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1/4 円形高水敷を有する複断面開水路流れの流速分布特性

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Academic year: 2022

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1/4 円形高水敷を有する複断面開水路流れの流速分布特性

徳山工業高等専門学校専攻科 学生会員 〇片岡 航大 徳山工業高等専門学校 正会員 渡辺 勝利 徳山工業高等専門学校 正会員 佐賀 孝徳

1. はじめに

複断面は,低水路と高水敷の速度差のある2つの流 れを有する断面から構成され,日本の河川は河状係数 が大きいため,広く使用されているが,洪水時には大 規模な水平渦や斜昇流の発生により,高水敷先端部の 破壊,河床の洗掘,堆積などの災害が発生することで 知られている.これらの災害の防止のため,これまで に多くの研究が行われてきた.

例えば,石垣ら1)は,低水路側壁が垂直および45度 に傾斜した場合の流れの特徴を流れの可視化法を用い て詳察した.筆者らも,高水敷先端部の形状が直角(90 度)2)および傾斜(26.6度)した流れ3)の内部構造について 検討してきたが,高水敷先端部が曲面のものについて は,これまで研究例がなく,その流れの内部構造は未 だ解明されていない.したがって、高水敷の形状変化 に伴う流れの構造を解明することは,複断面流れを総 合的に理解するために必要であると考えられる.

以上のことを踏まえ,本研究では,高水敷先端部形 状を 1/4 円形にした場合の複断面流れの流速分布特性 を流速計測および流れの可視化を用いて検討した.

2. 実験装置及び実験方法

図-1は,本研究で用いた水路の断面形状および座標 系を示している.実験には,水路勾配を1/1000に設定し た,長さ10m,幅60cm,高さ15cmの透明アクリル樹脂 板製の滑面直線開水路の右岸側の側面に,高水敷先端 部を半径4cmの1/4円形に加工した幅15cm,高さ4cmの 塩ビ樹脂板を上流端から8mにわたって設置した.

本水路の上流から5m付近の地点において,PTV法に よる流速計測および内部流況の可視化を行った.流速 計測には,トレーサーとして微細粒子(平均粒径150μm, 比重1.04)を,照明にはレーザースリットの厚さ1mmの 光膜を用いて,粒子の流動状況をハイスピードカメラ (DITECT HAS-LH1)で撮影した。PTV法の解析では,そ の粒子の画像を連続的にコンピュータに取り込み,流 体計測ソフトウェア「Flow PTV」((株)ライブラリ)を用 いて瞬時流速成分を求め,それらの統計処理を行い,

平均流速分布等を求めた.

組織構造の可視化では,トレーサーに蛍光染料水溶 液(比重1.005),照明に前出のスリット光膜を用いて,

本トレーサーを上流から一定量を注入し、流れの各断 面における流況をビデオカメラで撮影した.なお,可 視化断面に影響を及ぼさない下流位置に設置した鏡(5

×5cm)を用いて撮影した.なお,流速計測および可視 化実験の水深(H)の条件は,これまでの筆者らの研究成

果と比較2) 3)するため,H=8cmとした.

3. 実験結果および考察

(1)平均流速分布および二次流分布特性

図-3(a)は,高水敷先端部形状が1/4円形の場合(以下 1/4円形高水敷と呼ぶ),図-3(b)は,比較のために示し た高水敷先端部形状が直角の場合2)(以下,直角高水敷 キーワード 複断面開水路,1/4円形断面,斜昇流,二次流,縦渦構造,流れの可視化

連絡先 〒745-8585 山口県周南市学園台徳山工業高等専門学校内 水工学研究室 TEL0834-29-6326 図-1 実験水路概要および座標系

図-2 PTV及び流れの可視化法概略

Ⅱ-14 土木学会中国支部第69回研究発表会(平成29年度)

- 93 - 

(2)

と呼ぶ)おける主流速(U)の等値線図と二次流(V,W)の を示している.1/4円形高水敷においては,直角高水敷 と比較して,水路中央部の高速域がより高水敷へ接近 し,高水敷上が高速となっている.また,高水敷先端 部付近には主流速(U)等値線の対岸方向への盛り上が りが,1/4円形高水敷では,直角高水敷と比較して局所 的で規模が小さい.この主流速分布の特徴に対応して,

高水敷先端部付近にそれぞれ時針,反時針方向の旋回 状の二次流(以下,旋回流と呼ぶ)と斜昇流の形成が認 められる.旋回流の規模は,図中の赤線で示したよう

に,1/4円形高水敷の方が小さい.両者の旋回流と斜昇

流の強度の変化を比較するために,高水敷先端部周辺 における,斜昇流の最大値,x軸回りの渦度ωxの正,負 の最大値の発生位置を,それぞれ赤色の四角,丸,三 角で表示した.両者の諸値を比較すると,斜昇流の強 度では同程度で,旋回流の強度では正,負ともに約0.6 倍の強度を有していることが認められた.これらより,

1/4円形高水敷の斜昇流と旋回流の特徴として,斜昇流 の強度は直角高水敷と比べて顕著な変化はないが,渦 度の強度としては小さくなると考えられる.このよう な渦度の強度変化が主流速分布の特徴の原因となって いると推察される.

(2)組織構造の特徴

図-4(a)は,1/4円形高水敷,図-4(b)は直角高水敷2) における横断面可視化の一例を示している.1/4円形高 水敷の場合,縦渦構造が直角高水敷に比べ,規模が小 さく,水表面への到達は間欠的であることが観察され た.具体的には,低水路側の回転が顕著な縦渦構造と

側壁側の回転が顕著な縦渦構造が曲面上に形成されて いることが観察された.直角高水敷の場合,図-4(b)に 示すように高水敷先端部に縦渦構造が時空間的に集中 的に形成されていることが明らかにされている.

4. おわりに

本研究では,高水敷先端部が1/4円形の場合の複断面 開水路流れの流速分布,組織構造の特徴について検討 した.以下に本研究において得られた結論を示す.

(1) 1/4円形高水敷においても,斜昇流および対を成

す旋回流が形成される.旋回流の規模は,1/4円形の方 が小さい.

(2) 斜昇流の強度は直角高水敷の流れと比較すると,

同程度であるが,旋回流の強度は低下する.

(3) 1/4円形高水敷に形成される縦渦構造は,曲面上

に形成されるが,直角高水敷の流れと比べて,その規 模が小さく,間欠的であることが明らかとなった.

参考文献

1) 石垣泰輔,今本博健:可視化法による複断面開水路流れの 3次元構造に関する研究,土木学会論文集,No.515/Ⅱ-31,

pp.45-54,1995.

2) 渡辺勝利,森山拓士,佐賀孝徳 : 低レイノルズ数の片複 断面開水路流れに斜昇渦の内部構造,土木学会論文集B1(水 工学),Vol. 67,No. 2,pp.41-53,2011.

3) 渡辺勝利, 河村優太,木山和俊, 佐賀孝徳 : 低水路側 壁が傾斜した複断面開水路流れにおける二次流れと組織構 造の特徴, 土木学会論文集B1(水工学), Vol. 69,No.4,

l_907-l_912,2013.

(a) 1/4円形高水敷 (b) 直角高水敷2)

図-3 1/4円形高水敷および直角高水敷における主流速(U)分布および二次流(V,W)分布

(a) 1/4円形高水敷 (b) 直角高水敷2)

図-4 1/4円形高水敷および直角高水敷上に形成された縦渦構造

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参照

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