博 士 ( 理 学 ) 宮 島 延 吉
学 位 論 文 題 名
Garnet‑perovskite transformation and its implications for the mineralogy of the lower mantle
(ガーネ ット―ベ ロブスカ イト相変態 と下部マ ントルの 鉱物学)
は じめに
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
マ ン ト ル の ダ イ ナ ミ ク ス や 沈 み 込 むス ラ ブ の挙 動 を考 え る 上で 、 下部 マ ン ト ル に お け る ガ ー ネ ッ ト の 高 圧 相 変 態 は非 常 に重 要 で ある 。 特に 、 下 部 マ ン ト ル に お け るAlやCaの ホ ス ト 相 は 何 か ? そ し て 下 部 マ ン ト ル の 主 要 相 と 考 え ら れ て い る 斜 方 晶 ペ ロ プ ス カ イ ト の 固 溶 体 成 分 、 特 にAl、Ca 固 溶 量 の 温 度 ・ 圧 力 依 存 性 な ど を 考 え る 上 で 非 常 に 重 要 で あ る 。 本 研 究 で は 、Fe含 有 量 の 異 な る 天然 の パ イ口 一 プガ ― ネ ット を 出発 物 質 に 用 い て 、 レ ― ザ ― 加 熱 ダ イ ア モ ン ド ア ン ピ ル 型 高 圧 装 置(DAC)と 分析 電 顕 の 組 み 合 わ せ に よ り 、 下 部 マ ン ト ル に おけ る ポス ト ― ガー ネ ット 相 に つ い て 考 察 し た 。
実験方法
出 発 試 料 に は 、 超 高 圧 変 成 岩 中 の パ イ ロ ― プ (Fe/(Mg+Fe)=0.06, 以 下Pydと 呼 ぷ ) 、 ガ ― ネ ッ ト ・レ ル ゾ ライ ト 中の パ イ 口ー プ (Fe/(Mg+Fe)〓 0.19, 以 下Pycと 呼 ぶ ) 、 と ェ ク ロジ ャ イト 中 の パイ ロ ― プ(Fe/(Mg+Fe)〓 0.37,Caに も 富 む , 以 下Pysと 呼ぷ ) の 定方 位 の単 結 晶 およ び 粉末 試 料 を用 いた。
こ れ ら の 試 料 に つ い て 、28〜60 GPaの 圧 力 下 でYAG( 圧 媒 体NaCl) ま た はC02( 圧 媒 体 ん ) で 加 熱 し 、 回 収 試 料 をX線 と 分 析 電 顕 で 解 析 し た 。 化 学 組 成 分 析 で は 、 ビ ー ム の 輝 度 に 注 意 し 、 組 成 既知 の 標準 試 料 を用 いて実験的に求めた補正係数(K‑values)を用いた(Fujino etal.,1996)。また、
試 料Pycお よ びPysに つ い て は 、 ダ イ ア モ ン ド ア ン ビ ル と 放 射 光 を 組 み 合 わ せ た 高 圧X線 そ の 場 観 察 も 行 っ た . (Funamori etal. , 1997)。 結 果 と 考 察
3種 類 の 出 発 試 料 と も 、 相 変 態 後 の 主 生 成 相 は 斜 方 晶 ペ ロ ブ ス カ イ ト で あ っ た が 、PydとPysで は 高 圧 ま でAlに 富 む 相 ( コ ラ ン ダ ム ― イ ル ナ イ ト 相 や 構 造 未 知 相 ) と ス テ ィ シ ョ バ イ ト が 共 存 し た の に 対 し 、Pycで は 33GPa以 上 の 圧 カ で ぺ 口 ブ ス カ イ ト 相 の み に な っ た 。 こ の 違 い は 出 発 物 質 中 のAl量 (Pycが 最 も 少 な い ) に よ っ て い る と 思 わ れ る 。 ま た 、 い く っ か の 試 料 で 珪 酸 塩 と し て は 初 め て の 三 方 晶LiNb03相 が 見 い だ さ れ た が 、 高
温X線 そ の 場 観 察 に よ り 、 こ の 相 は 減 圧 過 程 で 斜 方 晶 の ぺ 口 ブ ス カ イ ト 相 か ら 相 転 移 し た 準 安 定 相 で あ る こ と が 判 明 し た 。 こ の 回 収 試 料 の 電 顕 観 察 で は 、 相 転 移 を 示 唆 す る{1012 }hex.集 片 双 晶 が 数 多 く み ら れ た 。 ま た 、 約 35 GPaでC02レ ー サ . − に よ っ て 加 熱 し た 単 結 晶 試 料 で は 、LiNb03相 とPv相 の ラ メ ラ 様 組 織 が 観 察 さ れ 、LiNb03相 の{1012) hex.とPv相 の{110}ortho.あ る い は{OOl}ortho.が ほ ば 平 行 の 関 係 が 確 認 さ れ た 。 さ ら に 、 こ の 相 は ぺ ロ プ ス カ イ ト 中 のAl量 が 多 い ほ ど 出 現 し や す い 傾 向 が み ら れ た 。 最 近 、Kessson et al.(1995)がAlに 富 む 三 方 晶 ペ ロ ブ ス カ イ ト 相 が 存 在 す る と 報 告 し た の は 、 こ の 相 の 間 違 い で あ る 可 能 性 が 高 い 。
Alに 富 む 相 と し て 、 今 回 コ ラ ン ダ ム ― イ ル メ ナ イ ト 相(Al203‑MgSi03 固 溶 体 ) の ほ か に 組 成 が そ れ に 近 い が 、 よ りAlに 乏 し い 構 造 未 知 の 相 が 見 い だ さ れ た 。 ま た 、 こ の 相 は 、M2゛(M=Mg,Ca,Fe)とSj4゛ の 比 が1対1か ら や や ず れ , る 傾 向 が あ る 。 し か し 、 こ れ らAlに 富 む 相 の 量 比 は 、Feに 富 む 試 料 に お い て は 高 圧 に な る ほ ど 少 な く な っ て い っ た 。
ペ ロ プ ス カ イ ト 相 へ のFe,Al,Caの 固 溶 量 に つ い て は 、 レ ー ザ ― 加 熱 に よ る 温 度 の 不 均 一 性 の た め 、 必 ず し も す ぺ て の 結 果 が 整 合 的 と は 言 え な い が 、 全 体 と し て は 次 の こ と が 言 え る 。 ペ ロ ブ ス カ イ ト 相 中 のFe固 溶 量 が 多 い ほ どAlと Caの 固 溶 量 も 多 い 傾 向 が あ り 、 ま た こ れ ら3元 素 の ぺ ロ ブ ス カ イ ト 相 へ の 固 溶 量 は 、 高 圧 に な る ほ ど 大 き く な る 傾 向 が あ っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、Alに 富 む ガ ー ネ ッ ト の 下 部 マ ン ト ル に お け る 相 変 態 を 考 え る と 、 い っ た ん はMgに 富 む 斜 方 晶 ペ ロ ブ ス カ イ ト 相 お よ びCaに 富 む 立 方 晶 ペ ロ ブ ス カ イ ト 相 とAlに 富 む 相 に 分 解 す る も の の 、 下 部 マ ン ト ル 深 く な る に っ れ てAlに 富 む 相 お よ び ス テ ィ シ ョ パ イ ト は 、 斜 方 晶 ペ 口 ブ ス カ イ ト に 徐 々 に 固 溶 さ れ て な く な っ て い き 、 ま たCaに 富 む 立 方 晶 ペ ロ ブ ス カ イ ト 相 も こ れ ま で の 見 積 も り よ り は 減 少 し て い く こ と が 予 想 さ れ る 。
文 #jjt
Funamori, N., Yagi, T., Miyajima, N. and Fujino, K., (1997)
A new transformation in garnet: orthorhombic perovskite to LiNb03 phase on release of pressure. Science, 275, 513‑515.
Fujino, K., Miyajima, N., Yagi, T., Kondo, T., and Funamori, N., (1997) Analytical electron microscopy of the gernet‑perovskite transformation in a laser‑heated diamond anvil cell. The Proceedings of U.S*‑Japan Seminar, AGU, Washington. in press.
Kesson, S.E., Fitz Gerald, J.D., Shelley, J. M. G., and Withers, R. 1., (1995) Phase relations, structure and crystal chemistry of some aluminous silicate perovskites. Earth and Planetary Science Letters, 134, 187‑201.
学 位論文審査の要旨
主査 教授 藤野清志 副査 教授 渡邉暉夫 副査 助教授 菊地 武 副査 講師 三浦裕行 副査 助教授 八木健彦
東京大学大学院理学系研究科(物性研究所)
学 位 論 文 題 名
Garnet‑perovskite transformation and its implications for the mineralogy of the lower mantle
( ガーネッ トーベロ ブスカイ ト相変態と 下部マン トルの鉱 物学)
近 年、上部 マントル 物質が下部 マン卜ル におぃて 、どのよ うな物質に相変態をするか が 盛んに研 究されて ぃる。それ らの中で 、いまだ 不明な点 の多い課題のひとっが、ガ―
ネ ッ卜の相 変態であ る。特にAlこ 富むガ― ネットが 下部マン トルにおぃて、ベロブスカ イ 卜1相にな るのか、 それともAル こ富む別 の相を伴 うのか、 また下部マン卜ルにおける ぺ ロブスカイ卜相は斜方晶系なのか、それとも別の晶系になるのかが問題になっている。
こ の 課 題は 、 ガー ネ ッ 卜層 を 含む 沈み込 むプレ一 卜の運動 とも密接 に関係して ぃる。
本 論文は、 この下部 マン卜ル条 件におけ るガーネ ッ卜の相 変態について、レーザ―加 熱 ダイヤモ ンドアン ビル型高圧 装置と分 析電子顕 微鏡を組 み合わせた手法で研究したも の である。著者は、それぞれの手法に新たな試みや改良を行った。特に、.ダイヤモンド ア ンビル型 装置によ る超高圧実 験では、 これまで ほとんど 例のなぃガ―ネットの単結晶 を 出発物質 に用いた 実験を行な ぅて粉末 試料の場 合と比較 したり、また分析電顕による 回 収試料の組成分析では、適切なビーム径の選択と実験的に求めた補正係数を使用して、
超 高 圧 試 料 に つ い て 信 頼 性 の あ る 分 析 値 を 得 る こ と に 成 功 し た 。 そ の結果、Aルこ富む ガーネッ卜 の下部マン卜ル条件における主高圧相は斜方晶系のべ ロ ブスカイ ト相であ るが、条件 によりAlに 富む未知 の相をと もなうこと、珪酸塩として は 初 め てのLiNb03相 が 減 圧の 過 程で斜 方晶のべ ロブスカ イ卜相か ら準安定 相として相 転 移するこ と、また べロブスカ イ卜相に 含まれるFe,Al,Ca量の聞には正の相関関係が あ り、いず れも高圧 になるほど 増大する 傾向があ る、など の新たな重要な結果を得る事 が できた。 これらの 結果は、特 に沈み込 むプレ― 卜の下部 マントルでの振る舞いの解明
に大きく貢献する事が期待される。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。