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全体への着目に関する調査

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第3節  全体への着目に関する調査

1.全体に着目する意義

 これまでの割合の研究では,全体が2っの部分から構成される場合が多く,「部分一部 分」と「部分一全体」のどちらに着目しても,正確な割合の判断ができるにも関わらず,

子供は,「部分一部分」に着目した割合の判断をし,「部分一全体」へはあまり着目しよ うとしないことが指摘されている。

 このように,子供が「部分一部分」へ着目する傾向があるにも関わらず,全体への着目 に関して,次のことが考えられる。

 全体に占める割合とは,全体をもとにしたときの部分の大きさの割合のことであり,2 量の割合の特別な場合であると考えられる。2量の割合は,どちらをもとにするかで割合 が変わってくるが,全体に占める割合は常に全体をもとにしており,また,割合が1より 小さくなるという特徴がある。

 したがって,部分と部分だけではなく,全体にも着目した多様な見方を経験させること が必要である。例えば,日常生活において,サッカーの試合の勝率,野球の打率,バスケ

ットボールのシュートの成功率などの確率に関わるものがあり,「部分一部分」の関係に おいて割合を考えることもできるが,「部分一全体」の関係において割合を考える方が理 解しやすく,本質的である場合もある。したがって,こうした全体への着目の仕方もある

ことを意識的に経験させる必要があろう。

 また,全体に着目することによって,状況を直観的に把握させることができる。例えば,

「40人のクラスで,虫歯のある人が16人,虫歯のない人が24人でした。」という問題場面 において,「虫歯のある人の1.5倍が虫歯のない人である。」や「虫歯のない人の2/3倍が 虫歯のある人である。」という状況把握もできるが,「虫歯のある人はクラス全体の0。4倍 であり,虫歯のない人はクラス全体の0.6倍である。」という状況把握の方が,「10人中4 人は虫歯があり,10人中6人は虫歯がない。」といった直観的な状況把握ができる。この

ように,全体に着目して状況を把握することのよさを実感させる必要があろう。

 そこで,全体に着目した多様な見方を経験させるための指導として,「部分一部分」に 関する問題において「部分一全体」に着目した考え方を経験させるのと同様に,「部分一 全体」に関する問題においても「部分一部分」に着目した考え方を経験させることで,「全 体」に着目した割合による状況把握のよさを実感させることにもつながると考えられる。

 しかし,何%引きの問題や消費税の問題のように,全体に占める割合では,不都合な場 合もある。このような場合には,定価と値引き額,定価と消費税額といった2量の割合に よる指導が効果的である。したがって,全体に占める割合が2量の割合の特別な場合であ るという意識を持って,選択的に使い分けることのできる能力を育成することが大切であ ると考えられる。こうした能力は「もとにするものは何か」という割合概念の基本に関わ っており,割合の確かな理解につながるであろう。

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2.調査の枠組み

(1)調査の目的

 「割合」や「百分率」の学習では,問題文の中に,部分と部分,あるいは,部分と全体 を比較するように着目の仕方が指示されており,「部分一全体」の関係にある問題では,

部分と全体の量が示されている。そのため,自ら全体の量を作り出して考える必要のない 問題となっている。しかし,ヨ常生活においては,部分の量だけが分かっており,自ら全 体の量を作り出して考えなければならない場合もある。したがって,全体に着目した割合 の考え方を構成することが必要であると考えられる。

 そこで,調査の目的は,あまり注目されることのなかった全体を構成する部分の数に焦 点をあて,『全体を構成する部分の数を変化させることは,全体への着目に影響するか,

また,「部分一全体」に関して「2倍・1/2」の関係にある2量を扱うことは,全体に着 目した割合の考え方を構成させるために有効であるか』を明らかにすることである。その ために,次の3点を考慮した「福引き問題」を用いた調査を行い,その結果をもとに考察

する。

・全体への着目に関する部分の数の影響を明らかにするために,単なる「部分一部分」へ の着目では問題が解決できないような1等・2等・はずれという3っの部分の提示(実 験群)と,「部分一部分」に着目しても問題が解決できるようなあたり・はずれという

2つの部分の提示(統制群)における着目の仕方を比較する。

・はずれやすさを求める対象とすると,1等と2等を合わせたあたりに意味があり,あた  りとはずれという「部分一部分」に着目しやすくなる。また,1等の出やすさを求める

対象とすると,1等をあたりと考え,2等とはずれを合わせたものをはずれとすること に意味があり,あたりとはずれという「部分一部分」に着目しやすくなる。しかし,2 等の出やすさを求める対象とすることで,2等より上位の1等とはずれを合わせたもの をはずれとすることに意味はなく,全体に着目する必要性が出てくる。ただし,「1等

+はずれ=2等」の関係に簡単に気付くことができると,「部分一部分」に着目しやす くなるので,1等・2等・はずれの部分の数値の大きさを考慮する必要がある。

・第2章,第1節で述べたように,Spinillo, A. G.&Bryant, P。(1991)は,子供の比例的判 断において,「1/2」の境界線が決定的な重要性を持つことを示している。このことか

ら,割合の考え方を構成させるために,「部分一部分」に関して「2倍・1/2」の関係 にある2量を扱うのと同様,「部分一全体」に関しても「2倍・1/2」の関係にある2 量を扱う方がよいと考えられる。

(2)調査の内容 1)実験群の調査問題

実験群に対して実施した調査問題の概要を示すと,次頁の通りである。

なお,問題2〜問題5に関しても,同様の問題文であるため,ここでは省略し,1等・

2等・はずれの数値のみを示す。

〔問題1〕

赤玉(1等)・青玉(2等)・白玉(はずれ)の3種類の玉の入った2つのはこ AとBがあります。はこを1回まわして福引きをするとき,どちらのはこの方 が青玉(2等)が出やすいですか。

1等 2等 はずれ

はこA

14本 41本 27本 はこB 18本 53本 35本

(1)下の3つのどれかに○をつけてください。

  もし必要ならば,計算機を使ってもかまいません。

Aのはこの方が  AとBのどちらの 2等が出やすい   はこでも同じ

「]

Bのはこの方が 2等が出やすい

(2)なぜ上のように○をつけたのか,その理由をくわしく書いてください。

〔問題2〕 1等 2等 はずれ

はこA

17本 55本 38本 はこB 26本 70本 48本

〔問題3〕 1等 2等 はずれ

はこA

15本 52本 29本 はこB 19本 54本 35本

〔問題4〕 1等 2等 はずれ

はこA

16本 49本 37本 はこB 28本 75本 49本

〔問題5〕 1等 2等 はずれ

はこA

27本 80本 49本 はこB 14本 60本 37本

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 なお,「部分(2等)一全体」に関して,「1/2」の関係を基準にし,それより大きい場 合,小さい場合,また,それと等しい場合を組み合わせた次の条件を満たすように1等・

2等・はずれの数値を設定した。

〔問題1〕箱Aの割合=1/2

〔問題2〕箱Aの割合=1/2

〔問題3〕箱Aの割合>1/2

〔問題4〕箱Aの割合<1/2

〔問題5〕箱Aの割合>1/2

箱Bの割合=1/2 箱Bの割合く1/2 箱Bの割合=1/2 箱Bの割合〈1/2 箱Bの割合>1/2

 このように問題の数値を設定することにより,問題1〜問題3に関しては,割合による 比較を行わなくても,1/2の境界線より大きい場合,小さい場合,等しい場合という判断 にもとづいて解決することができるが,問題4と問題5に関しては,割合による関係づけ を行わないと解決できないというように問題を2っのタイプに分けることができる。

 なお,「1等+はずれ=2等」の関係に簡単に気付くことができないように数値を大き くすることで,計算の面倒さから,全体への着目をあきらめてしまわないように,計算機 の使用を認め,計算の負担を軽減した。

2)統制群の調査問題

統制群の調査問題におけるあたり・はずれの数値は,実験群の調査問題における1等・

2等・はずれの数値と次のような関係がある。

   〔実験群〕       〔統制群〕

「1等+はずれ」の数値→「あたり」の数値     「2等」の数値→「はずれ」の数値

したがって,統制群に対して実施した調査問題の概要を示すと,以下の通りである。

なお,問題2〜問題5に関しても,同様の問題文であるため,ここでは省略し,あたり

・はずれの数値のみを示す。

〔問題1〕

赤玉(あたり)・白玉(はずれ)の2種類の玉の入った2つのはこAとBが あります。はこを1回まわして福引きをするとき,どちらのはこの方が白玉  (はずれ)が出やすいですか。

あたり はずれ

はこA

41本 41本 はこB 53本 53本

(1)下の3つのどれかに○をつけてください。

  もし必要ならば,計算機を使ってもかまいません。

Aのはこの方が  AとBのどちらの  Bのはこの方が はずれが出やすい  はこでも同じ  はずれが出やすい

(2>は,実験群の調査問題と同様。以下,略。

〔問題2〕 あたり はずれ

はこA

55本 55本 はこB 74本 70本

〔問題3〕 あたり はずれ

はこA

44本 52本 はこB 54本 54本

〔問題4〕 あたり はずれ

はこA

53本 49本 はこB 77本 75本

〔問題5〕 あたり はずれ

はこA

76本 80本 はこB 51本 60本

 このように実験群の調査問題の数値と統制群の調査問題の数値を関係づけることで,統 制群の調査問題においても,実験群の調査問題と同じように問題を2っのタイプに分ける

ことができる。

3)解答形式

 調査の目的にもとづいて,割合に関する問題を解決する時の思考過程を分析するために,

実験群と統制群のどちらの調査問題においても,各問題ごとに,選択肢による解答と記述 による解答の2っの解答形式を使用した。

(3)調査の方法 1)調査の実施時期

割合が未習の段階である平成18年9月下旬から11月上旬にかけて調査を行った。

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