ポリウレタン系形状記憶ポリマーの開発
著者 林 俊一
発行年 2001‑03‑22
URL http://hdl.handle.net/2297/30605
!.
博士論文
ポリウレタン系形状記憶ポリマーの開発
DeveIo1P皿ent onPo1y㎜etha皿e based Shape MlemoryPo1y皿ers
金沢大学大学院自然科学研究科 機能開発科学専攻 分子機能科学講座
学籍番号 9623022215 氏名 林俊一
指導教官 山田敏郎教授
目次
第1章 緒論 1.1緒言
1.1.1 はじめに
1.1.2 形状記憶ポリマーの要件
1.1.3 ポリウレタン系形状記憶ポリマー 1.2本論文の構成
参考文献
1 1 1 2 3 3 4
第2章 高分子系形状記憶材料の開発 2.1緒言
2.2 開発目標
2.2.1ガラス転移点 2.2.2開発目標 2.2,3材料の種類 2.2.4 Tgと化学構造 2.3 実験
2.3.1使用原料 2.3.2 配合モル比 2.3.3 重合方法 2.3,4 Tgの測定 2.3.5 引張弾性率 2.4実験結果および考察
2.4.1 ジイソシアネートの種類とTg 2.4.2 ポリオールの種類とTg 2.4.3鎖延長剤の種類とTg 2,4,4 配合モル比とTg 2,4.5 弾性率
2.4.6 既存ポリウレタンとの差異 2.3.7弾性記憶効果・形状記憶効果
2.4.8 耐久性 2.4.9 加工性
2.5応用
6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 8 8 8 8 8 8 8 8 9 9 9 9 9 9
2.5.1弾性記憶材 2.5.2 形状記憶材 2.6 緒言
参考文献
10 10 10
第3章 形状記憶ポリマーの射出成形による残留ひずみ低減に関する研究 3.1緒言
3.2射出圧縮成形法 3.3試験片作成 3.3.1成形試験 3.3.2 変形量の計測法 3.4試験結果および考察
3.4.1成形法および樹脂粘度の影響 3.4.2型締力の影響
3.4.3型締開始時間の影響 3.5 緒言
参考文献
15 15 15 16
1616 16
ユ6
17 17 17 18
第4章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーの変形特性 4.1緒言
4.2 実験方法
4.2.1供試材および試験片 4.2.2 実験装置
4.2.3 実験手順
4.3 実験結果および考察 4.3.1応力一ひずみ関係 4.3.2 回復ひずみ
4.3.3 回復応力 4.3.4 形状固定性 4.4 緒言
参考文献
22 22 22 22 23 23 23 23 24 25 26 26 27
第5章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーフイルムの形状固定性および形状回復性 5.1諸言
5.2 実験方法
5.2.1供試材および試験片
31
31
31
31
5,2.2 実験装置 5.2.3 実験手順
5.3実験結果および考察 5.3.1応力一ひずみ関係 5.3.2 ひずみ一温度関係 5.3.3応力一温度関係
5.3.4 形状固定性と形状回復性の最大ひずみ依存性 5.3.5 ひずみ固定率とひずみ回復率の繰返し数依存性 5.3.6Tgの異なる材料の変形特性
5.4 緒言 参考文献
第6章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーフィノレムのクリープおよび応力緩和特性 6.1緒言
6.2 実験方法
6.2,1供試材および試験片 6.2.2 実験装置
6.2.3 実験手順
6.3実験結果および考察 6.3.1単軸引張特性 6.3.2 クリープ特性
6.3.2.1 一定温度でのクリープ変形 6.3.2.2加熱によるひずみの回復挙動 6.3.3応力緩和特性
6.3.3.1応カー時間関係
6.3.3.2緩和応力のひずみ依存性 6.3.4Tgが異なる材料の特性の比較 6.4緒言
参考文献
第7章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーサーモメカニカル特性構成式のモデル化 7.1緒言
7.2 サーモメカニカル特性に対する構成式のモデル化 7.2.1標準線形モデル
7.2.2 内部摩擦によるすべり機構を含むモデル 7.2.3 熱膨張を考慮した構成式
32 32 32 32 33 34 34 35 35 35 36 41 41 41
4ユ
42 42 42 43 43 44 44 44 44 45 45 45 45
50
50
50
50
51
52
7.2.4 係数の温度依存性 7.3 実験方法
7.4 結果と考察
7.4.1係数の温度依存性
7.4.2 形状固定性および形状回復性 7.4.2.1応力一ひずみ関係
7.4.2.2応力一温度関係 7.4.2.3 ひずみ一温度関係
7.4.3 回復応力特性
7.4.3.1応力一ひずみ関係 7.4.3.2応力一温度関係 7.5 緒言
参考文献
52 53 53 53 53 54 54 54 54 54 55 55 56
第8章 陽電子消滅寿命およびフーリエ変換赤外スペクトロメトリーによる形状記憶ポリ
ウレタン中の自由体積の平均サイズ、数濃度の評価 61
8.1緒言 61
8.2陽電子消滅寿命パラメータによる自由体積の大きさ、数濃度の推定 61
8.2.1 オノレトーポジトロニウムの寿命と自由体積の大きさの関係 6ユ 8.2.2 自由体積分率の算出 62
8.2.3 データ解析 62
8.3 実験 63
8.3.1試料 63
8.3.2測定機器 63
8.4結果および考察 63
8.4.1FT−IRスペクトノレからの考察 63
8.4.2 陽電子消滅寿命からの考察 65
8.5 緒言 65
参考文献 66 第9章 高透湿性ポリマーの開発と衣料への応用 9.1緒言
9.2 実験 9,2.1原料
9.2.2 ポリウレタンの合成 9.2.3 フイルムの作成
70
70
70
70
70
70
9.2.4透湿度測定および引張り試験 9.2.5Tgの測定
9.3結果および考察 9.3,1透湿性 9.3.2力学的性質 9.3.3Tg
9.3.4Tg前後の透湿メカニズム 9.4緒言
参考文献
第10章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーの水溶化 10.1緒言
10.2 ポリウレタンの水溶化技術の検討 10.2.1乳化方法の選定
10.2.2 イオン性内部乳化剤の選定 10.2.3重合プロセスの選定 10.3 WPUの重合方法 10.3.1原料
10.3.2 重合方法
10.3.3WPUのポリマー構造の同定 10.4 物性評価
10.4.1 エマルジョン物性 10.4.2 フィルム物性 10.5 緒言
参考文献
第11章 ポリウレタン系形状記憶ポリマーの特性と応用 11.1緒言
11.2 ポリマーの種類と形態 11.3材料特性
11.3.1基本的な変形特性 11.3.2 形状回復性と固定性 11.3.3繰返し変形特性 11.3.4 水蒸気透過性 11.3.5 体積膨張特性 11.3.6 エネノレギー散逸特性
7ユ
71 71 71 71 71 72 72 73 76 76 76 76 77 77 78 78 80 82 85 85 86 90
9!
93
93
93
93
93
94
95
95
95
95
11.3.7 ひずみエネルギー貯蔵性 11.3.8 光学的屈折率特性 11,3.9 その他の性質 11.4 応用
11.4.1産業分野 11.4.2 医療分野 11.4.3 生活関連 11.4.4 衣料 11.4.5 その他 11.5 緒言 参考文献
96 96 96 96 96 97 97 97 97 98 98
第12章 血管を傷つけない点滴用血管内留置針の開発 12.1緒言
12.2 留置針の現状と問題点 12,3新型血管内留置針の特徴 12.3.1構造
12.3.2 特性
12,4 留置針の開発・製品化 12.4.1チューブ成形技術の確立 12.4.2二次加工技術の確立 12.5 留置針の性能
12.5.1室温での硬さと体内での柔らかさ 12.5.2めくれ
12.5.3 穿刺抵抗
12.5.4 金属針との諸特性の相違 12.6安全性
12.7他への応用 12.8 緒言
参考文献
102 102 102
!02
102
103 103 103 103 104 104 104 104 104 104 104 104 105第13章 結論
ApPendix I ApPendix n 謝辞
108
第1章緒論
1.1緒言
1.1.1はじめに
形状記憶材料としては、形状記憶合金が古くから知られている。金一カドミウム(Au−Cd)
合金が形状記憶効果を示すことはユ951年に見出されているが、実用化には結びつかないま まであった。1964年にNi−Ti(ニッケルーチタン:ニチノール)合金が形状記憶合金とな ることから発表されてから、世間の関心を多く集め、実用化の試みが行われた。その後、
いくつかの形状記憶合金が見出されており、現在までに10種類のものが報告されている。
ニチノールを中心に実用化の試みがなされ、航空・宇宙関連や一部の自動車・家電等にそ
の実用化の例が報告されている(1.1)。
一方、ゴム・プラスチックなどの高分子材料が、『ある種の形状記憶効果』を示すことは 古くから知られている。高分子材料はよく知られているように、いくつかの繰返し単位が 長く結合されて一本一本の高分子鎖を形成しており、この『鎖の集合体』が材料の構成成 分である。高分子材料の示す『ある種の形状記憶効果』は、高分子材料が『鎖の集合体』
から構成されていることに起因する本質的な現象である。
この高分子材料の示すある種の形状記憶効果は、『緩和現象』として知られており、物性 研究者の関心を集め、クリープ、応力緩和、線型粘弾性などの力学的観測手段により、1940 年代の後半から1970年代にかけて多く研究された(1 2)〜(L5)。
高分子材料が本質的に保有している、ある種の形状記憶効果(緩和現象)についての力 学的な研究としては次の観測手段が一般的である。これは、ある材料に任意の刺激(例え ば、一定荷重)を与えられたとき、その材料の示す応答(この場合は、ひずみ)を調べる ことにより材料の挙動をつかみ、さらに材料内部でどのようなことが生じているのかを把 握しようとするものである。刺激として一定荷重(単位面積当たりに直すと応力)を与え たとき、その応答として材料のひずみを時間の関数として測定するのがクリープ試験であ り、材料の物性値としてクリープコンプライアンスが得られる。また逆に、刺激として一 定ひずみを与えたとき、その応答として応力の時間変化を測定するものが応力緩和試験で あり、同様に、応力緩和弾性率が得られる。また、刺激としてひずみを時間とともに増加
させながら、応答としてそのとき発生する応力を測定しているのが、通常の引張試験であ
る。
クリープまたは応力緩和は、同じ材料に対して異なる形式の刺激(一定応力または一定 ひずみ)を与えたときの応答を見ている。それゆえ、両者の間には何らかの関係があるこ
とが予想される。実際に、両者の間には、関係があることが証明されている。
クリープや応力緩和で見たように、高分子材料のクリープコンプライアンスや弾 性率は、
材料の定数ではなく、温度と時間の関数である。ある特性の高分子材料に対して、高温で
短時間の刺激を与えたとすると、その応答と同じ振る舞いをする等価条件が低温では長時 間側で見出すことができる。逆に、高温短時間に与えられた刺激の効果は、低温短時間に おいては失われないことになる(ある種の形状記憶効果)。
これらの緩和現象をより強く発現させるための、分子構造の制御等材料設計を行うこと により、最近、エラストマーを中心に材料に形状記憶高分子として機能を持たせることが 研究され、いくつかの形状記憶ポリマーが開発されている。
1.1.2形状記憶ポリマーの要件
高分子材料の非晶鎖はガラス転移温度(T、)以上ではミクロブラウン運動をしており、ゴ ム弾性的な性質をもち、ほとんどの高分子材料が「形状言己憶ポリマー」としての素質を持 っている。図1.1には、形状記憶ポリマーの形状記憶、回復のプロセスを示した(L6)。まず、
目的とする形(板、シート、棒など)に賦形し、次いで室温あるいは加熱下で変形後に形 状を固定する。この後、必要なときに加熱することで元の形に回復する。
このように、材料に元の形状を「記憶」させて、形状記憶ポリマーとして実用化させる ためには、いくつかの要件が必要になる。表1.1には、この形状記憶ポリマーとして必要 な要件と「変形」、咽定」、「回復」などのメカニズムを合わせて示した。一般に、形状の 記憶のための変形の固定にはガラス転移、又は結晶化が利用される。形状記憶ポリマーが
どのような状況で、又は温度環境で使われるかによって、変形、固定、回復のそれぞれの 温度が選択されることになる。
このように、記憶、回復のメカニズムあるいはプロセスからみた形状記憶ポリマーとし て必要な要件をブレークダウンして考えると、分子構造上必要な条件を引き出すことがで きる。表1.2に示すように、適当な温度領域でゴム状になる分子鎖からなり、かつ、「掛け 金」のような役割をもつ構造を有することが必要である。
表1.1形状記憶ポリマーとしての要件
要件 メカニズム
① 成形が容易 熱可塑性
② 変形が容易 弾性体(弾性変形)
③ 変形が固定できる ガラス転移(分子運動凍結)又は結晶化
④ 回復温度をもつ ガラス転移(凍結解除)又は融解
⑤ 回復が容易 ゴム弾性
度]篇目罵同病円涼国
↑ ↑
掛け金が 掛け金が かかる はずれる 図1.1形状記憶ポリマーの記憶、回復のプロセス
表1.2形状記憶ポリマーとして必要な分子構造の条件
①フレキシブルな高分子鎖から構成されている。
②網目構造がある(化学的架橋又は物理的架橋)。
③室温以上の特定な温度で分子運動が凍結又は制限 される構造をもつ。
↓
ゴム状分子で「掛け金」のような役割をもつ構造を有す。
↓ ガラス転移 微結晶の融解
変形した温度での熱履歴による構造の発生と消失
1.1.3ポリウレタン系形状記憶ポリマー
三菱重工業株式会社名古屋研究所はジイソシアネート、ポリオールおよび短鎖ジオール からなるポリウレタンの形状記憶ポリマーを開発した。本ポリマーは基本的にソフトセグ メントとハードセグメントからなるブロックコポリマーであり、熱可塑性を示しハードセ グメント部分の融解温度は約200℃であり、熱融解下での成形加工性に優れる。形状記憶ポ
リマーとしての大きな特徴は分子設計の自由度が大きいことが挙げられる。各セグメント の化学構造の選択、ハードセグメント分率およびポリオールの分子量をかえることにより、
本ポリマーにおける形状記憶のための「掛け金」であるガラス転移点を一30℃から斗120℃の 範囲で自由に変化させることが可能となる。
本ポリマー技術を核とした事業化も三菱重工業株式会杜で行われており、各種の用途開 発が行われている。
1.2本論文の構成
本研究では、ポリウレタン系形状記憶ポリマーの高機能化、品質向上および用途開発を 念頭に置き、分子設計を含めた材料開発、成形加工、力学的および物理化学的な機能に関 する材料特性評価、用途開発について行なう。
また、本研究では、従来、形状記憶ポリマーという概念も研究例もない中で、分子設計 から用途開発まで一連の研究で、主に実用上重要である、ガラス移転点、成形加工性、機 械的特性(形状固定性、形状回復性、クリープ特性、応力緩和特性も含む)、水蒸気透過性 等と形状言己憶ポリマーの分子構造との関係について議論する。同時に新しい試みとして本 ポリマーの自由体積の観点から形状記憶のメカニズムについて検討する。また、環境対策 の観点から本ポリマーの有機溶剤を用いない水溶化技術について議論し、これら研究結果 を取りまとめる。
本論文は13章からなる。第1章は緒論、第2章は基本的な形状言己憶ポリマーの開発につ いての研究であり、主に高分子構造のガラス転移点Tgに及ぼす影響について実験的に検討 している。同時に形状記憶効果、その耐久性、成形性について議論している。第3章は本 ポリマーの射出成形技術に関する研究であり、実用上重要である成形時の残留ひずみの低 減を目的として、射出成形時の温度、圧力、速度等操作条件の最適化と分子構造と溶融粘 度の関係について示している。
第4章から第7章までは本形状記憶ポリマーの力学的性質について、特に本ポリマーの 特異的な性質である形状記憶性も含め検討している。第4章は分子構造の異なる2種の形 状記憶ポリマーについて変形特性の温度および負荷応力依存性とその繰り返し特性につい て調べている。第5章はフィルム状形状記憶ポリマーを対象に基本特性である形状固定性 および形状回復性を調べている。すなわち、ガラス転移点Tg以上の温度での負荷、ひずみ を保持したままTg以下の温度に冷却・除荷、さらに無応力下での加熱からなるサーモメカ ニカル負荷における応力一ひずみ一温度の関係を検討する。
第6章では、材料の信頼性、耐久性と関連する変形特性の時間依存性について示してい る。具体的にはクリープ特性と応力緩和特性について議論している。第7章は本ポリマー の力学的特性に関する研究の総括として、材料として適用する場合の設計のために、サー モメカニカル特性を表す構成式を提案している。Tg領域での著しい特性の変化を表すため に従来の粘弾性モデノレに内部摩擦によるすべり要素を加味しモデノレ化している。
第8章では、各温度での赤外線吸収スペクトルより、分子構造、高次構造の観点より本 ポリマーの形状記憶機構について議論するともに、陽電子消滅寿命測定法を用いポリマー 中の自由体積の平均サイズ、数濃度の温度依存性を測定し、後述のガス透過性の温度依存 性について考察している。第9章は本ポリマーの用途展開の一つである衣料分野に適用さ せるために、本ポリマーの親水化とポリマー組成、水蒸気透過性、機械的性質およびTgの 関係を検討し、その最適化について考察している。
第10章は本ポリマーの水溶化技術について示している。環境汚染、労働安全衛生の観点 から有機溶剤を用いないポリマー溶液が求められており、これに対応するために、ポリマ ー骨格に乳化剤を導入するアイデアで水分散型形状記憶ポリマーの重合技術の開発を試み
ている。
第11章は本ポリウレタン系形状記憶ポリマー全般についての解説である。材料形態、各 種特性、用途例について示している。第12章は医療分野での重要な用途例の一つである点 滴用血管留置針の開発について示している。第13章は総括である。
参考文献
(1.1)清水・入江・唯木、『記憶と材料』共立出版(1986)
(!.2) J.D.FERRY, VISCOELASTI C PROPERTIES OF POLYMERS 3rd EDITION ユ980. JOHN WILEY & SONS I NC.
(1.3)中川鶴太郎・神戸博太郎:レオロジー、みすず書店(1959)、p.369
(1.4)
(1.5)
(1.6)
SPrague,B.S.:J.Macroma1.Sc i.,B8(1−2),157(1973)
Noether,H.D.,Whi tney,W.:Ko l lo i d−Z,u.z.Po l im,251,991(!973)
中山和郎:最新高分子技術総覧、産業技術サービスセンター(1988)、 p.418
第2章高分子系形状記憶材料の開発
2.1緒言
近年、圧電材料・メカノケミカル材料等に代表される先端機能性材料の開発が盛んに行 われており、また、知的材料(インテリジェントマテリアル)としてその実用化の為の研 究開発も進められつつある。これらの中でも温度センサ的機能を持っ材料としては、バイ メタル・形状記憶合金があるが、バイメタルは温度変化に対する変形量が小さく、また、
形状記憶合金は高コストである等の問題点があり、同様の機能を持っ低コスト材料開発の 要求が高い。
このような状況において、室温近傍で使用可能である低コストの温度センサ的機能を持 つ材料開発に着手した。これは高分子材料特有のガラス転移点の上下の温度での特性の変 化をセンサ又は力学的アクチュエータとして利用するアイデアに基づくものであるが、現 在、広く実用化されている高分子系材料のほとんどは、このガラス転移点を室温付近に設 定しないか、あっても特性変化を小さくするようにしている。
本章では逆にこの転移温度を室温付近に設定し、その上下の温度における特性変化(こ こでは弾性率)を極力大きくするためにポリウレタン系材料を選定し、ガラス転移の温度 と弾性率の変化に着目し、これらのコントロール可能な分子設計について述べる。なお、
弾性記憶材料とはガラス転移点の上下の温度で弾性率が大きく変化し、それが温度変化に 対し可逆的であることを意味している。ここに示す材料は、ガラス転移点が一30℃〜30℃の 範囲で、弾一性率変化の比が最大180のものを得ることができた。
加えて、この種材料の応用例についても述べる。
2.2開発目標
2.2.1ガラス転移点
金属は溶融状態から冷却すると融点で結晶化して固体に変化し、力学的性質、熱力学的 性質とも不連続に変化する。一方、ガラスや高分子物質は溶融液体を冷却すると、結晶化 することなく過冷却の液体状態(無定形)のままガラス状態で固化するが、この過冷却状 態からガラス状態への転移は比較的狭い温度範囲で起こり、この温度をガラス転移点(以 下丁、と略す)といっている。一般に高分子物質は分子鎖の熱運動のしやすさ、すなわちミ クロブラウン運動の有無を境としてT、を持っており、その物性も変化する。この挙動を図
2.1に示す。
2.2.2開発目標
実用上利用温度範囲は室温付近が多いため、T、を一30℃〜30℃の範囲にある材料とし、機 能的には弾性率変化の大きいことが重要であるため、T、前後での弾性率比を20以上極力大 きい材料を開発することを目標とした。その他開発に当たり考慮したことは、加工性と耐 久性である。加工性については複雑形状が多量生産できしかも低コストということから射
出成形加工できる材料を狙いとした。耐久性は耐侯性、繰り返し作動性などの良いことが 必要である。詳細を表2.1に示す。
2.2.3材料の種類
この開発目標に対し、ポリウレタン系高分子材料の配合により達成できることが予測さ れたので、本材料に絞り詳細な実験検討を行った。
本材料を選定したのは下記理由による。
(1)原料が比較的安価で入手性の良いこと
(2)原料組成の種類が豊富で配合の自由度が大きいこと (3)熱可塑性を持ち、射出成形可能であること
これら条件を満足する材料系として、三種類の原料(モノマー)の重合反応により合成 され、分子鎖に一(NH−CO−O)一のウレタン基を有するポリウレタン系材料について、その配合 を検討した。図2.2にポリウレタンの基本的な重合過程を示す。
2.2.4T、と化学構造
射出成形可能とする熱可塑性付与のため、分子間に架橋のない直鎖高分子とする必要が あり、ジイソシアネート・ポリオール・鎖延長剤とも二官能基のものに絞った。
また、T、を支配する化学構造的因子は次の四つであり(2.1)、
(1)凝集エネルギー密度 (2)鎖状分子の剛直性
(3)幾何学的因子(置換基の大きさなど)
(4)鎖状分子の対称性 これらの一般規則をもとに、
(1)分子主鎖として、メチレン直鎖・ベンゼン環濃度・分子量 (2)側鎖の有無・大きさ・数
(3)極性
(4)三成分のモル比
について、原料を選定しこれらの組合せ、配合比とT、の関係にっき検討した。
各種ポリマーの分子構造とT、に関しては、これまで種々の研究が実施され、報告されて いるが(1)、T、を室温付近に設定することを狙ったポ。リウレタンの原料組成とT、の関係につ いての研究はない。そこでポリウレタン系原料を用い分子構造・分子量の異なる配合につ いて検討し、T、コントロール手法と弾性率比についての検討結果を報告する。
2.3実験
2.3.1使用原料
上記予測を考慮し原料は、いずれも二官能のジイソシアネート5種、ポリオール10種、
鎖延長剤6種である。詳細を表2.2に示す。
2.3.2配合モル比
原料の配合モル比は次のように設計する。
[NCO]基のモル数 原料モル比: 〈1 全[OH]基のモル数=
2.3.3重合方法
ポリウレタンの重合は、無溶媒で、プレポリマー法で行い配合比<1になるようにする。
また、反応固化条件は120℃×10hである。(詳細はApPendix Iに示す)
2.3.4Tgの測定
丁、はDSC法(差動走査形熱量計)により求めた。測定条件は昇温速度20℃/min.で、N。ガ ス雰囲気で行う。
2.3.5引張弾性率
試験片はJISダンベル2号、厚さ3㎜、測定条件は、チャック間距離20㎜、引張速度50㎜/min とし、温度はT、十10℃、T、一10℃の2点で行った。
2.4実験結果および考察
2.4.1ジイソシアネートの種類とT、
ジイソシアネートの[NCOコ基とトータルジオール[0Hコ基のモル比を一定としたときの、
ジイソシアネートの種類とT、の関係を図2.3に示す。ポリウレタンはソフトセグメントを 構成する二官能ポリオール、ハードセグメントを構成する短鎖グリコール及びジイソシア ネートの三成分の組合せにより構成されるブロック共重合体である。
T、は㎜DI,TDI,MDIの順に上昇した。これは、ハードセグメントのミクロブラウン運動 が起きにくくなったことを示す。ミクロブラウン運動開始は分子構造が重要な因子であり、
セグメントの内部回転を制限する構造は物質のT、を上昇させる。
HMDIは脂肪族直鎖構造で柔軟なメチレン連鎖を持っているためT、が低い。TDIは大きく て剛直なベンゼン環を含むため、セグメントのミクロ運動の障害となりT、は高くなる。ま たMDIはベンゼン環濃度が2個と高いため、TDIより更にT、が高くなったものと考えられる。
2.4.2ポリオールの種類とT、
[NCOコ基と[OHコ基のモル比を一定にした時のポリオールの種類及びその分子量とT、と の関係を図2.4に示す。PTMG系は柔軟なメチレン基の直鎖構造でありT、は低い。一方PPG 系は側鎖のメチル基が立体障害となりPTMG糸よりT、は上昇する。ポリエステル系は極性の 高いカルボニル基の存在により、PTMG糸よりT、が高くなる。
またポリオールの分子量M、が大きくなるほど剛直なハードセグメントの濃度が減少し、
T、は直線的に低下する。
2.4.3鎖延長剤の種類とT、
[NCOコ基と[OHコ基のモル比を一定にした時の鎖延長斉■」の種類と丁筍の関係を表2−3に示 す。鎖延長剤もポリオールと同様、分子量及び分子の柔軟さに比例してT、が低下する。
2.4.4配合モル比と丁匡
トータル[NCOコ基と[OHコ基のモル比を一定にし、ジイソシアネートと鎖延長剤のモル 比を変化させた時のT、の変化を図2.5に示す。MDI−lL700−EG系ではP−700に対し、MDI及 びEGのモル比を増加させると、極性が高くて分子間力の大きいハードセグメントの割合が
増加し、T、も上昇する。
また[NCO]/[OH]モル比をO.99,1.05,1.11と大きくしていくとT、も9,1/、12℃とわず かに上昇した。これはプレポリマーで残った[NCO]基がウレタン基と反応して剛直なアロ ファネート架橋を生成したためと考えられる。この結果を図2.6に示す。
2.3.5弾性率
以上の実験から室温付近にT、を持つポリウレタンに着目して6種類を選定し、同試料の 弾性率を測定した。その結果を表2.4に示す。弾性率は本来、結晶化度、分子量等より考 察する必要があるが、今回、原料組成面からだけ見る限りでは、弾性率との相関性は見当
らなかった。なお、以降に述べる材料特性は表2−4に示すNα60(丁認・15℃)試料を対象とす
る。
2.3.6既存ポリウレタンとの差異
本材料はポリエーテル系ウレタンエラストマーであるが、既存の同材料(丁目は刈℃前後)
と比較してポリオールの分子量M、が小さいこと、鎖延長剤のモル比が相対的に高いことが 主な特徴といえる。
2.3.7弾性記憶効果・形状記憶効果
本材料はT、を境として可逆的に大きな弾性率変化を示すという意味で弾性言己憶材料と称 しているが、同時に形状記憶効果も有する。これらの挙動を通常の材料の応力一ひずみ(伸 び)曲線と比較して図2.7,2.8に示す。図2.7は応力一ひずみ曲線と温度の関係を三次元 的に表したものであるが、通常の材料は温度上昇に伴い若干の弾性率の変化が見られるだ けであるのに対し、本材料はT、を境に不連続に1/100以上の急激な低下が見られる。また、
図2.8に示すように通常の材料は塑性域までの変形を与えた後除荷しても永久変形が残存 するのに対し、本材料ではT、をまたぐ10〜20℃の昇温によって分子のミクロブラウン運動 の開始により15〜20%のひずみが完全に回復する。ただし、ひずみの回復に伴い発生する 力については約8kgf/㎝2であり、いわゆる形状記憶合金において発生するmax6000kgf/㎝2 に比較し小さい。
2.4.8耐久性
耐久性に関しては、屋外使用を考慮した耐侯性、高温時の耐熱劣化性、耐薬品性の一例 として耐ガソリン性、ひずみと温度の両方に着目した繰り返し作動性試験を実施した。こ れらの結果を表2.5に示す。これから明らかなように、致命的な劣化もなく十分な耐久性
を有していることが分かる。
2.4.9加工性
高分子材料の成形加工性の一つの目安としてよく用いられているメルトインデックス
(MI)を測定した。また最適射出成形条件についても検討した。結果を表2.6に示す。こ れらの値は通常の高分子材料の持つMI値であり、一般的な射出成形装置を用いて、普通に 成形可能である。
2.5応用
本材料の応用分野を作動原理に基づいて分類すると次のようになる。
(1)弾性記憶材料としての利用 (2)形状記憶材料としての利用
以下にそれぞれについての一般的な応用分野を示す。
2.5.1弾性記憶材料
大きな弾性率変化を利用するもので、その一つに外力と組合せ温度センサとしての使用 が可能である。これは図2.9に示すように温度変化を大きな弾性率比によりひずみ量変化 に置き換えることができる。温度変化を機械的な動きに変換する素子としてバイメタルが あるが、図2,10に示すように一定温度差の昇温に伴う変形量は本材料の方がはるかに大き く、しかも特定温度(T、)で急激に変化する。
この機能を利用したものとしては、エンジンのオートチョーク機構がある。その外観と 本材料の使用状況を図2.!1に示す。他に流体の温度変化による自動開閉が可能なバルブ、
スタッドレスタイヤヘの応用がある。
2.5.2形状記憶材料 二通りの利用法がある。
(1)形状回復のみの利用 これは更に次の二つに分けられる。
(a)T、以下で変形させ、温度上昇によりT、以上にし変形前の形状に回復させる。
(b)T、以上で変形させ、外力を保持したままT、以下にし変形を固定させる。この状態 で外力を除いても変形を保持したままである。その後丁、以上に昇温し変形前の形 状に回復させる。
(2)形状回復と形状回復力の利用 ただし前述のように回復力は小さい。
本材料の持つ形状回復の様子を図2.12,2.13に示す。この機能を利用したものとしては、
狭あい部に用いる結束バンド、締付けピン、各種玩具等がある。
2.6緒言
易成形・軽量・低コストを目的とした高分子系機能材料開発において次の成果を得、開 発目標を達成することができた。
(1)対象材料としてポリウレタンを選択しガラス転移点発現の影響因子を明らかにした。
(2)従来の高分子材料と異なり室温にガラス転移点を設定し機能材料とした。
(3)十分に実用性のある加工性、耐久性を有する材料を得た。加えて、本材料の開発研 完を通じ高分子材料の分子構造と物性の関係についての知見が得られた。
今後の課題としては、本材料への他機能の付加、特に可逆的な形状言己憶効果の付与、弾 性率の自由なコントロール技術、及び用途の拡大に注力していく所存である。
参考文献
(2.1)例えば、黒田ら、高分子の基礎物性と応用、CMC(1984)
鮒 単 量
ガラス値1ガラス1ゴム舳
1転移 1 1領域 1 1 1 1 1 1 1
τ
1遺動傾城
^遼
図2.1高分子材料のガラス転移 痘度上昇に伴 いガラス領域・ゴム領域・流動領域と転移する (無定形高分子を模式化した)。
表2.1開発目標
炊業 酬 目 炊瞬 方法 日 標 縦
銭舳洲; τ.けラス側}一} OSC法 一ユ。一コ℃
8η以Lて剛州1箏 弓峨城県1二よる
@η斗1㏄
デ性→ κ7.以rでの}性年 州劔杁県による
@τ・一10℃
αE 一一 20以1二
桑糺倫 ガン1し酬一モ構州仁
w注化中 札 川mい」.1.・
5Fろ以}
創業怜 撒静阻遺贈のフ凹ヒ 怜中 70 い、舳h旧〃用・州什v 催沽寧 冾n%山1二
納付 S,W.0.MPて1整逃博
フ外性,ぴハ勧化 S.W.0.M.で3mh純ハ・j1払骨η一介 ㈹n〜一 W0%山11
先11地L lか舳れ
I−1山C・・ 0 C.ひ寸.み舳・・10㌔を D・1叫1二1川1し.5高1舳舳、吋以心 ムηハ州じ
山ヒなし
公影帷 〜州舳川能 M1胆」1SK?210
F90℃.!一60記 0.ト!5パ0分
■:ザンシ午インウ1サオサ ; 午イ!ウ1サオ 一2一2
ジイソシアネート 0C 一高一 ◎0
ポリオ・ル
㈹一R」㎝
続廷員副 胴一R一◎H
ポ.,ウレタン
し、五。.、、。且出.。.出,1し \
!県.点。.、、、↓咄.。斗1い 図2.2ポリウレタン重合過程
タンの重合のフロー
20
0
0
■一20
一40
/ O
O㎜】
ポリウレ
3L㈹
■69 0 1 2
ジイソシアキ.トのベンゼン種。融
図2.3ジイソシアネートとT。ジイソシア
ネートの組成と丁目の関係を示す。
3
表2.2重合に用いた原料
1集 榊 名 債 胴 名
2,HOl㎜n
舳80q3制6 2,4−TD1
4−4.一di枇叫1㎜tham diis㏄胆na屹 MI)1 ジイソシアネー} C8㎞diimid●㎜di d
dj1s㏄ya㎜k ト 3しtH〕
, I−1棚L{M,
H挑8m舳yl㎝o
仙80c〃n北 HMD1
Pol〃。W㎞ 1y仁。l P−400{PPG)
● ト700{PP(;,
P・1000〔P閉一 1,4一㎞t㎜2glyco1
8di刺G Y4−60
I, 剛3−35
.ポ ・1 オ 一 ル
〃 F9−30
Po1州d唖㎜;WlcnG
81y o1 PTMG−650 P↑MC−850 PTMC−1000 眺p㎞㎜1−A+㎜. EPX−55 識hy1G㏄81ツ。o1 ε(;
1.4−b山8㎜記1ツ。o! 1.4−BG 腕12・hyホ。〃舳州
吋d岬凹in㎝e Qui舳i㎎一H 洲 他 蛯 州
B師㎏㎜トA 珊O.. E肥一20
■ 舳一391ycoi 8i功㎝ol一^十PO 8PX・11
■ PO:PfoPy㎞6 0対dG ・・EO:趾1y㎞磨。貫i山
o
← 胴
0
一20
・40
POl r叩此m●帥Cd
Pd 山8m●㎞比。●
伽d
104868d晩t6
500 1000 1500 分子量州
図2.4ポリオールとT、ポリオールの種類 および分子量と丁目の関係を示す。
約
)109
点
0
0山amine−H 口 8庄・カ
、κ
1
0.2 0,4 0.6 0,8一10
標語長司のモル比{対ジイソシアネート)
図2.5鎖延長剤のモル比とT、 鎖延長斉1」の 種類およびモル比とT、の関係。
表2.3鎖延長剤とT、
成分 直作h 32 33 洲 35 29 36
M1D■ O O
O
OO
0 表2.4弾性率ト700
O
OO
O O O成分 武作Hα 25 29 30 拠 34 60
EG O
1.4−BG O 2,4−TDl
O
BPX−11 0 MDI
O O
OO
BH≡:一20
O
H43し(冊O
8A−3glyco1 O EPX−55 O
〜iaminε一H
モ@/?マー7 i ト700
O O O O O
τσ旧
9 6 12 16 14 醐O O
1.4−BG
O
8PX−11 0
BA−3市。ol
O O
η㈹
z4M
16 9 12 15注:O印は用いたモノマーの組合せを示す.
@ 20
@(
@9 )1o
@占
引張舳怖中
i.剛帆十101℃ 19 15 22 31 22 17
引張抑竹郎
d計1τr10〕℃ 3238 1930 2930 3640 2820 2070
亙旭 170 i29 133 u7 128 122
注 O印は用いたモノマーの組合せを示す.
20
9)1o
占
表2.4弾性率
0
注:Ol O印は用いたモノマーの組合せを示す.
ω周一組改のものは醐含モル比が県なる.
O.兇 1.00 ユ.05 1.IO l,15
モル比N00!㎝
図2.6モル比(NC0/0H)と丁目
NCO基と全OH基のモル比と丁纈の
f
汽 笛
ガラス頑業
ゴム領域
{ 笹
し一一L一
亨 \
ひ寸小一一一
図2.7本材料の応力一ひずみ曲線と温度の関係 丁目をまたぐ温度域における応力一ひずみ曲線 の温度依存性を示す(模式図)。
図28通常の高分子材料および本材料の応力一ひずみ 曲線 本材料の特徴の一つである形状記憶効果 を示す(模式図)。
選書のポりマー ホ真桑樹納
8
^檀 ξ夕 行心
カ業
永久質影 びず〃
ひずみ
12.8通常の高分子材料および本材料の応力一びずヌ
表2.5耐久性
拭 騎 颯 日 8旧直 ㎞60の
タ測値
休憩の引証穂牲率(賜%〕 仙ψ6m−1 33
, 熟 冊
伽X500舳・引脚榊㈱{25%,の保持準
80以上 98
静 仮 性
S.W.αMj00h検.引張榊性 {%〕側25%)の保持邸
80以上 則
{ 雑 兇惟
1』ン肌鎚Xm舳㈱休購変化阜
5 5
独リ返し作動笛
温度5℃一40 C.ひずみ0%}10%
1司崎に印加し.5x109回姓、外山 Dぴ、の空化
珪化なし 生化なし
比 重 114
ω叱以下 資影営。どんど ない ω課■選娼
⇒
〔〉F讐障くホ撒籠榊弓
ωr0山 ω7、山・
大きく醐灯ら ゴム韓制こより
形状回種
くコ
Fを艘く
20
10
・…
I≡
0q
心
4心
一10
本開発輔料
バイメタル
ω月以下 ㈹τ8以下 ωτ1以上 質能 姻越れる 更影電は度わら 犬ε〈区影↑る
ない ω騎 選棚
図2.9外力と温度の組合せによる変形 荷重印加状態で温 度上昇させると丁目上下の弾性率比に従い大きな変形が 起きる。除荷後は材料のゴム弾性により形状回復する。
:本開見似吟のみ}負.萄 状線で行う
表2.6成形性
咬
}書 聖影
一別
区 分
Nα60 80x80x 3
〃 優
)】0刑 190℃
2160E
6.0 ノ ズル 温 度
{℃〕
190
シ1 ン7遇広 {℃工 餉 新
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訓 辞 出 時 聞
〔5j
,0
沿 刻 オ 岡
{5〕
50 型 沮
{ C〕
35
0 10 20 釦 50
置 度(1C)
図2.10バイメタルと本材料の動作特性比較 両材料の温度変化によるたわみ特性の比較。
(a)オートチョーク機構外観 (b)丁目以下 (c)T。以上
図2.11オートチョーク機構 オートチョーク機構に使用した本材料の機能を示す。
(b)の状態ではチョーク弁は閉、(c)では温度上昇により弾性記憶材料の変形が大き くなり、チョーク弁は開となる。
.}
・・■
■
(a)変形付与前
回2.12形状記憶効果(1)
(b)変形付与(T、以下)5℃ (c)変形回復(T、以上)25℃
本材料が形状記憶効果を有することが分かる。
(a)変形付与前
回2.13形状記憶効果(2)
,・穫・
鋤001冊1■川 ω、州 ・ガ∫ 、識1・
(b)変形付与(丁目以下)5℃ (c)変形回復(T。以上)25℃
射出成形品の形状記憶効果を示す。
第3章形状記憶ポリマーの射出成形による残留ひず
み低減に関する研究
3.1緒言
形状記憶ポリマーの成形品は、ガラス転移点前後の温度領域で使用されるため、成形時 の成形加工ひずみによる変形が発生する。特に薄肉晶の射出成形においてその傾向が著し い。今後、形状記憶ポリマーを普及させていくためには、この成形加工ひずみをいかに小
さくするかが重要な技術課題の一つである。
本研究では、近年レンズやディスクなどサブミクロンオーダの精度を要求される製品に 用いられている射出圧縮成形法に着目し、成形加工ひずみの少ない成形条件、材料組成を 明確にすることを狙い、形状記憶ポリマーの射出成形による残留ひずみ低減に関する研究 を実施する。
3.2射出圧縮成形法
一般の射出成形法では、ゲートより溶融樹脂に高圧をかけて注入することでメルトフロ ントを押し進めて充填する。このためゲート付近は圧力が高く、ゲートから離れるほど圧 力が低くなり、型内圧力は不均一となる。また金型キャビティは成形晶の肉厚と同寸法の 隙間であり、薄肉製品ほど高い圧力と大きな射出速度を必要とする。
これに対し射出圧縮成形法は、図3.1に示すように金型キャビティの隙間(成形品肉厚)
を最終成形品より圧縮代分拡大(型寸開状態)したところへ樹脂を射出し、射出が終了し ゲートシールが完了すると、すぐに圧縮工程に入りキャビティに圧力が均等に働く様にし 通常成形では避けられないキャビティ内の圧力差を無くすことで反り、ひずみを減少させ て面精度を高めることができる。また型を寸開したところへ射出するため、型内圧が低く 型締カの低減にも効果がある。射出圧縮成形法の歴史は古く20年余におよぶが成形品への 要求と成形技術の確立がうまく噛み合わず永らく低迷していた。しかし近年レンズやディ スクなどサブミクロンオーダの精度を要求される製品の表面転写技術として利用されてき ている。射出圧縮成形法の効果は次のように分類される。
①低圧成形(低型締力)
②残留応力の減少 ③冷却時間の短縮 ④転写性の向上 ⑤平板製品の反り改善 ⑥肉厚製品のヒケ改善 ⑦ゲート点数の減少
3.3試験片作成
成形加工ひずみ低減の効果を確認するため、射出圧縮成形法と一般の射出成形法による 成形試験を実施した。
試験片は成形加工ひずみの影響が観察しやすい形状という点から、
・φ120、厚さ3㎜の円形平板形状とした。
試験には下記の材料を用いた。
・三菱重工業製形状記憶ポリマー、ダイアリィ㎜一5520(Lot No.TU902)
成形機としては三菱重工業の成形機を用いた。
・射出成形機80MSP−5(射出圧縮成形モード付き)
3.3.1成形試験
試験片の作製は、次項をパラメータとして成形を実施した。表3.1にその組合せの概要
を示す。
(1)成形法…射出圧縮成形法、一般射出成形法 (2)試験条件…型締力、型締開始時間、樹脂温度
3.3.2変形量の計測法
成形試験後の評価は変形量と光弾性歪の観察にて行った。
変形量は、各成形試験により得られた成形品の成形直後の寸法と、その成形晶をT、以上 の温度(70℃)に加熱した時の寸法の変化を変形量とした。
成形試験→成形品寸法……① →T、以上(70℃、1時間)に加熱→冷却(23℃、24時間)
→寸法測定……②
・変形量=加熱後の寸法②一成形直後の寸法①とした。
光弾性歪測定は新東科学社製HEDON−13型(可視光)で行った。
3.4試験結果および考察
3.4.1成形法および樹脂粘度の影響
一般の射出成形法と射出圧縮成形法および樹脂温度が加熱後の変形量に与える影響を図 3.2に示す。試験条件は下記のとおりである。
・型締圧79㌧
・型締開始時間1秒
その結果によると、変形量は射出圧縮成形法を用いることで一般の射出成形法に比べ約 17㎜も減少する。
成形法を問わず、成形温度を200℃から220℃に上げることでも、変形量は約12㎜減少 する。樹脂粘度はこの時、200℃で700Pa.s,220℃で240Pa.sとなっている。
成形法を射出圧縮成形、樹脂温度を220℃で成形をした時、変形量は約2mmと非常に少な い値となった。
この時の光弾一性歪を観察したものを図3.3に示す。
ポリマーなどの固体に内部応力が存在すると、光学的異方性を呈し複屈折を示す。光弾 性写真では応力レベルに応じた縞次数が観察され応力が高いと、その縞の密度は高く、低 いと密度は低く縞も不明確になる。本試験では、一般の射出成形法で得られた成形品にお いて、ゲートを中心にした円周方向に縞次数が高く、成形による大きなひずみが発生して いることがわかる。これに比べ、射出圧縮成形法で得られた成形品に縞は殆どなく、変形 量の値とも良く一致した結果であった。
以上のことから射出圧縮成形法を用いると、キャビティ内の圧力差が少なくなることか ら成形加工ひずみが減少するものと考えられる。
また成形温度を上げることも変形量の減少に効果的であるが、これは樹脂粘度が下がる ことで型締時のひずみが少なくなるためと考える。
3.4.2型締力の影響
成形時の型締力の違いが加熱後の変形量に及ぼす影響を図3.4に示す。この試験は下記 の条件で実施した。
・樹脂温度200℃
・型締開始時間1秒
型締力は42㌧、60トン、79㌧にて試験を行った。この時の変形最は最小で15㎜(79㌧)、
最大でも19㎜(60㌧)とほとんど変化はなく、型締力の大きさにも相関は見られない。光 弾性歪の観察においても差は認められない(図3.5)。
これは、型締力が成形時の型締の圧力を制御するだけであり、溶融樹脂の流動速度や型 内圧力分布に大きな影響を与えないためと考えられる。
3.4.3型締開始時間の影響
この試験では型締開始時間を1秒、6秒、11秒の三点で行った。他の条件は下記のとお
りである。
・樹脂温度200℃
・型締圧79㌧
試験結果を図3.6に示す。
加熱後の変形量は型締開始時間1秒では15㎜、6秒では23㎜、11秒では24㎜と型締開 始時間が遅くなるにしたがって大きくなる傾向にある。光弾性歪の観察写真を図3.7に示 すが、変形量に見られるほどの差は認められない。
射出圧縮成形においては、寸開したキャビティ内に樹脂を射出した後、圧縮工程に入り 成形晶を得る。この為、この型締を開始する時間が遅くなると樹脂温度が低下し、樹脂粘 度も高くなる。このため、成形晶の中で成形加工歪が発生し易くなり、変形に影響を及ぼ すものと考えられる。
3.5緒言
今回の成形試験の結果、残留歪低減に関し有効な手法として次のことが確認できた。
・射出圧縮成形法……効果大 ・低樹脂粘度……効果中 ・型締開始時間……効果小
・型締力……実験範囲内では効果は認められなかった。
残留ひずみを低減させるためには、いかに低い圧力で成形するか、いかにキャビティ内 の圧力差を無くずがが重要である。
このことから射出圧縮成形法は、残留ひずみ低減に関し非常に有効な手段といえる。ま た樹脂粘度を下げることも低圧変形、型内圧力差の低減には有効であるが、今回の成形条 件は形状記憶ポリマーの分解温度(約230℃前後)に近く、これ以上成形温度を高くし樹脂 粘度を下げるのは難しく、また分解温度と成形温度との温度差が少なく最適な成形条件の
中冨もノ』・さい(3・1)。
このため材料としても樹脂粘度を下げ、成形温度と分解温度との差を大きく持たせるこ とが必要と考える。これらに関しては次の手法が確立している(3−2)。
・樹脂粘度*…nアミルアルコール添加による分子量のコントロール(図3.8)
・樹脂流動開始温度…NCO/OHインデックスおよび分子量のコントロール(図3.9)
今後、形状記憶ポリマーの薄肉晶成形には、次の手法を用い成形加工ひずみの少ない成 形を目指していく。
・成形法…射出圧縮成形法
・材料…射出圧縮成形用低粘度タイプの使用(粘度の目標:200〜300Pa.s/200℃)
*樹脂粘度を決定する要因は分子量だけではなく、
・ハードセグメントの割合及び形態 ・架橋度
・分子構造(側鎖の形態等)
など複雑な要因が絡み合っており、今後これらを検討し樹脂粘度のコントロール技術を 確立する必要があると考える。
参考文献
(3.1)寺尾、r射出圧縮成形法」三菱重工業社内資料H4年10月
(3.2)三上、「ウォーターケム殿製MM5520の評価」三菱重工業社内資料H4年11月