博 士 ( 工 学 ) 土 合 宏 明
学 位 論 文 題 名
Characterization and Performance of a Coal‑Aah Derived Absorbent for Flue Gas Desulfurization
( 石 炭 灰 よ り 調 整 し た 排 煙 脱 硫 剤 の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン と 性 能 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
火 力 発 電 所 等 の 大 規 模 固定 発生 源か ら排 出 され るS02の 除去 に対 して は 、炭 酸カ ルシ ウ ム を吸 収剤 とす る湿 式 脱硫 法が 最も 普及 して いる 。湿 式脱 硫法 は、 大量 の用 水 を必 要とす る 、排 水処 理が 不可 欠 、脱 硫装 置出 口に おい て排 ガス の再 加熱 が必 要で ある こ とな どの問 題 があ る。 この ため 、 乾式 処理 法は 環境 への イン バク トが 小さ ぃこ とな どか ら 、水 資源に 制 約の ある 地域 に限 ら ず、 注目 され てい る。 しか しな がら 、従 来の 乾式 法に お いて は、炭 酸 カル シウ ムよ りも 反 応性 が高 い水 酸化 カル シウ ムな どの 吸収 剤を 用い ても 、 カル シウム 利用率が低 く、脱硫装置の運転コストの上昇を招いていた。
近年 、酸 化カ ルシ ウ ム、 硫酸 カル シウ ム、 およ ぴ石 炭火 力発 電所 から 排出 さ れる 石炭灰 を 出発 物質 とし て調 製 され る吸 収剤 が、200℃以 下 の低 温域におぃて 高い脱硫活性を示すこ と が 見 い 出 さ れ た 。 こ の 吸 収 剤 を 用 い た 乾 式 脱 硫 装 置か 、北 海道 電力 黼 の出 力35万kWの 石 炭 火 カ 発 電 所 に 設 置 さ れ 、1991年3月 か ら 順 調 に 営 業 運 転 を 行 な っ て い る 。 本研 究は 、酸 化カ ル シウ ム、 硫酸 カル シウ ム、 およ ぴ石 炭灰 から 調製 され た 排煙 脱硫用 吸 収剤 の脱 硫反 応に 対 する 活性 物質 の構 造を 明ら かに する と共 に、 脱硫 反応 機 構解 明を目 的として行 なった。
第1章 で は 、 近 年 、 発 展 途上 国に おけ る工 業化 の進 展と 共に 大気 環境 へ の汚 染物 質の 排 出 量が 増大 して おり 、 地球 全体 における環境の酸性化防止のため、低 コスト高効率な脱硫、
脱 硝技 術の 開発 が嘱 望 され てい るこ とを 指摘 した 。そ のう えで 、火 力発 電所 に おけ る最近 の脱硫技術 について概観し、乾式脱硫法の開発が期待される技術的 背景につIL丶て言及した。
第2章 で は 、 本 吸 収 剤 の 調製 条件 のう ち水 和反 応時 間お よぴ 加熱 処理 温 度の 違い か、 吸 収 剤の 構造 と活 性に 及 ばす 影響 につ.いて検討を行なった。固定床ガ ス流通式反応装置によ る 試 験 の 結 果 、 脱 硫 率0% にな った 時点 にお ける カル シウ ム利 用率 は、 水 酸化 カル シウ ム の 場合 は36%に とど ま るの に対 して 、本 吸収 剤づ 場合 は84%に 達し た。 この よ うな 高い脱 硫 活性 の発 現に は、 反 応ガ ス中 にお ける 窒素 酸化 物の 共存 か不 可欠 であ るこ と を示 した。
XRDに よ る 観 測 の 結 果 、 反 応 ガ ス 中 のSOzは 硫 酸 カ ル シ ウ ム の 形 態 で 固 定 さ れ て い る こ とか判明し た。
脱 硫 活 性 は 、 水 和 反 応 時 間 の 変 化 に 対 し て 、12時 間 程 度 で 最 大 値 を 示 し た 。XRDに よ る 観測 の結 果、 水和 物 とし てエ トリ ンガ イト およ びカ ルシ ウム シリ ケー トが 生 成し ている こ とか 明ら かに なっ た 。ま た、 これ らの 水和 物は 、吸 収剤 調製 過程 の最 終段 階 であ る加熱 処 理 に よ っ て 非 晶 質 化 し 、XRDで は 検 出 不 可 能 と な っ た 。 し か し 、SEMに よ る 観 察 結
粟 で は 、 加 熱 処 理 後 も エ ト リ ン ガ イ ト 結 晶 の 六 角 柱 状 の 外 形 は 残 っ て い た 。 この加熱処理温度の変化に対して、脱硫活性は400℃で最大値を示した。熱分析の結果、
400℃までの温度域において、水和物の結晶水の脱離に由来する重量減少が観測された。こ れらの事実から、本吸収剤は水和反応時間が12時間程度でエトリンガイトおよびカルシウ ムシリケートの生成が最大となり、その後の加熱処理によって水和物中のカルシウム原子 を取り巻いていた結晶水が脱離して多孔質な構造が作られ、S02とカルシウムイオンとの 相互作用が容易になり、反応活性が高くなると考察した。
第3章では、本吸収剤の脱硫反応およぴ脱硝反応に対する、反応温度、水蒸気分圧、S 02濃度、NO濃度の影響を検討し、ガス.中の硫黄酸化物および窒素酸化物は、互いの吸収 活性を高 めること が判明し た。脱硫活 性は、NO濃 度が500ppmまで はNO濃度の増加と共 に高くなり、500ppm以上では一定になること、脱硝活性は、S02濃度の変化に対して極大 値を持ち、極大値を与えるS02濃度は、反応時間が長くなるに従って低くなることが分か った。このように、脱硝活性の極大を与えるS02濃度のシフトは、吸収剤中に取り込まれ た窒素酸化物が反応時間の経過と共に硫黄酸化物によって置換される現象により説明した。
脱硫活性は、反応温度が75‑‑‑ 200℃の範囲でほほ一定であったが、75℃以下では急激に低 下した。脱硝活性も、反応温度が75〜130℃の範囲でほぼ一定であったが、130℃以上では 徐々に低下する傾向を示した。また、75℃以下では脱硝活性はほとんど見られなかった。
吸収活性に対するガス中の水蒸気分圧の影響について検討した結果、脱硫活性は反応温度 70℃では、4モル%と12モル%に極大値が存在した。この反応温度における脱硝活性は、3〜4モ ル%で極大となった。XRDによる観測の結果、4モル%付近における脱硫反応生成物は硫酸 カルシウ ム、12モル %付近の 場合は亜硫 酸カルシ ウムであ ることが明らかとなった。
種々の温度における本吸収剤の水の吸着等温線を求めた結果、吸収剤表面における水の 吸着量が単層吸着量を超えるような反応条件下では、脱硝活性はほとんど認められず、脱 硫反応の最終生成物が、硫酸カルシウムから亜硫酸カルシウムに変化することが分かった。
このような条件下では、吸収剤表面か水分子によって覆われることにより窒素酸化物の吸 着 点 が 失 わ れ 、 表 面 に 吸 着 し たS02が 酸 化 さ れ な い こ と が 原 因 と 考 察 し た 。 第4章では、本吸収剤の調製における石炭灰の役割を明らかにする目的で、吸収剤の組 成が構造と活性に与える影響について検討した。脱硫活性は、シリカ量が40%まではシル カ量の増 加と共に 高くなっ た。シリカ 量が10%以下では、XRDによルエトリンガイトの 生成を確認したが、シリカ量30%以上の試料では、エトルンガイトの生成は確認できなか った。加えて、原料物質のうち、水酸化カルシウムとケイ酸も観測されなかったことから、
高シリカ含有吸収剤における水和反応生成物は、カルシウムシリケートであり、この物質 が脱硫反応の活性物質であると結諭した。一方、脱硝活性は、シリカ量の変化に対して極 大値を持ち、吸収活性の極大を与えるシリカ量は、反応時間か長くなるに従ってシリカ量 が低い値の方向にシフトすることが分かった。
種々の時間反応させた模擬吸収剤をアルゴンイオンビームでエッチングを行なった後、
XPSスペクト ルを測定 し、模擬 吸収剤中の硫黄化合物および窒素化合物の深さ方向の分 布を求めた。硫黄化合物は、反応初期には吸収剤表面に多く分布するが、反応時間の経過 と共に内部における分布量も多くなった。観測された硫黄化合物は、主に硫酸イオンであ った。窒素化合物は、いずれの反応時間においても吸収剤表面にはほとんど分布せず、内 部ほど量が多かったが、反応時間の経過と共に減少した。観測された窒素化合物は、主に 亜硝酸イオンであった。これらの事実から、硫黄化合物は吸収剤表面と強い相互作用を持 ち 、 反 応 時 間 の 経 過 と 共 に 窒 素 化 合 物 を 徐 々 に 置 換 す る も の と 結 諭 し た 。 第5章では、以上の結果を総括した。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Characterization and Performance of a Coal‑Aah Derived Absorbent for Flue Gas Desulfurization
(石 炭灰 より調整 した排煙脱 硫剤のキ ャラクタ リゼーシ ョンと性 能)
各種の工業施設から排出される汚染物質の低減化に関する技術開発は、地球全体の環境保 全のために嘱望されている。火カ発電所等から排出される硫黄酸化物の除去法としては、湿 式法が一般的であるが、大量の水と排水処理装置が不可欠などの問題点がある。乾式脱硫法 は、これらの問題点のない方法である。近年、石炭灰を出発原料として調製される物質が乾 式状態で高い脱硫性能を示すことが見いたされた。
本論文は、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、石炭灰から調製される物質の排煙脱硫反応 における活性物質の構造を明らかにするとともに、脱硫反応機構を解明することを目的とし て行ったもので、主要な成果とその評価は次の点に要約される。
@吸収剤の調製のために行う水熱反応においては、出発原料として用いた3穏の物質からエ トリンガイトおよぴカルシウムシルケートが生成し、これらが硫黄酸化物吸収に寄与する。
活性物質の同定と生成条件を明らかにした点が評価できる。
@脱硫活性の発現には、排煙中に窒素酸化物の存在が必須であり、窒素酸化物はS02をS03に 酸 化 す る 触 媒 と し て 作 用 す る 。 脱 硫 の 反 応 機 構 を 明 ら か に し た点 が 評 価で き る。
◎脱硫反応は、反応温度が75―200℃では生成物は硫酸カルシウムであり、75℃以下では活性 が急激に低下し、生成物は亜硫酸カルシウムになる。75℃以下では吸収剤表面が水分子によ って覆われるために窒素酸化物の吸.着点が失われ、S02が酸化されない。反応条件と脱硫機 構の対応を明らかにした点が評価できる。
@本吸収剤の調製における石炭灰の役割は、活性.構造体のエトルンガイト形成のためのアル ミニウム供給源、および活性物質であるカルシウムシリケート生成のためのシリコン供給源 で あ る 。 吸 収 剤 調 製 の 鍵 と な る 石 炭 灰 の 役 割 を 明 確 化 し た こ と が 評 価 さ れ る 。
◎脱硫反応進行に伴う硫黄化合物と窒素化合物の吸収剤内分布の変化を制御すれぱ、硫黄酸 化物と窒素酸化物を同時に除去できる条件がある。同時脱硫・脱硝の可能性とその条件を明 示したことか評価される。
これを要するに、著者は乾式排煙脱硫に用いる石炭灰より調製した吸収剤の活性物質を明
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英 雄
和 俊
宏
達 正
忠
部
川
本
葉
田
服 石
岩 千
吉
授 授
授 授
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教 教
教 教
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査 査
査 査
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主 副
副 副
副
らかにするとともに脱硫反応機構を明らかにしたものであり、環境科学工学およぴエネルギ ー工学の進歩に貢献するところ大なるものがある。
よ って、著 者は北海 道大学博士 (工学) の学位を授与される資格あるものと認める。