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Jordan 標準形の計算

ドキュメント内 線型代数学入門 (ページ 148-152)

n 次正方行列A の固有多項式δA(t) = (t−α1)(t−α2)· · ·(t−αn)が重根をもたないとき,A は対角化 可能で, Jordan標準形はJ11)⊕J12)⊕ · · · ⊕J1n)で与えられる. しかし,定理E.1や例E.6からわ かるように,固有多項式が重根をもつ場合にはJordan 標準形がδA(t)から一意的に定まる訳ではない. と

ころで,注意D.4より,AのJordan標準形の最小多項式はAの最小多項式に一致する. このことを利用す

ればJordan標準形の候補を絞り込む(場合によっては決定する)ことができる.

E.7 3 次正方行列の Jordan 標準形は, 最小多項式によって完全に決定される(α, β, γ は相異なるスカ ラーを表す):

Jordan標準形J 固有多項式δJ(t) 最小多項式εJ(t)

J1(α)⊕J1(β)⊕J1(γ) (t−α)(t−β)(t−γ) (t−α)(t−β)(t−γ) J1(α)⊕J1(α)⊕J1(β) (t−α)2(t−β) (t−α)(t−β) J2(α)⊕J1(β) (t−α)2(t−β) (t−α)2(t−β)

J1(α)⊕J1(α)⊕J1(α) (t−α)3 t−α

J2(α)⊕J1(α) (t−α)3 (t−α)2

J3(α) (t−α)3 (t−α)3

従ってAのJordan標準形J は以下のようにして求めることができる:

(1) δA(t) = (t−α)(t−β)(t−γ)のときJ =J1(α)⊕J1(β)⊕J1(γ).

(2) δA(t) = (t−α)2(t−β)のとき

(A−αE)(A−βE) =O = J =J1(α)⊕J1(α)⊕J1(β);

(A−αE)(A−βE)̸=O = J =J2(α)⊕J1(β).

(3) δA(t) = (t−α)3のとき

A−αE=O = J =J1(α)⊕J1(α)⊕J1(α);

A−αE̸=O かつ (A−αE)2=O = J =J2(α)⊕J1(α);

(A−αE)2̸=O = J =J3(α).

注意E.8 4 次以上の行列に対しては, Jordan 標準形は最小多項式によって決定されるとは限らない. 例 えば

J2(α)⊕J1(α)⊕J1(α) =





α 1 0 0

0 α 0 0

0 0 α 0

0 0 0 α





, J2(α)⊕J2(α) =





α 1 0 0

0 α 0 0

0 0 α 1

0 0 0 α





 の最小多項式は共に(t−α)2 である.

一般の n次正方行列の Jordan標準形は,次の定理(証明は演習問題)を用いて求めることができる:

E Jordan標準形 149 定理E.9 記号や仮定は定理E.5と同じとするとき, 各iに対して次が成り立つ:

n−rank(A−αiE)k =

si

j=1

min(mij, k) (k= 1,2,3, . . .).

ここでmin(mij, k)mijkの小さい方を表す.

上の定理でk= 1とすると, n−rank(A−αiE) = dimWi)とmin(mij,1) = 1より,次を得る:

E.10 dimWi) =si. 例 E.11 多項式

f(t) = (t−α1)m1(t−α2)m2· · ·(t−αr)mr1, α2, . . . , αrは相異なるスカラー)

の同伴行列C に上の系を適用すると,例14.7よりdimWi) = 1であるから,si= 1がわかる. よってC のJordan標準形は

Jm11)⊕Jm22)⊕ · · · ⊕Jmrr) で与えられる.

演習問題

E.1 正方行列A1, A2, . . . , Ar に対し,次が成り立つことを示せ:

rank(A1⊕A2⊕ · · · ⊕Ar) = rankA1+ rankA2+· · ·+ rankAr. E.2 (1) k= 1,2,3, . . .に対してJm(α)k を計算せよ.

(2) Jm(α)の最小多項式は(t−α)m であることを示せ.

E.3 n次正方行列Aがスカラーαに対して(A−αE)n=O ならびに(A−αE)n1̸=O をみたすとし, (A−αE)n1x̸=0なる(n次の)ベクトルxをとってxj= (A−αE)njx(1≤j≤n)と置く.

(1) x1,x2, . . . ,xn は 1次独立であることを示せ. (2) P =(

x1x2 . . . xn

)と置くとき,P1AP を計算せよ.

E.4 定理E.9を証明せよ.

E.5 次の行列のJordan標準形を求めよ:



2 1 1

0 4 2

0 2 0



,



1 2 1

1 0 4

1 2 5



.

F 幾何学的説明

§7.4で述べたように,連立1次方程式Ax=uが解x0 をもつとき,解の全体はx0+ KerφAにより与え

られる(命題7.19). 本節では,このような形をしたRn の部分集合の幾何学を概説する. 以下ではスカラー

の範囲はRとし,数ベクトル空間Rn を標準的な内積により計量ベクトル空間と見なす.

F.1 部分アフィン空間

Rn の部分ベクトル空間Wx0Rn によってx0+W ={x0+y; y∈W}と表せるような集合を (Rn の)部分アフィン空間(またはアフィン部分空間)という.

z

*

0

x0

y

x0+y

W

L=x0+W

L=x0+W を部分アフィン空間,x0=x0+y∈L(y ∈W)とすると, 任意のy∈W に対して x0+y= (x0+y) +y=x0+ (y+y)x0+W

ならびに

x0+y= (x0y) +y=x0+ (y+y)x0+W

が成り立つから,x0+W =x0+W がわかる. また,x=x0+y, x=x0+y∈L(y,y∈W)とすると,

xx = (x0+y)(x0+y) =yy ∈W

が成り立つから,{xx ; x,x∈L} ⊂W. 逆に,任意の y∈W に対し, x=x0+y, x=x0 と置けば y=xxx,x∈Lが成り立つから, W ⊂ {xx ; x,x∈L}. 以上より:

命題F.1 部分アフィン空間L=x0+W について:

(1) 任意の x0∈L に対してL=x0+W. (2) W ={xx ; x,x∈L}.

上の命題の (2)より,部分ベクトル空間W は部分アフィン空間Lから一意的に定まることがわかる. WL に付随する部分ベクトル空間という. また,W の次元をLの次元ともいい, dimLで表す.

F.2 部分アフィン空間L=x0+WL =x0+W について,以下の問いに答えよ:

F 幾何学的説明 151

(1) 次の同値性を示せ:

L⊂L ⇐⇒ W⊂W かつ x0x0∈W . (2) W⊂W かつx0x0̸∈W であればL∩L=となることを示せ.

F.3 1次元の部分アフィン空間,すなわちx0+u={x0+tu; t∈R}(u̸=0)の形をしたRn の部 分集合を直線といい, uをその方向ベクトルという.

: 0

x0

u u

x0+u

x0= (x(0)i ), u= (ui)とすると, x= (xi)Rn に対して xx0+u⟩ ⇐⇒ x1−x(0)1

u1

= x2−x(0)2 u2

=· · ·= xn−x(0)n

un

が成り立つ. ただしui= 0のときにはxi−x(0)i = 0であると見なす. 最後の等式を直線x0+uの方程 式と呼ぶ. なお, 2次元の部分アフィン空間を平面という.

L=x0+W を Rn の部分アフィン空間とし,r= dimL(= dimW), s=n−r と置く.

y1,y2, . . . ,yrW の基底とし,xj =x0+yj (1≤j≤r)と置く. このとき,x0ならびにx1,x2, . . . ,xrL に属する. また,任意のx∈Lはスカラーt1, t2, . . . , tr を用いて

x=x0+

r j=1

tjyj =x0+

r j=1

tj(xjx0) = (

1

r j=1

tj )

x0+

r j=1

tjxj と表せて,t0= 1r

j=1tj と置けば∑r

j=0tj = 1が成り立つ. 同様の計算により,スカラーt0, t1, t2, . . . , tr

が∑r

j=0tj = 1 をみたすならば∑r

j=0tjxj L となることもわかる. 従って, L は∑r

j=0tjxj (ただし

r

j=0tj = 1)なる形のベクトルの全体に一致する.

WW の直交補空間とする. 問 17.3より, dimW = s, (W) = W となっている. これより, a1,a2, . . . ,asW の基底とすると,xRn に対して

x∈L ⇐⇒ (ai,xx0) = 0 (1≤i≤s) ⇐⇒ taix=taix0 (1≤i≤s) が成り立つことがわかる. A=(

a1 a2 . . . as

)と置けば,最後の条件はtAx=tAx0とも書けるから,Lは 連立1次方程式tAx=tAx0 の解の全体に一致する.

部分アフィン空間との距離 W をRn の部分ベクトル空間, xRn とし,xxW への直交射影と する:

x=x+x′′, x∈W, x′′∈W.

このとき, (W) =W より,x′′xW への直交射影となっている. また,注意16.15で述べたよう に,yW の中で動かすとき,xyy=x のときに最小値x′′をとる. つまりxyの最小値は xWへの直交射影のノルムに一致する. 同様に考えることにより,yを部分アフィン空間L=x0+W の中で動かしたときのxy の最小値はxx0W への直交射影のノルムに一致することがわかる.

この最小値をxL との距離という.

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