1
線型代数学入門
∗
佐藤 篤
†目次
第 I 部 行列と行列式
7
1 行列とベクトル I 8 1.1 行列とベクトル . . . . 8 1.2 行列の和とスカラー倍 . . . . 9 1.3 行列の積 . . . . 10 1.4 転置行列 . . . . 12 2 行列とベクトル II 14 2.1 ブロック行列と区分け . . . . 14 2.2 正方行列 . . . . 15 2.3 逆行列 . . . . 17 2.4 演算の優先順位 . . . . 18 3 行列の基本変形 I 20 3.1 方程式の基本変形 . . . . 20 3.2 行列の基本変形と基本行列 . . . . 21 3.3 列や行の掃き出し . . . . 22 4 行列の基本変形 II 25 4.1 階段行列への変形 . . . . 25 4.2 掃き出し法 . . . . 27 ∗線形代数学 A・B (2007–2014 年度, 於 東北大学) 講義ノートに加筆修正 [2017 年 4 月 1 日版] †東北学院大学教養学部 (E-mail: [email protected])4.3 逆行列の計算 . . . . 30 5 行列と線型写像 32 5.1 線型写像 . . . . 32 5.2 線型写像と行列 . . . . 33 5.3 基本変形との関係 . . . . 35 5.4 連立 1 次方程式との関係 . . . . 35 6 部分空間と次元 I 37 6.1 部分ベクトル空間 . . . . 37 6.2 ベクトルの 1 次結合 . . . . 37 6.3 ベクトルの 1 次独立性 . . . . 38 7 部分空間と次元 II 42 7.1 基底と次元 . . . . 42 7.2 線型写像と次元 . . . . 43 7.3 行列の階数 . . . . 44 7.4 連立 1 次方程式の解の構造 . . . . 45 8 行列式 I 48 8.1 置換 . . . . 48 8.2 行列式の定義 . . . . 50 8.3 行列式の多重線型性 . . . . 50 8.4 基本変形と行列式 . . . . 51 9 行列式 II 53 9.1 区分けと行列式 . . . . 53 9.2 余因子展開 . . . . 54 9.3 行列式の計算 . . . . 55 9.4 積の行列式 . . . . 57 10 行列式の応用 60 10.1 行列式と逆行列 . . . . 60 10.2 Cramer の公式 . . . . 61 10.3 小行列式と 1 次独立性 . . . . 63 スカラーの範囲について 65
目次 3
第 II 部 ベクトル空間と行列の標準化
67
11 ベクトル空間 I 68 11.1 ベクトル空間の公理化 . . . . 68 11.2 線型写像と部分空間 . . . . 69 11.3 ベクトルの組と行列との積 . . . . 71 12 ベクトル空間 II 73 12.1 1 次結合と 1 次独立性 . . . . 73 12.2 基底と次元 . . . . 74 12.3 次元公式 . . . . 75 13 ベクトル空間 III 78 13.1 ベクトル空間の成分表示 . . . . 78 13.2 線型写像の行列表示 . . . . 78 13.3 線型変換の行列表示 . . . . 80 14 固有値と固有ベクトル I 83 14.1 固有多項式 . . . . 83 14.2 固有空間 . . . . 84 14.3 行列の対角化 . . . . 86 15 固有値と固有ベクトル II 89 15.1 対角化の応用 . . . . 89 15.2 行列の三角化 . . . . 91 15.3 Hamilton-Cayley の定理 . . . . 93 ベクトル空間の定義について 95第 III 部 内積と行列の標準化
97
16 計量ベクトル空間 I 98 16.1 正値 Hermite 内積 . . . . 98 16.2 ベクトルのノルム . . . . 99 16.3 内積と角度 . . . 100 16.4 直交系 . . . 10117 計量ベクトル空間 II 104 17.1 Schmidt の直交化 . . . 104 17.2 Gram 行列 . . . 105 17.3 平行体の “体積” と行列式 . . . 107 17.4 ベクトル積 . . . 108 18 正規行列 111 18.1 ユニタリ行列と実直交行列 . . . 111 18.2 正規行列 . . . 113 18.3 Toeplitz の定理 . . . 114 19 2 次形式 117 19.1 2 次形式 . . . 117 19.2 2 次形式の標準形 . . . 117 19.3 2 次形式の符号数 . . . 119 内積の定義について 122
付録
123
A 集合と写像 124 A.1 集合 . . . 124 A.2 写像 . . . 125 A.3 集合算 . . . 127 A.4 配置集合と巾集合 . . . 129 A.5 集合の直積 . . . 129 B 群・環・体の定義と例 131 B.1 演算 . . . 131 B.2 単位元と逆元 . . . 132 B.3 群 . . . 133 B.4 環と体 . . . 133 C 置換と行列式 136 C.1 置換の符号 . . . 136 C.2 偶置換と奇置換 . . . 137目次 5 C.3 置換の結合 . . . 138 C.4 順列と置換 . . . 139 D 行列の最小多項式と対角化 141 D.1 行列の最小多項式 . . . 141 D.2 最小多項式と対角化 . . . 142 D.3 定理の証明 . . . 143 E Jordan 標準形 145 E.1 2 次行列の Jordan 標準形 . . . 145
E.2 Jordan 細胞と Jordan 標準形 . . . 146
E.3 Jordan 標準形の計算 . . . 148 F 幾何学的説明 150 F.1 部分アフィン空間 . . . 150 F.2 一般の位置にあるベクトル . . . 152 F.3 超平面 . . . 153 G 内積とデータ解析 156 G.1 基礎概念 . . . 156 G.2 相関係数 . . . 157 G.3 最小 2 乗法 . . . 157 G.4 主成分分析と固有ベクトル . . . 158 H コンピュータによる行列の計算 160 H.1 Octave . . . 160 H.2 Maxima . . . 160 H.3 MathLibre . . . 160 H.4 主なコマンド . . . 161 文献案内 163 問題略解 165 記号索引 215 索引 219
各節の依存関係
1, 2
?A
? s q3, 4
+ s5
?B
/ ?8, 9
+ ?6, 7
? qC
11, 12, 13
? q10
) ?14, 15
? q16, 17
? sD
?18
?F
E
19
sG
H
記号と用語
• “P ならば Q である” が成り立つとき, Q は P であるための必要条件 (P であるためには Q が必要), P は Q であるための十分条件 (Q であるためには P で十分) であるといい, そのことを P =⇒ Q や Q⇐= P で表す. また, P =⇒ Q かつ P ⇐= Q であるとき, P は Q であるための必要十分条件 (P と Q は同値) であるといい, そのことを P ⇐⇒ Q で表す. • A, B が ˙モ ˙ノのとき, A := B や B =: A で “A を B により定義する” や “B を A と置く” を表す.7
第
I
部
行列と行列式
線型代数学とは, 近年になって整理された “有限次元ベクトル空間の理論” の別名であり, 多変数の 1 次 式の族を系統的に扱う技法の集大成でもある. しかし, もっと単純に “行列とベクトルの理論” であると言っ ても間違いではない. 主たる対象である行列や (数) ベクトルは, いくつかのデータをまとめてひとつの ˙モ ˙ノ と見なしたものだと思える. ひと括りにすることにより, 複雑なデータをひとつの数であるかのように扱う ことが可能となる. その結果, 労力の軽減や見通しのよい議論が期待できる. 第 I 部では, まず行列やベクトルに関する種々の計算技術や, 連立 1 次方程式の系統的な (あるいは機械 的な) 解法を扱う. 実際に大規模なデータを処理する場合には, コンピュータを利用するのが普通である. し かし, プログラムを作成するためには計算の手順を明確にすることが欠かせない. また, 小規模なデータを 手計算で正確に処理できないようではプログラムの動作確認もできない. 学習の際には, この問題意識を忘 れないことが肝要である. さて, 数学においては様々な場面で “独立” という概念が出現する. 線型代数学においては, ベクトルの 1 次独立という “独立” が定義され, そこから次元という概念が定義される. 第 I 部の後半では, 1 次独立性と 次元を導入して連立 1 次方程式の背後にある “構造” を概観した後, 続いて行列式の理論と計算法を扱う. 行列式は “符号つきの体積” と呼ばれることもあり, 幾何学的に導入している文献も少なくない. しかし, こ こでは抽象的な概念や判定法を定量化するものとして考察される (行列式と体積の関係については第 III 部 で触れる). 以上の概念や計算技術は, 線型代数学のみならず数学全般において空気のように用いられるものであるか ら, 確実に修得しておくことが望ましい. 全体を通して, 集合と写像に関する基本的な事実は断りなく用いる (付録の A に述べておいたので, 必要 に応じて参照されたい). 中でも “全射” や “単射” という概念は第 I 部を理解するための重要なキーワード である. また, 線型代数の先にある “抽象代数” の初歩について付録の B で述べておいた. こちらも併せて 目を通せば理解が深まるであろう. 当分の間 “数” とは実数を意味するものとする. また, 行列やベクトルと区別するため, 数のことをスカ ラーとも呼ぶ. スカラーはアルファベットの小文字 a, b, c, . . . やギリシア文字の小文字 α, β, γ, . . . を用いて 表すことが多い.1
行列とベクトル I
1.1 行列とベクトル mn 個のスカラー aij (1≤ i ≤ m, 1 ≤ j ≤ n) を m 行 n 列に並べてひと括りにした A = a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n . . . . am1 am2 . . . amn を (m, n) 型の (または m 行 n 列の) 行列といい, (m, n) を A の型という. また, ( ai1 ai2 . . . ain ) , a1j a2j .. . amj をそれぞれ A の第 i 行, 第 j 列といい, aij を A の (i, j) 成分という. 行列 A の (i, j) 成分が aij であるこ とを A = (aij) で表す. 型が同じ行列 A = (aij), B = (bij) が任意の i, j に対して aij = bij をみたすとき A と B は同じ行列であるといい A = B で表す (そうでないことを A̸= B で表す). 行列はアルファベッ トの大文字 A, B, C, . . . を用いて表すことが多い. (1, 1) 型の行列とはスカラーに他ならない. また, (1, n) 型の行列を n 次の行ベクトルといい, その (1, j) 成分を単に第 j 成分と呼ぶ. 同様に, (m, 1) 型の行列を m 次の列ベクトルといい, その (i, 1) 成分を単に第 i 成分と呼ぶ. 行ベクトルは (a1, a2, . . . , an) のように成分をコンマで区切って表すこともある. 行ベクトル と列ベクトルを合わせて数ベクトル (または単にベクトル) と呼ぶが, 以下では “(数) ベクトル” といった ら特に断らない限り列ベクトルを意味するものとする. ベクトル a の第 i 成分が aiであることを a = (ai) で表す. ベクトルはアルファベットの小文字の太字体 a, b, c, . . . を用いて表すことが多い.問 1.1 (1) (i, j) 成分が (−1)i+j であるような (3, 3) 型行列, ならびに (i, j) 成分が 2j−13i−1 であるよう
な (3, 4) 型行列を書け. (2) 次の行列の (i, j) 成分を i, j を用いて表せ: 0 1 2 −1 0 1 −2 −1 0 , 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 . 例 1.2 全ての成分が 0 であるような行列を零行列といい O で表す (ベクトルのときには零ベクトルといい 0 で表す). 型を明示したいときには Om,n や 0n のように書くこともある.
1 行列とベクトル I 9 例 1.3 ひとつの成分だけが 1 で残りの成分が 0 であるような n 次のベクトル e1:= 1 0 0 .. . 0 , e2:= 0 1 0 .. . 0 , . . . , en:= 0 0 .. . 0 1 を n 次の基本ベクトルという. 1.2 行列の和とスカラー倍 型が同じ行列 A = (aij), B = (bij) に対し, (i, j) 成分が aij+ bij であるような行列を A, B の和といい A + B で表す. また, スカラー c に対し, (i, j) 成分が c aij であるような行列を A の c 倍といい cA で表 す. さらに, (−1)A を −A と書き, A + (−B) を A − B と書く. すなわち
(aij) + (bij) = (aij+ bij), c(aij) = (c aij), −(aij) = (−aij), (aij)− (bij) = (aij− bij).
これらの行列は元の行列と同じ型をもつ. 例 1.4 (m, n) = (2, 3) のとき, A = ( a11 a12 a13 a21 a22 a23 ) , B = ( b11 b12 b13 b21 b22 b23 ) に対して A + B = ( a11+ b11 a12+ b12 a13+ b13 a21+ b21 a22+ b22 a23+ b23 ) , A− B = ( a11− b11 a12− b12 a13− b13 a21− b21 a22− b22 a23− b23 ) . また, スカラー c に対して cA = ( c a11 c a12 c a13 c a21 c a22 c a23 ) . 型が同じ行列 A, B, C とスカラー c, d に対して次が成り立つことは, 定義から明らかであろう (O は同じ 型の零行列を表す): 命題 1.5 (1) A + B = B + A. (2) (A + B) + C = A + (B + C). (3) A + O = A. (4) (cd)A = c(dA). (5) 1 A = A, 0 A = O.
(6) (c + d)A = cA + dA, c(A + B) = cA + cB.
1.3 行列の積 行列 A, B の積 AB は, 和とは異なり, A の列の個数と B の行の個数が同じであるときに定義される. (m, n) 型の行列 A = (aij) と (n, l) 型の行列 B = (bij) に対し, A の第 i 行の成分と B の第 j 列の成分 の積和 n ∑ k=1 aikbkj= ai1b1j+ ai2b2j+· · · + ainbnj を (i, j) 成分とする (m, l) 型行列を A, B の積といい AB で表す.
行列
j j ∨ ∨ i > ai1 ai2 . . . ain b1j b2j .. . bnj = ∑n k=1aikbkj < i . 例 1.6 (1) n 次の行ベクトルと n 次の列ベクトルの積はスカラーになる: ( a1 a2 . . . an ) b1 b2 .. . bn = n ∑ k=1 akbk = a1b1+ a2b2+· · · + anbn. (2) (m, n) 型の行列と n 次の列ベクトルの積は m 次の列ベクトルになる: a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n . . . . am1 am2 . . . amn b1 b2 .. . bn = ∑n k=1a1kbk ∑n k=1a2kbk .. . ∑n k=1amkbk = a11b1+ a12b2+ · · · + a1nbn a21b1+ a22b2+ · · · + a2nbn .. . am1b1+ am2b2+· · · + amnbn . (3) m 次の行ベクトルと (m, n) 型の行列の積は n 次の行ベクトルになる: ( a1a2 . . . am ) b11 b12 . . . b1n b21 b22 . . . b2n . . . . bm1 bm2 . . . bmn = (∑m k=1 akbk1 m ∑ k=1 akbk2 . . . m ∑ k=1 akbkn ) . 注意 1.7 上の例からもわかるように, A の第 i 行を ai とし, B の第 j 列を bj とするとき, AB の (i, j) 成分は aibj に一致する. また, AB の第 j 列は Abj に一致し, 第 i 行は aiB に一致する.1 行列とベクトル I 11 注意 1.8 列ベクトル a とスカラー b に対しては, 行列の積 a b (スカラーを (1, 1) 型の行列と見なした) と ベクトルのスカラー倍 b a が定義されるが, これらは一致する. 実際, a = (ai) が n 次であるとすると a b = a1 a2 .. . an b = a1b a2b .. . anb = b a1 b a2 .. . b an = b a1 a2 .. . an = b a. 問 1.9 次の行列の積を計算せよ: a1 a2 .. . am ( b1 b2 . . . bn ) . 問 1.10 行列 A, B の積 AB が定義されるとき, 次を示せ: (1) A の第 i 行が 0 だけからなるならば, AB の第 i 行も 0 だけからなる. (2) B の第 j 列が 0 だけからなるならば, AB の第 j 列も 0 だけからなる. A = O または B = O ならば, 明らかに AB = O となる. また, 行列 A, B, C とスカラー c に対して (和 や積が意味をもつ限り) 次が成り立つことは, 定義から容易に導かれる (証明は演習問題):
命題 1.11 (1) (cA)B = A(cB) = c(AB).
(2) (A + B)C = AC + BC, A(B + C) = AB + AC. 以下では (cA)B = c(AB) を単に cAB と書く.
3 つの行列の積 a = (ai) を m 次の行ベクトル, c = (cj) を n 次の列ベクトルとし, B = (bij) を (m, n) 型の行列とする. このとき (aB)c と a(Bc) が定義できて, 例 1.6 より (aB)c = (∑m k=1 akbk1 m ∑ k=1 akbk2 . . . m ∑ k=1 akbkn ) c1 c2 .. . cn = n ∑ l=1 (∑m k=1 akbkl ) cl, a(Bc) =(a1 a2 . . . am ) ∑n l=1b1lcl ∑n l=1b2lcl .. . ∑n l=1bmlcl = m ∑ k=1 ak (∑n l=1 bklcl )
となるが, これらは共に m ∑ k=1 n ∑ l=1 akbklcl= a1b11c1 + a1b12c2 +· · · + a1b1ncn + a2b21c1 + a2b22c2 +· · · + a2b2ncn + . . . . + ambm1c1+ ambm2c2+· · · + ambmncn に一致する. つまり (aB)c = a(Bc) が成り立つ. 一般に, 行列の積 AB と BC が共に意味をもつとき, (AB)C や A(BC) も定義できるが, これらに対しても上と同様のことが成り立つ: 定理 1.12 (AB)C = A(BC). 上で述べた議論は, A と C がそれぞれ行ベクトルと列ベクトルである場合に当たる. 一般の場合も, この 場合に帰着することによって, 次のように証明される: A の第 i 行を aiとし, C の第 j 列を cj とする. このとき, AB の第 i 行は aiB であるから, (AB)C の
(i, j) 成分は (aiB)cj となる. また, BC の第 j 列は Bcj であるから, A(BC) の (i, j) 成分は ai(Bcj) と
なる. ところが, 上で示したように (aiB)cj= ai(Bcj) が成り立つから, (AB)C と A(BC) の (i, j) 成分は
一致する. なお, これらの行列が同じ型をもつことは明らか.
以下では (AB)C = A(BC) を単に ABC と書く. A = (aij), B = (bij), C = (cij) とするとき, ABC の
(i, j) 成分は∑mk=1∑nl=1aikbklclj により与えられる. 1.4 転置行列 (m, n) 型の行列 A = (aij) に対し, (i, j) 成分が ajiで与えられる (n, m) 型行列を A の転置行列といい, tA (または AT) で表す. この記号を用いると, 列ベクトルはt(a 1, a2, . . . , an) のように表せる. 例 1.13 t( a11 a12 a13 a21 a22 a23 ) = a11 a21 a12 a22 a13 a23 , t(a1 a2a3 ) = a1 a2 a3 , t a1 a2 a3 =(a1a2 a3 ) . 行列の演算との関係 同じ型の行列 A, B とスカラー c に対して次が成り立つことは明らかであろう: 命題 1.14 (1) t(tA) = A. (2) t(A + B) =tA +tB. (3) t(cA) = ctA. 行列 A, B の積 AB が意味をもつとき,t(AB) やtBtA も定義できる. いま A の第 i 行を a i とし, B の
1 行列とベクトル I 13 れる. また, 転置行列の定義より,tA の第 i 列はta i となり,tB の第 j 行はtbj となることがわかるから, tBtA の (i, j) 成分はtb itaj で与えられる. ここで, 容易にわかるように ajbi=tbitaj が成り立つから, t(AB) とtBtA の (i, j) 成分は一致する. これらの行列は同じ型をもつから: 命題 1.15 t(AB) =tBtA.
演習問題
1.1 A = 0 0 1 0 3 0 2 0 0 , B = 0 3 2 4 5 1 , c = 6 2 5 , d = ( 3 2 ) に対し, 次の行列の計算をせよ: Ac + Bd, AB + 2 ctd, tdtBc−tcAc. 1.2 AB = O と BA̸= O を共にみたす (2, 2) 型行列 A, B の例を挙げよ. 1.3 行列 A と基本ベクトルの積 Aej は A の第 j 列に一致することを示せ. またteiA は A の第 i 行に 一致することを示せ. 1.4 命題 1.11 を証明せよ. 1.5 (2, 3) 型行列 A と (3, 2) 型行列 B について, 成分を直接計算することにより命題 1.15 が成り立って いることを確かめよ.2
行列とベクトル II
2.1 ブロック行列と区分け 4 個の行列 A = ( a11 a12 a13 a21 a22 a23 ) , B = ( b11 b12 b21 b22 ) , C = c11 c12 c13 c21 c22 c23 c31 c32 c33 , D = d11 d12 d21 d22 d31 d32 が与えられたとき, それらの成分を並べて新たな行列 ( A B C D ) := a11 a12 a13 b11 b12 a21 a22 a23 b21 b22 c11 c12 c13 d11 d12 c21 c22 c23 d21 d22 c31 c32 c33 d31 d32 を作ることができる. 同様にして, pq 個の行列 Akl (1≤ k ≤ p, 1 ≤ l ≤ q) に対して (Akl) := A11 A12 . . . A1q A21 A22 . . . A2q . . . . Ap1 Ap2 . . . Apq も定義できる. ただし, 各 k に対する Ak1, Ak2, . . . , Akqの行の個数, ならびに各 l に対する A1l, A2l, . . . , Apl の列の個数は一定であるとする (p や q は 1 でもよい). このようにして得られる行列をブロック行列とい う. 逆に, 与えられた行列をブロック行列と見なすことを行列の区分けという. どのような区分けを考えた のかを明示したいときには, 行列に縦や横の線を書き加えることもある. 例 2.1 m 次のベクトル a1= a11 a21 .. . am1 , a2= a12 a22 .. . am2 , . . . , an= a1n a2n .. . amn に対し, ( a1 a2 . . . an ) = a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n . . . . am1 am2 . . . amn . この形のブロック行列は頻繁に用いられる.2 行列とベクトル II 15 行列の演算との関係 同じ型に区分けされた行列 (Akl), (Bkl) とスカラー c に対して次が成り立つことは, 定義から明らかであろう: 命題 2.2 (1) (Akl) + (Bkl) = (Akl+ Bkl). (2) c(Akl) = (cAkl). 区分けされた行列の積の計算も形式的に行える (証明は略): 命題 2.3 区分けされた行列 A = (Akl), B = (Bkl) の積 AB は, 途中で現れる和や積が意味をもつ限り, Akl や Bkl をスカラーと見なして計算したものに一致する (ただし積の順序を交換してはならない). すな わち, Ckl= Ak1B1l+ Ak2B2l+· · · + AkqBql と置くとき A11 A12 . . . A1q A21 A22 . . . A2q . . . . Ap1 Ap2 . . . Apq B11 B12 . . . B1r B21 B22 . . . B2r . . . . Bq1 Bq2 . . . Bqr = C11 C12 . . . C1r C21 C22 . . . C2r . . . . Cp1 Cp2 . . . Cpr . 例 2.4 (1) A を (m, n) 型の行列, b1, b2, . . . , blを n 次のベクトルとするとき, A(b1 b2 . . . bl ) =(Ab1Ab2 . . . Abl ) . (2) a1, a2, . . . , an を m 次のベクトル, b1, b2, . . . , bn をスカラーとするとき, ( a1a2 . . . an ) b1 b2 .. . bn = a1b1+ a2b2+· · · + anbn= b1a1+ b2a2+· · · + bnan (cf. 注意 1.8). 問 2.5 a1, a2, . . . , an を m 次のベクトル, B = (bij) を (n, l) 型の行列とするとき, 次を示せ: ( a1a2 . . . an ) B = (∑n i=1 bi1ai n ∑ i=1 bi2ai . . . n ∑ i=1 bilai ) . 問 2.6 ブロック行列の転置は次のようになることを確認せよ: t A11 A12 . . . A1q A21 A22 . . . A2q . . . . Ap1 Ap2 . . . Apq = tA 11 tA21 . . . tAp1 tA 12 tA22 . . . tAp2 . . . . tA 1q tA2q . . . tApq . 2.2 正方行列 (n, n) 型の行列を n 次の正方行列という. A, B を n 次の正方行列とすると, 和 A + B は勿論のこと積 AB も常に定義できて再び n 次の正方行列となる. またスカラー倍 cA も n 次の正方行列となる (このよ うな状況を和・積・スカラー倍について閉じているという). 以下 A を k 回掛けたものを Ak で表す.
対角行列 正方行列 A = (aij) に対し, i = j であるような成分 a11, a22, a33, . . . を対角成分という. また, 対角成分以外の成分が全て 0 であるような正方行列を対角行列という. 特に, 対角成分が全て 1 であるよ うな対角行列を単位行列といい E で表す: E := 1
0
1 . ..0
1 (大きな 0 は成分に 0 が並ぶことを意味する). 次数を明示したいときには En と書くこともある. 対角行列との積について, 次が成り立つことは明らかであろう: 命題 2.7 a10
a2 . ..0
am b11 b12 . . . b1n b21 b22 . . . b2n . . . . bm1 bm2 . . . bmn = a1b11 a1b12 . . . a1b1n a2b21 a2b22 . . . a2b2n . . . . ambm1 ambm2 . . . ambmn , a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n . . . . am1 am2 . . . amn b10
b2 . ..0
bn = b1a11 b2a12 . . . bna1n b1a21 b2a22 . . . bna2n . . . . b1am1 b2am2 . . . bnamn . 系 2.8 EA = AE = A. 問 2.9 命題 2.7 の等式をブロック行列を用いて表せ. 三角行列 正方行列 A = (aij) で i > j であるような成分 a21, a31, a32, a41, a42, a43, . . . が全て 0 であるよ うなもの, すなわち ∗∗
∗ . ..0
∗ の形の正方行列を (上) 三角行列という. ここで∗ は任意のスカラーを表す.2 行列とベクトル II 17 次数が同じ三角行列の和やスカラー倍は三角行列である: a11 a12 . . . a1n a22 . . . a2n . .. ...
0
ann + b11 b12 . . . b1n b22 . . . b2n . .. ...0
bnn = a11+ b11 a12+ b12 . . . a1n+ b1n a22+ b22 . . . a2n+ b2n . .. ...0
ann+ bnn , c a11 a12 . . . a1n a22 . . . a2n . .. ...0
ann = c a11 c a12 . . . c a1n c a22 . . . c a2n . .. ...0
c ann . 積についても同様のことが成り立つ (証明は演習問題): 命題 2.10 次数が同じ三角行列の積は三角行列である: a11∗
a22 . ..0
ann b11∗
b22 . ..0
bnn = a11b11∗
a22b22 . ..0
annbnn . 2.3 逆行列 正方行列 A に対し, AA′ = A′A = E となるような行列 A′ が存在するとき, A は正則 (または可逆) で あるという. また, 上のような A′ を A の逆行列といい A−1 で表す. なお, A が (見かけ上) 2 個の逆行列 A′, A′′ をもったとすると, A′ = EA′= (A′′A)A′= A′′(AA′) = A′′E = A′′ と A′= A′′ が従うから: 命題 2.11 逆行列は (存在すれば) 一意的である. 注意 2.12 全ての正方行列が逆行列をもつ訳ではない. 例えば: (1) 0 だけからなる行や列をもつ行列は逆行列をもたない (cf. 問 1.10). (2) Ax = 0 となるようなベクトル x̸= 0 が存在するならば A は逆行列をもたない. 次の命題は容易に確かめられる: 命題 2.13 (1) A が正則ならば A−1 も正則で (A−1)−1= A. (2) A, B が共に正則ならば AB も正則で (AB)−1= B−1A−1. また, 命題 1.15 より:命題 2.14 A が正則ならばtA も正則で (tA)−1=t(A−1). 以下では (tA)−1=t(A−1) を単にtA−1 と書く. 逆行列の計算例 例 2.15 2 次正方行列 A = ( a b c d ) の逆行列が存在するためには ad− bc ̸= 0 であることが必要かつ十 分である. 実際, eA = ( d −b −c a ) と置くと A eA = eA A = (ad− bc)E となるから, ad − bc ̸= 0 であれば A−1= (ad− bc)−1A. また ade − bc = 0 であれば A ( d −c ) = A ( −b a ) = 0 となるから A は逆行列をもた ない (cf. 注意 2.12). 例 2.16 A がある整数 k > 0 に対して Ak = O をみたすならば, E + A + A2+· · · + Ak−1 は E− A の逆 行列を与える. 実際 (E− A)(E + A + A2+· · · + Ak−1) = (E + A + A2+· · · + Ak−1)(E− A) = E − Ak = E. 問 2.17 A を全ての成分が 1 であるような n 次正方行列とする. (1) k = 1, 2, 3, . . . に対して Ak を計算せよ. (2) E + A の逆行列を求めよ. 例 2.18 A, C をそれぞれ m 次, n 次の正則行列とするとき, 任意の (m, n) 型行列 B に対して ( A B O C )−1 = ( A−1 −A−1BC−1 O C−1 ) が成り立つ: ( A B O C ) ( A−1 −A−1BC−1 O C−1 ) = ( AA−1 −AA−1BC−1+ BC−1 O CC−1 ) = E, ( A−1 −A−1BC−1 O C−1 ) ( A B O C ) = ( A−1A A−1B− A−1BC−1C O C−1C ) = E. 2.4 演算の優先順位 ここまで触れて来なかったが, ひとつの式に行列の加法, スカラー乗法, 乗法や累乗が混在している場合に は, 数の場合と同様に 累乗 > 乗法 = スカラー乗法 > 加法 の順に計算するものと規約する (命題 1.5 の (4) と命題 1.11 の (1) より, 乗法とスカラー乗法はどちらを 優先しても構わない). 優先順位を指定するときに括弧を用いるのも数の場合と同様である. なお, 命題 1.5
2 行列とベクトル II 19 の (2) より, A + B + C のように加法が複数ある場合, どの加法を優先しても構わない (∑r i=1Ai といった 記法が許されるのも同様の理由による). また, 定理 1.12 より, ABC のように乗法が複数ある場合, どの乗 法を優先しても構わない.
演習問題
2.1 p = q = r = 2 の場合について, 命題 2.3 を証明せよ. すなわち ( A11 A12 A21 A22 ) ( B11 B12 B21 B22 ) = ( A11B11+ A12B21 A11B12+ A12B22 A21B11+ A22B21 A21B12+ A22B22 ) を示せ (A11, A12, A21, A22, B11, B12, B21, B22の型がみたすべき条件も述べること). 2.2 n 次の三角行列 N = 0 10
0 1 . .. . .. 0 10
0 について, Nk (k = 1, 2, 3, . . .) を計算せよ. 2.3 命題 2.10 を証明せよ. 2.4 (3, 2) 型の行列 A で条件 A ( 1 2 ) = 0 2 1 , A ( 3 5 ) = 1 3 4 をみたすものを求めよ. 2.5 正方行列 A = (aij) の対角成分の和 a11+ a22+ a33+· · · を A の せき 跡 (または対角和) といい tr A で 表す. (1) 次数が同じ正方行列 A, B とスカラー c に対し, 次が成り立つことを示せ: tr(A + B) = tr A + tr B, tr(cA) = c tr A. (2) A, B をそれぞれ (m, n) 型, (n, m) 型の行列とするとき, 次が成り立つことを示せ: tr(AB) = tr(BA).3
行列の基本変形 I
mn 個のスカラー aij (1≤ i ≤ m, 1 ≤ j ≤ n) と m 個のスカラー ui (1≤ i ≤ m) が与えられたとき, (∗) a11x1 + a12x2 +· · · + a1nxn = u1 a21x1 + a22x2 +· · · + a2nxn = u2 . . . . am1x1+ am2x2+· · · + amnxn= um をみたすスカラー x1, x2, . . . , xnを求めることを連立 1 次方程式 (∗) を解くといい, そのような x1, x2, . . . , xn を解という. また, u1= u2=· · · = um= 0 のとき, 方程式は斉次 (または同次) であるという. 斉次の方程 式は, 明らかに x1= x2=· · · = xn= 0 を解にもつが, これを自明な解という. 行列 A = (aij) とベクトル u = (ui), x = (xj) を用いれば, (∗) は Ax = u と書ける. A を方程式の係数 行列という. また, ブロック行列(A u)を拡大係数行列という. 3.1 方程式の基本変形 連立 1 次方程式に次の操作を施すことを基本変形という: (式換) 2 つの式を入れ換える. (式掛) ある式に 0 でないスカラーを掛ける. (式加) ある式に他の式のスカラー倍を加える. 方程式に基本変形を施しても, 明らかに解は変わらない. 従って, 基本変形を繰り返して方程式を “簡単” な 形にすることにより, 方程式を楽に解くことが期待される. 例 3.1 連立 1 次方程式 3y− 2z = 4 ⃝1 6x + 3y + 9z = 9 ⃝2 x + y + z = 1 ⃝3 に基本変形を繰り返すと −→ x + y + z = 1 ⃝1′:=⃝3 2x + y + 3z = 3 ⃝2′:=⃝ ÷ 32 3y− 2z = 4 ⃝3′:=⃝1 −→ x + y + z = 1 ⃝1′′:=⃝1′ − y + z = 1 ⃝2′′:=⃝2′−⃝1′× 2 3y− 2z = 4 ⃝3′′:=⃝3′ −→ x + y + z = 1 ⃝1′′′ :=⃝1′′ − y + z = 1 ⃝2′′′ :=⃝2′′ z = 7 ⃝3′′′ :=⃝3′′+⃝2′′× 33 行列の基本変形 I 21 が得られる. 最後の方程式を z, y, x の順に下から解いて x =−12 y = 6 z = 7 . 3.2 行列の基本変形と基本行列 例 3.1 の計算において, 方程式の拡大係数行列は 0 3 −2 4 6 3 9 9 1 1 1 1 −−−−−→行行1↔行2÷33 1 1 1 1 2 1 3 3 0 3 −2 4 −−−−−−−→行2−行1×2 1 1 1 1 0 −1 1 1 0 3 −2 4 −−−−−−−→行3+行2×3 1 1 1 1 0 −1 1 1 0 0 1 7 と変化している. 一般に, 連立 1 次方程式 Ax = u に基本変形を施して A′x = u′ が得られたとすると, 変 形後の拡大係数行列(A′ u′)は(A u)に次の操作を施したものになっている: (行換) 2 つの行を入れ換える. (行掛) ある行に 0 でないスカラーを掛ける. (行加) ある行に他の行のスカラー倍を加える. これらの操作を行に関する基本変形という. 同様に, 次の操作を列に関する基本変形という: (列換) 2 つの列を入れ換える. (列掛) ある列に 0 でないスカラーを掛ける. (列加) ある列に他の列のスカラー倍を加える. 基本行列 単位行列に基本変形を施して得られる行列 Sij := 1
0
. .. 0 . . . 1 < i .. . . .. ... 1 . . . 0 < j . ..0
1 (i̸= j), Ti(a) := 10
. .. 1 a < i 1 . . .0
1 (a̸= 0), Uij(a) := 10
. .. 1 . . . a < i . .. ... 1 < j . ..0
1 (i̸= j) を基本行列という. 基本行列を用いると, 基本変形を次のように言い替えることができる (証明は演習問題):命題 3.2 行 (列) に関する基本変形とは, 基本行列を左 (右) から掛ける操作に他ならない: Sij を左から掛ける←→ 第 i 行と第 j 行を入れ換える (行i ↔ 行j). Ti(a) を左から掛ける←→ 第 i 行に a を掛ける (行i× a). Uij(a) を左から掛ける←→ 第 i 行に第 j 行の a 倍を加える (行i+ 行j× a). Sij を右から掛ける←→ 第 i 列と第 j 列を入れ換える (列i ↔ 列j). Ti(a) を右から掛ける←→ 第 i 列に a を掛ける (列i× a). Uij(a) を右から掛ける←→ 第 j 列に第 i 列の a 倍を加える (列j+ 列i× a). 問 3.3 基本行列は正則で, それらの逆行列は次のようになることを確かめよ:
S−1ij = Sij, Ti(a)−1= Ti(a−1), Uij(a)−1= Uij(−a).
問 3.4 次が成り立つことを確かめよ: Sij= Tj(−1) Uij(1) Uji(−1) Uij(1). 3.3 列や行の掃き出し 行列 A = (aij) の (p, q) 成分 apq が 0 でないとすると, 各 i̸= p に対して 第 i 行から第 p 行の aiq apq 倍を引く (行i− 行p× aiq apq ) なる (行加) を施すことにより, 第 q 列を (p, q) 成分を除いて全て 0 にすることができる. この操作を (p, q) 成分をかなめ要 (または支点) とする列の掃き出しという. 行の掃き出しも同様に定義される. 例 3.5 行列 A = (aij) が a11̸= 0 をみたすとき, まず (1, 1) 成分を要として列を掃き出し, 続けて (1, 1) 成 分を要として行を掃き出せば A = a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n .. . . . . . an1 an2 . . . ann −−−→ a11 a12 . . . a1n 0 a′22 . . . a′2n .. . . . . . 0 a′n2 . . . a′nn −−−→ a11 0 . . . 0 0 a′22 . . . a′2n .. . . . . . 0 a′n2 . . . a′nn と変形される. 問 3.6 どのような基本変形 (掃き出し) を行っているのかを解読せよ: 1 −1 0 0 1 −1 1 1 1 −→ 1 −1 0 0 0 −1 1 2 1 −→ 1 −1 0 0 0 −1 1 2 0 −→ 0 −1 0 0 0 −1 3 2 0 −→ 0 −1 0 0 0 −1 3 0 0 .
3 行列の基本変形 I 23 任意の行列 A̸= O は, 適当な (行換) と (列換) により (1, 1) 成分が 0 でないように変形できるが, さら に (行掛) (または (列掛)) により (1, 1) 成分が 1 であるようにできる. そのように変形した後に上の例で述 べたような列や行の掃き出しを行えば, 次の形に変形できる: 1 0 . . . 0 0 .. . A′ 0 . A′ ̸= O の場合には, 同様の操作によって, さらに次の形に変形できる: 1 0 0 . . . 0 0 1 0 . . . 0 0 0 .. . ... A′′ 0 0 (第 1 行と第 1 列は変化しないことに注意せよ). このような操作を繰り返せば, 最終的には (i, i) 成分 (i = 1, 2, . . . , r) だけが 1 で残りの成分が全て 0 であるような行列が得られる. すなわち: 定理 3.7 任意の行列は, 基本変形を繰り返すことによって次の形に変形できる: ( E O O O ) . 例 3.8 0 2 6 −2 1 3 0 4 2 5 −3 9 −−−−−→行1↔行2 1 3 0 4 0 2 6 −2 2 5 −3 9 −−−−−−−→行3−行1×2 1 3 0 4 0 2 6 −2 0 −1 −3 1 −−−−−−−→列列24−列−列11×3×4 1 0 0 0 0 2 6 −2 0 −1 −3 1 行2÷2 −−−−→ 1 0 0 0 0 1 3 −1 0 −1 −3 1 −−−−−→行3+行2 1 0 0 0 0 1 3 −1 0 0 0 0 −−−−−−−→列列3−列4+列2×32 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 . 注意 3.9 A を (m, n) 型の行列とするとき, 定理 3.7 と命題 3.2 より Qt· · · Q2Q1A P1P2· · · Ps= ( Er O O O ) なる n 次の基本行列 P1, P2, . . . , Ps と m 次の基本行列 Q1, Q2, . . . , Qt ならびに r が存在することがわ かる. ここで, 問 3.3 より各 Pi は正則であるから, P := P1P2· · · Ps は n 次の正則行列である. 同様に Q := Qt· · · Q2Q1 は m 次の正則行列で, 上の等式は次のように書き直せる: QAP = ( Er O O O ) .
正則行列の場合 注意 3.9 において A は n 次の正則行列 (従って m = n) であるとする. このとき QAP も n 次の正則行列となるから, r = n でなければならない (cf. 注意 2.12). つまり QAP = E となり, A = Q−1P−1= Q−11 Q−12 · · · Q−1t Ps−1· · · P2−1P1−1 が成り立つ. ここで, 問 3.3 より Pi−1 や Q−1j も基本行列であるから: 系 3.10 任意の正則行列は基本行列の積に分解できる. 上の系により, 行 (列) に関する基本変形を繰り返すことは正則行列を左 (右) から掛けることに他ならな いことがわかる. さらに, QAP = E より P QA = E, すなわち P1P2· · · PsQt· · · Q2Q1A = E が成り立つことがわかるから: 系 3.11 任意の正則行列は, 行に関する基本変形だけを繰り返すことによって単位行列に変形できる.
演習問題
3.1 連立 1 次方程式 Ax = u が相異なる解 x = x0, x1 をもつならば, 任意のスカラー t に対し, x = (1− t)x0+ tx1 も Ax = u の解を与えることを示せ. 3.2 命題 3.2 を証明せよ. 3.3 A, B を同じ型の行列とするとき, (行加) と (列加) を繰り返すことによって次の変形ができることを 示せ: ( A B B A ) −→ ( A + B B O A− B ) . 3.4 例 3.8 の計算を利用して, Q 0 2 6 −2 1 3 0 4 2 5 −3 9 P = 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 となるような 4 次の正則行列 P と 3 次の正則行列 Q を求めよ. 3.5 次の正則行列を基本行列の積として表せ: ( 1 2 0 3 ) , ( 0 1 2 4 ) , ( 1 2 3 4 ) .4 行列の基本変形 II 25
4
行列の基本変形 II
4.1 階段行列への変形 (m, n) 型の行列 A = (aij) に対し, 次の条件 (a)–(c) をみたす j1, j2, . . . , jr (1≤ r ≤ m) が存在するとき, A は r 階の階段行列であるという: (a) 1≤ j1< j2<· · · < jr≤ n; (b) i≤ r ならば ai1= ai2=· · · = ai;ji−1= 0, aiji̸= 0; (c) i > r ならば ai1= ai2=· · · = ain= 0. (j1, j2, . . . , jr) を A の型 (行列の型と混同しないこと) といい, a1j1, a2j2, . . . , arjr を主成分という. なお, 零行列は 0 階の階段行列であると定める. 注意 4.1 上の定義では r≤ m としているが, 条件 (a) より r ≤ n も成り立つ. 例 4.2 次の形の行列は, いずれも階段行列である: † ∗ ∗ 0 0 0 0 0 0 , † ∗ ∗ 0 † ∗ 0 0 0 , † ∗ ∗ 0 † ∗ 0 0 † , † ∗ ∗ 0 0 † 0 0 0 , 0 † ∗ 0 0 0 0 0 0 , 0 † ∗ 0 0 † 0 0 0 , 0 0 † 0 0 0 0 0 0 . ただし† は 0 でないスカラーを表す (これらが主成分である). それぞれの型は次の通り: (1), (1, 2), (1, 2, 3), (1, 3), (2), (2, 3), (3). 任意の行列 A̸= O は, (行換) を適当に施すことにより 0
a1j1 ∗ . . . ∗ ∗ .. .∗
∗ (a1j1 ̸= 0) なる形にできるが, 続けて (1, j1) 成分を要として列を掃き出せば次の形に変形できる: 0
a1j1 ∗ . . . ∗ 0 .. . A′ 0 . こうして得られた行列 A′ が零行列であれば, 上の行列は階段行列である. A′ ̸= O のときには, 2 行目以下 に対して同様の操作を繰り返せば, 有限回の操作の後に階段行列へと変形できる. すなわち: 定理 4.3 任意の行列は, 行に関する基本変形を繰り返すことによって階段行列に変形できる.階段行列の簡約化 (j1, j2, . . . , jr) 型の階段行列 A = (aij) は, (r, jr) 成分を要として列を掃き出せば A = ∗ A′ ...
∗
∗ 0 . . . 0 arjr ∗ . . . ∗0
−−−→ 0 A′ ...∗
0 0 . . . 0 arjr ∗ . . . ∗0
と変形できる. また, この操作で A′ (これは r− 1 階の階段行列である) の部分は変わらない. 従って, 続け て (i, ji) 成分を要とする列の掃き出しを i = r− 1, r − 2, . . . , 2 に対して行えば, 主成分の上 (ならびに下) の成分が全て 0 であるような階段行列が得られる. この階段行列に (行掛) を適当に施せば, 主成分を全て 1 にすることができる (こちらの変形を先に行っても構わない). 以上の操作を階段行列の簡約化という. 注意 4.4 行列を階段行列に変形する際に主成分の上の成分を全て 0 にすることも可能であるが, この方法 は効率的ではない. 例えば † ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ −−−→ † ∗ ∗ 0 † ∗ 0 ∗ ∗ −−−→ † 0 ∗ 0 † ∗ 0 0 † −−−→ † 0 0 0 † 0 0 0 † なる変形は † ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ ∗ −−−→ † ∗ ∗ 0 † ∗ 0 ∗ ∗ −−−→ † ∗ ∗ 0 † ∗ 0 0 † −−−→ † ∗ 0 0 † 0 0 0 † −−−→ † 0 0 0 † 0 0 0 † よりも計算量が多い (乗法と加法を行う回数を比較してみよ). 例 4.5 例 4.2 の階段行列を簡約化すると, それぞれ次の形になる: 1 ∗ ∗ 0 0 0 0 0 0 , 1 0 ∗ 0 1 ∗ 0 0 0 , 1 0 0 0 1 0 0 0 1 , 1 ∗ 0 0 0 1 0 0 0 , 0 1 ∗ 0 0 0 0 0 0 , 0 1 0 0 0 1 0 0 0 , 0 0 1 0 0 0 0 0 0 . 問 4.6 n 次の正則行列 A に行に関する基本変形を繰り返して r 階の階段行列 A′ が得られたとする. (1) r = n であることを示せ. (2) A′ の型は (1, 2, . . . , n) であることを示せ. (3) A′ を簡約化して得られる行列は単位行列であることを示せ (cf. 系 3.11).4 行列の基本変形 II 27 4.2 掃き出し法 A を (m, n) 型の行列, u を m 次のベクトルとし, 連立 1 次方程式 Ax = u を解くことを考える. いま m 次の正則行列 Q をとり, A′ = QA, u′ = Qu と置く. このとき, Ax = u が成り立つことと A′x = u′ が成り立つことは同値である. 従って, Q を適切に選ぶことによって A′ が “簡単” な形にできれ ば, 方程式 Ax = u を解くことは, より “易しい” 方程式 A′x = u′ を解くことに帰着できることになる. さ て, 命題 3.2 と系 3.10 より, 行列に正則行列を左から掛けることは行に関する基本変形を繰り返すことに他 ならない. また, 拡大係数行列(A u), (A′ u′)を作るとき, ( A′ u′)=(QA Qu)= Q(A u) となっている. 以上より, 方程式 Ax = u を解くことは次のような手順に簡易化できることになる: (A) 拡大係数行列(A u)を作る; (B) 行に関する基本変形を繰り返して(A u)を(A′ u′)なる形に変形する (ただし A′ は “簡単”); (C) 方程式 A′x = u′ を解く. “簡単” な A′ としては, 例えば階段行列がとれる (定理 4.3). A が正則行列の場合には A′ として単位行 列をとることもできる (cf. 系 3.11, 問 4.6). A′ が階段行列であるように変形すれば, 方程式 A′x = u′ は xn, xn−1, . . . , x1 の順で容易に解くことができる (A′ が単位行列のときには, (C) が省けて, 解 x = u′ が得 られる). このような解法を掃き出し法 (または Gauss の消去法) という. 注意 4.7 A′が r 階の階段行列であるとき, 方程式 A′x = u′が解をもつためには(A′u′)も r 階の階段行列で あることが必要である. すなわち, u′ = (u′i) とするとき, 解が存在するためには u′r+1= u′r+2=· · · = u′m= 0 でなければならない (cf. 問 1.10). 例 4.8 (1) A = 1 2 −1 0 1 2 2 3 −1 1 3 1 , u = a 2a− 1 a + 2 2a + 1 とすると, 行に関する基本変形 ( A u)= 1 2 −1 a 0 1 2 2a− 1 2 3 −1 a + 2 1 3 1 2a + 1 行3−行1×2 −−−−−−−→ 行4−行1 1 2 −1 a 0 1 2 2a− 1 0 −1 1 −a + 2 0 1 2 a + 1 行3+行2 −−−−−→ 行4−行2 1 2 −1 a 0 1 2 2a− 1 0 0 3 a + 1 0 0 0 −a + 2 より A′= 1 2 −1 0 1 2 0 0 3 0 0 0 , u ′ = a 2a− 1 a + 1 −a + 2
とできる. 従って, 方程式 A′x = u′ が解をもつためには−a + 2 = 0, すなわち a = 2 でなければならない. a = 2 のとき, 方程式 A′x = u′ は x1+ 2x2− x3= 2 x2+ 2x3= 3 3x3= 3 と同値で, これを解くと, x3 = 1, x2 = 1, x1= 1 が得られる. なお, ( A′ u′)を簡約化すると次のように なる: 1 2 −1 2 0 1 2 3 0 0 3 3 0 0 0 0 行3÷3 −−−−→ 1 2 −1 2 0 1 2 3 0 0 1 1 0 0 0 0 行1+行3 −−−−−−−→ 行2−行2×2 1 2 0 3 0 1 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 行1−行2×2 −−−−−−−→ 1 0 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 . ここまで変形すれば, 方程式は x1 = 1 x2 = 1 x3= 1 と既に解けた形になっている. (2) A = 0 1 4 6 1 2 5 −2 2 3 6 −8 , u = 5 2 3 とすると, 行に関する基本変形 ( A u)= 0 1 4 6 5 1 2 5 −2 2 2 3 6 −8 3 −−−−−→行1↔行2 1 2 5 −2 2 0 1 4 6 5 2 3 6 −8 3 行3−行1×2 −−−−−−−→ 1 2 5 −2 2 0 1 4 6 5 0 −1 −4 −4 −1 −−−−−→行3+行2 1 2 5 −2 2 0 1 4 6 5 0 0 0 2 4 より A′ = 1 2 5 −2 0 1 4 6 0 0 0 2 , u′ = 2 5 4 とできる. 方程式 A′x = u′ を解いて x = 20 −7 0 2 + t 3 −4 1 0
4 行列の基本変形 II 29 (t は任意のスカラー) が得られる. なお,(A′ u′)を簡約化すると次のようになる: 1 2 5 −2 2 0 1 4 6 5 0 0 0 2 4 −−−−−−−→行行2−行1+行3×33 1 2 5 0 6 0 1 4 0 −7 0 0 0 2 4 −−−−−−−→行1行−行3÷22×2 1 0 −3 0 20 0 1 4 0 −7 0 0 0 1 2 . ここまで変形すれば, 方程式は x1 − 3x3 = 20 x2+ 4x3 =−7 x4= 2 , すなわち x1 = 20 + 3x3 x2 =−7 − 4x3 x4= 2 という形になっている. (3) A = 1 2 2 1 4 8 9 7 3 6 8 9 , u = −1 0 5 とすると, 行に関する基本変形 ( A u)= 1 2 2 1 −1 4 8 9 7 0 3 6 8 9 5 −−−−−−−→行行23−行−行11×4×3 1 2 2 1 −1 0 0 1 3 4 0 0 2 6 8 −−−−−−−→行3−行2×2 1 2 2 1 −1 0 0 1 3 4 0 0 0 0 0 より A′= 1 2 2 1 0 0 1 3 0 0 0 0 , u′ = −1 4 0 とできる. 方程式 A′x = u′ を解いて x = −9 0 4 0 + s −2 1 0 0 + t 5 0 −3 1 (s, t は任意のスカラー) が得られる. なお,(A′ u′)を簡約化すると次のようになる: 1 2 2 1 −1 0 0 1 3 4 0 0 0 0 0 −−−−−−−→行1−行2×2 1 2 0 −5 −9 0 0 1 3 4 0 0 0 0 0 . ここまで変形すれば, 方程式は x1+ 2x2 − 5x4=−9 x3+ 3x4= 4 , すなわち x1 =−9 − 2x2+ 5x4 x3= 4 − 3x4 という形になっている.
斉次方程式の場合 方程式が斉次, すなわち u = 0 であるときには, どのような (行に関する) 基本変形を 繰り返しても u′= 0 となるから, 拡大係数行列を考える必要はない. 従って, 上で述べた手順 (A)–(C) は 次のように簡略化できる: (B)′ 行に関する基本変形を繰り返して A を “簡単” な A′ に変形する; (C)′ 方程式 A′x = 0 を解く. 問 4.9 例 4.8 で扱った行列 A について, 斉次方程式 Ax = 0 を解け. 4.3 逆行列の計算 正方行列 A の逆行列は, 行に関する基本変形を用いて, 次の手順で求めることができる: (A) ブロック行列(A E)を作る; (B) 行に関する基本変形を繰り返して (A E)を(cE B)なる形に変形する (c は 0 でないスカラー); (C) このとき c−1B が A の逆行列となっている. なお, もし上の (B) の計算が途中で行き詰まれば, A は正則ではないということになる. 問 4.10 上の手順で求められた c−1B が実際に A の逆行列を与えることを確かめよ. また, “(B) の計算が 途中で行き詰まる” とは, 具体的にはどのような状況を意味するのか ? 例 4.11 行に関する基本変形 2 1 1 1 0 0 1 2 1 0 1 0 1 1 2 0 0 1 −−−−−→行行11+行+行23 4 4 4 1 1 1 1 2 1 0 1 0 1 1 2 0 0 1 −−−−→行行23×4×4 4 4 4 1 1 1 4 8 4 0 4 0 4 4 8 0 0 4 行2−行1 −−−−−→ 行3−行1 4 4 4 1 1 1 0 4 0 −1 3 −1 0 0 4 −1 −1 3 −−−−−→行行11−行−行23 4 0 0 3 −1 −1 0 4 0 −1 3 −1 0 0 4 −1 −1 3 より, 2 1 1 1 2 1 1 1 2 −1 =1 4 3 −1 −1 −1 3 −1 −1 −1 3 .
演習問題
4.1 連立 1 次方程式の係数行列に列に関する基本変形を施すことは, 方程式にどのような操作を行うこと に対応するか ?4 行列の基本変形 II 31 4.2 連立 1 次方程式 2 1 1 1 2 −1 3 1 2 x y z = a a + 1 a− 1 が解をもつための条件を求めよ. また, 求めた条件の下で方程式を解け. 4.3 次の連立 1 次方程式を解け: (1) 1 2 −3 2 1 −3 3 2 −5 x y z = 4 5 8 . (2) ( 1 3 5 1 5 9 ) x y z = ( 2 4 ) . (3) ( 1 1 1) x y z = 1. 4.4 連立 1 次方程式 a + 3 a− 4 a + 7 a + 1 a− 1 a + 2 a + 2 a− 3 a + 5 a + 2 a− 6 a + 8 x y z = a + 6 a + 2 a + 4 a + 4 がただひとつの解をもつための条件を求めよ. また, 求めた条件の下で方程式を解け. 4.5 次の行列の逆行列を求めよ (存在しないときには, その理由を説明せよ): (1) 1 1 1 0 1 2 0 0 1 , 0 1 0 −1 0 1 0 −1 0 , 2 −1 0 −1 2 −1 0 −1 2 , 0 1 1 −1 0 1 −1 −1 0 . (2) 1 1 1 1 0 1 2 3 0 0 1 3 0 0 0 1 , 0 1 0 0 −1 0 1 0 0 −1 0 1 0 0 −1 0 , 2 −1 0 0 −1 2 −1 0 0 −1 2 −1 0 0 −1 2 , 0 1 1 1 −1 0 1 1 −1 −1 0 1 −1 −1 −1 0 .
5
行列と線型写像
以下An で n 次の (列) ベクトル全体のなす集合を表す. 5.1 線型写像 写像 f :An → Am が任意の x, y∈ An とスカラー t に対して f (x + y) = f (x) + f (y), f (tx) = tf (x) をみたすとき, f は線型であるという. 例 5.1 A を (m, n) 型の行列とするとき, x∈ An に Ax∈ Am を対応させる写像 φA:An ∋ x 7−→ Ax ∈ Am は線型である. 実際, 命題 1.11 よりφA(x + y) = A(x + y) = Ax + Ay = φA(x) + φA(y), φA(tx) = A(tx) = tAx = t φA(x).
例 5.2 2 次のベクトル x を原点を中心として反時計回りに θ だけ回転したものを fθ(x) とするとき, 写像 fθ:A2∋ x 7→ fθ(x)∈ A2 は線型である. 1 > K i I 0 x y x + y fθ(x) fθ(y) fθ(x + y) = fθ(x) + fθ(y) 1 1 K K 0 x fθ(x) tx fθ(tx) = t fθ(x) 例 5.3 2 次のベクトル x を原点を通る直線 l に関して対称に折り返したものを gl(x) とするとき, 写像 gl:A2∋ x 7→ gl(x)∈ A2 は線型である. 1 U z Y O 0 l x y x + y gl(x) gl(y) gl(x + y) = gl(x) + gl(y) 1 1 0 l x tx gl(x) gl(tx) = t gl(x) 次の 2 つの命題は, 線型写像の定義から容易に示される (証明は演習問題):