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論文発表会_2005年)レジメ.PDF

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2005 年 1 月 28 日(金) 場所 上智大学1−105 教室 12:25∼ 開会 12:30∼12:50 野口 真治 現代における子どもの遊びに関する考察 12:50∼13:10 希代 涼子 やる気を失う日本の子どもたち 13:10∼13:30 大島 直子 アダルトチルドレンに関する一考察 ∼機能不全家族とアダルトチルドレン∼ 13:30∼13:50 清水 綾子 フリーターに見る現代の若者像 13:50∼14:00 休憩 14:00∼14:20 大林 仁美 働く女性の状況変化 ∼進む女性の社会進出∼ 14:20∼14:40 湯上 慶子 大学院を通じて成長する社会人 14:40∼15:00 斉藤 未央 発展途上国と先進国の教育政策 15:00∼15:20 吉田 真大 少年法改正について 15:20∼15:30 休憩 15:30∼15:50 田村 裕美 国家の名のもとの歴史教育 15:50∼16:10 小倉 美紀 歌詞分析から読み解く青年心理と文化 16:10∼16:30 野村 心之介 兄弟構成と恋愛・結婚の関係 16:30∼16:40 休憩 16:40∼17:00 内田 奈緒 子どもが育つ場としての家庭の変容 ∼現代社会と家庭・家族∼ 17:00∼17:20 黒島 晶子 アメリカ・イギリス映画にみる若者たち 17:20∼17:40 宮下 博樹 大学初年次における学生の適応過程と価値観の変化 17:40∼17:50 休憩 17:50∼18:10 宮﨑 多希代 生きづらい青年期からの自立 ―吉本ばなな『キッチン』 から読み解く居場所と媒介者の役割― 18:10∼18:30 高 鳳勤 戦後日本の大学におけるカリキュラム改革の変遷 ―「一般教育」のあり方を中心に― (紙上参加) 藤原 馨 これからの社会に求められる男性の家事育児参加と女性の 社会進出に関する考察? 性役割の変更の必要性と男女平 等社会構築のための施策について?

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18:30∼19:00 板倉 伸介 英語による民主主義の可能性 ―国民の英語能力と民主 主義の達成度の関連性についての実証的分析― 19:30∼ 懇親会 (サルサカバナ 四谷 1-7-27 第 43 東京ビル 3F TEL03-3225-1774)

『現代における子供の遊びに関する考察』

4年 野口真治

1. 研究の動機 私は大学に入学後、子供に関する様々な問題を学ぶ中で、次第に「子供の遊び」という テーマに関心を持つようになった。子供にとって遊びは人間関係や生活技術を学ぶ貴重な 機会であるが、その希少性に対する認知の程度はまだまだ浅く、教育現場でも対策が難し いテーマである。近年、社会状況や文化状況などの変化により、子供の遊びも変容しつつ あり、有意義な遊びの機会をどのように確保するかは、重要な課題であるといえる。そこ で、私は品川区の小学校で子供の遊びを支援する臨時職員として働いた経験などをもとに、 これからの子供の遊びについて、本論文で述べることにした。 2.子供の遊びの現状 遊びとは「自由で、自発的で、自己目的的で、喜び、楽しさ、緊張感を伴う全人的な自己表現活動」を指す。 有意義な「遊び」の経験は、子供の成長において欠かせないプロセスであるといえる。しかし、近年、この子 供の遊びに変化が生じている。まず、子供の生活の中から遊びの機会が失われつつある。子供の生活から遊び が減少している原因としては、自由に使える遊び場が特に都市部には少ないこと、学習塾やけいこごとに通う 子供の増加など、様々な原因が考えられる。また、テレビゲームなど室内でいつでも行える遊びが増加し、戸 外で全く遊ばない子供が増加するなど、遊びのバランスの悪さも懸念されている。発達段階の子供にとって、 遊びは最も重要な教育活動であり、この時期に有意義な遊びを経験しないことは、子供の将来に大きな障害を 残す可能性がある。 3.子供の遊びの問題点に対する取り組み方 問題を解決、すなわち遊びを復活させるために大人が子供に遊びを強制する必要はない。 遊びは自由で自発的な活動であり、大人の役割はあくまでも子供が自由に活動できる機会 を提供することである。したがって、これからの子供の遊びに対する対策を考えていく上 では、どのように子供に遊びの機会を与えていくか、ということが一つのポイントとなる。 遊びの機会の具体的な提供者としては、家庭、学校、地域などを挙げることができる。 その中でも最も重要なのが、学校である。学校は子供たちがに共に過ごす、最も身近な場 であり、子供に遊びの機会を提供するには、最も優れた場であるといえる。家庭や地域な どでの遊びがうまくいくかも、学校においていかに有意義な遊びの機会を提供できるかに

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かかっているといっても過言ではない。 4.遊びの支援策∼すまいるスクール事業∼ 発達段階の子供にとって、遊びは欠くことのできない重要な教育活動である。しかし、 近年、様々な原因によって子供たちの生活から遊びの機会が失われつつあり、子供の将来 への影響が懸念される。こうした現状を踏まえ、現在では各地で子供の遊びを支援する事 業が行われつつある。本論文では、その一つである品川区の「すまいるスクール事業」を 取り上げ、それを起点に子供の遊びの将来について考察を行った。 *すまいるスクール すまいるスクールとは、「子供たちが地域で遊ぶ姿が見られなくなった」「友達となかな か遊ぶ時間がない」「家で一人でテレビゲームばかりしている」「塾通いの子が増えて遊 ぶ相手が見つからない」といった区民の声に答え、品川区が平成13年度から取り組ん でいる放課後支援教育事業である。子供にとって学校こそが最も身近な場であり、遊び のための居場所になりうるという考え方に基づき、すまいるスクールは区内の各小学校 を地盤に編成されてきた。現在では「子供の居場所作り」をコンセプトに、学校施設を 活用し、放課後や土曜日、休み期間中など、子供たちが一緒にのびのびと過ごせる居場 所を目指して、様々な取り組みが行われている。

各章の構成

序章 子供の遊びへの関心 「子供の遊び」というテーマに関心を持った経緯について、及び本論文の論旨と構成につ いて記述を行った。 第1章 遊びの教育的効果について まず、遊びの本質について論じ、その後遊びの教育的な効果について記述を行った。各種 の遊びに関するデータを用いて、遊びの教育的な効果について説明し、遊びの必要性につ いて述べた。 第2章 子供の遊びの変容とその問題点 現代における子供の遊びの変容とその問題点について記述を行った。まず、遊戯の集団の 変化という視点から遊びの変容を考え、その後、遊びの変容によってもたらされる問題点 を詳述した。 終章 すまいるスクール事業紹介及び今後の遊びについて まず、品川区で行われている子供の遊びを支援する事業「すまいるスクール」について説 明を行った。そしてその後、すまいるスクールを起点とした今後の遊びの支援策について 記述を行った。 参考文献 「遊びの思想」 下山田祐彦・結城敏也 川島書店 1991 年 「子供をとりまく生活環境」 春木豊・菅野純 開隆堂 2003 年 「現代子供大百科」 中央法規 1988 年

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「現代教育概論」 佐藤晴雄 学陽書房 1999 年 「現代っ子の遊びと生活」 須藤敏明 青木書店 1991 年 「子供の社会力」 門脇厚司 岩波新書 1999 年 「子供支援の教育社会学」南本長穂・伴恒信 北大路書房 2002 年 「最新教育キーワード137」 時事通信社 2003 年 「個を生かす集団指導実践大系」 片岡徳雄 教育出版センター 1986 年 「最新教育データブック第 9 版」 時事通信社 2002 年 「子供の発達と文化」 小林剛 椋の木社 1985 年 「子供の発達と現代社会」 住田正樹 高島秀樹編 北樹出版 2002 年 「遊び文化の探求 」 藤本浩之輔 久山社 2001 年 「子どもの育ちを考える 」遊び・自然・文化 藤本浩之輔 久山社 2001 年 「遊びの治癒力」 H.ツリガー 堀要訳 黎明書房 2000 年 「遊びと空間」 河合隼雄 翰林書房 1999 年 「子どもの世界へ メルヘンと遊びの文化誌」石塚正英 社会評論社 1999 年 「子どもの育ちと遊び : いきいきと輝くとき 」川村晴子 朱鷺書房 1997 年

『やる気を失う日本の子どもたち』

希代 涼子

論文構成

【序章】問題の所存 【第一章】日本における現代の子どもたち 第一節 現実的な子どもたち 第二節 大きな一歩を踏み出せない 第三節 無気力な子どもたちはどこから… ●豊かな社会の中で ●学校生活 ●家庭に依存する子どもたち ●大人たちの先入観 ●充ち足りた生活での成長 【第二章】日本の子どもたちとアメリカの子どもたち 第一節 学校の中での子どもたち 第二節 教師と生徒、親と子どもたち

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第三節 学校教育の水準 第四節 制約された存在とされるアメリカの子どもたち 【第三章】子どもたちの将来展望 第一節 将来成功するためには… 第二節 日本の将来はどう映っているのだろうか? 【終章】考察と今後の課題

論文概要

【序章】問題の所存 去年の5月に教育実習のため母校に戻り実習をした時に、今の中学・高校生の姿を見て、 自分が中学・高校生だった頃と比べて少し変わったような印象を受けた。特に中学生につ いては、思っていた以上に驚かされることがいくつもあった。自分が中学生の頃はこんな にも幼稚だったろうか?こんなにも集中力のない生徒だったのだろうか?と思い返してし まう程であった。自分が中学・高校生だった頃と今の生徒の授業に対する姿勢や態度はそ こまで大きく違うことはないと思う。しかし、確実に学力が低下しており、集中力のない 子ややる気のない子が増えている印象を受けた。また、先生方の話しを聞いても、やはり 自分が学生の頃の生徒と今の生徒では確実に学力の違いや勉強に対するやる気の違いを感 じると共に、積極性に欠けており、自分で物事を考えたり、自分で問題を解決しようとす る子どもたちが減っていることがわかった。実際に教育内容が減少したことにより、学力 低下が問題になったり、無気力な子どもが増えているということは耳にしていた。しかし、 それを実際に自分が教育実習に行ったことによって肌で感じ、世間で言われていることと 自分が感じた現在の子どもの現状が重なったことにより、今回小・中・高校生を中心にな ぜ子どもたちが子どもらしさを失い始めているのか、なぜ積極性に欠け、やる気がなくな っているのかを調べたいと思い、このテーマを取り上げた。 日本の子どもたちが無気力化してしまい、子どもらしさを失い始めた最も大きなきっか けは日本の社会が豊かになったことだとされている。しかし、アメリカの子どもたちはや る気に富んでいる。豊かな社会の到来が子どもたちからやる気を奪うのは確かだとしても、 すべての社会の子どもたちが無気力化するわけではない。豊かな社会に暮らしているのは 同じなはずなのに、なぜ日本の子どもたちはやる気を失ってしまっているのだろうか。こ こで私は、無気力化していると言われる日本の子どもたちについて調べると同時に、現代 の日本の子どもたちが無気力化してきていると言われている原因をアメリカの子どもたち と比較しながら見ていきたいと思う。 【第一章】日本における現代の子どもたち ●日本の子どもたちはなぜか望みが小さい

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“勉強が苦手=将来への可能性が薄い”と考えている。 ←自分に自信がないため ●無気力な子どもたちの増加 ・豊かな社会の到来 ・忙しい学校生活 このような環境で子どもたちが成長 ・温かい家庭 ・満ち足りた環境 この結果 自発性や自主性に乏しく、自分から何かをしようという意欲がない 無気力な子どもたちが誕生 【第二章】日本の子どもたちとアメリカの子どもたち ●学校の中での子どもたち 日本 アメリカ 通学日数 年間 240 日 年間 180 日 学校に通う意義 友達との友情をはぐくむため 一般的・基礎的知識を見につけるため 生活 ほぼ日本人 多くの人種 ●教師と生徒、親と子 *日本* ・教壇に立って一方的に授業する ・生徒一人ひとりに熱心に指導する(学業面のみ) ・生徒の理解という面が欠けている(あまり生徒の心理状態にも関わろうとはしない) ・教師も親も教育熱心であり、特に受験においては親と子どもが共に頑張って一緒になっ て乗り越えるものだという考えがある。 ・親はなんでも子どもの世話をするし、子どもが悪いことをすれば親までも責任を負う *アメリカ* ・生徒と話しながら授業する ・生徒一人ひとりに対する指導の熱心さは低い(勉強に関しては生徒のやる気に任せる) ・生徒と教師の個人的関係はとても重要とされており、思春期の心理学としつけとが一体 になった教育が必要だと考えられている。 ⇒アメリカの教師は教える能力のみならず、生徒の心理的な理解能力も同じように評価さ れる。 ・生徒自身も親も教育に熱心ではなく、なにより教育が大切という認識が欠けている

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・親は子どもに何かを要求するのではなく、自由にしておく、その結果は本人が責任を負 うという考え方 このように日本とアメリカの教師や親の姿は大きく違う アメリカ:もともと子どもは一人で生きていかねばならないという考えがある。つまり、 アメリカはいわゆる“一人で強く生きていかなければ”という文化が存在する のである。 ●学校教育の水準 ・ 素質がもともとあると考えるアメリカ人と、勉強すればできるようになると考える日本 人とでは、「才能」と「努力」の評価の違いがある ・ 学校の勉強ができなくても、頭がよければ成功の道を切り開いていくことができるとア メリカ人は考えている ・ 「頭がいいこと」「勉強ができること」はアメリカでは評価が高い。しかし、日本では マイナスに評価される。 ↓なぜ? 日本では、学歴社会がもたらした弊害としてこのような結果に なってしまったのではないかと考えられる。 ●制約された存在とされるアメリカの子どもたち 日本:子どもをかわいがる文化がある アメリカ:伝統的に子どもを制約された存在として扱う文化がある このため 日本:親は子どもをかわいがるため、子どもはさらに自発性や自主性が乏しくなり、子ど もたちは親や家庭に依存するようになってしまった。 アメリカ:親と子どもの間の関係はしっかり保たれているために豊かな社会になっても豊 かさがストレートに子どもたちに届かない。 【第三章】子どもたちの将来展望 ・ 経済的成功こそがサクセスだという考え方がアメリカの伝統文化であり、それはサクセ スするとお金が入ってくるという考えを持っているからだ。 ・ 日本では学問の道で成功するかどうかが、その人個人の価値を評価する規準だと考えら れていた。つまり、日本では昔の学歴社会があったことにより、今でも学力があること が成功の道への近道だとされている。

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【終章】考察と今後の課題 日本の子どもたちは恵まれた生活を送っているため、子どもたちの理想郷とされている。 しかし、このような理想郷で生活している日本の子どもたちも豊かな社会の到来により、 無気力な自発性に乏しい子どもになってしまったのである。 豊かな社会になったことにより、日本の子どもたちは何かをしようとする意欲がなくな ってしまった。しかし、子どもがやる気をなくしても温かい家庭があり、家族は子どもを かわいいがるために子どもが無気力になっても何も言わない。現代の子どもは、このよう に無気力になる条件が整っているために安心してさらに無気力化していく。また、大人の 価値観によってどんどん子どもが大人の社会の仲間入りをしてしまい、子どもはどんどん 孤立型となっていく。その結果として、日本の子どもたちは子どもらしさを失い、積極性 に欠け、やる気がなくなってしまったと言えるだろう。今後の日本社会は、子どもが自主 性、積極性を持ち、個性を伸ばすためにどうするべきかを考えなくてはいけないだろう。 参考文献は省略させて頂きました。

フリーターに見る現代の若者像

A0110245 清水 綾子 増加するフリーターが将来、社会的な問題となると言われる「フリーター問題」。 フリーターという存在が問題視され、そういった若者が批判される世の中。一般的な若 者のイメージとはそういったものからついてくる部分も少なからずある。実際に私達の 最近の若者のイメージはどんなものだろうか。そしてフリーターのイメージはどんなも のだろうか。フリーター問題が数多く聞かれ、若者の将来像が懸念されているにも関わ らず、イメージに捕らわれ、多くを知りもしないまま、自分にはなんら関わりのないよ うな気持ちでいた自分。本当に問題なのはフリーターである若者達だけなのだろうか。 日本の将来を危うくする問題児はフリーター達だけなのだろうかといった疑問から、フ リーターの実態を考察し、その中から現代の若者の特徴、問題等を考察した。現代の若 者の一つの働く形として、フリーターを取り上げ、若者の職業に対する考え方、今後の 職業指導等、その解決策を検討した。 序章 フリーター問題とは フリーターと正社員の簡単な収入と支出のデーターが下記である。

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【平均年収】正社員:387 万円、フリーター:106 万円 【生涯賃金】正社員:2 億 1500 万円、フリーター:5200 万円 【住民税】正社員:64,600 円、フリーター:11,800 円 【所得税】正社員:134,700 円、フリーター:12,400 円 【消費税】正社員:135,000 円、フリーター:49,000 円 【消費額】正社員:282.9 万円、フリーター:103.9 万円 【年金受取額】正社員:(月額)146,000 円、フリーター:(月額)66,000 円 【経済的損失】税収:1.2 兆円減少、消費額:8.8 兆円減少、貯蓄:3.5 兆円減少 以上を見るだけでも分かるように、フリーターと正社員の決定的な違いは収入と支出 にある。収入が少ないことは個人の勝手では済まされず、のちに日本全体の賃金水準の 低下させることにつながる。収入が少ないということは上記のデーターにもあるように 国に支払われる支出も、経済に対する支出も低下し、年金や経済に与える影響も少なく ない。また、個人の収入が低くなると人々の人生設計にも影響がでてくることになる。 収入の問題から、晩婚化、未婚化への影響が出始め、少子化問題がさらに深刻化するこ とも考えられる。このように、フリーター問題とは経済的な問題だけではなく、日本の 将来を危うくする問題を孕んでいるものなのである。 1章 フリーターの実態 1. 誰がフリーターになるのか 定義 フリーター定義:2003 年度版『労働経済白書』ではフリーターの定義を「年齢 15 歳 ∼34 歳、卒業者、女性については未婚者に限定し、さらに(1)現在就業している者に ついては勤め先における呼称が「アルバイト」又は「パート」である雇用者で、(2)現 在無業の者については家事も通学もしておらず「パート・アルバイト」の仕事を希望す る者」とし、その総数は209 万人であると言われている。 数量的調査 男女比:男性4割、女性6割 年齢:20∼24 歳が最も多い。近年は 25∼29 歳のフリーターが上昇傾向にある。 学歴:低学歴者がほとんど。近年では大学や大学院を卒業した後の高学歴者のフリー ターも増加傾向にある。 タイプ ?? モラトリアム型 47% 離学モラトリアム型、離職モラトリアム型 ?? 夢追求型 14% 芸能志向型、職人・フリーランス志向型 ?? やむを得ず型 39% 正規雇用志向型、期間限定型、プライベート・トラブ 型

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2. 学生とフリーターの社会的立場を比較 学生 フリーター 社会的立場 学生 社会人 生活社会 学生社会、大学、学校 一般社会、世間 主な役割 学習、研究 アルバイト 経済資金 親の保護、仕送り、お小遣い またはアルバイト代 自ら稼ぐ、親へ援助 日々の生活 大学の授業、サークル、遊び、 アルバイト アルバイトが中心 休日 土日祝日、大学のない日、 夏、春休み各2ヶ月、冬休み 不定期 約週1∼2 雇用形態 アルバイト アルバイト その他 学割がある 特になし 数量的なフリーターデーターを取ってみても一番多いのは20 代前半の人々である。 20 代前半というと学生と比較して見ても、まったく同じ年代の若者たちであるという ことができるだろう。その若者たちの社会的立場は上の表を見ただけでもこんなにも差 が存在する結果となっている。 2 章 若者をフリーターへと導く要因 こうも社会的立場の違いが明らかになると、本人の意思とは別のところでも若者をフ リーターへと導く要因があるのではないかと思い、若者に影響する周辺の要因をまとめ てみた。 1. 経済的理由 ?? 大学進学にかかる費用 私立128 万 国立 58 万7千円 + 受験費用、住居費、生活費 年間平均 自宅通学者146 万円、自宅外通学者で 312 万円 日本の大学進学をさせている親の9割以上が無理をしている。 ?? 大学進学収益率 約6%、大学へ行くことの価値も低下しつつあるのではないか 2. 選択社会、選択人生、 普通の人生よりも、自分の個性を生かした選択、人生設計が良いとされる。 選択をすること、やりたいことを決める事に対するプレッシャーが存在する。 やりたいことがあってもなくても問題とされる。 3. 間違った自己実現 サラリーマンの敬遠。父親世代の代償。好きなことを仕事にし、自分の天職を見つけ ることが自己実現へとつながる。回りと同じではなく、自分だけの個性的なものを見

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つけることの中に自己実現はあるのではないだろうかという思い。 4. 長引くモラトリアム期 大人になる必要がない。両親、子供とも、いつまでも一緒に生活していたい。 パラサイトを肯定。フリーター生存可能な生活環境。 3 章 若者世代の問題として 1. 誰にでも起こり得ること フリーターが悪いわけじゃない。企業の採用体制。 2. 教育は何が出来るのか 選択と実行を根本に据えた応用型教育 絶対評価でほめる教育 終章 一人の若者として フリーターをすることに対するメリットは多くなく、その働き方を否定する人々も大 勢いる。しかし、それがひとつの働く方法や生き方であるとしたら、私達に関係がない こととは言い切れず、若者全員に対して迫っている問題であるということができるので はないかと感じた。現代の若者が感じているストレスやプレッシャーというものはこう いった形で出てきているという一つの現れに過ぎないのではないかと思った。今後、フ リーターへの対策だけではなく、若者達の価値形成、就業意識に直接働きかけてゆく活 動が必要となってくるだろう。それは新しく子供たちに教育を施すだけではなく、すで に成人を迎えた私達にもされるべきものであるのだと実感した。自分も一人の若者であ るということを再認識し、将来を見据える良い機会になった論文となった。 主要参考文献-?? 経済企画庁国民生活局国民生活調査課 選職社会の実現 図で見る国民生活白書』2000 大蔵省印刷局 ?? 労働省職業安定局『現代若者の職業意識 職業意識の変化に対応するために』1991 雇用問題研究会 ?? 中里至正, 松井洋『日本の若者の弱点』1999 毎日新聞社 ?? 矢島正見, 耳塚寛明『変わる若者と職業世界 トランジッションの社会学』2001 学 文社 ?? 宮本みち子『若者が「社会的弱者」に転落する』2002 洋泉社 ?? 河野員博『現代若者の就業行動―その理論と実践―』2004 学文社 ?? 佐藤博樹『変わる働き方とキャリアデザイン』2004 勁草書房 ?? 諏訪春雄『GYROS #8 職場の若者』2004 勉誠出版

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?? 長山靖生『若者はなぜ「決められない」か』2003 ちくま新書 ?? 日本労働研究機構研究所『大都市の若者の就業行動と意識 広がるフリーター経験と 共感』2001 日本労働研究機構 ?? 日本労働研究機構研究所『フリーターの意識と実態 97 人へのヒアリング結果より』 2000 日本労働研究機構 ?? 小杉礼子『フリーターとは誰なのか』 日本労働機構 ?? 小杉礼子『自由の代償/フリーター』 日本労働機構 ?? 総務省統計局 「日本の統計」http://www.stat.go.jp/data/nihon/ ?? 内閣府「平成15 年度版国生活白書」 http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h15/honbun/index.html ?? 厚生労働省「若者の未来のキャリアを育むために∼若年者キャリア支援政策の展開∼」 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/09/h0919-5f.html#top ?? 次世代情報都市みらい「学歴による収益率」 http://www.mirai-city.org/ithink/yobikoritsu.html ?? 心理コラムのサン「自己満足と自己実現の違いは何か?」 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/7219/columns/2ba_jiko/jikomanzoku_ji kojitugen.html

働く女性の状況変化 ∼進む女性の社会進出∼

大林 仁美 【序章】問題意識 1986 年に男女雇用機会均等法が制定されて、まもなく 20 年が経とうとしている。同 法が社会に浸透し、働く現場における女性の立場は、日々向上し続けていると言える。 しかし、現在でもなお、女性であるがゆえに当面する理不尽な問題も少しは残っている。 そこで、本論文では、まず同法の施行前と施行後で、働く女性の意識や環境がどのよう に変化してきたかを比較する。また、特に同法の施行後に着目し、近年顕著になってき ている女性の労働力の非正社員化について調べる。次に、学歴別就職比率を調べること により、最終学歴と就職についての関わりを調べる。以上を踏まえた上で、最後に社会 へ女性が進出することの意義や、社会がすべきことをまとめていく。 また、自分自身が今春より人材派遣会社に勤めるため、女性の労働状況の変化や意識 を学び、今後に役立てたいと思い、このテーマを選んだ。 【第一章】 男女雇用機会均等法について <第一節> 男女雇用機会均等法の誕生から改正男女雇用機会均等法の誕生まで

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・1986 年に男女雇用機会均等法施行 ・1999 年に国際的な流れの中で、改正男女雇用機会均等法施行 ・改正前は事業主に対して、募集、採用、教育、解雇等において、男女に差をつけ てはいけないという努力義務だったが、改正後にはそれが禁止事項に変わった。 <第二節> 男女平等の国際的な流れ ドイツに経営組織法(1952 年)、アメリカに公民権法第7編(1964 年)、イギリス に性差別禁止法(1975 年)が制定されるなど、欧米では早くから男女平等につい て取り組みがされていた。 <第三節> 改正男女雇用機会均等法の抱える問題点 ・雇用管理区分があれば、男女差別があるかどうかを検討する対象にならない ・関節差別 ・職務評価制度 ・差別是正の行政機関がない 【第二章】 女性労働の光 ∼男女雇用機会均等法施行前後の意識調査比較∼ 男女雇用機会均等法施行の時期を規準に以下の 4 つの世代に分けている。 ① 均等法前 20 年世代(昭和 41 年に 18∼22 歳) ② 均等法前 10 年世代(昭和 51 年に 18∼22 歳) ③ 均等法世代(昭和 61 年に 18∼22 歳) ④ 均等法後 10 年世代(平成 8 年に 18∼22 歳) <第一節> 雇用の女性化 全女性労働者に占める女性雇用者の比率は 1960 年 40.8% → 2001 年 82.5% つまり、自営業主の比率が減少してきている。 <第二節> 女性の就業意欲の変化 年齢階級別の女性の有業率について、昭和 62 年、平成 4 年、平成 14 年で見ると、有 業率の低い 25∼29 歳層、30∼34 歳層において上昇が目立つ。 特に若い年代層において男性の就業意欲が低下する中、女性の就業意欲は高まってい る。 <第三節> 平均勤続年数の推移 女性の平均勤続年数は、年々長くなってきている。 昭和 41 年 4.0 年 → 昭和 51 年 5.3 年 → 昭和 61 年 7.0 年 →平成 8 年 8.2 年 → 平成 15 年 9.0 年 <第四節> 職場における男女均等度合いの変化 ・企業の女性雇用管理に対する考え方の変化 ・職域の拡大 ・教育訓練の状況

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・結婚・出産等による退職、解雇の状況 以上のようなものを一例として、女性の置かれる状況は改善されている。 <第五節> 女性の側の意識変化 ・社内における平等感 昭和 54 年と平成 14 年の調査で「職場で女性は差別されている」と回答した女性の 割合は、平成 14 年の方が低下している。 特に 20 歳台は昭和 54 年 19.4% → 平成 14 年 11.1% ・強まる新入社員の昇進願望 均等法施行 10 年前世代、施行世代共に役職に就きたい人は 8%台。 施行 10 年後世代は 15.9%、施行 17 年後(昨年の新入社員)は 21.2%まで伸びてい る。 <第六節> 男女間賃金格差問題(厚生労働省、2001 年賃金構造基本調査より) 1986 年、男性 100.0 に対して女性 59.7 → 2001 年、男性 100.0 に対して女性 65.3 全体として、男女間賃金格差は縮小する傾向にある。また、学歴と勤続年数を揃えた 標準労働者で見ると、特に大卒は男性 100.0 として、女性 85∼90 程度で差が縮小す る。 <第七節> 結婚、出産と仕事との関わり ・結婚・出産による離職 1992 年(施行世代が 25∼29 歳)と 2002 年(施行 10 年後世代が 25∼29 歳)を比較 する。 →25∼29 歳層の時点で結婚か出産で離職した人の比率 1992 年 結婚離職組 20.2% 出産・育児離職組 16.2% 2002 年 結婚離職組 14.5% 出産・育児離職組 9.3% また、「妊娠または出産による退職者の割合」は昭和 41 年 52.8% → 平成 9 年 19.0% ・M字型カーブに見る結婚、出産等に関わる女性の就業状況 M字型カーブは解消されるのか?? ・出産による影響 晩婚化に伴う第一子出産平均年齢の上昇 産後の再就職は理想現実共に多いが、入職時の 7 割の人はパート 子どもができても仕事を続けた方がよい、と考える人は若い世代ほど高い。 育児休暇取得率の上昇(平成 14 年 64.0% → 平成 15 年 73.1%) 【第三章】 女性労働の影 <第一節> 進む女性の非正社員化 女性の就業意欲は高まる一方だが、正社員として就職する人の割合は低下している。

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・正社員として就職する比率 均等法施行世代(1986 年) 男 93.9% 女 94.4% 均等法施行 10 年後世代(1996 年) 男 95.3% 女 9 割届かず 最近(2002 年) 男 82.5% 女 78.7% ・学歴別、新卒パートとして就職する人の比率 高卒女子 38.6% 高卒男子 28.3%(2002 年) <第二節> 非正社員のメリット・デメリット ・働く側のメリット・・・仕事の範囲や責任が明確、仕事内容が選べる、曜日・日時が 選べる ・働く側のデメリット・・・身分・収入が不安定、将来の見通しが立たない、賃金が低 い ・企業側のメリット・・・人件費の節約 ・企業側のデメリット・・・非正社員は正社員より責任感が低い、愛社精神が薄れる <第三節> 非正社員の低賃金化を導く税制 ・103 万円の壁・・・配偶者控除と配偶者特別控除 ・130 万円の壁・・・国民年金の保険料 <第四節> 新規学卒者の高い離職率 新規学卒者のうち、中卒の約 7 割、高卒の約 5 割、大卒の約 3 割が就職後 3 年以内に 離職している。 【第四章】 学歴別就職比率 <第一節> 学歴別就職比率 平成 16 年度 大卒女子就職率 59.7%、高卒女子就職率 14.7%(高卒女子大学進 学率 47.1%) <第二節> 時代と共に変化した新規学卒者の就職活動時における募集、採用条件 均等法前 10 年世代・・・4年制大卒の場合、男子のみ採用の企業 57.2%。男女とも 採用の企業 42.6%。 均等法施行世代・・・高卒で 12.8%、大卒で 27.0%の企業が募集、採用について女 性に不利な条件を見直した。 均等法後 20 年世代・・・大卒事務・営業系 69.7%、大卒技術系 56.3%、高卒事務・ 営業系 50.4%、高卒技能系 44.5%の企業が男女とも募集し たとしている。 【第五章】 女性が社会進出することの意義 <第一節> 女性が社会進出することの意義 ・やりがいを求めて

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・経済的自立を求めて ・少子高齢化の担い手と経済の活性化 <第二節> 女性が社会進出するために社会がすべきこと ・学校教育がすべきこと ・職場内のポジティブ・アクション ・職場における仕事と子育てのための両立支援 ・子育て期における男女の仕事のバランス対策 ・地域における保育サービスの充実 【終章】 終わりに 本論文では、男女雇用機会均等法をきっかけに、日本における働く女性の意識や環境 がどのように変化してきたかを中心に述べてきた。そして、その結果は概して良い方向 に向かっていると言えるのではないか。私自身、今春より社会人として社会に出て働く。 よって、女性にとって働きやすい環境ができれば、私たちのようにこれから社会に出て 行く女性にとっては大変心強いことである。 女性の社会進出が著しいが、働くことを幸せとする人もいれば、家庭に入ることを幸 せとする人もいる。いろいろな考え方の女性を誰しもが受け入れることのできる社会に 日本がなってほしいと強く望んでいる。 【主な参考資料】 ・平成 15 年度 厚生労働省 女性労働白書 ・平成 13 年度 厚生労働省 女性労働白書 ・平成 14 年度 厚生労働省 雇用動向調査 ・男女間賃金格差に関する研究会報告書 ・平成 15 年度 厚生労働省 若年者キャリア支援研究会報告書 ・平成 16 年度 文部科学省 学校基本調査速報について ・関西女の労働問題研究会 竹中恵美子ゼミ編集委員会編『竹中恵美子が語る「労働と ジェンダー」』ドメス出版、2004 年。

大学院を通じて成長する社会人

湯上慶子 はじめに 私は最近、働く女性のための雑誌を読んだ。その中では自分の「市場価値」を高めた い女性に必要な情報が掲載され、また時の人、働く女性が憧れる人が言葉を寄せている。

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「市場価値を高めたい」というと転職や昇格などを狙っている人だけのように聞こえる が、それ以外にも人間として、女性として自分の人生をより有意義に過ごしたい、レベ ルアップしたいという人もたくさんいるように感じた。その中で今、大学院で学ぶ社会 人が増加している(図1)、または入学を迷っているということを知った。正規の学び の期間を終えて、社会に出てもなお学ぼうとする気持ちはどこから生まれるのだろう。 そういう気持ちとともに、社会人大学院の現状や問題点について考察したいと考えた。 (図1) 文部科学省「学校基本調査」 第一章 社会人大学院の現状 1.日本の大学院の特徴 日本の大学院の特徴は小規模で、分野的に工学系が大半を占め、研究者養成が主な機能 2.社会人大学院普及までの道のりと現在の状況 日本の大学院の構造の問題提起と、今後の生涯学習社会に対応して、新たな大学院像を打 ち出す必要性があげられたキッカケは1986年の臨教審の第二次答申であった。修士課程を 従来の研究者養成機関のみならず、「高度専門職の要請と研修の場として整備・拡充を図る」 という政策が打ち出された。その後、大学審答申で以下のような制度やシステムが導入・ 整備された。 ① 社会人特別選抜入試 ・ 筆記試験のかわりに面接などによる口答試験を実施 ・ 語学試験免除など ・ ほとんどが独学で合格(予備校通学者は2%) ② 入学資格、修業年限の弾力化 従来は博士課程に入学するためには修士課程を修了していることが条件。しかし、新制度 のもとでは修士を修了していなくても学部卒業後に企業などで2年以上の研究歴があり、修 士の学位を有するものと同様の学力があると認定されれば博士課程への入学資格が得られ る。

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③ さまざまな学び場の選択肢 昼夜開講制大学院、夜間大学院、科目等履修制度、専門職大学院、通信制大学院など社会 人の目的、ライフスタイルに合った学び場が選択できる。 第二章 学生について 1.学生のタイプ 4つのタイプ キャリアアップ志向の男女/派遣タイプの男女/転職志望の女性/転職志望の男性 2.学生の入学動機 1-大学院への入学目的(複数回答) 目的 回答数 % 学歴・学位を取得するため 1361 57.8 仕事の能力を高めたいので 1235 52.4 深い教養を身につけるため 909 38.6 転職や独立のため 446 18.9 資格取得のため 381 17.9 社会活動に活かすため 357 15.2 日常生活に刺激を得るため 308 13.1 業務戦略として必要なので 282 12.0 人脈を作るため 240 10.2 職場の競争に勝ち残るため 138 5.9 その他 177 7.5 合計 6255 265.7 出典:「職業人再教育志向型大学院の構造分析とその展望に関する研究」 日本企業、社会を取り巻く環境が急速に変化している中、産業や社会構造のあり方は急速 に変化している。そうした環境変化は企業の中の各人に求められる職業能力や職業能力開 発のあり方に影響を与えているという。企業内教育や研修を外部の専門サービスに委託し たり、高度な専門知識を身につけさせるために大学院に派遣するケースも増加している。 第三章 大学院修了後の学生について 1.修了生における収入の変化 外資系で大学院修了後3年の時点ですでに75%が収入増を経験していて、終了後6年を過 ぎるとほぼ全員が収入増を経験するようである。それに対し、日本では修了後3年の時点で もまだ収入アップ経験者が半分にも達しておらず、日本では大学院修了という事はすぐに 反映されにくいということがわかる。

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また、転職経験は、収入の増加額に対しても影響を及ぼしているようである。以下のデ ータは入学直前の年収が1000万円未満であった者を取り出し、時間の経過とともにどの程 度収入が増加したかについてみたものである。 継続就労型の場合、入学後 6∼8 年が経過した者のうち年収が減少した者が 2%、 変化なしが 29%、 200 万以内の増加が 51%、 400 万円以内の増加が 13% 、 400 万超の増加が 5%となっている。 これに対して転職型では、入学後入学後 6∼8 年経過時点で年収が減少した者が 10%、 変化なしが 8%、 200 万円以内の増加が 46%、 400 万円以内の増加が 22% 、 400 万円超の増加が 14%となっている。 200万円までの増加の割合が勤続就労型のほうが高いのに対し、高額な増加を果たした人 の割合は転職型の人のほうが高い。つまり、転職経験を通じて収入が減少する場合と大幅 に増加する場合にと大きく分かれる傾向にあることが見て取れる。 2.身につく能力 経営学・商学系の場合、大学院で身につけた能力で、かつ職場でも必要とされているもの として高く評価しているのは、「課題を理解し設定する力」、「情報を収集し、分析する力」、 「幅広い視野をもつこと」「人的ネットワークの形成」、「プレゼンテーション能力」。反対 に職場での必要性が高いのに大学院ではイマイチ対応しきれていないのは「対人折衝・交 渉力」、「指導・助言・育成する力」、「リーダーシップ」、「顧客志向」など。 第四章 カリキュラム面以外の問題点と今後の課題 ・時間に関する不満 ・ 学費についての悩み おわりに 社会人大学院に在籍する人や修了者の体験談を読む中で、(社会人大学に限らずだが)資 格を独学で学ぶ人、目標に向かって一生懸命な人など、社会人という立場で限られた時間 の中、必死に自分を成長させようという人たちが多く見受けられた。「学ぶのに遅すぎるこ とはない」という言葉の意味がまさにそこに存在していた。 しかし、その中で時間やお金に対する悩みや迷いが多く、2007 年の大学の「全入時代」 に向けて、各大学院が差別化を図るとすればカリキュラムに加えていかに時間や経済面で

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より社会人に学びやすい環境を整えるかという事が課題であろう。 【主な参考文献】 ・ 山内祐平・中原淳『社会人大学院へ行こう』NHK出版、2003 ・ 日経ウーマン 12 月号 p124∼147 『社会人大学のすべて』 ・ 本田由紀 『社会人大学院修了者の職業キャリアと大学院教育のリバレンス』 知泉書館、2003 ・山田礼子 『社会人大学院への案内』PHP研究所、1997 ・社会人の大学・大学院 http://allabout.co.jp/study/adultedu/ ・大学院へいこう! http://www.between.ne.jp/grad/ など

発展途上国と先進国の教育政策

A0112041 斉藤 未央 1.問題提起 今日貧困、飢餓、疾病、非識字率の低減など、まだ他にも様々なグローバルな地球規模 の問題が挙げられる。その問題の中でも今回この論文では、途上国の貧困を減らし、人々 がより豊かな生活を構築することの可能な力をもつ「教育」について概論し、発展途上国 と先進国の教育政策をはじめとする経済、学校教育、識字率などをもとに私たち先進国が どのような支援を行えばよりよい量・質の教育支援となるか考察する。これらの比較、考 察により支援における理想的なパートナーシップiのあり方を見出していこうと思う。 2.論文構成 第一章 国際教育協力・教育開発のたどってきた歴史 ・「南北問題」の登場(1960 年代以降) ・バンドン 10 原則(1955・アジアアフリカ会議) 反帝国主義、反植民地主義、平和共存、非同盟 ・1990 年代の新たな潮流 ※資料参照 世界の流れ①「万人のための教育世界会議」EFA(1990.3.)

②「DAC 新開発戦略」が OECD の DAC により採択(1996.5.)

③「世界教育フォーラム」EFA を受けた今後の枠組み「ダカール行動枠組 み」が採択(2000.4.)

④「国連ミレニアムサミット」にて「ミレニアム開発目標」(教育分野の 国際開発目標)が提唱(2000.9.)

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② JICA が「開発と教育・分野別研究会」(1992∼1994)「教育援助拡充 のためのタスクフォース」(1994∼1995)を設置、分析、報告 ③ DAC 新開発戦略は日本のイニシアティブ、研究会設置(1996) ④「成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN)」が外務省より発表 ●政策レベル・戦略レベルにおいての変化● 1.重点分野の変化(高等教育・職業教育→基礎教育) 2.バランスの取れた教育協力への志向(学校建設等のハードな支援→ソフト) 3.政策期間や教育目標を明確化・成果重視の戦略 第二章 日本の教育援助と参加型開発 ・政府開発援助(ODA) ・国際協力機構(JICA) ①研修員受け入れ、個別専門家派遣、単独機材供与、プロジェクト方式技術協力、開 発調査、青年海外協力隊 ②一般プロジェクト無償、債務救済無償、経済構造改善努力支援無償、草の根無償、 水産無償援助、緊急無償援助、文化無償援助、食糧援助、食糧増産援助 ・NGO 第三章 発展途上国と先進国の教育 それぞれの国の概要を整理する(※資料参照) ●ベトナム社会主義共和国 ●インドネシア共和国 ●中華人民共和国 ●日本国 ●アメリカ合衆国 以上の国を以下の点において比較考察する ・識字率 ・経済水準(国民総生産) ・学校教育 ・初等教育 政府開発援助(ODA) 二国間贈与(グラント) 二国間貸付(ローン) 国際機関への出資・拠出 技術協力① 無償資金協力②

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・新たな課題 参考文献 江原裕美『内発的発展と教育――人間主体の社会変革とNGOの地平』新評論、2000 年。 浜野隆『国際協力論入門――地域と世界の共生』角川書店、2002 年。 伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か――液状化する世界を読み解く』平凡社、 2002 年。 ジョン・フリードマン『市民・政府。NGO――「力の剥奪」からエンパワーメントへ』 新評論、2002 年。 黒田則博「国際開発援助について「北」は何を論議してきたのか――最近の国際開発援助 に関する考え方の動向――」『国際教育協力論集』第4巻第 2 号、125−134 頁、広島大学教 育開発国際協力センター、2001 年。 西川潤『世界経済診断』岩波書店、2000 年。 ロバート・チェンバース(野田直人・白鳥清志訳)『参加型開発と国際協力――変わるのは わたしたち』明石書店、2000 年。 世界銀行『グローバリゼーションと経済開発――世界銀行による政策研究レポート――』 シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、2004 年 高橋一生(編)『グローバリゼーションと貧困』国際開発高等教育機構(FASID)、1998 年。 田原恭蔵・林勲・矢野裕俊『かわる世界の学校』法律文化社、1997 年。 豊田俊雄『発展途上国の教育と学校』 明石書店、1998 年。 暉峻淑子『豊かさの条件』岩波書店、2003 年。 内海成治『国際教育協力論』思想社、2001 年。 外務省『政府開発援助(ODA)国別データブック』 参考 URL eFASID HP http://www.efasid.org/J/weblink/education/educationtop.htm 外務省 HP http://www.mofa.go.jp/ JICA HP http://www.jica.go.jp/ 文部科学省 HP http://www.mext.go.jp/ UNDP HP http://www.UNDP.org/

戦後少年法における改正の意義

A0112058 吉田真大

1 研究の目的

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2001 年4月に少年法が改正された。その際の改正における問題点として

大きく取り上げられたのが、少年に対する厳罰化に対する批判であった。

確かに、この厳罰化に関しては改正の原因が少年犯罪の凶悪化といったイ

メージによる部分が大きく、実際に統計的には少年犯罪は凶悪化している

わけではないことが明らかにされていることや、厳罰化が犯罪抑止効果を

十分に果たすのかなど疑問が多い。このような批判を聞くと、少年法改正

は少年犯罪対策において意味が無いかのような印象を受ける。しかし、そ

れは少年法改正反対論者の声であり、少年法や少年法改正の背景を知った

上でのものではない。少年法改正の効果を考えるには少年法自体について

知るとともに、その背景や思想を知った上で考察しなければならない。そ

のうえで、今回の少年法改正がどのような目的で行われたものであるか、

戦後 50 年以上に渡って改正されなかった少年法が改正されたことにどのよ

うな意義があるのか考えたい。

2 論文の構成

はじめに

一章 我が国における少年法の性格

1 戦前における少年法

2 現行少年法の成立

二章 少年に対する保護手続き

1 対象となる少年

2 非行発見から家庭裁判所送致までのプロセス

3 家庭裁判所における少年の扱い

4 家庭裁判所が行う処分決定

5 家庭裁判所の処分決定後の手続き

6 処分執行の内容

三章 日本における少年犯罪の現状

1 成人犯罪と少年犯罪の動向

2 少年非行の動向、特徴

3 非行の型と社会的背景

四章 少年法改正

1 少年法改正の概要

2 少年法改正の経過

3 付帯決議の存在

4 改正少年法の運用状況

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五章 世界における少年司法、少年司法の動向

1 非行少年の処遇に関する国際条約、国連規則

2 世界諸国の少年法制

結び

参考文献

3 成果

まず、この論文を作成する過程で学んだ最も重要なことは少年法は少年

に「罰を与える」ための法律ではなく、

「保護する」ための法律であるとい

うことである。この少年法の基本的な性格から考えれば少年法適用年齢が

引き下げされたことによって少年法が「厳罰化」されたというのは、そも

そも少年法は少年を罰することを目的としているのではなく、保護育成を

することが目的であり少年を早期から更生させる機会が拡大されたわけで

ある。厳罰化に対する批判は少年法の目的ではなく少年犯罪の凶悪化に対

する統計的根拠に基づく少年犯罪の実態を明らかにしていたに過ぎず、少

年法の本質から少年法を論じているわけではないのではないかという印象

を受けた。

次に、一章・二章を通じて日本における少年法の性格や仕組みについて

述べたが、日本の少年法の特徴は保護主義が非常に徹底したものであると

いうことがわかった。家庭裁判所における審判におけるプロセスにおいて

も、その終局決定においても少年に対して厳しく接するとい姿勢ではなく、

少年に自省を促すための更生させるための姿勢が強い。また、少年を拘禁

することを極力回避し起訴に関しても在宅起訴が中心であるし、処遇も少

年院等の施設に収容することよりも保護観察等の社会内処遇が多くできる

だけ、少年の自由を奪うことなく社会から分離するのではなく社会的資源

によって更生を目指している。このように、少年法は少年に対して罰を与

える応報的な刑法的な法律ではなく、むしろ少年を保護するための福祉的

な要素が強い法律である。これは国親思想に基づくものであるが、これに

対して欠損家庭とそうでない家庭での少年犯罪の傾向が少年法制定当時と

は事情が異なるという点から批判的な意見もあるが、やはり欠損家庭の少

年と一般家庭の少年では犯罪傾向に開きがあることは事実であり、少年法

が少年を保護していくという姿勢はこれからも守られていくべきである。

そして、四章の少年法改正に関してでは今回の改正が少年法適用年齢

がその中心的な内容であるかのような印象を持っていたが、むしろ事実

認定適正化と少年犯罪による被害者に対する配慮に関する改正が重要な

(25)

のではないかと考えるようになった。まず、事実認定適正化に関しては

検察官への原則逆送と審判における裁定合議制の導入が重要である。こ

れらの改正は、少年審判に検察官が介入することにより少年法の精神が

損なわれるとの批判を受けたが、山形マット事件や調布事件など事実認

定が困難な事件では家庭裁判所の能力を超えていることや、逆に適正な

事実認定を可能にすることで少年を冤罪から守るという機能がる。さら

に、原則逆送が行われるのは故意に人を殺した事件であり、少年事件全

てに適用されるわけではなく、これを根拠に少年法の精神を語るのは適

切ではない。また、裁定合議制も少年審判が従来は一人の裁判官によっ

て行われており、重大事件では裁判官の負担が大きすぎるなどといった

現場からの要請に基づくのであり、少年審判の質を維持するためには必

要な改正である。被害者に対する配慮であるが、改正後の運用状況を見

るとかなりの実績があり、このようなニーズが強かったことがわかる。

少年に対するプライバシーの問題に関しては資料の開示が非常に限られ

ており問題性は極めて低いと思われる。このように、少年法改正は現実

問題に則した改正であるし、蓄積された問題点を解決するためには必要

な改正であったと思われる。

最後に、世界における少年法制について考えたが各国によって当然制

度が違うわけであるが、どの国においても少年法が日本に比べて少年犯

罪の傾向に即して改正が行われており非常に柔軟性を持っていることが

わかった。このようなことを考えれば、日本でも少年法や関連法は大幅

な改正によるのではなく、その時代に即した改正を行うことが重要であ

り、柔軟な運用が必要ではないかと感じた。

最後に、全体を通じて今回の少年法改正の意義を考えると、わが国の

少年法を長く改正されることがなかったため、問題を蓄積しておりそれ

を改正ではなく通達や判例で乗り切って来たが、それを 2000 年前後の少

年によるセンセーショナルな事件が続発し、それが大々的に報じられ国

民にも少年法改正が必要ではないかという流れが強くなり、このような

流れを利用して改正に踏み切ったという感じがある。適用年齢の引き下

げや被害者に対する配慮は全く新たに導入されたものであるが、事実認

定の適正化に関しては近年の少年犯罪問題に関わらず以前から必要の声

があったものであるし、今回の改正では判例や通達で可能にしていた措

置を追認した面も少なくない。このようなことを考えれば少年法改正は、

いつされてもおかしくなかったことであり、今回の改正は世論が内容に

関わらずとにかく改正を望んでいた面もあり、それを機に従来の問題点

を一気に解決したように思える。また、今回の改正には付帯決議がある

(26)

ように、この改正で終わったわけではなく一層の改善を予定した改正で

ある。今回の改正は戦後硬直的だった少年法が改正という最初の一歩を

踏み出したという非常に大きな意味を持ち、将来的に大きな意義のある

改正だったといえる。

4 主要参考文献

澤登俊雄『少年法』東京、中央公論新社、

1999 年。

澤登俊雄『少年法入門

[第二版補訂]』東京、有斐閣ブックス、2003 年。

甲斐行夫他著『

Q&A 改正少年法』東京、有斐閣、2001。

葛野尋之編『

「改正」少年法を検証する』

、東京、日本評論社、2004 年。

団藤重光他著『ちょっと待って少年法「改正」

』東京、日本評論社、

1999 年。

石井小夜子他著『新版少年法・少年犯罪をどう見たらいいのか』東京、明石書

店、

2001 年。

重松一義『少年法の思想と発展』東京

、 信山社出版 , 2002 年。

警察庁編『平成 13 年度版警察白書』東京、財務省印刷局、2001 年。

国家の名のもとの歴史教育―戦史を中心とした日・中・韓中学校歴史教育比較― 田村祐美 Ⅰ. 問題意識と研究課題 この論文では、進化する国際社会の中での、日本、中国、韓国の歴史教育についての考察を深 めた。今後、国際社会に羽ばたく子供を教育していくのに、私たちが選ぶ教材、またその内容、 教え方は、彼らが自国、他国、国際社会を理解していく上での土台となるので、非常に重要であ る。子供のころに無意識のうちに聞かされたものは、こころのどこかで、潜在意識として残り、 その後の思考の基礎ともなりうる。 そうした意味で、自国と他国の文化、歴史を直接学ぶ「歴史」という科目は非常に重要である。 歴史教科書に書かれたことは、学習しているうちに、無意識に各国のイメージを作り出すであろ う。また、自分の国に愛着を持ってほしいという教育のテーマのもと、自国の歴史や文化は愛国 心教育の一面を担うことにもなる。 このように、歴史教育の中では、愛国心も育てながら、国際社会への理解を教えるという両側 面があるのではないであろうか。 このような問題意識から、現在の歴史教科書で行われている歴史教育を愛国心教育と国際理解 の観点から考察し、今後の3カ国の歴史教育の行方を検討したいと思う。 Ⅱ. 論文概要 第一章から、第三章までは、具体的な歴史教科書の内容ではないが、現在、日本・中国・韓国 ではどのような教育制度によって教育が行われているのか、また、教育・教科書を作る立場の考

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え方も比較を行い、歴史教科書比較の前提、参考となるように研究を行った。 第三章 教育目標の比較 教育目標とは、日本の「学習指導要領」、中国の「教学大綱」、韓国の「教育課程」のことであ る。日本、中国、韓国の3カ国の教育目標の共通点としては、「祖国を熱愛すること」「わが国の 歴史に対する愛情を深め」「私たちの歴史を愛する」という愛国心を育てることを教育の目的と しているところである。 異なる点としては、「教学大綱」で「歴史的責任を持たせる」、韓国の歴史教科書巻頭で「私た ちの歴史をつくっていく責任を分かち合っている」と歴史に対して各人が責任をもってこれから も行動していくように書かれているのに対し、「学習指導要領」では歴史的責任に関する記載は ない。 また、「学習指導要領」では、「わが国と諸外国の歴史や文化が相互に深く関わっていることを 考えさせ・・・国際協調の精神を養う」としている。「教学大綱」では、「国際主義教育」と記載 されている。一方、韓国では、国史と世界史が別々に教えられているが、教育目標には、「グロ ーバル化、情報化社会をリードできる韓国人の育成」と国際社会の中の韓国人を育てることを強 調している。 第四章 教科書の叙述スタイル ここでは、戦史の叙述スタイルに注目した。日本が事項の「客観的」内容の記述にたいして「禁 欲的」であるのに対し、中国、韓国ともにナショナルな観点からの評価を明確にしている。 また、戦争に直接関わる記述において、日本が細部の具体性を捨象しているのに対して、中国、 韓国はより具体的に記述している。この相違は、侵略国と被侵略国という過去の歴史的位置の相 違、今日の歴史教育におけるナショナリズムの強弱の差といった背景から説明することができる であろう。また、戦争がなぜ起きたのか、どう具体的に戦われたのかという過程、そして戦争の もたらした結果などが具体的に記述されてはじめて未来に生かせる歴史の教訓を学び、自国の歴 史を愛し、責任を持つことができるであろう。このような点からも、第3章で比較した教育目標 の相違が、叙述スタイルの相違に結びついていると考えられる。 第五章 日本、中国、韓国の教科書に見る「戦争」 ここでは、教科書の項目の中から、「日清戦争」、「下関条約」、「中国侵略」、「三国干渉」、 「韓国の植民地化」、「日中戦争」の 6 つを取り上げて、内容比較を行った。ここでは、そのい くつかを取り上げる。 1.日清戦争 まず、「日清戦争」の戦争の内容についてである。日本の「新しい社会 歴史」教科書1では、 「戦いは優勢な軍事力を持つ日本2が勝利をおさめ」という記述だけでおわっているのに対し、 中国の教科書では、2ページ半にわたり、どのような戦争であったのかについて細かく記述され 1 本論文では、田邉裕ほか著『新しい社会 歴史』、東京書籍、2003 年、を省略してこのように記載してい る。 2 以降、この論文の下線は、論文の作者自身が付けたものである。

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ている。一方、韓国の教科書では、日清戦争の内容や勝敗に関して、詳しくは触れられていない が3、中国と韓国で戦争の記述し関して違いがあるとすれば、中国の教科書では中国には優秀な 将軍がいたものの、日本の「野蛮な虐殺」に屈し敗戦した、としているのに対し、韓国では、「優 秀な武器を持った日本軍」に敗退したとしている点である。 3カ国の記述の上での違いはやはり「日本の評価を避け、表面的事実を羅列する客観主義的態 度」と中国・韓国の「ナショナルな視点重視の態度」4というスタンスの違いによるものである と考えられる。 また、日本と中国の教科書の記述は、甲午農民戦争という韓国の内政改革問題が日清戦争の原 因であるにも関らず、その韓国の問題が欧米のアジア進出という国際環境の下で、日本・中国に とってどのような意味を持つのか、なぜ韓国の改革に固執するのかなど、19 世紀末のアジア全 体の状況や内部の相互依存・対立関係への関心が低いという点では共通していると言えるであろ う。 2.韓国の植民地化 つぎに、「韓国の植民地化」から、朝鮮の独立運動の内容比較である。独立運動の内容は日本 も韓国の教科書もほぼ同じ内容である。しかし、その背景は少し異なって描かれている。 日本の「新しい社会 歴史」教科書では、「総督府は武力でこれを鎮圧する一方、これまでの 武断的な支配政策をゆるめる姿勢を示した」と書かれている。この独立運動を機に日本は少し支 配を緩やかにしたという記述である。また、同教科書では、本文ではないものの、この独立運動 を支持した日本人がいるということを半ページに渡り記述している。このような記述は、韓国の 教科書にはない。 さらに、韓国の教科書には「柳寛順の殉国、華城郡堤岩里住民に対する無差別虐殺など各地で 弾圧による死傷者が 2 万名となり、監獄に入れられた人だけでも5万名にもなった。」と書かれ ている。このことに関して、日本の教科書では、死傷者の人数こそ書かれていないが、殉国した 柳寛順は、「16 歳の朝鮮の少女柳寛順は、三・一独立運動への参加をよびかけたために、日本軍 に捕らえられ、厳しい拷問を受けて命を奪われました。」という文章とともに、記念碑の写真と ともに本文ではないが、大きく記載されている。 3.南京大虐殺 南京大虐殺は、日本の「新しい社会 歴史」教科書では「女性や子どもを含む中国人を大量に 殺害しました(南京事件)。」という本文に、注釈で「この事件は、南京大虐殺として国際的に非 難されましたが、国民には知らされませんでした。」という記述が加えられ説明されている。ま た、「新しい歴史教科書」では、「12 月、南京を占領した(このとき、日本軍によって民衆にも 多数の死傷者がでた。南京事件)。」とだけの説明である。 これに対して、中国の教科書では、「日本軍の赴くところ、焼・殺・淫・奪が行われた。日本 3 ここで使用した韓国の歴史教科書が「国史」であるため、外国の戦争についてはほとんど記述がない。 4 「」内の表現は、中村哲『東アジアの歴史教科書はどう書かれているか』日本評論社、2004 年より引用 したものである。

参照

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