算数教育における割合の考え方の構成に関する研究
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(2) 学位論文. 算数教育における割合の考え方の構成に関する研究. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻. 自然系コース.
(3) はじめに 昔から,割合指導は困難であると言われている。事実,割合の理解に困難さを示す子供 は少なくない。また,子供にとって割合を理解することは困難であると感じている教師や, その指導も困難であると感じている教師も少なくない。. 割合に苦手意識を持っている教師は,割合に関する3つの公式を子供に教え込み,基準 量・比較量・割合を公式に当てはめて解く練習を繰り返すことで正答率を上げ,子供が割. 合を理解したと思い込んでいる場合がある。しかし,こうした指導では,指導直後の5年 生では正答率は高くても,6年生になる頃には公式を忘れてしまい,正答率は大幅に低く なる傾向がある。結局,割合の考え方が定着していないのである。したがって,割合を使 って比較するような割合の考え方を活用する場面には適応できない。 割合の理解に困難を示す子供は,割合に関する3つ公式が別々に理解されているために, 何を何で割るのかが分からなくなり,大きい方の数値:を小さい方の数値で割るというよう. な適当な立式を行う。このような子供は,基準量・比較量・割合の3つの関係を相互に関 連づけて理解することが必要であり,そうすることで,割合の考え方を活用する場面にも 適応できるようになることが期待できる。. 筆者も割合指導をする中で,割合の理解に困難さを示す子供に直面した一人であった。. そこで,割合を指導することは困難であるという教師の苦手意識を改善できるような指導 法や指導計画があれば,子供が割合を理解することの困難さも改善されるのではないかと 考えたことが,割合の研究を始めたきっかけであった。. その後,2002年と2003年に「日本数学教育学会誌 算数教育」において割合の特集が組 まれ,割合の指導法や指導計画に関する研究が掲載されていたが,今なお,割合指導に課 題があるように思われた。その理由として,国内での割合に関する研究において,学力調 査による量的な研究や実践報告は多くあるが,子供にとって割合を理解することが困難な 要因を追求した質的な研究はほとんどないことが考えられる。そこで,本研究では,その 要因を追求する調査問題を開発し,子供が割合の考え方を構成する過程を明らかにする。. そして,子供が割合の考え方を活用する場面にも適応できるようになるための効果的な指 導法や指導計画をデザインし,教育実践への提言をすることにする。. 平成20年1月 坂 井 武 司. 1.
(4) 目 次. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1. 第1章 割合指導における課題と本研究の主題. 第1節割合指導における課題 1.割合の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 5. (1)割合の定義 (2)割合に関する概念的知識と手続き的知識 2.割合指導に関する先行研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 7 (1)割合指導の体系 (2)割合指導における図的モデル (3)割合指導の問題点 3.割合指導の現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 12 (1)割合に関する子供の理解の実態 (2)割合指導に対する教師の意識の実態 (3)割合指導の課題 第2節 本研究の主題と本論文の構成 1.本研究の主題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 14 2.本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 14 第2章 割合の考え方に関する子供の実態 第1節 割合による比較についての先行研究 1.「部分一部分」と「部分一全体」への着目 ・・・・・・・・・・… 16 2.比例的推論による関係づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 18 3.比例的判断における「1/2」の境界線 ・・・・・・・・・・・・… 20 第2節 比較における着目の仕方と方略に関する調査 1.調査の枠組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 25. (1)調査の目的 (2)調査の内容 (3)調査の方法 2.調査結果を分析するための基準 ・・・・・・・・・・・・・・・… 28 (1)各問題において子供が書いた理由の代表的な記述の例 (2)着目の仕方の観点 (3)比較の方略の観点 3.調査結果の分析と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 31. (1)正答率 (2)着目の仕方 (3)比較の方略 (4)割合による比較に関する発達段階.
(5) 第3節 全体への着目に関する調査 1.全体に着目する意義 ・・・・・・・・・・・・・・・… ●’●●●37 2.調査の枠組み ・・・・・・・・… ●’●●’●’●●’●.●’●38. (1)調査の目的 (2)調査の内容 (3)調査の方法 3.調査結果を分析するための基準 ・・・・・・・・・・・・・・・… 44 (1)実験群の子供の記述した理由を分類するための基準 (2)統制群の子供の記述した理由を分類するための基準 4。調査結果の分析と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 46 (1)「2倍・1/2」の関係にある2量と比較の方略 (2)「部分一部分」から「部分一全体」への着目. (3)比例的方略と着目の仕方 第3章 割合の考え方の構成に関する授業実践 第1節 直観的な割合についての先行研究 1.「2倍・1/2(半分)」の直観的認知 ・・・・・・・・・・・・・… 51. 2。類似性の認知 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 52 第2節 「2倍・1/2」を活用した類似探求授業. 1.類似探求授業による実験授業の目的と概要・・・・・・・・・・・… 54 (1)実験授業の趣旨 (2)実験授業の参加者 (3)実験授業の概要 (4)記述による解答 (5)実験授業の実施時期 (6)実験授業の授業者 2.類似探求授業による実験授業の結果の分析と考察 ・・・・・・・… 58 (1)子供の記述した似ている理由の分類 (2)子供の描いた似ているもの・似ていないものの分類 (3)子供の記述した似ている理由からみた「2倍・1/2」の有効性 (4)子供の描いた似ているもの・似ていないものからみた「2倍・1/2」 の有効性 (5)「2倍・1/2」の活用の仕方. (6)実験授業の意義 第3節 「2倍・1/2」を活用した色テープ図による割合指導 1.色テープ図を活用した研究授業の目的と概要 ・・・・・・… の・・66. (1)研究授業の趣旨 (2)研究授業と調査の参加者 (3)研究授業の実施時期. (4)研究授業の授業者.
(6) (5)研究授業の特徴 (6)研究授業の内容. (7)調査聞題 2.事後調査と保持調査の結果の分析と考察 ・・・・・・・・・・・… 75 (1)事後調査と保持調査における正答率と完答率 (2)事後調査と保持調査における有意差 (3)割合に関する概念的知識と手続き的知識の構成 (4)色テープを活用した指導の効果. 第4章 割合の考え方を構成する指導デザイン 1。第1次:割合に関連する知識 ・・・・・・・・・・・・・・・…. ・78. 2.第2次:割合の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 。80. 3.第3次:割合による比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. ・81. 4.第4次:百分率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. ・82. 5.第5次:割合のグラフ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 。82. 6.第6次:割合を使って ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. ・83. 第5章 本研究のまとめと今後の課題. 第1節 本研究のまとめ 1.各章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 84. (1)第1章のまとめ (2)第2章のまとめ (3)第3章のまとめ (4)第4章のまとめ 2.全体的なまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ●90. 第2節今後の課題 1。割合に関する概念的知識と手続き的知識の関係について ・・・・… 91 2.割合指導における教師の使用する言語方略について ・・・・・・… 91 3.割合の考え方を構成する指導体系について ・・・・・・・・・・… 91 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 93 引用・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 94. 一∠!.
(7) 第1章. 割合指導における課題と本研究の主題. 第1節 割合指導における課題 1.割合の考え方 (1)割合の定義. 割合の定義について,明治38年の黒表紙教科書から平成元年までの各社の検定教科書を 調べ,その変遷を6っに分けた直(1990,1991)の見解をまとめると,次の通りである。. ○黒表紙教科書 歩合と割合を同意味であると捉えて,数として定義する。. ○緑表紙教科書・青表紙教科書・白表紙教科書 歩合は割分厘で表された割合として狭義で使われるようになる。しかし,教科書では割 合という言葉の定義や説明はしていない。. O昭和26年度版教科書 昭和26年学習指導要領試案において,第6学年で指導すべき用語として割合が掲載され る。しかし,教科書では明確な定義はなされていない。また,国定教科書のように中学年 から割合を日常語として使うことは,この時代の教科書からなくなる。. 0昭和33年度版教科書 教科書ごとに定義が異なり,以下に示す3っの定義が見られる。 (a)「一方の数や量が他方のどれだけにあたるかという考え方を割合といいます。」と いうように,考え方を割合とするもの。. (b)「2つの量の割合は一方をもとにして他方が何倍,または,何分の何にあたるかで 言い表すことができます。」というように,割合を関係に近い意味で使うもの。. (c)「一方をもとにして他方が何倍にあたるかを表した数を割合といいます。」という ように,数を割合とするもの。 ○昭和43年度版教科書 昭和33年度版教科書の(b)・(c)で定義される。. ○昭和52年度版教科書∼平成元年度版教科書 「ある量をもとにして,くらべられる量が,その何倍にあたるかを表した数を割合とい います。」というように,割合を数として明確に定義する。. さらに,割合という日常語が戦後に用語として使われるようになったことに関して,直 (1991)は,次の3つの観点から分析を行っている。. 5 ,.
(8) ○戦前と戦後では割合や比の指導目標が変わったため,戦後は,歩合算のための割合指導 ではなく,数の働きの理解・乗除の意味の拡張・数量関係の把握のための重要な考え方 を身につけることを,割合指導の目標とするようになったためである。. ○割合の指導目標の変化にともなって指導順序も戦前と戦後では変わったため,黒表紙教 科書・緑表紙教科書では,「比→比例→歩合」の順に指導しており,歩合や百分率は比 の値の表現として説明されていたが,戦後(正確には昭和33年度版教科書以降)は,比 の前に「割合」という単元を設定し,「割合→百分率・歩合→比→比例」の順に指導し ている。. ○戦前は,計算方法を形式的に教授していたが,戦後は,計算の意味を重視するようにな つたため,小数・分数の乗除において,形式的な計算だけでなく,意味にもとづいて立 式の判断ができるようにするために,乗除の意味の拡張が必要となり,割合という言葉 が必要とされたのである。. なお,平成10年度版以降の教科書においても,「ある量をもとにして,くらべる量がも とにする量の何倍にあたるかを表した数を割合といいます。」というように,割合を数と して定義している。つまり,割合は同種の量の商(比の値)であり,それらの関係は,「割. 合=比較量÷基準量jr比較量=基準量×割合」「基準量=比較量÷割合」という3つの 式で表される。. (2)割合に関する概念的知識と手続き的知識 割合の考え方は,「割合=比較量÷基準量」によって表される。そして,割合の考え方 は,関連する知識によって,より強固になると考えられる。 小西(1968)は,割合の考え方が数量の問の関係を考察するときの見方や考え方であり,. それを取り上げることによって,数の概念や関数概念,あるいは,関数的考察のもととな る順序対の概念や対応の概念というような,数学的に重要な概念が育ち,さらに,これを 使うことによって,割合という見方で物事を見ることができ,数学的に処理できるように なるとしている。このことから,割合の考え方には,多くの他の知識が関連していると言 える。. そこで,割合の考え方を概念的知識と手続き的知識という2っの側面から捉えるとき, 割合の考え方には,これら2つの知識に関連する多くの知識が含まれるが,本論文では, この概念的知識と手続き的知識を,次のように定義する。. 概念的知識:割合に関する場面の把握や,その場面における関係の把握に作用 する知識 手続き的知識:割合・比較量・基準量を求めるための立式に作用する知識. 6.
(9) なお,割合の考え方に関連する知識とは,例えば,次のような内容を指す。 〔概念的知識〕. ・基準量の把握 ・比例的感覚. ・「部分一部分」と「部分一全体」への着目 ・「2倍・1/2(半分)」の直観的認知. 〔手続き的知識〕. ・割合・比較量・基準量の相互関係 ・比較における関係づけの方略. 2.割合指導に関する先行研究 割合指導に関する先行研究として,日本数学教育学会誌「算数教育」に掲載された論文 を中心に,割合指導の体系,割合指導における図的モデル,そして,割合指導の問題点と いう3っの観点からまとめることにする。 (1)割合指導の体系 渡辺(1957)と堀川(1957)の提唱する指導体系についてまとめると,以下の表1−1になる。. なお,現在の学習指導要領における指導学年とは異なるものもあるが,概ね,現在の割合 指導の体系の原型が把握できると考える。 表1−1.割合の指導体系 学年. 渡辺(1957). 堀川(1957). 1. ○倍概念の素地を作る。. 2. 0倍とその逆関係を整数・分数を使っ ○単位を用いた倍概念を培う。. ○倍概念を培う。. て表す。. 3. ○乗法九九を習得する。. Oaがbの何倍であるかをa÷bで求 01000×10=10000 0数の相対的大きさを知る。. める。. ○割合としての分数の素地を作る。. ○乗法九九が完成する。. Oaがbの三倍か, aは何のb倍かを知 る。. ○∼の1/2,1/3…1/10の操作をする。. ○割合としての分数を知る。. 0割合の計算をする。. ○万・十(百・千)万の10n倍の関係を 知る。. 4. ○分数を割合として見る素地を作る。. ○小数の概念を培う。. ○単位量を求めず,割合を考えて全体 ○分数で量を表す。. ○億・十(百・千)億の10n倍の関係を. を求める。. 知る。. 0割合としての分数と小数を使う。. 7.
(10) 5. ○割合を分数で表すことの理解の素地 ○歩合,%,比の第1・第2用法を知る。 ○:を用いて比,比の値(割合)の概念. を作る。. を明確にする。 6. ○割合の意味を知る。. ○分数間の乗除を習得する。. ○割合の求め方を知る。. ○比の第3用法の簡単なものを知る。. ○割合の表し方(歩合,%)を知る。 ○連比について知る。. また,田上(1959)は,2年生∼6年生に行った調査から,子供が2量を割合で見るより 差で捉える傾向があることや,基準を小さいものにとって割合を求めることには安定して. いるが,基準を大きいものにとることには抵抗があることから,「A<B」の場合におい て,rAはBの六戸か」を求める立式は不確実であると指摘している。そこで,田上は, 「A>B」の場合における基準の把握を徹底し,商が1より大きい小数になる計算の仕方. が十分に理解されれば,「A〈B」の場合においても,「A÷Bjの立式は確実なものに なるという仮説を立て,教育実践から,次の表1−2にまとめたような割合概念の発達段階 と各学年における指導内容を提言している。 表1−2.割合概念の発達段階. 高学年における指導内容. 学年. 2. 0何倍か,または,何分の1かを問われて答えられる。 ・数えることから何の何倍ということへ向かう。 ・連続量について言えることから不連続量についても言えることへ向かう。. 3. ○問われないでも割合が使える。 ・子供が自ら基準を決めて他方を表す。. ・単位を固定した場合の2/3mと,基準を決めると生まれる2/3(割合)の区 別ができる。. ※2・3年は,小さい量を基準としてグルーピングする考え方が大多数で, 大きい量を基準と見る考え方は少数である。. 4. 02つの大きさを対等に見て,どちらも基準にできる。 ・何から何を見るという見方を身につける。 ・基準を交換すると割合が逆になることを知る。. 5. ○小さい数は大きい数の何倍かを問われて答えられる。 ・リアルな思考から形式的思考へ向かう。. ・1を単位とする分数と,基準を決めてそれを拡大して他方を見る割合の区 別ができる。. ※4・5年は,包含除による考え方に支えられている。 6. ○問われないでも割合が使える。. ・場に即して,基準を自由にとり,スケールを決めて比べる。. 8.
(11) (2)割合指導における図的モデル 割合指導における図の利用について,田村(1965)は,割合の関係を数直線の上にのせ,. その概念を視覚化するとともに,比の3用法の視覚化を図るというねらいのもとに,a× p=bを1本の数直線の図(図1−1)を用いて表すことを提案している。. 0. a. 0. 1. b. a:基準量,b:比較量, p:割合 P. 図1−1.1本の数直線の図 加藤(1980)は,割合の問題の構造を捉え,その構造から演算方法を決定するために,2 本の数直線を組み合わせた図(図1−2)を利用した指導を提案している。最近の研究でも,. 土屋(2002)は,2本の数直線の利用により,割合の意味や問題解決の理解を確かなものに していくことができたと述べており,市川(2003)も,2本の数直線を用いた割合指導の有 効性を述べている。. 0. b. a. a:基準量,b:比較量, p:割合. 0. 1. P. 図1−2.2本の数直線の図 小林・石田(1986)は,割合の問題を考えるときの手順をはっきりと教え,数量関係構造 図(図1−3)を用いた手順の中で「仲よし」の関係を見つけさせるという指導法により, 事後調査において高い正答率を得たことを報告している。 くらべる. b. ×. もと. わり. a. P. 図1−3.数量関係構造図.
(12) 崎谷(1996)は,量を果肉の部分,割合を芯の部分で表したパイナップルの図(図1−4). によって割合の意味の理解を図り,その後,パイナップルの図→帯図→線分図と示してい くことで,線分図の意味の理解を図る指導を提案している。 もとにする量:. くらべる量. もとにする量. 1. くらべる量. …果肉. 割合. …芯. 割 合. 1. 図1−4.パイナップルの図. (3)割合指導の問題点 割合指導の問題点について,渡辺(1965),金松剛(1966,1967),大阪市教育研究会算数 部(1966)の見解をまとめると,次の表1−3になる。. 表1−3.割合指導の問題点. 割合指導の問題点 渡辺 (1965). (1)基準量の把握の系統的指導. (2)連続量と分離量に関する割合の把握の難易 (3)対比,包含関係における割合の関係の難易. (4)比の3用法の難易と指導の順序. (5)Aを2,Bを1と見ることに代表される割合の表現(比の表現). と2倍,20%等で代表される比の値の表現の2つの系統の分析 (6)割合に関する文章,言葉の問題 (7)割合の関係的な捉え方の指導. 金松 (1966,1967). (1)割合の意味する内容が多岐に渡っているためと考えられる。. 割合は大きく分けて2つの意味を持っている。 ・ある量Aが,同種の他の量Bの9倍(1/9)である。. ・同種の2量の比の意味に使う(例えば,AとBは,2:3の割 合)。. (2)割合の概念は,比・歩合・百分率だけでなく,分数・測定・乗. 法・除法などさまざまな領域に含まれ,重なり合っていること が,指導の系統を組織づけることを一層困難にしている。した がって,次のような研究が望まれる。. ・基準量を把握させるための指導. ・連続量と分離量に関して,倍・何分の1の指導 ・比の3用法の演算決定と数直線の利用. 】0.
(13) ・比の3用法のどれにウエイトを置くか,その指導の順序 ・適用問題. ・割合に関する文章表現と用語. ・比や比例と関数的な見方,考え方 ・比と比の値についての問題. ・倍と比,倍と割合,比と割合の概念 大阪市 教育研究会 算数部 (1966). (1)何をもとにして,どのように比べるのかを理解していない。. 基準量の把握ができていないため,比較量と混同して,適用を 誤っている。 (2)基準量を意識した表現に慣れていない。. ・∼は∼の2つ分 ・∼をもとにして ・∼に対して. ・∼は∼にあたる. ・∼の∼は (3)数値への抵抗も少しあり,計算の誤りも多い。 (4)3用法の混乱が大変目立っている。. (5)線分図などを描いて考えているが,その図から演算が考え出せ ず,算法をでたらめにしている。 (6)歩合と百分率を混同し,小数との関連を誤っている。. (7)複合問題になると,基準量の交換ができない。単純に基準量と 比較量を結びつけている。 中村(1996)は,割合による意味づけの価値として,次の3つをあげている。. ○乗数が小数になったとき,拡張の考え方を子供に意識させることができる。 ○整数の乗法で通用する同数累加の意味づけを包含することができる。 ○数直線を数のモデルとし,整数・小数・分数の乗法を統一的に見ることができる。. また,次のように割合の意味づけの問題点を先行研究から2つ指摘している。 ①小数の乗法における意味の拡張を子供が意識していない。 ②割合の見方そのものが子供にとって難しい。. そして,問題点①の原因を言葉の式による立式指導にあるとし,言葉の式に頼らず立式 させるために,数直線を立式の根拠に用いることを提案している。. さらに,問題点②の原因を乗法の問題場面に起因するとし,1あたりの大きさは何か, また,比例する数量の関係は何かを子供に意識させることが大切であると述べている。. 月.
(14) 3.割合指導の現状と課題 (1)割合に関する子供の理解の実態 割合に関する子供の理解について,清水ら(2006)による,算数達成度に関する国際的 プロジェクト(IPMA)の日本における研究結果の報告がある。. 日本における算数達成度調査において,割合に関する問題としては,次の7問が出題さ れている。. 〔第5学年 基礎問題〕. ①300mの10%は何mですか。 〔第5学年 応用問題〕. ②60kgの25%は何kgですか。. ③1年に8%の利子がつく貯金に50円を預ける。1年後の利子は? 〔第6学年 基礎問題〕. ④50gの1/10は何gか? ⑤12年の1/3は何年か?. ⑥100mの3/5は何mですか。. ⑦ある長さの3/5は30mです。もとの長さは何mですか。. これらの問題に対する第5学年の終わりと第6学年の終わりにおける正答率を示すと, 次の表1−4になる。. 表1−4.日本における算数達成度調査の割合に関する正答率 問題番号. 正答率(%). 第5学年の終わり. 第6学年の終わり. ①. 69.0. 80.7. ②. 42.0. 44.0. ③. 9.9. 14.2. ④. 74.2. 80.0. ⑤. 80.5. 88.8. ⑥. 53.5. 70.6. ⑦. 39.2. 54.6. 表1−4より,第5学年で学習する割合の内容に関する定着度は,十分であるとは言えな い。したがって,子供は,割合の学習内容に対する困難さを感じていると考えられる。. (2)割合指導に対する教師の意識の実態 割合指導に対する教師の意識について,日本数学教育学会算数興味調査委員会や国立教 育政策研究所教育課程センターによる報告がある。. 日本数学教育学会算数興味調査委員会(1998)は,次の5っの観点から,算数の指導内容. 12.
(15) についての教師の意識に関して調査を行っている。. (1)指導しやすい単元 (H)指導しにくい単元 (皿)児童がよく理解できたと思われる単元. (IV)児童がよく理解できなかったと思われる単元 (V)もっと時間をかけて教えたい単元. この調査において,第5学年では,算数の指導内容として13の単元を取り上げており, 割合に関する単元としては,「百分率とグラフ」がある。. 「百分率とグラフ」は,(∬)指導しにくい単元として,「小数のわり算」と並んで第 2位(12%),(IV)児童がよく理解できなかったと思われる単元として,「分数と小数(商. としての分数,分数と整数・小数の相互関係)」と並んで第3位(12%),(V)もっと時 間をかけて教えたい単元として,第2位(14%)となっている。 また,国立教育政策研究所教育課程センターは,算数の指導内容に対する児童の理解と. 興味という2っの観点から,平成15年度教育課程実施状況調査の中で,教師の意識に関し て調査を行っている。. この調査において,割合に関する単元としては,「百分率(パーセント)」がある。. 「百分率(パーセント)」の指導内容について,児童にとって理解しやすいと回答した 教師は29.6%,児童にとって理解しにくいと回答した教師は54.5%,無回答は15.8%であ. った。また,児童が興味を持ちやすいと回答した教師は48.8%,児童が興味を持ちにくい と回答した教師は23.7%,無回答は27.6%であった。. 2つの調査結果から,子供は割合に興味を持っているが,教師は割合の指導に対する困 難さを感じていると考えられる。. (3)割合指導の課題 過去に指摘された割合指導の問題点のうち,あまり研究されていない内容と,子供の実 態を考慮したとき,割合指導の課題として,次の4つの課題が考えられる。 (1)基準量:の意識化. (2)「部分一部分」と「部分一全体」への着目. (3)割合・比較量・基準量の関係的理解 (4)「2倍・1/2(半分)」の直観的認知の活用. 13.
(16) 第2節. 本研究の主題と本論文の構成. 1.本研究の主題 これまでの割合に関する研究において,実践的な研究や量的な研究が多くなされている にもかかわらず,今なお,割合が子供にとって理解しにくい単元であり,教師にとっても. 指導しにくい単元であることに変わりはない。その原因の1つとして,子供の認識を追求 した質的な研究が,あまりなされていないことが考えられる。. そこで,本研究の主題は,子供が割合の考え方を構成する過程を考察し,次の2点につ いて教育実践への提言をすることである。. (ユ)割合に関する概念的知識と手続き的知識を構成するとともに,これら2つの 知識を結びつけることのできる授業を構築すること。 (2)割合の単元全体の指導計画をデザインすること。. そのために,本研究では,いくつかの調査を実施し,その結果をもとに,割合に関する 問題場面の解決過程を考察することを通して,子供の認知という観点から,効果的な指導 法を探ることにする。. 2 本論文の構成 本論文では,本研究の主題にもとづき,以下のような順で述べることにする。. 第1章では,既に,割合の定義,および,割合に関する概念的知識と手続き的知識につ いて述べ,割合の考え方を明確にした。また,過去の研究から,割合指導に関する問題点 を取り上げるとともに,割合指導の現状として,子供の理解や教師の意識の実態を把握す ることで,割合指導の課題を明らかにし,本研究の主題と本論文の構成を述べた。. 第2章では,本研究の主題にもとづき,第1章で得られた課題を考慮して,割合の考え 方に関する子供の実態を把握するために実施した2つの調査(比較における着目の仕方と 方略に関する調査,全体への着目に関する調査)について述べ,その結果の分析と考察か ら,割合の考え方を構成する授業を構築するための示唆を得る。. 第3章では,第2章で得られた示唆をもとに,子供の認知を考慮した2っの授業実践(「2 倍・1/2」を活用した類〔似探求授業,「2倍・1/2」を活用した色テープ図による割合指導). について述べ,その結果の分析と考察から,これらの授業の効果について探る。. 第4章では,第3章で述べた割合の授業実践を軸に,基準量の意識化と「半分」の割合 としての意識化,そして,「2倍・1/2(半分)」を活用するための数値の特殊化という割. 合に関連する知識を構成する指導を含めた割合の考え方を構成する単元全体の指導計画を. 14.
(17) デザインする。. 第5章では,本研究のまとめとして,第1章から第4章までの各章のまとめを述べる。 また,まとめを通して見えてきた,今後の課題について述べる。. 15.
(18) 第2章. 割合の考え方に関する子供の実態. 第1節. 割合による比較についての先行研究. 1.「部分一部分」と「部分一全体」への着目 Singer, J. A.&Resnick, L。 B.(1992)は,第6学年・第7学年・第8学年の15人の子供に,. 15題の「Marbles問題」を用いて,「部分一部分」と「部分一全体」に関する調査を行っ た。「Marbles問題」の一般形式は,次の通りである。. 一方のびんには,A個の赤いおはじきとB個の黒いおはじき,合計C個のおはじき が入っている。他方のびんには,X個の赤いおはじきとY個の黒いおはじき,合計 Z個のおはじきが入っている。ジョンが1個おはじきを取り出すとき,赤いおはじ きを取り出したいのなら,どちらのびんを選ぶ方がいいでしょう。 また,「Marbles問題」は, Complete・Part−Part(P−P)・Part−Whole(P−W)という3つの. 情報のタイプと,Equal−Whole・Equa1−Red・Equa1−Black・Unequal−Red・Unequa1−Black. という5っの量のタイプとを組み合わせることによって構成されている。具体的には,次 のようなタイプである。 〔情報のタイプ〕. Complete:赤いおはじきの数(AとX),黒いおはじきの数(BとY),そして,おは はじき全体の数(CとZ)の3っの量の全てを提示するタイプ。. Partia1−Part l赤いおはじきの数(AとX)と黒いおはじきの数(BとY)の2つの量の み提示し,おはじき全体の数(CとZ)は欠けているタイプ。. PartiaHh・le:赤いおはじきの数(AとX)とおはじき全体の数(CとZ)の2つの量 のみ提示し,黒いおはじきの数(BとY)は欠けているタイプ。 〔量のタイプ〕. Equa1−Whole:おはじき全体の数(CとZ)が等しく,赤いおはじきの数(AとX)と黒 いおはじきの数(BとY)は異なるタイプ。正答は,赤いおはじきの数が 多いびん,または,黒いおはじきの数が少ないびんを選択することによっ て得られる。. Equal−Red:赤いおはじきの数(AとX)が等しく,黒いおはじきの数(BとY)とお はじき全体の数(CとZ)は異なるタイプ。正答は,黒いおはじきの数が 少ないびん,または,おはじき全体の数が少ないびんを選択することによ って得られる。. Equa1−Black:黒いおはじきの数(BとY)が等しく,赤いおはじきの数(AとX)とお はじき全体の数(CとZ)は異なるタイプ。正答は,赤いおはじきの数, または,おはじき全体の数が多いびんを選択することによって得られる。. 16.
(19) Unequa1−Red:赤いおはじきの数(AとX)も黒いおはじきの数(BとY)も異なり,お はじき全体の数(CとZ)も異なるタイプ。ただし,正答は,割合の考え 方だけでなく,赤いおはじきが多いびんを選択することによっても得られ る数値になっている。. Unequa1−Black:赤いおはじきの数(AとX)も黒いおはじきの数(BとY)も異なり, おはじき全体の数(CとZ)も異なるタイプ。ただし,正答は,割合の考 え方だけでなく,黒いおはじきが少ないびんを選択することによっても得 られる数値になっている。. なお,「Marbles問題」に使用された量を示すと,以下の表2−1になる。表中の*印は正 答を示している。. 表2−1.関係的な比較問題(「Marbles問題」)に関する量 Qua顧ies飴曲e 15 rela価。且a1。。mpads。n prob藍ems Qua蹴dty type. Equal−Whole 】i三qual.Red. £quaトBlack. Unequa1−Red Uぬequa1画81ack. 111fヒ}mation ty】Pe. Co雌P1銚。. Partia1一「陥ole. ParほaトPart. (w血ole郵ed b垂ack). (whole. red black). (whole=ed black). (η5). (74一). (一67)*. (ブ43)*. (75一)噛. (一49). (1i47)喰. (玉35一). (一85). (1349). (II5一)*. (一83)毒. (1385)顧. (75一). (一67)串. (1165). (119一)療. (一47). G358)串. (136一)業. (一43). (1147). (115一). (一85)*. (752)*. (74一)象. (一94). (1376). (童16一). (一83)串. 調査結果の分析から,Singer, J. A.&Resnick, L. B.は, Partial−Whole問題において,子. 供が,欠けている部分を考慮することはあっても,Partial−Part問題において欠けている. 全体を考慮することは極めて稀にしがなかったことをもとに,割合に関する問題を解決す るために,子供は,「部分一全体」よりは,「部分一部分」に着目するということを云い 出している。. また,Spinillo,A.G.(2002)は,7才と8才の40人の子供に,青とピンクのおはじきの. 比が異なる4っの集合を準備し,その内の3っの集合を提示し,青のおはじきを引き当て やすい順に並べる調査を行った。4つの集合において,青のおはじきを引き当てる確率は,. それぞれ25%,50%,75%,100%である。そして,子供に提示された3つの集合は,お はじきの数によって,次のような3つのタイプに分類される。. 】7.
(20) タイプ1:青のおはじきの数の多い集合が,青のおはじきを引き当てる確率も高くなって いる。したがって,青のおはじきの大小によって,正しい順序づけができる。. タイプ2:3つの集合の内の2っは,青のおはじきの数が等しい。したがって,おはじき 全部が青である集合が,青のおはじきを引き当てる確率が一番高いことが分か れば,後は,おはじきの総数の大小によって,順序づけの判断ができる。. タイプ3:青のおはじきの大小や,おはじきの総数の大小によって,順序づけの判断がで きない。. なお,調査に使用された量を示すと,以下の表2−2になる。それぞれの集合は,分子が 青のおはじきの数,分母が青のおはじきとピンクのおはじきを合わせたおはじきの総数に 対応する分数で示されている。. 表2−2.試行のタイプと各集合のおはじきの数 Types of泣ials and set80f斑arbles(peτcentage of cha皿ce溢paren出eses> 丁五組s. Se総. Type 1. 窮8(50%). 16116(100弓を>. 12/12(10む%). 野pe 2. 2/8(25%). 8116(50働). 6/8(75%). 16/16(1OO%). 3ノエ2(25拓). ツ8(25%). 9112(75%). 8/16(509ら). 618(75%). 4/16(25%). 12112(100%). 218(25殉『. 418(50%). 12112(100%). 8/16(50%). 聰3. 9112(75望ら) ・. 6112(50%) 12/16(75%) 4/16(25%). 818(100%). 9/12(フ5%). 8!16(50rあ). 618(75%). 3/12(25噺). 3!12(25%). 6/6(100%). 8〆16『(50%). 12!16(75%). 3112(25%). 霧/8(100%). 618σ珊). 12/12(王◎0%). 8/16(50%). 調査結果の分析から,SpiniUo, A. G.は,全ての子供が,おはじきの総数を考慮せず,. 青のおはじきの数とピンクのおはじきの数を比較することによって,順序づけの正当化を 行ったことをもとに,子供は,「部分一部分」の関係にもとづいて,確率を見積もること を温い出している。. 2.比例的推論による関係づけ Singer, J. A.&Resnick, L. B.(1992)は,前述の赤と黒のおはじきを用いた「Marbles問題」. の調査をもとに,比較における関係的な見方という観点から,比較において子供が用いる. 方略を,以下の3つのレベルに分類し,子供は,乗法的な方法で推論する以前に,非乗法 的な方法(比例的推論で必要とされる乗法的な関係というよりは,むしろ差の関係)で2 つの部分,または,部分と全体について,関係的に推論することができるということを見 い出している。. 非関係的レベル:常に,一方の部分にもとづいて推論を行う。つまり,2つの部分を関係 づけておらず,全体も考慮していない。. 18.
(21) 準関係的レベル:どちらの部分がより多くの情報を提供するかによって考えを切り替え,. 一方の部分にもとづいて推論を行う。しかし,2っの部分を関係づけて いるとは限らず,全体も考慮していない。. 関係的レベル:下乗法的ではあるが,数学的な方略によって,2つの部分,または,部 分と全体の間の関係を量:化するような推論を行う。つまり,「部分一部 分」または「部分一全体」を相互に関係づけている。 また,Siegler, R. S.(1981)は,比較において子供が用いる方略を,ルール評価アプロー. チとしてまとめている。このルール評価アプローチにおける一般化された4っのルール・ モデルを示すと,次のようになる。. ルール1:完全に優位次元のみにもとづいて判断する。判断の結果は,その次元内の値に 依存する。. ルールH:優位次元の値が異なる時には,常に優位次元にもとづき判断するが,値が等し い時には,下位次元をも考える。. ルール皿:優位,下位の両次元を常に考慮するが,一方の選択肢で優位次元の値が大きく,. 他方の選択肢で下位次元の値が大きい時には,この葛藤を解決する一貫した公 式をもたない。. ルールIV:両次元を常に考慮し,それを組み合わせる適切な公式を知っている。 そして,. これらのルールを「Marbles問題」に適用すると,それぞれのルールは次のよ. うになる。. ルール1:2つのびんの赤いおはじきの数にだけ注意を向ける。したがって,赤いおはじ きが多く入ったびんを選択する。 ルールH:それぞれのびんの赤いおはじきの数にもとづいて決定をする。しかし,2っの びんの赤いおはじきの数が等しい時,黒いおはじきの数が最も少ないびんを選 択する。. ルール皿:2つのびんの赤いおはじきの数が等しい,あるいは,2つのびんの黒いおはじ きの数が等しいなら,赤いおはじきの数,あるいは,黒いおはじきの数にもと ついて決定をする。ただし,赤いおはじきの数が異なる時,誤った決定をする。. ルールIV:2っのびんの赤いおはじきの数と黒いおはじきの数が等しくない時,2っのび んの赤いおはじきの数どうしの関係,または,黒いおはじきの数どうしの関係 や,それぞれのびん内の赤いおはじきの数と黒いおはじきの数の関係を,乗法 的に量化するような比例的推論にもとづいて決定をする。. つまり,非関係的レベルの子供はルール1のもとに実行し,準関係的レベルと関係的レ ベルの子供は,ルールH,または,ルール皿のもとに実行している。したがって,Singer, J.A。&Resnick, L B.は, Siegler, R. S.のルールIVに属する子供を遇い出していない。この. ことは,今後の調査の課題を示唆している。. 19.
(22) 3.比例的判断における「1/2」の境界線 Spinillo,A.G.(2002)は,前述の青とピンクのおはじきを用いた調査をもとに,比較に. おいて子供が用いる正当化を,以下の4つのタイプに分類し,子供は,確率を見積もるた めに,「1/2(半分)まという数を使用することを見い出している。. 方略1:青のおはじきの数という1つの量だけに着目する。したがって,青のおはじきの 大小にもとづいて判断する。. 方略2:青のおはじきの数とピンクのおはじきの数という2つの量に着目するが,別々に 考慮する。したがって,青のおはじきの数が等しい2つの集合と青のおはじきの 数が異なる他の1つの集合とを別々に考える。つまり,青のおはじきの数が等し い2つの集合に関して,ピンクのおはじきの数の大小にもとづいて判断する。し かし,青のおはじきの数が異なる1っの集合に関して,他の2っの集合より,青 のおはじきの数が多い場合は,青のおはじきの数の大小にもとづいて判断する。 なお,100%の確率である集合を,確実なものと考えていない。. 方略3:青のおはじきの数とピンクのおはじきの数という2っの量に着目し,同時に考慮 する。したがって,100%の確率である集合を,確実なものと考え,他の2つの 集合と別に考える。しかし,他の2っの集合に関して,青のおはじきの数,また は,ピンクのおはじきの数の大小にもとづいて判断する。. 方略4:各集合内で,青のおはじきの数とピンクのおはじきの数という2っの量を関係的 に考慮する。したがって,青のおはじきの数とピンクのおはじきの数を比較し, 青のおはじきの数が多い場合,等しい場合,少ない場合にもとづいて判断する。. なお,100%の確率である集合を,確実なものと考えるだけでなく,50%の確率 である集合に関して,「1/2(半分)」という言葉を正当化において使用すること ができる。. この方略4のように,子供が,確率について学習する以前においてさえ,「1/2(半分)」. という確率を扱う直観的なアプローチを保持していることは,注目すべき点である。 また,Spinillo, A. G.&Bryant, P.(1991)は,4才∼7才の80人の子供に,以下の図2−1の. ような青と白に塗られた1枚のカードと,青の煉瓦と白の煉瓦の比が異なる2っの箱を提 示し,カードに示されている比と等しい煉瓦の箱を選択させる調査を行った。 〔例1〕. 〔例2〕. 田 カード. カード. 煉瓦の箱. 煉瓦の箱. 煉瓦の箱. 図2−1.調査に使用されたカードと煉瓦の箱に関する図. 一20. 煉瓦の箱.
(23) また,調査問題は,withirhalf・half・cross−halfという3っの比較のタイプとsame condition・different conditionという2っの提示のタイプとを組み合わせることによ って構成されている。具体的には,次のようなタイプである。 〔比較のタイプ〕. within−half:箱の中の煉瓦の総数に対する青の煉瓦の割合が,2つの箱に関して,「半 分」の境界線にまたがらない場合。したがって,2つの箱の割合は,どちら も「半分」の境界線よりも大きい場合,または,小さい場合である。 half:箱の中の煉瓦の総数に対する青の煉瓦の割合が,1つの箱に関して,「半分」. の境界線上である場合。したがって,2っの箱の割合は,どちらか一方が「半 分」の境界線上であり,他方が「半分」の境界線よりも大きい場合,または, 小さい場合である。. cross−half:箱の中の煉瓦の総数に対する青の煉瓦の割合が,2つの箱に関して,「半分」. の境界線にまたがる場合。したがって,2つの箱の割合は,どちらか一方が 「半分」の塊界線よりも大きく,他方が小さい場合である。 〔提示のタイプ〕. 青と臼の部分の配列の組み合わせとして,次の4っのタイプがある。 VV:青と白の部分の配列が,カードと2っの箱のどちらも垂直方向。 闇:青と白の部分の配列が,カードと2っの箱のどちらも水平方向。 VH:青と白の部分の配列が,カードにおいては垂直方向,2つの箱においては水平方向。 HV:青と白の部分の配列が,カードにおいては水平方向,2っの箱においては垂直方向。 same condition:青と白の部分の配列が,カードと2っの箱で同じ場合。(VV・HH) different condition:青と白の部分の配列が,カードと2つの箱で異なる場合。(VH・HV). なお,調査に使用されたカードと2つの箱に関する青と白の部分の割合と配列を示すと, 次頁の図2−2・図2−3になる。図2−2の調査1は,within−halfとcross−halfという比較のタ. イプに関する調査であり,図2−3の調査2は,halfという比較のタイプに関する調査であ る。. .21.
(24) WIT副凶7ト}ALF COM玲AR}S◎N$IN THεSAMεCONO重TION. 口. i. 7〆8. .7∠昌.. 5/8. 5!串. 与/5. .フ/串.. W汀HIN−HAしF CO細PARrSQNS IN TH∈O『Fε只εNT CONOITION. 〔コ ・!/8. 3/8. ∼. 5/8. V8. 5/8. 書./8. CROSS−HAしF COMPARISONS嗣THεSAMεCONOiT}ON. 臼’. ■コ. 3/8. 5/8. 3/8. 5/8. 5/8. 5/6. .CRGSS一}→AしF「CO触PAR!SONS iN了HE:D昼FF…:REINτ CONDI↑1◎N. 5/8. 3/8. や. 5!8. 図2−2.. 5/8. 3/8. 5/8. 調査1.における青と白の部分の割合と配列. .22一.
(25) HAしF’COMPARISQN$INτHE SAME CONOITION. 6〆8. 4/8. 6/8. 4/8. 4/8. 6/8. HALF COMPARISONS IN THE DIFFE:RENτCONDmON. ■コ 4/8. 4/8. 牛/8. 4/8. 2/8. 2/8. 図2−3.調査2における青と白の部分の割合と配列 調査1の結果の分析から,Spinillo, A. G.&Bryant,P.は,比較において子供が用いる正. 当化を以下の6つのタイプに分類し,比例的判断における「1/2」の境界線の重要性を見 い出している。. タイプ1:青か白の1つの色だけに着目し,量化を伴わない。 タイプH:青と白の2つの色に着目するが,相対的な関係を伴わない。. タイプ皿:1つの箱だけについて,青と白の2つの色の量に関する比較をしたり,1つの 色だけについて,2っの箱に関する比較をしたりする。 タイプIV:1つの箱の中で,青と白の2つの色の量に関する比較をし,カードと2っの箱 について,青と白の2っの色の量の関係を比較する。 タイプV:1つの箱の中で,青と白の2つの色の量に関する比較をし,カードと2っの箱 について,青と白の2つの色の量の関係を,1つの色に関して比較する。 タイプVI:カードと2つの箱について,青と白の2っの色の量の関係を比較するための基 準として「1/2(半分)」を使用する。. このタイプVIように,子供が,2つの量の関係を比較するための基準として「1/2(半 分)」を使用することは,注目すべき点である。. また,調査1と調査2の結果の分析から,withirhalf・half・cross−halfという3つ の比較とsame condition・different conditionという2つの提示に関して, Spinillo,A.. 一23.
(26) G.&Bryant,P.は,6・7才の子供にとって, different conditionにおけるwithin−half比. 較がcross−half比較より困難であり,half比較と比べても困難であるということから,比. 例的判断における「1/2」の境界線が重要な役割を果たしており,子供が直接的な知覚に よる比較ができない時に,特に有効であると指摘していることも注目すべき点である。. 一24.
(27) 第2節比較における着目の仕方と方略に関する調査 1.調査の枠組み (1)調査の目的 海外における割合の研究は,比例的推論に関わるものが多い。Tourniaire, F.&Pul・s, S.. (1985)は,比例的推論に関する文献の再吟味という観点に立ち,比例的推論の正しい方略 や誤った方略を整理している。また,Lamon, S. J.(1993)は比例的推論に関して,「部分一. 部分一全体」などの問題を取り上げ,子供の用いる方略を区分している。さらに,Clark, M.R.,Berenson, S. B.,&Cavey, L.0.(2003)は,比例的推論における比と分数の役割という観. 点から,「部分一部分」と「部分一全体」に関する考察を行っている。. しかし,第1章,第1節の割合指導の課題で述べたように,日本における割合の研究で は,「部分一部分」や「部分一全体」という観点から,あまり研究がなされていないよう に思われる。. そこで,調査の目的は,あまり研究がなされていない「部分一部分」や「部分一全体」. に関して,割合を使って比較するという観点から,『子供が,比較対象のどの2つの関係 に着目して比較をするのか。また,比較の方略において,どのような発達段階があるのか。』 を明らかにすることである。そのために,第2章,第1節で述べたSinger, J. A.&Resnick,. LB.(1992)の「Marbles問題」を用いた調査を参考にし,以下の3点を考慮して,「くじ 問題」を用いた調査を行った。なお,くじを引くということは,確率に関することである が,これは,あたりくじの割合に関わっていると考えられる。. ・比較対象のどの2つの関係に着目して比較するのかを明らかにするために,あたりくじ の数・はずれくじの数・くじ全体の数を同時に提示する「Complete問題」の形式に限定 した。. ・場面の設定に関して,Marbleを取り出すよりも,くじを引くことの方が,子供にとって 比較的馴染みがあると思われるため,「くじ問題」に場面を変更した。 ・Singer, J. A.&Resnick, L B.の調査では,乗法的に量化するような比例的推論を行う関係. 的レベルの子供を負い出していない。そこで,Siegler, R。 S.(1981)のルールIV,また, Singer, J. A.&Resnick, L. B.の関係的レベルを含む割合による比較に関する発達段階を,. より明確にするために,日常,子供に馴染みがあり,着目しやすいと思われる「2倍・ 1/2」という特殊な割合を考慮した。. (2)調査の内容. 1)調査問題 〔問題1〕. あたりくじとはずれくじの入った2っのはこAとBがあります。. Aのはこには,あたりくじが3本とはずれくじが5本,全部で8本入っています。. .25.
(28) Bのはこには,あたりくじが4本とはずれくじが4本,全部で8本入っています。 くじを1本ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 (1)下の3つのどれかに○をつけてください。. Aのはこの方が AとBのどちらの Bのはこの方が あたりやすい. はこでも同じ. あたりやすい. (2)なぜ上のように○をつけたのか,その理由をくわしく書いてください。. 〔問題2〕. あたりくじとはずれくじの入った2っのはこAとBがあります。 Aのはこには,あたりくじが5本とはずれくじが10本,全部で15本入っています。. Bのはこには,あたりくじが3本とはずれくじが6本,全部で9本入っています。 くじを1本ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 (1)と(2)は問題1と同様。以下,略. 〔問題3〕. あたりくじとはずれくじの入った2っのはこAとBがあります。 Aのはこには,あたりくじが4本とはずれくじが8本,全部で12本入っています。 Bのはこには,あたりくじが8本とはずれくじが4本,全部で12本入っています。 くじを1弓ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 〔問題4〕. あたりくじとはずれくじの入った2っのはこAとBがあります。 Aのはこには,あたりくじが6本目はずれくじが7本,全部で13本入っています。. Bのはこには,あたりくじが4本とはずれくじが3本,全部で7本入っています。 くじを1本ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 〔問題5〕. あたりくじとはずれくじの入った2っのはこAとBがあります。 Aのはこには,あたりくじが5本とはずれくじが8本,全部で13本入っています。. 26.
(29) Bのはこには,あたりくじが4本とはずれくじが7本,全部で11本入っています。 くじを1本ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 なお,調査を実施する際の注意事項を説明するために例題を使用したが,そこでは,問 題場面を把握させるために,絵による表現を使用した。しかし,絵による表現では,部分 は全体より目立っというSinger, J. A.&Resnick, L. B.(1992)の指摘があることから,実際. の問題においては,部分と全体への着目に影響を与える可能性のある絵による表現を使用 しなかった。. 2)各問題の数値の設定 調査の目的にもとづいて,次のように問題の数値を設定した。 ・くじ全体の数が等しい問題。(問題1,問題3) ・一 福フはこの部分(あたり)が全体の「半分」より多く,他方のはこの部分(あたり). が全体の「半分」より少ない問題。(問題3,問題4> ・両方のはこの部分(あたり)が全体の「半分」より少ない問題。(問題2,問題5) ・「部分一部分」が「2倍・1/2」の関係にある問題。(問題2,問題3). このように問題の数値を設定することにより,正答に至るいくつかの比較の方略が,問 題によって選択できる。. 3)解答形式 調査の目的にもとづいて,割合に関する問題を解決する時の思考過程を分析するために,. 各問題ごとに,選択肢による解答と記述による解答の2つの解答形式を使用した。 (3)調査の方法. 1)調査の被験者 「Marbles問題」では,第6学年・第7学年・第8学年の子供を対象としていたが,日 本の教育課程において割合を学習するのは第5学年である。そこで,割合が未習時期の第 5学年と,既習の第6学年を対象とした。. なお,調査の被験者は,神戸市内の公立小学校,第5学年3校(各1学級)87名と,第 6学年3校(各1学級)71名である。 2)調査の実施時期 第5学年の子供にとって,割合が未習の段階である平成17年10,月中旬から12,月上旬にか けて調査を行った。. 3)調査を実施する際の注意事項 調査を行うにあたり,調査問題はテストでないことと,調査時間は45分ということを子 供に伝えた。また,問題場面を全員が把握できるように,次のような例題をもとに説明を. .27.
(30) 行った。. (例)問題. あたりくじとはずれくじの入った2つのはこAとBがあります。 Aのはこには,あたりくじが2本とはずれくじが3本,全部で5本入っています。 Bのはこには,あたりくじが3本とはずれくじが4本,全部で7こ入っています。 くじを1本ひく時,どちらのはこからひく方があたりやすいですか。 ズ. /Aのはこご・醐\. /臼‘り肥かち\. l F≦こ.どつウ溝し 、1. {恢二こ獄. 、『. \ よ弓r. \. マんノ. ・一 ノ げロ. ノ. ド. !. !/、一一・一・/. ). (1)下の3つのどれかにOをつけてください。. Aのはこの方が AとBのどちらの Bのはこの方が あたりやすい. はこでも同じ. あたりやすい. (2)なぜ上のように○をつけたのか,その理由をくわしく書いてください。 なお,記述による解答については,全ての思考過程が記述されるよう,計算をしたり, 図をかいたりする場合は,理由を書く欄に,それらを書くように子供に指示した。また,. 思考の変容を調べるために,消しゴムの使用は不可とした。そのため,間違えて記述した 場合は,間違えたところに線を引き,続けて書いていくように指示した。. 4)調査問題の提示 各問題は,1問1枚目用紙で提示した。先の問題に対する着目の仕方や解決方略が,後 の問題に影響を及ぼさないであろうと思われるため,問題1∼問題5の順に綴じたものを 1セットとし,全員に1セットずつ配布した。. 2.調査結果を分析するための基準 調査における子供の理由づけを参照したとき,着目の仕方と比較の方略に関して,いく つかの識別可能な記述表現が見られた。. そこで,各問題に対する子供の理由づけを分類するために,あたりくじの数・はずれく. .28.
(31) じの数・くじ全体の数のどの関係に着目して比較をしたか,どのような比較の方略を使用 したかの2つの観点から,後に示すような基準を定め記号化を行った。また,複数の基準 に関係する記述がある場合は,答を選択するに至った最終判断の記述をもとに記号化を行 った。さらに,どちらの基準に関係するか記述から判断がつきにくい場合は,他の問題の 記述をもとにした子供の傾向から判断し,記号化を行った。. なお,以下に各問題において子供が書いた理由の代表的な記述を先ず述べ,それらを記 号化と対応づける。. (1)各問題において子供が書いた理由の代表的な記述の例 〔問題1〕. 記述1:全部のくじの数は同じで,AよりBの方があたりくじが多いので, Bの方があた りやすい。. 記述2:Aはあたりくじょりはずれくじの方が2本多く,Bはあたりくじとはずれくじが 同じだから,Bの方があたりやすい。 〔問題2〕. 記述3:AはBよりあたりくじが多く,BはAよりはずれくじの数が少ないので,どちら もあたりやすさは同じ。. 記述4:Aはあたりくじの2倍がはずれくじで,Bもあたりくじの2倍がはずれくじ’だか ら,あたりやすさは同じ。. 記述5:AもBもあたりくじ’の3倍が全部のくじの数になっているので,あたりやすさは 同じ,。. 〔問題3〕. 記述6:全部のくじの数は同じで,Bははずれくじょりあたりくじの方が多く, Aはあた りくじよりはずれくじの方が多いから,Bの方があたりやすい。. 記述7:BはあたりくじがAの2倍で,はずれくじがAの1/2だから,Bの方があたりや すい。 〔問題4〕. 記述8:Aはあたりくじょりはずれくじの方が多く,Bははずれくじょりあたりくじの方 が多いから,Bの方があたりやすい。 記述9:Aのあたりくじは半分以下で,Bのあたりくじは半分以上なので, Bの方があた りやすい。 〔問題5〕. 記述10:AもBもあたりくじとはずれくじの差が3本なので,その時は,あたりくじの 多いAの方があたりやすい。 記述11:AはBよりあたりくじもはずれくじも1本ずつ多いので,あたりやすさは同じ。 記述12:Aはあたりくじの1.6倍がはずれくじで,Bはあたりくじの1。75倍がはずれくじ なので,Aの方があたりやすい。. 一29.
(32) (2)着目の仕方の観点 「くじ問題」において,被験者が着目した全ての関係を示すと,次の図2−4になる。. Aのくじ(あたりくじの数・はずれくじの数・くじ全体の数). /① /② 工③ Bのくじ(あたりくじの数・はずれくじの数・くじ全体の数). 』三⑦』妊_↑ 図2−4.子供が着目した「〈じ問題」における全ての関係. P:あたりくじの数,または,はずれくじの数という部分だけ(①または②)に着目 し,判断する。. W:くじ全体の数にだけ(③)に着目し,判断する。 P・P:あたりくじの数に着目した判断(①)と,はずれくじの数に着目した判断(②) の2つを関係づける。〈記述3,記述7,記述11>. P・W:あたりくじの数,または,はずれくじの数に着目した判断(①または②)と,く じ全体の数に着目した判断(③)の2つを関係づける。. P・P・W:あたりくじの数に着目した判断(①)と,はずれくじの数に着目した判断 (②),さらに,くじ全体の数に着目した判断(③)の3つを関係づける。. P−P:あたりくじの数とはずれくじの数という「部分一部分」(④と⑤)に着目し,判 断ずる。〈記述2,記述4,記述8,記述9,記述12>. P−P・P:あたりくじの数とはずれくじの数という「部分一部分」(④と⑤)に着目し てはいるが,最終判断として,あたりくじの数,または,はずれくじの数という 部分(①または②)だけに着目し,判断する。〈記述10>. P−P・W:あたりくじの数とはずれくじの数という「部分一部分」(④と⑤)に着目し てはいるが,最終判断として,くじ全体の数(③)だけに着目し,判断する。. P−W:あたりくじの数,または,はずれくじの数とくじ全体の数という「部分一全体」 (⑥と⑦または⑧と⑨)に着目し,判断する。〈記述5>. あたりくじの数,または,はずれくじの数という部分(①または②)だけに着目 したり,あたりくじの数とはずれくじの数という「部分一部分」(④と⑤)に着 目したりし,判断しているが,「全体が同じ」という記述がある。. 〈記述1,記述6> あたりくじの数,または,はずれくじの数という部分(①または②)だけに着目 し,判断しているが,「全体を同じにする」ために,差を用いて全体の数を揃え る。. 30.
(33) (3)比較の方略の観点. 大小:数値の大小による比較を行う。〈記述1,記述3,記述6,記述8> 差:2量の差による比較を行う。〈記述2,記述10,記述11> 半分:「2倍・1/2(半分という記述も含む)」という特殊な割合による比較を行う。. 〈記述4,記述7> 「半分」より多いあるいは少ないという比較を行う。〈記述9> 割合:割合による比較を行う。〈記述5,記述12> 最小公倍数や比を考えて比較を行う。. 3.調査結果の分析と考察 (1)正答率 調査問題の難易度を調べるために,各問題ごとの正答率を示すと,次の表2−3になる。 表2−3.各問題ごとの正答率 正 答. 5年. 誤 答. 6年. 5年. 6年. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 人数(%). 問題1. 86(98.9). 70(98.6). 1 (1.1). 1 (1.4). 問題2 問題3 問題4 問題5. 36(41.4). 43(60.6). 51(58.6). 28(39.4). 84(96.6). 69(97.2). 3 (3.4). 2 (2.8). 70(80.5). 57(80.3). 17(19。5). 14(19.7). 21(24.1). 20(28.2). 66(75.9). 51(71.8). 表2−3より,いずれの学年においても,問題1→問題3→問題4→問題2→問題5の順 に難しくなっていることが分かる。ただし,問題2と問題5に関しては,正当でない比較 の方略で正解に至っている場合も含まれる。そこで,学年別に各問題ごとの比較の方略を 示すと,次の表2−4・表2−5のようになる。. 表2−4.第5学年の各問題ごとの比較の方略 大小. 差. 半分. 割合. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 問題1. 66(75.9). 14(16.1). 2 (2.3). 5 (5.7). 問題2 問題3. 35(40.2). 19(21.8). 29(33.3). 4 (4.6). 68(78.2). 7 (8.0). 10(11.5). 2 (2.3). 64(73.6). 21(24.1). 1 (1.1). 1 (1.1). 35(40.2). 47(54.0). 1 (1.1). 4 (4.6). 問題4 問題5. 3】. 人数(%).
(34) 表2−5.第6学年の各問題ごとの比較の方略 差. 半分. 割合. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 人数(%). 問題1. 49(69.0). 15(21.1). 0 (0). 7 (9.9). 問題2 問題3 問題4. 23(32.4). 10(14.1). 18(25.4). 20(28.2). 51(71.8). 9(12.7). 6 (8.5). 5 (7.0). 39(54.9). 21(29.6). 1 (1.4). 10(14.1). 問題5. 22(3LO). 32(45.1). 0 (0). 17(23.9). 大小. 表2−4・表2−5より,問題5において,割合による比較ができた第6学年の子供が23.9% しかいないということは,既習の内容であるにもかかわらず,割合がよく分かっていない ということを意味していると思われる。この理由として,割合を求めることはあっても,. 割合を使って比較する経験が少ないことや,くじを引くということは子供にとって比較的 馴染みのある場面ではあるが,割合による比較を十分に理解していない子供にとっては, 割合による比較を適用することができなかったというようなことが考えられる。さらに,. 割合が未習の内容である第5学年の子供の方が,第6学年の子供より,全体として,「2 倍・1/2」に着目して比較できるということが分かる。. このように,第5学年でも1/3の子供が,「2倍・1/2」に着目して比較できるというこ とも考慮すると,割合の単元の導入においては,「2倍・1/2」を上手く活用した授業展 開の工夫が考えられる。. (2)着目の仕方. 子供が,あたりくじの数・はずれくじの数・くじ全体の数のどの関係に着目して比較を するのかを調べるために,既に述べた着目の仕方の観点にしたがって,各問題ごとの着目. の仕方を示すと,以下の表2−6になる。二三の「その他」は,「P・W」と「P・P・W」 を含む。. 表2−6.各問題ごとの着目の仕方. P/W. 問題1. 問題2. 問題3. 問題4. 問題5. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 人数(%). 人数(%). PorW. 25(15.8). 29(18.4). 30(19.0). 14(8.9). 23(14.6). P・P. 29(18.4). 17(10.8). 32(20.3). 12(7.6). 26(16.5). P−P・Por P−P・W. 0(0). 2(1.3). 0(0). 3(1.9). 8(5.1). その他. 0(0). 5(3.2). 0(0). 2(1.3). 5(3.2). P−P. 67(42.4). 83(52.5). 61(38.6). 113(71.5). 79(50.0). P−W. 37(23。4). 22(13.9). 35(22。2). 14(8.9). 17(10.8). 表2−6より,部分や全体だけに着目している(P/W)子供が1/3程度いることが分かる。. また,一方の部分に着目して判断したものと他方の部分に着目して判断したものの2つを 関係づけようとしている子供(P・P)や,「部分一部分」に着目してはいるが,最終判. 一32.
(35) 断として,部分や全体だけに着目し,判断している子供(P−P・P・rP−P・W)も, 「部分一部分」の関係に準ずるものと考えられる。したがって,割合に関する問題を解決. するために,明らかに子供は「部分一全体」よりは,「部分一部分」に着目すると考えら れる。. そこで,第5学年と第6学年の子供における着目の仕方を比較するために,学年別に各 問題ごとの着目の仕方を示すと,次の表2−7・表2−8になる。. 表2−7.第5学年の各問題ごとの着目の仕方. P/W. P−P. P−W. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 問題1. 30(34.5). 43(49.4). 14(16.1). 問題2 問題3 問題4 問題5. 31(35.6). 51(58.6). 5 (5.7). 36(41.4). 39(44.8). 12(13.8). 18(20.7). 66(75.9). 3 (3.4). 31(35.6). 50(57.5). 6 (6.9). 表2−8、第6学年の各問題ごとの着目の仕方. P/W. P−P. P−W. 人数(%). 人数(%). 人数(%). 問題ユ. 24(33.8). 24(33.8). 23(32.4). 問題2 問題3 問題4 問題5. 22(31.0). 32(45.1). 17(23.9). 26(36.6). 22(31.0). 23(32.4). 13(18.3). 47(66.2). 11(15.5). 31(43.7). 29(40.8). 11(15.5). 表2−7・表2−8より,全ての問題において第5学年より第6学年の方が,「部分一全体」 に着目している子供が多いことが分かる。しかし,いずれの学年においても,全体として, 「部分一全体」より「部分一部分」に着目する子供が多いことも分かる。. このように,第5学年の子供が,「部分一全体」より「部分一部分」に着目して比較を するということを考慮すると,単元全体を通して,「部分一全体」を意識した指導計画を 立てるとともに,割合を使って比較することの導入においては,「部分一部分」の関係に ある2量に関する問題を扱う方がよいと考えられる。 (3)比較の方略. それぞれの子供の各問題における比較の方略を調べると,5題全ての問題に対して,割 合による比較は行わず,少なくとも1題は「2倍・1/2」による比較を行った子供が44名 いた。彼らの全ての問題における比較の方略を示すと,次頁の表2−9になる。. なお,表2−9における1は「大小」,2は「差」,3は「半分」,4は「割合」を表して いる。また,左から正答率の低い問題から順に並べてある。. 33.
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