 二 次 元 問 題 の場 合、 計算機 に よ り1 か ら4 ま で の整 数の 乱 数を 発生 し、 計算 し た い 地点 から 、酔 者が x 方向 の正 負、 y 方向 の正 負の ど ち ら に酔 歩す る か を そ の乱 数 に よ り決 定す る。 進 んだ 地点 から 、 また 乱数 を発 生し て 、逐次酔 歩させる 。到 達 した 境界部分 の個 数 と境 界 条 件の 積 に よ り、 計算地点 の ポテンシ ャル が計 算さ れ る。. 38.

(39) 初期化. 乱数発生 0<r<5 R:整数. r=1 → x=x+1 r=2 → x=x-1 r=3 → y=y+1 r=4 → y=y-1. (x,y)が 境界に来たか?. NO. YES P(x,y)=P(x,y)+1 Psum=p(x,y)+Psum. N回行ったか?. NO. YES. U =U +. P( x, y ) × f( x ,y ) Psum. 初期化. 図3 −3. 2 次 元モ ン テ カ ル ロ法 の フ ロ ー. 39.

(40) 以 下に 二 次 元 熱 伝 導 現 象の 解 析 結 果に つ い て述 べ る。 解析 モ デ ルを 図 3− 4に 示し 、条 件は 下 記の 通り で あ る。 ・ 解析領域 は x= 0〜 10 , y = 0〜 10 ・ z方 向に 連 続 ・ x= 0, y =0 でU =100 ℃ ・ x= 10 ,y= 10 でU =0 ℃ ・ 熱伝導率 は x方 向y 方向 と も に 同じ 0℃ (0,10). (10,10). 100℃. 0℃. y (10,0). (0,0). x. 100℃. 図3 −4. 二 次 元 解 析モデル と境 界 条 件. 解 析の 比較 として 、同 じ空 間 分 割 を施 した 有 限 要 素 解 析を 行っ た。 有 限 要 素 法 解析 プ ロ グラ ム Marc を使 用 した( 分割 は方 形 要 素 )。図 3− 5に 有 限 要 素 法 によ る温 度 分 布 計 算 の結 果、 図3 −6 に M C Mによる 結 果を 示す 。座 標( 0 ,0 )及 び( 10 ,10 )近 辺 の端 の部 分に 多少 の 違い が あ る も の の、両者 を比 較 す る と、 ほぼ 同じ 結果 と な っ て い る こ と が 分 かる 。端 の部 分 (境 界 近 傍) での 誤 差につい ては 次節 の3 次 元 解 析の 部分 で考 察 する 。. 40.

(41) 0℃ 11℃ 22℃ 33℃ 44℃ 56℃ 67℃. 78℃. 89℃. y x 図3 −5. 有 限 要 素 法による 二 次 元 熱 伝 導 解 析 結 果. 0℃ 11℃ 22℃ 33℃ 44℃ 56℃ 67℃. 78℃. 89℃. y x 図3 −6. M C Mによる 二 次 元 熱 伝 導 解 析 結 果 41.

参照

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