博 士 ( 理 学 ) 行 方 大 輔
学 位 論 文 題 名
Study on Evolution of a Circumnuclear Gas Disk and Gas Supply to the Galactic Center
( 核 周 ガ ス 円 盤 の 進 化 と 銀 河 系 中 心 へ の ガ ス 供 給 過 程 に 関 す る 研 究 )
1 .背景
学位論文内容の要旨
銀 河 中心 ー のガ ス 供給 過程 は 、銀 河 中心の 巨大ブラック ホールの成長 や活動幽こと って非常に重要 であるが、十 分 解明 されていない 。巨大ブラッ クホールに降着 するガスが解 放する重カエ ネルギーは、 非常に強カな輻 荊・や宇宙ジ ェ ット によって、周 囲の星間ガス とともに、母銀 洞亀キ副旁の 銀河にも大き な影響を与え ることが観測的 および理論的 研 究によって 示唆されてい る。このため 、銀河中´己` へのガス供給 過程の研究は 銀河の進化と密接に関わっており重要で ある。
巨 大ブラックホ ール′部牟着 するガスの起源 は、銀河の広 い範囲に豊富 に存在するガ スである。これ が何らかのメ カ ニズムによ って、銀河中 ´い譲曦に集められたと考えられる。このガスは角運動量を持っために、貧艮河中´J‑fti丘にガス 円盤 (な周ガス円 盤)を形成す る。このような 核周ガス円盤 は、これまで 多く観測され ており、巨大プ ラックホール ヘ のガス降着 と核周ガス円 盤の関係に興 味が持たれてい る。
我 々は、これま での研究にお いて、我々の銀 河鰤嗣・系) を研究対象と し、銀河中心 へのガス供給過 程の研究を行 っ てき た。この研究 で、多重棒状 構造によって、 銀河系中´い 講曦に大質量 の核周ガス円 盤が形成される 場合を示した 。 この 核 周ガ ス 円盤 の サイ ズは 、 銀河 系 中,滞Bで観測されて いる巨大分子 ガスリングや 大質量星団の位 置と一致して い る。銀河中 ´C擶融或への ガス供給とこ れらの関係や 核周ガス円盤 から銀河中心へ のさらなるガ ス供給過程を明らかにす ることが必 要である。
そ こ で、 本 研究 で は、 星形 成 を考 慮 して、 核周ガス円盤 の形成と進化 の数値シミュ レーションを行 い、核周ガス 円 盤の 進 化と 銀 河中 心 への ガス 供 給に つ いて調 べた。この結 果に基づいて 、銀河系中心 の観測的特徴と 計算結果の比 較 を行い、銀 河系中心での 星形成とガス 供給について議 論した。
2.モデ ルと手法
この研究では 、母銀河から のガス供給を 受けて核周ガ ス円盤が成長す ると仮定する 。核周ガス円 盤の質量が増 加し、
輻 射に よ るガ ス の冷 却が 効 果的 に なる と 、自己重力不 安定が起こると 期待される。 この自己重力 不安定によっ て、高 密 度のガスの塊 (ガスクラン ブ)が形成さ れ、そこで星 が形成される。 我々は、この 過程を計算す るため、ガス の自己 重カと 輻射冷却、星形 成を考慮した 数値シミュレ ーションを行 った。
星形 成 は、 次 のよ うにモ デルf匕する。 星は低温・高 密度ガスから形 成される。我 々は、ガスの 表面密度と温 度が星 形 成条 件 (E髀p£也 、Tga8quを 満 たし た 領域で星が形 成されると仮定 する。このと きの星形成率 は、その領域 の表面 密 度に 依 存す る と考 えられ る。我々は、こ れを、近傍銀 河の観測から 得られている 経験則(Kennicutt.Scbmidt則:£
s凧∞Z囲1.4)に基づ いてモデルイ 匕した。KeDDic11tt・S曲midt則は、大局的なスケールの観測量に基づいており、必ず し も銀 河 中心 で この 経験則 が成り立っとは 限らない。何 故なら銀河系 中心部は非常 に特異な環境G飢ヽ輻射場、 強い磁 場、強 い潮汐力)にあ るからである 。そこで、我 々は比例定数 を3種類仮定し て数値シミュ レーションを行う。モラシレ は、次 の通りである: モデル10ヒ例 定数がKenic1】tt.s匸:hmidt則の値のU10倍)、モデル2(1倍)、モデル3(10倍)。
核周ガス円盤 の進化の過程 で、ガスクラ ンプ同士の衝 突による衝撃波 が頻繁に起こ る。これを正 確に計算する ため、
数 値 流 体 の流 束 計算 に 効率 的 で、 かつ 、 高精 度 な方 法 であ るM・AI丁SMPW刊M【P5を 用 いた 。星 形 成に よ って 形 成 さ れた 星 の運 動 は、PM法 で 計算 す る。 ま た、 高い 空 間解 像 度で 計 算を 行 うた め、 計 算コ ー ドをMPIで並列化 し、大 規模計 算を可能にした 。
ー1119−
30 :lo 10 o
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図1:モ デ ル2の 計 算 開 始 後35.25Myrの 核 周 ガ ス 円 盤 の ガ ス の 表 面 密 度C左 図 ) と 星 の 表 面 密 度 ( 右 図 ) 。 各 表 面 密 度
(M。pビ2) は 、 対 数 ス ケー ル で あ る 。 核 周 ガ ス 円 盤の 自 己 重 力 不 安 定 に よ っ て 、ガ ス ク ラ ン プ が 活 発 に 形 成さ れ て い る 。 銀 河 中J黼 で ガ ス ク ラ ン プ 同 士 の 重 力 散 乱 に よ っ て 、 角 運 動 量 を 失 っ た 大 質 量 ガ ス ク ラ ン プ が 銀 河 中 心 に 落 下 し 、 中 心5pc以 内 で 活 発 な 星 形 成 が 起 き て い る 様 子 が 見 ら れ る 。
3 .結果およぴ結諭
我 々 は 、 星 形 成 の 影 響 を 明 確に す る た め 、 星 形 成 を 考 慮: せ ず に 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョン を 行 っ た 。 母 銀 河 ・ カ ゝら の ガ ス 供 給 に よ っ て 質 量 を 増 し た 核 周 ガ ス 円 盤 で 自 己 重 力 不 安 定 が 起 こ り 、 ガ ス ク ラ ン プ が 活 発 に 形 成 さ れ る 。 質 量 の 大 き な ガ ス ク ラ ン プ 同 士 の 重 力 散 乱 が 起 こ り 、 そ れ に よ っ て 角 運 動 量 輸 送 が 起 き た 。 こ れ に よ っ て 、 大 質 量 ガ ス ク ラ ン プ の 一 部 が 角 運 動 量 を 失 い 、 銀 河 中 ´己 ゞ 、 の ガ ス 供 給 が 起 こ る こと が わ か っ た 。 特 に 、 銀 河+‑L‑劇 旁 にlOpcで 大 質 量 ガ ス ク ラ ン プ 同 士 の 重 力 散 乱 が 起 き る こ と が 重 要 で あ る 。 銀 河 中 心 へ の ガ ス 供 給 率 は 、 時 間 と と も に 増 加 し 、 母 銀 河 か ら の ガ ス 供給 率 の45% に 達 し た 。
次 に 、 我 々 は 、 星 形 成 を 考 慮 し て 数f直 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た 。 星 形 成 率 の 高 い モ デ ル3で は 、 核 周 ガ ス 円 盤 の 自 己 重 力 不 安 定 に よ っ て 、 ガ ス ク ラ ン プ の 形 成 が 起 こ る が 、 そ の 大 部 分 は す ぐ に 星 形 成 で 消 費 さ れ る 。 ガ ス ク ラ ン プ の 一 部 は 、 内 側 ヘ 移 動 す る が 、 そ の 過 程 で 星 と な り 、 銀 河 中 心 へ の ガ ス 供 給 は 起 こ ら な ぃ 。 こ れ は 、 モ デ ル3で は 小 さ ぃ 半 径 へ の ガ ス 供 給 率 が 小 さ く 、 銀 河 中 心 近 傍 で 大 質 量 ガ ス ク ラ ン プ の 形 成 に 必 要 な ガ ス の 表 面 密 度 を 実 現 で き な い た め で あ る 。 一 方 、 モ デ ル1,2の 場 合 に は 、 形 成 さ れ た ガ ス ク ラ ン プ が 星 と な る 前 に 、 ガ ス ク ラ ン プ 同 士 の角 運 動 量 輸 送 が 活 発 に 起 こ り 、 よ り 小 さ い 半 径 へ と ガ ス 供 給 が 起 こ る 。 そ の 結 果 、 銀 河 中 ´ い 刷旁 で 大 質 量 ガ ス ク ラ ン プ が 複 数 形 成 さ れ 、 銀 河 中 心 へ の ガ ス 供 給 が 起 こ る 。 こ れ に よ っ て 、 銀 河 中 心 の ガ ス の 表 面 密 度 が 高 ま り 、 そ こ で 活 発 に 星 形 成 を 起 こ す ( 図1冫 。 こ の た め 、 形 成 さ れ た 星 は 中 心 に 集 中 し て 分 布 す る 。 こ の 結 果 は 、 モ デ ル1,2で は 星 形成 率 が 低 く 、 星 形 成 に よ る ガ ス の 消 費 の タ イ ム ス ケ ー ル よ り も 、 ガ ス ク ラ ン プ の 形 成 と 角 運 動 量 輸 送 の タ イ ム ス ケ ー ル の 方 が 短 い た め と 考 え ら れ る 。 銀 河 中 心 へ のガ ス 供 給 率 は 、 星 形 成 率 に 応じ て 、 母 銀 河 か ら ガ ス 供 給率 の0.6% ( モ デ ル3) 、 10% ( モ デ ル2) 、26% ( モ デ ル1) と な っ た。 こ の よ う に 、 我 々 は 、 星形 成 率 の 違 い に よ る 核 周 ガ ス円 盤 の 進 化 や 銀 河 中 Jい へ の ガ ス 供 給 の 違 い を 系 統 的 に 明 ら か に す る こ と が で き た 。 こ の 結 果 は 、 核 周 ガ ス 円 盤 で の 星 形 成 率 が 巨 大 ブ ラ ッ ク ホ ー ル の 成 長 に 大 き く 影 響 す る こ と を 示 し て い る 。 銀 河 中Jレ 、 の ガ ス 供 給 過 程 の 研 究 に お い て 、 星 形 成 率 を 左 右 す る 素 過 程 の 研 究 が 重 要 で あ る 。 特 に 、 銀 河 形 成 期 で は 、 金 属 量 が 少 な い た め 、 水 素 分 子 形 成 が 起 き に く く 、 星 形 成 率 が 低 い こと が 期 待 さ れ る 。 異 な る 環 境で の 核 周 ガ ス 円 盤 の よ り 詳細 な 研 究 が 重 要 で あ る 。
我 々 は 、 計 算 結 果 と 銀 河 系 中J齢 頁 域 の 観 測 (m銀 河 系 中 ´ 己 丶 部 のX線 強 度 分 布 か ら 推 定 さ れ る 超 新 星爆 発 率 、 闘 銀 河 系 半 径2・5pcに あ る 巨大 分 子 ガ ス リ ン グ の 質 量 、[i司 若 い 星 の 分布 の特 徴、[i.v]過去 の星 形成 史) の比較 を行 った 。そ の 結 果 、 モ デ ル1,2が 、 す べ て の 観 測 的 特 徴 と 矛 盾 し な い 結 果 を 与 え た 。 こ の こ と は 、 銀 河 系 中J己 丶 部 の 星 形成 率 が Kennialtt・S出Inidt則 よ り 大 き く な い こ とを 示 し て い る .
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