• 検索結果がありません。

Toeplitz の定理

ドキュメント内 線型代数学入門 (ページ 114-125)

正方行列Aがユニタリ行列によって対角化されるとき,すなわちPAP が対角行列となるようなユニタ リ行列 P が存在するとき,A=P(PAP)P は正規行列である(cf.注意18.9,問 18.10). つまり,ユニタ リ行列で対角化されるためには正規行列であることが必要である. 逆に:

定理18.19 (Toeplitz の定理) 任意の正規行列はユニタリ行列で対角化可能である. この定理は,定理18.7と次の補題(および注意18.9)から直ちに従う:

補題18.20 正規行列Aが三角行列でもあれば,Aは対角行列である.

A= (aij)をn次として,上の補題は以下のように示される:

A A=AAの両辺の(i, i)成分を比較して

n k=1

aikaik=

n k=1

akiaki.

ここで,Aが三角行列であることよりi > j ならばaij= 0 が成り立つから,

n k=i

|aik|2=

i k=1

|aki|2.

この式でi= 1とすると

n k=1

|a1k|2=|a11|2

18 正規行列 115 となり,a1k = 0 (2≤k≤n)がわかる. またi= 2とすると

n k=2

|a2k|2=|a12|2+|a22|2

となり,a2k = 0 (3≤k≤n)がわかる. 以下同様にしてaij = 0 (i < j)がわかる.

18.21 t41 の同伴行列

C=





0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0





は実直交行列で,δC(t) =t41 = (t1)(t+ 1)(t−i)(t+i). ただし i=

1 は虚数単位を表す. 固有値 1,1, i,−iに関する固有ベクトルとしては

x=





 1 1 1 1





, y=





 1

1 1

1





, z=





 1

i

1

−i





, w=





 1

−i

1 i





 がとれる. このときP := 12(

x y z w)

はユニタリ行列で,

PCP =





1 0 0 0

0 1 0 0

0 0 i 0

0 0 0 −i





.

実行列の場合 実正方行列Aが実直交行列によって対角化されるとき,すなわちtP AP が対角行列となる ような実直交行列P が存在するとき,A=P(tP AP)tP は実対称行列である. つまり,実直交行列で対角化 されるためには実対称行列であることが必要である. 逆に,Aを実対称行列とすると,δA(t)は実数根のみを もつ(命題18.16)からtP AP が三角行列となるような実直交行列P が存在する(定理18.7)が,そのとき

tP AP は対角行列となっている. すなわち:

定理18.22 実対称行列は実直交行列で対角化可能である.

18.23 例18.2で扱った

A= (

cosθ sinθ sinθ cosθ

)

は対称な実直交行列で,δA(t) =t21 = (t1)(t+ 1). 固有値1,1 に関する固有ベクトルとしては x=

cosθ2 sinθ2

, y=

sinθ2 cosθ2

 がとれる. このときP :=(

x y)

は実直交行列で,

tP AP =

(1 0 0 1

) .

なお,a= cosθ2, b= sinθ2 と置くと

A=P (

1 0

0 1 )

tP =

( a −b

b a

) (

1 0

0 1 ) (

a b

−b a )

= (

a2−b2 2ab 2ab −a2+b2

)

(2倍角の公式から直接導いてもよい). つまり,Aに対応するR2の線型変換とは,直線⟨t(

cosθ2,sinθ2)⟩

に 関する折り返しに他ならない(cf.例 5.3,例5.9).

演習問題

18.1 命題18.4を証明せよ.

18.2 P|P|= 1なるn次実直交行列とするとき,x1,x2, . . . ,xn1Rn に対して次が成り立つことを 示せ:

(Px1)×(Px2)× · · · ×(Pxn1) =P(x1×x2× · · · ×xn1).

18.3 (1) 正則行列A, B に対して次の同値性を示せ:

AB1 はユニタリ行列 ⇐⇒ AA=BB.

(2) 共に1 次独立であるようなx1,x2, . . . ,xn Kny1,y2, . . . ,yn Kn に対して次の条件 (a), (b) は互いに同値であることを示せ:

(a) Pxi=yi (1≤i≤n)となるような(n次)ユニタリ行列P が存在する.

(b) G(x1,x2, . . . ,xn) =G(y1,y2, . . . ,yn).

18.4 (1) Aを歪Hermite行列とするとき,E+Aは正則であること, ならびに(E−A)(E+A)1 はユ ニタリ行列であることを示せ.

(2) P|E+P| ̸= 0 なるユニタリ行列とするとき, (E−P)(E+P)1 は歪Hermite行列であること を示せ.

18.5 n次の正規行列Aがユニタリ行列P =(

x1x2 . . . xn

)によって

PAP =





α1

0

α2

. ..

0

αn





と対角化されるとき, 多項式f(t)に対して次が成り立つことを示せ:

f(A) =f1)x1x1+f2)x2x2+· · ·+f(αn)xnxn.

19 2次形式 117

19 2 次形式

本節ではK=Rの場合だけを考える. また,実直交行列,実対称行列を単に直交行列,対称行列という.

19.1 2次形式

実数を係数とする変数x1, x2, . . . , xn に関する斉次(同次) 2次式

n i=1

aiix2i + 2 ∑

1i<jn

aijxixj

を (実) 2 次形式という. 変数をまとめて x := t(x1, x2, . . . , xn) と書き, n 次の正方行列 A = (aij) を aij :=aji (1≤j < i≤n)により定める. このときA は対称行列で, 上の2 次形式はtxAxと表せる. A が対角行列であるとき, 2次形式txAxは対角形であるという.

19.1 (1)

ax2+ 2bxy+cy2=( x y)(

a b b c

) ( x y

) . (2)

ax2+by2+cz2+ 2(dxy+exz+f yz) =( x y z)



a d e

d b f

e f c





x y z



.

19.2 2次形式の標準形

対称行列Aに対し,定理18.22より

tP AP =





α1

0

α2

. ..

0

αn





となるようなn次直交行列P が存在する. 従ってx =t(x1, x2, . . . , xn)をx=Px (すなわちx=tPx) により定めれば, 2次形式は

txAx=t(Px)A(Px) =tx(tP AP)x=

n i=1

αi(xi)2

と(x1, x2, . . . , xn に関して)対角形に変形される. 得られた対角形の2次形式を標準形という.

注意19.2 α1, α2, . . . , αnAの固有値であるからP の選び方には依らない. 従って2次形式の標準形は

変数の順序付けの違いを除いて一意的に定まる.

19.3 上の直交行列P として,行列式が1のものがとれることを示せ. 以上をまとめて:

定理19.4 任意の2 次形式は直交行列による変数変換によって対角形に変形できる. また直交行列は行列 式が1のものがとれる.

19.5 対称行列

A=



a b b

b a b

b b a



 (b̸= 0)

の固有多項式はδA(t) =(

t−(a+ 2b))(

t−(a−b))2

で,

p:=



 1 1 1



は固有値a+ 2b に関する固有ベクトルを与える. また, pが張る空間の直交補空間

p={t(x, y, z)R3; x+y+z= 0} の直˙ 交基底として˙

q:=



 1

1 0



, r:=



 1 1

2



がとれる. 系 18.13よりp は固有値a−b に関する固有空間であることがわかる(b̸= 0よりa+ 2bと a−b は異なる)から,これらは固有値a−bに関する固有ベクトルを与える. 従って

P :=

( 1

pp 1

qq 1

rr )

=



 1/

3 1/

2 1/ 6 1/

3 1/

2 1/ 6 1/

3 0 2/

6



は(行列式が1の)直交行列で

tP AP =



a+ 2b 0 0

0 a−b 0

0 0 a−b



.

よって2次形式

a(x2+y2+z2) + 2b(xy+xz+yz) は変数変換

x= x+y+z

3 , y= x−y

2 , z= x+y−2z

6 によって

(a+ 2b)(x)2+ (a−b)(y)2+ (a−b)(z)2 と標準形に変形される.

19 2次形式 119 行列の固有値と2 次形式の値 いまa≤α1, α2, . . . , αn≤b とすると,任意のx =t(x1, x2, . . . , xn)Rn に対して

a

n i=1

(xi)2

n i=1

αi(xi)2≤b

n i=1

(xi)2 が成り立つが,命題18.3よりx2=∥Px2 であるから:

命題19.6 対称行列Aの固有値α1, α2, . . . , αna≤α1, α2, . . . , αn≤b をみたすとき, a∥x2txAx≤b∥x2 (xRn).

注意19.7 上の命題より,α1≤α2≤ · · · ≤αn とすると,

α1x2txAx≤αnx2 (xRn).

Ax=α1xのときには左側の等号が成立し, Ax=αnxのときには右側の等号が成立する.

19.3 2次形式の符号数

n変数の2次形式txAx(Aはn次の対称行列)の標準形を∑n

i=1αi(xi)2とし,Aの固有値α1, α2, . . . , αn

のうちp個が正, q個が負であるとする. このときp+q≤n. また, 命題19.6と注意19.7より:

命題19.8 (1) txAx0 (xRn) ⇐⇒ q= 0.

(1) txAx>0 (xRn=0) ⇐⇒ p=n.

(2) txAx0 (xRn) ⇐⇒ p= 0.

(2) txAx<0 (xRn=0) ⇐⇒ q=n.

これらの場合にtxAxは(またはA は)それぞれ半正定値,正定値,半負定値,負定値であるという.

p, qを組にした(p, q)を2次形式txAxの(または対称行列Aの)符号数という. また,txAxは(または Aは)p+q=nのとき非退化であるという(非退化であることと |A| ̸= 0は同値であることに注意せよ).

19.9 a1,a2, . . . ,arRn とするとき,∑r

i=1(x,ai)2は半正定値な2次形式を与える. このことは,成分 計算を行えば直ちに確かめられるが, (x,ai) =tx ai=taixより

r i=1

(x,ai)2=

r i=1

tx aitaix=tx (∑r

i=1

aitai )

x

となることからもわかる. 対応する(n次の)対称行列は

r i=1

aitai=(

a1 a2 . . . ar

)t(

a1 a2 . . . ar

)

であるから,この2次形式はt(

a1 a2 . . . ar

)x2 とも書ける.

19.10 上の例の2 次形式が正定値であるためには, a1,a2, . . . ,ar が張る空間がRn と一致することが 必要かつ十分であることを示せ.

対称行列が正定値かどうかの判定法としては,次が知られている(証明は略):

定理19.11 n次の対称行列A= (aij)が正定値であるためには,k= 1,2, . . . , nに対して

a11 a12 . . . a1k a21 a22 . . . a2k

. . . . ak1 ak2 . . . akk

>0

が成り立つことが必要かつ十分である.

19.12 n次の対称行列A= (aij)が負定値であるためには,k= 1,2, . . . , nに対して

(1)k

a11 a12 . . . a1k

a21 a22 . . . a2k

. . . . ak1 ak2 . . . akk

>0

が成り立つことが必要かつ十分であることを示せ.

極値問題への応用 xy平面上の点(x0, y0)の近傍で定義されたC2級函数f =f(x, y)の2 次近似は f(x0, y0) + 1

1!

(fx(x0, y0) fy(x0, y0))( x−x0

y−y0

)

+ 1 2!

(x−x0 y−y0)

fxx(x0, y0) fxy(x0, y0) fxy(x0, y0) fyy(x0, y0)

 (

x−x0

y−y0

)

で与えられる. さて,f(x, y)が(x0, y0)で極値をとるためにはfx(x0, y0) =fy(x0, y0) = 0 が成り立つこと が必要であるが,逆は一般に成り立たない. しかし

Hf(x, y) :=

fxx(x, y) fxy(x, y) fxy(x, y) fyy(x, y)

(この対称行列をfHesse 行列という)が(x, y) = (x0, y0)で非退化である場合には,次のようにして極 大・極小の判定ができることが知られている:

命題19.13 fx(x0, y0) =fy(x0, y0) = 0かつHf(x0, y0)が非退化であるとき f(x, y)は(x0, y0)で極小 ⇐⇒ Hf(x0, y0)は正定値;

f(x, y)は(x0, y0)で極大 ⇐⇒ Hf(x0, y0)は負定値.

19.14 上の命題が成り立つ理由を説明せよ.

19 2次形式 121 注意19.15 定理19.11と問19.12を用いると,命題19.13は次のように述べることもできる:

fx(x0, y0) =fy(x0, y0) = 0かつfxx(x0, y0)fyy(x0, y0)̸=fxy(x0, y0)2 であるとき

f(x, y)は(x0, y0)で極小 ⇐⇒ fxx(x0, y0)>0かつfxx(x0, y0)fyy(x0, y0)> fxy(x0, y0)2; f(x, y)は(x0, y0)で極大 ⇐⇒ fxx(x0, y0)<0 かつfxx(x0, y0)fyy(x0, y0)> fxy(x0, y0)2. 例 19.16 f(x, y) = sinxsiny とすると,

fx(x, y) = cosxsiny, fy(x, y) = sinxcosy, Hf(x, y) =

(sinxsiny cosxcosy cosxcosy sinxsiny

) . 従ってfx(x, y) =fy(x, y) = 0となるのはcosx= cosy = 0 または sinx= siny= 0 であるときである.

前者の場合, Hf(x, y)は ±E となる. よってf(x, y)はsinxsiny1 であれば極小, 1であれば極大と なる. 後者の場合,Hf(x, y)は±

( 0 1 1 0

)

となる. この行列は非退化であるが正定値でも負定値でもないの

で, f(x, y)は極小でも極大でもない.

演習問題

19.1 n次の対称行列Aに対してf(x) :=txAx(xRn)と置くとき,次が成り立つことを示せ:

f(x+y)−f(x)−f(y)

2 =txAy (x,yRn).

19.2 対称行列 



1 1 0 1 1 1 0 1 1



を直交行列で対角化せよ. また,その結果を利用して2次形式

x2+y2+z2+ 2(xy+yz) を標準形に変形せよ.

19.3 Aを正定値なn次対称行列とする.

(1) 正定値なn次対称行列QA=Q2 をみたすものが存在することを示せ. (2) n次対称行列B に対し, 行列AB の固有値は実数であることを示せ.

19.4 n= 2,3の場合について,定理19.11を証明せよ.

19.5 a, b, c∈Rがa >0と ac−b2>0をみたすとき,次が成り立つことを示せ:

∫∫

R2

exp(

−ax22bxy−cy2)

dx dy= π

√ac−b2.

内積の定義について

§16.1ではベクトル空間の内積を4 つの条件(1)–(4)をみたすものとして定義したが,文献によっては (2) 任意の a∈Kと x,y∈V に対し, (x, ay) =a(x,y)

の代わりに

(2) 任意のa∈Kと x,y∈V に対し, (ax,y) =a(x,y)

を採用していることもある. 後者の流儀で内積を定義しても,これまでに述べた定理等は同様に成り立つの だが,修正が必要なものも少なくない. 例えば,例 16.3で定義したKn の標準的な内積

(x,y) =xy=

n i=1

xiyi は, 条件(2) をみたすように

(x,y) =tx y=

n i=1

xiyi

と修正しなければならない. 命題16.14の(2) にある x=

r i=1

(xi,x)

xi2 xi

についても,

x=

r i=1

(x,xi)

xi2 xi

とする必要がある. これに続く直交射影やSchmidtの直交化についても同様である.

なお,R上の計量ベクトル空間だけを考えるのであれば,条件(2),条件(2) のどちらを採用しても定義 される概念は全く同じものであり,従って定理等の修正は不要である.

123

付録

A 集合と写像

現代の数学は集合と写像の言葉を用いて記述される. 本節で述べるのは,現代数学を学ぶ上で最低限必要 とされる言葉の定義と基本的な性質である(いわゆる集合論ではない).

A.1 集合

ものの集まりのことを集合という. ただし,あるものがその集合に属するか属さないかは明確に定まらな ければならない. 例えば“0 以上の実数の全体” は集合であるが“非常に大きな実数の全体” のように定義 が曖昧なものは集合とは呼ばない. 集合に属しているものをその集合のげん元(または要素)という. xが集合 X の元であることをx∈X またはX∋xで表し,そうでないことをx̸∈X またはX̸∋xで表す.

A.1 次の記号は数学全体を通して固有名詞的に用いられる:

(1) N 自然数(正の整数)全体のなす集合.

(2) Z 整数全体のなす集合.

(3) Q 有理数全体のなす集合. (4) R 実数全体のなす集合. (5) C 複素数全体のなす集合.

なお0も自然数であると定義する流儀もある.

A.2 元を全くもたない集合をくう空集合といいで表す.

集合を定めるのには大きく分けて2つの方法がある. ひとつはX={1, 2,3,4,5}Y ={2,4,6,8, . . .} のように集合の元を全て列挙する方法であり, もうひとつはX ={n; nは1≤n≤5をみたす整数}Y ={n; nは正の偶数}のように集合に属するための条件を指定する方法である. {x|xは○○をみたす} のように, セミコロン;の代わりに縦棒|を使うことも多い(コロン:を使うこともある). いずれの方法に おいても,集合を表すのには中括弧{ · }が用いられる.

集合X, Y に対し,X の任意の元がY の元でもあるときXY の部分集合であるといい,X ⊂Y また は Y ⊃X で表す. また, そうでないことをX ̸⊂Y またはY ̸⊃X で表す. すなわち,X ̸⊂Y とはx̸∈Y であるようなx∈X が存在することを意味する. 任意の集合X は明らかに∅ ⊂XX⊂X をみたす.

集合X の元xで条件(あるいは性質)○○をみたすもの全体はX の部分集合を与える. この部分集合を

{x∈X ; xは○○をみたす} のように表す. ただし, x∈X が○○をみたすかどうかは明確に定まってい なければならない.

集合X, Y に対し,X ⊂YX ⊃Y が共に成り立つとき,つまりXY が同一の元からなるとき,XY は同じ集合である(または一致する)といい,X =Y で表す. また,そうでないことをX ̸=Y で表す. X ⊂Y かつX ̸=Y であるとき,XY の真部分集合であるといい,X(Y またはY )X で表す(文献 によっては,の代わりにを用い,真部分集合を表すのにを用いることもある).

A 集合と写像 125 例 A.3 次の集合は,いずれも{0,1,2}と一致する:

{2,1,0}, {0,1,2,0}, {x∈Z; 0≤x <3}, {x∈R; x(x−1)(x2) = 0}. 有限個の元よりなる集合を有限集合といい,無数に多くの(相異なる)元をもつ集合を無限集合という. ま た,集合X の(相異なる)元の個数を|X|(または#X)で表す. ただしX が無限集合のときには|X|= と定める. X が有限集合であることを|X|<∞と表すこともある.

ドキュメント内 線型代数学入門 (ページ 114-125)