• 検索結果がありません。

−95 年から 2000 年の「歌姫」たち―

ドキュメント内 論文発表会_2005年)レジメ.PDF (ページ 30-34)

          小倉  美紀 

 

<本論文における主旨> 

本論文における最大の主旨は、「時代を代表した歌と青年心理(文化)との関連性」と

「歌詞分析にみる時代ごとに異なる若者観」を導き出すことにある。 

 

<第一章>  創られた元祖歌姫「安室奈美恵」という時代95〜現在− メジャー系オピニオンリ ーダー

 

95〜98 年を人気絶頂期として、小室哲哉プロデュースによって数々のヒットを連発し、「歌姫」

の地位を確立。「茶髪ロングヘアー」「ミニスカート」「厚底ブーツ」を定着させ、彼女のファッ ションスタイルが、女子高生を始めとして多大な影響を与え、96 年にはそれはアムラー現象と まで呼ばれ「アムラー」は流行語大賞として選ばれる。ファーストシングル『Body feels Exit』

によりダンスミュージックと彼女の持つハスキーボイス、キレの良いダンス、でブレイク。『Chase 

the Chance』(1995 年 12 月発売)  で初めてオリコン 1 位を獲得し「踊る歌姫」としての地位を 確立した。96 年にはダンスミュージックに、ブラック・ミュージックの要素を加えることで、

彼女の新たな魅力を引き出し、『Don’t Wanna Cry』(1996 年 3 月発売)でソロ最年少での日本レコ ード大賞を受賞。翌年、8 月には 10 代の歌手としては初の「シングル/アルバム総売り上げ 2000 万枚突破」を達成。1997 年シングル、ウエディングソング『CAN  YOU  CELEBRATE?』において、

自己ベスト最高の 230 万枚のセールスを打ち出し、96 年、97 年と二年連続でのレコード大賞受 賞となった。その年、彼女は歌の歌詞通りに trf のメンバーと結婚し、出産による 1 年間の休業 後の 98 年、NHK紅白歌合戦により復帰を果たした。 

 

<歌詞に垣間見る「青年心理(文化)」「若者観」> 

①  「曖昧さ」…人間関係でも、夢への挑戦でも、実現させてはみたいものの正面からぶ つかり挑戦したい気持ちの先行ではなく、失敗を恐れる気持ちが先行するばかりに、妥協 する傾向。 コレ「が」いい。 ではなく コレ「で」いい。 というような妥協を前提とし た感覚。人間関係においても、「広く・浅く・ナアナアに」という現代の若者観が垣間見れ る。 

②「安室奈美恵スタイル」…『CAN YOU CELEBLETE?』の歌詞通り、今でいういわゆる「で きちゃった結婚」というスタイルを定着させた先駆者。 

 

<第二章>トラウマを背負った歌姫「浜崎あゆみ」という時代 98年〜現在  − メジャー系オ ピニオンリーダー 

  安室奈美恵の産休、SPEED が一区切り、Every Little Thing のセールス伸び悩み、というタイ ミングを見計らったかのように、1998 年 4 月 8 日に新人女性アーティストを大手レコード会社 であるエイベックスはデビューさせる。「浜崎あゆみ」である。彼女は後に、安室奈美恵の築い た記録を塗り替えるまでの「カリスマ」歌姫に成長する。2003 年度『第 45 回日本レコード大賞』

において、半世紀近いレコード大賞の歴史上、誰も実現させることができなかった三連覇という 史上初の快挙。売り上げ低迷が続く音楽界で年間 118 億円を稼ぎ、デビューからの全シングル売 り上げ枚数は、1750 万枚を突破し、この記録は歴代女性歌手の No.1に立つ。また、歌手だけで はなく、人間・浜崎あゆみとして幅広い世代の若者から愛され、とくに親や社会、学校に反抗し、

渋谷などで友人と群れてたまりこむ女子高生からは大きな支持を得た。 

 

<歌詞に垣間見る「青年心理(文化)」「若者観」> 

①トラウマを公にする勲章化…『A song for xx』から「トラウマを持つ」ということの勲 章化、トラウマをさらけ出すことで共感しあう仲間意識、がこの歌詞から垣間見ることが できる。音楽で言えば、Coccoや椎名林檎、エミネム(アメリカ)などがそうであり、

著書で言えば、乙武洋匡の『五体不満足』や、大平光代の『だから、あなたも生き抜いて』、 飯島愛の『プラトニックセックス』など。 

②安室時代よりも進行した傍観者的な、『曖昧さ』…「先導する気もないけれど、先導され た く も な い 」 と い っ た 現 代 の 若 者 が も つ 曖 昧 さ を ダ イ レ ク ト に 観 る こ と が で き る 。

(『AUDIENCE』歌詞一部抜粋) 

③「自由の贅沢化」…「好きなモノだけを  選んでくのが  無責任だって訳じゃない  好きな ものさえも  見つけられずに  責任なんて取りようもない」(『SURREAL』より一部抜粋)「好きな ものを選択する権利(自由)」は「大人たち」に当然のものとして受け入れてもらえることが、

彼らの中に断固たる概念として定着している。それ故に、現代の若者たちは広がりすぎた自由の 中で、戸惑い、孤独を感じ、「社会」に対して無気力感を感じる傾向が強いのではないだろうか。

「自由になる権利」をひたすら追いかけた時代から、あふれかえる自由の中からその中でも、「自 分にしかできないこと」あるいは「自分に一番適していること」を要求する時代へと変わったの ではないだろうか。 

 

<第三章>本場仕込みの和製R&B歌姫「宇多田ヒカル」という才能  99 年〜現在  ―メジ ャー系個人的要素― 

生まれはニューヨーク、インターナショナルスクールに通いながら日本とアメリカを行き来しな がら育った生粋のバイリンガル。飛び級をするほど、学業においても優秀であり、コロンビア大 学へ入学。両親も音楽関係の仕事をし、幼い頃から作詞・作曲をしていた。母はかつて『圭子の 夢は夜開く』でヒットした歌手、藤圭子。そのようなバックグラウンドを持つ当時 16 歳の少女 が作り出した歌は 1998 年にデビュー曲『Automatic』を東芝 EMI から発売。これが 206.3 万枚の セールスを打ち出す。アルバム『First Love』においては 800 万枚を越え、なお記録更新中。 

 

<歌詞に垣間見る「青年心理(文化)」「若者観」> 

①  AC(アダルト・チルドレン)化…両親が離婚を繰り返す中、大人にならざるを得なかった 状況が詞から垣間見ることができる。トラウマを全面に出す浜崎とは対照的であり、「強 がり」や「我慢」を詰め込んだ詞が多い。 

 

<第四章>歌姫は小中学生「モーニング娘。」という時代 98年〜現在 − メジャー系オピ ニオンリーダー 

某オーディション番組から選ばれ結成された「モーニング娘。」。この「モーニング娘。」という のは、80 年代でいうところの「おニャン子クラブ」と似ている要素を持っており、またユニッ ト内での出入りが激しい。その分オーディションを頻繁に行ない新たな人材と才能を探そうとし ている。ホームページ上でオーディション情報が随時更新されており募集が行なわれている。こ のメンバーの入れ替えの激しさは、出入りの新陳代謝を活発にすることで、常に話題性を保つプ ロデューサー側の狙いであると推測する。また、現役中学、高校生がメンバーであり、芸能界を 若年化の方向へ導いた。 

 

 

① 不況真っ只中での開き直り…第1章からの変遷を追って行くと安室は「辛いけど、諦め ないで頑張っていこう。」と歌い、浜崎はトラウマと未来には期待できるのかわからずに

(1999 年『A song for xx』より )うずくまり、暗いムードの中、ニューヨークから宇多 田ヒカルという1人の天才が爆発的なヒットと、本場仕込みの英語とリズム感、歌のクォリ ティーの高さに多くの人が驚かされ、しかし不況は絶頂期。そんな中、モーニング娘。は『LOVE マシーン』において「開き直り」を全面に出し164.7万枚のヒット曲を生み出す。歌詞 にも不況を中心とした暗いムードに対し開き直ることで、楽しもうとする心理が上手く表現 されている。 

② 自らの持つ「夢」や「才能」に対し積極的な姿勢を見せる小・中・高校生…近年のモー ニング娘。におけるオーディションだけに関わらず、積極的に 10 代を対象とした歌手やア イドルを募集するオーディション番組の増加など、をきっかけとして、「夢」や自らの持つ

「才能」に対し積極的な姿勢と自信を行動に見せる小・中・高校生の姿が、モーニング娘。

をきっかけに、さらに顕著になったように考察する。 

 

<第五章>  

音楽界のマイナー系メジャー「歌姫」

〜Coccoと椎名林檎〜‐マイナー 系個人的要素‐ 

・COCCO 

教育社会学のゼミの中で『生きづらさの社会学』として「南条あや」を扱ったことがあった。彼 女はリストカット症候群、鬱病であり、日々の様子や考えていることを、明るくインターネット 上で日記を公開し、同じ悩みを持つ人々から人気をはくした。しかし、高校卒業後、Cocco を毎 日のように歌いに通ったカラオケボックスで、急性薬物多量服毒により若い貴重な命を失った。

彼女、Cocco の歌や DVD を好み、カラオケボックスで何度も歌っている。Cocco の歌詞は独特で 彼女自身「私は音楽の排泄者であって表現者ではない。」と語っている。「生きる」という当たり 前な行動の中で彼女が感じる、人間の儚さや冷酷さ、残酷さを感じ、それを詞という形で吐き出 す。それが彼女のスタイルであるらしい。 

 

<歌詞に垣間見る「青年心理(文化)」「若者観」> 

① 生きづらさを感じる人の増加とその低年齢化…近年では「心の風邪」と言われている、

鬱病患者が増加しており、また患者の年齢層もサラリーマン世代だけではなく、抗うつ 剤を飲みながら登校する高校生の姿もあるという。 

 

・椎名林檎 

時期は上記にあげた Cocco とも重なるが、同じく代表的な音楽界のマイナー系メジャー「歌姫」

が、椎名林檎である。しかし、アルバムセールスを見るとメジャー級のセールスを残している。

98 年にシングル「幸福論」でデビューし、99 年のファーストアルバム「無罪モラトリアム」で

ドキュメント内 論文発表会_2005年)レジメ.PDF (ページ 30-34)

関連したドキュメント