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石油精製プラント等の耐震性診断及び耐震性向上対策調査

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Academic year: 2021

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目 次

1. 総則... 1 1.1. 適用... 1 1.2. 定義... 2 2. 耐震診断指針... 5 2.1. 適用範囲 ... 5 2.2. 耐震診断の実施 ... 5 2.3. 配管系の耐震診断... 5 2.4. 要求耐震性能 ... 8 2.5. 耐震診断用地震動及び地盤変状 ... 8 2.5.1. 耐震診断用地震動... 8 2.5.2. 耐震診断用地盤変状... 9 3. 配管系の耐震診断方法 ... 12 3.1. 耐震診断手順 ... 12 3.2. 耐震診断計画書 ... 15 3.3. 一次耐震診断 ... 17 3.3.1. 一次耐震診断計画... 17 3.3.2. 一次耐震診断実施... 18 3.3.3. 一次耐震診断報告書作成... 20 3.4. 配管系の二次耐震診断... 21 3.4.1. 二次耐震診断の実施... 21 3.4.2. 二次耐震診断報告書... 21 3.5. 配管系の耐震診断報告書... 21 4. 配管系の耐震診断と損傷モード ... 22 4.1. 配管系の損傷 ... 22 4.2. 地震の影響要因 ... 23 4.2.1. 配管の地震応答加速度... 26 4.2.2. 配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位... 26 4.2.3. 地盤変状に起因する相対変位... 27 4.2.4. 配管支持構造物(サポート、配管支持構造体等)の機能喪失... 29 4.2.5. 配管系及び周辺構造物の相互干渉... 31 4.2.6. 経年変化... 33 4.2.7. 構造材料・形態... 33

(3)

4.2.8. 施工状況... 34 5. 応答加速度および相対変位 ... 35 5.1. 配管支持構造物の慣性力に起因する配管系の加速度応答(弾性)計算 ... 35 5.2. 配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位(弾性計算) ... 39 5.3. 耐震重要度ⅠA,Ⅰの配管系に係る地震時変位... 42 5.4. 基礎の地盤変状に起因する配管サポートの相対変位 ... 45 6. 耐震重要度ⅠA,Ⅰ配管系の一次耐震診断定量評価 ... 50 6.1. スパン長に関する一次耐震診断 ... 51 6.2. 変位吸収能力に対する一次耐震診断... 54 6.2.1. 地震応答変位に対する配管スパンの一次耐震診断... 55 6.2.2. 地盤変状変位に係る配管スパンの一次耐震診断... 57 6.3. フランジ継手の一次耐震診断... 62 6.3.1. 地震応答変位に起因する相対変位に対するフランジ継手の一次耐震診断... 63 6.3.2. 地盤変状に起因する相対変位に対するフランジ継手の一次耐震診断... 65 6.4. 弁の一次耐震診断... 68 6.5. 伸縮継手の一次耐震診断... 69 6.5.1. 地震応答変位に起因する相対変位に対する伸縮継手の一次耐震診断... 69 6.5.2. 地盤変状に起因する相対変位に対する伸縮継手の一次耐震診断... 70 6.6. 塔槽類又は回転機に係るノズル部 ... 70 6.6.1. 地震応答変位に起因する相対変位に対するノズル部の一次耐震診断... 71 6.6.2. 地盤変状に起因する相対変位に対するノズル部の一次耐震診断... 72 6.7. 配管系サポート ... 73 6.7.1. サポートの支持力... 73 6.7.2. レストレイントの非支持方向変位による機能喪失... 77 6.8. 架構等... 77 7. 耐震重要度Ⅱ,Ⅲ配管系の一次耐震診断定量評価... 78 7.1. スパン長に関する一次耐震診断 ... 79 7.2. 変位吸収能力に対する一次耐震診断... 82 7.2.1. 地震応答変位に対する配管スパンの一次耐震診断... 83 7.2.2. 地盤変状変位に係る配管スパンの一次耐震診断... 84 7.3. フランジ継手の一次耐震診断... 85 7.4. 弁の一次耐震診断... 85 7.5. 伸縮継手の一次耐震診断... 85 7.5.1. 地震応答変位に起因する相対変位に対する伸縮継手の一次耐震診断... 85

(4)

7.5.2. 地盤変状に起因する相対変位に対する伸縮継手の一次耐震診断... 86 7.6. 塔槽類又は回転機に係るノズル部 ... 86 7.7. 配管系サポート ... 86 7.8. 架構等... 87 8. 配管系の二次耐震診断定量評価 ... 88 8.1. レベル1地震動における地震応答に係る二次耐震診断... 89 8.2. レベル2地震動における地震応答に係る二次耐震診断... 89 8.2.1. 配管... 89 8.2.2. フランジ継手... 89 8.2.3. 伸縮継手... 90 8.2.4. 塔槽類又は回転機に係るノズル... 90 8.2.5. 配管支持構造物(架構等)... 90 8.2.6. サポート... 91 8.2.7. 柱脚及び基礎ボルト... 92 8.3. レベル 2 地震動における地盤変状に係る二次耐震診断... 93 8.3.1. 配管... 93 8.3.2. フランジ継手... 93 8.3.3. 伸縮継手... 93 8.3.4. 塔槽類及び回転機に係るノズル... 93 8.3.5. サポート... 93 8.3.6. 柱脚及び基礎ボルト... 94

(5)

図 3-1 配管系の耐震診断手順 ...12 図 3-2 重要度Ⅰa、Ⅰの既存配管系の定量評価手順 ...13 図 3-3 重要度Ⅱ、Ⅲの既存配管系の定量評価手順 ...14 図 4-1 配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位...26 図 4-2 液状化・流動による配管の変位モード ...28 図 5-1 指針応答倍率...36 図 5-2 補正係数と減衰定数の関係 ...36 図 5-3 配管支持構造物の地震時変位の計算方法...40 図 5-4 塑性率法と代替法(保有耐力法)の関係...43 図 5-5 KMHに対する応答最大変位量(弾性計算変位量に対する倍率)...44 図 5-6 配管支持構造物 ...45 図 5-7 基礎の地盤変状変位の計算 ...46 図 5-8 FL値、相対密度Dr(%)と体積ひずみεvの関係...48 図 6-1 変位吸収能力に対する一次耐震診断...54 図 6-2 地盤変状に係る変位吸収能力の評価手順...58 図 6-3 直管に係る配管投影長 ...59 図 6-4 曲がり管に係る配管投影長 ...60 図 6-5 解放サポートの取扱い ...76

(6)

表 3-1 高圧ガス設備等配管系耐震診断の資料例...16 表 3-2 耐震重要度Ⅰa、Ⅰの耐震性レベル ...19 表 3-3 耐震重要度Ⅱ、Ⅲの耐震性レベル ...19 表 3-4 経年変化に関する診断の目安...19 表 4-1 地震動の影響要因に係る評価(耐震重要度Ⅰa、Ⅰ)...24 表 4-2 地震動の影響要因に係る評価(耐震重要度Ⅱ、Ⅲ)...25 表 5-1 鉛直方向の応答倍率β6の値...36 表 5-2 塔類、球形貯槽、横置円筒形貯槽及び架構の減衰定数 ...37 表 5-3 平底円筒形貯槽の減衰定数 ...37 表 5-4 配管支持構造物の地震動に係る応答変位...41 表 5-5 球形貯槽に係る係数...41 表 5-6 配管支持構造物基礎の変位 ...45 表 5-7 μh の値...49 表 5-8 液状化後の剛性低下率 ...49 表 6-1 一次耐震診断指針(耐震重要度Ⅰa,Ⅰ)...50 表 6-2 許容スパン長...51 表 6-3 集中重量係数...52 表 6-4 配管の許容スパン長...53 表 6-5 Cδの値...56 表 6-6 投影長スパンの取り方 ...61 表 6-7 サポート支持荷重 RA...74 表 8-1 耐震重要度Ⅰa・Ⅰの配管系の二次耐震診断定量評価...88 表 8-2 耐震重要度Ⅱ・Ⅲの配管系の二次耐震診断定量評価...89 表 8-8-3 慣性力及び応答変位に対する線形モデルによる簡易耐震性能評価 ...89 表 8-8-4 塔槽類ノズルの耐震設計用許容応力強さ...90

(7)

1.

総則

1.1. 適用

本指針は、既存高圧ガス配管に関して、既存高圧ガス配管に適した耐震性の確認を事業者が自 主的に行なう方法を示すものである。 新設の高圧ガス配管は、高圧ガス設備等耐震設計指針((以下「耐震告示」という。)(昭和56 年 10 月26 日通商産業省告示第 515 号及び平成 9 年 3 月 25 日同第 143 号))により、兵庫県南部地震にお ける影響を考慮して、耐震性の確認をすることが義務付けされた。 しかしながら、既存高圧ガス配管(平成9 年 4 月 1 日に現に設置され、又は設置若しくは変更のた めの工事に着手している配管又は軽微な変更工事に係る配管)は、従前の例によるとされており、耐 震告示による既存配管の耐震性の確認は義務付けられていない。そのため、既存設備の地震防災を効 果的に実施するには、配管系の耐震性を把握することが重要な課題であるといえる。 本指針は、対象が既存設備であることを考慮して、配管系が現在どの程度の耐震性を持っているか を簡易的に短時間に診断する方法を示すものである。

(8)

1.2. 定義

(1) 耐震診断 : 既存配管系の耐震性の程度を判断すること (2) 耐震診断用地震動 : 耐震診断に際して考慮する地震動 (3) 耐震診断用地盤変状 : 耐震診断用地震動に対する地盤変状 (4) 耐震性能 : 地震の影響に関する配管系の性能 (5) 要求耐震性能 : 配管系に求められる耐震性能 (6) 保有耐震性能 : 配管系が現に保有する耐震性能 (7) 地震影響比 : 要求耐震性能に対する保有耐震性能の比 (8) 耐震性レベル : 地震影響比に応じて区分した耐震性能 (9) 耐震重要度 : 耐震告示第 3 条に準じて定めた重要度 (10) 耐震告示 : 昭和 56 年通商産業省告示第 515 号、最終改正平成 9 年告示第143 号による「高圧ガス設備等耐震設計設備」 (11) 配管支持構造体 : 配管を支持或いは配管が接続される構造体で、耐震設 計設備及び耐震設計設備と類似の構造体をいう。配管 は配管支持構造体とその基礎を通じて地盤に固定さ れる。 (12) サポート : 配管と配管支持構造体との連結構造をいう。 (13) 配管支持点 : サポートと配管との結合部で、通常、配管断面の中心 に位置させる。 (14) 配管支持構造物 : 配管支持構造体及びサポートをいう。 (15) 配管系 : 配管及び配管支持構造物をいう。 (16) 周辺構造物 : 配管系の地震時挙動・耐震性に関連する当該配管系を 除く全ての構造物又はその部品をいう。なお、隣接す る配管系、防液堤、盛土等も含むものとする。 (17) 既存配管 : 現に設置されている配管をいう。 (18) 既存配管系 : 既存配管及びその配管支持構造物をいう。 (19) 地震防災遮断設備 : 地震に際して配管を地震防災遮断弁により遮断させ る装置で、地震を検知して地震防災遮断弁を確実に閉 止し、その状態を保持する目的で設けられる設備をい う。耐震告示第1 条で規定する地震防災設備の一つ (20) 一次耐震診断 : 既存配管系の耐震診断を行なうため、当該配管系の設 置現場において耐震性の状況を点検・調査すること。 (21) 二次耐震診断 : 1 次診断で耐震性が不明な配管系に関して、適切に耐 震性能を確認すること。 (22) 配管スパン : 地震動の方向又は変位方向に対して有効な支持機能 を有する隣り合うサポート間の配管

(9)

(23) わたり配管 : 配管スパンの両端が異なる配管支持構造物又は基礎 に係る配管支持点とする範囲の配管をいう。配管支持 点が地震方向ごとに支持点が異なる位置にある場合 は、当該方向ごとに定まる配管スパンを全て含む範囲 の配管をいう。 大口径配管(母管)に接続する小口径配管(分岐管) では、母管は小口径管の支持構造物として影響を及ぼ すのでわたり配管とみなし、支持構造物間を渡る配管 と同様の扱いをする。 (24) 変位吸収能力 : 配管スパンに関して、当該サポート両端の許容相対変 位 (25) 損傷モード : 当該配管系及び周辺構造物に関して、耐震性能を損な うに至るまでの状態又は変位・力・加速度・変形・応 力・亀裂等の分布 (26) 地震応答 : 地震動による配管系、配管支持構造物、その他周辺構 造物に生じる応答変位、応答速度及び応答加速度 (27) 地盤変状 : 配管系の地盤の液状化に対する耐震診断を行なうた めに想定する地盤の移動 (4) 耐震性能:一般的には応力、塑性率、配管スパン長、変位等で表現する。 (5) 要求耐震性能:配管系に求められる基準となる耐震性能で、通常、許容応力、許容塑性率、許容 スパン長、変位吸収能力等で表現する。 (6) 保有耐震性能:耐震設計構造物が現に持つ耐震性能 (19) わたり配管:異なる構造物の間を渡る配管に「支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する 相対変位」又は「地盤変状に起因する相対変位」が配管に損傷を与えることがある。これらの損 傷モードに対して耐震診断を行う目的でわたり配管の定義を行った。 塔と架構のような異なる構造物間を渡る配管で、それぞれの構造物が地震時に揺れることによ り配管に相対変位が負荷されて配管の損傷にいたる。この損傷モードを「支持構造物の地震動に 係る応答変位に起因する相対変位による損傷モード」と称する。 地盤変状により地盤の沈下や、水平方向移動が生じることがある。異なる基礎上の配管支持構 造物の間を渡る配管があるとき、それぞれの基礎の間に地盤変状に係る相対変位が生じるために、 配管にこの相対変位に起因する損傷が見られることがある。兵庫県南部地震で配管支持構造物 (緊急遮断弁を支持するために設けられた架構)の基礎と平底円筒形貯槽の基礎が異なるために 両構造物の間を渡る配管で LPG が漏えいした被害はこの例である。この損傷モードを「地盤変 状に係る相対変位による損傷モード」と称する。

(10)

大口径配管(母管)に接続する小口径分岐管(母管外径の 1/2 以下の外径の分岐管)では、母 管は小口径分岐管に比して強いため、分岐管の動きに影響を受けることが少ないが、分岐管は母 管の動きに強く影響を受ける。このことより、小口径分岐管は、母管を支持構造物と見なして、 母管の動きを強制変位とし簡易的に母管とは独立させ取り扱うことができる。通常、分岐管に関 して「わたり配管」とは言わないが、小口径分岐管は、母管を支持構造物とし、わたり配管と同 等の取扱いをすることにする。すなわち、分岐部を支持点とし次のサポートとの間を「わたり配 管」と見なす。なお、ドレン・ベントなどの自由端配管や、母管自体からU バンドなどでサポー トされているケースは除く。

(11)

2.

耐震診断指針

2.1. 適用範囲

本指針の適用範囲は、既存配管のうち耐震告示第1 条の2(配管の適用範囲)に準じる。 本指針を適用する既存配管系は、新設配管系を対象とする耐震告示第 1 条の2(配管の適用範囲)の規定に同一と する。したがって、埋設管は対象外とする。 しかしながら、地震被害は高圧ガス保安法適用対象範囲外設備や耐震告示対象外設備などから波及することがあるの で、診断対象設備・配管系範囲を定めるにあたり周辺設備の影響を考慮することが望ましい。

2.2. 耐震診断の実施

配管系の耐震診断は、診断範囲、診断体制、診断工程等を明確にして確実に実施すること。 対象とする配管系の耐震診断を効率的に実施するために次のような点を考慮することが望ましい。 (1) 診断要員の確保 過去の地震被害に関する知見、工学的基本原則および工学的判断に基づき、地震時損傷モードに熟達した技 術者(以下「耐震技術者」という。)及び設備の状況に精通した技術者(以下「設備技術者」という。)が耐震診断を行 なう。 また、これらの技術者を教育、養成することが望ましい。 (2) 耐震診断は現地点検を優先的に実施することが望ましい。 (3) 損傷が発生すれば大被害に発展する恐れのある系統や操業上重要な配管系等から判断して、優先順位をつけ て重点的に耐震診断することが望ましい。この場合、必要に応じて適切に時期を分けて実施してもよい。 (4) 高所配管、配管スペース内配管、保温配管など接近の困難な配管系は保安検査、定期検査など適切な時期と 同期させるなどして、時期を分けて実施してもよい。 (5) 診断対象配管系範囲と診断順序の明確化 地震被害は局所的な付属品などの損傷から広範囲に拡大していくケースもあるので、必要に応じて、診断範 囲は局所的な関連配管部品も含めることが望ましい。

2.3. 配管系の耐震診断

配管系は、耐震重要度Ⅰa、Ⅰ、Ⅱ及びⅢに分類して、下記によりの耐震診断を行う。 (1) 重要度Ⅰa、Ⅰの配管系は 2.5.1(2)に規定する耐震診断用地震動及び 2.5.2 に規定する耐震診断 用地盤変状に際して2.4(2)に規定する要求耐震性能に関して耐震診断を行う。 (2) 重要度Ⅱ及びⅢの配管系は、2.5.1(1)に規定する耐震診断用地震動に際して 2.4(1)に規定する要 求耐震性能に関して耐震診断を行う。 既存配管系に係る耐震重要度は、耐震告示に準じて次のように定める。

(12)

① 耐震重要度は、高圧ガスの種類に応じ、設備ごとに次の表(a)、表(b)及び表(c)に掲げるとおりとする。 ② 可燃性ガス以外の高圧ガスであつて、毒性ガス以外のものに係る耐震設計構造物の重要度は、常にⅢとする。 ③ コンビナート等保安規則第2条第22 号に規定する特定製造事業所内の耐震設計構造物(可燃性ガス又は毒 性ガスに係るものに限る。)のうち、塔槽類の貯蔵能力又は配管の運転状態における内容物の質量が、可燃 性ガス及び第3種毒性ガスにあつては100 トン以上、第1種毒性ガス及び第2種毒性ガスにあつては 30 ト ン以上のものについては、次の表(a)、表(b)及び表(c)により求めた重要度の一つ上位のものに変更す る。この場合において、変更前の重要度がⅠのものにあつては、その重要度をⅠa とする。 ④ 配管系のうち塔槽類に接続される配管の重要度は、当該塔槽類の重要度又は備考1から3までの規定により 求めた当該配管の重要度のいずれか上位のものとする。 表(a) 第1種毒性ガスに係る耐震設計構造物の重要度分類 W X 5 未満 5 以上 20 未満 20 以上 100 未満 100 以上 500 未満 500 以上 100 未満 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 100 以上 200 未満 Ⅱ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 200 以上 500 未満 500 以上 1,000 未満 1,000 以上 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 表(b) 第2種毒性ガスに係る耐震設計構造物の重要度分類 W X 5 未満 5 以上 20 未満 20 以上 100 未満 100 以上 500 未満 500 以上 50 未満 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ 50 以上 200 未満 200 以上 500 未満 500 以上 1,000 未満 1,000 以上 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 表(c) 第3種毒性ガス及び可燃性ガスに係る耐震設計構造物の重要度分類 W X 10 未満 10 以上 100 未満 100 以上 1,000 未満 1,000 以上 10,000 未満 10,000 以上 20 未満 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ

(13)

20 以上 40 未満 40 以上 90 未満 90 以上 200 未満 200 以上 400 未満 Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅱ Ⅰ 400 以上 900 未満 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅱ 900 以上 2,000 未満 2,000 以上 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ 備考 表(a)、表(b)及び表(c)においてW及びXは、それぞれ次の値を表すものとする。 W 塔槽類にあつては貯蔵能力、配管にあつては運転状態における内容物の質量 (単位 トン) X 塔槽類又は配管の外面から当該耐震設計構造物が設置される事業所の境界線(当該境界線に連接する海、 河川、湖沼又はこれらと同等の効用を有する施設若しくは土地がある場合は、その外縁)までの距離 のうち最短のもの(単位 メートル) また、毒性ガス、第2 種毒性ガス、第 1 種毒性ガス、第 2 種毒性ガス、第 3 種毒性ガス及び可燃性ガスは次 のものをいう。 毒性ガスとは、冷凍保安規則第2条第2号、一般高圧ガス保安規則第2条第2号及びコンビナート等保安規 則第2条第2号に規定する毒性ガスをいう。 第1種毒性ガスとは、塩素、シアン化水素、二酸化窒素、ふつ素及びホスゲンをいう。 第2種毒性ガスとは、塩化水素、三ふつ化ほう素、二酸化硫黄、ふつ化水素、ブロムメチル及び硫化水素 第3種毒性ガスとは、毒性ガスであつて、前2号に掲げる毒性ガス以外のもの 可燃性ガスとは、冷凍保安規則第2条第1号、一般高圧ガス保安規則第2条第1号及びコンビナート等保安 規則第2条第1号に規定する可燃性ガス(毒性ガスを除く。)並びに液化石油ガス保安規則 第1条及び液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42 年法律第 149 号)第2条第1項に規定する液化石油ガス 耐震告示では、耐震重要度Ⅰa、Ⅰの設備は社会的な影響を考慮して、レベル 1 地震動及びレベル 2 地震動に関して、 それぞれ、運転を継続できること及び災害が発生しないような耐力をもつよう要求している。すなわち、レベル 1 地 震動に際しては、有害な塑性変形等が残留せず、高圧ガスの漏えいがないこととし、レベル 2 地震動に際しては、塑 性変形等はあっても高圧ガスの漏えいがないこととしている。これに対して、本配管系耐震診断指針では、既存の配管 系であることを考慮して、レベル1 地震動に対する要求を外し、レベル 2 地震動に対してのみ耐震安全性を要求する こととした。 耐震重要度Ⅱ、Ⅲの配管系に対しては、耐震告示と同様に、レベル 1 地震動に対してのみ耐震性を診断することと

(14)

した。

2.4. 要求耐震性能

配管系の耐震診断は、次によるものとする。 (1) 配管系の耐震診断用レベル1 耐震性能とは、配管系の地震応答において地震時および地震後に当 該配管系に有害な変形等が残留せず、かつ、配管内の高圧ガスの気密性が保持される状態をいう。 (2) 配管系の耐震診断用レベル2 耐震性能とは、配管系の地震応答及び地盤変状において地震時およ び地震後に配管内の高圧ガスの気密性が保持される状態をいう。 これらの要求耐震性能は、既存設備・配管系とし、設備の経年変化や周辺環境下での耐震性能であり、現地での点検 において十分考慮されなければならない。

2.5. 耐震診断用地震動及び地盤変状

2.5.1. 耐震診断用地震動

耐震診断用地震動の強さは、次によるものとする。 (1) 耐震診断用レベル1地震動とは、配管系の供用期間中に発生する確率の高い地震動とする。すな わち、耐震告示に規定するレベル1地震動とする。 (2) 耐震診断用レベル2地震動とは、配管系の供用期間中に発生する確率は低いが、高レベルの地震 動とする。すなわち、耐震告示に規定するレベル2 地震動とする。 耐震診断用地震動は、耐震告示における耐震設計用地震動と同様に、耐震重要度ごとに次のように定めるものとする。 耐震診断用レベル1 地震動及び(2)における耐震診断用レベル 1 地震動の地表面の震度は、次により算出できる。 KH=0.150 μkβ1β2β3 (式 2-1) KV=0.075 μkβ1β2β3 (式 2-2) これらの算式において、KH、KV、μk、β1、β2及びβ3は、それぞれ次の値を表すものとする。ただし、β1 とβ2との積が0.33 未満となる場合は、これを 0.33 とする。 KH 地表面における耐震診断用地震動の水平震度 KV 地表面における耐震診断用地震動の鉛直震度 μk 地震動のレベルに基づく係数で、レベル1地震動にあっては1.0、レベル2地震動にあっては 2.0 以上 の値とする。 β1 耐震設計構造物の重要度に基づく係数で、次の表の左欄に掲げる重要度に応じ、同表の右欄に掲げる 値 重要度 β1 Ⅰa 1.00 Ⅰ 0.80 Ⅱ 0.65 Ⅲ 0.50

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β2 地域に基づく係数であつて、次の表の左欄に掲げる地域区分に応じ、同表の右欄に掲げる値 β2 地域区分 レベル1 地震動 レベル2地震動 特A 1.00 1.00 A 0.80 0.80 B 0.60 0.7 C 0.40 0.7 β 表層地盤増幅係数であつて、次の表の左欄に掲げる地盤種別に応じ、同表の右欄に掲げる値。ただし、 耐震設計構造物の設置位置における地震観測又は常時微動観測等により表層地盤の振動特性を推定でき る場合は、当該観測等に基づく数値によることができる。 地 盤 種 別 β 第1種地盤(第三紀以前の地盤) 1.4 第2種地盤(洪積層地盤) 2.0 第3種地盤(第1種、第2種及び第4種地盤以外の地盤) 2.0 第4種地盤(埋土又は沖積層の厚さが25 メートル以上の地盤) 2.0

2.5.2. 耐震診断用地盤変状

耐震診断用地盤変状は、配管系の耐震診断用レベル2地震動に際して当該配管系に係る地盤に 生起する地盤変状とする。 重要度Ⅰa、Ⅰの配管系は耐震診断用地盤変状を考慮するものとする。ただし、重要度Ⅱ、Ⅲの配管系であっても必 要に応じて定性的耐震診断を行うことが望ましい。 地盤のデータの入手が困難な場合は、資料編「既存設備の地盤データの取得法」を参考にすること。 (1)「地盤の液状化」の判定 地盤の液状化の判定は、経済産業省 平成9 年 6 月 12 日通達 平成 06・04・21 立局第 6 号 第 16 条関係第 4 項によ る。 「地震時に液状化するおそれのある地盤」とは、次のすべてに該当する砂質土又は礫質土の地盤(粘土含有率が 20% を超える地盤を除く。)をいう。 ① 地下水位が現地盤面から10m以内にあり、かつ現地盤面から 20m以内の深さに存在する 飽和土層 ② 細粒分含有率Fcが35%以下の土層、又はFcが35%を超えても塑性指数Ipが15 以下の 土層 ③ 平均粒径D50が10mm 以下で、かつ 10%粒径D10が1mm 以下である土層 ④ 次式で示すFL値が 1.0 以下である土層

F

R

L

L

=

この算式において、R及びLは、次の値を表すものとする。

(16)

R 地盤の動的せん断強度比であって、次の算式により得られる値とする。 R = C ただし、この算式において、Cw及びRは次の値を表すものとする。 Cw 地震動特性による補正係数であって、レベル1地震動において 1.0 とする。 R 地盤の繰返し三軸強度比であって、次の算式により得られる値 ① Naが 14 未満の場合 7 . 1 0882 . 0 a L N R = ② Naが 14 以上の場合

(

)

R

L

=

0 0882

N

a

+

×

N

a

17

16 10

14

6 4 5

.

.

.

. この算式において、Na は粒度の影響を考慮した補正N値を表すもので、次の算式に より得られる値とする。 イ 砂質土の場合 Na = C1・N1+C2 この算式において、C1、N1及びC2はそれぞれ次の値を表すものとする。 C1 細粒分含有率によるN値の補正係数であって、Fc(細粒分含有率(単 位 %))の値によってそれぞれ次の値を表すものとする。 a) Fcが0%以上 10%未満の場合 1 b) Fcが 10%以上 60%未満の場合 (F+40)/50 c) Fcが 60%以上の場合 (F/20)-1 N1 有効上載圧 98 kN/㎡相当に換算したN値であって、次の算式により 得られる値とする。 70 170 1 + ′ = V N N σ この算式において、N及びσ'Vは、それぞれ次の値を表すものとする。 N 標準貫入試験から得られる地盤のN値 σ'V 設計深度における有効上載圧(単位 kN/㎡) C2 細粒分含有率によるN値の補正係数であって、Fc(細粒分含有率(単 位 %))の値によってそれぞれ次の値を表すものとする。 a) Fcが0%以上 10%未満の場合 0 b) Fcが 10%以上の場合 (Fc-10)/18 ロ 礫質土の場合 Na = {1-0.36log10(D50/2)}N1 この算式において、D50及びN1は、それぞれ次の値を表すものとする。 D50 地盤の平均粒度

(17)

N1 イに規定する値 L 地盤の地震時におけるせん断応力比であって、次の算式により得られる値とする。

L

r K

d H V V

=

σ

σ

この算式において、r、K、σ及びσ'は、それぞれ次の値を表すものとする。 r 地震時のせん断応力比の深さ方向の低減係数であって、次の算式で得られる値と する。 r= 1.0-0.015χ この算式において、χは地表面からの深さ(単位 m)を表すものとする。 K 第三条第一項第一号で規定する地表面における水平震度 σ 設計深度における全上載圧(単位 kN/㎡) σ' 設計深度における有効上載圧(単位 kN/㎡) (2)「流動のおそれがある地盤」の判定 「流動のおそれがある地盤」の判定は、次による。 ① ① 護岸水深が5m以上で、かつ ② 護岸高さの範囲における護岸背後地盤が、護岸高さの1/2以上の層厚で水平方向に連続して液状化する場 合 ③ 国又は自治体が規定する耐震護岸であって、レベル 2 地震相当に対しての変形照査により機能維持が図られ ている場合は、①及び②に係らず流動のおそれがある地盤から除くことができる。 ただし、「護岸水深」は、捨石マウンドや護岸前面の押え捨石がある場合はその位置での水深としてよい。また、地盤 流動に係わる護岸背後地盤の液状化範囲は、「護岸水深」以浅を対象と考えてよい。 (3)地盤の沈下量及び水平移動量 地盤の液状化及び流動するおそれのある地盤では、地盤変状による地盤の移動量の算定を行なう。地盤の沈下量及び 水平移動量は、高圧ガス保安協会「高圧ガス設備等耐震設計指針 レベル 2 耐震性能評価 解説編 [10.2.2.1]節」,KHK E 012-3-2006 が参考になる。 (4)その他 盛土及び傾斜地盤の被害が当該配管系に影響を及ぼす可能性がある場合は、すべり解析等を行ないすべりに対する 安定性を確認する。

(18)

3.

配管系の耐震診断方法

3.1. 耐震診断手順

配管系の耐震診断は、図 3-1 に示す次の手順で行なうことを原則とする。 (1) 対象配管系の選定 (2) 耐震診断計画書(耐震診断用データ収集等を含む.)の作成 (3) 一次耐震診断計画書の作成 (4) 一次耐震診断の実施 (5) 一次耐震診断報告書 (6) 二次耐震診断(詳細耐震性能評価)の実施 (7) 二次耐震診断報告書 (8) 耐震診断報告書の作成 図 3-1 配管系の耐震診断手順

(19)

配管系耐震診断における定量評価に関しては、配管重要度に応じて次の(1)、(2)のように分け て行うことにする。 (1)重要度Ⅰa、Ⅰの配管系 既存配管系の耐震診断 重要度:Ⅰa, Ⅰ

二次診断を 実施するか 耐震告示に よる評価 合否判定 一次診断による 耐震性改善 計画検討 二次診断による 耐震性改善 計画検討 終 了 耐震性は許容できるか

一次診断

慣性力に係る評価 ・レベル2地震動 対象部位 ・ 配管 ・ フランジ継手 ・ 弁 ・ 伸縮継手 ・ ノズル部 ・ 配管支持構造物 対象部位 ・ 配管 ・ フランジ継手 ・ 伸縮継手 ・ ノズル部 ・ 配管支持構造物 変位吸収能力に係る評価 ・ レベル2地震動 ・ 地盤変状 診断対象配管の地震動の方向に対し て有効な支持機能を有する隣り合うサ ポート間の配管のうち、適切なスパンに 対して許容スパン長の判定を行う わたり配管に関して、配管支持構造体 の相対変位に対して有効な支持機能を 有する隣り合うサポート間の配管のう ち、すべてのスパンに対して変位吸収 能力の判定を行う さらに、わたり配管に関して、地盤変状 の変位に対して有効な支持機能を有す る隣り合うサポート間の配管のうち、す べてのスパンに対して変位吸収能力の 判定を行う。 ただし、当該配管系に係る異なる基礎 を共通基礎に改造することを前提とし て地盤変状に係る診断を省略できる。

二次診断

不合格 合格 NO. YES わたり配管か NO. YES NO. YES 図 3-2 重要度Ⅰa、Ⅰの既存配管系の定量評価手順

(20)

(2) 重要度Ⅱ、Ⅲの配管系 既存配管系の耐震診断 重要度:Ⅱ, Ⅲ

二次診断を 実施するか 耐震告示に よる評価 合否判定 一次診断による 耐震性改善 計画検討 二次診断による 耐震性改善 計画検討 終 了

一次診断

慣性力に係る評価 ・ レベル1地震動 対象部位 ・ 配管 診断対象配管の地震動の方向に対し て有効な支持機能を有する隣り合うサ ポート間の配管のうち、適切なスパンに 対して許容スパン長の評価を行う わたり配管に関して、配管支持構造体 のレベル1地震動に係る相対変位に対 して有効な支持機能を有する隣り合う サポート間の配管のうち、すべてのス パンに対して変位吸収能力の評価を行 う。 上記の①、②を、共に満足するとき1次診断 は合格とする。ただし、弁は当該弁を含む配 管スパンが規定する付加重量に係わる許容 スパン、伸縮継手は変位に対して、検討を行 う。

二次診断

不合格 合格 対象部位 ・ 配管 ・ 伸縮継手 変位吸収能力に 係る評価 ・ レベル1地震動 わたり配管か NO. YES YES NO. 耐震性は許容できるか NO. YES 図 3-3 重要度Ⅱ、Ⅲの既存配管系の定量評価手順

(21)

3.2. 耐震診断計画書

配管系の耐震診断の基本方針を明確にするとともに、必要な資材・要員・資料を準備し耐震診断計画 書を作成する。 なお、耐震診断の準備資料が不完全な場合は、現場スケッチや現場計測データによることができる。 この場合、安全側に耐震診断を行なうことを前提として適切に推定又は標準値を採用するなどする。こ の場合、設定の根拠を記録に残しておく。 耐震診断計画書の作成に当たっては、どんな場合も安全側の診断が行えるよう考慮すべきであり、耐震診断実施の基 本方針を記録として残しておくことが重要である。 配管系の耐震診断においては、通常下記のような資料が必要になる。 (1) 耐震診断に係る基本条件 a) 耐震診断に係る地震動の強さ b) 診断対象配管系設置図及び診断範囲 c) 耐震重要度 (2) 対象配管系に関するデータ a) P&I(対象配管系範囲及び耐震重要度が明示されたフローシート) b) 配管材料仕様書 c) 配管重量:内容物比重、保温材重量、弁重量等の配管付属品重量 d) サポート図及びサポート許容支持荷重 e) 入手できるなら関連保全記録(耐圧部内部腐食含む。) f) 配管図、施工アイソメ図 (3) 対象配管系に関連する塔槽類、配管支持構造物・周辺構造物に関するデータ a) 構造図 b) 準拠指針 c) 耐震設計条件 d) 耐震計算書(応答加速度及び応答変位が含まれていること。) (4) 地盤の条件に関するデータ(耐震重要度Ⅰa 又はⅠ以上の設備がある場合に限る。) a) ボーリングデータ(液状化判定を行なうために必要なデータを含む。) b) 護岸データ c) 液状化判定 既存配管系であるので、必ずしもこれらの資料がすべて整えられるとは限らない。この場合、資料がないことを明示 しておき、現場におけるスケッチや寸法の計測などの実施又は安全側の仮定を行い耐震診断を計画する。耐用年数や設 備環境により鋼材やコンクリートの劣化が見込まれる場合には、ハンマリングやサンプリング等適切な確認の実施など を計画しておく。地盤に関するデータが不足する場合は、本マニュアルV. 配管系耐震診断に係る参考資料 編 3.章 に示す地盤条件の推定に関する資料を参考とする。 また、保温配管、高所配管、その他目視・近接困難な配管系であっても診断方法、診断時期などを工夫して診断計画

(22)

を策定する。 表 3-1 高圧ガス設備等配管系耐震診断の資料例 (1) 高圧ガス設備耐震設計基準の適用上必要な設置条件 a) 重要度分類 ○ ○ b) 地域区分 ○ ○ c) 地盤種別 ○ ○ (2) 検討対象設備の配置図 ○ ○ (1) P&ID ○ ○ (2) 配管図、施工アイソメ図 ○ ○ (3) サービスクラス ○ ○ (4) サポート図 ○ ○ (5) 接続機器図、設計計算書(構造、重量のわかる資料) ○ ○ (6) 流体比重 ○ ○ (7) 保冷・保温材厚さ ○ ○ (8) 弁データシート、重量 ○ ○ (9) 伸縮継手データシート、重量 ○ ○ (10) その他(腐食代) (1) 対象架構/架台の配置図 ○ (2) 対象架構/架台の基礎配置図 ○ (3) 対象架構/架台の構造図(形状、寸法、構造、材質が確認できる図面) ○ (4) 対象架構/架台の構造計算書 ○ (5) 対象基礎の構造図(形状、寸法、構造、配筋、材質が確認できる図面) ○ (6) 対象基礎の構造計算書 △ (7) 対象基礎の地耐力検討書及び杭耐力検討書 △ (8) 対象基礎近傍のボーリングデータ(柱状図) ○ (9) 対象基礎を支持する地盤の室内試験結果(液状化判定に必要な情報として、以下の情報が記載されたもの) △ a) 細粒分含有率  b) 粘土分含有率  c) 塑性指数Ip d) 平均粒径D50 e) 10%粒径D10 f) 土の単位体積重量(地下水位面より浅い位置及び深い位置のもの) (10) 護岸(敷地南側)に関する以下の情報が記載された資料 a) 護岸形式(重力式あるいは矢板式等の形式が確認できる資料) ○ b) 対象物からの距離(最短距離) ○ c) 護岸からの高さが確認できる資料 ○ d) 護岸水深がわかる資料 ○ e) 護岸近傍の地盤に関する室内試験結果(前項と同様) △ f) 護岸近傍の地盤に関するボーリングデータ △ 重要度Ⅱ,Ⅲ 架構および基礎 に係る情報 配管に係る情報 一般情報 必要資料項目 重要度Ⅰa,Ⅰ 対象 ここで、○は収集する必要があるデータ、△は収集することが望ましいデータ

(23)

3.3. 一次耐震診断

3.3.1. 一次耐震診断計画

既存配管系に係る耐震診断対象配管系に関して、適切に区分した「耐震診断区分」ごとに一次耐震診 断による耐震診断実施計画を作成する。 (1) 一次耐震診断は原則として配管系統ごとに、現地において配管診断を実施する。ただし、類似性の高い複数 の系統がある場合等においては、条件等を考慮して代表的な系統を選定して実施してよい。 (2) 対象配管系リストを作成する。 3.2 により得られるデータを参照すると共に、下記に示す配管支持点で配管を適切に区分し、診断対象配管系 を設定する。 ① 塔槽類等及びその他機器との接続点(ノズル部分) ② 固定支持点 ③ わたり配管の両支持点 ④ 防液堤貫通部 ⑤ 診断対象範囲を超える第1 サポートに係る配管支持点 ⑥ その他、耐震診断において分割したほうが適切な配管支持点 (3) 当該対象配管系の診断区分ごとに耐震診断項目(損傷モード)リスト(チェックリスト)を作成する。 (4) それぞれの耐震診断区分ごとにすべてのサポートリストを作成し、当該サポートに関する必要なデータを収 集する。 (5) それぞれの耐震診断区分ごとに、付加重量(集中重量及び分布重量)リストを作成して、当該付加重量に関 する必要なデータを収集する。集中重量は、重量の大きい弁等の配管付属品類である。分布重量とは、保温 材重量などの配管全長にわたり分布する重量(配管管材重量及び配管内液重を除く)である。 (6) わたり配管に係る塔槽類又はその他機器のノズル、フランジ継手及び伸縮継手に関してそれぞれリストを作 成して、必要なデータを収集する。 (7) 当該配管系毎に損傷モードに関する関連構造物リストを作成し、必要なデータを収集する。 a) 配管支持構造物(塔槽類、架構、パイプラック)リスト b) 周辺構造物リスト (8) 配管支持構造物及び周辺構造物の基礎リストを作成して、必要なデータを収集する。 (9) 配管耐震診断実施順番及び一次耐震診断実施者を決定する。 (10) 耐震診断に係る準備資料が不完全な場合の耐震診断実施方法及び信頼性に関して検討を行ない、耐震診断計 画にその結果を反映させる。 (11) 耐震性が確保されていることが明らかな場合は、耐震診断対象配管から除くことができる。この場合、その 根拠又は仮定を記録する。

(24)

3.3.2. 一次耐震診断実施

配管系に係る一次耐震診断は、下記により実施する。 (1) 配管系の一次耐震診断は、現場における耐震性点検により実施する。 (2) 過去の地震被害に関する知見、工学的基本原則および工学的判断に基づく地震時損傷モードに 熟達した技術者(以下「耐震技術者」という。)及び設備の状況に精通した技術者(以下「設備技術者」 という。)が一次耐震診断を行なう。 (3) 3.3.1 で規定する耐震診断区分の損傷モードごとに、一次耐震診断を行なう。 (4) 耐震診断結果は、当該損傷モードごとに耐震性に関する判定を行う。 (5) 定量評価をもとにして総合的に当該配管系の耐震性の程度に応じて耐震性レベルA,B,C 及び D に分類する。 (6) 一次耐震診断の過程で、3.3.1 による一次耐震診断計画が現場状況と相違する場合又は変更した ほうが適切と判断される場合には、一次耐震診断計画の改善・修正をおこない一次耐震診断を 実施するものとする。この場合、その根拠又は仮定を記録する。 (7) 一次耐震診断の過程で、配管系と周辺構造物が地震の影響での干渉・衝突する可能性がある場 合は、調査項目の追加を行なう。この場合、その仮定と根拠を記録する。 (1)配管系の一次耐震診断は現場における耐震性の点検であり、点検項目(損傷モード)について定量評価、目視 点検、その他により耐震診断行うものとする。定量評価は、第4 章で規定する項目に対して数値計算して評価 するものである。その他については、目視点検を主とするが、適切な計算書、資料、器具等を使用してもよい。 (2)点検項目は、過去の地震被害に関する知見、工学的基本原則および工学的判断に基づき、地震時損傷モードを 考慮して3.3.1 の解説(3)で記載する通り 1 次診断計画に含めるものとするが、地震損傷モードは現地における 耐震診断の中で発見されることもあり、地震時損傷モードを熟知した技術者(「耐震技術者」)が診断にあたる。 また、同時に設備の機能、構造、維持・管理の状況等に精通したもの(「設備技術者」)が現地における耐震診 断に参画し(同一人であってもよい)、地震防災に関する総合的な観点から診断すること。 (3)配管診断区分の損傷モード(点検項目)ごとに、次の(4)のような耐震診断を行う。 (4)定量評価に関して、耐震告示で定める許容限界に対する定量評価値の比率(許容スパンに対してはL/La、変 位吸収能力に対してはδ/δa、以下「地震影響比」という。)に応じて耐震性レベルを判定する。 (5)耐震性レベルは、配管系の点検項目ごとの地震影響比に応じて、耐震性レベルA,B,C および D に分類する。 耐震告示で定める新規配管系の許容限界に比して、既存配管系の耐震性のレベルは、耐震重要度Ⅰa、Ⅰにあ っては表 3-2、耐震重要度Ⅱ、Ⅲにあっては表 3-3により判定する。 ・耐震性レベルA とは,“耐震告示なみの耐震性がある” ・耐震性レベルB とは,“耐震性がある” ・耐震性レベルC とは,“耐震性がやや劣る” ・耐震性レベルD とは,“耐震性が劣る” 各定量評価を行う点検項目毎の耐震性レベルのうち、最も下位の耐震性レベルをもって、当該配

(25)

管系の総合的耐震性レベルとする。 表 3-2 耐震重要度Ⅰa、Ⅰの耐震性レベル 耐震性レベル レベル A レベル B レベル C レベル D 慣性力に係る影響比 ~ 1.0 ~ 1.2 ~ 1.6 1.6 ~ わたり配管の応答変位に係る影響比 ~ 1.0 ~ 1.2 ~ 1.6 1.6 ~ わたり配管の地盤変状に係る影響比 ~ 1.0 ~ 1.2 ~ 1.8 1.8 ~ 表 3-3 耐震重要度Ⅱ、Ⅲの耐震性レベル 耐震性レベル レベル A レベル B レベル C レベル D 慣性力に関する影響比 ~ 1.0 ~ 1.4 ~ 1.8 1.8 ~ わたり配管の応答変位に係る影響比 ~ 1.0 ~ 1.2 ~ 1.6 1.6 ~ (6)劣化診断・設備の保守維持診断のような経年変化に係る診断では、特に耐震性を損なうことが明白な場合を劣 化(大)とし、将来注意が必要であるが現状では耐震性に影響がないと判断できるが場合を劣化(小)、それらの中間 を劣化(中)と判定する。 経年変化に関しては、耐震性への影響(耐震部材の経年変化にともなう被害)の程度を目安にして表3-4のように 判定する。 表 3-4 経年変化に関する診断の目安 中 耐震性への影響の程度 大 小 耐震性を損なうことが明白である 劣化が見られる 将来注意が必要であるが現状では耐震性に影 響がないと判断できる 経年変化レベル なお、管の内外面の減肉等に関して、高圧ガスの設備では日常の検査によって腐食が予想される部位の管の 減肉は記録・管理されている。このことは、耐震診断前に適切に保安検査で補修すべき減肉に対する対応は 取られているとして、本耐震診断では、管の内外面の減肉に関しては確認のみおこない、診断区分の判定は 行わない。 (7) 周辺構造物との接触・干渉や上部構造物の落下のような周辺構造物の影響等に関しては、必要な点検を行い、 適、不適を判定する。 (8)点検の結果は次の3.3.3( 一次耐震診断記録)節の項目について記録を残す。 一次耐震診断の過程で、一次耐震診断計画書と現場状況とが相違する場合又は変更したほうが適切と判断される場合に は、一次耐震診断計画の改善・修正をおこない一次耐震診断を実施する。この場合、その根拠又は仮定を記録する。

(26)

(9) また、一次耐震診断の過程で、配管系と周辺構造物が地震の影響での干渉・衝突や、周辺地盤の盛又は傾斜 地盤の被害の可能性がある場合などのように、一次耐震診断計画書に含まれない被害が予測できる場合は、調査項目の 追加を行なう。この場合、その仮定と根拠を記録する。

3.3.3. 一次耐震診断報告書作成

既存配管系に関して一次耐震診断実施者は調査結果に関して報告書を作成する。 1次診断報告書には、耐震診断チェックリスト表、一次耐震診断総括書及び必要に応じて耐震性改善計画、2 次診断実 施計画を含めるものとする。 耐震診断チェックリストは、配管耐震診断区分ごとに下記に項目を記録する。この場合、できるだけ、現場状況の写真 や概略図を添付することが望ましい。 (1) 損傷モードごとの耐震診断及び当該配管系の耐震性レベル (2) 最大サポート間隔 (3) わたり配管に係る変位(応答変位及び地盤変状変位)及び変位吸収能力 (4) 配管部品(フランジ継手等、伸縮継手その他配管付属品)の耐震性能 (5) サポート支持構造物の耐震性能 (6) 周辺構造物との干渉・衝突 (7) 経年変化による劣化又は損傷 (8) その他潜在的弱点 (9) 診断結果 (10) 耐震改善の必要な箇所と方法、改善実施の時期に関する意見 (11) 二次耐震診断を行うに当たっては、その必要性の有無及び 2 次診断の目的、その範囲・方法に関する意見 一次耐震診断報告書は、次の事項により作成する。 (1) 耐震診断区分ごとに一次耐震診断記録を確認して、当該配管系の総合的耐震診断を実施する。 (2) 一次耐震診断の追加項目を抽出し、必要に応じて再度現場にて耐震性を確認する。 (3) 耐震診断区分ごとに耐震診断結果に応じて耐震性改善を行うものとする。ただし、二次耐震診断を行いその耐 震性を確認してもよい。 (4) 耐震性改善を行う損傷モードに関しては、耐震性改善実施計画を策定する。 (5) 2 次診断を行う損傷モードに関しては、2 次診断実施計画を策定する。 耐震性改善実施計画に関しては、次の項目を含むものとする。 (1) 耐震診断区分ごとに耐震性改善方法 (2) 耐震診断区分ごとに耐震性改善策の妥当性確認方法 (3) 耐震診断区分ごとに耐震性改善の工程(実施時期を明確にする。) 2 次診断実施計画に関しては、次の項目を含むものとする。

(27)

(1) 耐震診断区分・損傷モードごとに二次耐震診断項目 (2) 耐震診断区分ごとに二次耐震診断の目的、その範囲・方法 (3) 耐震診断区分ごとに二次耐震診断の実施工程(実施時期を明確にする。)

3.4. 配管系の二次耐震診断

3.4.1. 二次耐震診断の実施

一次耐震診断結果に基づき必要に応じて二次耐震診断を実施する。 二次耐震診断の担当者と管理責任者を定め、二次耐震診断を確実に実施する。 (1) 二次耐震診断は、対象損傷モードを明確にして耐震性能評価を実施し、合否を判定する。 (2) 二次耐震診断実施項目ごとに二次耐震診断計算書を作成する。 (3) 二次耐震診断結果が不合格で改善が望ましい項目に関して、耐震性改善実施方法を検討し、その耐震適合性を 確認する。

3.4.2. 二次耐震診断報告書

二次耐震診断に基づき二次耐震診断報告書を作成する。 二次耐震診断報告書には、二次耐震診断計算書、必要なら耐震性改善計画・改善計画耐震性確認書を含むものとする。

3.5. 配管系の耐震診断報告書

配管系の一次耐震診断報告書及び二次耐震診断計算書をあわせて、当該配管系の耐震診断報告書を 作成する。ただし、配管系耐震診断を時期を分けて実施した場合、当該時期ごとに耐震診断報告書を作成 するものとする。

(28)

4.

配管系の耐震診断と損傷モード

4.1 に規定する配管系の損傷に係る耐震診断は、4.2 による地震による配管系の影響要因に対してその 損傷モードを調査・検討するものとする。 ただし、当該要因が生起しないことが明らかな場合は、当該損傷モードを診断損傷モードから除くこ とができる。 耐震診断用地震動及び耐震診断用地盤変状に対して、4.1 に示される配管系の損傷が発生すると、要求耐震性能が阻 害される。これらの損傷は、4.2 に示される配管系や周辺構造物の地震時の挙動(変形・変位、断面力・モーメントの 状況)及び構造上、施工上の弱点に起因して発生する。これらの配管系の損傷と起因する要因を組み合わせて損傷モー ドと称し、配管系耐震診断は、この損傷モードごとに実施する。

4.1. 配管系の損傷

配管系の損傷とは、高圧ガスの漏洩の発生の原因となる次の(1)から(9)に掲げる状態をいう。 (1) 曲がり管、分岐管等の配管部品の変形、亀裂又は破断 (2) フランジ継手のシール機能の喪失及びフランジ部の変形、亀裂又はフランジボルトの緩み (3) ねじ継手、その他の特殊フィティングの外れ、変形、亀裂又は破断 (4) 弁又はその配管付属品の変形、亀裂又は破断又は機能喪失 (5) 伸縮継手のベローズ又はその付属部品の許容量を超える変形、亀裂又は破断 (6) ノズル部配管反力による管台、胴板の変形、亀裂又は破断 (7) 回転機のフランジ継手、ケーシングの変形、亀裂又は破断 (8) サポート、取り付け金具、溶着部品及びその関連する配管の亀裂、破断 (9) その他の配管付属品、配管部品の変形、亀裂、破断又は機能喪失 地震時または地震後の配管系の状態が、2.4 に定める要求耐震性能に満たないとき、当該配管系は“損傷”に至った とみなす。本節では、要求耐震性能を配管系部品の状態として具体的に述べるものである。 2.4 に定める要求耐震性能は、“漏えい”と“有害な変形の残留”の面から性能を定義している。“漏えい”に至る部 品の状態としては、配管系の圧力バンダリーの亀裂や破損と、継手類の機能喪失、弁類の封止機能喪失等がある。 “有害な変形の残留”は、レベル1 耐震性能では、“有害な変形の残留”がないこと、レベル2耐震性能では、“漏 えい”に至らない程度の“変形の残留”を規定している。すなわち、地震動の繰り返し変形を受けた時に亀裂等が発生 しないこと、又は、地盤変状による大変形で亀裂等が発生しないことが要求耐震性能となる。

(29)

4.2. 地震の影響要因

4.1 に規定する配管系の損傷は、4.2.1 配管の地震応答加速度、4.2.2 配管支持構造物の地震動に係る応 答変位に起因する相対変位、4.2.3 地盤変状に起因する相対変位、4.2.4 配管支持構造物(サポート、配 管支持構造体等)の機能喪失、4.2.5 配管系及び周辺構造物の相互干渉、4.2.6 経年変化、4.2.7 構造材 料・形態、4.2.8 施工状況に示す影響を考慮する。 地震の影響要因とは、4.1 で規定する配管部品の損傷の原因となる、配管系の地震時の挙動や配管系の状態、環境を 表す。地震の影響要因の影響要因としては、次の項目が挙げられる。 (a) 配管の地震応答加速度による慣性力 (b) 配管支持構造体の応答変位に基づくサポート間の相対変位 (c) 地盤変状に基づくサポート間の相対変位 (d) 配管支持構造物(支持構造体、サポート等)の機能喪失 (e) 配管系と周辺構造物との相互干渉 (f) 配管系又は配管支持構造物(サポート、支持金具を含む)の経年変化 (g) 耐震上好ましくない配管系の構造材料や構造形態(粘りのない材料・構造形態など) (h) 配管系又は配管支持構造物の溶接施工等の状況 配管系の耐震診断にあたっては、(a)から(h)の要因にまでさかのぼり、配管系や周辺構造物の地震時の挙動(変形・ 変位、断面力等の状況)や構造上、施工上の弱点を予測して、4.1 に定める損傷の可能性を診断する必要がある。それ ぞれの損傷モードに関して地震の影響要因ごとに耐震診断を行う。表 4-1及び表 4-2に耐震診断方法を示す。

(30)

表 4-1 地 震動の影 響 要因に係 る 評価(耐 震 重要度Ⅰ a 、Ⅰ ) 備考 ) 表 中 (許容スパン )及び(変位吸収能力)は、それぞれ当該配管系の許容スパン確認及び変位吸収能力確認により 当該耐震性能の確認は不要となることを表す。

(31)

表 4-2 地 震動の影 響 要因に係 る 評価(耐 震 重要度Ⅱ 、 Ⅲ)

(32)

4.2.1. 配管の地震応答加速度

配管系の耐震診断では、配管又は配管スパン内の重量物(弁、フランジ継手、ストレーナ、計器類、保 温材など)の地震応答加速度による配管系に生じる反力、軸力、せん断力、曲げモーメント、捩りモー メントによる影響を考慮する。 配管系は、支持スパン間隔が長いと配管自身の慣性力により生じる配管軸力、せん断力、曲げモーメント、捩りモー メントなどの応力が大きくなり損傷につながる。このために、配管スパン長が許容スパン長以下であること耐震診断指 針としている。 また、配管支持スパン間に重量物があると同様に配管応力が大きくなり損傷にいたる。このために、付加重量(分布 重量及び集中重量)を考慮した許容スパン長に対する当該配管スパの比を慣性力に係る地震影響比とする。

4.2.2. 配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位

わたり配管に係る配管系の耐震診断では、異なる配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する サポート間の相対変位による配管系に生じる反力、軸力、せん断力、曲げモーメント、捩りモーメント による影響を考慮する。 配管はサポートを通して配管支持構造物に支持されている。一般に配管支持構造物は地震時慣性力により揺れる。こ のため配管支持構造物の地震動に係る応答変位に応じてサポートが移動するため配管が強制的に変形させられること になる。配管スパンにおいて両端のサポートが同じ配管支持構造物の上にあるとき両サポートの変位差(相対変位)は 小さく、配管の損傷につながることは少ないが、異なる配管支持構造物上に(わたり配管で)あるときは、配管の損傷 につながることがある。配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位による配管の損傷モードの一例を 図4-1 に示す。 図 4-1 配管支持構造物の地震動に係る応答変位に起因する相対変位

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塔T-1(配管支持構造物)の地震動に係る応答変位のために、支持点 S2 は地震動に係る応答変位幅 2ΔS2だけ揺れ る(変位する)。架構及びドラムD-1 の揺れのために、ノズル点 N2 は地震動に係る応答変位幅 2ΔN2だけ揺れる(変 位する)。塔と架構は、固有周期が異なるためにS2 及び N2 の間には相対的な変位差が生じ配管 S2-N2 は配管 S2’ -N2’に変形する。サポート間の配管は最大(ΔS2+ΔN2)のサポートの相対変位分だけ強制変形させられる。 この強制変位により配管系に生じる反力、軸力、せん断力、曲げモーメント、捩りモーメントのため配管系は損傷に いたる。 同様に、配管スパンD-1-D-2 において、D-1 および架構と D-2 は支持構造物が異なるため“わたり配管”であり、 応答変位に起因する相対変位の評価が要求される。 塔側にあって配管スパンS-1-S-2 は同一配管支持構造物(塔)上に有り、通常は大きな相対変位は生じない。これ らのことを考慮して同一支持構造物上の配管スパンに関しては、配管支持構造物の慣性力による地震動に係る応答変位 に起因する損傷モードは、耐震診断の対象からはずした。 わたり配管において、配管支持構造物が地震慣性力によりサポートが移動して配管に強制変形が生じるとき、配管、 支持構造物等に関して支持距離・支持方法・サポート配置、配管の引き回し等を考慮して最適な対策を講じることが必 要である。 ① 支持間隔を長くする。 (ただし、配管慣性力に起因する損傷モードに関して耐震性が確保されることが前提。) ② 配管ループを入れる。 ③ 伸縮継ぎ手を入れる。 ④ わたり配管の設置高さを下げる。(高さが低くなるほど、配管支持構造物間の相対変位が小さくなる。) ⑤ 配管支持構造物を補強して地震動に係る応答変位量を低減させる。

4.2.3. 地盤変状に起因する相対変位

わたり配管に係る配管系の耐震診断では、下記による配管部品又はサポートに生じる曲げモーメン ト、軸力又は反力の影響を考慮する。 (1) 地盤の液状化及び流動に伴う地盤の沈下によるサポート間の相対変位 (2) 地盤の流動に伴う地盤の水平移動によるサポート間の相対変位 一般に地盤が液状化する場合、基礎の移動は次のように沈下及び水平移動を考慮する必要がある。 ①. 地盤の液状化に伴って生じる基礎の沈下 ②. 地盤の液状化に伴って生じる基礎の不同沈下 ③. 地盤の流動に伴って生じる基礎の沈下 ④. 地盤の流動に伴って生じる基礎の不同沈下 ⑤. 地盤の流動に伴って生じる基礎の水平移動 一例として地盤が流動で基礎が移動する場合について 図 4-2 にしめす。 地盤が液状化し、護岸が図のように海側へはらみだすと背後地盤は水平移動し、配管は強制的に大きく変形する。

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兵庫県南部地震の例では、護岸のはらみだしは、3m以上にも及び配管損傷が発生した。 地盤変状に関する変位量は海岸方向へ 1 方向であるので、相対変位を算定する配管スパン両端のサポート2点はい ずれも水平方向には陸側から海側へ移動、鉛直方向はいずれも沈下方向(ただし杭基礎の場合は沈下小)に移動するこ と(一方向変位)が明らかなため、評価は2点の絶対変位の差をサポート間の相対変位とすればよい。また、基礎の傾 斜も陸側が高く、海側が低い変形モードとなるので1方向の傾斜のみを対象として良い。 図 4-2 液状化・流動による配管の変位モード 地盤の液状化、流動が生じる場合、同一タイプの基礎間を渡る配管の場合、基礎間の相対変位は少ないのでわたり 配管として問題になることは少ないが、次のような異なる基礎間を渡る配管(基礎に係るわたり配管)において、 ①. 一方の基礎が杭基礎、もう一方が直接基礎の場合 ②. 両方とも直接基礎だが、一方は配管のみを支持する小規模な基礎、一方は機器・大きな架構等で基礎寸 法が大きな場合(基礎は一体として移動するために、配管長さは短くとも変位差-相対変位-は大きく なる。) 両基礎の配管サポート間に相対変位が生じる結果、配管に強制変位が負荷される。この強制変位により配管系に生 じる反力、軸力、せん断力、曲げモーメント、捩りモーメントのため配管系は損傷にいたる。 液状化・流動(地盤変状)により基礎が沈下・水平移動して配管の強制変形が生じるとき、機器・配管・基礎・地盤 等と総合して場所・支持距離・支持方法等を考慮して最適な対策を取ることが必要である。 ①. 基礎の変位を算定し、配管・配管支持構造にて変位を吸収できることを確認する。 ②. 配管側で大きな相対変位に対して支持点を解放する。 ③. 配管を共通基礎上に設置し、共通基礎上の配管は強制変形を防止する。 ④. 基礎の変位を防止することにより配管の強制変形を防止する。地盤の液状化対策等がこれに当たる。

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4.2.4. 配管支持構造物(サポート、配管支持構造体等)の機能喪失

サポートは支持機能、変位拘束機能、固定機能、エネルギー吸収機能及び/又は解放機能等を有する。 配管系の耐震診断では、地震応答又は地盤変状に起因するサポートの機能喪失による影響を考慮す る。 地震応答又は地盤変状に起因するサポートの機能喪失は次のような例がある。機能喪失の結果、当該配管系に好まし くない影響を与える可能性があるので、注意深く耐震診断する必要がる。 (1) サポート反力によりサポートが損傷したことによるサポート機能喪失 支持間隔が長いとその影響で地震動に係る応答変位幅が大きくなるため他の周辺構造物との干 渉・接触・衝突等の可能性がないか注意が必要である。 (2) レストレイントのようなサポートで非拘束方向の配管変位によりサポートが外れることによる拘 束機能の喪失 非拘束方向の変位量がガイドの長 さ以上であることを確認する必要 がある。 拘束方向に拘束されない結果、拘束 されないとしての耐震診断が必要 となる。 (3) レストレイントのようなサポートで非拘束方向の固着による非拘束機能喪失 (2)と同様のサポートで非拘束方向の変位を逃がしてやり、配管に拘束を与えないよう設計されて いるが、固着等により配管に強制変位が負荷される。 (4) 固定サポートの損傷による固定機能喪失 固定サポートは3 方向の力及びモーメントを拘束し、当該サポート両側の配管が相互に影響を及ぼ さないよう設置されている。当該固定機能喪失により両スパンの設計条件が変わり各種の悪い影響 が生じる可能性がある。 (5) 解放サポートで、解放機能喪失 解放サポートは、慣性力に係るサポート反力に対しては支持機能をもち、地盤変状が発生したとき、 最大変位に達する前に(解放変位または解放反力において)サポート機能を解放(切断など)し、 最大変位に対しては当該変位吸収能力を確保するものである。 この場合、慣性力に対して支持機能を喪失したり、解放変位を超えても支持機能を維持したままと なるとき、配管応力等が過大となるので注意が必要である。 (6) エネルギー吸収サポートで、エネルギー吸収部材の劣化などによるエネルギー吸収機能喪失

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エネルギー吸収サポートは、配管系の動きに対して地震エネルギーを吸収し、配管系の地震動に係 る応答変位を低減する目的で設置されている。エネルギー吸収機構の劣化などの影響でその機能を 喪失した時、配管が大きく揺れるので、注意が必要である。 (7) 耐震支持機能サポートと見なさないサポート(ハンガー)の地震動の影響によるその機能喪失 ハンガーサポート等は耐震支持機能サポートとは見なさないが、サポート部材が劣化等したり、地 震動に係る応答変位が設計トラベル量を超えたりして支持機能を喪失して、配管自重を支持できな くなるので注意が必要である。 (8) 配管支持構造体の倒壊又は崩壊 配管は建屋上、建屋壁に設置されている場合、地震による建屋の崩壊とともに配管系も一緒に崩 壊した被害事例がある。配管支持構造物は十分な強度が必要である。

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4.2.5. 配管系及び周辺構造物の相互干渉

配管系の耐震診断では、配管系及び周辺の構造物は、地震応答(加速度及び変位)又は地盤変状が起 因して揺れる。このとき、配管支持構造物、周辺構造物、その他付属品が揺れたり、倒壊・崩壊したり 落下したりすと、配管とそれら構造物等と衝突・干渉したり、一緒に崩壊することがあるので、周辺構 造物等の状況を十分把握して、その影響を考慮すること。 次のような配管系及び周辺構造物の相互干渉に係る損傷モードがある。 (1) 配管系の変位又は移動による周辺構造物との衝突・干渉 配管又は周辺構造物の地震動に係る応答 変位のために、配管と周辺構造物が干渉・ 衝突して配管が損傷するので注意が必要 である。 左図の例では、母管の地震動に係る応答変 位に応じて分岐管が移動し隣接する周辺 構造物に衝突し破損に至る。 (2) 配管系の移動または滑動による配管の落下 配管がの水平方向にの固定が不十分で あると、配管ラックより、配管が落下す ることがあるので注意が必要である。

表 4-1地震動の影響要因に係る評価(耐震重要度Ⅰa、Ⅰ) 備考) 表中(許容スパン)及び(変位吸収能力)は、それぞれ当該配管系の許容スパン確認及び変位吸収能力確認により 当該耐震性能の確認は不要となることを表す。
表 4-2地震動の影響要因に係る評価(耐震重要度Ⅱ、Ⅲ)
図 5-1  指針応答倍率  C h    :補正係数で、(図 5-2)に示す補正係数線図より求める。  図  5-2  補正係数と減衰定数の関係  β 6 :鉛直方向の応答倍率で、次の表による。  表 5-1  鉛直方向の応答倍率β 6 の値  耐震設計設備の種類  β 6 スカート支持の塔  1.5  その他の耐震設計設備  2.0  ただし、減衰定数は配管支持構造物の種類に応じて、( 表 5-2)及び(表 5-3)による。
図  5-5  K MH に対する応答最大変位量(弾性計算変位量に対する倍率)  以上の事柄より、配管支持構造物の最大応答変位δ X は、次のいずれかの項のにより算出する。  (1) 配管支持構造物が代替法又は保有耐力評価法により変位が計算される時、 震度 Ds・K MH に対する弾性計算変位量δs が計算された時、  最大応答変位量δ X は、δ Q =δs/Ds に等しいとする。  δ X =δs/Ds  (式 5-12)  この場合、 K MH /K y の値が既知の場合、 (図 5-5)、(式 5-
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