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形状記憶合金薄膜アクチュエータの簡単な作製技術

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配付) 文部科学記者会(資料配付) 科学記者会(資料配付) 1

量産可能な形状記憶合金薄膜

平成18年 8月23日 独立行政法人 物質・材料研究機構 概要 1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)、センサ材料センター(セ ンター長:羽田 肇)アクチュエータ機能グループの石田 章グループリーダは、 広い組成範囲に渡って安定した特性を示すTi-Ni-Cu系形状記憶合金薄膜を開発し た。 2.形状記憶合金薄膜は小電圧で既存のアクチュエータにない大変位量と力を発生 できることから、微小な機械を動かすマイクロアクチュエータとして注目されて いる。しかし、従来の Ti-Ni 形状記憶合金は非常に精密な組成制御が必要とされ、 また、スパッタリング法にて作製した薄膜にいたっては特性の組成依存性が大き いこと、再現性が悪いことなどといった欠点があり大量生産に向かなかった。そ こで、組成に依存せず一定した特性を有する形状記憶合金薄膜の開発が待ち望ま れていた。 3.今回、スパッタリング法にて Ti-Ni-Cu 三元系薄膜を作製し、500℃以上で熱処 理することにより、広い組成範囲で安定した特性を示す形状記憶合金薄膜を開発 することに成功した。開発した薄膜では、広い組成範囲に渡って室温以上で作動 する実用的なアクチュエータを作製することが可能であり、特性が組成に依存す ることなく安定しているのでデバイスへの応用も容易になると考えられる。 また、大面積の基板に安定した特性の形状記憶合金薄膜を作製できるようにな り、生産コストの大幅な削減が見込まれる。 4.形状記憶合金薄膜アクチュエータは、細胞や生体組織を掴むマニピュレータ、 神経や血管を挟むグリッパ、能動内視鏡やカテーテルの微小アクチュエータ、微 小血管用ステント、超小型ポンプやバルブなどへの応用が考えられている。また 様々な分析に用いられるマイクロ分析・合成システムなどの応用開発が進められ ているが、本成果はこのような分野にも適用可能であり、これらの医療機器や超 小型分析システムへの応用研究が加速することや、早期の実用化が期待される。

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2 研究の背景 スパッタリング法1)で作製した厚さ数ミクロンの形状記憶合金薄膜は、従来の圧電 素子に比べて発生力で 15 倍以上、変位量で 50 倍以上の性能を示すことから、数ミリ 程度の大きさの微小機械を動かすための強力なアクチュエータとして注目されている。 しかし、従来の Ti-Ni 合金では、変態開始温度が 50:50 組成の場合の 65℃から 1% 組成がずれるだけで 100℃低下し、すぐに室温以下になってしまう。形状記憶合金薄 膜アクチュエータは加熱によって作動させることから変態温度が室温以下では形状記 憶効果は現れず、そのため精密な組成制御が要求されていた。また、面内方向での組 成分布が避けられないスパッタ膜では作製した薄膜の一部分しか使用できず、工業的 に大量生産することは難しかった。 成果の内容 スパッタリング法によって作製したTi-Ni-Cu三元系非晶質2)薄膜を 500℃以上で結 晶化熱処理して微細組織を形成させることにより、Cuが 20~30%、Tiが 44~49%の広 い組成範囲において変態温度と発生力が組成によらず一定した特性を示す形状記憶合 金薄膜が得られることを見出した。 新しい合金では、5%の組成のずれに対しても変態温度は 10℃程度しか変化せず、 広い組成範囲に渡って 50~60℃の室温よりも高い変態開始温度が得られる。また変態 温度だけでなく、発生力なども安定しており、400MPa 程度の大きい力を示す。これら の特性は組成だけでなく熱処理条件によってもあまり変化しないことがわかった。今 回の発明によれば、広い組成範囲に渡って室温以上の温度で作動する実用的な強力ア クチュエータを作製することが可能であり、特性が組成に依存することなく安定して いるのでデバイスへの応用が容易になる。さらに大面積の基板に一定した特性の形状 記憶合金薄膜の作製が可能になり、生産コストの大幅な削減が見込まれる。 通常、三元系合金は、二元系合金より脆くなるために第三元素を大量に添加した合 金は実用されていない。しかし、スパッタリング法で作製した薄膜は通常の鋳造で作 った合金に比べて組織が微細化する結果、組成範囲によっては実用的な延性が得られ る。今回、これまで鋳造合金では調べられていなかった組成において、十分な延性と 従来にない安定した特性が得られることがわかった。 波及効果と今後の展開 形状記憶合金薄膜アクチュエータは、大変位強力アクチュエータとして期待されて おり、数~数十ミクロンの大きさの細胞あるいは生体組織を掴むマニピュレータや 0.1~1mmΦの神経や血管を挟むグリッパ、数mmΦの能動型内視鏡やカテーテルの微小 アクチュエータ、1mmΦの微小血管用ステント3)、0.1~数ミリの大きさの超小型ポン プ、あるいはポンプとバルブそして細管を一つのチップ上に集積化したマイクロ分析、 合成システム4)のための微小アクチュエータなどへの応用開発が進められている。新 しい材料の開発によってこれらの高度な医療機械や超小型分析システムへの応用研究 が加速されれば、早期の実用化が期待される。

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3 問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 国際・広報室 TEL:029-859-2026 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 センサ材料センター アクチュエータ機能グループ グループリーダ 石田 章 TEL:029-859-2417 E-mail:[email protected] 用語解説 1)スパッタリング法: 薄膜作製法の一つ。真空引きしたチャンバー内にアルゴンガスなどの気体分子 を導入し、高電圧によってイオン化させると同時に加速して材料に衝突させる。 材料から叩き出された原子は対向して置かれた Si などの基板上に堆積して薄膜 を形成する。 2)非晶質: 通常の金属では原子が規則正しく並んでおり、その並び方を結晶構造という。 形状記憶効果はこの結晶構造が変化することによって現れる。しかし、スパッタ リング法などで作製すると、原子が不規則に並んだ材料が得られる。この材料を 高温で熱処理すると原子が再配列して結晶構造をもった通常の金属が得られる。 3)ステント: 心筋梗塞などの患者の狭くなった血管に挿入して血管の再狭さくを防ぐ網状の 金属製の筒。 4)マイクロ分析、合成システム: 化学分析あるいは合成を1つの基板上で行うチップ。装置の小型化だけでなく 試薬の微量化、分析時間の短縮などが期待でき、汚染ガスや水の分析、血液の分 析、DNA 鑑定などのバイオ分析などに使われる。

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図 形状記憶合金薄膜で作った微小機械の例(京都大学田畑研究室との共同研究). これらのデバイスは、開発した Ti-Ni-Cu 合金薄膜ではなく Ti-Ni 合金薄膜が使 われている.

図  形状記憶合金薄膜で作った微小機械の例(京都大学田畑研究室との共同研究) . これらのデバイスは、開発した Ti-Ni-Cu 合金薄膜ではなく Ti-Ni 合金薄膜が使 われている.

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