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銅錯体を用いた生体関連カルコゲン分子活性化とそ の反応性

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Academic year: 2021

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名古屋工業大学学術機関リポジトリ Nagoya Institute of Technology Repository

銅錯体を用いた生体関連カルコゲン分子活性化とそ の反応性

著者 松本 純

学位名 博士(工学)

学位授与番号 13903甲第835号 学位授与年月日 2012‑03‑23

URL http://id.nii.ac.jp/1476/00002991/

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博士(工学)

博第835号 平成24年3月23日

学位規則第4条第1項該当 課程博士

銅錯体を用いた生体関連カルコゲン分子活性化とその反 応性

教 授 教 授 准教授

論文内容の要旨

 カルコゲン元素のうち、酸素および硫黄、セレンは生体必須元素であり、生体内での重要 な機能発現やエネルギー変換に関与している。金属タンパク質の活性中心においてもカルコ ゲン含有化合物の存在が確認されており、反応性等の機能発現に関係していると考えられて いる。また機能発現以外にも金属イオンが関与する無機カルコゲンの変換反応が確認されて いる。これらは物質循環やエネルギー変換反応と深く関わっているものの、これらの詳細な 立体的構造や反応機構などについては不明である。そこで本研究では銅含有カルコゲン化合 物に特化し、系統的に設計合成される(油,c蛭1,3,5一トリアミノシクロヘキサン誘導体を配位 子として用い、銅錯体と単体カルコゲン化合物の合成とその分光学的、構造化学的性質の解 明、外部基質との反応性について検討し、機能との関連において議論した。

 第1章では酸素および硫黄、セレンの生体内における機能や重要性に対して、特に銅イオ ンとの関係性と不明点を明らかにし、本研究の意義にっいて明確にした。

・第2章では・生体内の銅含有酵素における酸素分子との反応性や活性中間体と反応性との 関係を明らかにするために、立体構造規制の異なるトリアミノシクロヘキサン誘導体を用い た単核銅(1)錯体と酸素分子との反応を検討した。その結果、ぴ炭素が二級であるエチル基

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やイソブチル基を導入した配位子では酸素分子との反応で、ビスミューオキシニ核銅(III)錯.

体の生成が確認された。一方で、α・炭素が三級であるイソプロピル基を導入した配位子を用 いたところ、パーオキソニ核銅(II)錯体の生成が確認された。以上より、配位子の基本骨格 が同一の系において、パーオキソニ核銅(II)錯体とビスミューオキソニ核銅(皿)錯体の完全な 作り分けに成功した。またそれらの錯体を用いて、各種外部基質との反応性を検討したとこ ろ、異なる反応性が見いだされ、生体反応における推定中間体を提唱した。

 第3章では、特徴的で例の少ない銅一硫黄含有酵素の活性中心の構造モデル錯体合成のお よび、銅一硫黄錯体を用いた反応への応用について評価した。4種類のトリアミノシクロヘキ サン誘導体を用いた単核銅①錯体と単体硫黄を反応させることでジスルフィドニ核銅(II)錯 体の合成に成功した。更にそれらの錯体を用いて外部基質との反応性を検討した結果、外部 基質への硫黄添加反応に成功し、さらにその反応収率が立体障害の大小に依存しない結果と なった。この結果と電気化学的測定の結果や密度汎関数理論計算の結果から総合的に考察し た。以上から、2つのCuS2のなす二面角が屈曲することで銅コ硫黄結合が共有結合性からイ ォン結合性へと偏り、電荷がそれぞれに分極することで求電子的な反応性が向上することを 見いだした。

 第4章では生体系におけるセレン化銅の代謝メカニズム解明を目指して、錯体化学的アプ ローチにより、その反応中間体モデルおよび推定メカニズムを提唱した。配位子ぽトリアミ ノシクロヘキサン誘導体を用いた。硫黄とセレンは類似性が高いことから、前章と同様の合 成方法を用いて銅一セレン錯体の合成を検討した。・その結果、ベンジル基を有する配位子も 用い、ジメチルアセトアミド溶液で反応を行った場合のみジセレニドニ核銅(II)錯体が生成 することを見いだした。ジセレニドニ核銅任1)種はこれまでに例がないことから、その分光 学的、構造学的特徴を詳細に明らかにした。またその錯体と外部基質との反応性を検討した

ところ、外部基質によって銅(IDイオンとジセレニドイオンは容易に銅(Dイオンと単体セレ ンへの変換反応が生じることが明らかとなった。還元された銅イオンは酸素分子によって容 易に酸化され、ビスミューヒドロキソニ核銅(ID錯体を生成し、酸性条件下で銅(ID錯体およ び水に変換される。これらの反応は生態系におけるセレン循環反応の]つである、セレン化 銅および酸素分子、プロトンから銅σ1)イオンおよび単体セレン、水への変換反応に類似して いる。以上より、今回見いだした反応は生態系におけるモデル反応として支持される。

 以上、本研究では銅錯体を用いて、銅含有酵素による酸素分子の活性化機構の解明、銅硫 黄含有酵素の活性中心の構造的特性の解明と反応への展開、天然におけるセレン化銅代謝メ カニズムの解明について研究を行った。これらの結果は、生物無機化学における銅含有酵素 とカルコゲンの関係やその機能解明に重要な情報を提供するだけでなく、新規人工触媒の設 計において工学的に有用な指針を与えるものとして期待できる。

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論文審査結果の要旨

論文題目:銅錯体を用いた生体関連功ルコゲン分子活性化とその反応性 学位申請者:未来材料創成工学専攻松本純

主査:増田秀樹 副査:田中俊樹

、副査:小澤智宏 副査:舩橋靖博

カルコゲン元素のうち、酸素および硫黄、セレンは生体必須元素であり、生体内での重要な機能発現やエネ ルギー変換に関与している。金属タンパク質の活性中心においてもカルコゲン含有化合物の存在が確認され ており、反応性等の機能発現に関係していると考えられている。また機能発現以外にも金属イオンが関与する 無機カルコゲンの変換反応が確認されている・之れらは物質循環やエネルギー変換反応と深く関わっているも のの・これらの詳細な立体的構造や反応機構などについては不明である。そこで本研究では銅含有カルコゲ ン化合物に特化し、系統的に設計合成される傷c活1,3,5トリアミノシクロヘキサン誘導体を配位子として用い、

銅錯体と単体カルコゲン化合物の合成とその分光学的、構造化学的性質の解明、外部基質との反応性にっい て検討し、機能との関連において議論した。本論文では以下の5章から構成されている。

第1章では酸素および硫黄、セレンの生体内における機能や重要性に対して、特に銅イオンとの関係性と不 明点を明らかにし、本研究の意義について明確にしている。

・第2章では・生体内の銅含有酵素における酸素分子との反応性や活性中間体と反応性との関係を明らかに するために・立体構造規制の異なるトリアミノシクロヘキサン誘導体を用いた単核銅①錯体と酸素分子との反 応を検討している。その結果、配位子の基本骨格が同一の系において、パーオキソニ核銅(H)錯体とビスミュ ーオキソニ核銅(〕皿)錯体の完全な作り分けに成功し、それらの錯体を用いて、各種外部基質との反応性を検 討した結果、活性中間体はパーオキソニ核銅⑪錯体であると提案している。

 第3章では、特徴的で例の少ない銅一硫黄含有酵素の活性中心の構造モデル錯体の合成および~.銅一硫 黄錯体を用いた反応への応用について評価した。4種類のジスルフィドニ核銅(H)錯体の合成し、外部基 質との反応性を検討した結果、’反応性と構造との興味深い関係性を見いだした。この関係性にっいて、

電気化学的測定の結果や密度汎関数理論計算の結果から総合的に考察し下結果、2つのCuS2のなす二 面角が屈曲することで鍋硫黄結合が共有結合性からイオン結合性へと偏り、電荷がそれぞれに分極す ることで求電子的な反応性が向上することを明らかにした。

 第4章では生体系におけるセレン化銅の代謝メカニズム解明を目指して、錯体化学的アプローチによ り、その反応中間体モデルおよび推定メカニズムを提唱した。これまでに例のないジセレニドニ核銅(m 錯体を合成し、その分光学的、構造学的特徴を詳細に明らかにした。またその錯体と外部基質との反応 性を検討したところ、外部基質によって銅ωイオンとジセレニドイオンは容易に銅①イオンと単体セレ ンへの変換し、還元された銅イオンは酸素分子によって容易に酸化され、銅但)種とヒドロキソイオンを 生成することができる。これらの反応は生体系におけるセレン循環反応の1つである、セレン化銅およ び酸素分子、プロトンから銅α1)イオンおよび単体セレン、水への変換反応に類似している。以上より、

今回見いだした反応は生体系のモデル反応として支持される。

 以上、’本研究では銅錯体を用いて、銅含有酵素による酸素分子の活性化機構の解明、鋼硫黄含有酵 素の活性中心の構造的特性と反応の解明、天然におけるセレン化銅代謝メカニズムの解明研究を遂行し た。これらの結果は、生物無機化学における銅含有酵素とカルコゲンの関係やその機能解明に重要な情 報を提供するだけでなく、新規人工触媒の設計において工学的に有用な指針を与えるものと期待される。

本論文は3編の論文に纏められており、博士(工学)に十分値するものと判定した。

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