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結核性病菓におσろ繁殖型組織反応の研究

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(1)

結核性病菓におσろ繁殖型組織反応の研究

    (特1こ老ミ・シァニン系感光色素          を使用しての実験)

第1編 緒論並びに結核感染動物の晶晶      組織反磨と榮養との商品

元横浜医科大学病理学教室(指導、高松英雄博士)

小  松  五  郎

   (穿07 o  Ziぐ0?πα6δZ6

  (昭和29年9月30日受附)

緒  炎症とは いうまでもなく 諸種刺戟に対す

る生活体の局処的反応で一種の防禦機転と見な され,病理解剖学的にみると,この際惹起され る病変は循環障碍 退行性変化及び進行性病変 に3大別せられる.

 結核菌感染により生する病変も伺じく炎症で あって,病集の組織発生の機転は普通炎症と同 檬の3大機転の総合 結果によるものである が,組織像に特異性があり,その特徴は組織学 的診断の根拠となる.結核性病巣の組織像はか くの如く著しい特徴を有するが,更に詳細に観 察すると個体,病巣部位,病変発現後の時聞,

その他数多くの条件によって種々の像を呈す る.従って軍に結樹生病変であることが組織学 的に判明してもそれのみでは殆んど無意義に近 い三従来箪に滲出型病変,増殖型病変の2種に 区別して観察するものが多いけれども,このよ うな甚だしく大雑把な見方は不充分であるのみ ならす叉実相を述べる方法としては正しくない といえる.病輿組織像の複難性が個々の組織反 応の集積の結果であるならば,組織像の分析 により個々の組織反応の質的並びに量的解析を 試み組織像め意義を把握する.に到ら・ねばなら

ない.我々の研究目標としている所の繁殖型

(Proliferative Form)は,人体材料において亀 屡々見出ざれる特殊型であるが本型についての 斯界の関心は薄N(.Ascho仔(1922)は細胞の増 生を伴うもの及び聞質組織に細胞間物質の新生 を来すものを夫 々Proliferative及び:Productive

の炎症として始めて区別した.しかしヒの Proli飴rativeの中にカタル性気管支炎 剥離性 肺炎 淋巴洞カタルの如き細胞が次々に剥離 脱落(一方においては補充されるが)の現象を 含むことは病変局所の組織発生における繁殖の 意味から少しく逸脱するものとして賛成し難 い.ヒの繁殖型の区分については賛成するもの が必ずしも少なくないが未だ系統的研究は殆ん

どなく,1949年高松 中村のある種の感光色素 を投与した実験的結核症の繁殖型組織反応の研 究があり,他方wiiliam Steenken(1951)がバ イオ マイシンの使用によって結核結節に繁殖型 傾向が現われる等の個々の報告が散見せられる のみである.高松 雪靴(1949,51,52)が結核 病巣組織反応における繁殖型として指摘しπも のは,結節を形成する細胞の大部分が類上皮細 胞であって若干の有糸分裂の像が見られ、分裂

(2)

688

堰殖の像が著しく極端な場合にはあたかも腫瘍 歌の増殖を示し周囲の組織を圧迫し結節の境界 が極めて鮮鋭であり,乾酪化がなく叉結節周辺 部に淋巴球等の細胞浸潤が殆んどなく結合織線 維の形成も殆んどない.このような像は従来輩 に類上皮細胞結節に含められるが繁殖傾向の著 明な点を留意する必要があろう.図説を試みよ う.第1図は著者等の実験例中虹波159号投与 の天竺鼠肝臓に見られた所見の一つで,結節は 多数の類上皮細胞によって形成され境界は比較 的に鮮鏡で周囲に淋巴球の浸潤は少なく小葉聞 静脈の周囲には僅少の多核白血球がある.類上 皮細胞には1個の有糸分裂の像があり線維欣或 いは室胞形成せるものも少数ある.結節に接す

る肝細胞索は少しく押し延ばされている所もあ る.乾酪化はなく結合織線維の形成も殆んどな く,所謂肉芽組織といえる組織像の形成は:な い.本図は定型的のものではないけれども,か

くの如き組織反応は勿論滲出型組織反応を主と するものでない.類上皮細胞の著しい繁殖増加 が見られるが,しかし乍ら結合織線維の形成は 殆んどなNへ 即ち細胞の繁殖増加と,線維形 成とは別個の組織反応であって,細胞の繁殖

Proliferationは線維の弄多成 (産生)Produktion とは別個のものであるヒとが了解し得られる.

      第   1  鼻

この結核性凝集組織の特異なる繁殖型の,組織

発生条件 経過 意義等今日なお不明であって 系統的実験による解析が必要であるが,今日迄 適当なる動物実験等の手技が不明であったが 高松 中村等我々の共同研究者がその良方法を 提与してくれたのである.既に我々の共同研究 者の一人 中村が述べているように天竺鼠の実 験的結核症にお・いて栄養駅:態を考慮し,叉更に シァニン系感光色素のあるものを投与するとこ の組織反応は増彊されるのである.著者も叉シ アニン系感光色素の申の一群セミ・シアニンを 分担してヒの組織反応の研究を行った.読者に この実験に対する理解を深めていただくために 使用したシアニン系感光色素の概要をば以下と

りまとめてみよう.

 シアニン(Cyanine)色素,とは一般にメチン 群(Methine group)(一CH=)を連鎮体Chain として,両端に同種:叉は異種の含窒素環1伏体 Cycloammolliumを構成分子Component核とし て結合する如きものをいう.連鎖体は一般的に は一(CH=CH)n−CH=で示され, nは01 2345の如き整数で示され,従って0の場合 は連鎖体は一CH=となり炭素数1個でかく の如きをMonomethine cyanineといN(,以下n が12となると夫々炭素数は35と奇数個を示

し,ヒれらをTrimethino cyanine(叉はl Carbo−

       cyanine), Pentalnethine cyan{ne

式によって分類される.

(叉はDicarbocyanine)等以下 同様に称する.連鎖体の,普 通は申央の水素原子1個が他の Methine group等で置換され,

更に叉それに構成分子の附着す るが如き型もある.構成分子

としてはPlcoliDe, Lepidine,

Thiazol,:Benzthlazol等その他の 誘導体がある.〜写れらのCyclo−

ammoniu11ユは1普通H:alogena}ky1

(XR)で塩にされている.従っ てシアニン系色素は蓮鎖体,構 成分子(核)の種類及び結合方     ヒの種の感光色素は医

【 2 】

(3)

学的方面に旧陸軍の命名した虹波で知られてい るが虹波1号は大正13年尾形輝太郎博士により 初めて写眞用の感光色素として合成されたもの である.波多野教授は該色素に卓越した彊心 利尿 呼吸促進等の作用があるととを発見せら れ,更に家兎における実験におや・て白血球の増 加,特に輩核球の門門ロ,核右方推移,赤血球の 増加,凍傷に対する治療効果等を発見せられ,

ヒヒに初めてシアニン系感光色素が医療方面に 応用せらるべきことを発表せられた.虹波の作 用機転に関しては,昭和23年日本病理学会の宿 題報告として波多野教授の詳細な報告がある が,虹波化合物は生物の酸化還元系に作用する ことにより全身の細胞機能を賦活充進せしめ,

特に小網内皮系統を刺戟し全身の生活力の充進 抗病力の牡丹をもたらすものであると考えられ る.ヒのような点は臨床方面よりの 今永 宮 崎等多くの研究者の共通した意見であろう.

 共同研究者の一人 中村 によって既に報ぜ られた研究に使用されたものは,シアニン系色 素の中の重要な一群ですべてTrimethine group に属し,且つ叉ComponentはLepidh〕eであ ってHalogenとAlky1とを種々のもので置換

したものである.

 著者のヒヒに報告せんとする研究は,虹波43 号 159号 160号 162号 163号 164号 167 号を用いての実験であって,ヒれらの色素はす べて特殊な構造を持つ.即ち連鎖体が前述の 一般形式と異なっていて 一CH=CH一 なる Viny1(Ethenyl)の型及び 一CH=N一なる Azomethineの型となっている,次にCompo11−

entがすべて異種のものである.

 このものは普通シアニン色素と区別されて

セミ・シアニンSemi−cyallineきよばれ る.叉は:

Dialkylamino−arypolymethille cycloammonium とも呼ばれる.構造式を一般式であらわすと次 の如くである.

   (Cn H11_…)_(CH=CH)1一Ar−NR2     \ノ

    N

    /\

   R  X

 その中n=1の場合の例としては

   か一〈=×:豊:

   晶

¢)ごときものでn=2となると蓮四体が一CH

=CH−CH=CH一 となる.上述の連鎖体が AzOmethlne−CH=N一なるものもとの系統に 算入される.即ちPlna日avolと呼ばれる染料が 同じくセミ・シアニン系に分類される.

 :PinaHavo1型

    /\/\

    しΨ一州二×:暮:

      /\

     c2H5 J

 著者の実験に使用したセミ・ンアニン色素の Componentからして便宜上ヒれらを次の4種 に区分することも可能である.

 A・Chinolin系に属するものは虹波163号,164号,

   165号

 :B・:Pyridin系に属するものは虹波162号,167号  C・Thiazol系に属するものは虹波159号,160号  D・Benzthiazo1系に属するものは虹波43号  各虹波の化学構造は以下の如くである,

 A.

  虹波163号

C、驚。ノ\/野一N=《⊃

       1i      、ノ\・グ         N

   4一(Phenyl−azolnethin)一6−methoxy−chinolln−

   jodmethylat

  虹波164号

一∩8ド{〉 

     \/\ノ         N        /\

      CH3 J

   4一(p−Acetoamino,styryl)一6−methoxy.chinolin−

   jodmethylat

(4)

690

:B.

C.

虹波165暑

     CI聾C正レノ 、_0

卿イ「∩ \=気・鴻

   \/\/    ・施H20       N

     /\

    cH3 J

4一(3,,4,一Methylendioxy−styryl)一6−methoxy−

 chinolin−lodmethyht

虹波162号

CH_CH_ノー\

/、   \一/

     \ノ     \_/

      N      /\

    C2H5:Br

 2,4−Di−Styryl−pyridin−bromethylat

虹波167号

1 LCH−CHノー\

    v  

\_/(・)・

     N     /\

   C2H513r

2,4−Di(4,一dimethylaminoplleny1−azomethinト pyridin−bromethylat

尺一N一く⊃一N圓・

lLCH−Nノ瓜NCH

  2一(3,一Methoxy−4,一hydroxy−styryl)一4−methyl−

  thiazol−bromethylat   虹波160号

一しり㌔畷⊃

     /\

   C2H5 Br

  2−Styryl−4−methy1−thiazol−bromethylat  D.

  虹波43号

(〕[髭一二

    C2H5 Br

  2一〔Furan一(2,)一v呈nyl〕一benzthiazol−bromethylat

 以上8種の虹波の投与により結核病集の組織 反応就中繁殖型組織反応を中心として,その組 織発生進展に如何檬な影響を惑うるか,叉体重 増加を申心として見てその栄養歌況や,感染後 の経過日数との関係或いは虹波の化学構造の影 響の差異を追求した.以下その研究概要を報告

する.

虹波159号

第1編結核感染動物の病巣組織反応と栄養との関係

       第1章緒  第1編においては先ず天竺鼠に結核菌を感染 せしめ,薬物を投与せざる対照群について食飼 中の蛋白質の考慮から大豆粉末を主食とし,自 然経過の中にあって面諭組織反応の経過と栄養 1伏態との関係を追求した.即ち実験中死亡した

ものと同一期聞の実験で屠殺したものとの比

   言

較,及び一定期間実験後におや・て体重増加痙と 組織反応との関係を明らかにした.本編の内容 は同門の中村,西,と共同作業であるので既に 中村によって報告された内容と重複する箇所が あるが,対照とし叉基本的重要事項であるから その概要をのべる.

       第2章 実験材料及び検索方法

実験はすべて天竺鼠を使用した.実験菌液は入型フ  薯培地に25日間培養したものを,0・5%ゲラチン生理 ランクフル1・株(陸下)のグリセリン・ブイオン馬鈴  的食塩水1.Occ申に0.2mg含有せられるような懸凋

【 4 】

(5)

液を作り,均等な懸凋液であることを確かめた後,そ の0・4ccを大腿内側皮下に掻種した.

 天竺鼠は15匹をユ群とし,動物の飼料は大豆粉末を 圭食とし,新鮮な野菜を充分に与え栄養を可及的よく するよう注意した.かくして菌接種後5週間以上ユ0週 間にわたり,屠殺し叉中途死亡せるものを併せ,特に 体重増加朕況を重三しつつ,接種後経過日数と,病理 解剖学的組織学一所見特に結核結節を中心とした組織 反応について比較検:回した.病変組織としては肺,

肝,淋巴腺(肺門部及び門脈部)脾の病藁を主として 観察した.対照群は12匹であって第10週屠殺例の中体

重増加軽度のものは3例,申等度壇加のものは1例,

著明なものは2例であって,中途死亡せるものは3 例,申途第9週において屠殺せるものは2例である.

成績記載に当っては,体重増加の程度により分類し,

体重増加20%以下のものを軽度増加,体重増加20%〜

40%のものを中等度増加,体重増加40%以上のものを 著明増加として区分観察した.なお結節の大きさの表 現は腎糸毬体の大きさを1とし,これの倍数を以て比 較し,叉結節の数について50倍拡大1覗野中の亭均結 節数を以て表現し観察に便ならしめた.

第3章実 験 成績

 実験開始時の体重は最:高307.0瓦 最:低228.

5瓦 李均258.2瓦 実験絡了時の体重は最高 452.0瓦 最低340.0瓦 卒均367.0瓦 であ り,実験開始時に比較して平均体重におや・て 32.1%の増加を示している.

 第1表は死亡率及び体重増加率を一覧表とし て示し,第2表は亭均体重の増減をグラフに示 し,第;1表,第;2表の中には便宜上続編中に述 べる感光色素投与群をも併せ記録した・対照群 における各臓器別所見を記載すれば次の如くで

ある.

1

      第  2  表

ユ67.一一ノ/

162一一一一》1 43一一一一!〆

159一一一一一μ一一

虹波番号   43

 159

 ユ60

 162  163  164  165  167

対  照

死亡率%

46.7 20.0 ユ4.3

21.4 33.3 46.7 57.1 57.1 25.0

体:重増加率%

25.1 38.2 24.0 22.6 38.8 24.3 21.0 43.3 32.1

  1.肺臓所見

a.第8週までの死亡例所見

 第8週までの死亡例を観察すると何れも気管支肺炎 の像を呈し,第5週死亡例では軽度の肺水腫の像を呈 し細胞浸潤を語うているが第8週になるに従って滲出

液は減少し細胞浸潤の部分に限局して来る傾向があ る.浸潤細胞は第5遍死亡例では淋巴球及び白血球を 圭とし類上皮細胞は殆んど認められないが,第8週に なると共に白血球は滅少し類上皮胞細は増加の傾向に あり,特に淋巴球 大円形細胞が増加し結節形成の傾 向があるが,定型的結節形成には未だ至らない.

b.第9週死亡例及び屠殺例所見

 第9週死亡例に至り定型的結節形成が認められる.

体重減少著明なものでは結節周辺部の肺水腫の像が彊 く細胞浸潤が稽ζ広範囲であるが,体重減少の少ない

(6)

692

ものでは小範囲にとどまっている.結節中央部の壊死  核崩壊が強く限局する傾向を有しない.壊死周辺部 には結節申央部に近く類上皮細胞を,外側に近く淋巴 球の浸潤を主とする傾向が認められる.体重減少の少 ないもの程細胞浸潤部と周辺の肺組織との境界が判然 とする傾向にあり結合織線維の増殖は極めて少なく,

体重減少著明なものでは全く認められないが特に体重 減少の程度との関聯は認められない.屠殺例は体重減 少の少ない死亡例に似た所見を呈し,結節中央部の吟 興 核崩壊は死亡例より軽度であり周辺には類上皮緬 胞を圭とし結合織線維を算えた内層と淋巴球を主とす る外層とに分れ結合織線維は稽ζ増殖している.結節 以外の部分における肺組織は殆んど正常であり,亘細 胞は死亡例,屠殺毛槍に全く認められない.

c.第10週屠殺転所見

i.体重軽度に増加せるものの所見

 中等大以下の結節が少数詔められる.結節中央部の 壊死 核崩壊は早期死亡例に比較して軽度であるか,

叉は全く認められないものもある.結節中央部には円 形叉は星芒状を呈する類上皮細胞が淋巴球を僅かに耀 え,外側に至るに従って淋巴球が増加し結合織線維は 殆んど認あられない.結節の一部には僅かに赤血球 淋巴球を混え類上皮細胞のみより形成されたものも認 められた.結節以外の部分の肺組織には軽度の充血と 共に大小円形細胞の浸潤が認められ肺胞内滲出液は各 車共に認められず亘細胞も認められない.

ii.体重申薄野に増加せるものの所見

 中等大の結節が比較的多数認められる.結節中央部 の壊死 核崩壊にノ及に軽度であって体重塘加の多い ものでは申央部¢裏死は殆んど認められない.結節中 央部には円形の類上皮細胞が著明で淋巴四三ζ多数が 赤血球を唱え淋巴球は外側に至るに従って塘麗してい る.結合織線維の増殖は始んど認められない.周辺の 肺胞壁には軽度の充血と共に圭に大小円形細胞が王寺 肺炎朕に連なり著しい所では結節の境界は不明瞭であ り,浸潤の少ない所では境界は比較的明瞭である.肺 胞内滲出液及び亘細胞は各例共に認められない.

iii.体重著明に増加せるものの所見

 集合結核結節も認められるが,比較的大なる結節と 小なる結節が極めて少数認められる.大なる結節では 中央部に壊死と軽度の核崩壊を認め中等大以下の結節 では壊死は極めて軽度か叉は全く認められない.結節 は圭として突起形成 室胞化せる類上皮細胞に少数の 淋巴球及び結合織線維を混えて形成され周辺には淋巴

球が稽ヒ多い.小さい結節では円形に近い類上皮細胞 より形成され少数の淋巴球を混え結合織線維の殆んど 短められないものもある.肺胞壁には軽度の充血と共 に大小円形細胞の浸潤が著しくこれが著明な所では結 節の境界は不明瞭である.:巨細胞は全例に殆んど認め られず,気管支に近く大円形細胞の腺様の増殖が認め

られる.

 以上第10i圖屠殺例を総括すると,結節申央部の竣死  核崩壊は一一般に軽度で小結節では認められない.結 節は主として類上皮細細より形成せられ体重増加著明 なものには室胞形成突起化ぜる類上皮細胞が多い.淋 巴球は稽ζ多数認められるが極めて少ない.ものもあり 類上皮細胞に混在している.結合織線維の増殖は極め て少なく殆んど認められないものもあるが体重の増加 との関聯は特に認められない.

 肺胞壁には大小円形細胞を主とする浸潤が著しく間 質肺炎朕に蓮なりこれが著明な所では結節の境界は不 明瞭であり肺胞内滲出液は認められない.

  2.肝臓所見

a.第8週までの死亡例所見

 第8週までの死亡例所見を総括すると,第8週にな るに従い肝実質の申に迄及んだ淋巴球及び白血球の細 胞浸潤は次第に限局し,病巣戦野部の壊死 核崩壊は 軽度となり類上皮細胞は増加して来る.結節周辺には 淋巴球が塘加し僅かながら結合織線維の増殖が認めら れる.軽度の胆道増殖及び亘細胞は第8週死亡例にお いて初めて認められる.

b.第9週死亡例及び屠殺例所見

 第9週死亡例は第8週までの死亡例に比較して細胞 浸潤が限局し,結節中央部における壊死 核崩壊も軽 度であるが類上皮細胞は増加し結節周辺部の結合織線 維の増殖も著しい.体重減少の極めて著しいものと,

体重減少の軽度のものを比較すると,前者においては 結節中央部の壊死の著明なものも認められるが核崩壊 は軽度であり,周囲には類上皮細胞 淋巴球及び結合 織線維が雑然と混在し最外側には幾分淋巴球が多くな る傾向を示している.後者では壊死 核崩壊共に前者 よりも著しく軽度で,結節中央部には類上皮細胞を主 とする傾向が強く多数の淋巴球 僅かな結合織線維を 雑然と混えている.

 屠殺例は1例を除き何れも体重増加せるものである が,所見は大体体重滅少の少ない死亡例に準じてい る.体重増加著明なものでは結節中央部の壊死 核崩 壊は比較的軽度で,これが周辺部には死亡例に比較し

【 6 】

(7)

て著しい類上皮細胞 結合織線維の増殖が稽ζ雑然と 認められ亘細胞も少数認られ胆道の増殖が著しい所も ある.結節は全般に淋巴球及び結合織線維が類上皮細 胞に混在して認められ結節周辺に至ると共に淋巴球が 増加している.亘細胞は体重減少軽度のものに多く出 現し,胆道の増殖は体重減少著明のものに著しかっ た.      

c∫第10週屠殺例所見

i.体重軽度に増加せるものの所見

 中等大以下の結節が梢ヒ多数認められた.結節中央 部の壊死 核崩壊は死亡例に比して著しく軽度であり 壊死の全く認められぬものもある.結節は主として円 形の叉は線維朕交は少しく室胞形成した類上皮細胞よ

り形成され,稽ヒ多数の淋巴球及び少数の結合織線維 を混じ周辺には淋巴球が多い.一部の結節では淋巴球 は少なく結節は殆んどすべて円形の類上皮細胞より形 成され周囲の肝組織を圧迫している如く見ゆる所見を 呈するものもあり,胆道の増殖は軽度で亘細胞は僅か に認められるにすぎなかった.

ii.体重中等度に増加せるものの所見

 大小種々の結節が稽ヒ多数認められる.結節中央部 の壊死は軽度で,核崩壊は極めて少ないか叉は全く認 められない.結節は圭として円形,一部線維状の類上 皮細胞より形成せられ比較的多数の淋巴球を混在して いるが,結合織線維の増殖は軽度に認められ結節周辺 の細胞浸潤は肝実質の中にまで及び境界は比較的不明 瞭である.

iii.体重著明に増加せるものの所見

 下等大以下の結節が少数認められる.結節四二部の 壊死 核崩壊は極めて軽度か全く認められない.結節 は主として突起形成 室町化せる類上皮細胞より形成 され,淋巴球を糠多数混え結合織線維は結節周辺部 で軽度に増殖している.亘細胞の出現は極めて少なく 胆道の増殖は僅かに認あられる.

 以上第10週屠殺例を総括すると,結節申央部の壊死 は死亡例に比較して軽度で小結節では認められないも のが多い.淋巴球は比較的多数が類上皮細胞の間に混 在しているが,特に結節外側に多く結合織線維と共に 認められる.結合織線維は体重の増加と共に増加する 傾向がある.結節周辺の細胞浸潤は肝実質の中に及ぶ

ものもあり,結節の境界は一般に不明瞭である.体重 増加軽度のものの中には結節が殆んどすべて円形の類 上皮細胞より形成されるものもあり,肝実質を圧迫し ているように見えるものも『ある.

  3.脾臓所見

a.第8週までの死亡例所見

 第8週までの死亡例所見を総括してみると,結節中 央部の壊死,核崩竣は第5週頃り第8週に至ると共に 稽ζ軽度となり,聴罪周辺部の淋巴球及び白血球が次 第に減少し,類上皮細胞は時の経過と共に多数出現す る傾向を有するが雑然とした浸潤であって,結節の内 層を判然とする程には至らない.結合織線維は第8週 に至って初めて僅かに認められる.・

b.第9週死亡例及び屠殺例所見

 比較的小さな結節が多数認められ,体重減少著明な ものでは大なる集合結核結節を形成するものもある.

結節中央部の壊死は著しいが,核崩壊は比較的少なく 圏辺には円形又は少しく攣憎した類上皮細胞が淋巴球 と共に認められ,所 々に結合織線維の増殖が詔められ る.結節周辺部では特に淋巴球が多く,結節以外の部 分には三門性大細胞性過形威が一部門認められる.屠 殺例は死亡例に比較して壊彫が軽度であり集合結核結 節を形成するものは少ない.壊死周囲には類上皮細胞 が淋巴球 結合織線維と混在して認められ,結節周辺 部では結合織線維の増殖が著しく,特に体重増加著明 のものに著しい.禰漫性大細胞性過形成が僅かに認め られる.

c.第10週屠殺例所見

i.体重軽度に増加せるものの所見

 大小の結節が稽ヒ多数認められ,結節申央部の壊死 は軽度で核崩壊は殆んど認められない。周囲には円形 叉は稽ヒ突起形成せる類上皮細胞が著しく主に淋巴球 少数が散在し周辺部では増加している.結節の申には 壊死を全く認めず,殆んど円形の類上皮細胞より形成 され,淋巴球 結合織線維の殆んど認められないもの もあり,周辺には結合織線維が僅かに壇嚇して爾漫性 大細胞性過形成も一部に認められる.

ii.体重下等度に増加せるものの所見

 比較的小さな結節が少数認められる.結節中央部¢)

壌死は比較的広いが,核崩竣は軽度か叉は全く認めら れない.壊死周囲には円形叉は少しく線維朕化叉は空 胞形成せる類上皮細胞を主とし,少数の淋巴球が混在 し結節周辺部では淋巴球が稽ζ多数認められる.結節 以外の部分には禰黒鯛大細胞性過形成が認められ所・々 に正常の脾組織が介在している.

iii.体重著明に増加せるものの所見」

 比較的小さな結節が少数早められる.結節申央部の 壊死は極めて軽度か:又は全く認められない.結節は主

(8)

694

として突起形成の著明な,一部には室胞形成を俘つた 類上皮細胞より形成されるものが多く,その間に少数 の淋巴球及び僅かな結合織線維の噌殖を認める.禰漫 賦払細胞性過形成の著明な例もあるがそのために結節 の境界の不明となることはない,結節周辺における結 合織線維め壇殖の著明な結節では境界は明瞭であっ て,亘細胞の出現は空胞形成の類上皮細胞の多い例に おいて少数認められた.以上第10週屠殺例を総括する と,結節中央部の壊死 核崩壊は一般に軽度である が,体重増加著明のもの程軽くなる傾向がある.結節 は類上皮細胞の緊殖が著明で淋巴球が混在し,結節周 辺では淋巴球及び結合織線維の増殖が稽ζ著しい.結 合織線維の増殖は体重増加著明のものに著しく,体重 増加軽度及び体重増加著明のものの申には殆んどすべ て円形の類上皮細胞より形成される結節もある.禰品 性大細胞性過形威は体重増加著明のものに著しい.

  4.淋巴腺所見 a.第8週までの死亡例駈見

 第8週までの死亡例を観察すると,集合結核結節を 形成するものが多く,結節中央部の竣死 核崩襲共に 著明で,淋巴球及び白血球の浸潤を主とするが,類上 皮細胞は第8週になると共に増加し同時に結合織線維 の増殖も次第に認められる.

b.第9週死亡例及び屠殺例所見

 死亡例は三等大以上の結節が少数詔められ,集合結 核結節を形威するものも多い.壊死は著明であるが,

核崩壊は比較的少なくこれが周辺部には類上皮細胞を 圭とし,少数の淋巴球 結合織線維が混在した層があ り外側では淋巴球が多い.結節以外の組織には類上皮 細胞及び結合織線維の増殖が少数の淋巴球を添えて認 められ亘細胞も僅かにある.体重減少軽度のものでは 病変が軽く胚中心が一部残存しているものもある.

 屠殺例は体重滅少せるものでは,集合結核結節が認 められ,壊死亜びに核崩壊が著明であるが,体重増加 せるものでは,壊死 核崩壊は軽度で殆んど認められ ぬものもあり,これが周辺部には類上皮細胞の出現が 多く,結合織線維の増殖が著しい.結節周辺部の淋巴 腺組織には,結合織線維の増殖が著しく一部には禰心 性大細胞性過形成も認められ,正常の淋巴腺組織も一・

蔀に認められる.

c.第10週屠殺例所見

i.体重軽度に増加せるものの所見,

 集合結核結節もあるが,中等大以下の結節が多数認 められる.結節申央部の壊死 核崩壊共に軽度で,周 辺には室温形成し突起化せる類上皮細胞が極めて少数 の淋巴球を混じ,更に外側には結合織線維の増殖が認 められる.1例では結節の申央に壊死を認めず結節は 忌んですべて円形に近い類上皮細胞より形成さ:れ淋巴 球は極めて少ない.結節以外の組織には禰漫六大細胞 性過形成が広範囲に認められ亘細胞は少数認められ

た.

ii.体重申温度に壇湿せるものの所見

 中等大以上の結節が少数認められ結節中央部には比 較的著明な壊死が認められるが核崩壊は軽度である.

この周辺には突起形成が著しく室混化の稽ヒ著しい類 上皮細胞が認められ,淋巴球及び結合織線維が軽度に 混在している.結節以外の部分には禰漫性大細胞性過 形成が著しく結合織線維を混えたものもあり結節の境 界億明瞭でない.結合織線維は結節周辺に著明であっ て,殊に淋巴腺被膜に近く増殖が著しく,亘細胞は類 上皮細胞群山に少数認められた.

iii.体重著明に増加せるものの所見

 中等大以下の結節が多数認められる.結節申央部に は軽度の壊死 核崩壊が認められ,これが周辺には著 明に突起形成 室胞化せる類上皮細胞を圭とし少数の 淋巴球を混え,結節周辺に至ると共に結合織線維の増 殖が著しい.結節以外の部分には結合織線維の塘殖を 俘つた禰漫性大細胞性過形成が著しく,亘細胞は類上 皮細胞群中に少数認められた.

 以上第10週屠殺例を総括すると,結節申央部の壊 死核崩壊は比較的軽度であるが体重中等度増加のも のにおいて轍著しく,壊死周辺部には主として類上 皮細胞が認められるが,体重増加の少ないものでは円 形の類上皮細胞よりなる結節の多い例も認められ,体 重壇加著明のものでは墜胞形成 突起化せるものが多 い.淋巴球は一般に少数認められるが体重の増減とは 関係がない.結合織線維は結節周辺部に圭として認め られ,体重の増加と共に著明な増殖が認められた・体 重増加軽度のものでは殆んどすべて円形の類上皮細胞 より形成されるものが多く,結節以外の部分には恩命 性大細胞晶晶形威が認められ,特に体重増加著明のも

のに著しかった.

【 8 】

(9)

       第4章  以上述べた如く対照群,即ち薬物の非投与群

について結核菌接種:後,H数の経過並びに体重 の増加を参照しつつ肺肝脾淋巴腺等に発 生する結核結節自体について主に組織反応の方 面から観察した.

 これらの臓器における個々の結核結節につV・

ての所見は,同一臓器に担いても必ずしも一様 ではないが,しかしとれを組織反応の立場から 観察すると埋る程度の組織反応型式が推定され る.即ち接種第5週では未だ定型的結核結節を 形成するに到らす,類上皮細胞は極めて少数で あり浸潤細胞殆んどすべて淋巴球と中野性白血 球とよりなり結合織線維の形成は殆んど認めら れない.即ち滲出の強い粟粒結節であり且つ周 辺部には炎症性反応特に肺臓において:は炎性水 腫が認められる.

 第6週になると滲斑は依然強度であるが,限 局する傾向を有し浸潤細胞は漸次淋巴球が主と なり,類上皮細胞が少しく増加し結合織線維の 形成が認められ結節の境界は少しく明瞭化して 来る.体重増加の著明なものでは組織所見は更 に進展し壌死は軽度となり,類上皮細胞は梢ζ 増加するが結合織線維は増殖する程度に到らな

v・.

 第8週では類上皮細胞の増加,結合織線維の 増殖が初めて認められ,それに反して淋巴球及 び白血球の浸潤は減少する.

総括並びに考按

 第9週では類上皮細胞の出現が著しく細胞浸 潤の減少と共に結節は更に明瞭となる.死亡例 で体重減少著明なものは組織像は余り進展せ す,体重減少軽度のものは類上皮細胞を主とす る傾向を有している.屠殺例では組織像は更に 進展して類上皮細胞が非常に多くなり,結合織 線維は増殖し淋巴球;白血球の浸潤は一層軽度

となる,

 第10週は屠殺例のみの所見である.体重軽度 に増加せるものでは,滲出が軽度で類上皮細胞 殊に円形に近いものの出現が最も著明であり淋 巴球及び結合織線維は極めて僅少であり,結節 の殆んどすべてが羊として円形に近い類上皮細 胞より形成され(所謂類上皮細胞結節)周辺の 実質組織を圧迫するような型を示すものもあ る.淋巴腺及び脾臓におV・ては一部分叉は組織 全般にわたって禰漫二大細胞性過二二が認めお れる.体重中等度に増加せるものでは,類上皮 細胞に形態的変化が現われ突起形成 室二化或 いは線維二化等め所見が認められた.体重著明 に増加せるものでは,,ヒの傾向が更に著しく結 節内に淋巴球と混在して結合織線維の出現が認

めちれ,これは肝 脾におや・て著しい.叉一方 においては結節周辺部に淋巴球を混えた結合織 線維の増殖が著明に認められる所謂普通の増殖 型結節も認められた.

第5章結

 結核性組織反応は早期には滲出型反応を呈 し,時日の経過と共に増殖型反応に移行し,生 存し治癒の傾向に到るものと,滲出型のまま死 亡するものとがあるととは勿論であるが,ヒれ

は結核性組織反応のすべてを含むものではな く,以上の対照群の実験に見られる如くとれと 別個の進展型式が存在する.

 即ち菌接種後時日の経過並びに栄養虚病を共 に観察すると,初期の滲出型反応の時期をとお して僅かに結合織線維の増殖が認められるが,

ヒの滲出現象が一応消退すると同時に類上皮細 胞の著しく繁殖する時期がある.更に時日の経

聖体:重の増加と共に類甲皮細胞に突起形成 室 胞化等の形態学的変化が起るが1同時に結合織 線維が出現して来る.而して体:重の増減を通じ て観察すると栄養不良である場合にはヒの組織 反応の進展はおくれる,この事実は結合織線維 の増殖と,類上皮細胞の繁殖を主とする所謂繁 殖型反応とは別個の組織反応として観察しなけ ればな『らないという我々の主張を裏書きするも のであり,同時に薬物の投与による影響を観察 する際には時期と栄養状態を併せて注意する必 要のあることを示すものである.

文  献: 後  出

参照

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