平 成
25年
度
学
位
論
文
中学校 数学 にお ける 「数学 的 な言語 力」 の育成 に関す る研 究
兵 庫 教 育 大 学 大 学 院
教 育 内容 ・ 方 法 開発 専 攻
Ⅳ
l 1 2 1 5 4 D
学 校 教 育 研 究 科
認識 形 成 系 教 育 コー ス
敏
之
は じめ に
自分 の考 えを分か りやす く他人 に説 明す ることは,数
学 を学習す る上で大切 な こ とであ る。他人 に説明す ることで生徒 は, 自分の考 えを整理 し振 り返 るこ とがで きた り,他
人の 説 明 を聞 くことで,理 解 で きなかつた内容 を理解す ることが可能 にな るか らである。また, 知識基盤 化や グローバル化 が進 む社会 においては,重
松 ・二 宮(2007)が指摘 す るよ うに, 新聞記事 の よ うな文章 を理解す るた めには,従
来的 な読み 。書 き能力 だけで は不十分 であ り,数
学 的概念 を踏 ま えた読み ・書 き能力 が要求 され るよ うにな る。 つま り,数
学 を用い て相手を説得 した り,相
手 か らの情報 を正 しく解釈す るた めの能力が益々必要 になって く る と考 える。そ して,こ
の よ うな社会 にお いて, 自分 の意 見や考 えを数学 を用 いて主 張 し た り,特
定 の者 か ら発せ られ た様 々な情報 を受 け取 る とい つた,言
語 の能力 を育成す るこ とが,数
学 を指導 す る者 に とって今後 さらに求 め られ るこ とにな るだ ろ う。 著者 は公 立中学校 に勤務 してお り,日 々の授業 において生徒 に課題 に取 り組 ませた後 で, その解決方法 を説 明 させ る活動 を実施 して きた。その際に,式
や表,グ
ラフな どの数 学的 な表現 を用 いなが ら,順
序 立 てて相手 に分 か りやす く説 明す るこ とができない生徒が多い ことを感 じてきた。PISA調
査や全 国学力・学習状況調査の結果 か らも,日 本 の中学生 は, 自分 の考 えを数学的 な表現 を用 いて論理的 に説明す ることな ど言語 を用 いて他者 に説 明す る能力に課題 があ ることが指摘 され ている。 これまでの著者 の問題意識や, 日本 の生徒 の実態,こ
れ か らの社会 で求 め られ る能 力 を 鑑 み ると,数
学 を用 いて 自分 の考 えや情報 を他人 に伝 える こ とや,他
者 か らの情報 を解釈 す ることに必要 な,言
語 能 力 に関 して研 究 を進 める こ とは,非
常 に有言義 な ことであ ると 考 える。 そ こで,数
学教育 にお ける言語能力 に関す る研 究 を通 して,数
学教 育 にお け る言語 能力 の指導内容 を明確 に捉 えること。その能力 を育成す るために, どの よ うな教材 を用いて指 導すれ ば よいのか。 これ が,本
研 究 に と りかか る際の私の問題意識 であった。 2013年 12月 森 敏 之目
次
は じめ に 第 1章 本研 究 の 目的 .…… … … …:・1
第 1節 言語 力育成 の必要性 .……………1…1・…1
第2節 数学 教育にお ける言語活 動 につ いての課題 .……_…………:.……………・…… …・・31.PISAの
自由記述形式 問題 にお け る 日本 の生徒 の課題 .…………・………32.全
国学力 。学習状況調 査 にお ける課題 .…6
(1)記
述式 問題 にお ける課題 .…………6
(2)数
学的に表現したり,数学的に表現されたものの意味を読みとつたりすることにおける課題.…………H
第3節 本研 究の 目的 .………13
第2章
本研 究 に関す る理論 的枠組 み .………14
第 1節 言語活動 の意 義 .………14
1.数
学学習のための言語活動 .…………14
2.数
学的 な コ ミュニケー シ ョン能力育成 のための言語活動 第2節
数学的なコ ミュニケー シ ョン能力の構成要素.………・1.金
本 の 「数学的 コ ミュニケー シ ヨン能力」.…………2.長
崎 らの 「算数 ・数学 で考 え合 う力」.…26
3.熊
倉 らの 「数 学的 な表 現力」.三.………30
4.数
学的 な コ ミュニケー シ ョン能力 の構成要素.…………―・…… │・…….…… ….31 第3節
「数学的な言語力」 の枠組み.………33
第3章
「数学的な言語力」の育成 を 目指 した実験授業.…………・39 第 1節 実験授 業の 目的 と方法 .…………39
1.「伝言 ゲー ム」 教材 につ い て 392.実
験授 業 の 目的 ...:.… ………40
3.実
験授業 の方法 .………41
(1)伝
達す る図形 と課題 プ リン ト.………41
(2)授
業 の構成 .………43
(3)ア
ンケァ ト.…………・……46
19 21 21(4)時
期 と対 象 47第2節 結果 の分析 と考察 .…………・………・…… ……48
1.授
業 のプ ロ トコール .…………:・………・………・………・482.生
徒 がかいたI図形 の レベル と レベル別人数 ・………653.生
徒 が書 いた伝言 文 .………:・…… … … …… ………… … ………… ………■・…… … …… … …774.生
徒 が見出 した正 しく伝 えるためのポイ ン ト・………・………・785,正
しく伝 えるためのポイ ン トが見いだ された経緯.…………・…………・826.伝
言文 の変化 .…1.……… 1・………84
7.ア
ンケー トの結果 と考察 ・………88
第4章
本研 究 のま とめ と今後 の課題 .………92
第 1節 本研 究のま とめ ,…………。92
第2節
今後 の課題 .…………96
おわ りに 引用・参考文献 付録第 1章
本 研 究 の 目的
第 1節
言 語 力 育 成 の 必 要 性
文部科学省
(2007)「言語力育成協力者会議
(第8回
)配
付資料
資料
5」では
,言
語力
育成 の必要性 につ いて,以
下の よ うに述べ てい る。 ≪子 どもを取 り巻 く環境 が大 き く変化す るなかで,様
々な思いや考 えをもつ他者 と 対話 した り,我
が国の文化的伝統の中で形成 されて きた豊かな言語文化 を体験 した りす るな どの機会 が乏 しくなつたために,言
語 で伝 える内容 が貧弱 な もの とな り, 言語 に関す る感性 や知識 ・技能 な どが育 ちに くくな って きて い る。 このため,言
葉 に対す る感性 を磨 き,言
語 生活 を豊 かにす る こ とが大変強 く求 め られ てい る。OECDの
国際学 力調 査 (PISA)に お いて 「読解 力」 が低 下 してい る こ と,い
じめ や ニー トな ど人間関係 に関わ る問題 が喫緊の課題 となってい ることな ど,学
習 の面 で も生活 の面 で も,子
どもた ちの生 きる力 を育成す るために,言
語 力 の必要性 がま す ます 高まってい る。'
さ らに,社
会 の高度化,情
報化,国
際化 が進展 し,言
語情報 の量的拡 大 と質 的変 化 が進 んでお り,言
語 力 の育成 に対 す る社会 的な要請 は高 ま ってい る。PISA調
査 で要請 され てい る,文
章や資料 の分析 =解 釈 ・評価 ・論述 な どの能力 は,今
日の社 会 において広 く求 め られ るもので あ る。 ≫ (文部科 学省,2007,HPよ
り) ここでは,次
の三 つ の観 点か ら,言
語 力育成 の必要性 が述 べ られ て い る。す なわち,「言 語 に対す る感性 を磨 き,言
語 生活 を豊 か にす る」(言語 に関す る感 性 ),「 学 習 の面で も, 生活 の面 で も,子
どもた ちの生 きる力 を育成す る」(基礎 的能力 と しての言 語 力),「 文章 や資料 の分析 。解釈 ・評価 ・論述 な どの能 力」(知識 基盤社 会 に要 求 され る言語的 リテ ラ シー)の
二つ の観 点であ る。 いずれ も,現
代 の児童 。生徒 を取 り巻 く社会的状況の変化に 伴 って,新
たに浮 上 して きた教育課題 である。いつ の時代 に も,教
育 の改革 は社会 の変化 に対応 した ものにな るのが必然であるが,現
在 の社 会変化 は,言
語 力 の育成 を教育 に要請 してい る と言 うことがで きよ う。こ うした社会的な要請に答 えるかたちで
,2008年
に中央審議会 よ り『幼稚園,小
学校, 中学校;高
等学校及び特別支援学校の学習指導票領等の改善について (答申)』 (以下,「答 申」 と呼ぶ。)が
出 された。 この 「答 申」において,言
語力の育成 の重要性 が,次
の よう に述べ られている。 ≪知識基盤社会化や グローバル化 は,ア
イデ ィアな どの知識 そのものや人材 をめ ぐ る国際競争 を加速 させ る とともに,異
なる文化 。文明 との共存や国際協力の必 要性 を増大 させ てい る。「競争」 の観点 か らは,事
前規制 社会 か ら事後 チ ェ ック社 会ヘ の転換が行 われ てお り,金
融 の 自由化,労
働 法制 の弾力化 な ど社会経 済の分野 での 規制緩和や 司法制度 改革 な どの制度改革が進 んでい る。 この よ うな社会 において, 自己責任 を果 た し,他
者 と切磋琢磨 しつつ一 定の役割 を果 たす ために,基
礎的 ・基 本的 な知識 ・技能 の習得やそれ らを活用 して課題 を見いだ し,解
決 す るための思考 力 ・判断力・表現力等 が必要 である。(中略)思
考力 。判 断 力 ・表現 力等の基盤 と なる言語の能力の育成に当たっても,発 達の段階に応 じた指導が重要である。》(中 央教育審議会,2o08,p.8)
グローバル化が進み,進
展 してい く社会 を生き抜 くために,思
考力・判断力・表現力等 が必要 とな り,そ
れ らの能力を育成す ることが求め られている。そ して,言
語の能力が, 思考力・判断力 。表現力等の基盤であるとい う考えか ら,言
語の能力 を発達の段階に応 じ て指導 してい くことの重要を,「答 申」は述べている。第
2節
数学教育 における言語活動につ いての課題
本節 では,国
際的 な調 査や 日本 国内で行 われ てい る調査 か ら,言
語 活動 に関す る課 題 を 示す。1.PISAの
自 由 記 述 形 式 問 題 に お け る 日本 の 生 徒 の 課 題OECD(経
済協 力 開発機 構)が
実施 して い る 「生徒 の学習到達度調 査」(以下,PISAと
呼ぶ。)は
,義
務教 育 を終 了す る 15歳 児 を対象 に,将
来生活 してい く上で必 要 とされ る知 識や技能 が,義
務教 育段 階 にお いて,
どの程度身 についてい るかを測 定す る 目的で実施 さ れ てい る。調査 は,読
解 力 (Reading Literacy),数学的 リテ ラ シー (MathematにJ Litcracy),科学的 リテ ラシー (Scたntinc L■cracy)の 三つの分野で構成 され てい る。
PISAに
お いて,数学的 リテ ラシー は
,次
の よ うに定義 され ている。 ≪数学的 リテ ラシー とは,数
学 が世界で果 たす役割 を見つ け,理
解 し,現
在及 び将 来 の個人の生活,職
業生活,友
人や家族や親族 との社会生活,建
設 的 で関心を持 っ た思慮深 ぃ市民 としての生活 において確実な数学的根拠 に基づ き判 断 を行い,数
学 に携 わる能力であ る。 ≫ (国立教育政策研 究所監訳,2007,p.68)
PISAの数 学的 リテ ラシーの問題形式 は,「選択肢 」「選択肢 (複数)」 「求答」「短答」「自 由記述」 の五つ で あ る。2003年
,2006年 ,2009年
のPISA調
査 にお ける 日本 の正答率 とOECD平
均正答率 を出題形式別 にみ る と [表 1.1]の とお りで ある。[表 1.1] 出題形 式 別 の正答 率 日本
OECD
2003 2006 2009 2003 2006 2009 選 択 肢 71.2 68.5 68.8 63.5 62.6 62.0 選択肢 (複数) 54.6 53.2 54.4 49.1 48.2 47.8 求 答 70.4 κυ00 69.1 53.1 52.0 短 答 46.7 43.5 48.1 45.1 44.3 44.1 自由記 述 36,4 34.2 39.0 31.4 30.6 30,1 (国立教育政策研 究所,2010,p.25) 日本の正答率 とOECDの
平均正答率 を比べ る と,2006年
の 「短答」 を除 き 日本の正答 率 は,OECDの
平均正答率 よ り高 くなってい る。 次 に,
日本の無答率 とOECD平
均無答 率 を出題 形式別 にみ る と,[表
1.2]に 示す とお りである。 [表1.2]
出題形式別 の無答率 日本OECD
2003 2006 2009 2003 ′ 2006 2009 選 択 肢 1.8 2.3 2.4 4.0 3.4 3,7 選択肢 (複数) 1.6 1.2 1.5 3.7 2.7 2.9 求 答 5.0 4.5 4.9 7.2 6.7 4υ 短 答 16.1 21.4 18.3 17.6 17,7 17.6 自由記 述 28.0 30.3 28.0 27.2 26.8 26.1 (国立教育政策研 究所,2010,p.84) 「選択肢」,「選択肢 (複数)」 ,「求答」の 日本の無答 率は,す
べ ての実施年 においてOECD
の平均無答率 よ り低 い。 しか し,「 自由記述 」の 日本 の無答率 は,常
にOECDの
平均 無答 率 よ り高 く,30%近
くまで あ る。 この こ とは,自
由記述形 式 の問題,す
なわ ち文章 で答 えな けれ ばな らない問題 に対す る 日本 の生徒の能力不足あるいは,消
極的 な姿勢 を示 して い ると考 え られ る。 4‐以下に
,
日本 の生徒 の無答率が高かった 自由記述形式の問題 は, どの よ うな内容 で あっ たか を見てみたい。′ この問題 に対す る, 日本 お よび
OECD平
均の正答率 と無答率は以下の通 りで,
日本 の 生徒 の無答率が高 い こ とも きるこ となが ら,正
答率 まで もOECD平
均 を下 まわ る とい う シ ョッキングな結果 であ る。 日本 の正答 率OECD平
均 の正 答 率 日本 の無 答 率OECD平
均 の無 答 率 43.3 44.8 29,3 21.1 (国立教育政策研 究所,2004,p.97) 次の問題 は,2003年
に実施 され た,身
長 に関す る問題 で あ る。 身長 若者は背が伸びる.
オランダの1998年の若い男女の平均身長が、下のグラフに示 されています。 身長 190 (cnl) 18() 170 160 150 一 / / ..゛:` │ / ′/
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 1998年の若い男子の平均身長 199ヽ年のおい女子の平均身長 14() 130 年齢 (歳) 身長に関する間2
女子の平均身母につぃて、12歳以降はその増加の割合が低下 しでいます。このことが グ ラフでどのように示 されているか(・説明 して ください。 (国立教 育政策研 究所,2004,p.94)この問題 では,女 子 の平均身長 が 12歳 以降では,増 加 の割合 が低 下 してい ることを,「グ ラフの傾 きが緩や かになる」 な ど
,説
明 を文章 で書 いていかなけれ ばな らない。変化 の割 合 とグラフの傾 きの関係 は,中
学校 での学習内容 であ り,そ
れ ほ ど難 しい こ とを問て いる わけでない。 しか し,こ
の問題 にお ける無答率の高 さは,文
章 で何 か を説 明す ることに対 して 日本 の生徒 が,い
か に消極的か とい うことを示 してい るのではなかろ うか。2,全
国 学 力 ・ 学 習 状 況 調 査 に お け る課 題 文部科学省が実施 してい る全 国学力・学習状況調査 の学力 に関す る調査問題 は,小
学校 第6学
年 の児童 と中学校第3学
年 の生徒 を対象 に,数
学A(主
として 「知識 」 に関す る問 題)と
数学B(主
と して 「活用」 に関す る問題)の 2種
類 の調 査 問題 で構成 されてい る。 国立教 育政策研 究所(2012)は,2007年
か ら2010年
まで の4年
間 の調査結果か ら,中
学校数 学 にお け る課題 と して,「数 と式」「図形」「数量関係 」 の各領域 にお ける課題 と, 領域 を通 しての課題 に分 けて述べている。 ここでは,領
域 を通 しての課題 か ら言語活 動 に 関連 す る課題を 見て い く。(1)記
述 式問題 における課題 全 国学力 :学 習状況調査 の,数
学Bで
は記述式問題 が出題 され てい る。記述式問題 は, タイ プを 「見いだ した事柄 や事実 を説 明す る問題 (事実 。事柄 の説 明)」,「事柄 を調 べ る 方法や手順 を説 明す る問題 (方法 の説 明)」 「事柄 が成 り立つ理 由を説 明す る問題 (理由 の説 明)」 の三つ の タイ プか ら成 る。 国立教 育政策研 究所(2012)は , これ ら二つのタイ プの問題 ご とに,「予想 した事柄 を数 学的 な表 現 を用 いて説 明す るこ と`(事 実 ・事柄 の説 明)」 「問題解決 の方法 を数学的 な表 現 を用 いて説 明す る こ と (方法 の説 明)」 「事実が成 り立つ理 由を説 明す るこ と (理由の 説明)」 │こ課題 が見 られ る と結論 している。①「予想した事柄を数学的な表現を用いて説明することの課題」
(国立教育政策研 究所,2008b,p.4) この問題 では,「2け
た の 自然数 と,そ
の十の位 の数 と,一
の位 の数 を入れ かえた数 の 差 は,9の
倍数 にな る。」 とい う解答 を求めている。正答率は49.2%で
あ り,無
答率 は36.1%で ,誤
答 の タイ プ として は,主
部 と述部 が無 く 「∼は,…
… にな る。」 め形 で書けてい ない ものが ほ とん どであった。例 えば,次
の よ うな誤答であ る。'9の
倍 数 になる。'3の
倍数 にな る。 。十の位 の数 と一の位 の数の和が9にな る。 (国立教育政策研 究所,2008c,p.162)3)直
樹 さんは
,2け たの自然数 と
,そ
の数の十の位の数 と―の位の数を入れかえた数の差
は
,ど
んな数 になるかを考えてみたいと思い
,い
くつかの場合を調べました。
41の
とき
53の
とき
82の
とき
:41-14=27
53--35=18
82--28=54
:これらのことから
, 2け
たの自然数と
:そ
の数の十の位の数と■
│の,位の
数を入れかえた数の差について
,ど
のようなことが予想で
:きますか。
前ページの直樹さんの予想のように
, ││ぃ
,セ
で答えなさい。ただし
,55の
ように
,十
の位の数 と■の位の数が等 しい
数は考えないことにします。
②「問題解決の方法を数学的な表現を用いて説明することの課題」
[解答例1] 蛍光灯 と白熱電球 について,使
用時間 と総費用 の関係 を直線 の グ ラフに表 して,そ
の 交点の座標 か ら,使
用時 間 の値 を読む。 [解答 例2]
蛍光灯 と自熱 電球 につ いて, x時
間使用 した ときめ総費用 をy円
として, yを
xの
一 次 関数 の式 で表 し,連
立方程式 を解 いて,そ
の 文の値 を求 め る。 (国立教育政策研 究所,2009b,p.163) この問題 の正答率 は19.9%,無
答率 は48.5%で
ある。誤答 のタイ プのほ とん どが 「使 用時間 に対す る表 をつ くる。」 の よ うな,用
いるものは書 かれ ていて も,そ
れ を どの よ う に用 いてい くのか を,具
体的 に書 いていない もので あった。 例 えば,次
の よ うな誤答 例で ある。美咲 さんは
,家
の 自熱電球が切れたので
:ている電球 形蛍光灯
(以下
,「
蛍光灯」 とし
てい ます。
′
環 境 にや さ しい とい わ れ ます 。)に
か え よ う と考 え そ こで,
蛍 光 灯 に つ い て調 べ た とこ ろ,次
の こ とが 分 か り ま した。蛍光灯 について分かった こと
◎値 段 が 高 い
◎ 電 気代 が安
:ヽヽ
◎ 寿 命 が長 い
蛍光灯 と白熱電球の比較(ほぼ同じ明るさのもの)0署
鵠
0記
爾譜
1個の値段1000円
150円 電気代(1000時 間)220円
1190円 1個の寿命 10000日 寺間 10oO日寺間美咲 さん は
,蛍
光灯 と白熱電球につ いて
,電
気代 は使用 時 間に とも
な らて一 定 の
1害」
合 で増 え る と して
, 1個
の値段 と電気 代 を合 計 した
総 費用 を比べ てみ ようと思 い ま した。
(国立教育政策研 究所,2009a,p.6)・ グラフの使 用 時 間 を よむ。
・使用 時 間 をxと して
,総
費 用 につ い て の方程 式 をつ くる。 。使 用 時 間 に対す る総費用 の表 をつ くる。③ 「事実が成 り立つ理由を説明することの課題」 臭‐咲 さん は
,家
か ら1200m離
れ た図書館 に本 を借 りに行 き ま した。 行 きは途 中の公 園で友 だち と会 い,し
ば らく話 をしてか ら図書館に行 きました。 図書館 で本 を借 りてか らは,公
園 に寄 らず に行 き と同 じ道 を通 って家 に帰 りま した。1
下の図は
,美
咲 さんが家 を出てか らの
1時間 と
,家
か らの距離の関係 を表
したグラフです。
(m) 1200 1000 800 600 400 200 0 ′\
ノ ノ\
A ′ r\
/
B\
′ ′\
/
\
10 20 30 40 50 60 70 (う ))(3)前
ペ ー ジ の グ ラ フ を見 る と,家
か ら公 園 まで 行 った と きの 速 さ と,公
胚│ か ら図1年館 まで 行 っ た と きの 速 さ とで は,ど
ち らが 速 か っ た か が 分 か り ま す 。 どち ら力'速か っ た で す か 。 下 の ア,
イ の 中 か ら1つ
選 び な さい 。 ま た, 選 ん だ理 由 を説 明 しな さい 。 ア 家 か ら公 園 まで イ 公 園 か ら図 書 館 まで (国立教育政策研 究所,2007a,p.H)
[解答 例] イ を選 択 した上 で, 家 か ら公 園 ま で の速 さは600+10=60
毎 分60m
公 園 か ら図書館 ま で の速 さは(1200¨
600)■5=120
毎 分 120m だ か ら,公
園 か ら図書館 まで の方 が速 か った。 (国立教育政策研 究所,2007b,p.165) …10-イ を選 べ た生徒 は
82.5%で
,そ
の うち理 由を記述 できた生徒 は62.1%,残
りの約20%
の生徒 は,正
しい解答 を選 べていて も理 由を書 けていなかった。 この ことについて,国
立 教育政策研 究所(2012)は,次
の よ うに述べ ている。 ≪問題で問われ てい るこ とについて正答 を導 くことはで きるが,そ
の理 由を数値等 を根拠 に して数学的 に表現す るこ とができない とい う生徒 の実態が明 らか とな っ た。 ≫ (国立教育政策研 究所,2012,p.40)(2)数
学 的に表現 した り:数
学 的 に表現 された ものの意 味 を読み とつた りす ることにお ける課題 ①事柄を数学的に表現することにおける課題 四 角 形 は,1制
1の
向 か い 合 う_ユ つi平行_で そ_の _長 さ■準就 し夕]と き, 平 行IJLl辺 形 に な り ま す(、 下 組 部 を,下
の 図 の 四 角 形ABCDの
辺 と,記
号//1 =を
使 っ て 表 し な さ い 。 (国立 教 育 政 策 研 究所,2008a,p.14) この問題 の正 答 率 は 58.20/0,無 答 率 は 13.1%であ る。 図形 の性 質 を数 学 の 記 号 を用 いて 表現 す る こ とに,課
題 が あ る とい え るだ ろ う。②数学的に表現されたものの意味を読みとることにおける課題
(5)下
のア か ら工 の 中 に, 3α
+4bと
い う式 で表 され る もの があ り
ます。 それ を
1つ
避 びなさい。
ア1辺
α clこ1の
正 三frj形 と1辺
ルcI11の 正 方 形 を,そ
れ ぞ れ 針 金 で1個
ず つ 作 っ た と きの 針 金 の 全 体 の 長 さ(c lll) イ3人
が α円 ず つ 出 し合 っ た お 金 で ,ゎ 円 の りん ご を4個
買 っ た と き の 残 っ た 金 額 (円) ウ3gの
袋 に αgの
吉::物 を 入 れ, 4gの
袋 に わgの
品 ι吻 を 入 れ た と き の 全 体 の 重 さ(g)
工3分
間 に αCの
書1合 で水 が 出 る蛇IJと, 4分
間 に み2の
割 合 で 水 が 出 る 蛇 日 か ら,水
を 同 時 に1分
間 轟 した と きの 水 の 量(2)
(国立教育政策研 究所,2008a,p.3) この問題 の正答率 は,32.7%で
あ る。 この正答率の低 さが示す よ うに,文
字式で表 され た数学的 な意味 を読み取 ることに対 して,大
きな課題 があ る と言 え よ う。 -12‐第
3節
本研究 の 目的
言語力 の育成 は,知
識 基盤社 会化や グローバル化 な どの社 会 の変化 に伴 つて,子
どもた ちの教 育 に新 たに求 め られ るよ うになつて きてい る課題 で あ る。文部科学省 (2008)『 中 学校学習指導要領解説 数 学編』 で は, 自分 の考 えを分か りやす く説 明 した り,互
い に 自 分の考 えを表現 し伝,えあった りす るな ど,授
業 の中で言語活動 を充実 させ ることの重要性 が示 され,現
在,各
学校 で様 々な実践 が行 われ てい る ところで あ る。 しか し,PISAや
全 国学力・学習状況調査 の結果 が示す よ うに, 日本 の生徒は, 自分 の考 えな どを数学的 な表 現 を用 いて,論
理 的 に説 明す ることに課題 があるのが現状 で ある。 本研 究では,数
学 が用 い られ てい る事柄 や主張につ いて他者 に分 か りやす く説明す るこ とや,他
者 の説 明 を批半1的に解釈す る能力 を 「数学的な言語力」 と呼び,そ
れ を中学校数 学 において育成す るための方策 を講 じるこ とを 目的 とす る。 この研 究 目的 を達成す るために,次
の3点
を具体的な研 究作業 とす る。 ① 先行研 究に基づ き,数
学教育 において育成すべ き 「数 学的 な言語 力」 の構成要素 と` 構造 を明 らか にす る。 ② 数 学教育 にお いて,「数 学的 な言語 力」 を育成 す るた め の学習 指導法 と教材 を開発す る。 ③ 実験授 業を実施 し,開
発 した教材 と指導法 の有効性 につ いて調 べ る。第
2章
本研究に関す る理論的枠組み
第
1節
言語 活 動 の意 義
本節 で は,言
語 活 動 の意義 を, シ ョン能力育成のための言語活動」 「数 学 学 習 のた めの言語 活 動 」「数 学 的 な コ ミュニ ケー の二つ の観 点 か ら述べ て い く。 数学 学 習 の た めの言 語 活動 数学教育 にお け る言語 活動 に関す る先行研 究には,数
学 の学習 内容 を理解 させ るた めの 手 だ て と して の言語 活 動 を扱 った ものが数 多 く見 られ る (水谷,2009;江森,200`;鈴木 ,2012;向 井,2012;信 夫,2012)。 ①向井の研究 向井(2010)は,Pirie&Kierenの 超越的再帰理論・ に基づいて,数
学の理解 を促すための 「説明する活動」の特性を整理 している。説明の 目的,対
象,方
法 とい う三つの観点か ら, 数学の理解 を促すための 「説明する活動」を考察 し,そ
こに2種
類 の説明が存在すること を指摘 している。 ≪数学的理解 を促す 「説 明す る活動Jと
は,理
解 の成長 を表 す5つ
の認知対象 ―イ メー ジ,性
質,方
法,特
徴,定
理 一 を明確 に表現す ることで あ り,そ
のためには,5つ
の認知対象 を理解す るための行為 自体 と,行
為 の根拠 とい う異 な る対象 を説 明 す る2種
類 の説 明 ―「記述」と「(狭義 の)説 明」が必要 であ る。≫(向井 ,2010,p.377) 向井 に よる と,数
学の理解 を促 す ための 「説 明す る活動 」 には,事
実や手続 きを説 明す *1理解 を獲得 してい く1つの複雑 な過程全体 をモデル化 した もので, 直線 的 では ない再帰 的現象 と して捉 えて い る。(中原 忠男編集『 算数 明治図書,p70) 数学的理解 を8つの水準か ら成 る, ・数学科重要用語300の基礎知識』,-14-る「記述」と
,事
実や手続 きが成 り立つ理 由を説明す る「(狭義の)説
明」の二つがある。 向井の例 を用いて,「記述」 と 「(狭義の)説
明」を説明す る。8冒
3兵
貧
晃
珊
5贋
言
磐
f:「
と
,d
右の図の よ うに、 この長 さで円周を区切 り、順に、B、 C、 D、 E、 Fをとる。 ③A、 B、 C、 D、E:Fを
順 に結ぶ。 [記述①] [記述②] [記述①]は
,正
六角形 の作図の手順 を,言
葉 で順 序 よ く説 明 してい るもので,作
図方 法の言語 に よる記 述 とな ってい る。 また,[記
述②]は ,作
図 の手順 を図 とイ ラス トで示 した もので,図
的表現 に よる作 図方法 の記 述 となつてい る。′ 下 に示 す 「(狭義 の
)説
明」 で は,上
の [記述①]や
[記述 ②」 の作図方法 によつて, 正六角形 をか くこ とができ ることの根拠 が示 され てい る。 [(狭義)の
説 明] ②信夫の研究 信夫(2012)は,中
学校 1年生 と2年
生 を混成 させ た学級 を編成 し,図
形 の性 質 を説 明す るこ とを課題 と した授 業 を行 って い る。 角 の二等分線 の作 図 を させ た後,「なぜ,こ
の作 図に よつて角 の二等分線 をひ くこ とがで きる とい え るのか」 とい う課題 を,4人
また は 3 人か らな る学習班 で話 し合 わせ,最
後 に各班 ご とに,そ
の理 由を発表 をさせ ている。 学習 班 の話 し合 いでは,多
くの班 で2年
生が1年生 に説 明をす る場面が見 られたが,そ
の うち 一つ の班 における生徒 ど うしの説 明の様子 を分析 している。≪ 「
2年
生 で は証 明 つ てや つ をや って いて,説
明す る と… (長さの等 しい辺 につ い て の説 明。 中略) う― ん これ は証 明 つ て い う勉 強 なん です け ど,
う― ん …要 す る に この 三 角形 (図 1 の △OXP)と
こ この 三 角 形 (△YXP)は
同 じ図形 で あ る とい うこ とを証 明す る と い うこ とをす るんです け ど,_う ― ん,こ
れ合 同条件,こ
の三角形 (△OXP)と
こ の 三 角 形 (△YXP)力
`同 じで あ る とい うこ とを証 明 す る条 件 は …今 回 の条 件 は 3辺 が そ れ ぞ れ 等 しい と言 うの で,ここ (XO)と こ こ
(XY)は
同 じ じや ん 。こ こ (OP)と こ こ
(YP)も
コ ンパ ス で や つ た か ら同 じ じゃ ん。 で,最
後 に こ こ (XP), こ こ の線 を引 くとこの2つ
の三角形 は どつちもこの線 を使 つてい るか ら,こ の線 は,う ― ん,こ
の線 は どっち も一緒で,だ
か ら3辺
がそれ ぞれ等 しくなっていて,合同条件, う― ん…合 同条件 で この2つ
は合 同 つてい うことにな ったか ら,合
同 な この2つ
の 図形 だ とこの2つ
は角の大 き さとか辺 の長 さが全部等 しいか ら,こ
こ とここは同 じ 角度 にな る。」 (生徒 の説 明 の 図 1) ≫ (信夫,2012,p.40)2年
生 の1年
生 に対す る説 明の中で,い
きな り証 明 をす るのでは な く,1年
生に とつて は未習の 「証 明」 とは何 か を,説
明す る場 面があ つた (生徒 の発言 の下線 部 分)。 証 明に 対す る理解 や数 学用語 に対 す る しつか りと した理解 を して い なけれ ば,「証 明 とは何 か」 を相手 に説 明をす るこ とはで きない。「証 明 とは何 か」 を1年
生へ説 明 しなければな らな い状況が,2年
生 に「証 明について」の反省 を促す機会 を与 えてお り,こ
の こ とが「証 明」 理解 の深化 に寄与 してい る と思われ る。 16③ 江森の研究 江森(2006)は
,教
室 内で学習者 た ちによってな され る発言 の流れ を 「コ ミュニケー シ ョ ン連鎖」 と呼び,そ
れ を 「協応連 鎖 」「共 鳴連鎖」「超越連 鎖 」「創 発連鎖 」 の四つ に分類 してい る。 「協応連鎖」 とは,「コ ミュニケー シ ョン連鎖」 の初源 的形態で あ り,メ
ッセー ジ送信 が学習者 の予測 可能 な範 囲内で進行 してい く場合 の 「コミュニケー シ ョン連鎖」であ る。 「共鳴連鎖」 とは,メ
ッセ ー ジの送信者 の意図を受信者 が首尾 よ く解釈す る ことによ り成 立す る場合 の 「コ ミュニケー シ ョン連鎖」 である。「超越連鎖 」 とは,メ
ッセニ ジの受信 者 が,送
信者 が意 図 していた内容以上 の情報 に気づ いた りして,送
信者 の思考 を超越 して い る場合 の 「コ ミュニケー シ ョン連鎖」で ある。「創発連鎖 」 とは,送
信 者 の メ ッセ ー ジ が受信者 の思考 を刺激 して,受
信者 の所有 してい る知識 と結 びつ くこ とに よ り,新
しいア イデ アが創造 され る場合 の 「コ ミュニケー シ ョン連 鎖」 で あ る。特 に,「創 発連鎖」 は学 習者 に とうて新 た な数学的知識 を構 成 して い くときに有効 な コ ミュニ ケー シ ョンの形 態で ある。 以下で は,「創発連鎖Jが
生 じて い る具体的な授業場面 を示す。 江森(2007)は,新
しいアイデアが創発 され た例 として,小
学校5年
生の事例 を取 り上げ てい る。 課 題20軒
の家 と家 を 1本の電話線 で結 ぶ とき,電
話 線 は何 本 必 要 か。 上の課題 に取 り組みやす くす るために, 軒の家 と家 を結ぶ こ とを,児
童A,児
童B, まずは家が3軒
の場合 を生徒 に考 えさせ た。3 児童Cは
,次
の よ うに考 えた。ご―
^―
⊂
D
[図 2.1] 児 童C
[図 2.3] (江森,2007,p.15)児童
Cの
解 答 答 え190本 2xO.5〓1 ―3xl,0=3
4xl.5=6
5×2.0=10 6×2.5=15
20× 9.5 次に,本
題の20軒
の場合に取 り組んだ ところ,児
童Cは
,以
下の ような考 え方を用い て,答
えの 190本 を導き出 した。 (江森,2007,p.17) 児童Aは :3軒
の場合 で児童Cが
用 いた [図 2.3]か ら 「3軒
の場合には,既
にあ る2 つの家 を結 んでい る1本
の線 に2本
増やす」 とい うアイデ ア を思 いつ き, これ を4軒
,5
軒,6軒
の場合へ と適用す ることで,以
下 の よ うに答 えを出 してい る。 児童Aの
解答 例 えば,家 が4つ
の とき,Aの
家 か らは3つの電話線 がつ ながれ ている。4け
んの時,5 けんの時,6け
んの時 とや ってい くと,6,10,15と
い うかず が出て きます。つま り,4,5
とい う差があるわけです。だか ら,4け
んの時 と5け
んの時 との差 をつ なげてい くと,20 けん の時 は 190本に な るの です。A
4軒の場合 5軒の場合 6軒の場合 (江森,2007,p.18) 児童Cも ,家
を多角形状 に並べ る方法 を用いてい るが,児
童Aが
思いつ いた 「3軒
の 場合 は2軒
の場合 (1本)+2本
になる。」 とい うアイデアは持 っていなかった。つ ま り, 児童Aの
アイデアは,児
童Cの
「家 を三角形状に並べ る」 とい うアイデアに触発 され て, 創発 した もので あ る。 …18-2.数
学 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 育 成 の た め の 言 語 活 動 『 中学校 学習指導要領 解 説 数 学編』(文部科学省,2008)で
は, 自分 の考 えを相 手 に よ りよ く伝 えることや,伝
え られ た情報 を正確 に読み取 るこ と,い
わ ゆる数 学的な コ ミュ ニケー シ ョン能力の育成 に重点 をおいた授業の取 り組みが強調 され ている。 久保(1998)は,
日々の数 学授 業 にお いて コ ミュニ ケー シ ョンに関 わ る活 動 を,「数 学的 コ ミュニケー シ ョン活動」 と呼び,以
下の よ うに説 明 して い る。 ≪数学 を使 って 自分 の考 えを,友
だ ちが納得 できるよ うに理論 的に表現す るこ とに よ り,自
分 の考 えを よ り深 めてい く活動。 さ らに, これ が生徒 間にお いて積極 的に 行 われ,相手 の考 えを理解 しよ うと努 めなが ら友 だ ち同士 の連 帯意識 が高まる中で, 生徒 の数学の知識や考 え方 が深 め られ,生
徒 に とつて新 しい数 学がつ くられ て い く 活動。 》(久保,1998,p.4)
そ して,久
保(2008)では,数
学的 な コ ミュニケー シ ョン活 動 を活 発 に行 わせ るための方 策 として,「発 間 の吟 味」,「説 明す る力 を培 うた めの問題 提 示」,「分類す る活 動」,「図的 表現 の工夫」,「誤 った 内容 の提 示 」,「現 実的 な事 象 にお け る考察Jを
挙 げ て いる。 以下 に,特
徴的 な「図的表現 の工夫」と「誤 った内容 の提 示」を,久
保 の例 を用 い て説明す る。図 的 表 現 の 工 夫 右 の 図 で
,消
防 車 の は しごの長 さを求 め るた めの方 法 を,説
明 しな さい。 [図 2.4] (クに保, 2008, p.70) この問題 では,三
平方 の定理 を用 い るた めに直角三角形 を考 え るこ とにな るが,図
の中 に直角が示 され て いないた め,「 どこが直角 なのか」 とい うこ とにつ いて,生
徒 同士 の話 し合 いや説明が生まれ る と考 え られ る。 誤 つた 内容 の提 示 右の図は,直
方体のよ うかんを斜めに切つた図 です。 [図 2.5] H (久保,2008,p.70) 久保(2008)によれ ば,上
記 の内容 を提示す る と生徒 た ちの中か ら,「問題 がかかれ てい ない」,「 この図 は正 しいのだ ろ うか」 とい うつぶや きが聞 こえは じめ,「この図が正 しい のか」 とい う課題 に対 して,生
徒 同士 の数学的 な コ ミュニケー シ ョン活動 が開始す る。つ ま り,教
師 が意 図的 に誤 つた 内容 を生徒 に提示す るこ とで,そ
の内容 が正 しい と思 う生徒 には正 しい とい える根拠 を,正
しくない と思 う生徒 は正 しくない とい える根拠 を説 明 させ る活動 を展 開す るこ とがで きるので あ る。 …20‐第
2節
数学的 なコ ミュニケー シ ョン能 力の構 成要素
本節 では,数
学教育 にお け る言語活動 に関わる先 行研究 の 中で も, コ ミュニケァシ ョン 能力 に焦点 を当ててい る もの,す
なわち金本(1998)の「数学的 コ ミュニケー シ ョン能力」, 長崎 ら(2008)の 「算数 ・数 学で考 え合 う力」,熊
倉 ら(2009)の 「数学的な表現力」 を吟味 し,そ
れ らの挙 げ る数学的 なコ ミュニケー シ ョン能力の構成 要素 を整理,統
合 してい く。1,金
本 の 「数 学 的 コ ミ ュ ■ ケ ー シ ョ ン能 力 」 金本(1998)は,「数 学 的 コ ミュニ ケー シ ョン能力」 を,次
の よ うに述べ,そ
れ を大 き く 四つの内容 に分 けて る。 ≪数学的 コ ミュニケー シ ョン能力 とは,「数理 的 な事 象 に関 わ るコ ミュニケー シ ョ ン活動 をすす めてい く能力」 として考 える。 ≫ (金本,1998,p.32)
0算
数 ・数 学 の 多 様 な表 現 ・表 記 が使 え る。 ① 子供 た ちの形式 的 で ない直感 的 な語法 を,数
学の抽 象 的な言語 。記号 。表現 に結 びつ けるこ とがで きる。 ② 数 学的 な考 えの多様 な表 現 (具体物 による もの,絵
や 図 に よるもの,記
号や 口頭 に よるもの等)を
結 びつ け るこ とができる。 ○考 えの伝達や討議 な どの交流ができる。 ③ 教師 の説 明が理解 で きる。 ④ 自分 の考 えや方法 を説 明す るこ とができ,ま
た:友
だ ちの説 明を理解 す るこ とが で きる。,
⑤ 筋道 をた てて意 見 をい うこ とがで きる。 ○数学的表 現の よ さが理解 で き る。│
⑥ 多様な表現の違いから,考
え方や方法の違いやよさに気づ く。 ⑦ 数学的表現のよさに気づき,そ
のよさを活用できる。 ③ 数学的表現にある約束や規則を使って筋道立てて考えを進めていくことができ,さらに
,そ
の重要性 を理解 できる。 ○話 し合 いや議論 の大切 さへの適切 な態度 が形成 されてい る。 ⑨ 根拠や合理性 な どを問わな けれ ばな らない とい う意識 を もつ。 ⑩ 考 えを深 めた り,表
現 を的確 に した りし,ま
た,こ
れ らを発 展 させ るために も, 議論 をす るこ とには価値 が ある とい う意識 を もつ。 (金本,1998,p.34) 以下に,四
つ の内容 につ いて,そ
れ らが具体的 に どのよ うな こ となのか を示す。 「算数・数学の多様 な表現・ 表記が使 える」 金本 ら(1996)は,埼
玉大学教育学部付属小学校5年
生,単
元 「整 数 の性 質 」 の授業 を分 析 してい る。以下 に,そ
の授業 で提示 され た問題 と,児
童 が解法 の説 明に用 いた表現 を示 す。 【問題】 2拍 子の歌 と3拍 子の歌の指揮者の手が同時にあがることがあつていいのだろうか。<説
明1:線
分図を用いての説明>
手の挙がる時だけを数直線で表現 した。③
②
<説
明2:表
を用 い て の説 明>
○ ○ ▲○ ○ ▲ ○ ○ ▲○ ○ ▲ ○ ▲○ ▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ ▲○ ▲ ‐ 22-(▲ :手が挙 が る ところ)く説 明
3:式
で 表 現>
③3+3+3+3+3+
6 ②2+2+2+2+2+2
6<説
明4:図
で表 現>
⑥,4,2
これ らの様 々な表現 に対 して, は,児
童 が同 じ考 え方 に対 して,2,5
児童 は 「考 え方 は同 じだ」 と発言 してい る。 この授 業で 多様 な表 現方法 を考 えだ してい る。 「考 えの伝達や討議 な どの交流がで きる」 金本 ら(1994)では,埼
玉大学教育学部付属小学校2年
生,「3け
た の引き算」の授 業 を 分析 して い る。 以 下 に,提
示 され た課題 と,教
師 と生徒のや りと りを示す。 【問題】 3け たのひきざんで,2回
くりさが りがあるけいさんもんだいをつ くりま しよう。 (作成 した問題 を発表 し,作
り方 を説 明す る。) ≪T
Cl 2回繰 り下が りの ある問題 を ど うつ く りま 引かれ る数 の一 の位 と十 の位 を5よ り小 さ したか。 くし,百
の位 は5よ
り大 き くし,引
くし,百
の位 は引かれ る数 よ り引 く T C2 く数 の十 の位 と一 の位 は引かれ る数 よ り大 き 数 を小 さ くす る。 今 の意 見 につ いて何 か質問,付
け足 しが あ ります か。 質 問なんです け ど,引
かれ る数 と引 く数 の一の位 と十の位 を5よ
り小 さ く しなくても引く数の方を大きくすればいい と思いますも
T:み
んなは どう思いますか。C3:引
かれ る数を5よ
り小 さくしな くても,引
かれる数がもし7だ
った場合,引
く 数が,7よ
り大きければ大丈夫だ と思います。 ≫ (金本,1994,p.21)
C2の
発言は,C2の
説1明を十分に理解 し│た上で,Clの
アイデアを自分なりに修正 して いる。 さらに,C3の
発言は,C2の
アイデアをひきつぎ,引
かれる数が5よ
り小さくなく ても大文夫なことを引かれる数が7の
場合 を例にして説明 している。 この場面では,複
数 の児童による考えの伝達や討議などの交流が上手に機能し,問
題の解決へと徐々に接近 し ている。 「数学 的表現の よさが理解で きる」 山田(2009)は,小
学校 の―教科書か ら以下の例 を挙げ,数
学的表現 のよさが理解 できる とはど うい うことかを解説 している。 24-(山田,2009,p.15)
一
一
・
●
T
一一
●
●
・●
●
うさぎ 犬 ﹁ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ 、 ︱ ︱ ‘ ,︱ ︱ ︱鷹主
_2.15¨
4__1
ね こ
うま
(山田,2009,p.15) ≪ 「表現 アでは,数
字 が数 の大小 を表 してい る。 一 方,「表 現 イ」 で は,●
の個数 が,数
の大小 を表 してい る。 も しここで,「表 現イ」 しかな けれ ば,そ
の表現 の 「よ さ」 とい うものが見 えて こない。「表現 ア」が あ る ことに よって,「表現 イ」 の も つ,「形状 か ら数 の大小比較 がわか りやす い」 とい う「よ さ」 に気付 くことができ るので あ る。 また,逆
に,「表 現イ」 が あ る こ とに よって,「表現 ア」 の もつ,「簡 単 にか け る」 といった 「よ さ」 に気付 くことがで きる。 ≫ (山 田,2009,p.16) 「話 し合 いや議論の大切 さへの適切な態度が形成 されている1 金本(1998)は,話
し合いに対す る適切な態度 を形成す るために,次
の三つが重要である としている。 ① 「学習活動 の自立 と友だちの考えを聞 くことの意識」 ② 「考 えの交流への意識 とそのことの重要性の意識」 ③ 「話 し合いや議論 の大切 さへの意識 とその価値の捉 え方」2.長
崎 らの 「算 数 日数 学 で考 え合 う力」 長崎 ら(2008)は ,「算数 ・数学 の力」 として 「算数 。数学 を生み 出す 力」「算数・数 学 を 使 う力」「算数 ・数 学 で表 す 力 」「算数 。数 学 で考 え合 う力 」 の 四つ の力 に分類 を してい る。 その中の,「算 数 ・数 学 で考 え合 う力 」 は,こ
こで述べ てい る数 学的 な コ ミュニ ケー シ ョン能力 と結びつ くものがあ る と考 える。「算数 ・数学 で考 え合 う力」は大 きく三つの 力 に分 け られてい る。(4)算
数 ・数学 で考 え合 う力 ①算数・数学で説 明す る力 【小 中高 を通 して 目指す力 】1)説
明 :自 分で考えた結果や過程,他
人の考えなどを目頭や記述でわかるよ うにときあか すこと 【いずれ かの段 階 で 目指す 力,関
連す る力 】2)結
果 の説 明 :考 えた結果 を 回頭や記 述で分 か るよ うに ときあかす こ と3)過
程 の説 明 :解 き方や考 え方や証 明 な どの過程 を 口頭 や記述 で分か る よ うに とき あかす こと4)言
い換 えに よる説 明 :他人が説明したことを自分の言葉でもうT度言い換えて日頭や記述で分かるように ときあかすこと ②算数・数 学で解 釈す る力 【小 中高 を通 して 目指す力 】1)解
釈 :他 人 の説 明 を聞いてその意味 を読み とるこ と 【いずれ かの段階 で 目指す力,関
連す る力 】2)結
果 の解 釈 :結 果 の説 明 を聞いてその意味 を読み とる こと3)過
程 の解 釈 :過 程 の説 明 を聞いてその意味 を読み とる こと4)批
判 的 な解 釈 :説 明 に絶 えず疑 い を もつて検討す るな ど批判 的 にそ の意味を読 み とる こと ③算数・数 学で話 し合 う力 【小 中高を通 して 目指す力 】 -26‐1)真
意 の確認 :お 互 いの考 えの真意 を確認す ること2)話
し合 う :集 団での話 し合 いを通 して,個
人や集団 の考 えを よ りよい ものに して い くこ と 【いずれ かの段 階 で 目指す 力,関
連す る力 】3)洗
練す るこ と :集 団での話し合いを通して,個人や集団の考えを算数・数学的により価値があるものにして いくこと4)考
えの評価 :集団での話し合いを通して,個人や集団の考えの算数,数学的な価値を判断すること5)考
えの修 正 :集団での話し合いを通して,個人や集団の考えをより算数,数学的に価値があるもに修正して いくこと6)批
半U的考察 :集団での話し合いを通して,個人や集団の考えに絶えず疑いをもつて検討すること (長崎,2008,p14,下
線 は筆者) 上記 に示 した下線 以外 の要素 は,金
本 の 「数学的 な コ ミュニケー シ ョン能 力」の二つ 目 の内容 で あ る,「考 えの伝 達 や討 議 な どの交流 が で きる。」 と類似 した 内容 で ある。 そ こ で以下では,金
本 の 「数 学 的 コ ミュニケー シ ョン能 力」 の 中 には見 られ ない,「批判 的 な 解釈 」,「考 えの評価 」,「考 えの修正」,「批判的考察 」 を具体 的 に示 す。 「批判的な解釈」 長崎 ら(2008)では,中
学 1年生 「一次方程式の利用」の授業にゃける生徒の発話を用い て,「批半J的な解釈」力`どのよ うなものかを例示 している。 【課題】 1000円 でお菓子 を買います。 120円 のチ ョコレー ト1つとポテ トチ ップを3袋買つた ら,お
釣 りが 310円 で した。ポテ トチ ップ 1袋 の代金はい くらで しょう? 式:1000=120+3x+310
≪T:そ
う, これ (1000)は出 したお金。じゃあ, これ (120)は ?S:チ
ョコ レー トT:こ
れ はチ ョコ レー トって分か るよね。 じゃあ,こ
れ(3x)?こ
れは何 だ?S
T
S
T
S
うん と,ポ
テ トチ ップ3袋
分。 西 田 さんいわ く, これ はポテ トチ ップ3袋
分。 では, これ (310)は ? ポテ トチ ップ 小 玉 さん。 これ でいいんです か?ん ?ち
ょっ と違 う。 じゃあなお して。 310はおつ り。≫ (長崎 ら,2008,p.96)
(T:教
師,S:生
徒 を表 す。) 数 は Ψ で,1人
に6個
ずっ だ と部員は は 半 にな ります。 部員 の数 は等 しいので,い ‐10)=(χ
+18)と
ぃ ぅ式 が成 り立 ちます。 これ を解 いてx=150(個
)と
な ります。 え― っ,部
員 の数 を xと す る方 が簡単 だ よ。 それ で は,S5説
明 してみて。5x+10,6x-18と
表 はい。部員 の数 を xと す ると,キ
ャンデ ィの数 は, され るので,5x+10=6x-18と
い う式 が成 り立 ちます。 これ を解 いて,x=28(人
)と
な ります。 西 田 さんは,式
の 中の310をポテ トチ ップの代金 と間違 って発言 してい る。 これ に対す る教師の問いかけ 「これでいいんですか?」 に応 じて,小
玉 さんは,310は
おつ りを表 し てい る と,西
田 さんの間違 い を修正 してい る。他者 の説 明 を うのみ にせず,絶
えず疑 いを もつて聞 き,そ
の意味 を読 み取 ることが,「批判的 な解釈」で ある。 「考 えの評価」 清水 ら(2013)に紹介 され てい る中学校 1年生 「一次方程式」 の授業 において,生
徒 によ る 「考 えの評価 」がな され てい る,次
の よ うな場面 がある。 【生徒が作つた問題] 部活の大会で,保
護者か らキャンデ ィの差 し入れがあ りま した。1人
に5個
ずつ配 つ た ら 10個 余ったので,1人
に6個
ずつ配 りなお した ところ 18個 足 りませんで した。 キ ャンデ ィは何個差 し入れ られま したか。 ≪ S4 S5T
S5 つ 4よって
,求
め るキャンデ ィの数 は,5×
28+10=150個
にな ります。T:み
んなに質問です。S4と
S5の
どち らが簡単だ と思 いますか?あ
るいは,ど
ち らが優れ てい ると思レヽますか?S6:私
は,S5の
方 が よい と思 います。S4の
解法 は,立
式 をす る ときに,.頭の中 で一度部員 の数 を計算 してか ら式をつ くらない といけないか らです。S5の
方は
,問題文どおり式をつくつていけばよいので簡単だと思います。≫
(清水ら
, 2013, p.67)(T:教
師,S:生
徒 を表 す 。)S6は
,キ
ャンデ ィの数 をxと して立式するよりも,部
員 の数をxと して立式する方が, 簡単であると,S5の
考え方の価値 を正 しく評価 している。 「考 えの修正」,「批判 的考察 」 長崎 ら(2008)に紹介 され てい る,小
学校3年
生 「あま りの あるわ り算」の授業の発 話を 用 いて,「考 えの修 正」,「批判 的考察」が どの よ うな ものか を述 べ る。 児童 が取 り組 んだ課題 は,25個
のおは じきを2人
が交互 に取 つてい く。1回にlγ 5個 まで取 って よい。最後 に取 った人が負 けであるとい うゲー ムにおいて,必
勝 法 を考 えてい く。 子供 た ちは,「後攻 が先攻 の取 つたお は じきの数 と合 わせ て6にな る よ うに取 ってい く。」 が必勝法で,そ
の構造 を式 で表す と,「6× 4あま り1」 のわ り算だ とい うこ とに気付 く。 その後,「6×4な
ら4×
6で
も同 じ計算結果 にな る」 とい う発言 が な され,以
下の対話 が くりひ ろげ られ る。CH7
CH8
T
CH9
6×4だ
と24にな るね。 で も,4×
6で
も24にな る よつて言 って くれた のね。 な るはな るけ ど 先 生,先
生CH9さ
ん これ は,全
部4回
戦 しかな くて,計
算 マ ンが2を とって,次
に誰かが2 を とった ら,そ
れ で次 に,計
算 マ ンが3を とつた ら,誰
かが 3と つた ら,T
T
C120T
C121T
C122 4×6,24に
な るん じゃないか と思 う。 意 味分 か つた?CH9さ
んが,(言
ってい るのは)計
算 マ ンが2こ
とつた ら,誰
かが2こ とるつて言 つてい るのね。 次 は?計
算 マ ンが ?3こ
とった ら,1こ
で。 それで,次
は,例
えば 1こ とつた ら,3こ
とつ て。それでず つ とや つてい くと,6回
戦 にな って,ま
た,同
じふ うにな る。 同 じふ うにな る。意 味わか った?C121く
ん。 4×6だ
と答 えは,同
じになるんです け ど,6回
戦 で4こ まで しか とれ ない。6回
戦 で4こずつ とつて もいい?だ
め ?6回
戦 で 1こ ∼4こまで とっていい ってい うルール だつた ら 4×6で
も いい。 ≫ (長崎 ら,2008,p.70)(T:教
師,S:生
徒 を表 す。) 「6×4で
も4×6で
も計算結果 は24に
なる」 とい う発言 に対 して,CH7は
納得 がで きず,そ
れ らの意 味 が同 じではない ことを検討 している。 この よ うに,他
者 の説 明に対 し て,疑
い を持 つて聞 き,そ
こに誤 りがないかを検討す ることが 「批判 的考察Jで
あ る。 また,C122は
,「お は じき を 1回 に5個まで取っていい」とい うル ール を変 えることで,4 ×6で
表 す こ とがで きるこ とを指摘 してい る。ただ単 に計算結果 に着 目す るのではな く, 式の構造 に着 日しなおす とい う,数 学的 に価値のあ る考 えに修正す ることが「考 えの修正」 である。3.熊
倉 らの 「数 学 的 な表現 力」 熊 倉 ら (2009)は,数
学 的 な表 現 につ いて,そ
れ が現 れ る文 脈 と表 現 の手段 を,次
の よ う に分類 して い る。-30-_
≪<文
脈>
A.数学 的 に考 察 した こ とを人 に説 明す る B,数 学的 に考察 した こ とを 整理 しま とめ る C.数 学的 に 思考 を進 め,理
解 す る<手
段>
a,式・記 号 。図 ・ グ ラフ等 を使 う b.言語 を使 う 数 学 的 な表 現 力 の 内容 を,「上 記 の 文 脈 で,上記 の手段 を用 い て表 す 力 」 と捉 え た。 》 (熊倉 ら,2009,p.33,34) 熊 倉 らは,数
学 的 な表 現 力 を,こ
れ ら三 つ の文脈 で二つ の 手段 を用 いて表 す 力 と大 略的 に規 定 した 上 で,そ
れ を次 の二 つ の力 に類 別 して い る。 ア.数
学的 に考察 した こ とを整理 しま とめる力 イ.数
学的 に考察 した こ とを人 に説 明す る力 ウ.人
が数学的 に考察 した ことを読み取 り,評
価 す る力 (熊倉 ら,2009,p.34) 上のア とイは,金
本の 「数学的 コミュニケーシ ョン能力」の内,「考えの伝達や討議な どの交流ができる。」 と, ウは長崎 らの 「③算数・数学で話 し合 う力」の 「考えの評価」 や 「批判的考察」 とほぼ同 じ内容である。4.数
学 的 な コ ミュニ ケー シ ョン能 力の構 成要 素 金本(1998)の 「数学的 コ ミュニケー シ ョン能力」,長
崎 ら(2008)の 「算数 ・数学で考え 合 う力」,熊
倉 ら(2009)の 「数学的な表現力」のそれぞれの構成要素 を,そ
の内容 に よつ て整理す る と,[表
2.1]のよ うにな る。陵 2.』 金本らの「数学的コミュニケーション能力」 長崎らの「算数・数学で考え合う力」 熊倉らの 卿 な表現力」 ○算数・数学の多様な表現 。表記が使 える。 ①子供たちの形式的でない直感的な語法を,数学の抽象的な言語'記号。 表現に結びつけることができる。 ②数学的な考えの多様な表現(具体物によるもの,絵や図によるもの,記 号や日頭によるものり を結びつけることができる。 ○考えの伝達や討議な どの交流が できる。 ③ 教師
=潮
力鴻孵できる。 ④ 自分の考えや方法を説明するこができ,また,友だちの説明を 理解することができる。 ⑤ 筋道をたてて意見をいうことができる。 ①-1
調1 ①-2
結果の説明 ①-3
雌 の説明 ①-4
言い換えのによる説明 ②-1
カ駅 ②-2
結果の解釈 ②-3
過程の解釈 ③-1
真意の確認 ③-2話
し合う ③-3,爛
けること ア.数学的に考察したことを整理しま とめる力 イ.数 学的に考察したことを人に説明 する力 ○数学的表現のよさが理解できる。 ⑥多様な表現の違いから,考え方や方法の違いやよさに気づく。 ① 数学的表現のよさに気づき,そのよさを活用できる。 ③数学的表現にある約束や規則を使って筋道立てて考えを進めていくこと ができ,さらに,その重要性を理解できる。 ○話 し合いや議論の大切 さへの適切な態度が形 成 されている。 ③根拠悧 Lなどを問わな│力1ばならないという意識をも2
⑩考えを深めたり,表現を的確にしたりし,また,これらを殉民させるた めにも,議論をすることには価値があるという意識をも■ ②-4
批判的な解釈 ③-4
考えの評価 ③-5
考えの修正 ③-6
批判的考察 ウ。人が数学的に考察したことを読み 取り,評価する力 32第
3節
「数学的な言語 力」の枠組み
本節 では,前
節 までの分析 を も とに,数
学教育 において育成すべ き 「数学的 な言語 力」 の枠組み を構築す る。「数 学的 な言語力」 は,[表
2.2]に 示す(I)∼ (V)の
要 素 か ら 構成 され る。 [表 2.2](I)コ
ミュ ニ ケ ー シ ヨン の摘 切 な態 度 が 形 成 され て い る_(熊
度) 表現 を的確 に して相 手 を納得 させ た り,根
拠 や合理性 等 を問い なが ら相手の意 見や 考 えを聞 く力 を発 展 させ るためには,コ
ミュニケー シ ョンをす るこ とに価値 がある とい う意識 を もつ。 (Ⅱ)算
数 ,数学 の多様 な表 現 ・表 記 が使 える。(表現 ・表 記) 自分 の考 えを数 学 の言語 。記号 。表現 に結 びつ け,多
様 な数学 的 な表現 を用いて表 す ことがで きる。 (Ⅲ)数
学的表 現 の よ さが理解 で きる。(数学的表 現 の よ さ) 多様 な方法 の違 いに気 づ き,数
学的表現 の よ さを理解 して,そ
の よさを状況に合 わせ て活用す ることがで きる。 (Ⅳ)考
えや 情 報 の 伝 津 と解 釈 な ど.他
者 との 交 流 が で き る.(交
流) 説 明 を聞 いた り読 んだ りす る こ とで,そ
の意味 を読み とることができる。 また, 自分 の考 え,意
見,方
法,情
報等 を,数
学用語 。記号 。表現 を用 いなが ら筋道 立 てて, 日頭 や文章 で説 明す る こ とがで きる。(V)他
者 の説 明 を評 価 し、 自己 の説 明 に反 映 させ る こ とが で き る。(評価) 他者 の説 明を評価 し, 自己の説 明 をよ り良い ものに して い くこ と。 これ らの構 成 要 素 の 間 に は,[図
2.6]に示 す 階層 性 が考 え られ る。 す な わ ち,下
に あ る構成要素 がその上 の基礎 となつてお り
,階
層が上が るにつれ て,よ
リレベル の高い言語力 が要求 され る。ζ馘
/¨
嘉\
/数
学的
表
現のよさ\
/
表現・
表記
\
/
態度
\
[Eコ 2.6] 「数学的な言語力」の五つの構成要素について,以
下に説 明 をす る。 「(I)コ
ミュニケー シ ョンの適切 な態度 が形成 され ている。(態度)」 コ ミュニケー シ ョンの適切 な態度 を大 き く捉 える と,伝
え る側 の態度 と受 け取 る側 の態 度 に分 け ることがで きる。伝 える側 の態度 としては,相 手が理解 しやす い説 明 を行 つた り, 相手 の反応 を見 なが ら説 明 を行 うな ど,相
手の ことを考 えて伝 える態度 が大切 であ る。 も しも,説 明を してい る時 に相手が理解 していない様 に感 じた ら,も う一度説 明 をや り直す, 説 明の方法 を変 えて伝 える とい つた姿勢 を持つ こ とも大切 で あ る。 受 け取 る側 の態度 とし ては,相
手 の説 明 を最後 まで真剣 に聞 くこ とや,相
手 が何 を伝 えよ うとして い るのか を解 釈 しなが ら聞 くな ど,相
手 の こ とを意識 して メ ッセ ー ジを受 け取 る態度 が必 要 にな る。相 手の説 明 を解釈 しなが ら聞いていて,分
か らない こ とがあ る場合 は,相
手 の説 明を最後ま で聞いた後 で,解
釈 で きなか つた こ とを伝 え,も
う一度説 明 を行 って も ら うな どして,相
手の伝 えたい こ とを解釈 してい こ うとす る姿勢 を持 つ ことも大切 で あ る。 こ うした,伝
える側 の態度 と受 け取 る側 の態度 は,コ
ミュニケー シ ョンを行 う上 で基礎 とな るものであ り,こ
れ らの態度 が身 につ いてい る状態が,コ
ミュニ ケー シ ョンの適切 な 態度 が形成 され てい る状態 であ る。 34¨「(Ⅱ