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5.1 教科間連携に関する提言

5.1.1 エネルギー環境教育における教科間連携の必要性

 これまでに述べたとおり、社会、理科、技術・家庭科(以下「各教科」と記す)

はそれぞれにエネルギーと環境に関連する内容を含んでおり、今回の学習指導要 領の改訂により一層の充実がはかられている。しかしながら、現在の各教科のカ リキュラムによりエネルギー環境問題の体系的な理解をはかることは困難であ り、各教科のカリキュラムはいくつかの問題を抱えている。

 その問題の1つは実施時期の問題である。各教科におけるエネルギーと環境に 関連する分野の実施時期とその内容の概略を表5−1に示す。

表5−1. 各教科におけるエネルギーと環境に関連する内容の実施時期一覧 一伽である かっこ内の 脅は授

社会 理科 技術 家庭

(地歴並行履修型の場 (第1、2分野交互履 (エネルギー変換を利

合) 修の場合) 用した製品製作選択の

場合の一例)

1

学期

1 2

学期

3 継働一・・ 一 幡欝  ・・

学ノ

・鞭纏盤儲繍蜘

馨.えよ・㍗ f  −  

綱醜・1勲・,       −     、    一

1

学期

2 ㈱.鋤

2 鴛舞⑳入口金布とそ⑳ 描移ぐ1i》

学 期 懲島と艮本の 人ロ構戒 断の資源ど臼奉①

国膿化誌代の産業と・藻

3 境m

1 第↓) (選釈) 

い、る趣参復エネルギー 江ネルギー⑫剃網のじか

.㈲ たを考えよう種⇒

3 2学⁝ 卑ネルギ軍・羅換鋤し蕉轟

を襯漣よ砂《4ン

エネルギー変換を利用し

/(饗民) (第1) た.ものを製作しよう(訂)

3 公醤の防止と環境保全 エネルギー資源の利用

︵1ン ︵3︶

期 1地球市民をめざして(1)

戯エネルギー問題

(第2)

然と環境保全(3)

これからのエネルギ1r利 用について考えよ う③・

(選択)次のいずれか(4)

戴球:環境問題を考える 科学技術の進歩と人間

⑫う 生活

自、と 爬生活

※この表は以下の指導書をもとに作成した。

社会:東京書籍「新しい社会」教師用学習指導書 理科:東京書籍「新しい科学」教師用学習指導書 技術・家庭:開隆堂「技術・家庭」学習指導書

この表にも見られるとおり、エネルギーと環境に関連する内容は教科ごとに実施 時期がまちまちである。しかも地球環境問題に直接関連する内容(社会科公民的 分野「世界平和と人類の福祉の増大」、理科第1分野「科学技術と人間」)は3 年3学期に履修することになっており、時期的にも時間的にも学習を深める余裕

を持つことが難しい。

 2つ目の問題点は内容面にある。第4章で述べたエネルギー環境教育に関する 中学校教員アンケートにおいて、「地域環境問題」「地球環境問題」については 各教科で重複して扱われていたがその一方で「地球環境問題への国際的取組」は どの教科でもあまり行われていないことが明らかとなった。また、教科書記述の 分析において、各教科の教科書に次のような問題点が見いだされた。社会科にお いては国際社会が地球環境問題にどのように取り組んできたのかを示す記述、特 に京都議定書についての記述が不足していた。理科においては、エネルギーの定 義が教科書ごとに違い、また、エネルギー変換の際の損失やエネルギーの有効利 用についての記述が不十分であった。技術分野では、エネルギー変換を利用した 製作品の製作にあたり、エネルギーの有効利用を十分に意識したものとなってい ないと思われた。家庭分野においては、省エネルギーの重要性を強調する記述が 不足していた。このように、エネルギー環境問題の理解を目的とした場合、現在 のカリキュラムは内容面でも不十分であり、改善が必要と思われる。

 アンケート結果より、エネルギー環境教育において教科間連携が必要であると いう意見が多数であったが、これは上記の2つの問題点を反映したものと思われ る。したがって、上記の2つの問題点を踏まえ、教科間連携を重視し、エネルギ ー環境問題を理解させるに十分な内容を持ったカリキュラムを作成する必要があ

る。

 さらに、エネルギー環境教育のカリキュラムの作成にあたっては、総合的な学 習の時問の位置づけも重要な要素である。アンケートにおいて各教科の教員の多 くは、エネルギー環境教育は総合的な学習の時間が主に担うのが望ましいと考え ていることが明らかになった。総合的な学習の時問と各教科の関係にっいては、

教科学習と総合的な学習の時間はそれぞれ独立しており、ねらいも違うため、連 携をはかる必要はないとする考えも一方にある。しかし、平成15年12月には 学習指導要領が一部改訂され、総合的な学習の時間のねらいにr(3)各教科,道 徳及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活におい て生かし,それらが総合的に働くようにすること。」( )という文言が付け加えら

れた。このことにより、各教科で修得された知識・技能の上に立って総合的な学 習の時間が成り立っこと、すなわち各教科と総合的な学習の時間に関連があると いうことが学習指導要領にも明示されたと考えられる。また、松本(1999)は、学 校五日制による教科の学習時間の大幅減、基礎学力の低下の問題等を根拠に、総 合的な学習の時間は「それが教科の学習ではないというところに意義があるとい うことを認めつつも(中略)少なくとも、教科の学習と「総合的な学習の時間」

における学習との関連を積極的に意識すべき」(2)と、教科学習と総合的な学習 の時問における学習とが積極的に連携する必要があることを指摘している。

 エネルギー環境問題の理解のためにはその基礎となる多くの知識が必要であ り、これらは各教科において身につけさせなければならない。しかし、エネルギ ー環境問題は学際的、教科横断的性質を持つことから、各教科において身につけ た知識の上に立ち、総合的な理解をはかる必要がある。したがって、総合的な学 習の時問においてエネルギー環境教育を扱う場合、各教科における既習の知識を 利用した展開を考える等、各教科との連携をより重視するべきであると思われる。

5.1.2 教科間および総合的な学習の時間との連携を考えたカリキュラム案 5.1.2.1 各教科において扱う内容

 現在各教科で行われているエネルギーと環境に関連する内容は、エネルギー環 境問題の理解にとって必ずしも体系化されているとはいえない。そこで、現在行

われている内容をより体系的なものとすべく、検討を行った。

 江田(2004)は、エネルギー環境教育で扱うべき内容を次のように示している。

        表5−2.エネルギー環境教育で扱うべき内容(3)

・エネルギーとは何か、その科学的理解

・資源・エネルギーの開発

・資源・エネルギーの利用

・資源・エネルギーの有限性

・資源・エネルギーの利用にかかわる環境問題

・省資源・省エネルギー、リサイクル活動

表5−2に示された6項目では、①産業革命以来のエネルギー大量消費の歴史の上 に現在のエネルギー環境問題が存在し、その克服のための国際的努力が続けられ ていること、②エネルギー環境問題の解決のために、新しい非化石エネルギー源 の開発やエネルギーを有効に利用するための技術開発が進められていること、の 2点が強調されにくいと思われる。そこで、表5−2に従い、上記の2点を加味し

て、各教科で扱うべきエネルギーと環境に関連する内容を8つの小単元にまとめ てみた。以下にこれを示す。

1.現代社会とエネルギー

目標 現代社会はエネルギーの大量消費に支えられた社会であることを理   解させる。

  (1)産業革命から現在までのエネルギー消費の歴史的推移   (2)現在の各国のエネルギー消費と今後の見通し

  (3)エネルギーの大量消費に伴って生じている問題(資源枯渇、地     球環境問題)

2.資源枯渇問題

目標 化石エネルギーは有限であり、近年の大量消費により枯渇問題が懸    念されることを理解させる。

  (1)エネルギー資源の地域的偏在   (2)主要なエネルギー資源の可採年数

3.地球環境問題

目標 エネルギーの大量消費により様々な地球環境問題が生じていること    を理解させる。

  (1)様々な地球環境問題   (2)地球環境問題の原因

4.地球環境問題解決のための国際的取組とその課題

目標 国際社会の地球環境問題への取組の経過と残された課題、今後の見    通しについて理解させる。

  (1)地球環境問題への国際的取り組みの歴史(国連人間環境会議〜

     地球サミット)

  (2)京都会議(COP3)と京都議定書の概要   (3)京都議定書の課題と今後の見通し

5.エネルギーとは

目標:エネルギーとは「仕事をする能力」であり、様々な形態をとること、

相互に変換可能であること、変換の際に損失が生じることを理解さ

せる。

(1)エネルギーの定義

(2)様々なエネルギーの形態

(3)エネルギー保存の法則

(4)エネルギーの変換と損失

6.エネルギー利用の実際

目標 わたしたちのくらしの中でエネルギーがどのように利用されている    かを、実習等を通じて理解させる。

  (1)エネルギー変換を利用した製作品の製作

  (2)様々な発電方式のしくみ(火力、水力、原子力)

  (3)くらしの中のエネルギー変換と変換効率・損失   (4)エネルギーの有効利用の必要性

7.これからのエネルギー

目標 化石エネルギーの枯渇問題や地球環境問題に対応するための新しい    エネルギーの開発の現状と見通しについて理解させる。

  (1)現在行われている発電の長所・短所

  (2)自然エネルギーの開発の現状と今後の見通し

8.エネルギーの有効利用

目標 化石エネルギーの枯渇問題や地球環境問題に対応するためには、新    しいエネルギー源の開発とともに、エネルギーの有効利用を行いエ    ネルギー消費の総量を抑制することが大切であることを理解させ

   る。

  (1)わたしたちの生活の中での省エネルギー

  (2)エネルギーを有効利用するための新しい技術(コジェネレーシ      ョン、ハイブリッドカーなど)

※ここに示した目標は主に知識・理解に関するものであるが、これ以外に、全体  を通じて、エネルギー環境問題への関心を高め、その解決へ向けての意欲を養  うことを、情意面での目標としている。