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第5章   本研究のまとめと今後の課題

第1節  本研究のまとめ

1.各章のまとめ

(1)第1章のまとめ

 第1章では,まず,割合の定義の変遷について述べた。現在,各社の検定教科書では,

「ある量をもとにして,くらべる量がもとにする量の何倍にあたるかを表した数を割合と いいます。」というように,数として割合を定義している。つまり,割合は同種の量の商

(比の値)であり,それらの関係は,「割合=比較量÷基準量」「比較量=基準量×割合」

「基準高寓比較量÷割合」という3っの式で表される。

 また,割合の考え方は,「割合=比較量÷基準量」によって表されるとし,割合の考え 方を概念的知識と手続き的知識という2っの側面から捉え,それらを次のように明確にし

た。

 概念的知識:割合に関する場面の把握や,その場面における関係の把握に作用        する知識

手続き的知識:割合・比較量・基準量を求めるための立式に作用する知識

 これら2つの知識には,割合に関連する次のような内容に関する知識が含まれているこ とを述べた。

〔概念的知識〕

・基準量の把握

・∫七仮」白勺感覚

・「部分一部分」と「部分一全体」への着唱

・「2倍・1/2(半分)」の直観的認知

〔手続き的知識〕

・割合・比較量・基準量:の相互関係

・比較における関係づけの方略

さらに,過去の研究から,割合指導に関する問題点を取り上げるとともに,割合指導の 現状として,子供の理解や教師の意識の実態を把握することで,割合指導に関する次の課 題を明らかにした。

(1)基準量の意識化

(2)「部分一部分」と「部分一全体」への着目

(3)割合・比較量・基準量の関係的理解

(4)「2倍・1/2(半分)」の直観的認知の活用

 そして,子供の認識を追求した質的な研究が,あまりなされていないことを踏まえ,子 供が割合の考え方を構成する過程を考察し,次の2点について教育実践への提言をするこ

とを,本研究の主題とした。

(1)割合に関する概念的知識と手続き的知識を構成するとともに,これら2つの   知識を結びつけることのできる授業を構築すること。

(2)割合の単元全体の指導計画をデザインすること。

(2)第2章のまとめ

 第2章では,本研究の主題にもとづき,第1章で得られた課題を考慮して,割合の考え 方に関する子供の実態を把握するために実施した2っの調査(比較における着目の仕方と 方略に関する調査,全体への着目に関する調査)について述べ,その結果の分析と考察か

ら,割合の考え方を構成する授業を構築するための示唆を得た。

 なお,割合による比較についての先行研究より,次の3点が示唆された。

○割合に関する問題を解決するために,子供は,「部分一全体」よりは,「部分一部分」

 に着目して推論する。

○比例的推論による関係づけに関して,子供は,乗法的な方法で推論する以前に,関係的  に推論することができる。

○子供が,2つの量の関係を比較するための基準として「1/2(半分)」を使用する。ま  た,比例的判断における「1/2」の境界線が重要な役割を果たしており,子供が直接的  な知覚による比較ができない時に,特に有効である。

1)比較における着目の仕方と方略に関する調査

比較における着目の仕方と方略に関する調査より,次の5点が明らかになった。

○割合による比較ができた第6学年の子供が23.9%しかいないことから,割合が既習の内  容であるにもかかわらず,よく分かっていない子供が多いと思われる。この理由として,

 割合を求めることはあっても,割合を使って比較する経験が少ないことや,くじを引く  ということは子供には比較的馴染みのある場面ではあるが,割合による比較を十分に理  解していない子供には,割合による比較を適用することができなかったというようなこ  とが考えられる。

0割合が未習の内容である第5学年の子供の方が,第6学年の子供より,全体として,「2  倍・1/2」に着目して比較できる。このことを考慮すると,割合の単元の導入において  は,「2倍・1/2」を上手く活用した授業展開の工夫が考えられる。

○部分や全体だけに着目している(P/W)子供が1/3程度おり,一方の部分に着目して  判断したものと他方の部分に着目して判断したものの2っを関係づけようとしている子  供(P・P)や,「部分一部分」に着目してはいるが,最終判断として,部分や全体だ  けに着目し,判断している子供(P−P・PorP−P・W)も,「部分一部分」の関係

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 に準ずるものと考えられることから,割合に関する問題を解決するために,明らかに子  供は「部分一全体」よりは,「部分一部分」に着目すると考えられる。

○全ての問題において第5学年より第6学年の方が,「部分一全体」に着目している子供  が多い。しかし,いずれの学年においても,全体として,「部分一全体」より「部分一  部分」に着目する子供が多い。このように,第5学年の子供が,「部分一全体」より「部  分一部分」に着目して比較をするということを考慮すると,単元全体を通して,「部分  一全体」を意識した指導計画を立てるとともに,割合を使って比較することの導入にお  いては,「部分一部分」の関係にある2量に関する問題を扱う方がよいと考えられる。

○大小による比較や差による比較しか行うことができない段階を,割合による比較がよく  分かっていない段階とすると,割合による比較において,次の4つの発達段階があると  考えられる。

第1段階:割合による比較がよく分かっていない段階

第2段階:「2倍・1/2」という特殊な割合による比較は行うことができる段階 第3段階:数値に依存して割合が使えたり使えなかったりする「過渡期」の段階 第4段階:割合による比較を十分に理解している段階

2)全体への着目に関する調査

全体への着目に関する調査より,次の5点が明らかになった。

○実験群と統制群のどちらにおいても,ほとんどの子供が大小や差といった方略を用いて  おり,部分の数に関わらず,期待していたような先の問題に対する解決方略が,後の問  題に対して及ぼす学習の効果は見られなかった。したがって,「部分一全体」に関して  「2倍・1/2」の関係にある2量を扱うことは,全体に着目した割合の考え方を構成さ  せるために有効に作用しなかったと考えられる。

○全ての問題において,全体(総部分)に着目する割合は,実験群の方が統制群よりも高  い。つまり,3つの部分の提示の方が,2つの部分の提示よりも,全体(総部分)に着  目しやすい提示であるといえる。したがって,全体を構成する部分の数を変化させたこ  とは,全体(総部分)への着目に影響したと考えられる。

○実験群において,「部分和」に着目した子供がかなりいたことは予想外の発見である。

 「部分和」が,2つの部分を合わせて新しく1つの部分を作った場合であり,「部分和」

 により新しい部分を作り出すことは,「部分一部分」の関係において問題を解決しよう  とする過程であると考えられる。したがって,「部分和」に着目した子供の割合が,20  〜30%程度であることから,子供は,全体を構成する部分の数が変化しても,「部分一  部分」に着目することにかなり強い執着心があると考えられる。

0全ての問題において,実験群の方は「部分一全体」に着目する割合が高く,逆に,統制  群の方は「部分一部分」に着目する割合が高い。したがって,全体を構成する部分の数  を変化させた(部分の数を3っにした)ことは,「部分一全体」への着目にも影響した  と考えられる。このことから,調査問題で用いたような3つの部分の提示をすることは,

 自ら全体の:量を作り出し,「部分一全体」の関係を意識して考えるきっかけになると考

 えられる。また,「割合のグラフ」では,全体の量(合計)は示されているが,2つ以  上の部分を扱っており,各部分の意味を理解するためには,「部分一全体」の関係を意  識しなければならない内容となっている。したがって,調査問題で用いたような3つの  部分の提示を経験することで,割合の単元における「割合」や「百分率」の学習と「割  合のグラフ」の学習のつながりをスムーズにすることができると考えられる。

03つの部分の提示により,「部分一部分」に着目している子供の多くが,割合の学習で  達成すべきWithin関係において関係づけを行っており,「部分一全体」に着目している  子供の多くは,Betweenの関係において関係づけを行っていた。つまり, Withinの関係  における割合の考え方の構成には,「部分一部分」が適していると考えられる。

(3)第3章のまとめ

 第3章では,第2章で得られた示唆をもとに,「2倍・1/2(半分)」という特殊な割合 に対する直観的な推論を一般的な数的割合の考え方へと変換する指導法として,子供の認 知を考慮した2つの授業実践(「2倍・1/2」を活用した類似探求授業,「2倍・1/2」を 活用した色テープ図による割合指導)について述べ,その結果の分析と考察から,これら の授業の効果を明らかにした。

 なお,直観的な割合としての「1/2」に関する先行研究から,子供が,視覚的に「2倍

・1/2(半分)」を直観的に認知できるだけでなく,数的にも「2倍・1/2(半分)」を直 観的に認知し,「Doubling方略」「Halving方略」として一般化できることは,割合に関す る概念的知識と手続き的知識を結びつける新しい指導法のヒントとして,重要な意味を持 つという示唆を得た。

 したがって,初期の直観的な割合の概念である「2倍・1/2(半分)」は,第5学年の 子供が,割合の考え方を構成することにおいても,重要な役割を演じると考えられる。

1)「2倍・1/2」を活用した類似探求授業

 「2倍・1/2」を活用した割合の考え方の構成と「部分一部分」と「部分一全体」への 着目という2っの観点から,実験授業の結果を分析し,次のような示唆を得た。

OAクラスとBクラスにおいて,「2倍・1/2」の関係にある数値を提示することにより,

 割合による関係づけを行っている場合を正答としたときの正答率が高かったことから,

 割合の考え方の構成において,「2倍・1/2」の関係にある数値を提示することは,有  効であると考えられる。また,Aクラスのように提示の最初から,「2倍・1/2」の関  係にある数値を提示するよりも,Bクラスのように葛藤を繰り返した後に「2倍・1/2」

 の関係にある数値を提示する方が,Withinの関係における割合の考え方の構成に有効で  あったことを考慮すると,割合の単元の導入では,Bクラスに対して行った類似探求授  業が,割合の考え方を構成させる有効な授業の一つであると考えられる。

○実験授業の題材は,「部分一部分」と「部分一全体」のどちらにも着目することができ  るにも関わらず,Aクラスにおいては,「部分一部分」に関して「2倍・1/2」の関係  にある数値を提示したために,全員が「部分一部分」にしか着目できなかった。しかし,

 Bクラスにおいては,17.6%の子供が「部分一全体」に着目をしていた。つまり,Bク

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