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中学校におけるエネルギー環境教育のあり方に関する一考察

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(1)(. M. _[. 4,'* L. eC. ;j. A*. f. )V. :i -;. M03241J d EB3 -. ). - :. : C. O).

(2) 目. 次. 第1章 緒言  1. 1 環境教育充実の方向性………・………9・…・…………・…9…   1. 1.1 環境問題に対する関心の高まり………………一・…・………   1. 1.2 国際社会における環境教育充実の方向性…・・……………・…・   1.. 1.3 わが国における環境教育充実の方向性………・………… …….   1.. 1.4 学習指導要領に示された環境教育充実の方向性………………・・.  1. 2 学校教育における環境教育の現状と問題点一………………… ……   1。 2.1 環境教育実践の校種別内訳・・………………・…・……・……   1.. 2.2 環境教育内容の内訳……・…・………・……………・・…り一.  1. 3 エネルギー環境教育の必要性………………一・………・…・……   1. 3.1 中学校における環境教育のあり方………・・………… ………   1.. 3。2 エネルギー環境教育の必要性・………・………・…………….   4 本研究の目的及び方法………・……・…9・……・…………… …11  1.. 文献………・…・……・9………………・・………………一・・…・…14 第2章社会問題としてのエネルギー環境問題.  2.1地球環境問題とは・・………………・………………・… ………・16   2.1.1 公害問題と地球環境問題・・………………9………………16   2、1.2 様々な地球環境問題……・………・…… ………………・・17   2,1.3 地球環境問題の相互関係………・・………・………………19  2.2 地球環境問題への国際的取組………・………・・………・…・……23   2.2.1 地球環境問題への国際的取組の歴史・………・………・・…・…23.   2.2.2 京都議定書の内容と課題…………・・……・………………28  2.3 エネルギー環境問題への対応・………………・・………・……・…33   2.3.1 エネルギー利用の現状………・………・・……・………・…33   2.3.2 化石エネルギーの代替として期待されているエネルギー………一37   2.3.3 エネルギーの有効利用……………・…・・…。’。………●””40.  2.4 まとめ・…………9……・・……………・…9……………・…41  文献・………・………・……・…………9・…・…・…………・……・・42 第3章 中学校におけるエネルギー環境教育のあり方.  3.1 各教科におけるエネルギー環境教育のあり方・……………9…・……44   3.1.1 各教科におけるエネルギー環境教育・………………… ……・44   3.1.2 社会科におけるエネルギー環境教育のあり方……・…………・・45.

(3)  3.1.3 理科におけるエネルギー環境教育のあり方・……………・…… 46.  3.1.4 技術・家庭科におけるエネルギー環境教育のあり方……………48 3.2 総合的な学習の時間におけるエネルギー環境教育のあり方……………48. 文献………・……・…・………・………・・……・…………9・・……・52. 第4章 中学校におけるエネルギー環境教育の現状と課題. 1  4.   学習指導要領および教科書の調査・・………………・………・……53   4.  1.1 学習指導要領に示されたエネルギーと環境に関連する内容の調査…53   4..  1.2 教科書に見られるエネルギーと環境に関連する記述の調査………67.   エネルギー環境教育に関する中学校教員アンケート調査…一…………74  4. 2   4.  2.1 調査対象と方法………………… ……・…………・・…・・74   4..  2.2 調査の目的と内容・……………・…甲……………・…・・…75  2.3 調査の結果と考察……………・…9・……………・…・・…75.   4..  2.4 エネルギー環境教育に関する中学校教員アンケート調査のまとめ…94.   4..   まとめ・・9……・……・…・・・・… 9・… 一・一・・… 一… 9… ……9… 95  4.   3 文献……・………・…・…・………・……・…………・…・…・……・997. 第5章 提言.  5.1 教科間連携に関する提言…・……・………・・………・………・…98   5.1.1 エネルギー環境教育における教科間連携の必要性……一………98   5.1.2 教科間および総合的な学習の時間との連携を考えたカリキュラム案・100.  5.2 社会科公民的分野におけるエネルギーと環境に関する授業の改善案……・105.   5.2.1 授業案作成のねらい………………9・・………………・…105   5.2.2 授業案(第1時∼第4時)…………・…・…・………・……105   5.2.3 授業時間数が十分確保できない場合の代替案………・・………・117  5.3 総合的な学習の時間におけるエネルギー環境教育に関する提言・…・……121.   5.3.1 総合的な学習の時間における施設見学の有効性・………………121.   5.3.2 エネルギーや環境に関する見学施設リスト……・…………・…122  5.4 まとめ9… …・…・・……・… 9… 一…・・… 9・9・・・・・・… ……… 一・126. 章末資料………・………・・…・……・………・…………・…・…9…128 文献…………・…・…・・……・…………・………・・………り・……130. 第6章結言・………………・・……・・…………9……・・…………・131 謝辞…………・…・…・…・…・…………・……………・…・・………134.

(4) 第1章 緒言 1.1 環境教育充実の方向性. 1.1.1 環境問題に対する関心の高まり  近年、地球環境問題に対する社会的関心は急速に高まってきたように思われる。. 内閣府国民生活局による「省資源・省エネルギーと国民生活に関する意識調査」. においても、地球環境問題について関心があるかどうかを問う質問に対し、「関. 心がある」「ある程度関心がある」を合わせた割合は、図1−1に示すように非常 に高い値を示している。                  全く関心.             あまり関    がない,  わからな.             心力. る心. あ関る. 関心があ. 一. る,64.0.     図1−1.省資源・省エネルギーと国民生活に関する意識調査(1) (調査対象:各都道府県の国民生活モニター 2,300名 うち有効回答者数 2,250名).  図1−1が示すような、環境問題に対する関心の高まりに伴い、環境教育の重要 性も認識され始めている。表1−2は、松阪市が実施した「環境に関する市民アン ケート調査」中の「問8:よりよい環境をつくっていくために、市民の環境保全意. 識を高める目的として、あなたはどのようなことが重要だと考えますか。」とい う質問に対する回答である。.   表1−2.松阪市「環境に関する市民アンケート調査」問8の回答結果(2) 回   答. 割合(%). 708. 学校教育や社会教育における環境教育の充実 広報などを通じてPR活動の強化. 43.5. こどもエコクラブなど環境学習団体の育成. 34.4. 環境活動の指導者・地域リーダーの育成. 32.0. 環境リーフレットを各戸に配布するなど、家族で環境について話し合える雰囲気づくりの推進. 28.6. 自然観察会・バードウォッチングなど、身近な自然に触れる機会の提供. 28.4. 地域の会合など話し合いのできる機会の提供 環境フォーラム、講演会などの開催. 27.7 18.7 1.6. その他. 一1一.

(5)  この調査は全国規模の調査ではないため、この調査結果のみを一般化して論ず るのは適切ではないと思われる。しかし、r学校教育や社会教育における環境教 育の充実」を挙げた人が70.8%と、他の項目に大きな差をつけて1位であること. は、特筆すべきである。この調査結果は、学校教育や社会教育における環境教育 の充実に大きな期待が寄せられているという証であると考えられる。. 1.1。2 国際社会における環境教育充実の方向性  このような環境問題に対する社会的関心の高まりと学校教育に対する環境教育 充実への期待をうけて、近年の学校教育は環境教育充実の方向性をより強めてき. ているといえる。 国際的に見ると、「環境教育」という言葉を用いて体系的な. 環境教育の重要性を訴えたのは、1972年の国連人間環境会議において採択され た「人間環境宣言」であろうと思われる。当時は、同年、ローマクラブによる「成. 長の限界」レポートが出版されており、世界各国で環境悪化が問題となり、環境. 保全への気運が高まりつつあった時代である。同宣言は、環境問題に関し、国際 社会が協調して対応することを示した初の国際宣言であるが、この中にすでに環 境教育の重要性が指摘されていたことは注目に値する。同宣言の原則19には、「恵. まれない人々の立場を十分に配慮した環境問題に関する青少年教育および成人教 育は、人問的な意味における環境の保護及び改善に当たって、個人、企業及び地 域の啓発された意見並びに責任ある行動の基礎を拡大するために不可欠のもので ある。」(3)と述べられ、環境問題に関する人々の意識を高めるために環境教育が. 必要であることを指摘している。さらに、1975年にベオグラードで開かれた環 境教育国際ワークショップにおいて出されたベオグラード憲章では、環境教育の 目的を「環境とそれに関連する問題に気づき、そのことに関心を持ち、そして現 在の問題の解決や新しい問題の予防のために個人や集団で働くための知識、技能、 態度、動機そして参加の意欲を持つ人々の世界的な数を増やすことである。」(4). とし、環境教育の目的は環境問題を解決しようとする意欲をもった人間の育成で. あることを明確に示している。また同憲章には、環境教育の目標、対象、指導原. 理などについて詳細な記述があり、体系的な環境教育を世界的に推進すべきであ るという主張がなされている。2年後に開かれたトビリシ環境教育政府間会議に. おいて出された「トビリシ勧告」においてもほぼ同様の内容が記されており、国 際社:会において環境教育を充実させていこうとする方向性は1970年代にほぼ固 まったと考えられる。. 1.1.3 わが国における環境教育充実の方向性. 一2一.

(6)  一方、わが国では、1960年代、各地で公害問題が発生したことをきっかけに 公害防止教育が行われるなどの取り組みはあったが、地球環境問題の広がりを受. けた形での体系的な環境教育が強調されるようになったのは、1980年代以降の ことである。.  環境庁(現環境省)発行「環境白書」に「環境教育」という項目が初めて設け. られたのは昭和59年版(1984)である。この中に「環境教育を普及し、正しい 環境の認識と環鏡保全のための積極的な行動の基盤を広げることが望まれる。」(5). という記述があり、環境教育の目的を、「正しい環境認識を養うことと環境保全. への意欲を養うこと」であるとし、環境教育の重要性を訴えている。一方、日本 環境協会の調査結果等を示した上で、「環境教育が必ずしも十分浸透していると は言えない状況にあることがうかがわれる。」(6)とも述べており、当時のわが国. において環境教育の位置づけがまだ低かったことが想像できる。その後、1988 年、環境庁より「環境教育懇談会報告」が出され、文部省(現文部科学省)から. は、1991年にr環境教育指導資料(中学校・高等学校編)」が、1992年には同書. (小学校編)が、そして1995年には同書(事例編)が出版された。学校教育に. おいて環境教育をすすめていくとする文部省の姿勢が初めて明確に示されたの は、このr環境教育指導資料」においてである。その第1章では、深刻化しつつ ある地球環境問題の現状を概観した後、環境問題の解決のためには我々一人一人 が環境にっいて知識と理解を深め、環境に配慮した生活をすることが重要である としている。その上で「環境に対する豊かな感受性や見識を持つ人づくりこそ環 境問題解決の確実な方法と言え、いわゆる環境教育の推進が必要である。」(7)と. 述べている。環境問題解決への高い意識を有する人間の育成が重要であるという. 見地から、環境教育を充実させていこうという方向性が感じられる。この環境教 育指導資料が示されたことにより、わが国の環境教育は、より積極的に推し進め られることになったと考えられる。. 1.1.4 学習指導要領に示された環境教育充実の方向性.  現行の学習指導要領は1998年12月に告示された。「総合的な学習の時間」の 創設などが特徴とされているが、環境教育の視点から見れば、「環境教育指導資 料」が出されて以降初の学習指導要領改訂である。そのため、環境教育充実の方 向性が随所に示されている。以下、中学校学習指導要領を例に、文部科学省が示. す環境教育充実の方向性を概観してゆくが、小学校、高等学校においても同様の 方向性が示されている。まず、総則第4「総合的な学習の時問の取り扱い」では、. 一3一.

(7) 「各学校においては,2に示すねらいを踏まえ,例えば国際理解,情報,環境,. 福祉・健康などの横断的・総合的な課題,生徒の興味・関心に基づく課題,地域 や学校の特色に応じた課題などについて,学校の実態に応じた学習活動を行うも のとする。」(8)と述べられており、「環境」が総合的な学習の時間のテーマの1つ. として例示されている。このことは、総合的な学習の時間が目指す、教科横断的、. 問題解決的、生徒主体的な学習の内容の1つとして「環境」がふさわしいという 認識を示すものではないだろうか。.  また、各教科において、学習指導要領中に何らかの環境に関する内容が記述さ. れている教科は、社会、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭の6教科であ る。このうち、音楽については「自然音、環境音」に関する記述、美術について は「環境デザイン」に関する記述であり、直接環境問題と関わるものではないと. 考えられる。また、保健体育では、保健分野内容(2)に、「健康と環境につい て理解できるようにする。」という項目があるが、健康の増進に重点が置かれ、 環境問題にまでその記述が及んでいるとはいえない。  一方、社会科では、地理的分野内容(3)の(ウ)に「世界的視野から見て,日本. はエネルギー資源や鉱物資源に恵まれていない国であること,土地が高度に利用 されていること,産業の盛んな国であることといった特色を理解させるとともに,. 国内では地域の環境条件を生かした多様な産業地域がみられること,環境やエネ ルギーに関する課題などを抱えていることを大観させる。」(’〉、公民的分野内容. (2)の(ウ)に「また,人類の福祉の増大を図り,よりよい社会を築いていく. ために解決すべき課題として,地球環境,資源・エネルギー問題などについて考 えさせる。」(10)という記述があり、環境問題の理解とその解決に向けての態度を. 養うことが目標とされている。理科においても、第1分野内容(7)「科学技術 と人間」中に、「エネルギー資源の利用と環境保全との関連や科学技術の利用と. 人間生活とのかかわりにっいて認識を深めるとともに,日常生活と関連付けて科 学的に考える態度を養う。」(”)と、エネルギー利用と環境保全について述べた部. 分があり、第2分野’内容(7)「自然と人間」中にも、「微生物の働きや自然環 境を調べ,自然界における生物相互の関係や自然界のつり合いについて理解し,. 自然と人間のかかわり方について総合的に見たり考えたりすることができるよう にする。」(12)と、自然環境への理解と環境保全に対する認識を深めることの重要. 性について述べた部分がある。技術・家庭についても技術分野内容Aの(1) のイにおいて、r技術と環境・エネルギー・資源との関係について知ること。」⑬. 一4一.

(8) という記述がある。また、家庭分野では内容Bの(4)のイに「自分の生活が 環境に与える影響について考え,環境に配慮した消費生活を工夫すること。」(’4). という記述があり、同Bの(6)のイに「環境や資源に配慮した生活の工夫に ついて,課題をもって実践できること。」(15)という記述がある。技術・家庭科で. は全体として、科学技術や家庭生活と環境とのかかわりを学んでいくという内容 になっている。以上、学習指導要領の記述から、環境問題は、社会科、理科、技 術・家庭科の3教科を中心に非常に幅広く扱われていることをうかがい知ること. ができる。これらのことから、現行の学習指導要領にも、環境教育充実の方向性 は明確に示されているということができる。. 1.2 学校教育における環境教育の現状と問題点. 1.2.1 環境教育実践の校種別内訳  それでは、学校現場での教育実践において、環境教育の充実ははかられている のだろうか。ここ数年の傾向を見ると、様々な教育雑誌や研究紀要に環境教育の 実践例が報告され、実践上においても環境教育は今日的なテーマとなっているよ うに思われる。一方、環境教育は従来行われてこなかった新たな領域であり、そ. の導入に際してはいくつかの問題点が生じているように思われる。本節では、環 境教育実践上生じていると思われる問題点を2っ指摘したい。  環境教育実践は全国の学校で行われており、正確な動向を知るのは困難である。. しかし、いくつかの実践事例集や研究紀要などから、その一端を知ることは可能 である。本論では、日本児童教育振興財団主催「全国小学校・中学校環境教育賞」. (1992∼2002)に参加した環境教育実践事例をもとに、その傾向と問題点の把 握を試みた。その概要を図1−3、図1−4に示す。.                     姻   120 350 100. 300.   250.   60   菊. 実践事例数. 80.   200   150 100. 20. 50. 21. 0. 0. 図1−3.2002年第10回全国小学校・中学校環境教. 図1−4.1992∼2002年第1∼10回全国小学校・.    育賞参加実践事例の校種別内訳.  中学校環境教育賞入賞実践事例の校種別内訳. 一5一.

(9) (図1−4凡例中「その他」には、小中合同で行ったもの、地域の子どもクラブ等の団体の活動として行ったもの等が含まれる). 図1−3は2002年実施の第10回全国小学校・中学校環境教育賞における参加学校 の校種別内訳である(’6)。2002年度文部科学白書によれば、この年の全国学校総. 数は小学校が23,808校、中学校が11,159校であり、小学校数は中学校数の約2. 倍である。しかし、図1−3における小学校と中学校の参加事例数の差は約5倍で あり、この図からは、環境教育実践は主に小学校において活発に行われていると. いうことができる。また、図1−4は第1回から第10回までの入賞実践事例の校 種別延べ数である(17)。審査を経た入賞事例数の比較のためこれがそのまま小学校. と中学校の環境教育実践事例数の差とは言えないが、やはり3倍以上小学校の入. 賞事例が多い。図1−3と同様、図1−4においても環境教育が小学校を中心に行わ れていることが推察できる。したがって、学校教育における環境教育実践上の問. 題点の一つとして、環境教育は小学校ではさかんに行われているが、中学校では まだ少なく、中学校における環境教育の充実が課題であることが指摘できる。.  このように小学校での環境教育実践が多い要因には、小学校と中学校の学習指 導形態の違いを挙げることができる。環境教育はその性質上、単独教科の枠内に. 収まりきらず、教科横断的な色彩が強い。原則として学級担任がすべての教科を 指導する小学校では、担任教師個人による計画・立案により、複数の教科にわた る領域の指導には比較的柔軟に対応できる。一方、中学校では原則的に教科担任. 制のため、複数教科にわたる分野への対応は複数の教員による計画・立案が必要 であり、小学校ほど柔軟には対応できない。水越(1995)は、小学校と中・高等学. 校の環境教育実践の数に差がある要因をr環境教育は総合教科としての色あいが. 強い内容であるにもかかわらず、中学校、高等学校では、小学校よりも教科の枠 が明確になり、学校における環境教育の実践者である教師側も、教科の専門性が より強くなる点にある。」(18〉と述べている。. 1.2.2 環境教育内容の内訳  次に指摘できるのは自然観察学習の多さである。図1−5は上記の第10回全国 小学校・中学校環境教育賞において入賞した学校の実践内容の内訳である(「総. 一6一.

(10) 合教育技術増刊号」掲載の実践記録をもとに分類)(16)。また、図1−6は第1回か. ら第9回までの優秀賞受賞校の実践内容の内訳である(90校中7校は講評記事 による分類が不可能であったため除外)(17)。. 衡30. ■自然観察等. ■自㈱擦等 実30. 口地博摺. □地囎  践      事器 1釜淘繊1摺例20 1そ1馳  数15. 10. %  ⑳  15  10  5  0.  実践事例数.       50       45       ⑩       35.   8. 3.       10        5. ■. 一工荊碍」 ■その他. 20. 1 5.        0. 図1−5.2002年第10回全国小学校・中学校環境教  図1−6,1992∼2002年第1∼10回全国小学校・    育賞入賞実践事例の内容別内訳       中学校環境教育賞優秀実践事例の内容別内訳  (図1−5、1−6の凡例中「その他」には、複数の内容を順に実施したり、子どもに内容を選択させる形式のものが含 まれる).  図1−5を見ると、実践内容では自然観察学習が群を抜いて多い。それ以外の内. 容をすべて合わせても21で、自然観察学習の数には及ばない。また、図1−6に おいても同様の傾向が見られ、自然観察学習の多さが際だつ結果となっている。. したがって、学校教育における環境教育実践上のもう一つの問題点として、実践 が自然観察学習に偏り、それ以外の実践が少ないことが指摘できる。.  環境教育の実践における自然観察学習の多さは、前述の、小学校に環境教育実 践が多いということとも関連があると思われる。すなわち、小学生は発達的に見 て、事物の把握はより感覚的であり、ある事象をもとに予測を立てたり、別の事. 柄を類推したり、別の事象との関連性を探ったりといった抽象的思考力はまだ完 成されていない。したがって、自然にじかに触れたり、生物の生態を直接観察し たりする自然観察学習は、子どもの感覚にうったえることができ、小学生にとっ ては効果の高い環境教育の形態であると考えられ、実践例も多いものと思われる。.  一方、中学校だけに限るとやや違った様相が見えてくる。図1−7は図1−6のデ. 一7一.

(11) 1. ■自然観察等. □鵬学習 ■. ■ ■.    実践事例数. 09876543210. 一タから中学校における実践のみを取り出して示したものである。自然観察学習. 魏嘩. 2. 1 1.      図1−7.1992∼2002年第1∼10回全国小学校・中学校環境教         育賞優秀実践事例の内容別内訳(中学校のみ)  (図1−7の凡例中rその他」には、複数の内容を順に実施したり子どもに内容を選択させる形式のものが含まれる). よりも生活環境学習が多く、身近な題材を扱っているものの、調査・実験などの. 活動を取り入れている実践例も見られる。母集団が少ないだけに確かなことは言 えないが、環境教育を実践している中学校は、小学校での自然観察中心の環境教. 育とは違った方向性を模索しているのではないだろうか。このことからも、中学 校においては、自然観察学習のみではなく、他の学習内容も取り入れた、新しい 形の環境教育が必要であると考えられる。. 1.3 エネルギー環境教育の必要性 1.3.1 中学校における環境教育のあり方  自然観察学習は、環境教育の一部を構成する重要な要素であるが、環境教育の すべてではない。前述のように、自然観察学習は子どもの感覚にもっとも強くう. ったえかけ、驚きや感動を伴うという点で学習効果は高い。しかし、環境問題を. 客観的に認識させるためにもっともふさわしい学習であるかは疑問である。子ど もの驚きや感動の大きさのみに着目すると、単に自然を愛でるのみで環境問題に 全く踏み込まない「はいまわる経験主義」に陥るおそれもある。松原(1992)は「環. 境教育に対する一般の印象は自然体験を中心とした経験学習と思われているよう である。」〔19)と述べた上で、「このような環境教育で留意しなければならないの. は素朴な経験主義に陥りやすいことである。そうならないためには経験学習の成 果を具体的な認識としての環境問題へと発展させなければならない。」(19)と、自. 然体験学習の効用を認めつつも、それにとどまらず、環境問題の認識を核とする 環境教育を目指すべきと主張している。. 一8一.

(12)  そもそも環境教育は環境問題の広がりとともに生まれてきた。ベオグラード憲 章に記されている環境教育の目的は環境問題解決の意欲を持った人間の育成であ る。また、環境教育指導資料にも、「環境教育の目的は、環境問題に関心をもち、. 環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境保全に参加する態度及び環境問題 解決のための能力を育成することにある。」(20)と記されており、これらのことか. らも、環境教育においては、まず、子どもに環境問題の現状を理解させなければ ならない。そして、環境問題の現状と見通しに関する正確な知識を得させたのち、. その解決に向けての意欲を喚起していくような学習形態が望まれる。  大杉(1994)は社会科において行われている環境学習の事例を校種別にとりあげ. て分析し、これらの事例が「環境保全のために何か行わなければならない」とい う心情を育てることに重点を置いているとした上で、その問題点を「人間の経済. 活動と環境問題との関連を客観的、科学的に探求することや、社会科学の結論に. 基づいて実施される環境政策によって環境問題を解決しようとするいわゆる社会 システムを通した問題解決の側面について理解する学習が十分になされない点で ある。」(2’)と指摘している。この指摘はあくまで社会科教育の範疇での環境学習. のありかたについてなされたものであるが、現在の環境教育においては、子ども. に環境問題を客観的に理解させることが必要であるという主張は環境教育全般に. 通じるものであろう。もっとも、社会科教育の立場から提案されている環境学習 の形態は、経済学の手法を利用した環境問題解決のためのモデル作りやシミュレ ーション等がほとんどであり、内容論というよりむしろ方法論である。したがっ て現実の環境問題認識よりもむしろ経済学的手法の利用に力点が置かれており、. 経済のしくみの学習が環境問題の学習に優先し、環境問題の理解を第一の目的と した環境教育にとって最もふさわしい形態ではないと考えられる。. 1.3.2 エネルギー環境教育の必要性  それでは、環境問題の認識を中心とした環境教育を考えるとき、望ましい学習. 形態は何であろうか。現在人類全体の将来にわたる問題と考えられている地球環. 境問題には、地球温暖化、酸性雨など、エネルギーの大量消費に起因したり関連 する問題が多い。現代文明社会の便利で快適な生活は、必然的にエネルギーの大 量消費を要求する。これが地球環境問題の深刻化につながり、他方ではエネルギ ー資源の枯渇問題、先進国・開発途上国問のエネルギー資源の配分の偏りの問題 等、エネルギー問題の原因ともなっているのである(図1−8)。. 一9一.

(13)          ハハ         ユ          ノ                          キ.        ゴ/地球環境問題\、        ヤヒ                           ドノ.        ン遷哩塑剛臨1壁堕べ       /   『一    \.       /                \    _.⊥_              /イ・一. \輿哩堅些堕少   \磐轡璽ノ 図1−8.地球環境問題のトリレンマ構造. このトリレンマの構造を理解し、その克服への意欲を培うことが、現在の環境教 育においてもっとも必要であると考えられる。.  本研究では、環境問題、特にエネルギーの大量消費に起因する地球環境問題の 現状を生徒に認識させ、それらの克服への意欲を培う環境教育をエネルギー環境 教育と定義する。エネルギー環境教育の充実は、これからの環境教育にとっても っとも重要であると思われる。山下(2002)は、「現在、エネルギー問題が、特に. 地球温暖化などの問題とも密接に関連しながら、環境問題の中で最重要課題の一 つになっていることは確かで、そうした意味でも、エネルギー環境教育をさらに 定着・発展させていかなければならない。」(22)と述べている。.  しかし、rエネルギー環境教育」という言葉は未だ定着しているとはいえず、. 今後取り組まれるべき新しい分野である。エネルギー環境教育はrエネルギー教 育」とr環境教育」の接点に位置する教育ともとらえられよう。しかし、前述の. 通り環境教育にとってエネルギーというテーマは周辺領域を構成するものにすぎ ず、中心テーマは自然認識であった。目本環境教育学会誌『環境教育』に収載さ. れている研究も現在までのところ自然認識に関するものが多く、エネルギ」に関 する研究は少ない。.  注目すべき研究としては、科学技術を媒介として自然に改変を加えようとする 人間の活動を視座に入れた環境モデルを提示した松原(1992)の研究(19)がある。自. 然に対する人間のはたらきかけが環境問題を生じさせるというこのモデルは自然 認識中心の環境教育の欠点を補う優れたものであるが、これをもとに提言されて いる環境教育の形態は、科学史や科学のあり方についての教育であり、環境問題 に対する見方、考え方を養う教育であって、環境問題そのものをあつかっている わけではない。一方、同学会誌において環境問題を扱った研究には、大嘉(1994). 一10一.

(14) した5つの事例を提示し、4っの問いかけを行いっつ環境問題への興味・関心を 高める内容となっている(23)。身近な題材を事例としており学習者にも理解しやす. く、具体的な数値をもとにしているため各事例に実感をもつことができるが、環. 境問題学習への導入、動機付けの域にとどまっており、環境問題の体系的な理解 を目指す教育の形態としては不十分である。.  一方、エネルギー教育においては従来、エネルギーの概念、利用方法、化石燃 料の枯渇問題が中心に取り上げられ、エネルギーの大量消費がもたらす環境問題 にっいてはあまり触れられてこなかった。このような中、小川ら(1991)は、わが. 国のエネルギー教育の現状を分析し、将来のエネルギー教育のあり方を提言して いる。この中の様々な提言の最後に述べられている「エネルギー科の創設」は、. 自然科学、社会科学の双方にわたるエネルギー問題学習にとって画期的な提言で. あり、今目の総合学習のあり方にもつながる先験的なものである。このエネルギ. ー科の内容に関する提言の中に「エネルギー資源消費の歴史的な推移を軸に、エ ネルギーに関わる科学技術的な内容や社会経済的な内容を学習することによって (中略)エネルギー資源枯渇の問題ばかりでなく、エネルギーの大量消費が環境. にもたらす影響など、未来のエネルギー問題に対して冷静な対応ができる能力を 養うことが可能と思われる。」(24)という記述があり、環境問題が未来のエネルギ. ー問題の中核を構成する問題であり、これに対応する能力を育成することが必要 であるという視点が打ち出されている。また、川谷ら(1995)は、環境教育に関連. する教科の指導書、教科書の記述分析(技術科を中心として)をもとに、現在の. 技術科における環境教育が環境問題を解決することを目指した内容としては不十 分であることを指摘し、技術科における「環境」領域創設の必要性を訴えている。. この中で、電気領域の分析から「『環境』の視点からエネルギー問題を捉えるこ とは重要であり、エネルギーに関する記述は多くの教科で見られ、特に社会科、 理科等の他教科との関連性についても考慮する必要がある。」(25)と、エネルギー. 問題認識の中核に「環境」を位置づけるべきとする主張を行い、エネルギーに関. 連する教科間連携の必要性にも言及している。これらの研究では「エネルギー環 境教育」という言葉はまだ用いていないが、エネルギー環境教育の重要性につい ていちはやく主張した先進的な研究ということができる。. 1.4 本研究の目的と方法  本研究は、エネルギーの大量消費に起因する地球環境問題の現状を生徒に認識 させ、それらの克服への意欲を培うエネルギー環境教育を取り上げ、中学校での. 一11一.

(15) エネルギー環境教育の現状と問題点を探り、その望ましいあり方を提言すること を目的とした。.  そしてこの目的を達するため、次のような方法で研究を行った。.  第2章では、社会問題としてのエネルギー環境問題の考察を行った。地球環境 問題にっいては自然科学的な観点から語られることが多いが、本論ではその社会 科学的側面を、文献をもとに考察した。特に、地球温暖化をはじめとする様々な 地球環境問題が、経済発展とそれに伴うエネルギー消費の急増により引き起こさ. れていること、先進国と発展途上国のエネルギー消費に大きな差があり、南北問. 題とも関わっていることを明らかにした。京都議定書についても、その背景、社 会的意義、発効に向けての問題点などを考察した。さらに、エネルギー環境問題 の克服のために、現在どのような取り組みが行われているのか、将来の見通しも 含めて述べた。.  第3章では、次の2つの視点から、社会科、理科、技術・家庭科のエネルギー と環境に関連する内容を持つ各教科(以下「各教科」と称す)および総合的な学 習の時間におけるエネルギー環境教育の望ましいあり方について考察した。. (1)各教科において、教科の性格や目標に根ざしたエネルギーと環境に関連す.    る内容が取り扱われ、教科内での一貫性が保たれ、体系化が図られるべき    である。. (2)各教科間の内容が相互に補完しあい、全体として体系化されたエネルギー    環境教育となるために、教科間の連携が必要である。.  第4章では、中学校におけるエネルギー環境教育の現状を学習指導要領および 教科書の記述の調査から明らかにした。各教科における学習指導要領や教科書の. 記述は、環境教育充実の方向性をもっているが、エネルギー環境問題について体 系的な記述に乏しく、特にエネルギー問題と環境問題が別個のものとして述べら. れ、相互の関連性を示していない記述が多く見られることが明らかになった。ま. た、中学校教員を対象としたrエネルギー環境教育に関するアンケート」を実施 し、その結果より、各教科及び総合的な学習の時間におけるエネルギー環境教育 実践上の課題を探った。.  第5章では、第4章で明らかにした課題を解決し、よりよいエネルギー環境教 育を目指すための提言を行った。第1に、各教科及び総合的な学習の時間におけ る望ましいエネルギー環境教育のカリキュラムについて、実施時期、実施内容の. 両面から検討し、その結果を提示した。第2に、第4章で改善すべき点が指摘さ. 一12一.

(16) れた社会科公民的分野におけるエネルギー環境教育に関連する内容について、新 しい学習指導案を作成した。第3に、総合的な学習の時間におけるエネルギー環. 境教育の一例として施設見学を取り上げ、見学施設の選定やコース決定に役立っ 資料として「見学可能施設リスト」を作成した。. 一13一.

(17) 文 献 (1) 内閣府国民生活局、省資源・省エネルギーと国民生活に関する意識調査、平成14年度.    国民生活モニター調査、内閣府国民生活局ホームページ    (http://www5.cao.gojp/seikatsu/2002/0813monitor/main.htm1)より引用、(2002). (2) 松阪市環境懇話会、環境に関するアンケート調査、松阪市ホームページ    (http://www.city.matsusaka.miejp/KANKYO/suishin/konwakai/enquete/enquete.html)より引用、.    (2003) ︵3︶.   堀尾輝久、河内徳子、平和・人権・環境教育国際資料集、青木書店、(1998)、pp.187−188. (4)   前掲 文献(3)、p.203. ︵5︶.   環境庁、環境白書(昭和59年版)総説、環境庁、(1984)、p.46. (6)   前掲 文献(5)、p.47. ︵7︶.   文部省、環境教育指導資料(中学校・高等学校編)、大蔵省印刷局、(1991)、p.6. (8)   文部省、中学校学習指導要領解説(総則編)、東京書籍、(1998)、p.56. (9)   文部省、中学校学習指導要領解説(社会編)、大阪書籍、(1999)、p.66. (10)    前掲 文献(9)、p.148. (ll)    文部省、中学校学習指導要領解説(理科編)、大目本図書、(1999)、p.48。 (12)    前掲 文献(ll)、p.9L (13)    文部省、中学校学習指導要領解説(技術・家庭編)、東京書籍、(1999)、p.16、 (14)    前掲、文献(13)、p.70. (15)    前掲、文献(13)、p.74. (16)    小学館、「総合教育技術」8月号増刊、小学館、(2002)より作成 (17)    目本児童教育振興財団ホームヘ㌧ジ.   (hゆ://www.asahi−netorjp/∼tp6t−ookr/kankyou.html〉より作成. (18) 水越敏行、木原俊行、新しい環境教育を創造する一子どもがきずく環境へのかけ橋一、    ミネルヴァ書房、(1995)、p.53.. (19) 松原克志、環境教育へのSTS的視点の導入、『環境教育』Vo1.2−2、(1992)、pp.14−27. (20) 前掲 文献(7)、p.7.. (21) 大杉昭英、社会科教授としての環境学習一高等学校・現代社会「目米環境政策の比較」    一、『社会科研究』第42号、(1994)、pp.61−70.. (22) 山下宏文、総合的学習とエネルギー環境教育の課題一理念としての総合的学習一、『広   領域教育』No.50、広領域教育研究会、(2002)、pp.40−47. (23) 大嘉徳男、環境諸問題の学習教材化に関する基礎的研究、『環境教育』Vol.4−1、(1994)、. 一14一.

(18)   pp52−60。. (24) 小川武範、堀田謙一、福田芳行、学校教育におけるエネルギー教育のあり方に関する   研究、目本産業技術教育学会誌第33巻第4号、(1991)、pp.227−235.. (25) 川谷三夫、小川武範、久光脩文、わが国の前期中等教育における環境教育の現状、日   本産業技術教育学会誌第37巻第4号、(1995)、pp.93−103.. 一15一.

(19) 第2章 社会問題としてのエネルギー環境問題 2.1地球環境問題とは. 2.1.1公害問題と地球環境問題  公害問題と地球環境問題は類似した概念として用いられることも多く、しばし ばその境界は不明確である。両者の共通点は、人間の営みにより環境が変化し、. その変化が人間にとって好ましくない影響をもたらすことである。一方、この両 者は、その原因、規模、及ぼす影響の地理的、時間的広がり、等において大きな 違いがある。しかしながら、両者はしばしば混用され、その境界もあいまいにさ. れがちである。本論では、両者は区別されるべきであるという観点から、地球環 境問題と公害問題の差異を明確にすることを試みる。.  中西準子は、環境問題を地域環境問題と地球環境問題に二分し、さらにその問 題のあらわれ方によって、地域環境問題を生存環境問題と公害問題に、地球環境 問題を広域環境問題と未来環境問題に区分している(1)。この視点に立ち、公害問 題と地球環境問題の違いを示したものが表2−1(2)である。. 問題の枠組. 被害の種類・数 地域. 公害問題. 地球環境問題. 狭い・限定的. 広い・複合的. (相対的に)少ない. 多い. (相対的に)狭い. 広い. 影響の範囲 現在》未来. 現在≦未来. 汚染物質の毒性. 強い. 弱い. 汚染物質の種類. 少ない. 多い(時として複合的〉. 人・時間. 原因. 被害との因果関係 加害者. 環境保全vs生活水準の向上・維持. 特定は困難しかし可能. 「不確か』 (r被害の未来  予測」を含む). 都市・工業. 消費生活・人間総体. 一致(または両立可). 時として相反する.          表2.1.公害問題と地球環境問題との比較.  これによれば、公害問題は地域環境問題の1つであり、一定の限られた地域で 起こり、その被害は目に見える形で表れやすいが、原因や加害者の特定は可能で ある。一方、地球環境問題は広域環境問題と未来環境問題の総体であり、広い地 域で(ある場合には地球全体で)起こり、その被害は目に見える形では現れにく. いため、早期の対応が難しい。さらに、地球環境問題では、汚染物質の数やその. 複合的な作用のしくみ、その被害の範囲、汚染物質の排出者、さらに、将来どの. 一16一.

(20) ような被害が生じるのか、など、すべてにr不確かさ」が含まれる。この「不確 かさ」こそが地球環境問題の特色である(’)。このように、地球環境問題には常に. 「不確かさ」がっきまとうという特色があるゆえ、その解決も公害問題のように. 原因物質の除去のみを最優先にするわけにはいかない。例えば原因物質の除去の ために大量のエネルギーを必要とするなら、そのエネルギー消費自体が地球全体 としてみた場合、別の問題を生む可能性があるからだ。中西は、地球環境問題の. 解決を目指す視点として、次のような事柄を挙げている。まず、多面的に環境影 響を評価し、相互の関係を考えなくてはならない。また、多岐にわたる活動から の環境影響が考えられることから、環境保全と生活レベルとのバランスの問題を. 考慮しなければならない。また、我々は、未来のために現在何をなすべきかとい う問いに答えなくてはならない。特に、近い将来の人類の重要課題とされる資源. 枯渇、エネルギー枯渇の問題と地球環境問題は、同じ枠組で検討されなければな らない(3)。このように、地球環境問題は、公害問題とは違い、さまざまな因果関. 係の中で、また、未来への影響という時間的な広がりの中で考えられなければな らない問題であるということができる。. 2.1.2 様々な地球環境問題  地球環境問題は、地球規模のさまざまな環境問題の総体であり、多くの下位の 問題を含む。地球環境問題に含まれる主な問題としては、地球温暖化、酸性雨、 オゾン層の破壊、熱帯林の減少、砂漠化、などが挙げられる。. 1)地球温暖化  人間活動の拡大に伴って二酸化炭素等の温室効果ガスが大量に排出され、大気 中の温室効果ガスの濃度が高まることにより温室効果が強まり、地表面の温度上 昇をもたらす現象である。温室効果自体は人間の活動がないと仮定した場合にも. 存在し、地表面を生物の生存に適した温度に保つ役割がある。人間活動に伴う二. 酸化炭素濃度の増加は産業革命より始まり、それ以前、大気中の二酸化炭素濃度. は280ppm程度で安定していたがその後増加し、2000年には369ppm程度までに 達した。さらに、大気中の二酸化炭素濃度は今後も増加が見込まれ、2100年ま でには540∼970ppmに達すると予測されている(“)。メタン、フロン等他の温室. 効果ガスの濃度も近年大きく増加している。これらの温室効果ガス、特に二酸化 炭素の最大の排出源は、石油、石炭などの化石燃料の燃焼である。現代社会がエ ネルギーを大量に消費し、またエネルギー源のほとんどを化石燃料に頼っている. 現状があるため、温室効果ガスの削減は容易ではない。また、二酸化炭素の排出. 一17一.

(21) は、経済活動が活発でエネルギーを大量に消費する先進国で特に多い傾向があり、 1999年の国別こ酸化炭素排出量は、アメリカが26.3%(5)と世界の約四分の一を占. めるのをはじめ、先進国で排出量の約半分を占めている。.  このような大気中の温室効果ガス濃度の増加により、地球の平均気温は20世. 紀の100年間に0.6℃上昇したとされ、今後の予測では、21世紀末までに1ggO 年と比較して1.4∼5.8℃の上昇が見込まれている(4)。このような急激な気温上. 昇により、海面水位が上昇し海岸浸食や低地の水没が最も懸念されており、特に. 太平洋地域の島喚国にとって深刻な問題となりうる。また、異常気象が生じやす くなり、洪水や干ばつの増加に伴い食料生産への影響も無視できない。また、気. 温上昇が生態系にも影響し植生が変化し、絶滅種の増加も危惧される。その他様 々な地球温暖化に伴う影響が懸念されている。. 2)酸性雨  石油、石炭等の化石燃料の燃焼に伴い発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化 物(NOx)が大気中で雲粒に取り込まれ、強い酸性の降雨となったり(湿性沈着)、. 乾性の降下物として降る(乾性沈着)現象である。一般的にpH値が5。6以下で あれば酸性雨とされる。原因物質である硫黄酸化物や窒素酸化物の発生源は、工. 場、火力発電所などのほか、自動車からの排出ガスによるものも多い。酸性雨の. 原因物質は大気中の雲粒に容易に取り込まれるため、発生源から遠く離れた地域 にも移動し、時には国境を越えて酸性雨を降らせることがある。このように酸性 雨は国境を容易に越えるため、地域環境間題ではなく地球環境問題に分類される。. 酸性雨の環境への影響は多岐にわたる。ドイツのシュバルツバルトにおける森林 被害は酸性雨の被害の代表的なものとして有名であり、その他の地域でも酸性雨 による森林破壊が深刻化しているところがある。また、北欧、北米を中心に湖沼. の酸性化も進んでおり、魚類の生息等に影響が出ている。また、構造物や歴史的. 遺跡、石像などが酸性雨による腐食の被害を受けたり、地下水が酸性化するとい った様々な影響が生じている。. 3)オゾン層の破壊  成層圏にはオゾン(0,)が高密度で存在する層があり、オゾン層と呼ばれてい る。オゾン層は太陽からの有害な紫外線のほとんどを吸収し、地表の生物が生存. するのに適した環境を提供している。オゾン層がないと仮定すれば有害な紫外線 が直接地表に達し、生物の生存は不可能となる。.  一方、フロンは炭化水素の水素を塩素やフッ素で置き換えた物質で、様々な種. 一18一.

(22) 類がある。他の物質と反応せず、無害であるため、私たちの生活では、冷蔵庫や エアコンの冷媒、機械部品の洗浄剤等多くの用途に使われている。特定のフロン. が大気中に放出されると、上昇して成層圏に達し、太陽からの紫外線に分解され て塩素原子を放出する。この塩素原子がオゾンを分解しオゾンが減る現象がオゾ. ン層の破壊である。オゾン層の破壊は夏期の極地上空で顕著であり、1985年よ り観測されている極地に生じるオゾンホールは、特定フロンの2000年での全廃 が決められているにもかかわらず年々その面積を広げている。.  オゾン層が破壊されると、地上に達する有害紫外線量が増加する。このため、. 人間の健康への被害や生態系への影響、農業生産、水産業等への影響などが懸念 されている。. 4)熱帯林の減少.  南米赤道地域、東南アジア等には広大な熱帯林が分布するが、近年その減少が. 目立っている。熱帯地域の天然林の面積は年間1420万㌶の割合で減少している とされる。この原因としては、焼畑農業、エネルギー源や建築資材としての木材. の過剰な利用、農地の拡大等が指摘されている。熱帯林の減少は洪水等の災害の 増加、熱帯林に生息する生物種の減少をきたす。さらに、熱帯林が失われること により光合成による炭素固定作用も失われるため、地球温暖化の一因となってい. る可能性もある。一度失われた熱帯林は容易に再生しないため、この問題はきわ めて深刻であると言える。. 5)砂漠化  砂漠化とは、砂漠地域の拡大を指すのみならず、土地のもつ生産力が減退し土 地が劣化することを示す広い概念である。砂漠化の要因には、地球規模の気候変 動により降水量が減少し、乾燥地域が拡大するという気候的要因がある。また、. 過放牧による草地の減少、かんがいによる土壌への塩分の蓄積、農地での土壌浸 食など、土地の許容限度を超える人間活動がもたらす人為的要因もある。砂漠化 の影響で最も深刻なものは、食料生産の不足による飢餓の拡大である。砂漠化の. 激しい地域は発展途上国が多く、脆弱な経済基盤のもとで飢餓が発生すると難民 の増加等国際問題となることも多い。また、砂漠化は新たな次の砂漠化を引き起 こすとの指摘もある。. 2.1.3 地球環境問題の相互関係  地球環境問題の問題の根本には、人類による自然環境への継続的なはたらきか けがある。科学技術の進歩や経済の発展により、そのはたらきかけは急激に増加. 一19一.

(23) し、環境の変化もまた急激となる。地球環境問題は、表にあらわれる現象として. は地球温暖化や酸性雨等、個々の問題としてとらえることもできるが、そのすべ. ての背景をなすものは人間活動である。このようにすべての環境問題が、人間活. 動という共通の背景を持つゆえに、環境問題同士は独立したものではなく、複雑 に絡み合いつつ相互に関係しあっている。私たちは、地球温暖化、酸性雨、オゾ ン層の破壊、と、それぞれの環境問題を別個のものとして考えてしまいがちであ り、このような考え方は、地球環境問題の全容を把握することを妨げる恐れがあ. る。しかし、地球環境問題は、人類の活動がつくりあげた複雑に絡み合う問題の. 総体である。地球環境問題解決のためには、環境問題同士の相互関係まで含めて 把握し、広い視点で問題を理解することが重要である。.  平成2年版環境白書は、環境白書として初めて、地球環境問題を相互関係を含 めた問題の総体としてとらえている(図2−2)(6)。. この白書は、個々の環境問題を、その直接の原因により数種に分類している。 先進国. (国暉取引. 開発援莇. ヒ学伽恥捷証で灘用.    。\、一. 渇鞘染.    _’歯. 離鴇1. ︵驚暫.     輸帯林の温少           砂湛化.     (孟叶晶) (遍放伽. 開発進上国の公.  害問題. 晶、. 境穆動.   \貧困対外債/           開発達上国.            図2.2.地球環境間題の相互関係. これによれば、「地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の増加や酸性雨の 発生等は、人間活動の量的拡大による典型的な問題である」(6)としている。すな. わち、これらの問題は、経済の急速な発展、人口増加、エネルギーや資源の大量. 一20一.

(24) 消費など、人間活動の量的拡大が地球環境に直接作用することにより生じる問題 ということができる。また、「熱帯林の減少、砂漠化の進行、野生生物種の減少. 等は、人口増加を背景とした人間活動の拡大が微妙な生態系を有する土地に負荷 をかけていることが大きな要因」(6)であるとし、さらにこの要因の背景として、. 開発途上国の人口増加と貧困問題を指摘している。さらに、rフロンガス等によ るオゾン層の破壊や、化学物質による汚染、有害廃棄物の越境移動等の問題は、. 人類により新たに作り出された様々な物質が経済活動の拡大と相まって大量かっ 広範囲に使われることとなったことに起因している」(6)としている。このように、. 個別の環境問題の直接原因については、いくつかの違った類型を示しながらも、. 同白書は、「地球環境問題は、いずれも人間活動の量的拡大、質的変化が地球生 態系に過大な負荷をかけていることが根本的な原因となっている」(6)とし、地球. 環境問題の根本原因を、人間活動の拡大に求めている。.  このような地球環境問題のとらえ方は概ね理解できる。しかしながら、エネル ギー問題を地球環境問題の単なる一つの要因とのみとらえていると思われる点に ついては賛成できない。人間活動の活発化により最も環境に影響を与えるのは、. エネルギー消費の増加であり、地球環境問題の様々な要因を考える際には、エネ ルギー問題をこそその中心に据えるべきであると考えるからである。この観点に. 基づいてさらに付け加えるならば、開発途上国で今後予想される急激な経済成長 とそれに伴うエネルギー消費の増加は、地球環境の悪化をより急激に、より加速 度的に進める恐れがある。環境白書はこの点についてもあまり言及していない。. そこで、rエネルギー問題」を軸に図2−2を再構成する必要があると考えた。.  エネルギー問題と地球環境問題の関わりを考えるにあたり、考慮しなければな らない事柄の1つが、原子力発電所の環境への影響である。原子力の利用によっ. て地球環境にいかなる影響があるのかという問題について、環境白書は言及して いない。現在、チェルノブイリ事故以上に深刻な原発事故は起こっておらず、「原. 発は安全だ。」という意見も耳にする。しかしながら、放射性物質が環境中に放 出された場合の環境への影響は、予測がきわめて困難ではあるが、ゼロとはいえ. ないはずである。slovic(1987)は、市民がリスクを認識する際の2つの大きな要 素として、破滅因子(dread risk二恐怖のリスク:制御できない、恐ろしい、地球. の破滅、致死的な結果、不公平、次世代への高いリスク、削減が難しい、増加し. つつあるリスク、受動的等の要素を含む)と未知因子(unknown risk:観察でき ない、知ることができない、遅発性の効果、新しい、科学で知ることができない. 一21一.

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