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⼦大規模自然災害とリスクファイナンス⼧ 平成30年度大会共通論題

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【司会:遠山 聡】続きまして,質疑応答に入ります。質疑応答については 前半,後半と分けて,前半はこちらで用意した質問に対して,各パネリスト の報告者の方々に回答していただくという形で行います。後半30分は会場か ら質問を受けて,それに対して我々が回答しますので,よろしくお願いいた します。ぜひ,活発な議論をしていただければと思います。

前半は,パネルディスカッションの壇上で質疑応答をさせていただきます。

こちらでいろいろ用意をさせていただいた質問をいたします。まず,第⚑報 告の黒木先生に対する質問ですが,地震のみならず洪水や土砂災害のリスク も大規模化,そして恒常化しており,経験したことのない大雨という表現も 用いられるようになりました。過去の経験が役に立たないということは,洪 水や土砂災害のリスクも地震と同様に,我々のなじみのある⽛大数の法則⽜

になじまないと評価すべきかもしれません。このような大規模土砂災害や洪 水被害を保障する水害保険,水災保険の枠組みとしては,現在のものでよい のでしょうか。先ほどもお話いただいた,地震保険法のような法制度に基づ く政府再保険という仕組みが,今後,必要になるかという観点について,黒 木先生,お願いいたします。

【黒木松男】これについては石井社長から資料の提示がありました,13ペー ジを見ていただきますと,アメリカの場合はハリケーン・ハーベイ,イルマ,

マリアという,この経済損害が東日本大震災と同程度の金額の経済損失にな っています。それ以外を見ても,ハリケーン・カトリーナ,また,ハリケー

⼦大規模自然災害とリスクファイナンス⼧

平成30年度大会共通論題

パネルディスカッション

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ン・アンドリューのようなことで,アメリカにおいては洪水災害,特にフロ リダをはじめアメリカの南部の州が非常に深刻な状況になっています。そう いう意味で,アメリカの地震保険はカリフォルニア州だけで行っている制度 ですが,洪水に関しては全米で国家が行うという形を取っています。日本の 場合は,この資料では地震しかありませんけれども,水害による損害額も最 大では3ó000億円くらいの損害が出ています。これが毎年のようにあり,な おかつ,それが同じ年に何個か来るような巨大なスーパー台風になれば,こ れはアメリカのような状況になってこないとも限りません。そうなってほし くはないのですが,そういうことを考えると,保険会社としては保険金をど んどん支出していくことが不可能になってきます。政府による超過損害再保 険の形で国家の助力を仰ぐという意味では,遠い将来,地震保険のような形 を取らざるを得ないことになるかもしれないという予想にすぎませんけれど も,そのように思っています。

【司会】お答えいただいた内容についても,先ほどの15分という短い時間で したので,それを補足する形という意味も込められています。内容を補足す る質問も,皆さま,ぜひ,していただければと思います。

続きまして,また黒木先生に質問いたします。黒木先生の話の中にありま した,大規模地震災害について,業界の取り組みとして共同の立会調査は実 現可能かという点がありました。その実現可能性についてはどのような点が 課題になるのかということについて,お話をいただければと思います。

【黒木】熊本地震や,あるいは東日本大震災の時もそうでしたが,各社の取 り組みが微妙に違っています。ある意味で業界内部における共同もなかなか 難しいことがありました。そのことは阪神・淡路大震災直後に活発に議論さ れた内容ですが,実現に至っていないのです。東日本大震災においても,各 社別々で行ったということです。その査定方法については,このような形で 写真判定,あるいは被災者の方から写真を送ってもらうという形で進んでい

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ます。業界における共同査定については微妙に違う点と,査定員の確保とい う点ではそういうルートができています。査定をしていただく方についても どうしていくのかということがありますので,なかなか足並みをそろえるこ とができないという現状です。そういう点では現在,業界の中でそのことは 検討されています。どういうところで一致点を見いだすか,特に査定方法や 人員の確保,また,本部の機能はどうあるべきかについて検討していただい ていますので,できるかと思います。

ただ,これが,私が最後に触れました,業界内だけでなく,業界を超えた 官民の共同査定ということを,今後,大規模な地震があった場合に,そうい うことをせざるを得ない状況があったとしても,業界内でできないものが官 民でできるのか,ましてや罹災(りさい)証明の査定基準,認定基準が違う わけですから,そういう点では大変大きな課題が残っています。東日本大震 災,また熊本地震においても,被災者の方々にとっては,統一されている方 が分かりやすいはずです。目的が違うから別,使い道も違うので別だとなっ ていて,被災者の方々の立場に立って,長い時間をかけて解決していくべき 問題ではないかと考えています。

【司会】黒木先生には個人のリスクファイナンスということで,地震保険を 中心にご質問させていただきました。次に,企業保険,企業のリスクファイ ナンスとしての保険利用ということで,村田先生に質問させていただきたい と思います。企業の地震保険に関するお話の中で,保険会社は拡張担保の特 約の引受けには積極的ではないということでした。市場の競争が効率的であ れば効率的なリスクファイナンスができるというのであれば,地震保険とフ ァイナンスはもっとできると考えられるでしょうか。実際にはどの程度,保 険会社のキャパシティを提供しているのかという点について質問いたします。

よろしくお願いいたします。

【村田 毅】拡張担保特約の引き受けはしています。ただし,先ほど私のプ

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レゼンの最後の方でグラフをお見せして説明したような,発生頻度が低い一 方で PML が非常に大きい,テールが極めて長いリスクについては,なかな かさばきにくいことが事実です。つまり,発生頻度が低く,期待そのものが 大きくないわけですから,高い保険料はチャージされにくい一方で,いざと いう時に非常に大きな集積リスクが発現してしまうことになるので,保険会 社としては非常にさばきにくいということです。そこで,会社によっていろ いろあるとは思いますが,集積額を管理することを基本動作としてやってい ます。日本全国を幾つかのゾーンに分けて集積額を管理しながら,その範囲 内で自社のキャパシティを越えないようにコントロールする,そういうこと をやっていると思います。したがって,積極的にやっていますかと言われる となかなかお答えしにくいのですが,カバーそのものはあって,管理をしな がら引き受けているというのが答えになるかと思います。歯切れがよくなく て申し訳ありません。

【司会】企業にはどのようなリスクファイナンスが提供されているかという ことで,保険を利用するか,あるいは伝統的な保険以外の手法を利用するか という検討がなされているかと思います。続きまして,野田先生には BCP の検討をしていただきましたが,企業が BCP を策定するにあたって,保険 を含めたリスクファイナンスの内容を検討されているのでしょうか。されて いるとすれば,その具体的な内容はどういうものか,また,大企業や中小企 業の企業規模や,その企業の種類などで違いはあるのでしょうか。よろしく お願いいたします。

【野田健太郎】まず,後半の大企業と中小企業の違いの話です。今日のテー マである保険,もしくはリスクファイナンスという観点でいきますと,リス クファイナンスはいろいろな種類があります。先ほど野崎さんからも話のあ ったキャプティブみたいなものや,高度なものはむしろキャット・ボンドの ような話も,比較的大規模でいろいろ手間のかかるものに関しては,塑性

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(そせい)や仕組みをつくるにもお金もかかるし,時間・手間も掛かるので,

全ての企業が利用するわけではなく,基本的には大企業,その中でもかなり 大きな規模の企業となります。キャプティブに関しても,それを扱える業種 やそれにシナジーのある企業となると,少し限定されてくることになります。

一方,中小企業,中堅企業となりますと,そういった手法は使いにくいので,

一般的な保険,共済になります。扱えるものの種類や範囲がだいぶ違ってい るのではないかということです。

前半の BCP とリスクファイナンスも含めた検討のところです。私も少し 話しましたが,現状,BCP に関してはオペレーションのような対策を今後 はどうにかしたいと,プランを作り,それの実効性を上げたいという検討が 中心になっています。特に中小・中堅企業に関しては,その部分でかなり力 を割いているという現状ですので,ファイナンスやお金の面での検討までに は連動していないのが現状かと考えています。それから,リスクの中でも自 然災害で,火災保険,風水災,地震となってきますが,たまにしか来ないけ れども頻度の大きい災害に関してはリスクをどこまで見るか,そうなったら 仕方がないというところで,経営的なリスクへの対応で精いっぱいで,自然 災害までは考えられないこともあります。一部,地震保険はコストの面と,

どこまでカバーをしてもらえるかということで使いたくても使えないのです。

先ほど,野村さんからも話がありましたけれども,市場や制度が整っている かどうかということが前提になるので,そういったことで少し使いにくい部 分があるのではないでしょうか。どうしても,お金の面での検討のところま ではつながりにくい点があると考えています。

一部,大企業もしくは,ビジネスの流れからいって比較的シンプルで全体 のリスクをトータルで考えやすいという企業については,リスクファイナン スを使ったり,インフラ企業の一部や,かなり業種を特定している企業につ いてはリスクファイナンスも使いながら全体を含めて検討されています。そ れ以外の大企業,中堅・中小企業についてはそこまでの連動がまだされてい ないのです。保険や一部のリスクファイナンスについては継ぎはぎで使って

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いるという現状になっていると考えています。

【司会】リスクファイナンスにつきましては,先ほどの野田先生に加えて,

野崎先生からも,リスクの検討,保有,あるいはそのミックスという形で紹 介されていました。リスクファイナンスの⚑つの手法として,野崎先生の話 の中では⽛キャプティブ⽜というものがでてきました。このキャプティブと いうのは,日本では米国企業ほど利用されていないとのことですが,その理 由はどのような点にあるのでしょうか。また,今後,日本でキャプティブ保 険会社の利用が進むためには,何が必要でしょうか。よろしくお願いします。

【野崎洋之】キャプティブを所有していることを積極的に公表している企業 は少なく正確な情報があるわけではないのですが,想像するに100社くらい の日本企業が所有していると思います。先ほども申し上げましたが,キャプ ティブに関しては学際領域に十分な情報がなく,一般書籍にもほとんどあり ません。また,保険会社自身も十分な情報を持っていないのと,保険会社側 にキャプティブを積極的に推奨するメリットがないことから,進展が難しい のではないかと思っています。作る,または作って運用する中では,日本と キャプティブの所在地の法制や税制のモニタリングが重要になってきて,特 に税制改正の対応に追われるので,運営は容易ではありません。また,再保 険市場に自分自身で出ていくことになりますから,保険のプロの世界で事業 会社が闘っていけるのかを意識する必要があり,普及の壁になっていると思 います。このような事情から,今後,キャプティブが上手に利用されるよう になるのは難しいとは思いますが,規模の大きい会社について言えば,保険 会社側も10億円や20億円の保険金がそのような会社にとって十分な意味を成 さないことを認識した上で,キャプティブを作らせて一緒に運営していくと いう提案ができるようになれば,より発展するのではないかと考えています。

【司会】視点を変えまして,次は農業分野の話で質問をいたします。最後に

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報告していただいた徳井先生のお話の中で収入保険制度,農業共済制度と収 入保険制度という⚒本建ての選択という紹介がありました。収入保険制度は,

非常に耳新しいといいますか,あまりよく知られていない分野であるように 思います。収入保険制度では,具体的にはどのようなリスクがカバーされて いるのでしょうか。アメリカや諸外国においては日本の収入保険制度のよう な,収入の減少をカバーするような制度はあるのかどうか,また,制度上の 違い,日本の制度とアメリカの制度ではどんな違いがあるのか,ほかの国々 でもご紹介いただいたような,農協共済と収入保険という⚒本建てという枠 組みは一般的なものなのかについて質問いたします。よろしくお願いいたし ます。

【徳井和久】収入保険制度については,⽛農業経営収入保険⽜という用語が正 式ですので,全国農業共済組合連合会や農林水産省のホームページで検索し ていただきますと,その仕組みや既存の諸制度との比較検証ができる,

Excel のシミュレーションソフトが掲載されています。そこにアクセスをし ていただくと,保険内容のイメージや保険料の試算とか,これくらいの被害 でこれくらいの保険金が支払われるということがわかりますので,興味があ る方は一度試していただければと思います。

まず,収入保険はどこまでリスクをヘッジしているのかという質問ですが,

伝統的な自然災害による,米が採れない,あるいはリンゴが落下して収量が 減少した以外に,市場価格が低下して収入が減ったことも補償の対象になる,

担い手農家や法人が経営を継続していくために用意した経営保険です。加え て,従業員が病気になったり,経営者がケガをして従来のように収穫ができ なくて収入が減った場合も対象になります。倉庫で貯蔵していた米が水害で 腐ってしまったり,果実を倉庫に入れていたら盗まれたという事故も補償し ます。それから,これからは日本の品質のよい農産物を輸出しましょうと政 府も推進していますが,その場合には為替のリスクもあるわけです。円高に なり販売収入が低下した,それもオーケーです。例えば,米では,大規模な

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農家は JA グループへの出荷以外に,直販や卸業者との取引もありますが,

代金回収について,取引先が倒産するとか,手形が落ちないというリスクも 抱えており,そのような取引先の倒産によるリスクまでカバーしましょうと いうことになっています。このように,収入保険では様々なリスクをカバー する仕組みとなっています。しかし,保険ですから,モラルハザードは回避 しなければいけません。例えば,保険金を目当てに農産物の安売りをしてし まうとか,途中で営農をやめてしまって肥培管理を怠るような,そういう農 家にはいわゆる免責が適用になります。そのような説明もしながら,今年か ら収入保険の初めての加入を推進しています。

次に,世界にこういう制度はあるのかという質問ですが,自然災害で農産 物の収穫量が減少するというリスクをカバーする,いわゆる農業保険は,世 界では約100カ国以上で実施されています。政府の支援・関与がなされてい ることは,多くの国で共通していますが,ヨーロッパやアメリカ,カナダな ど,農業保険を実施する前提となる統計や流通システム,金融機関などのイ ンフラが整備され,また,財源も確保できる国では日本の農業共済や収入保 険のような仕組みが実施されています。また,アジア諸国の一部では農業保 険というよりは金融派生商品であるインデックス保険が導入される傾向にあ るようです。特にアメリカについては,作物保険と収入保険の両方を実施し ており,2017年の加入実績で見ると,作物保険が⚑億12百万エーカー,収入 保険が⚑億99百万エーカーとなっていて,農家はその生産する作物によって,

どちらかを選んで入っているようです。

【司会】農業分野の収入保険,我々がよく存じている損害保険とか,その分 野とはだいぶ違う性質を持っているようです。

続きまして,また企業分野のリスクファイナンスの問題に戻ります。次は 野田先生です。企業のリスクファイナンスとして,保険が主な手段になって いるところ,手元資金と金融支援が並んでいます。手元資金が潤沢で投資に 使う余地も少ない場合は流動性に乏しいけれども,担保資産が十分にある場

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合にはリスクを保有して手元資金等で備えることも有効であるが,資本コス トを含めた費用対効果を検証した上での選択なのでしょうか。言い換えます と,キャッシュアップしないという意味で安価な手段ではないということに なるでしょうか。

【野田】いろいろ長い質問になっています。資本コストに対する意識と,手 元資金というか,流動性というか,その⚒つの観点から答えます。まず,資 本コストは前の議論にも若干出てきました。保険や自然災害分野までいかな い,いわゆるビジネス自体,企業の場合の本業自体での資本コスト,預けら れたお金にどのくらいのコストがかかっているかという議論も,そんなに昔 から始まったわけではなくて,最近よく新聞などで ROE(Return On Equity)を上げろという議論もあります。そんな議論が少しずつ始まって,

資本コストについてもだいぶ意識されるようになってきたのです。本業その ものでも資本コストの議論はそんなに煮詰まっていないのが現状ではないか と思います。大企業等についてはある程度,資本コストについてもだいぶ理 解をして,投資家やアナリストとの間の議論ができるようにはなってきてい ます。浸透して,社内でそれを完全に消化しているところまではいっていな いのが現状だと考えています。その中でも自然災害や保険まで含めたところ までしっかり考えているのは,一部の企業はあるかもしれませんが,ほとん どがそこまでいっていないと考えています。保険的な分野でも少しやりやす い分野でもありますし,地震保険のように計算がしにくい分野,もしくは制 度的に完全には整っていなくて,利用したくても利用できないという市場的 な面での課題や制約が少しあるかと考えています。

それを踏まえた上で,流動性というか,手元資金でカバーするのかどうか という分野に関しては,保険でカバーする部分もありますし,一方で手元資 金,現金で保有しているのか,現金に近いもので保有しているのかという,

流動性の高いものでカバーをしているのかに関しては,何かあった時にどれ くらい活用しやすいのか,もしくはどのタイミングで活用できるのかという

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ことです。保険だと少し時間がかかる,認められるかどうか,いろいろな問 題もあるのに比べて,現金か現金に近いもので保有していれば,銀行のシス テムがおかしくならない限りは比較的手に入れやすいと,そういう若干の違 いもあります。大きな災害が起こった時に企業はどういうことを考えなくて はいけないかというと,財務的な観点,損益的な観点,キャッシュフローと いう⚓つの観点で総合的に考えなければいけません。もちろん,そこまでト ータル的に考えているかどうかというのは分かりませんが,一応⚓つの観点 で考えなければいけません。そういう観点で見ますと,手元資金で持ってい るのは流動性の面を考えていると思います。単純に保険がいいか,手元資金 がいいかというところは,資本コストの面ももちろん検討しなければいけな いし,総合的に見ていかなければいけないのです。もちろん,そこには制度 的に自由に使えるかという面も含めて総合的に考えていかなければいけない と,いろいろな視点が入ってくるのではないかと考えています。

【司会】次は,短めの質問になります。同じく資本コストの問題として⽛そ もそも⽜どうかという話ですが,村田先生にお願いしたいと思います。企業 は,保険を資本コストの関係で意識しているものでしょうか。

【村田】意識していないことはないと思います。最大損害の見積もりや期待 値の見積もりがある程度具体化していないと,実際に幾らの資本を当ててい るのかという数値がわかりません。明示的に資本コストとの関係で計算をし て判断するという,具体的な枠組みに至っていないケースは多いと思います が,少なくとも株式会社である限りは株主のお金を預かっているわけですか ら,当然資本コストがあるはずで,意識をしているのは当然でしょう。それ が明示的,自覚的になるためには定量的な把握がもう少しできないと難しい だろうとは思います。野崎先生にも伺ってみたいと思いますが,よろしいで すか。

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【司会】では野崎先生,よろしくお願いします。

【野崎】キャプティブを作るとなると資本を大きく投入しなくてはならない ので,まさに資本コストを意識して検討する必要があるリスク移転手法だと 思います。ドミサイルを作る地域の法制,税制によって対応が変わると思い ますが,ローンバックで日本に戻す方法もありますし,ドミサイルにある資 金をもとにグループ会社ファイナンスをやっている企業もあるようです。こ のように,国の規制を意識しながら上手に運営していく方法があると考えて います。

【司会】それでは,こちらで用意した最後の質問ですが,続いて野崎先生に お願いしたいと思います。お話の中で⽛一定程度以上の資金力を有する大企 業⽜のリスクファイナンスとして検討対象になるということでした。資金力,

すなわち純資産や手元流動性の手元資金,あるいは,リスクファイナンスの ために企業が負担し得るコストという意味での資金力と,総資産や売上高で 表される企業規模を踏まえて,検討対象を設定したということかと思います が,それらはどの程度の前提で検討をされたことなのか,少し具体的な数値 のイメージはあるでしょうか。

【野崎】従前,年間保険料が⚕億円ぐらいあればキャプティブを持つことで メリットが得られる可能性があると言われていた気がします。本日の私の報 告のアプローチから説明をさせていただくと,私がイメージしているのは保 険料の多寡に関わらず,時価総額が⚑兆円くらいあり,財務基盤が安定的な 会社であればメリットを期待できるのではないかと考えています。

【司会】以上が,こちらで壇上の質疑応答という形で用意させていただいた 質問となります。報告者の方々,ご回答いただき,ありがとうございました。

では,これからあまり時間がなくて申し訳ありませんが,会場から質問を

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受けて回答をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いします。質問の ある方は挙手をしていただき,所属と氏名をおっしゃっていただければと思 います。

【刀೟俊雄(元八戸大学)】元八戸大学の刀೟です。だいぶ時間が押してきま したので,簡単に質問をします。野崎先生の報告要旨の最初に⽛従来,個 人・法人(企業)を問わず,多くの者は広域で大規模な被害をもたらす災害 に対して,主に財物を補償の対象にして保険に加入してきた。現在も,基本 的にはその状況にある⽜とあります。私はこの文章に違和感がありました。

この火災保険や地震保険に個人が入るのは,世にいわれている大規模な震災 の補償のみを目的として入っているのではなくて,当然,自分の家の不始末 もあるでしょうし,あるいは隣近所から類焼の恐れもありますから,個人が 家を建てたら,必ず保険,多くの方は火災保険に入ります。それは決して大 規模な震災が怖いからと想定して入っているのではないと思います。火事は どこからでもあります,日常生活の中であり得ますので保険に入ります。そ ういう意味で,この書き出しの文章に違和感がありますが,いかがでしょう か。

もう⚑つは,それに続いて,⽛しかし,家計分野の地震保険が被災者の生 活の安定に寄与することを目的として財物の補償を目的にしていないよう に⽜と書いてあります。地震保険は逆に東日本大震災に遭われた多くの方が,

まず学校や講堂,公民館などに住まわれて,それから,被災者住宅に入って,

最後に自分の家を建て直したいという希望を持っています。ですから,地震 保険は決して被災者の生活安定だけではなくて,やはり自分の家を持ちたい,

あるいは建て替えたいという目的があって地震保険に入っていると私は思い ます。そういう意味で,この文章に,⚒つの点で違和感がありましたので,

失礼ですけれども,お考えを聞かせていただきたいと思います。

【野崎】⚑点目についてはご指摘の通りだと思います。一般に個々人は個別

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の火災等を意識して保険に加入していると思います。ただ,今回のテーマが 大規模自然災害であったので,その前提のもと記載した結果です。もう⚑点 の地震保険の保険金についての考え方は,以前,私自身が保険学雑誌に寄稿 したことがありますが,東日本大震災の時の地震保険金のほとんどが住宅の 復旧費用に当てられていることは,調査結果からもきちんと理解しています。

ですから,ご指摘のとおり,財物保険的な使われ方をしているのは重々認識 しています。ただ,ここでこのように記したのは,地震保険に関する法律の 第⚑条には⽛被災者の生活の安定に寄与することを目的とする⽜と記されて おり,それは財産を補償するものとは読めません。ですから,保険金の実際 に使われ方と本来の地震保険の目的にギャップがあることを理解した上で,

このように記載させて頂いています。

【刀೟】私の質問に対する答えの中にありましたように,今日のテーマ,共 通論題のテーマが⽛大規模自然災害とリスクファイナンス⽜ということです。

そういう意味で⽛大規模⽜というところに焦点を当てられたものと思います。

この表現では実態ではないのではないかと思ったわけです。もう一つ,地震 保険の質問ですが,確かに法律などでは生活安定とかそういうことを一番先 に書きます。ですから,個人の家の建て替えのために,とは,法律では書け ませんから,生活安定のためという大きな意味でくくっているのでしょう。

個人としては先ほど申しましたように,テレビでもよく皆さんが言っていま すけれども,自分の家を建て替えたい,子や孫のためにここに建て替えたい という希望を多くの方が持っているではないかと思います。決して大規模な 保障ではなくて,生活安定をしたいという意味では違和感があるということ を申し上げた次第です。

【司会】よろしいでしょうか。壇上もよろしいですか。

【蒲生篤史(元損害保険事業総合研究所)】元損保総研にいた蒲生です。キャ

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プティブの話について少しご教授いただければと思います。最近はあまりメ ディアには登場しませんが,少し前にパナマ文書が国内外の新聞報道等で盛 んに取り上げられ,オフショアに設営された子会社との不透明な取引が,世 界的な話題となりました。以前からオフショアに設立されているキャプティ ブについては,OECD をはじめ各方面からの問題指摘といろいろな批判が あり,透明化を図るようにとの要請が行われております。日本をはじめ,本 来母国で発生する筈の税収が諸外国に流出しているのではないかという批判 もあります。

一方,日本の大企業はほとんど全部キャプティブを持っています。キャプ ティブ自体がもともと自分の企業や関連事業の非常に狭い分野のリスク,引 受困難なリスク,例えば,製薬であれば薬品の製造物賠償責任などを間接的 に自社の所有するキャプティブに付保し,キャプティブをプロテクトするた めにその再保険をまた国際再保険市場に売るというようなことをしておりま すが,近年は売っていくのも大変です。また,日本の損保会社にとってはフ ロンティングすることによる様々なメリットともにデメリットもあります。

今回キャプティブ事業活動のお話があり,また昔 APRIA 大会で日本のキ ャプティブは諸外国と比較して少ない,まだまだ開発,新設する余地がある と話した方もいましたが,世界の政治的といいますか,財務的といいますか,

各国の税収の問題あるいはロンダリング等の問題などの逆風が吹いている状 況の中で,特に国税は非常に厳しい対応をとっている中で,日本企業は慎重 ですから,推進されていく中で勧めてもなかなか話に乗ってこないというよ うな状況にあるのではないかとも思われます。

いろいろなことを同時に申し上げましたが,ある意味でキャプティブに対 する反対の動きといいますか,そういういわば負の面が話題になっている中 であえてキャプティブという選択をとるところが現在あるのか。特に私が関 心を持っているのは,世界的な反対の潮流が今どうなっているのか,それに 対して日本の企業は現に持っている所がほとんどだと思いますが,どのよう に見ておられるのか。一部,接収していこうという動きも出ていると聞いて

(15)

いますが,その辺をご教授いただければと思います。よろしくお願いします。

【野崎】私の理解の中では,キャッシュボックスとまでは言いませんが,以 前はタックスメリットを意識したキャプティブも多かったと思います。実際 に昨年度について言えば,ドミサイルが税率21%の国にあれば日本との差の タックスメリットを得ることができました。しかし⚔月からは,タックスメ リットを目的にするのは難しくなっていると思います。

本日,私が紹介したのはタックスメリットを得ることを目的としたもので はなく,PL と BS を上手に使いながらリスクを適切にコントロールできる ようにするというものです。適切にコントロールするというのは何かという と,保険金額や補償内容の面で,企業にとって必要だが日本では買えない保 険を海外であれば買えるケースがあります。また,それを再保険市場から適 切な価格で買える可能性もあります。しかし,日本の保険会社なしで何でも できると言う訳ではありません。事業会社にとって難しいのは事故対応です。

甘えられるのであれば,ロスコントロールやクレームエージェントとして日 本の保険会社のサポートが欲しいと考えており,事業会社はそのサービスの 対価として十分な費用を支払うべきと考えています。きれいごとかもしれま せんが,この関係が双方にとって良い関係ではないかと考えています。

【司会】企業のリスクファイナンスにかかる部分に対して,キャプティブ等 の利用が伝統的な保険以外でどれくらい利用できるかというところは関心が 深いと思います。その他の観点でも構いませんがいかがでしょうか。

【大森義夫(ポストライフ)】ポストライフの大森です。野崎さんに聞きたい のです。株式市場の変動を極値理論によってある程度予測をして,それによ って保険というものは計算して提供できると思うのです。それは損保会社に おいても極値理論でやる方法もあると,現在の工学的な方法以外に極値理論 といって過去のデータですけれども,それによって提供することはできると

(16)

思います。その時に,損保会社の場合はそれを別の会社でやらないと,同じ 会社でやっていると分布が相違する等のため,別の会社でやっています。だ から,極値理論を用いて保険料に適用して,そしてニーズがある人にその保 険を売って,それによって得る利益は還元していくわけです。それは当然,

日本の国内では税制などがあり,少ない資本量になっていると思うのです。

そうすると,どういうメリットが会社にあるかというと,株式に対する欠損 が少なくなってくる,株式に対して安心感を与えていくだろうと思います。

そうすると,現在,潤沢な資金を持っている株式会社は,そういうことがで きることになるのです。ということになると,日本国でそのようなキャプテ ィブというのは積極的に現れてこない,質問にもありました。それは何かの 規制やそういうものの弊害があると思うのです。それがアメリカにおいて現 れてきているか,あるいはバミューダとか,税制の優遇地域に現れることに なるのでしょう。日本でもう少しキャットを提供する会社を生むような素地 というのは,どうやってつくっていくのですかということを質問したいので す。

【野崎】昔から国内に特区を作るかどうかという議論があって,何回も出た り消えたりしています。それが大きな解決策の一つだと思っています。ただ,

私が考えているキャプティブのあるべき姿は,タックスメリットを取る会社 ではありません。日本国内で日本の税率できちんとできれば良いと考えてい ます。日本の保険業法では,自社のための専用の保険会社を国内に作ること はできませんが,今後,キャプティブを作りたい人がいた場合に,日本でで きれば一番良いと思います。また,海外にある既存のキャプティブを日本に 移すための制度の整備も必要かもしれません。あるいは,保険会社側で事業 会社がキャプティブを作らなくても良い仕組みを考えていただくことも重要 だと思っています。

【司会】いろいろ議論も尽きないところではございますが,お時間になりま

(17)

したので,最後に司会から,まとめさせていただきます。本共通論題では,

基調講演にもございましたが,ここのところ大規模な自然災害が激甚化し,

そしてそれが恒常化しているという現状におきまして,公的支援などの公助,

そして共助といってもある程度限界があります。そのような前提の中でリス クファイナンスがはたして個人,企業,そして農業分野において十分に普及 し提供されているのかという問題意識から,リスクファイナンスのさまざま な手法について,それぞれの専門的な知見を踏まえて,制度的な課題を中心 に紹介をしていただきました。リスクファイナンスの普及の問題,地震保険 もある程度加入率が非常に高まってきたという話はありましたが,また今後,

加入率を高めていくことが必要になってくるかと思います。企業のリスクフ ァイナンスは十分に行われているかということについても,まだまだ検討が 必要です。リスクファイナンスの保障についても,なぜ普及が足りないのか を考えますと,情報が不足しているといいますか,企業でもどのような手段 があるのか十分に理解されているのかというところも,まだまだ改善の余地 があるのではないかと思います。まだ検討の余地が大いに残る分野ですが,

このような現状を踏まえて,今後ますます研究が進められていく必要がある と考えています。

皆さま,ご清聴ありがとうございました。また活発な議論をいただきまし て,ありがとうございました。これにて共通論題を終了いたします。

参照

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