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3 樹状細胞 dendritic cell( 以下 DC) 全 の組織に広く分布する 表 に存在するものはとくに Langerhans 細胞と呼ばれる 最も強 な抗原提 能 を持つ 抗原提 に特化した細胞 (Antigen presenting cell, APC) 組織内で外来抗原を取り込むと 所

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免疫学 2010 年度 中間試験対策資料

◆⽂責:⽊下貴⽂(医学科 2008 年度⼊学) ◆10042X 公開

この資料について

2010 年 4 ⽉ 30 ⽇実施の免疫学中間試験向けの資料です。講義⽤配布資料(パワーポイント)に提⽰ された参考問題に解答解説をしていきます。

問題 1

1、⾃然免疫系細胞をあげそれぞれの機能を述べよ。 ⾃然免疫 innate immunity の担い⼿は、マクロファージ、好中球、樹状細胞、NK 細胞、補体などがあ る。細胞ではない補体については後述するとして、残り4つを順に述べていこう。 1、好中球 neutrophil 顆粒球の⼀種で、分葉した核と、細胞質には中性顆粒を持つ。⽩⾎球で最も多く、末梢⾎液の半数以上 を占める。ふだんは⾎中を循環しているが、ケモカインの作⽤によって感染部位に遊⾛し、病原体(細 菌、とくに化膿菌)の貪⾷と分解を⾏う。貪⾷後の、病原体を含む好中球の死骸がいわゆる「膿 pus」 となる。 ⾛化因⼦の例:菌の産⽣物質、補体、IgG の⼀部分、細菌刺激を受けた細胞のケモカイン 化膿とは:組織が化膿性分泌物(purulent discharge)をみる炎症に陥った状態。化膿性分泌物 は,好中球とそれが変性崩壊した膿球(pus corpuscle)からなる,⻩⽩⾊ないしは⻩緑⾊不透明 な粘稠性の液体である。細菌性の感染によることが多い。 2、マクロファージ macrophage(以下、MΦ) 末梢⾎中の単球 monocyte が、組織で分化したもの。貪⾷専 ⾨の好中球、抗原提⽰専⾨の樹状細胞と異なり、複数の機能 を持つマルチな細胞。 普段から異物や⽼廃細胞の処理を⾏っており、病原体の感 染時にはその貪⾷・殺菌、炎症性サイトカインの分泌、ま た抗原提⽰を⾏う。 また、適応免疫が発動した後は、Th1 細胞の分泌する IFN ーγ(インターフェロンガンマ)などによって活性化され、 貪⾷や殺菌能⼒が⾼まる。 各組織に定住したマクロファージは、それぞれの組織に応じた機 能を発揮し、別々の名前で呼ばれることがある。 病気がみえる vol.6 p4

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2 3、樹状細胞 dendritic cell(以下 DC)

全⾝の組織に広く分布する。表⽪に存在するものはとくに Langerhans 細胞と呼ばれる。

最も強⼒な抗原提⽰能⼒を持つ、抗原提⽰に特化した細胞(Antigen presenting cell, APC)。組織 内で外来抗原を取り込むと、所属リンパ節(最寄りのリンパ節)に移動して、T 細胞へ抗原提⽰を⾏ う。 4、ナチュラルキラー細胞(以下 NK 細胞) ウイルスや⼀部の細菌に感染した細胞は、細胞表⾯の MHC クラスⅠタンパクの発現が低下する。 NK 細胞は、このような MHC クラスⅠの発現が低い感染細胞を⾮⾃⼰とみなし、アポトーシスを誘導 し、またはパーフォリンで細胞溶解を引き起こす。ウイルス感染初期の防御にとって重要。 ★各細胞について機能を列挙していけば解答としては終わりなのだが、それではあまり理解したことに ならない。免疫細胞たちは、どのように分化してきて、普段はどこに住んでいて、免疫応答のときには どんなことをするのか? そのような、彼らのいわば<⽣態>を合わせて、機能を考えていく(書きか け) ★MΦと好中球の違いを、対⽐的におさえよう: MΦは定義上、末梢組織にいて、⾃然免疫応答の最初の反応のトリガーを引く。⽐較的⻑寿の細胞で、 免疫反応のステージに応じてさまざまな役割を担う。 それに対して、好中球は普段は⾎中に⼤量にプールされており、感染時に現場へと遊⾛して、貪⾷し て数⽇で死ぬ。 また、好中球は⼀部の細菌(化膿菌)しか⾷べないから、他の細菌や真菌は MΦが⾷べる。 2、貪⾷のメカニズムを以下の⽤語を含んで、分⼦レベルで説明せよ。(マクロファージ、抗体、補体、 レセプター)。その機能を述べよ。

貪⾷細胞(MΦや好中球)は、各種の病原体に共通の成分(pathogen associated molecular patterns, PAMPs)に対応するパターン認識レセプターを発現している。このレセプターは、病原体に特有の成分 (たとえば、TLR4は、グラム陰性菌に共通の細胞膜成分である LPS に応答する)と結合して、そのま ま膜ごと内部に引き⼊れる(エンドサイトーシス)。 貪⾷細胞は単独でも貪⾷できるのだが、補体反応や抗体産⽣があると、貪⾷能が格段にアップすること が知られている。その機序は…… 補体の C3b が病原体に結合→貪⾷細胞の補体レセプターと結合→貪⾷ 特異的抗体が病原体に結合→抗体の付け根(Fc 領域)と貪⾷細胞の Fc レセプターが結合→貪⾷ というもの。つまり補体 C3b や抗体が病原体に付着することで、そこを⾜がかりにして貪⾷細胞は病 原体と接触しやすくなる。こうした補体や抗体による病原体の修飾を「オプソニン化」という 「オプソニン化」は、「バターを塗る」が原義らしい。オプソニン化によって、貪⾷細胞は病原体をおいしく(ガ ツガツと)⾷べちゃう、というイメージだろうか。 3、マクロファージが持つレセプターとそれが認識する分⼦を上げよ。

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3 抗原提⽰に使われる表⾯分⼦(MHC クラスⅠ、Ⅱや CD86/80 など)もレセプターと呼べないわけではない が、ここでは除外する。右の模式図では、病原体、異 物、アポトーシス細胞の各々に対する、レセプターの 種類と結合相⼿を⽰している。これでも全体の⼀部な ので、どれだけ書いたらいいのか迷う。 以下、レセプターのグループ分けと、独断で重要だと 考えるレセプターおよびリガンドを挙げていこう。 1、オプソニンレセプター Fc レセプター:抗体の付け根(Fc 領域)に付く 補体レセプター:補体の C3b に付く 2、パターン認識レセプター スキャベンジャーレセプター:リポ多糖、リポタ ンパクなど マンノースレセプター:マンノース

TLR(Toll 様レセプター;Toll-like receptor)

MΦには⽼廃細胞や異物の貪⾷と分解を担うので、 スキャベンジャー「清掃屋」 たとえば oxLDL は ⼀部のスキャベンジャーレセプターで TLR は、パターン認識レセプターの⼀種である。 右図のように、病原体の共通成分を認識して、細 胞内シグナル経路を起動し、炎症性サイトカイン や IFN-βなどの転写を促進する。 病原体の共通成分としては、 細菌の細胞壁成分:PG(ペプチドグリカン)、 LTA(リポテイコ酸)、LPS(リポ多糖) 核酸:ssRNA(⼀本鎖)、CpG-DNA(細菌に よくみられる、⾮メチル化 CG 配列が連続した DNA 配列) その他:フラジェリン:細菌の鞭⽑タンパク、 …などがある。 4、好中球やマクロファージはファゴゾームに貪⾷した細菌をリソゾームと結合することで殺菌物質に よって、分解している。殺菌物質をあげよ。 phagosome は貪⾷により形成された⼩胞のこと。マクロファージでは、⼀部の病原体が⼩胞に⼊った ままになっており、T 細胞の刺激によって活性化すると、⼩胞とリソソームを結合して分解する。主な 殺菌物質は…… 酸:乳酸などでpH3.5-4.0 まで下げて、菌を傷害する 酸素ラジカル・活性酸素類:スーパーオキシド O2- 過酸化⽔素 H2O2、ヒドロキシラジカル・OH、 ⼀重項酸素1O2、次亜塩素酸 OCl- 医系免疫学10版

http://www.nutri.co.jp /dic /ch5-1/keyword1. php?word=il

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4 ⼀酸化窒素 NO デフェンシンなどの殺菌性ペプチド リゾチーム(細胞壁のペプチドグリカンの加⽔分解酵素)や各種のタンパク分解酵素 ラクトフェリンなどの拮抗因⼦ ※医系免疫学 10-357

問題 2

1、⽪膚に病原菌(ブドウ球菌等)が感染した。時間単位でおこる⾃然免疫系細胞の変化を述べよ。 ①⾃然免疫応答:数分単位で即座に起こり、適応免疫が⼗分に発動して病原体が除去されるまで続く。 各細胞が分泌するリゾチーム(細胞壁のペプチドグリカンの加⽔分解酵素)が増殖抑制のバリアとし てはたらく マクロファージによる貪⾷、サイトカイン放出(⾎管透過性の亢進、⾷細胞の遊⾛など) 好中球が⾎中から感染組織へ遊⾛して貪⾷し、死骸となる。 補体のレクチン経路や副経路が起動し、①⾷細胞の遊⾛、②オプソニン化、③溶菌などにはたらく。 ②抗原提⽰:感染後 1〜2 ⽇の間 DC、MΦ、B 細胞などの APC は、病原菌由来の抗原を取り込んでリンパ節に移動し、ナイーブ(未 感作)T 細胞に抗原提⽰を⾏う ③エフェクターT 細胞による⾃然免疫細胞の活性化:感染後 5-7 ⽇(⼀次応答)、または 2-3 ⽇(⼆次 応答) 抗体はオプソニン化、免疫溶菌などの作⽤で⾷作⽤を助ける ④後始末:感染初期から適宜 マクロファージはスカベンジャーとしてはたらく。 ⼀⽅、ウイルス免疫では、次のようなファクターが重要になってくる。 ①⾃然免疫応答 ウイルス増殖を抑えるインターフェロンの分泌(即座〜持続的) NK 細胞による、MHC クラスⅠが発現低下した感染細胞の傷害(感染初期〜) ②獲得免疫発動後 Tc 細胞(キラーT)による、MHC クラスⅠで外来抗原を提⽰した感染細胞の傷害 Th1 細胞は IFN-γを分泌して、マクロファージを活性化 2、好中球が感染部位からの刺激で⾎管外に遊⾛するメカニズムを述べよ。 ①(左図)⾎管内⽪細胞にセレクチンが発現すると、好中球の膜上の糖鎖リガンドとの間で弱く接着し、 好中球は⾎管内⽪細胞沿いを転がるように進む(ローリング)。

②(右図)IL-8 のようなケモカインの作⽤で、内⽪細胞上の ICAM-1 と好中球上の LFA-1、Mac-1 の 間で強い接着が起きて、好中球は⾎管内⽪細胞の間隙を通り抜ける。

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5 3、樹状細胞が貪⾷し、分解した抗原をT細胞に情報伝達する仕組みを述べよ。 ①(右図上)体内の各組織に分布する未熟 DC は、病原体や断⽚化された抗原をパターン認識レセプタ ー(DEC205、TLR など)で捕捉し、エンドサイトーシスで取り込む。 ②(左図、順に)近くのリンパ管を通って所属リンパ節に向かいつつ、成熟 DC へと分化する。成熟 DC では次のような変化が起こる: 抗原の消化をして断⽚ペプチドを MHC クラスⅡに結合して膜表⾯に露出させる CD80/86 のような補助刺激因⼦を発現させる ③(右図下)成熟 DC はリンパ節に留まる。循環しているナイーブ T リンパ球は活発に動いて多数の成 熟 DC と相互作⽤し、⾃らの TCR(T 細胞レセプター)と適合する成熟 DC と出あうと、持続的に結合 して抗原提⽰を受ける。 ※免疫⽣物学 5-307 4、微⽣物の貪⾷に使われる機能は発⽣や再⽣において⾃⼰の死細胞を除去する機能と多くが共通であ る。これについて機能的、分⼦的に説明せよ。 マクロファージは、微⽣物感染時にはこれを取り込んで分解・殺菌にはたらくが、通常時でも⽼廃細胞 や異物の処理を⾏うスカベンジャーとしてはたらく(たとえば肺の塵埃(じんあい)細胞)。発⽣の形 態形成にはアポトーシスが重要な役割を果たすが(たとえば⼿⾜の指の形の形成)、アポトーシスした 細胞を⽚付けるのもマクロファージの仕事である。

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6 このため通常時のマクロファージは殺菌物質をあまり持たず、感染初期には細胞内⼩胞に病原体を取り込んだま まにしていることがある。IFN-γ などで活性化されてはじめて、各種の殺菌物質の代謝を活性化させ、殺菌・分 解を活発に⾏うようになる。 問題 1-3 で提⽰した図を再度みると、アポトーシスを起こした細胞を認識するレセプターが⽰されて いるが、CD36 や補体レセプターなどは、病原体の認識と両⽅で使われていることがわかる。 5、活性化マクロファージが出すサイトカインとオートファジーと⾃然免疫との関係を述べよ。 オートファジーautophagy(⾃⾷の意)は、細胞が⾃らの内部のタンパクをリソソームで分解する系の 総称である。ユビキチン付加による選択的な分解系であるプロテアソーム系と⽐べて、⾮特異的で⼤規 模な分解を⾏う。これは過剰タンパクや不活性化タンパクの処理、また飢餓時にタンパクを栄養分に回 すのに役⽴っている。……というのが⼤まかな説明なのだが、近年になって免疫系とのかかわりで、オ ートファジーの次のような新たな役割が⾒出され、注⽬されている。 ①細胞外から侵⼊した細菌などの病原体の分解にはたらく。 ②体内のタンパクを MHC クラスⅡにのせて抗原提⽰を⾏う ①について、オートファゴソーム形成に必要な特定の遺伝⼦を KO したマウスの解析では、感染免疫で 活性化したマクロファージが炎症性サイトカインを過剰に産⽣し、炎症性疾患の発症にかかわる可能性 が⽰された(なお、KO された遺伝⼦ Atg16L1 は、クローン病との関連が報告されている)。このよう に、オートファジーはサイトカイン産⽣の制御にかかわると考えられている。 まとめると…… オートファジーは、⾃分の細胞内のタンパクを⾮特異的に分解する系だが、

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7 病原体の分解などの⽣体防御においてもはたらいており、 またサイトカイン産⽣の制御(とくに作りすぎないこと)にも関わっている、らしい。

問題 3

1、補体の活性経路を3つ上げ、簡単に図⽰せよ。 補体系 complement system は、 主に肝臓で産⽣される C1〜C9 の 9 種類の⾎清タンパクからなり、 特定の反応により活性化されると カスケード反応を起こして、 さまざまな免疫反応を引き起こす。 活性化経路は次の 3 つ。 ①古典経路 免疫複合体(抗原と抗体が結合したも の)に C1 が結合する 最初にみつかったから「古典」。抗 原抗体反応後に作⽤して免疫反応を 「補う」ことから、補体系の名前が ついた。 ②レクチン経路:病原体と MBL が結合(後述) ③副経路:C3 に細菌の膜成分が直接結合 補体系のタンパクはそれぞれプロテアーゼ(タンパク分解酵素)であり、特定タンパクを少しだけ分解 して活性化、の繰り返しでカスケード反応を起こす。反応の順序は C4 が 2 番⽬にくること、C3 と C5 がそれぞれ a,b に分割して(⼩さい⽅の断⽚が a)各種の作⽤を引き起こすことをまず知っておく。 補体系の作⽤は: C3a、C5a:マスト細胞を活性化してケミカルメディエーターを放出させ、⾎管拡張/透過性亢進に はたらく(炎症を引き起こす)。 C3b:病源体のオプソニン化 C5a:⾷細胞を呼び寄せるケモカインとしてはたらく

C5b:C6-C9 と結合して膜侵襲複合体(membrane attack complex)をつくり、病原体に孔を開け て無⼒化する。 2、MBP と C1q の構造と働きの類似点を図⽰して⽰せ。 C1 は C1q が 1 分⼦、C1s、C1r 各 2 分⼦が集まってできる複合体である(下図左)。C1q は抗原抗体 複合体に結合するほか、⼀部の病原体の表⾯に直接結合して(下図中)、抗体がない場合でも補体系を 活性化できる MBL(マンノース結合レクチン)はマンノースや N アセチルグルコサミンなどの糖鎖を表⾯に持つ細菌 やウイルスなどに結合するレクチン(糖タンパク)であり、MBP(マンノース結合タンパク)ともいう。 病気がみえる vol.6 p22

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8 MBL は C1q とよく似た構造(6 個の頭部を持ち、2×2 のタンパクと複合体をつくる)を持ち、やはり ⼀部の病原体と直接結びつき、補体系を活性化させる。 3、補体レセプターの種類を上げよ。 補体レセプター(CR)には CR1〜4、C3a、C5a などがあり、それぞれ①どの補体に特異的に結合する か②どのような機能を引き起こすか③どの細胞に発現しているか、が異なる。下に⼀覧表を⽰しておく: 4、補体制御因⼦を上げ、その働きを⽰せ。また、その⽋損症を⽰せ。

Janeway7 figure 2-27, 2-30

MBL

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9 FDC:濾胞樹状細胞、Endothelial cell:⾎管内⽪細胞、polymorphnuclear leukocyte:多核⽩⾎球(≒ 顆粒球) 5、低分⼦補体断⽚と炎症反応に関して記せ。 低分⼦補体断⽚、すなわち 2 つに分割される補 体成分のうちの⼩さい⽅(C5a 、C3a、C4a) は、(この順の強さで)局所炎症反応を引き起こ すことが知られる。 ⾎管内⽪細胞の補体レセプターに作⽤して、 ⾎管透過性を亢進させる マスト細胞の補体レセプターに作⽤して、ヒ スタミンなどの炎症性サイトカインを放出さ せ、やはり⾎管透過性を亢進させる。 ⾎管透過性の亢進によって、Ig や補体などのタ ンパク、また MΦ、好中球、リンパ球などの免疫 細胞は、⾎管外に出やすくなり、末梢の感染部位 ではたらけるようになる。 ※免疫⽣物学 5-57

問題 4

※医系免疫学 5-102〜 1、NK 細胞はどの様な細胞を殺すか。その時の分⼦は何か NK 細胞は、T 細胞や B 細胞と同じくリンパ球の⼀種で、細胞傷害能⼒を持つ⾃然免疫系の細胞である。 ウイルスなど病原体に感染した細胞、腫瘍細胞などの異常な細胞にアポトーシスを誘導する。 顆粒を含む豊かな細胞質を持ち、抗原提⽰→分化といった過程を経ることなく、出会い頭で細胞障害 能⼒を発揮することができる(Natural Killer という名前はここから)。そのため、とりわけウイル スの感染初期、適応免疫が発動する前の時期に活躍できる点が、⽣体防御上重要である。 細胞傷害にははたらく分⼦について。 細胞質の顆粒にはパーフォリン、グランザイムなどが含まれ、NK 細胞が標的細胞と接着して、これ らが分泌される。パーフォリンは補体 C9 に似た分⼦で、標的細胞の膜に孔をあける。グランザイム はセリンエステラーゼで、標的細胞内に⼊ってアポトーシスの過程を活性化する。 また NK 細胞は Fas リガンドを膜上に発現しており、標的細胞が Fas を発現している場合は、両者 が結合することで標的細胞にアポトーシスが誘導される。 こうした攻撃⼿段は Tc 細胞(キラーT)と共通している。なお上記以外にも、 ・DR(Death Receptor)に対する TRAIL によるアポトーシス誘導

・NKCF(NK cytotoxic factor)というやはり細胞膜に孔をあける物質の放出 といった分⼦が細胞傷害にはたらく。

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10 2、NK 細胞の持つ活性化レセプターは何か。また、そのリガンドは何か。 3、NK 細胞の持つ抑制レセプターは何か。また、そのリガンドは何か。 NK 細胞は、その細胞傷害性を活性化するレセプターと、抑制するレセプターの両⽅を持っている。そ れぞれ複数の種類のレセプターが存在し、また NK 細胞ごとに発現しているレセプターの種類が異なる。 NK 細胞が標的細胞を傷害するかどうかは、標的細胞と相互作⽤するとき、活性化レセプターと抑制レ セプターのどちらが強い刺激を受けるか、そのバランスで決まる。 腫瘍細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞では、特定の表⾯分⼦が膜表⾯に露出したり(ある種の糖 鎖構造など)、また MHC クラスⅠ分⼦の膜への発現が抑制されたりする。これらは、NK 細胞が標的 を識別する標識となる。すなわち…… ⼀部の異常細胞では膜表⾯にある種の糖鎖構造(プロテオグリカン、ガングリオシドなど)などを露 出している。これらの表⾯分⼦は NK 細胞の活性化レセプターを刺激し、細胞傷害をまねく。 正常な細胞は MHC クラスⅠ分⼦を膜に発現しており、MHCⅠは NK 細胞の抑制レセプターを刺激す る。異常細胞で MHC クラスⅠ分⼦の発現が低下すると、NK 細胞はその細胞を傷害する。 以上は概略にすぎないが、解答としてはこれで 80%くらい OK かもしれない。以下は少し詳しい話。 活性化レセプター、抑制レセプターともに(数⼗個くらいのオーダーで)多数存在することが知られて おり、各 NK 細胞はこのレパートリーからいくつかのレセプターを発現することで、標的細胞の種類や 活性化のされ⽅が異なる、さまざまなタイプの NK 細胞がいることになる。 NK レセプターはいくつかのタイプに分類されている。 NK 活性化レセプター NK 抑制レセプター:

KIR(killer inhibitory receptor:Ig ファミリー) NKG2(C 型レクチン・ファミリー) (書きかけ) 4、ヒトの NK 細胞の持つ細胞表⾯マーカー何か。 ヒト NK 細胞は、CD56 と CD16 を発現パターンにより、性格が異なる 2 つのタイプに分かれることが 知られている。以下にまとめておく: CD56+CD16++ CD56++CD16 -存在⽐率 90% 10% 主な機能 細胞傷害 IFN-γ産⽣

問題 5

1、抗体の3つの働きを図⽰せよ。 (左)体液、⾎液中の、細菌毒素、ウイルスなどの可溶抗原を中和 neutoralization して無害化 (中)病原体をオプソニン化 opsonization して、⾷作⽤を受けやすくする (右)抗原抗体複合体は、補体系の古典経路を活性化する

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11 2、抗原とは何か。ハプテンとは何か。例を挙げて説明せよ。 「抗原 antigen」「抗体 antibody」は対となる概念で、その定義は循環的である。つまり…… ある個体に注⼊したときに、<抗体を作って排除される>のが、抗原。 逆に、体内に⼊ってきた抗原に結合し、無害化・排除を促すものが、抗体。 このように定義が抽象的なのは、それが抗体分⼦の正体が知られていない時代に考えられたからである。 今⽇では、抗体は物質としては免疫グログブリン(Immunoglobline;Ig)という糖タンパクであるこ とが知られている。 分かりやすく⾔い直すと、「体内に⼊ったときに、⾃らに特異的に結合する抗体を作るような異物」が、 抗原である。仮に異物でも、抗体を作らなければ抗原ではない。ある⽣物が作るタンパクを、種の異な る⽣物の⾎液中に⼊れると、そのタンパクに対する抗体が作られる。つまり、異なる種の⽣物のタンパ クは、ふつう抗原となる。 さて、ある種の低分⼦有機化合物(例:ニトロフェニル nitrophenyl)は、それ単独では、⽣体内に注 ⼊しても抗体を作らない。しかし単純な化学反応で、特定の担体(キャリア)タンパクと共有結合させ て注⼊すると、抗体を作る。このように、担体タンパクとのペアで抗体を作る低分⼦有機化合物を、ハ プテン hapten という。確認しておくと、ハプテンと担体タンパクはいずれも抗原ではない。しかし、 ハプテン+担体タンパク複合体は抗原である。 さて、ハプテン+担体タンパクは、次の 3 つのタイプの抗体を作ることが知られている。つまり、①ハ プテン単独に対する抗体、②担体タンパクに対する抗体、③ハプテン+担体タンパク複合体に対する抗 体。 なかでも①は、いわゆるペニシリン・ショックの機序を説明するため、医学的に重要である。抗⽣物質 であるペニシリンを患者に静注したときに、まれに重篤なショック症状(ペニシリン・ショック)が起 こることが知られている。その機序は: 最初にペニシリンを投与→ペニシリンは⾎中タンパクと結合→ペニシリンハプテンに対する IgE 抗体が できる→抗ペニシリン IgE 抗体が全⾝のマスト細胞に結合→次回にペニシリン投与時に、マスト細胞が 刺激され、全⾝の⾎管透過性が亢進し、有効な⾎液循環が減少してショック症状に陥る。 3、エピトープとは何か。

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12 「抗原」とは、体内に⼊った異物の全体を指す。抗原に 対して作られた抗体は、抗原の全体ではなく、その表⾯ の微⼩構造(6-10 個のペプチド鎖や、5-8 個の糖鎖) を認識して、結合する。つまりエピトープとは、抗原の 表⾯で抗体が結合する最⼩単位であり、抗原決定基 antigenic determinan とも呼ばれる。普通の抗原に は複数のエピトープを持つ。またハプテンはエピトープ である。 4、抗体の分⼦構造を図⽰せよ。 抗体を部分に分ける分け⽅は何種類かある。 ①タンパクに注⽬すると、2 本の⻑い H(heavy)鎖、2 本の短い L(light)鎖が、S-S 結合で結ばれている(図の灰 ⾊の線)。 ②形態の多様性に注⽬すると、⼆股の先端部は、遺伝⼦再 編成によって極めて多様なレパートリーが作られる可変 領域(V 領域;variable region)で、この 2 箇所でエピ トープを認識する。残りを定常領域(C 領域;constant region)という。 ③また、全体を Fab と Fc に分け、⼆股に分かれた先を機 能から Fab(antigen binding fragment)、付け根のほ うを Fc(⽣化学的に結晶化できるから、crystal から取ら れたらしい)と呼ぶ。 5、抗体のアイソタイプをあげ、図⽰し、働きを述べよ。 「アイソタイプ isotype」という⾔葉は、「基本的には同じものだけど、いくつかタイプ(型)がある よ」というくらいの抽象的な意味しかないので、⽂脈によって意味がかわる。抗体のアイソタイプとい えば、「クラス」、つまり IgM/D/G/E/A という区別のこと。ではこのクラスはどうやって決まったか というと、これはヒト抗体を H 鎖と L 鎖に分けて、H 鎖を抗原として他の動物に注射して抗体を作らせ たときの、できる抗体の種類で分けている(いい加減な説明)。……ただ以上のことは別に知らなくて もよくて、 H 鎖は分⼦構造が微妙に違うμ鎖、δ鎖、γ鎖、ε鎖、α鎖の 5 種類からなり、それによって IgM/D/G/E/A というクラスが分かれる。各クラスの機能の違いは、H 鎖の構造の違いによる。 という点だけおさえておこう。解答としては、⼿抜きだが以下の表の「形状」「作⽤」「特徴」を書け ばいいとおもう。 医系免疫学10版 病気がみえる vol.6 p19

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13 いちおう⽂章に起こしてみよう。 IgM を 5 量体で、Fab の形状が異なるものが混在している。そこから分かる通り、病原体を凝集さ せることに向いている。感染初期に短期間、⽐較的少量産⽣される短命の抗体で、病原体を効率よく 凝集+補体処理しておいて、IgG が作られるまでの時間稼ぎをする。 B 細胞が形質細胞に分化する際、初期の短期間には IgM を産⽣し、その後に残り 4 つのどれかにク ラススイッチする。 IgG は⾎中で最も普通に作られる(⾎中 Ig の 75%)単量体の抗体で、前述の 3 機能を備え、半減 期も⻑い。適応免疫の主役としてはたらく。 IgA は 2 量体で、⾎中では 15%ほどだが、⼤量に作られて(全 Ig の 6 割)、消化管や気道の粘膜 に分泌されている。

IgD と IgE は、単量体でごくわずか、IgD は機能不明、IgE は寄⽣⾍免疫やⅠ型アレルギーに関与、 ということくらいを書けばいい。

6、IgG のマウス、ヒトの種類と性質を述べよ。 IgG と IgA はさらにいくつかのサブタイプに分 けることができ、ヒトだと IgG は IgG1、IgG2、 IgG3、IgG4 の 4 種類に、IgA は IgA1 と IgA2 の 2 種類に分かれる。各 IgG は、右図のように 構造が微妙に異なり、表にまとめるように、機能 的や発現量にも違いがみられる。 種類 割合 胎盤の通過 補体の活性化 ⾷細胞の Fc 部位への結合 IgG1 66% ○ ++ +++ IgG2 23% × + + 病気がみえる vol.6 p19

http://hwm6.gyao.ne.

jp /sarah/homepagedirec /immuno.html

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14 IgG3 7% ○ +++ +++ IgG4 4% ○ - ++ またマウスだとこのサブタイプは微妙に異なり、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3 の 4 種類となる。 以上はマイナーな知識なので、「IgG には微妙に機能が異なる 1-4 のサブタイプがある」ということ以 外は、特に覚える必要はないとおもう(テストのことは知らないけど)。

問題 6

1、B-1a, B-1b, B-2 細胞とは何か?それぞれの発⽣起源と働き、細胞表⾯抗原を記せ。 ※医系免疫学 10-177、免疫⽣物学 5-86、273 B-2 細胞は普通の B 細胞であり、それに対して B-1 細胞は、主に胎児期〜新⽣児期にあらわれ、特殊な 分布と機能を持つ別系統の B 細胞である。B-1 細胞は、CD5 という普通は T 細胞で発現している表⾯ 分⼦を発現しているため、CD5-positive 細胞とも呼ばれる。B-1 細胞はさらに a,b のサブタイプに分 けられる。この 3 種類について、由来と分布、表⾯分⼦の発現パターンを下表にまとめる。 由来 分布 CD45RA(B220) CD18b CD5 B1a 胎児の肝と⾻髄 腹腔、胸腔 腸管、脾臓 弱 + + B1b 胎児の肝と⾻髄、成体 ⾻髄 - or 弱 B2 ⾻髄 ⾻髄、リンパ節 腸管、脾臓 強 - - B-1 細胞の特徴を、B-2 細胞との対⽐していくと…… B-2 細胞が主に⾻髄やリンパ節に分布するのに対し、B-1 細胞は腹腔、胸腔に分布する。 B-2 細胞は⾻髄の造⾎幹細胞から補充されるのに対して、B-1 細胞は胎児期に造⾎幹細胞から分化し た後、⾃⼰複製で数を維持する。 可変部のレパートリーが少ない、体細胞突然変異もわずか、記憶細胞への分化なし、IgG より IgM の⽅が多い、T 細胞⾮依存的に抗体産⽣を⾏う。 B-1 細胞の特徴をまとめると…… 主に体腔(腹腔や胸腔)に存在する CD5-positive の通常とは別系統の B 細胞であり、 胎児期に限られたレパートリーに分化し、その後は体腔内の⾃⼰または⾮⾃⼰抗原を認識して増殖し、 維持される。 産⽣する抗体は IgM が多く、限定されたレパートリーの⼀部は細菌の持つ共通の表⾯分⼦に結合す る 進化的な起源は明らかでないものの、⾃然免疫系に近いはたらきをする原始的なタイプの B 細胞で あり、胸腔や腹腔における⽣体防御反応を担っていると考えられる。 疾患との関連では、次の点が興味をひく: 慢性リンパ性⽩⾎病(CLL)は B-1 細胞に由来する。 膠原病の⼀種である関節リウマチ患者では B-1 細胞の増加がみられ、リウマトイド因⼦(抗 IgG の ⾃⼰抗体)を作っている。

(15)

15 2、⾻髄における B 細胞の発⽣を ProB, PreB, 未熟 B の順番で図⽰し、遺伝⼦組み換え時期、細胞表⾯ 抗原の変化に関して記せ。 B 細胞の分化の初期段階は、⾻髄のストローマ細胞と結合して⾏われる。表⾯に IgM を発現した未熟 B 細胞の段階になると、ストローマ細胞を離れて、⾃⼰寛容のチェックを受けたあと、成熟 B 細胞 (IgM+IgD+)となって⾻髄の外に出る。 分化の各段階における遺伝⼦組み替えの時期と細胞表⾯分⼦の変化は、まさに下図に⽰されている。 ……が、これはちょっと、暗記するような情報量ではない。要点をつかむのと解答⽤に、簡易版を以下 にまとめよう。

(16)

16 Pro-B 細胞 Pre-B 細胞 未熟 B 細胞 成熟 B 細胞 プラズマ細胞

場所 ⾻髄ストローマ細胞 ⾻髄内 末梢 リンパ節・⾻髄

遺伝⼦編集 主に H 鎖 主に L 鎖 (Ig 完成) クラススイッチ - BCR - preBCR (⼀時的) IgM IgM,IgD IgM/G/A/E

CD19 + + + + - CD20 - + + + - CD21 - - + + - 以上はあくまで概略だと考えて欲しいが、解答としては⼗分だろう。⽂字で起こしておくと…… B 細胞の分化は、共通のリンパ系前駆細胞が⾻髄ストローマ細胞に接触してはじまる。 Pro-B 細胞では主に H 鎖、次いで Pre-B 細胞では主に L 鎖の遺伝⼦再編成が⾏われ(⼤きい⽅から 先に編集)、完全な IgM を表⾯に発現すると未熟 B 細胞になり、ストローマ細胞を離れる。 この 3 つの分化段階を区別するマーカーとして、CD19〜21 のシリーズが使われる。順に CD19 は Pro-B 細胞から、CD20 は Pre-B 細胞から、CD21 は未熟 B 細胞から発現し、いずれもプラズマ細 胞になると消える。 臨床的に重要なこと:商品名リツキシマブ(商品名リツキサン)は、CD20 に対するモノクローナル抗体であり、 ⼀部の B 細胞性のリンパ腫(保険適⽤あり)のほか、臓器移植や⼀部の⾃⼰免疫疾患(⾃費なのでかなり⾼価) でも効果が認められている。 未熟 B 細胞は⾃⼰抗原のチェックを受けたあと⾻髄を出て、脾臓やリンパ節に向かい、さらに分化 を経て成熟 B 細胞となる(後述)。抗原に出会う前の成熟 B 細胞は、ナイーブ(未感作)B 細胞と 呼ばれる。

3、脾臓における B 細胞は marginal zone B 細胞あるいは follicular B 細胞に分類される。それぞれの 表⾯抗原と働きを記せ。

未熟 B 細胞は末梢に出た後、脾臓やリンパ節に移⾏し、さらに分化と選別を経て成熟 B 細胞になる。濾 胞(follicular) B 細胞と辺縁帯(marginal zone) B 細胞は、脾臓で⼊ってから分岐した、別系統の成 熟 B 細胞である。 脾臓の組織学的構造を復習すると、脾臓の⼤部分は⾚⾎ 球+マクロファージが分布する⾚脾髄で、そこにリンパ 球が分布する⽩脾髄が散在する、というものだった。⽩ 脾髄の模式図を右に⽰すが、この構造は B 細胞、T 細胞 の分化に密接に関与している。

PALS(periarteriolar lymphoid sheath 動脈周囲リンパ鞘)、 辺縁帯 marginal zone、濾胞 follicle、胚中⼼ germinal center

未熟 B 細胞が⾻髄を出てから成熟 B 細胞になる前までを、 transitional B cell という(右図の T1、T2)。中⼼動脈 から脾臓に⼊った T1-B 細胞は、PALS、濾胞で選別を受 けて、濾胞 B 細胞、または辺縁帯 B 細胞に分化する。

(17)

17 濾胞 B 細胞は普通の成熟 B 細胞と考えてよい。つまりヘルパーT によって活性化し、体液性免疫に はたらくタイプである。 辺縁帯 B 細胞は、先に扱った B-1 細胞と似たタイプの B 細胞であり、T 細胞のヘルプなしで活性化 して(TLR の関与が推定される)、抗体産⽣を⾏う。 表⾯分⼦の発現パターン(強く発現しているもの)を以下に整理しておくと: 濾胞(follicular) B 細胞:IgM、IgD、CD23

辺縁帯(marginal zone) B 細胞:IgM、CD1、CD9、CD21

以上はかなり端折って紹介したものの、細かい知識ではある。しかし、臨床的な重要度は⾼い。という のも、どの分化段階のリンパ球が腫瘍化するかで、⾎液腫瘍疾患のタイプが分かれ、病態や治療法も異 なるからである(書きかけ、免疫⽣物学 5-283) 4、抗体の遺伝⼦組み換えは B 細胞の発⽣のどの段階で起こるか。その時遺伝⼦を切断する酵素、再結 合させる酵素は何か。切られる配列は。 Ig の遺伝⼦組み替え(VDJ の再編成)は、B 細胞が⾻髄のストローマ細胞と接着して分化する途中で起 こる。Pro-B 細胞の段階では主に H 鎖が、Pre-B 細胞の段階では主に L 鎖の再編成が⾏われる。分⼦機 構の詳細は後述するから、下図をみながら問いに簡単に答えておくと:

RAG(recombination-activating gene)の 1,2 は、DNA に結合し、ヘアピン構造を作って切断す る。

RAG が結合する配列=切断される配列は RSS(recombination signal sequence)と呼ばれる。 DNA リガーゼⅣが、切断された DNA をつなぐ。

問題 7

(18)

18 抗体の多様性が⽣み出される仕組みとしては、(1)VDJ 組み換え recombination、(2)体細胞⾼ 頻度突然変異 somatic hypermutation の 2 つがある(クラススイッチは次問で取り上げる)。 (1)VDJ 組み換えは、⾻髄で分化中の B 細胞で ⾏われる。 組み換え前の Ig 遺伝⼦ H 鎖可変領域では、 V(variable)領域、D(diversity)領域、J(joining) 領域がそれぞれ 40 個、25 個、6 個ある。まず pro-B 細胞では、V,D,J の各々から 1 つずつ残し て、それ以外は切り捨てられる。pre-B 細胞でも 同様に、L 鎖の V,J の各々から 1 つずつ残してそ れ以外を切り捨てられる。このような遺伝⼦再編 成の過程で、多種多様な可変部が作られる。 実際には再編成の途中、DNA の結合時に、結合 部位でのヌクレオチドの⽋失や付加などが起こ ることで、さらに多様性が広がる。 (2)体細胞⾼頻度突然変異は、⾻髄を出て、末梢リンパ節や脾臓で最終的な分化を⾏っている B 細胞 でみられる。つまり B 細胞が抗原 X と出会い、かつ T 細胞のヘルプを受けてプラズマ細胞へと分化す る途中である。このとき、H 鎖および L 鎖の可変部遺伝⼦に⾼頻度に点突然変異が導⼊され、多様な Ig 分⼦が発現する。 突然変異を受けた B 細胞の中には、抗原 X とより強く結合する Ig を作るものがあり、そのような B 細 胞が選択されて、プラズマ細胞に分化する。つまり多様性を増す→絞り込みという正の選択を⾏うこと で、より結合しやすい Ig を作ろうとしているわけで、この過程は親和性の成熟 affinity maturation と 呼ばれる。

この過程に関与するタンパクの 1 つが、AID(activation induced cytidine deaminase)である。この タンパクは、他のタンパクと協⼒して 1 本鎖 DNA に結合して、シチジンを脱アミノ化してウラシルに する。 2、抗体のアイソタイプが⽣み出される分⼦メカニズムを 記せ。 抗体のクラススイッチについての問いである。B 細胞はは じめ、IgM を産⽣するが、ヘルパーT 細胞のシグナルなど の刺激で、可変領域はそのままで H 鎖定常領域だけを組 み替えて、IgG/A/D/E のそれぞれのクラスの Ig を産⽣す るようになる。この過程をクラススイッチという。 右図のように DNA の H 鎖定常領域には、μ、δ、γ、ε、α の各配列が並んでいる。遺伝⼦組み替えによって、たとえ ばμとγを切り捨てると、VDJ のすぐ後にγ配列がくること で、産⽣される抗体は IgG となる。 病気がみえる vol.6 p16

病気がみえる vol.6 p20

(19)

19 ※免疫⽣物学 5-143,347

問題 8

1、T細胞の働きを3つに分けて図⽰せよ。 ナイーブ T 細胞が抗原提⽰を受けると エフェクターT 細胞に分化するが、下図 に⽰すように、Th1、Th2、Tc の三種類 が存在する。 Th1、Th2 をまとめてヘルパ-T 細胞と いうことがある。もともとのいわゆるヘ ルパーは Th2 を指す。またキラーT 細 胞=Tc 細胞だが、Cytotoxic T cell(細 胞傷害性 T 細胞)を略して CTL と呼ぶ こともある。 CD4+ナイーブ T 細胞は、リンパ節で APC から MHC クラスⅡによる抗原提⽰ を受けると、感染の種類によって Th1 細胞か Th2 細胞のどちらかに分化する。 Th2 は主に液性免疫の担当で、IL4,5,13 などを出して、B 細胞の分化と抗体産⽣ の誘導を⾏う。 Th1 は主に細胞性免疫の担当で、Tc の 活性化(IL-2)や MΦを活性化(IFN-γ) させる役割を持つ。 CD8+ナイーブ T 細胞は、リンパ節で APC(樹状細胞)から MHC クラスⅠによる抗原提⽰(クロスプ レゼンテーション)を受けると活性化してエフェクターTc 細胞となり、腫瘍細胞やウイルス感染細胞、 移植細胞などを攻撃する。 2、T細胞による抗原認識を抗原提⽰細胞とT細胞の結合図で説明せよ。 抗原提⽰細胞(Antigen Presenting Cell; APC)によるナイ

ーブ T 細胞への抗原提⽰には、主に 3 種類の膜表⾯分⼦がか かわる。 ①細胞間接着タンパクは、APC とナイーブ T 細胞を接着し、 相互作⽤を可能にする。 ②APC 側の MHC クラスⅡに抗原断⽚ペプチドが結合したも のと、T 細胞側の TCR(T cell receptor)が接近し、特異的 にマッチする場合のみ抗原提⽰が⾏われる。 ③このとき、APC 側と T 細胞側の補助刺激分⼦が両⽅ともに 発現し、抗原提⽰とともに結合して補助刺激を与える必要が ある。主な補助刺激分⼦として、APC 側の B7(CD80/86)

(20)

20 と T 細胞側の CD28 がある。補助刺激がない場合や正しい組み合わせではない場合、T 細胞は不活性化 される。 3、胸腺におけるT細胞の発⽣分化に関し、細胞表⾯抗原の変化とともに図⽰せよ。 T 細胞の分化は、全体では次の 3 段階で⾏われる。 ① ⾻髄にて、造⾎幹細胞から pro-T 細胞まで分化したあと、胸腺に移動。 ② 胸腺にて、TCR 遺伝⼦の再編集、正の選択と負の選択を受けて、成熟 B 細胞となる。 ③ ⼆次リンパ節(脾臓や末梢リンパ節)に移動し、抗原提⽰をうけるてエフェクターT 細胞となる 胸腺における分化の過程 (遺伝⼦組み替えの時期、 表⾯分⼦の変化)を右図 に⽰す。 各段階の分化は、胸腺内の特定の場所で⾏われ る。右に模式図を⽰す。 subcapsular region:⽪膜下領域 DN:ダブルネガティブ(CD4-CD8-) thymocyte 胸腺細胞

(21)

21 4、正の選択と負の選択、その異常に関して記せ。 胸腺に⼊った未熟 T 細胞は、まず増殖と TCR 遺伝⼦再編成の主な部分を⾏い、double-positive T 細胞(CD4+CD8+)になる。 次いで胸腺ストローマ細胞(胸腺上⽪細胞、DC、MΦなどの総称)と相互作⽤し、まず正の選択 positive selection を受ける。この過程では、胸腺ストローマ細胞が提⽰する⾃⼰の MHC 分⼦と、弱く結合 できる TCR のみが⽣き残り、結合出来ない T 細胞はアポトーシスを誘導される。 正の選択を経た T 細胞は、single positive(CD4+CD8- or CD4-CD8+)となっている。次いでやは り胸腺ストローマ細胞から、MHC+⾃⼰抗原の組み合わせを提⽰され、強く結合する TCR を持つ T 細胞はアポトーシスを誘導される。以上の過程を経て成熟 T 細胞となり、胸腺の外に出て⼆次リン パ節に移動する。 まとめると…… ①未熟 T 細胞(double-negative)が胸腺に⼊る ②増殖と TCR 遺伝⼦再編成を受け、double-positive になる。 ③正の選択で、⾃⼰の MHC 分⼦と結合できる T 細胞だけが⽣き残り、single positive になる。 ④負の選択で、⾃⼰反応性を持つ T 細胞が除去される。

問題 9

1、免疫グロブリン H 鎖の遺伝⼦組み換えを図⽰し、これで⽣み出される多様性の数を記せ。 2、免疫グロブリン L 鎖の遺伝⼦組み換えを図⽰し、 H 鎖との違いを記せ。 3、T細胞受容体の遺伝⼦組み換えを図⽰し免疫グロブリンとの類似点、相違点を⽰せ。 4、免疫グロブリンのクラススイッチを図⽰せよ。

問題 10

1、成⼈の免疫、⾎液系細胞の幹細胞とそれからの分化図を⽰せ。

(22)

22 2、胸腺内でのT細胞分化を図⽰し、遺伝⼦再編成の時期、分化マーカーの変化を記せ。 3、⾻髄内でのB細胞分化を図⽰し、再編成の時期、分化マーカーの変化を記せ。

問題 11

1、B 細胞の抗原レセプターからのシグナル伝達系を図⽰せよ。 2、T 細胞の抗原レセプターからのシグナル伝達系を図⽰せよ。 B 細胞の抗原レセプターからのシグナ ル伝達系との類似点、相違点を記せ。

参照

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