博 士 ( 工 学 ) 大 塚 裕 幸
学 位 論 文 題 名
周 波 数 選 択 性 フ ェ ー ジ ン グ 環 境 下 に お け る 干 渉 波 補償 技 術 お よ び 通 信 方 式 に関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本論 文は, ディジ タル無 線通 信の伝 送容量 増大と 周波数 利用 効率の 向上を同時に実現するため の直交 偏波 共用に おける 干渉波 補償技 術に っいて ,また 経済性 ,ネ ットワーク構築の柔軟性を向 上する ため の通信 方式お よび干 渉波補 償技 術にっ いて, その設 計法 の確立から実用化に到るまで の研究 成果 をまと めたも のであ る。
21世 紀 を目 指 し た 基幹通 信網に 対する 基本 的考え 方は, 信頼性 を常時 保つ 基本条 件に加 えて ユ―ザ ーが 自由に サービ スを選択できることである。そのために.は,大容量伝送が可能であるこ とが重 要な 条件と なる。 この場 合,資 源, 即ち無 線系通 信にお いて 周波数が資源に相当し,これ を効率 良く 利用せ ねぱな らない 。さら に, ユーザ からは 個性的 で多 様な要望が寄せられることが 予 想 さ れ , 無 線 系 に お い て も 迅 速 に そ の ュ ー ザ ニ ー ズ に 応 え て い か なけ れ ば な ら ない 。 ディ ジタル 無線通 信の分 野で は,上 記要求 を満た すため に直 交偏波 共用に よる256―直 交振幅 変 調(QAM: Quadrature amplitude modulation) 伝 送の 研 究 開 発 を進 め た 。 し か し,256 QAMの 採 用 は所 要C/Nの増 加 を 招 く ため 許 容 干 渉 量 も厳 し く 制 限 され る 。 ま た ディ ジ タ ル信 号特有 の伝 搬路で 発生す る周波 数選択 性( マルチ パス) フェ― ジン グに対する耐カを高めること が重要 であ る。さ らに加 えてア ンテナ の不 完全性 などの 不具合 によ って伝送特性が大きく劣化す るため ,高 精度な 交差偏 波干渉 補償器 の開 発が望 まれた 。
また ,ネッ トワー クの柔 軟性 を向上 させる ために 中継局 の簡 易化・ 汎用化を実現する必要があ り非再 生中 継が検 討され ている が,信 号を 復調す ること なく分 配・ 合成を行うためこれまでの再 生中継 方式 で存在 しなか った隣 接チャ ネル 通過干 渉を解 決する 必要 が生じた。さらに,電波が集 中する 都市 内の無 線端局 では他 ルート から の電波 干渉が 発生す るた め,その干渉波対策が求めら れた。
そこ で本論 文では ,周波 数選 択性フ ェージ ングに 対する 交差 偏波識 別度フェージング速度およ
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び トラン スバ ーサル フィル タの特 性を 考慮し つつ, 交差偏 波干渉 補償 器に関 する研究を取り上げ た 。また 隣接 チャネ ル通過 干渉に っい ては, 所望信 号と干 渉波の 周波 数同期 に着目しっつ,トラ ン スバー サル 等化器 の改善 効果に 関す る研究 を取り 上げた 。さら に他 ルート 干渉に関しては,光 フ ァイバ の急 速な普 及と干 渉波を 受け ないシ ステム に着目 し,無 線変 復調技 術と光通信技術を融 合 させた サブ キャリ ア伝送 を取り 上げ ること にした 。
本論文 におい ては, 交差偏 波干 渉補償 器の理 論解析 を通 じて改 善効果 を定量的に明らかにし,
そ れ を も と に開 発 し た ト ラン ス バ ー サ ル フア ル タLSIを内 蔵す る装置 を試作 した。 伝送実 験の 結 果 ,D/U換 算 で20dBの 改 善 効果 が 得 ら れ256QAMの 直 交 偏 波 共 用伝 送 を 実 現 する こ と が で き た 。 以 下 , 本 研 究 に よ っ て 得 ら れ た 結 果 及 び 考 察 を 各 章 ご と に 分 け て 説 明 す る 。 第1章 では ,本論 文の背 景およ び概要 にっ いて述 べてい る。
第2章 では, トラン スバー サル形 交差 偏波干 渉補償 器の改 善効 果を理 論的に 検討し た。フ ―リ 工 級 数 展 開 法を 用 い てXPD( ま た は 交差 偏 波 干 渉波 と参照 信号 の周波 数特性 比)の 周波数 逆特 性 か らD/U改 善 効 果 を 算出 する方 法を 提案し ,トラ ンスバ ーサ ルフア ルタの 最適夕 ップ数 の決 定 法 を 示 し た 。 また , 一 例 と してIF帯SAWフ ア ル タの 検 討 を 行 い高 速 な 符 号 速 度に 対 し て ト ラ ンスバ ーサ ルフア ルタを 精度良 く実 現でき る設計 法を示 した。
第3章で は , 第2章で 提 案 した改 善効果 算出法 を拡張 し, 直交偏 波信号 の周波 数相 関に対 する 交 差偏波 干渉 補償器 の特性 を明ら かにした。また新たに,自信号の波形歪を等化するトランスバー サ ル 等 化 器 を併 用 し た 場 合のXPD周 波数 特 性 に 対す る交差 偏波 干渉補 償器の 特性を 検討し た。
ま た,参 照信 号の周 波数特 性に対 する 検討を 加え, 総ての フェー ジン グ事象 に対する補償器の改 善 効果お よび 補償後 の絶対D/U値 を明ら かにし た。
第4章で は , 高 速 フ ェー ジ ン グ に 対応 で き る 交 差偏 波 干 渉 補 償器 の 制 御アル ゴリズ ムSBS法 を 提 案 し た 。SBS法 は 定常 時 の 安 定 性と フ ェ ー ジン グ時の 高速 応答性 の両方 をアダ プティ ブに 制 御でき るこ とを理 論的に 示し, 室内 模擬実 験およ び長期 符号伝 送実 験によ り多大な効果がある こ とを確 認し た。ま た,デ ィジタ ル演 算によ り干渉 補償を 行う場 合ア ナログ /ディジタル変換法 と し て 識 別 範 囲 拡 大 法 を 提 案し ,D/U改 善 効 果 が 従 来と 比 ベlOdB向 上 す るこ と が 明 ら かと な った。 さら に直交 偏波間 の信号 が非 同期の 場合で も交差 偏波干 渉補 償器が 正常に動作する演算 処 理法を 提案 し,実 験によ りその 動作 を確認 した。
第5章 では, 判定帰 還フア ルタの 交差 偏波干 渉補償 器への 適用 にっい て検討 した。 判定帰 還等 化 器 と 同 様 ,主 信 号 ま た は参照 信号に おけ る2波 干渉 モデル の相対 振幅比 が1に近づ くほど その 効 果は大 きく なり, 干渉除 去能カ に優 れてい ること を示し た。ま た, 判定帰 還等化器との組み合
わ せ効 果 に っ い て検 討 し 改 善 効果 を 定 量 的に示 した。 さらに 判定 帰還フ ィルタ およびMSE制 御 が 可能 で28夕ッ プ を1チ ップ に 内 蔵 し たBiーCMOS,O.8pmル ール の高 集積LSIを設 計試作 し,
そ の補 償 特 性 を 示し た 。 本LSIを 用 い れ ば従 来 に 比 べ 約1/4に 小 型化 で き 装 置 の経 済 化に 貢 献でき る見通 しを 得た。
第6章では ,非 再生中 継伝送 におけ 隣接チ ャネ ル通過干渉の概念を示し,チャネル間の変調ロ―
カ ルお よ び 共 通RF口 ー カ ル の同 期 , 非 同 期に 対 す る 隣 接チ ャ ネル 通過 干渉の 振る舞 いを明 ら かにし た。所 望信 号と隣 接チャ ネル通 過干 渉との 周波数 同期が 確立し いるとき端局におけるトラ ンスバ ーサル 等化 器がそ の補償 に有効 であ ること を実験 的に示 した。 また,シングルキャルアの 多 中継 伝 送 実 験 によ り 端 局 の 交差 偏 波 干 渉 補償 器 が 十 分 効 果を 示すこ とも 明らか になっ た。
第7章では ,他 ルート 干渉を 防止す る通信 方式 として 光ファ イバ通 信を 応用し たサブ キャリア 伝 送に っ い て 検 討し た 。256―QAM信号 を 用 い た 強度 変 調 / 直 接検波 の検討 を行 ない, 光変調 度,光 受信電 カお よび信 号帯域 幅(ビ ット ルート )に対 する伝 送特性 を理論および実験により明 ら かに し た 。 さ らに 無 線 技 術 であ る ブ ロ ック符 号を用 いた誤 り訂 正BCHおよび トラン スバー サ ル等化 器の適 用を 検討し その効 果を検 証し た。
第8章 は , 結 諭 で あ り , 本 研 究 の 内 容 と 得 ら れ た 成 果 を 最 後 に 概 括 し て い る 。
学位論文審査の要旨
本論 文は, ディジ タル無 線通 信の伝 送容量 増大と 周波数 利用 効率の 向上を同時に実現するため の直交 偏波 共用に おける 干渉波 補償技 術に っいて ,また ,ネッ トワ ーク構築の柔軟性を向上する ための 通信 方式お よび干 渉波補 償技術 にっ いて, その設 計法の 確立 から実用化に到るまでの研究 成果を まと めたも のであ る。
デ ィ ジ タ ル 無線 通 信の 分野で は, 直交偏 波共用 による256ー 直交 振幅変 調(QAM: Quadrature amplitude modulation)伝 送 の 研 究 開 発 を 進 め た 。 し かし ,256QAMの 採 用は 所 要C/Nの 増
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彦
彦 次
孝
精 吉
香 恭
藤 川
内 川
伊 小
栃 小
授 授
授 授
教
教 教
教 助
査 査
査 査
主 副
副 副
加を招くため許容干渉量も厳しく制限され,高精度な交差偏波干渉補償器の開発が望まれた。
また,ネットワ―クの柔軟性を向上させるために中継局の簡易化・汎用化を実現する必要があ り非再生中継が検討されているが,これまでの再生中継方式で存在しなかった隣接チャネル通過 干渉を解決する必要が生じた。さらに,電波が集中する都市内の無線端局では他ルートからの電 波干渉が発生するため,その干渉波対策が求められた。
そこで本論文では,周波数選択性フェ―ジング環境下における交差偏波干渉にっいては,トラ ンスバーサルフィルタを用いた交差偏波干渉補償器に関する研究を取り上げた。また隣接チャネ ル通過干渉にっいては,所望信号と干渉波の周波数同期に着目しつつ,トランスバーサル等化器 の改善効果に関する研究を取り上げた。さらに他ルート干渉に関しては,干渉波を受けないシス テムに着目し,無線変復調技術と光通信技術を融合させたサブキャリア伝送を取り上げることに した 。以 下 ,本 研究 によ って 得 られ た結 果お よび 考 察を 各章 ごと に 分け て説 明する。
第1章では,本論文の背景および概要にっいて述べている。
第2章では,トランスバーサル形交差偏波干渉補償器の改善効果を理論的に検討した。フーリ エ級数展開法を用いてXPDの周波数逆特性からD/U改善効果を算出する方法を提案し,トラ ンスバ―サルフアルタの最適タップ数の決定法を示した。
第3章では,直交偏波信号の周波数相関に対する交差偏波干渉補償器の特性を明らかにした。
また,自信号の波形歪を等化するトランスバーサル等化器を併用した場合の交差偏波干渉補償器 の特性を検討した。また,参照信号の周波数特性に対する検討を加え,総てのフェージング事象 に対する補償器の改善効果を明らかにした。
第4章では,高速フェ ージングに対応できる交差偏波干渉補償器の制御アルゴリズムSBS法 を提案した。SBS法は定常時の安定性とフェージング時の高速応答性の両方をアダプティブに 制御できることを理論的に示し,実験により多大な効果があることを確認した。また,ディジタ ル演算により干渉補償を行う場合アナログ/ディジタル変換法として識別範囲拡大法を提案し,
D/U改善効果が従来と比べlOdB向上することを示している。
第5章でtま,判定帰還フアルタの交差偏波干渉補償器への適用にっいて検討した。主信号また は参照信号における2波干渉モデルの相対振幅比が1に近づくほどその効果は大きくなり,干渉 除去能カに優れている ことを示した。さらに汎用性に優れた28夕ップを1チップに内蔵した BiーCMOS,O.8pmル ー ル の 高 集 積LSIを 設 計 試 作 し , そ の 補 償 特 性 を 示 し た 。 第6章では,非再生中 継伝送におけるチャネル間の変調口―カルおよび共通RF口一カルの 同期,非同期に対する隣接チャネル通過干渉の振る舞いを明らかにした。所望信号と隣接チャネ
ル 通過干 渉との 周波 数同期 が確立 してい ると き端局 におけ るトラ ンスバ ーサル等化器がその補償 に 有効で あるこ とを 実験的 に示し た。
第7章では ,他ル ート干 渉を 防止す る通信 方式と して 光ファ イバを 用いた サブキ ャリ ア伝送 に っ い て 検 討 した 。256−QAM信 号を 用 い た 強 度変 調 / 直 接 検波 の 検 討 を行な い,光 変調度 ,光 受 信電カ および 信号 帯域幅 (ビッ トレル ート )に対 する伝 送特性 を理論 および実験により明らか に した。 さらに 無線 技術で あるブ ロック 符号 を用い た誤り 訂正お よびト ランスバ―サル等化器の 適 用を検 討しそ の効 果を検 証した 。
第8章 は , 結 論 で あ り , 本 研 究 の 内 容 と 得 ら れ た 成 果 を 最 後 に 概 括 し て い る 。 こ れを 要する に本論 文は, 大容量 ディ ジタル 無線通 信にお いて 重大な 問題となる,周波数選択 性 フェ― ジング 下に おける 干渉波 の新た な補 償法と 通信方 式を提 案した ものであり,通信工学お よ ゛び電 子工学 に寄 与する ところ大である。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される資格 あ るもの と認め る。
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