第 2章 本研 究 に関す る理論 的枠組 み .…
第 3節 「数学的な言語力」 の枠組み .…
本節 では
,前
節 までの分析 を も とに,数
学教育 において育成すべ き 「数学的 な言語 力」の枠組み を構築す る。「数 学的 な言語力」 は
,[表
2.2]に 示す(I)〜 (V)の
要 素 か ら 構成 され る。[表 2.2]
(I)コ
ミュ ニ ケ ー シ ヨン の摘 切 な態 度 が 形 成 され て い る̲(熊
度)表現 を的確 に して相 手 を納得 させ た り
,根
拠 や合理性 等 を問い なが ら相手の意 見や 考 えを聞 く力 を発 展 させ るためには,コ
ミュニケー シ ョンをす るこ とに価値 がある という意識 を もつ。
(Ⅱ
)算
数 ,数学 の多様 な表 現 ・表 記 が使 える。(表現 ・表 記)自分 の考 えを数 学 の言語 。記号 。表現 に結 びつ け
,多
様 な数学 的 な表現 を用いて表 す ことがで きる。(Ⅲ
)数
学的表 現 の よ さが理解 で きる。(数学的表 現 の よ さ)多様 な方法 の違 いに気 づ き
,数
学的表現 の よ さを理解 して,そ
の よさを状況に合 わせ て活用す ることがで きる。(Ⅳ
)考
えや 情 報 の 伝 津 と解 釈 な ど.他
者 との 交 流 が で き る.(交
流)説 明 を聞 いた り読 んだ りす る こ とで
,そ
の意味 を読み とることができる。 また, 自分 の考 え,意
見,方
法,情
報等 を,数
学用語 。記号 。表現 を用 いなが ら筋道 立 てて, 日頭 や文章 で説 明す る こ とがで きる。(V)他
者 の説 明 を評 価 し、 自己 の説 明 に反 映 させ る こ とが で き る。(評価)他者 の説 明を評価 し, 自己の説 明 をよ り良い ものに して い くこ と。
これ らの構 成 要 素 の 間 に は
,[図
2.6]に示 す 階層 性 が考 え られ る。 す な わ ち,下
に あ る構成要素 がその上 の基礎 となつてお り
,階
層が上が るにつれ て,よ
リレベル の高い言語力 が要求 され る。ζ馘 /¨ 嘉\
/数 学的 表 現のよさ\
/ 表現・ 表記 \
/ 態度 \
[Eコ 2.6]
「数学的な言語力」の五つの構成要素について
,以
下に説 明 をす る。「
(I)コ
ミュニケー シ ョンの適切 な態度 が形成 され ている。(態度)」コ ミュニケー シ ョンの適切 な態度 を大 き く捉 える と
,伝
え る側 の態度 と受 け取 る側 の態 度 に分 け ることがで きる。伝 える側 の態度 としては,相 手が理解 しやす い説 明 を行 つた り, 相手 の反応 を見 なが ら説 明 を行 うな ど,相
手の ことを考 えて伝 える態度 が大切 であ る。 もしも,説 明を してい る時 に相手が理解 していない様 に感 じた ら,も う一度説 明 をや り直す, 説 明の方法 を変 えて伝 える とい つた姿勢 を持つ こ とも大切 で あ る。 受 け取 る側 の態度 とし
ては
,相
手 の説 明 を最後 まで真剣 に聞 くこ とや,相
手 が何 を伝 えよ うとして い るのか を解 釈 しなが ら聞 くな ど,相
手 の こ とを意識 して メ ッセ ー ジを受 け取 る態度 が必 要 にな る。相 手の説 明 を解釈 しなが ら聞いていて,分
か らない こ とがあ る場合 は,相
手 の説 明を最後ま で聞いた後 で,解
釈 で きなか つた こ とを伝 え,も
う一度説 明 を行 って も ら うな どして,相
手の伝 えたい こ とを解釈 してい こ うとす る姿勢 を持 つ ことも大切 で あ る。
こ うした
,伝
える側 の態度 と受 け取 る側 の態度 は,コ
ミュニケー シ ョンを行 う上 で基礎 とな るものであ り,こ
れ らの態度 が身 につ いてい る状態が,コ
ミュニ ケー シ ョンの適切 な 態度 が形成 され てい る状態 であ る。34¨
「(Ⅱ
)算
数・ 数学 の 多様 な表 現 ・ 表 記 が使 え る。(表現 口表 記)l算数・数学の多様な表現・表記が使 えるとは
,様
々な事象における数量やそれ らの関係 を式,図 ,表 ,グ
ラフな どの数学的な表現・表記を用いて表す ことができることである。★ 一
課 題
(澤田利 夫
,坂
井裕 ほか,2012,p.88)(解答例)
1+3× x=1+3x
(答)1+3x本
正方形 をx個つ くるときに必要 なス トローの本数が,上の図でス トロー を「左端 の1本」 と 「コの字型」 に分 けることで
,xを
用 いた式 で表現 され てい る。す なわ ち,(左
端 の 1 本)+(コ
の字型 に使 われ ているス トローの本数3本)× (正方形 の数x)=1+3x(本
)。「(Ⅲ
)数
学 的表現の よさが理解 で きる。(数学 的表現の よ さ)│中学校2年生 の教科書 の中に
,文
字式 を用 い る よさを実感 で き る題材 が取 り上 げ られ て い る。2人は,世界一周道路 について話 しています。
例え│よ 地表からlm離れていたら 赤道の長さよりもどのくらい
2人は、赤道のまわ りに、地表か らlm離してっ くった世界一周道路 と 赤道 の長 さの差 を考 える ことに しま した。
(岡本 和 三夫 ほ か, 2012, p.11)
けいたさんは,地球の半径が6378000mであることを使って,
次 のように求 めま した。
一月道路の長さは.2πX(6378000+1)(m)
2π X(63ワ8000+1)‑2π×6378000
=i2756002π ‑12756000π
これを見ていたかりんさんは,日 年生のときに学んだ文字を 使って。次のように求めました。
赤道の長さは,2π r(m) 一周道路の長さは,2π(′+1)(m)
その差は,
2π(′+1)‑2π「
文字の部分が 消えたよ!
=2π「+2π ‑2π′
(岡本和夫 ほか,2012,p.12)
地球のおよその半径6378000mを用いた,けいた さんの方法は,複雑な数値計算「6378000
×2」 が必要であ る。 しか し
,地
球の半径 をrで
表 している,か
りん さんの方法では,そ
うした複雑な計算が回避 されている。 また
,文
字式の計算では,rが
キャンセル され る数 量の構造が表現 されているので,半
径 がい くらであろ うとも,地
上lm離
した道路 は常に 2π であることが理解 できる。
「(Ⅳ
)考
えや情報の伝達 と解釈など,他
者 との交流ができる。(交流)」金児 (2012)は,中学校 1年生 を対象 に「さおばか りづ くり」の実験授業を実施 している。
封筒の枚数 と支点か らのおも りの位置 との関係 を
,[表
2.3]のよ うにま とめている。‐36‐
[ラ長2.3]
封筒 の枚数(枚) 20 30 40 50 60
支点からのおもりの位置(clll) 5.9 13.1 20.1 26.7 32.1
上の表をグラフで表す際に
,表
の5つの点が直線上に うま くの らないこ とが判明 した。その時2名の生徒が
,封
筒の枚数が10枚ずつ増加す るときの (xの増加量),日盛 りの 増加量 (yの増加量)を
平均 した値 を用いてグラフの傾きを求めた。≪ S27 はい。私 た ちは
yの
増加 量 を平均 してみたんです。 その理 由は,yの
増加 量 を7に
して しま うと,5.4が
あ るか ら少 し大 きい値 になって しま うので はないか と考 えたか らです。 ち らば ってい るか ら,だ
か ら私 たちは平均 し てみ るこ とに しま した。`
そ うか。yの増加 量 を平均 してみ るの
,か
しこい。で もそれ でy切片 も計算 し直す のはなぜ ?
傾 きがかわれ ば
,封
筒20枚
の ときに支点か ら目盛 りまでの距離 5.9cmの ところか ら減 ってい く数 も変わる じゃない。そ っか
,だ
か らも う一度全部計算 し直 したんだ:≫
(金児,2012,p.25)(Si生
徒 の発言 を表 す。) S28S29 S30
S31
S27は
,グ
ラフの傾 きを求 め る方法 とその理 由を説 明 して い る。それ を受 けて,S29は
,なぜy切片 も計算 しなおす必要 が あるのか を疑間 に感 じ
,そ
の こ とについて,S30は ,傾
きが変 わ ったので も う一度 計算 しなおす必要性 を説 明 してい る。
S27の
よ うに,「yの
増加 量 を平均す るJと い う自分た ちの考 えを,理
由 を述べて相手に伝達す ることや
,S29や
S30の よ うに,他
者 との問答 を行 うこ とで意見 の交流がで きる こ とが,「 (Ⅳ)考
えや情報 の伝達 と解釈 な ど,他
者 との交流 が で き る。(交流)」 に あた る。「
(V)他
者 の説 明 存評 価 し.自
己の説 明 に反映 させ る ことが で き る。(評価)」清水 ら(2013)の紹介 している中学校 1年生を対象にした 「文字 と式」の指導事例をもと に説明する。
課題 縦
,横
,あ ります。
斜 めの数 の和 を同 じにす る魔方 陣 とい う遊びが 適 当な数 を入れ て
,次
の魔方陣 を完成 させな さいb 3
4
授業 の流れ
(T:教
師 の発言,S:生
徒 の発 言)S2:左
下の空欄 に どの よ うな数 が あ つて も,縦
と斜 めの合 計 は同 じです。 だか ら,中
央 は6で
す。 次 に,斜
め と縦 の合計 も同 じだか ら,2段
日の右 の空欄は
8で
す。 後 は,数
の和 の合計が 18と わか るので,上
の空欄 に10,3段
目T
S3 S4 S3
T
に
9,2,7が
入 ります。これでいいですか ?
どうして縦
,横
の和が同 じになるの ? 左下を△ とす ると,わ
か りやすいよ。(右図)な るほ ど
,そ
うか。i説 明す る ときには
,言
葉 だ けで説 明す るので はな く,図
の 中 に△な どの記 号 を使 うと,聞
い て い る人 に伝 わ りやす くな るね。S3,わ
か つた こ とを説 明 して くれ ます か ?S3:真
ん中の数 を□ とす る と,魔
方陣の約束か ら,5+4+△=3+□ +△ とな るので,△がわか らな くて も 5+4=3+□ となるか ら
,□
は6にな ります。︱
し
Γ
I
2
︲ ト ー
(清水 ら,2013,p.60)
*1は
,直前 のS2の説 明が解釈 で きず,S3が
「どうして縦,横
の和 が同 じになるの?」と尋ねてい る。次のS4の 「左下を△ とす ると
,わ
か りやす い よ。」 とい う言葉 を うけてS3 は,S2の
説 明の内容 を理解 で きている。そ して, *2で
はS4の
ア ドバイ ス を受 けて S3 が,S2の
説 明 を分 か りやす い ものに してい る。‑38¨