■アブストラクト
生命保険販売チャネルに関する俯瞰的分類は⽛営業職員 代理店使用人⽜
である。これに対して損害保険では⽛専属 乗合⽜と⽛専業 副業⽜による 区分が行われている。
生命保険販売チャネルについても⽛専業 副業⽜を区分した上で⽛専業の 中での営業職員と代理店使用人⽜間関係を検討する必要がある。本稿は以上 の観点から⽛専業 副業⽜による保険募集従事者の区分別推計を経済センサ スデータの利用により行った。推計の結果,専業生命保険募集従事者は,平 成11~28年で見た場合,就業者人口の0õ58%程度で安定している。同時に専 業従事者における営業職員比率は低下している。都道府県別にみた場合,営 業職員比率の高い地域では,保険媒介代理業小規模事業所での従業者比率が 高く常用雇用者比率が低い。営業職員比率の低い地域では,保険媒介代理業 大規模事業所での従業者比率が高く,常用雇用者比率が高い。後者において 営業職員から代理店使用人への移行が進んだ可能性を確認できる。
■キーワード
⽛専業―副業⽜基準,保険媒介代理業,常用雇用者比率
*平成29年12月15日の日本保険学会関東部会報告による。
/ 平成31年⚔月25日原稿受領。
小 山 浩 一
生命保険募集人に関する新たな基準に
よる推計
⚑.はじめに
本稿は,生命保険販売チャネルの分類について従来の⽛営業職員 代理店 使用人⽜基準とともに⽛専業 副業⽜基準を導入し,経済センサスデータを 利用することにより区分別募集人数を推計する。この推計の中で主に専業内 の⽛営業職員 代理店使用人⽜の関係を考察する。推計は,全体とともに都 道府県別に行う。これにより,主に専業内構成の推移を把握し,両者の関係 について検討することが本稿の目的である。
⚒.保険募集人の区分方法
⑴ 生命保険業
生命保険協会から発表されている⽛生命保険の動向2018⽜では,⽛参考」1) として営業体制について取り上げられている。これによれば2017年度末⽛登 録営業職員232ó942⽜⽛代理店使用人1ó012ó385⽜⽛個人代理店53ó537 法人代 理店35ó113⽜である。募集人に関して⽛営業職員 代理店使用人⽜区分によ る把握が可能となっている。
⑵ 損害保険業
日本損害保険協会から発行されている⽛損害保険ファクトブック2018⽜で は代理店について⽛2017年度末代理店の内訳⽜が示されている。その内訳と してここでは⚓種類の区分方法により代理店(数)が分類されている。すな わち⽛専業35ó283 副業151ó450⽜⽛個人81ó518 法人105ó215⽜⽛乗合43ó764 専属142ó969⽜である。当該資料において損害保険の募集従事者数は2017 年度末207万2888人と総数が記載されている2)。なおこの資料中,重要な注 記がある。すなわち専業代理店について⽛…損害保険と生命保険の両方を販 売している代理店を専業とするのか副業とするのかが保険会社によって異な
1) ⽛生命保険の動向2018⽜29頁。
2) ⽛損害保険ファクトブック2018⽜71頁。
って…」3)である。専業と副業についての定義が異なる中で集計が行われて おり,本稿の以降の検討においてこれをどう扱うか明確にして進める必要性 を認識できる。
次に保険募集人については,日本損害保険協会からデータが示されている。
区分については上記代理店同様である4)。2017年度末⽛専業123ó885 副業 1ó940ó155⽜⽛法人1ó957ó136 個人115ó752⽜⽛専属627ó859 乗合1ó445ó029⽜
となっている。
⑶ 生命保険における募集人区分上の課題
生命保険協会及び日本損害保険協会により示されている募集人区分につい て,これを照合し課題を述べる。
生命保険業については保険募集人を⽛営業職員-代理店使用人⽜で区分し ている。これは⽛保険会社と雇用契約関係にある保険募集人⽜と⽛保険会社 と(代理店)委託契約関係にある保険募集人⽜とを区分し把握することを意 味している5)。しかし,前者は原則として一社専属として限定できる6)が,
代理店使用人については一社専属と乗合とが混在している。
先に見た損害保険業の区分方法を生命保険業における保険募集人区分に適 用すると⽛専業 副業⽜⽛専属 乗合⽜のマトリクスが考えられる。図表⚑
に保険募集人区分の概念図を示す。
営業職員は専業かつ専属である。これに対して代理店使用人は,概念上,
3) ⽛損害保険ファクトブック2018⽜70頁,注⑴。
4) http : //www.sonpo.or.jp/news/statistics/boshu/pdf/uchiwake_suii.pdf このデータには副業代理店について⽛自動車関連業⽜⽛不動産業⽜等下位区 分が示されている。本稿の問題意識は俯瞰的なレベルのものであることからこ れらについて取り上げていない。
5) 代理店使用人は委託先の企業で雇用されたものを含む。保険会社と代理店と の関係が委託という主旨である。
6) 保険会社が代理代行により他生保商品の販売を行う場合には営業職員が自社 生保以外の商品を扱う場合はあるが,ここではこれを例外としている。
⽛専業かつ専属⽜⽛専業かつ乗合⽜⽛副業かつ専属⽜⽛副業かつ乗合⽜の⚔区分 があり得る。
図表⚑の場合,専業かつ専属の中に営業職員と代理店使用人が混在するこ とがわかる。
⑷ ⽛専業 副業⽜概念による分類基準の導入
生命保険業における保険募集人について⽛営業職員 代理店使用人⽜(意 味的には⽛雇用 委託⽜)区分を前提として⽛専業 副業⽜区分の⚒軸によ る分類基準を導入することが考えられる。分類概念図を図表⚒に示す。
図表⚑ 保険募集人区分概念図
(出典)概念整理により筆者作成。
図表⚒ 販売チャネル区分概念図
(出典)概念整理により筆者作成。
各分類の中には下位概念として個別チャネルが位置付けられる。
図表⚑と図表⚒の概念上の相違は,図表⚑において⽛専業かつ専属⽜に営 業職員と代理店使用人の⚒者が置かれるのに対して,図表⚒において⽛専業 かつ委託⽜⽛副業かつ委託⽜側に専属と乗合が混在する点である。本稿にお いては営業職員と代理店使用人を区分することを前提とした中で⽛専業 副 業⽜区分を導入することから,図表⚒の分類方法により検討を進める。言い 換えれば,代理店使用人について⽛専属 乗合⽜区分は行わない。これは問 題意識が主に専業における⽛営業職員 代理店使用人⽜区分の検討にあるた めである7)。
⚓.専業内移動
生命保険募集を専業とするものは,営業職員と代理店使用人に分かれる。
専業のうち委託に区分される代理店は,乗合代理店としての保険ショップや 訪問型代理店,さらに企業内代理店や個人代理店等に分かれる。これら⽛専 業かつ委託⽜に分類される代理店使用人のうち,その採用源が専ら営業職員 である代理店が存在している。これらは主に1996年改正保険業法以降に設立 された代理店であり,その店主自身が営業職員であったものが多い8)。これ ら代理店の一部は保険ショップ等大型化し,独自の位置を確保していると考 えられる。これを人的な移動として考えると,営業職員の一部が代理店使用 人となるパスの存在を想定できる。専業保険募集人の⽛雇用(営業職員)⽜
から⽛委託(代理店使用人)⽜への移動イメージを図表⚓に示す。
7) データ制約としても専業の代理店使用人を専属と乗合に分けて把握するデー タは見当たらない(副業についても同様)。
8) 乗合代理店の経営者等からのヒアリングによる。
⚔.保険募集従事者に関する推計
⑴ 保険募集従事者に関するデータ源
生命保険募集人については先に見た通り生命保険協会の発表資料では営業 職員と代理店使用人のそれぞれの総数がわかる。これに⽛専業 副業⽜区分 を導入し把握するためには代理店使用人を更に⽛専業 副業⽜で区分し従事 者数を把握する必要がある。⽛経済センサス⽜9)には業種別の従事者数のデー タがあるが,この業種別区分の中に⽛保険媒介代理業⽜が存在している。
経済センサスでは銀行職員は銀行業に分類され,保険専業の代理店使用人は,
保険媒介代理業に分類される。この保険媒介代理業従事者データを使い,上 記⽛専業-副業⽜区分による推計が可能と考えられる。他方,生命保険会社 の営業職員は経済センサスでは生命保険業に分類されるが,ここでの従事者 数は,営業職員と内勤職員及びその他の総計となっている。このため営業職 員数については生命保険協会データを使用する必要がある。
図表⚔に本稿で使用するデータを一覧で示す。
(出典)。
図表⚓ 移動イメージ
9) 平成18年以前は⽛事業所・企業統計調査⽜である。
(出典)小山(2017)210頁より筆者作成。
なお,専業の保険代理店の概念は,先に⽛⚒⑵ 損害保険業⽜で見た通り
⽛生命保険を扱う損害保険代理店⽜を副業代理店と定義している会社も存在 している。本研究においては,保険媒介代理業であることのみを定義上の専 業と考える。したがって⽛生命保険を扱う損害保険代理店⽜あるいは⽛損害 保険を扱う生命保険代理店⽜のどちらも,専ら保険媒介代理を業とするもの である限り,専業と位置付ける。
⑵ 全体推計
生保協会データ,経済センサスデータ等による推計を図表⚕に示す。
図表⚔ データ一覧
※⽛経済センサス⽜及び⽛事業所・企業統計調査⽜では,⽛民営事業所⽜データを 使用している。またそこでの銀行業は⽛中央銀行を除く⽜データを使用した。
図表⚕ 募集従事者分類別推計10)
(出典)図表⚔に示したデータ源より筆者推計により作成。
10) 経済センサス基礎調査・活動調査実施年のみ表示している。推計は小山 (2017)⽛生命保険加入行動の実証分析⽜116頁(図表6-3)をベースに本稿の問
長期的に営業職員数の減少が取り上げられることは多い。しかし,少し俯 瞰的に⽛専業 副業⽜区分でみると,専業従事者数は営業職員と保険媒介代 理業従事者の合計であり,比較的安定的に推移している。就業者人口に対す る割合では平成13年からは0õ59%(0õ550õ6)28年0õ58%である。こ れに対して副業従事者(⽛=代理店使用人 保険媒介代理業従事者⽜)は激増 している。副業従事者は平成11年13万779人から28年85万9541人となってい る。
副業従事者が激増しても,専業従事者数及びその就業者人口に占める比率 は安定的である。これは生命保険市場において専業による取り扱いが存続す る何等かの要因があるためと考えられる。
⑶ 専業の中での⽛営業職員 代理店使用人⽜区分
生命保険募集を専業とするもの(営業職員+保険媒介代理業従事者数)は,
平成11年40万3358人である。平成28年では37万5972人となっている。この数 値は営業職員について期末登録営業職員数で計算している。営業職員の値を 実働(月平均)に変えた場合,専業従事者は平成11年37万7125人,平成28年 では32万5972人である11)。
次に専業の中での営業職員と代理店使用人の構成比は,平成11年段階で営 業職員比率81õ76%であったが,平成28年段階では61õ71%と減少している。
実働(月平均)の値に変えた場合は,それぞれ80õ49%,56õ05%である。全 体として専業従事者が安定的に推移している中で営業職員比率の減少,代理
題意識により項目を追加して作成した。なお本稿の推計はあくまで概算推計で ある。その理由は各データの時期の相違(例えば営業職員数は期末時点,経済 センサスはセンサス実施年における調査時期等)による。概算推計であっても 研究上の意義は失われないと判断した。
11) 営業職員の数を実働(月平均)とした場合の数値を示したのは,この後取り 上げる都道府県別分析においては実働(月平均)の数値を使っている(入手デ ータは都道府県別では実働(月平均)のみ)ため,これとの整合性が必要との 判断による。
店使用人比率の増加という傾向がみられる。
⑷ 専業に関する検討
専業として生命保険を扱う営業職員と保険媒介代理業従事者について更に 詳細化し状況を見る。図表⚖に専業従事者に関するデータ推計を示す。
営業職員については期末登録営業職員数と当該年度における実働営業職員 数(月平均)の⚒つの数値から,実働比率を算出した。保険媒介代理業従事 者については,従事者数と常用雇用者数の⚒つの数値から,常用雇用者比率 を算出した。
営業職員の実働比率は,平成18年の段階で81õ62%であり,以降80%を下 回っていたが平成29年段階では80õ87%となっている。
保険媒介代理業の常用雇用者比率は平成11年57õ5%,平成28年74õ11%で ある。経済センサスにおける常用雇用者は⽛事業所に常時雇用されている 人⽜とされ,内容的には⽛期間を定めず雇用されている人⽜⽛⚑か月を超え る期間を定めて雇用されている人⽜⽛上記以外の雇用者のうち,調査対象月 の前⚒か月にそれぞれ18日以上雇用されている人⽜である12)。個人事業主及 び無給の家族従業者は常用雇用者に含まれない。
以上の定義と数値から,保険媒介代理業における常用雇用者比率に着目し 検討を行う。
図表⚖ 専業従事者に関するデータ推計
(出典)図表⚔に示したデータ源より筆者推計により作成。
12) ⽛事業所・企業統計調査及び経済センサスにおける従業者区分⽜総務省統計 局 http : //www.stat.go.jp/info/kenkyu/servstat/pdf/si5-3b.pdf
⑸ 生命保険募集に従事する者の中での保険媒介代理業の特性
生命保険の募集に従事する業としては,生命保険業,銀行業,保険媒介代 理業が代表的である。これらの常用雇用者比率を図表⚗に示す。
図表⚗の通り,保険媒介代理業における常用雇用者比率は銀行業及び生命 保険業と比して低い。この要因としては個人事業主及び無給あるいは臨時の 家族従業者等が多い可能性が想定される。
なお保険媒介代理業における常用雇用者比率が上昇している要因としては 委託募集人の存在と解消が考えられる。委託募集人は委託であって雇用では ない。このため委託募集人の存在は常用雇用者比率を下げる要因となる。し かし委託募集人はすでに解消したと考えられる。この解消に至る過程で常用 雇用者化したため,保険媒介代理業における常用雇用者比率が次第に上昇し たと思われる。すなわち平成16年59õ65%から平成28年74õ11%となっている。
銀行業における従事者は経済センサス調査時点における従事者数であり,
その多くが常用雇用者である。それ以外は短期のアルバイト等と考えらえる が,きわめて小規模であることがわかる。
生命保険業の従事者は,内勤職員,営業職員その他である。これも大半が 常用雇用者である。
以上から,保険媒介代理業従事者における常用雇用者比率が,上昇してい 図表⚗ ⚓業の常用雇用者比率
(出典) 経済センサス(平成18年以前は事業所・
企業統計調査)から筆者算出により作成。
るもののレベル的には低い状況にあることがわかる。
⚕.専業における営業職員と代理店使用人の関係
先に触れたように営業職員の一部が保険代理店の使用人になるものが存在 している。ある時期までこの移行したものが委託募集人になっていたと思わ れるが,これらは常用雇用者に移行している。したがって,営業職員から代 理店使用人への移行(専業における営業職員比率の低下)にともない常用雇 用者比率が上昇している可能性がある。この関係を都道府県別にみる。方法 は次のとおりである。平成28年段階での専業における営業職員比率(以降,
⽛営業職員比率⽜)を⽛営業職員数13)専業者数(営業職員数保険媒介代 理業従事者数)⽜の式で都道府県別に算出する。次に保険媒介代理業におけ る常用雇用者比率(以降,⽛保険媒介代理業常用雇用者比率⽜)を図表⚖と同 じ⽛保険媒介代理業常用雇用者数従事者数⽜で都道府県別に算出する。
横軸に営業職員比率を,縦軸に保険媒介代理業常用雇用者比率を,それぞ れ⚔区分して都道府県名を位置付ける。都道府県の横に営業職員比率 保険 媒介代理業常用雇用者比率の数値を記載する。以上の結果を図表⚘に示す。
13) 都道府県別における営業職員数はすべて実働(月平均)である。
図表⚘ 営業職員比率と保険媒介代理業常用雇用者比率との関係
(出典) 経済センサス活動調査平成28年及びインシュアランス生命保険統計号平成 29年版より筆者作成。
図表⚘を見ると,全体として営業職員比率が低いほど保険媒介代理業常用 雇用者比率が高い。この中で営業職員比率⽛46%~51%⽜と最も低い区分を Aグループとし,逆に⽛61%~⽜と最も高い区分をBグループとする。Bグ ループのうち,保険媒介代理業常用雇用者比率が最も低い山形,鳥取,滋賀,
島根⚔県を第⚑順位,長崎,兵庫,山梨,石川,新潟,埼玉,奈良,高知の
⚘県を第⚒順位とする。グループ別に以下に特徴を見る。
⑴ 該当グループ別保険媒介代理業の状況
⒜ Aグループ
Aグループは保険媒介代理業常用雇用者比率が最も高い東京都と北海道で ある。常用雇用者比率が高い要因は二つ考えられる。一つは,個人事業及び そこでの家族従業員として従事しているものが少ない可能性である。もう一 つは,従業者数の規模が大きい事業所の比率が高い可能性である。規模の大 きい事業所では常用雇用のものが多い可能性が高まる。この観点で該当地域 について図表⚙に示す。
図表⚙の通り,東京では従業員規模⽛0⽜事業所は事業所数で22õ71%を占 めるが,従業者数では3õ79%に過ぎない。これに対して⽛300人以上⽜は事 業所では0õ29%だが,従業員数では15õ96%,常用雇用者数では18õ44%を占 める。100人以上を合計すると,従業員数では32õ57%,常用雇用者数で 37õ42%を占める。
図表⚙ Aグループ保険媒介代理業の状況
(出典) 経済センサス活動調査平成28年より筆者計算により作成。
北海道についても⽛0⽜ランクは事業所数で26õ89%だが,従業員数では 7õ66%となっている。これに対して100人以上でみると,事業所数で0õ27%,
従業者数で12õ39%,常用雇用者数では16õ5⚑%を占める。図表⚙を見ると,
従業員規模が小さい事業所ほど常用雇用者比率は低く,規模が拡大するにし たがって概ね常用雇用者比率は高い。この該当⚒都道では,営業職員の一部 が代理店使用人として移行し(その結果,営業職員比率が低下し),それら が常用雇用者として保険媒介代理業において位置付けられた(常用雇用者比 率が上昇)可能性がある14)。言い換えればこれら地域において営業職員が代 理店使用人へ移行する動きが(他の地域に比べて)多かったと推定される。
⒝ Bグループ第⚑順位
営業職員比率が最も高く,保険媒介代理業常用雇用者比率が最も低い該当
⚔県を見る。図表10に該当県における保険媒介代理業の状況を示す。
14) これはあくまで可能性である。営業職員を退職した者の個々のパスを追えて 図表10 Bグループ第一順位保険媒介代理業の状況
(出典) 経済センサス活動調査平成28年より筆者計算により作成。
該当⚔県をみると,従業員数⽛0⽜及び⽛⚑~⚔人⽜ランクでの従事者が 多い。すなわち,事業所数では80%を超える比率であり,従業者数でも山形 61%,鳥取59õ39%,滋賀55õ52%,島根66õ88%である。このランクは常用 雇用者比率が低く,上記構成比が大きい分だけ全体としての常用雇用者比率 を低下させる。該当4県では,営業職員から代理店使用人へ移行するものが 少なく(そのため営業職員比率が高く),保険代理店も小規模の家族経営的 な性格を有するところが多いと考えられる15)。
⒞ Bグループ第⚒順位
該当⚘県の保険媒介代理業の状況を図表11に示す。
該当⚘県について見ると従業員規模⽛0⽜~⽛⚑~⚔人⽜事業所の従業者 比 率 は,長 崎 46õ95%,兵 庫 47õ11%,山 梨 55õ73%,石 川 57õ78%,新 潟 55õ24%,埼玉46õ56%,奈良46õ12%,高知52õ68%である。
該当⚘県はBグループ第⚒順位である。従業者数ベースでみると重なる部 分はあるものの概ね⽛第⚑順位>第⚒順位⽜となっている。
これらを総括的に見ると大規模代理店での従業者が多い東京都,北海道で は保険媒介代理業常用雇用者比率が高く,営業職員比率が低い。⽛営業職員
代理店使用人(常用雇用)⽜の移行がこの地域で進んだと考えられる。こ れに対して小規模代理店での従業者が多いBグループ第⚑順位の山形県,鳥 取県,滋賀県,島根県においては営業職員比率が高く,大規模代理店が少な いことから,⽛営業職員→代理店使用人⽜の動きは相対的に進んでいないと 考えられる。Bグループ第⚒順位の長崎県,兵庫県,山梨県,石川県,新潟 いるわけではない。したがって,営業職員と無関係に保険媒介代理業従事者が 常用雇用として人を雇い入れただけという場合もあり得る。保険代理店経営者 等のインタビューの内容と整合する形での可能性の指摘である。本稿⽛⚓専業 内移動⽜参照。
15) 営業職員が,個人経営の代理店となっている可能性はある。しかしその動き が数的に多ければ,専業内の営業職員比率がこの地域でも低下するはずである。
営業職員比率が高いので,このような推定を述べている。
県,埼玉県,奈良県,高知県も第⚑順位に続く形で同様の傾向が確認できる。
⑵ 保険媒介代理業従業員規模別グループ位置
以上みてきた従業員規模における相違をグループ別に傾向として把握でき るかを検討する。まず,保険媒介代理業における従業員規模⽛⚐~⚔人⽜の 従業者比率を該当都県(A・B1・B2グループ)別に直線上に位置づけた。
図表12に示す。
図表11 Bグループ第二順位保険媒介代理業の状況
(出典) 経済センサス活動調査平成28年より筆者計算により作成。
保険媒介代理業常用雇用者比率が低い(営業職員比率が高い)ほど,保険 媒介代理業における⽛⚐~⚔人⽜規模事業所における従業者比率が高い。
B1とB2は中間で若干重なるが,A(常用雇用者比率高グループ)とB(常用 雇用者比率低グループ)とでは明らかに位置が相違している。
同様の視点を逆からみる。すなわち保険媒介代理業における従業員規模
⽛100人以上⽜の従業者比率を直線上に該当都県について位置づけたものが図 表13である。
図表12 事業所規模⽛⚐~⚔人⽜における従業者比率該当都県別位置
(出典) 経済センサス活動調査平成28年より筆者計算により作成。
図表13 事業所規模⽛100人~⽜における従業者比率該当都県別位置
(出典) 経済センサス活動調査平成28年より筆者計算により作成。
保険媒介代理業常用雇用者比率の高いAグループと低いB1グループとは 対極に位置づけられた。特にB1のすべて,B2の⚘県中⚖県は,100人以上 規模事業所における従業者は⚐である。言い換えれば100人以上規模の事業 所が保険媒介代理業においてこれらの県では存在していない。残る⚒県につ いても従業者比率が⚒~⚔%台であり,Aグループの北海道12õ4%,東京都 32õ57%とは対照的な状況を示している。
⚖.本稿の結論と今後の課題
⑴ 結 論
生命保険募集人について生命保険協会発表データと合わせて経済センサス を利用することにより⽛営業職員 代理店使用人⽜区分とともに⽛専業 副 業⽜区分の導入による把握(推計)が可能である。推計の結果,専業による 生命保険の募集従事者は長期にわたって数的に安定的である。就業者人口比 率の面でも同様である。この間,副業による従事者は激増している。このよ うな推移は,生命保険市場において専業による保険募集が存続するなんらか の要因があったためと考えられる。
専業における営業職員比率は長期にわたり低下(代理店使用人比率は増 加)している。この動きを都道府県別にみるとすべてが同様に変化している わけではない。営業職員比率の高い地域では,保険媒介代理業における小規 模事業所での従業者比率が高い。営業職員比率の低い地域では,保険媒介代 理業における大規模事業所での従業者比率が高い。後者において営業職員か ら代理店使用人への移行が進んだ可能性を確認できる。
⑵ 今後の課題
本稿は都道府県別に専業における⽛営業職員 代理店使用人⽜の関係を数 的推計のなかで検討した。保険媒介代理業における事業所規模が営業職員の 代理店への移動に影響を与えている。この観点で今後,⽛営業職員代理店 使用人⽜移動の状況をより現実の動きとして把握する必要がある。このため
保険媒介代理業における大規模事業所(例えば従業員⽛100人以上⽜など)
従業者比率が高・中・低などの基準により検討地域を⽛市⽜レベルで選定し,
そこでの⽛営業職員代理店使用人⽜の動きを考察することが今後の課題 である。その考察において,実際に移動したものの行う生命保険募集活動に どのような変化が生じたか(あるいは生じなかったか)について検証する必 要がある。このことは専業内構成の変化が消費者の生命保険利用にどのよう な影響を与える可能性をもつかを検討することにつながる。
専業内構成の変化に関わる上記の検討は,今後の消費者の健全な生命保険 利用に資する重要な課題の一つと考える。
(筆者は株式会社ブレーク・オン・スルー代表取締役)
参考文献
•小山浩一(2017)⽛生命保険加入行動の実証分析⽜法政大学博士学位論文。
•生命保険協会(2018)⽝生命保険の動向2018⽞生命保険協会。
•日本損害保険協会(2018)⽝損害保険ファクトブック2018⽞日本損害保険協会。
•㈱保険研究所⽝Insurance 生命保険統計号平成12・14・17・19・22・25・27・29 年版⽞㈱保険研究所。