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3 次元流動モデルを用いた嘉瀬川・石井樋周辺の流れ特性の検討

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Academic year: 2022

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(1)II‑004. 土木学会西部支部研究発表会 (2016.3). 3 次元流動モデルを用いた嘉瀬川・石井樋周辺の流れ特性の検討 佐賀大学理工学部都市工学科 学生会員. 串部 雅尚. 佐賀大学大学院工学系研究科. 正会員. 大串浩一郎. 佐賀大学大学院工学系研究科. 正会員. 押川 英夫. 図-1. 1.はじめに 本研究の対象とする嘉瀬川は,脊振山の西方を源と する嘉瀬川水系の本川であり,佐賀平野を南下し,有 明海に流れ込む. 流域面積 368km²,幹線流路延長 57km, 流域内人口 13 万人の一級河川である. 上流山地は大部分が花崗岩であることから,洪水時 には土砂の流出が多く,また佐賀城下では頻繁に干ば つの被害を受けてきた.この被害を抑えるために,1623 年頃に肥前佐賀藩士の成富兵庫茂安によってつくられ たのが石井樋である.石井樋は, 嘉瀬川 14km 地点に位 置し,洪水被害を抑え,農業用水や水道用水を多布施 川へ分流させた 1).その後,約 350 年間役割を果たし続 けた石井樋は,1960 年に川上頭首工の完成によって取 水施設としての役割を終え,さらに 1963 年に洪水で破 壊され土砂に埋没した.石井樋は, 1994 年に皇太子 ご成婚記念事業として,約 10 年かけて 2004 年に復元 された.石井樋は土木遺産にも登録され,歴史的・文 化的な価値が高いが,復元後の石井樋に関する研究は 少ない.そこで,石井樋周辺の 1 次元流れ解析と準 3 次元解析を行う. 1 次元解析では,石井樋の複雑な形状,蛇行や流れ のベクトルが考慮されない.そこで,本研究では準 3 次元での石井樋周辺流れを再現することで,石井樋周 辺の流れの特性を把握する.. 2.石井樋システムの概要 石井樋は川から水を取り入れる施設である井樋を石 で作ったものであるが(図-1 参照),天狗の鼻,象の鼻, 大井手堰,出鼻,野越,兵庫荒籠,遷宮荒籠などが設 置されており,これらの施設全体を総称して石井樋と 呼んでいる. 全体システムとしては,洪水時に土砂の流出が多く, その土砂対策に工夫がある 2).嘉瀬川の大井手堰で堰 き止められた流れの一部を「天狗の鼻」および「象の 鼻」と呼ばれる水制工の間を逆流・迂回させ,その間 に土砂を沈殿させることで,多布施川に砂が流入する のを防いでいる.また洪水時には,逆流・迂回してき た流れに,象の鼻の根元の野越から越流してきた流れ をぶつけることで,流速を緩め土砂を沈めていると言 われている.図-1 に越流時の流れを示す.. 石井樋概略図. 3.研究方法 本研究では, DHI の MIKE11 ならびに MIKE3 を用 いて解析を行った.. 3.1.. 1 次元不定流モデル. 1 次元不定流モデルを用いて流れの把握,および 3 次元解析で使用する境界条件を算出した. 1 次元解析 には MIKE11 を用いた. 解析期間は 2012 年 6 月〜7 月とした.この期間内の 7 月 13 日の降雨は総雨量 372.0mm で,池森観測所では 最大流量は 375.27m³/s(正常流量 2.5m³/s),最大水位 4.24m に達している 3).解析対象区間は図-2 に示す.境 界条件として上流端には川上観測所,および祇園には 祇園観測所の実測流量,下流端には徳万観測所,植木 観測所の実測水位を与えた.. 3.2. 3 次元流動モデル. 図-3 にモデルで用いた地形を示す.解析範囲は, 16.6km~12.0km で,境界条件を上流端には川上観測所 での実測流量をもとに平水時代表値とし 4.3m³/s と与 え,下流端の水位として 1 次元不定流モデルで算出し た値を使用した.準 3 次元流れ解析には,MIKE3 FM HD を使用し,流れ解析の基礎式として連続の式およ び運動量保存の式を用いた.また,河道の再現のため, 2012 年測量の断面図を,平面図と地図より補間し地形 データを作成した(図-3) .. 図-2 解析対象区間. ‑109‑.

(2) II‑004. 土木学会西部支部研究発表会 (2016.3). 5.まとめ 石井樋付近の流れ解析により,石井樋の全体として の機能を定量的に明らかにすることができた.. 図-3 準 3 次元解析使用地形データ 4.計算結果および考察 4.1 1 次元流れ解析による水位の推定 図-4 に池森観測所における水位の実測値と計算値の 比 較 を 示 す . 全 体 の 評 価 方 法 と し て Nash-Sutcliffe Efficiency(NSE)を用いた結果 0.87 となり再現性はそ れほど高くなかった.しかしながら,平水時のみを対 象に NSE を求めたところ 0.96 と比較的高く,本研究で は平水時のみを考えることから,計算の精度は十分な ものと判断し,ここでの 1 次元解析の結果を利用する.. 図-4 4.2. 図-5. 1 次元解析での流速の絶対値の分布(平水 時). 図-6. 準三次元解析で得られた水深平均流速の絶 対値(平水時). 図-7. 準三次元解析で得られた河床近傍における 流速の絶対値(平水時). 実測値と計算値の比較(池森観測所水位) 1 次元解析での流速分布. 平水時における,1 次元流れ解析の結果を図-5 に示 す.天狗の鼻の水制機能はあまり見られなかったが, 象の鼻での水制機能,石井樋からの取水直前での流速 の減少に取る沈砂機能など石井樋システムの特徴が見 られた.. 4.3. 準 3 次元解析による流れ解析. 準 3 次元流れ解析の結果,平水時の水深平均流速は, 図-6 のようになった.石井樋付近における流速の絶対 値が大きい場所は,導水路の細くなっている箇所であ った.反対に,流速の絶対値が小さくなっている箇所 は,象の鼻・天狗の鼻,井樋の入り口付近であった. 井樋の入り口付近で特に流速が落ちていることが分か った.理由としては河道の広さと水深の深さが考えら れる.図-5 における 1 次元計算の結果と同様にここで も象の鼻・天狗の鼻の水制機能,石井樋の入り口付近 での流速の減少を見られた. また図-7 に河床近傍における流速の絶対値を示す. 石井樋の取水口付近での,流速の絶対値が非常に小さ いことから,せん断応力の絶対値も小さくなると言え, 土砂の動きも小さくなり,石井樋に流れ込む土砂の量 が軽減されることが考えられる.. ‑110‑. 参考文献 1)吉村伸一ほか:嘉瀬川・石井樋の水システムに関す る考察, 土木史研究講演集 Vol. 28,2008. 2) 大 波 修 二 : 現 存 す る 日 本 最 古 の 取 水 施 設 ,Civil Engineering Consultant, VOL.254,January,2012. 3)水文水質データベース.

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