博 士 ( 工 学 ) 宮 本 学 位 論 文 題 名
敦
投影型微分両眼視法に基づく物体の3 次元形状計測と 運動推定に関する研究
学位論文内容の要旨
物体の3次元形状計測技術は,産業ロボヅトや自立移動ロボットに代表されるロボッ トビジョンにおける認識や解析のための視覚,リバースエンジニアリングに代表される CAD/CAMに おけ る形 状デ ー夕 入力 技術 ,航空写真による標高計測技術,外観検査にお ける形状評価,異常解析など工業,医療における計測,認識,可視化の幅広い分野で必要 とされる技術である.視野からの受動的な画像のみに基づくステレオ画像計測は,測定対 象に対し非接触・無侵襲であり,かつ投光型ステレオにおいて必要な機械的可動部を持た ないこと, 不定形 物体も画像として瞬時に撮像が可能であることなどの意味において非 常に汎用性が高く,その応用に期待がもたれる.
一方,両眼視においては特徴点や特徴点近傍領域のステレオ画像間にわたる同定問題
(対応問題:correspondence problem)が長年の課題とされ,研究改善がなされてきたが,
未だ十分に満足できる成果は得られていない.この同定問題の安定かつ信頼性の高い探索 ア ル ゴ リ ズ ム の 開 発 が 現 段 階 に お い て は 最 も 重 要 な 課 題 で あ ろ う ・ 本論文はこの趣旨に添って,測定点近傍の明度値と明度勾配の線形関係をもとに,対象 物表面の近似接平面を推定する方法に関して提案する.さらに,その近似接平面上の近傍 領域を左右両画像上にそれそれ投影することにより,測定点ごとに左右で形状の異なる近 傍領域を用いて対応をとる新しい計算法を提案する.本手法を「投影型微分両眼視法」と 呼び,これによって,小ブロヅクを対応の単位とするバターンマッチングに共通な問題で あった傾斜面における測定精度は大きく改善される.また単一の微小平面による近似の妥 当でない奥行き不連続部分に対して,領域分割に基づく重み設定法を併用したM推定を 導入することによって,左右対応領域形状のさらなる最適化をはかり,形状急変部の計測 精度を向上させた.加えて,本手法は対象の奥行き情報のみでなく,形状を定義する上で 重要なバラメータである面法線も同時計測が可能であること,測定結果に関して定量的な 評価 が行 える 自己 評価 量の 算出 が可能 であ るこ とな どの 有益 な特 徴を有している・
本論文ではさらに,この投影型微分両眼視法において基本となるステレオ対応探索を 時系列画像にわたる対応探索に拡張し,時空間ステレオ画像系列から対象表面の位置・姿 勢・運動(並進,回転)を各対象点ごとに密に推定する「投影型時空間微分両眼視法」を 提案している.これは対象点近傍の領域対応に基づく手法であり,物体の3次元的な位置 及び姿勢変化によるステレオ画像間及び時系列画像間での対応領域の歪みを2次元射影変 換の範囲で推定することが可能である.投影型微分両眼視法と同様,推定値における誤差
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量を推定するための自己評価量を導入し,対象点の信頼性を自動的に判定することがで きる.
第 1章 で は , 研 究 の 背 景 と 位 置 づ け , 目 的 お よ ぴ 意 義 に つ い て 述 べ る . 第2章では,実際の計測例に基づいて,従来の領域対応に基づくステレオ計測における 問題意識を明確にするとともに,提案する投影型微分両眼視法,投影型時空間微分両眼視 法に共通する基本概念に関して述べる.
第3章では,投影型微分両眼視法の定式化を行う.提案法は,奥行きに関する急勾配部 分における平面近似精度を向上するために,基準面及ぴ局所平面という2平面を用いる収 束演算を採用している.また左右両画像の任意測定点近傍における明度勾配量と奥行き量 の線形関係を仮定することにより,広い収束範囲が期待できる.本章では,測定結果に関 する自己評価量の算出原理とその適用法に関しても述べる・
第4章では,第3章で提案された投影型微分両眼視法をべースとして,ロバスト回帰分 析の一手法であるM推定を応用した近傍領域のロバストな領域分割,重み係数の設定法を 提案する.M推定法は残差の大きさに依存して標本点での重みを調整することによって,
例外値に対するロバスト性を得ようとする手法である.良い漸近特性をもち,工学的推定 問題においても利用されているが,いくっか問題点も挙げられており,本論文では重みの 初期値,局所解等の問題に対して,投影型微分両眼視法に特化した解決策を提案する・
第5章では,画像ノイズ,オクルージョン等の理由により,最終的に良好な測定結果が 得られなかったデータに関する内挿処理法に関して提案する.内挿処理が適用されるの は,自己評価量により信頼性が低いと判断された点群であり,周囲の信頼性の高い点群 デ ー タ の 奥 行 き , 面 法 線 情 報 を も と に 信 頼 性 の 高 い 局 面 補 間 を 行 う . 第6章では,投影型時空間微分両眼視法の定式化を行う.運動推定に関して単眼での定 式化を行い,次にステレオ画像を用いた際に,関係式がどのように拡張されるのかを述べ る.さらに各運動/ヾラメー夕(並進・回転の6パラメ一夕)に関して,誤差量を推定する ための自己評価量の算出を行う.
第7章では,シミュレーション画像を用いて,提案法の基本的な性質に関して明らかに する.
第8章 で は , 多 く の 実 際 的 応 用 例 を もと に 提 案 法 の 有 効 性 に 関 し て 検 証 す る ・ 奥行き推定に関して,視差による対応領域の歪み変形を考慮し,かつ当てはめの良い領 域のみを測定点周りの正方領域から切り出すことによって,不連続な形状をより精度良く 復元することを示す.さらに提案法において算出した自己評価量が,対応領域の分割アル ゴリズムを適用する候補領域抽出に有効であることを示すと共に,領域推定が失敗した際 の判定に関しても有効な判断基準となることを示す.重み分割幅などの影響についても実 験的に検討している.
運動推定に関して,ステレオ画像上での対応探索による位置・姿勢推定と,対象物の3 次元運動推定を同時に収束可能であることを示す.また固有の明度模様をもつ自由曲面に 対しても,特徴点抽出等の処理を伴わず,明度勾配による収束演算によって良好な推定結 果が得られることを示す.
第9章は,本研究のまとめである・
900ー
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 助教授
五十嵐 土谷 島 岸浪 金子
学 位 論 文 題 名
悟 武士 公脩 建史 俊一
投影 型 微分 両眼 視法 に基 づく 物体 の 3 次元形状計測と 運動 推定 に関 する 研究
物 体 の3次 元 形 状 計 測 技 術 は , 産 業 ロ ボ ッ ト や 自 律 移 動 ロ ボ ッ ト に 代 表さ れる ロボ ッ ト ビ ジ ョ ン に お け る 認 識 や 解 析 の た め の 視 覚, リバ ー スエ ンジ ニア リン グに 代表 され る CAD/CAMに お け る 形 状 デ ー 夕 入 力 技 術 , 航 空 写 真 に よ る 標 高 計 測 技 術 , 外 観 検 査 に お け る形 状評 価, 異常 解析 など 工業 ,医 療 にお ける 計測 ,認 識, 可視 化の 幅広 い分野で必要 と され る技 術で ある .視 野か らの 受動 的 な画 像の みに 基づ くス テレ オ画 像計 測は,測定対 象 に対 し非 接触 ・無 侵襲 であ り, かつ 投 光型 ステ レオ にお いて 必要 な機 械的 可動部を持た な いこ と, 不 定形 物 体も画像として瞬時に撮像が可能で あることなどの意味において非 常 に汎 用性 が高 く, その 応用 に期 待が も たれ てい る・
しか し, 両眼 視に おい ては 特徴 点や 特 徴点 近傍 領域 のス テレ オ画 像間 にわ たる対応問題 (correspondence problem)が 長 年 の 課 題 と され ,研 究 改善 がな され てき たが ,未 だ十 分 に 満足 でき る成 果は 得ら れて いな い. こ の対 応問 題の 安定 かつ 信頼 性の 高い 探索アルゴリ ズ ム の 開 発 が 現 段 階 に お い て は 最 も 重 要 な 課 題 で あ る と 考 え ら れ る . 本論 文は この 趣旨 に添 って,「投影型微分両眼視法」と呼 ぷステレオマッチングのための 新 しい 手法 を提 案し てい る. これ は, 本 来奥 行き を測 定す る両 眼視 法に 対し ,測定点近傍 の 明度 値と 明度 勾配 の線 形関 係を もと に ,対 象物 表面 の近 似接 平面 を推 定し ,さらに,そ の 近似 接平 面上 の近 傍領 域を 左右 両画 像 上に それ それ 投影 する こと によ り, 測定点ごとに 左 右で 形状 の異 なる 近傍 領域 を用 いて 対 応を とる 計算 法で ある .従 来, 領域 依存型のステ レ オマ ヅチ ング にお いて はこ の画 像間 の 幾何 学的 歪み は小 さい もの とみ なし ,同一の近傍 領 域( 一般 には 正方 領域 )が 対応 の単 位 とし て用 いら れて いる が, この 仮定 は,対応領域 の 歪み が顕 著に あら われ る対 象形 状の 急 勾配 な領 域に おい て破 綻を きた す. 提案手法は,
対 応領 域の 歪み を考 慮す るこ とに より 左 右両 画像 上の 対応 精度 を向 上し ,小 ブロックを対 応 の単 位と する パタ ーン マッ チン グに 共 通な 問題 であ った 傾斜 面に おけ る測 定精度を大き く 改 善 す る こ と に 成 功 し た . ま た 単 一 の 微 小平 面に よ る近 似の 妥当 でな い奥 行き 不連 続
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部分に対して,領域分割に基づく重み設定法を併用したM推定を導入することによって,
対応領域のセグメンテーションを行い,形状急変部の高精度計測を可能とする改良を行っ ている.
一般に画像計測においては,本質的に測定不可能な領域や信頼できる測定結果が得ら れなぃ領域が存在する.例えば,前者では濃淡変化が穏やか過ぎて画像の特徴が乏しい領 域,後者については,ノイズが大きな領域,隠れが発生する領域,奥行きが不連続に変化 する領域等が挙げられる.提案手法においては,これら未知の不良条件下において,測 定の可能性と測定結果の信頼性に関する評価を行うための自己評価量の導出を行ってい る.特に信頼性の評価量は,各測定点ごとに各測定値(奥行き,勾配,撮像までに受ける 明度変化)に関して,それらの誤差分散を推定するものであり,測定結果に関して測定系 自体が自律的に定量的評価を行うことが可能であることを確かめている.さらに,この自 己評価量は,奥行きに不連続部分をもつ領域のセグメンテーションの際に用いる閾値CB (tuning constantと呼ばれ,一般的に与えることが困難なノヾラメー夕)の決定に有効な手 がかりとなることを実験を通して確認している・
さらに,投影型微分両眼視法のステレオ対応探索を時系列画像にわたる対応探索に拡張 し,ステレオ時系列画像から対象表面の位置・姿勢・運動(並進,回転)を各対象点ごと に密に推定する投影型時空間微分両眼視法と呼ぷ手法を提案している.これは対象点近 傍の領域対応に基づく手法であり,物体の3次元的な位置及び姿勢変化によるステレオ画 像間及び時系列画像間での対応領域の歪みを2次元射影変換の範囲で同時に推定すること が可能である.固有の明度模様をもつ自由曲面に対して,特徴点抽出等の処理を伴わず,
明度勾配による収束演算によって良好な推定結果が得られることを確認している.また,
投影型微分両眼視法と同様,各推定値における誤差量を推定するための自己評価量を算出 し , 各 推定 値 の 信 頼 性 を 定 量 的 に 評 価 する こと が可 能で ある こと を示 して いる . これを要するに,著者は,ステレオ画像計測による物体の3次元形状計測に関して,投 影型微分両眼視法と呼ぷ手法を,またステレオ時系列画像からの物体の3次元運動推定に 関しては,この手法を拡張した投影型時空間微分両眼視法と呼ぷ手法をそれそれ新たに提 案し,これらの手法によれば,従来手法の問題点を解決することができ,信頼性が高く,
しかも高精度な形状計測,運動バラメ一夕の推定が可能であることを実証したものであ り,制御情報工学,特に画像計測技術,画像情報処理技術の分野に対して貢献するところ 大なるものがある.よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格ある ものと認める.